霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三三章 鰤公(ぶりこう)〔四六三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻 篇:第3篇 邪神征服 よみ(新仮名遣い):じゃしんせいふく
章:第33章 鰤公 よみ(新仮名遣い):ぶりこう 通し章番号:463
口述日:1922(大正11)年02月27日(旧02月01日) 口述場所: 筆録者:藤津久子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年8月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
男たちは石凝姥神と一緒に浮橋を渡り、久しぶりに故郷の対岸に帰ってくることができた。男たちの中の鰤公は、一同を代表して石凝姥神に願い出た。
鰤公によると、アルタイ山には蛇掴という悪神が棲んでおり、蛇を食べているのだが、蛇が足りないときには人間を食らう。そのため村人たちは手分けして蛇を獲っているのだが、寒いときにはたいへんな苦労を強いられている、という。
石凝姥神は、そんなことはなんでもない、アルタイ山に登ってその魔神を退治してやる、と請け負った。男たちは石凝姥神を自分の村に案内していく。
村は鉄谷村という。村は何ゆえかどの家も灯りがついておらず、やや高いところに一柱だけ火がまたたいていた。そこは鉄谷村に酋長・鉄彦の屋敷であった。
石凝姥神は門外から声を張り上げて宣伝歌を歌い始めた。中から現れた門番の時公は、酋長の娘・清姫が、蛇掴の餌食になろうとしている、と状況を説明した。そして、鰤公の娘もすでに蛇掴に食われてしまったのだ、と語った。
鰤公はそれを聞いてその場に倒れてしまった。
石凝姥神は門をくぐって進み入った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-07-31 22:18:24 文字数:2478 OBC :rm1033
愛善世界社版:256頁 八幡書店版:第2輯 484頁 修補版: 校定版:263頁 普及版:117頁 初版: ページ備考:
001 海月(くらげ)なす漂(ただよ)ふ国(くに)を固(かた)めむと、002心(こころ)も堅(かた)き石凝姥(いしこりどめ)の、003神(かみ)の命(みこと)の宣伝使(せんでんし)、004其(その)言霊(ことたま)に川(かは)の辺(べ)の、005四五(しご)の土人(どじん)は堅(かた)き頭(あたま)を宇智(うち)の川(かは)、006浮木(うきき)の橋(はし)を危(あぶ)なげに、007やうやう西(にし)へ打渡(うちわた)り、
008甲(かふ)『アヽ三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、009お蔭(かげ)で三(さん)年(ねん)振(ぶ)りに故郷(こきやう)に帰(かへ)る事(こと)が出来(でき)ました。010これも全(まつた)く、011あなた様(さま)のお蔭(かげ)でございます。012私(わたくし)の村(むら)へ一寸(ちよつと)御(お)立寄(たちよ)りを願(ねが)ひたいのは山々(やまやま)ですが、013そこには一寸(ちよつと)、014エヽ一寸(ちよつと)……』
015石凝姥(いしこりどめ)『何(なん)だ、016云(い)ひ憎(にく)さうに、017明瞭(はつきり)と云(い)はぬかい』
018甲『オイ鰤公(ぶりこう)、019貴様(きさま)俺(おれ)に代(かは)つて申上(まをしあ)げて呉(く)れないか』
020鰤公(ぶりこう)『ソンナ甘(うま)い事(こと)を云(い)ふな。021此(この)鰤公(ぶりこう)だつて久(ひさ)し振(ぶ)りに川(かは)を渡(わた)つて、022やつと安心(あんしん)したとこだ、023ソンナ事(こと)明瞭(はつきり)と云(い)はうものなら、024それ又(また)アルタイ山(さん)の魔神(まがみ)さまにはブリブリと怒(おこ)られて、025ドンナ災難(さいなん)が俺(おれ)の頭(あたま)にブリ懸(かか)つて来(く)るか、026分(わか)つたものぢやないワ。027さうすれば家(うち)の嬶(かかあ)めが三(さん)年(ねん)振(ぶ)りに折角(せつかく)帰(かへ)つて来(き)て、028好(よ)い男(をとこ)振(ぶ)りを拝(をが)んで、029ヤレヤレ嬉(うれ)しやと思(おも)つて居(ゐ)たのに、030お前(まへ)さまは馬鹿(ばか)だから、031ソンナ大事(だいじ)な事(こと)を喋(しやべ)つて、032こんな目(め)に遇(あ)ふのだと云(い)つて、033ブリブリ怒(おこ)られて、034大(おほ)きな尻(しり)を俺(おれ)の方(はう)へブリブリと振(ふ)られやうものならつまらぬからなア』
035石凝姥(いしこりどめ)『オイ、036貴様(きさま)達(たち)は訳(わけ)の分(わか)らぬ奴(やつ)だな。037何(なに)がブリブリだ』
038乙(おつ)『イヤ最(も)う毎日(まいにち)日日(ひにち)、039大雨(おほあめ)がブリブリで、040宇智川(うちがは)はドえらい洪水(こうずゐ)で御座(ござ)います。041家(うち)の嬶(かかあ)もブリブリで腹立(はらた)て、042涙(なみだ)の雨(あめ)がブリブリになると困(こま)りますから、043どうぞ是(これ)だけは御(お)許(ゆる)し下(くだ)さいませ』
044石凝姥神『貴様(きさま)たち、045愚図(ぐづ)々々(ぐづ)云(い)つて秘密(ひみつ)を明(あか)さぬならば、046こちらにも考(かんが)へがあるぞ。047又(また)石(いし)の玉(たま)を御(お)見舞(みまひ)ひ申(まを)さうか』
048と云(い)ひながら、049直(ただ)ちに土(つち)を握(にぎ)つて団子(だんご)を造(つく)り息(いき)を吹(ふ)きかけたるを、
050甲(かふ)『マアマア待(ま)つて下(くだ)さいませ。051そんな石玉(いしだま)を貰(もら)つたら、052私(わたくし)の頭(あたま)は一遍(いつぺん)にポカーンと割(わ)れて了(しま)ふ、053堪(たま)つたものぢやない。054胆玉(きもだま)までが潰(つぶ)れて睾丸(きんたま)が縮(ちぢ)んで了(しま)ひます』
055石凝姥(いしこりどめ)『それなら素直(すなほ)に、056何(なん)だか秘密(ひみつ)らしい貴様(きさま)の口(くち)振(ぶ)り、057白状(はくじやう)せぬかい』
058甲『ハイハイ、059仕方(しかた)がありませぬ、060さつぱりと申(まを)し上(あ)げます。061エヽ実(じつ)は、062誠(まこと)にそれは、063ほんにほんに、064真(しん)に、065エー、066アルタイ山(さん)の、067アヽ間(ま)の悪(わる)い曲神(まがかみ)が、068マアマア、069マアで御座(ござ)いますが』
070石凝姥神『貴様(きさま)の云(い)ふ事(こと)は益々(ますます)分(わか)らぬ、071真面目(まじめ)に申(まを)さぬか。072また石玉(いしだま)を呉(く)れるぞよ』
073甲『オイ、074鰤公(ぶりこう)、075貴様(きさま)も俺(おれ)ばかりに云(い)はさずに、076ちつとは責任(せきにん)を分担(ぶんたん)したらどうだ』
077鰤公(ぶりこう)『エー仕方(しかた)がない。078どんな事(こと)があつても、079三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)引受(ひきう)けて下(くだ)さいますか』
080石凝姥(いしこりどめ)『何(なん)でも引受(ひきう)けてやる、081驚(おどろ)くな、082尋常(じんじやう)に真実(しんじつ)を申(まを)せ』
083鰤公『アルタイ山(さん)には蛇掴(へびつかみ)と云(い)ふ、084それはそれはえらい悪神(わるがみ)が棲(す)んで居(を)ります。085其(その)神(かみ)は毎日(まいにち)日日(ひにち)大(おほ)きな蛇(へび)を十二匹(じふにひき)宛(づつ)餌食(ゑじき)に致(いた)して居(を)ります。086其(その)蛇(へび)がない時(とき)には此処(ここ)ら辺(あたり)の村々(むらむら)に沢山(たくさん)の子分(こぶん)を連(つ)れて来(き)て、087嬶(かかあ)や娘(むすめ)を代(かは)りに奪(と)つて喰(くら)ひますので、088大事(だいじ)な女房(にようばう)や娘(むすめ)を食(く)はれては堪(たま)らないので、089村々(むらむら)の者(もの)が各自(めいめい)手分(てわ)けをして毎日(まいにち)十二匹(じふにひき)の太(ふと)い蛇(へび)を獲(と)つて、090之(これ)をアルタイ山(さん)の窟(いはや)に供(そな)へに行(ゆ)くのです。091夏(なつ)は沢山(たくさん)に蛇(へび)が居(を)つて取(と)るのも容易(ようい)ですが、092斯(か)う寒(さむ)くなると残(のこ)らず土(つち)の中(なか)へ這入(はい)つて了(しま)ふので、093之(これ)を獲(と)らうと思(おも)へば大変(たいへん)な手間(てま)が入(い)りますし、094之(これ)を獲(と)らねば女房(にようばう)子(こ)をいつの間(ま)にやら奪(と)つて食(く)はれるなり、095イヤもう此(この)辺(へん)の人民(じんみん)は、096大蛇獲(だいじやと)りにかかつては命(いのち)がけで御座(ござ)います。097若(も)しもこんな事(こと)をあなたに申(まを)し上(あ)げた事(こと)が、098アルタイ山(さん)の魔神(まがみ)の蛇掴(へびつかみ)の耳(みみ)へでも入(はい)つたら、099それこそ此(この)村(むら)は全滅(ぜんめつ)の憂目(うきめ)に遇(あ)はねばなりませぬから、100どうぞ助(たす)けて下(くだ)さいませ』
101石凝姥神『ヤア、102何事(なにごと)かと思(おも)へばソンナ事(こと)か、103よしよし。104此(この)方(はう)がこれからアルタイ山(さん)に登(のぼ)つて其(その)蛇掴(へびつかみ)の魔神(まがみ)を退治(たいぢ)て[*「退治(たいぢ)て」は底本通り。]やらう。105貴様(きさま)等(ら)は案内(あんない)せよ』
106一同(いちどう)『案内(あんない)は致(いた)しますが、107三(さん)年(ねん)振(ぶ)りで漸(やうや)う帰(かへ)つたばかし、108どうぞ一度(いちど)吾家(わがや)へ帰(かへ)つて妻子(さいし)に面会(めんくわい)した上(うへ)案内(あんない)さして下(くだ)さい』
109石凝姥神『三(さん)年(ねん)も居(を)らなかつたのだから、110屹度(きつと)お前(まへ)等(ら)の女房(にようばう)子(こ)は喰(く)はれて了(しま)つたかも知(し)れないよ』
111 一同(いちどう)声(こゑ)を揃(そろ)へてワアワアと泣(な)き伏(ふ)すあはれさ。
112石凝姥(いしこりどめ)『オー心配(しんぱい)するな、113滅多(めつた)にそんな事(こと)はあるまい。114とも角(かく)貴様(きさま)等(ら)の村(むら)に暫(しば)らく逗留(とうりう)して様子(やうす)を窺(うかが)ふ事(こと)としよう』
115と一同(いちどう)と共(とも)に彼(かれ)等(ら)が部落(ぶらく)に進(すす)み行(ゆ)く。
116 この部落(ぶらく)を鉄谷村(かなたにむら)と云(い)ふ。117一行(いつかう)が此(この)村(むら)の入口(いりぐち)に差掛(さしかか)つた頃(ころ)は、118既(すで)に烏羽玉(うばたま)の闇(やみ)の帳(とばり)は下(おろ)され、119空(そら)には黒雲(こくうん)塞(ふさ)がり咫尺(しせき)を弁(べん)ぜざる闇黒界(あんこくかい)となりぬ。
120 七八十(しちはちじつ)軒(けん)もある鉄谷村(かなたにむら)は、121何故(なにゆゑ)か、122どの家(いへ)にも一点(いつてん)の燈火(あかり)もついて居(ゐ)ない。123微(かすか)に鼻(はな)をすする音(おと)や泣(な)き声(ごゑ)が聞(きこ)えてゐる。124鰤公(ぶりこう)の一行(いつかう)はあまりの暗(くら)さに吾家(わがや)さへも分(わか)らず、125一歩(ひとあし)々々(ひとあし)杖(つゑ)を持(も)たぬ盲目(めくら)の様(やう)な足付(あしつき)をして探(さぐ)りさぐり進(すす)んで行(ゆ)く。126やや高(たか)き所(ところ)に忽然(こつぜん)として一柱(ひとはしら)の火光(くわくわう)が瞬(またた)き始(はじ)めた。127石凝姥(いしこりどめ)その他(た)の一行(いつかう)は其(その)火(ひ)を目当(めあて)にドンドンと進(すす)んで来(き)て見(み)れば、128此処(ここ)は鉄谷村(かなたにむら)の酋長(しうちやう)の鉄彦(かなひこ)の屋敷(やしき)である。129何(なん)だか秘密(ひみつ)が潜(ひそ)んでゐる様(やう)な気(き)がする。130石凝姥(いしこりどめの)神(かみ)は門前(もんぜん)に立(た)つて声(こゑ)朗(ほがら)かに宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ始(はじ)めた。131門内(もんない)より雷(かみなり)の如(ごと)き声(こゑ)を張(は)り上(あ)げて、
132時公『ヤア、133此(この)門前(もんぜん)に立(た)ちて三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ふ奴(やつ)は何者(なにもの)だツ。134酋長(しうちやう)様(さま)の御(お)家(いへ)の一大事(いちだいじ)、135そんな気楽(きらく)な事(こと)を云(い)つてゐる場合(ばあひ)ではあるまい。136何処(どこ)の何奴(なにやつ)か知(し)らぬが、137悪戯(ふざけ)た真似(まね)を致(いた)すと笠(かさ)の台(だい)が飛(と)んで了(しま)ふぞ』
138 門外(もんぐわい)より鰤公(ぶりこう)声(こゑ)を張上(はりあ)げ、
139鰤公『ヤア、140さう言(い)ふ声(こゑ)は門番(もんばん)の時公(ときこう)ではないか。141俺(おれ)は三年前(さんねんまへ)に宇智川(うちがは)の向岸(むかふぎし)に渡(わた)つたきり、142丸木橋(まるきばし)が落(お)ちたものだから、143今日(けふ)まで帰(かへ)らなかつたので村(むら)の様子(やうす)はちつとも知(し)らぬが、144酋長(しうちやう)の家(いへ)の一大事(いちだいじ)とは何(なん)だい』
145時公(ときこう)『何(なん)だも糞(くそ)もあつたものか、146蛇掴(へびつかみ)の曲神(まがかみ)さまに酋長(しうちやう)の娘(むすめ)清姫(きよひめ)さまを今晩中(こんばんちう)にアルタイ山(さん)の砦(とりで)に人身(ひとみ)御供(ごくう)に上(あ)げねばならぬのだ。147あんな美(うつく)しい可惜娘(あたらむすめ)を蛇掴(へびつかみ)の曲神(まがかみ)の餌食(ゑじき)にするのかと思(おも)へば、148俺(おれ)はもう気(き)の毒(どく)で惜(を)しうて何(なに)どころではない。149貴様(きさま)それにも拘(かか)はらず、150蛇掴(へびつかみ)の嫌(きら)ひな宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ふとは何(なん)の事(こと)だい。151貴様(きさま)の娘(むすめ)も今年(ことし)の春(はる)だつたか、152食(く)はれて了(しま)うたのだよ』
153 鰤公(ぶりこう)は、
154鰤公『エーツ』
155と云(い)つた限(き)り、156其(その)場(ば)にドツと倒(たふ)れ伏(ふ)し人事(じんじ)不省(ふせい)となる。
157甲(かふ)『オイ、158俺(おれ)は貴様(きさま)のよく知(し)つて居(を)る吉公(きちこう)だが、159門(もん)を開(あ)けて呉(く)れ。160屹度(きつと)酋長(しうちやう)がお喜(よろこ)びになる事(こと)は請合(うけあひ)だ。161俺(おれ)は救(すく)ひの神(かみ)様(さま)をお迎(むか)へして来(き)たのだから、162清姫(きよひめ)さまも屹度(きつと)お助(たす)かりになるだらう。163早(はや)く開(あ)けないかい』
164時公『マア何(なに)は兎(と)もあれ、165開(あ)けて見(み)ようか』
166と時公(ときこう)はやや不安(ふあん)にかられながら、167白木(しらき)の門(もん)をガラガラと開(あ)ける。168石凝姥(いしこりどめの)神(かみ)は、
169石凝姥神『御免(ごめん)』
170と云(い)ひつつ門(もん)を潜(くぐ)つて進(すす)み入(い)る。
171(大正一一・二・二七 旧二・一 藤津久子録)
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