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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第10巻(酉の巻)
序歌
凡例
総説歌
信天翁(一)
第1篇 千軍万馬
第1章 常世城門
第2章 天地暗澹
第3章 赤玉出現
第4章 鬼鼻団子
第5章 狐々怪々
第6章 額の裏
第7章 思はぬ光栄
第8章 善悪不可解
第9章 尻藍
第10章 注目国
第11章 狐火
第12章 山上瞰下
第13章 蟹の将軍
第14章 松風の音
第15章 言霊別
第16章 固門開
第17章 乱れ髪
第18章 常世馬場
第19章 替玉
第20章 還軍
第21章 桃の実
第22章 混々怪々
第23章 神の慈愛
第24章 言向和
第25章 木花開
第26章 貴の御児
第2篇 禊身の段
第27章 言霊解一
第28章 言霊解二
第29章 言霊解三
第30章 言霊解四
第31章 言霊解五
第3篇 邪神征服
第32章 土竜
第33章 鰤公
第34章 唐櫃
第35章 アルタイ窟
第36章 意想外
第37章 祝宴
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(三)
余白歌
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第10巻(酉の巻)
> 第1篇 千軍万馬 > 第19章 替玉
<<< 常世馬場
(B)
(N)
還軍 >>>
第一九章
替玉
(
かへだま
)
〔四四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:
第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):
せんぐんばんば
章:
第19章 替玉
よみ(新仮名遣い):
かえだま
通し章番号:
449
口述日:
1922(大正11)年02月25日(旧01月29日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:
常世城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
広国別、広国姫は、今度の大戦の行く末をひそひそと話し合っていた。そこへ、ロッキー城から日の出神の使いとして、逆国別がやってきたと報せを受けた。
広国別は、召使の笠取別を呼び、にわかに大臣待遇に任じて代理とし、逆国別の応対をするようにと命じた。
笠取別は大臣待遇となり、勇んで逆国別の前に現れ、常世神王であるかのように振舞うが、捕らえられてしまう。笠取別を広国別と勘違いした逆国別は、そのままロッキー山に引き上げてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-07-16 00:38:44
OBC :
rm1019
愛善世界社版:
150頁
八幡書店版:
第2輯 445頁
修補版:
校定版:
157頁
普及版:
70頁
初版:
ページ備考:
001
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
は
清
(
きよ
)
く
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
り、
002
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
は
大空
(
おほぞら
)
に
隅
(
くま
)
なきまでに
輝
(
かがや
)
けど、
003
曲
(
まが
)
の
企
(
たく
)
みの
薄暗
(
うすぐら
)
き、
004
常夜
(
とこよ
)
の
闇
(
やみ
)
の
奥殿
(
おくでん
)
は、
005
八十
(
やそ
)
の
曲霊
(
まがひ
)
のたけび
声
(
ごゑ
)
、
006
何処
(
どこ
)
ともなしに
洩
(
も
)
れ
来
(
きた
)
る。
007
虫
(
むし
)
が
知
(
し
)
らすか
何
(
なん
)
となく、
008
心
(
こころ
)
塞
(
ふさ
)
がり
胸
(
むね
)
痛
(
いた
)
む、
009
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
広国別
(
ひろくにわけ
)
は、
010
広国姫
(
ひろくにひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に、
011
黄泉島
(
よもつじま
)
にと
遣
(
つか
)
はせし、
012
勇将
(
ゆうしやう
)
猛卒
(
まうそつ
)
のあと
見送
(
みおく
)
つて、
013
しめじめと
不安
(
ふあん
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られゐる。
014
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
(に化けた広国別)
『アヽ
広国姫
(
ひろくにひめ
)
、
015
日頃
(
ひごろ
)
股肱
(
ここう
)
と
頼
(
たの
)
む
照山彦
(
てるやまひこ
)
、
016
中依別
(
なかよりわけ
)
、
017
鷹取別
(
たかとりわけ
)
などの
豪傑
(
がうけつ
)
は、
018
皆
(
みんな
)
出陣
(
しゆつぢん
)
して
了
(
しま
)
つて、
019
何
(
なん
)
とはなしに
拍子抜
(
ひやうしぬけ
)
がしたやうだな。
020
恰度
(
ちやうど
)
行灯
(
あんどん
)
を
蹴破
(
けやぶ
)
つたやうな
城内
(
じやうない
)
の
寂寥
(
せきれう
)
、
021
万々一
(
まんまんいち
)
突然
(
とつぜん
)
に
強
(
つよ
)
い
敵
(
てき
)
が
攻
(
せ
)
めて
来
(
こ
)
ようものなら、
022
常世城
(
とこよじやう
)
は
まるつきり
袋
(
ふくろ
)
の
鼠
(
ねずみ
)
だ。
023
去年
(
きよねん
)
のやうな
怪
(
あや
)
しいことが、
024
又復
(
またまた
)
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ようものなら
如何
(
どう
)
することも
出来
(
でき
)
ない。
025
せめて
竹山彦
(
たけやまひこ
)
だけなりと
残
(
のこ
)
して
置
(
お
)
けばよかつたに』
026
広国姫
(
ひろくにひめ
)
『ナンダか
妾
(
わたし
)
も
不安
(
ふあん
)
で
堪
(
た
)
まりませぬ。
027
昨夜
(
さくや
)
も
妙
(
めう
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
まして、
028
大変
(
たいへん
)
に
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
しました。
029
併
(
しか
)
しながら
夢
(
ゆめ
)
の
浮世
(
うきよ
)
と
云
(
い
)
つて、
030
何
(
ど
)
うなるも
斯
(
か
)
うなるも、
031
総
(
すべ
)
て
運
(
うん
)
は
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
さねば、
032
吾々
(
われわれ
)
が
何
(
ど
)
うすることも
出来
(
でき
)
ませぬ。
033
何
(
なん
)
だか
日々
(
ひび
)
に
気
(
き
)
が
咎
(
とが
)
めて、
034
天道
(
てんたう
)
様
(
さま
)
から
呶鳴
(
どな
)
りつけらるるやうな
心持
(
こころもち
)
がして、
035
何時
(
いつ
)
も
おど
おど
心
(
こころ
)
が
落着
(
おちつ
)
きませぬ』
036
常世神王(に化けた広国別)
『ソンナ
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くな。
037
捨
(
す
)
てる
神
(
かみ
)
もあれば
拾
(
ひろ
)
ふ
神
(
かみ
)
もある。
038
よいことが
来
(
く
)
れば
又
(
また
)
悪
(
わる
)
いことも
来
(
く
)
るものだ。
039
黄泉島
(
よもつじま
)
の
戦
(
たたか
)
ひがうまく
此方
(
こちら
)
の
勝利
(
しようり
)
となれば、
040
この
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
は
伊弉冊
(
いざなみの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
だ。
041
さうなれば、
042
吾々
(
われわれ
)
も
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
ばかりでなく
地上
(
ちじやう
)
の
大神王
(
だいしんわう
)
だ』
043
と
夫婦
(
ふうふ
)
は
前途
(
ぜんと
)
を
気
(
き
)
づかひ
且
(
か
)
つ
望
(
のぞ
)
みを
抱
(
いだ
)
きながら、
044
首
(
くび
)
を
鳩
(
あつ
)
めてひそひそ
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
045
小間使
(
こまづかひ
)
の
清姫
(
きよひめ
)
はこの
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
046
恐
(
おそ
)
るおそる
両手
(
りやうて
)
をつき、
047
清姫
『
只今
(
ただいま
)
ロッキー
城
(
じやう
)
より
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
として、
048
逆国別
(
さかくにわけ
)
数多
(
あまた
)
の
供
(
とも
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ、
049
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
に
申渡
(
まをしわた
)
す
仔細
(
しさい
)
があると、
050
それはそれは
偉
(
えら
)
い
権幕
(
けんまく
)
でございます。
051
如何
(
いかが
)
取計
(
とりはか
)
らひませうか』
052
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
(に化けた広国別)
『ホー、
053
それは
吾々
(
われわれ
)
にも
出陣
(
しゆつぢん
)
せよとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
だらう。
054
広国姫
(
ひろくにひめ
)
、
055
其方
(
そなた
)
はわが
代理
(
だいり
)
となつて、
056
この
常世城
(
とこよじやう
)
を
守
(
まも
)
つて
呉
(
く
)
れ。
057
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあれば
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ない』
058
広国姫
(
ひろくにひめ
)
『……………』
059
清姫
(
きよひめ
)
『
如何
(
いかが
)
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
致
(
いた
)
しませう』
060
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
(に化けた広国別)
『
笠取別
(
かさとりわけ
)
を
呼
(
よ
)
べ』
061
清姫
『ハイ』
062
と
答
(
こた
)
へて
清姫
(
きよひめ
)
は
此
(
こ
)
の
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
る。
063
笠取別
(
かさとりわけ
)
は
庭前
(
にはさき
)
の
木
(
き
)
の
植込
(
うゑこみ
)
の
間
(
あひだ
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
慌
(
あわただ
)
しく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
064
沓脱石
(
くつぬぎいし
)
の
前
(
まへ
)
に
拝跪
(
はいき
)
して、
065
笠取別
『
笠取別
(
かさとりわけ
)
只今
(
ただいま
)
参上
(
さんじやう
)
仕
(
つかまつ
)
りました』
066
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
(に化けた広国別)
『ホー
笠取別
(
かさとりわけ
)
か、
067
汝
(
なんぢ
)
に
申付
(
まをしつ
)
くる
事
(
こと
)
がある。
068
ロッキー
城
(
じやう
)
の
上使
(
じやうし
)
、
069
逆国別
(
さかくにわけ
)
に
応対
(
おうたい
)
を
致
(
いた
)
せ』
070
笠取別
『
小神
(
せうしん
)
の
吾々
(
われわれ
)
、
071
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
に
向
(
むか
)
つて
申上
(
まをしあ
)
げる
権利
(
けんり
)
がございませぬ』
072
常世神王(に化けた広国別)
『アイヤ、
073
今日
(
けふ
)
は
汝
(
なんぢ
)
を
宰相
(
さいしやう
)
に
命
(
めい
)
ずる。
074
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
代理
(
だいり
)
だ』
075
笠取別
『エー、
076
一寸
(
ちよつと
)
伺
(
うかが
)
ひます。
077
今日
(
けふ
)
だけでございますか。
078
永遠
(
ゑいゑん
)
に
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
役
(
やく
)
を
仰付
(
おほせつ
)
け
下
(
くだ
)
さいますのか。
079
臨時
(
りんじ
)
なれば
平
(
ひら
)
に
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
します。
080
時
(
とき
)
の
代官
(
だいくわん
)
、
081
日
(
ひ
)
の
奉行
(
ぶぎやう
)
では
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
心細
(
こころぼそ
)
くて、
082
実
(
み
)
を
入
(
い
)
れて
談判
(
だんぱん
)
する
勇気
(
ゆうき
)
も
出
(
で
)
ませぬから』
083
この
時
(
とき
)
逆国別
(
さかくにわけ
)
は
大音声
(
だいおんじやう
)
、
084
逆国別
『ヤアヤア、
085
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
上使
(
じやうし
)
逆国別
(
さかくにわけ
)
、
086
詮議
(
せんぎ
)
の
次第
(
しだい
)
あつて
本城
(
ほんじやう
)
に
向
(
むか
)
つたり。
087
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
御
(
お
)
出会
(
であ
)
ひあれ』
088
笠取別
(
かさとりわけ
)
『モシモシ、
089
根
(
ね
)
つから
笠取別
(
かさとりわけ
)
に
御
(
お
)
出会
(
であ
)
ひあれと
申
(
まを
)
しませぬ。
090
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
にと
上使
(
じやうし
)
が
呶鳴
(
どな
)
つてゐます』
091
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
(に化けた広国別)
『その
方
(
はう
)
が
代理
(
だいり
)
に
出
(
で
)
るのだ』
092
笠取別
『アヽ
私
(
わたくし
)
が
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
代理
(
だいり
)
ですか。
093
偉
(
えら
)
いものだな。
094
蝸牛
(
まひまひつむり
)
が
天上
(
てんじやう
)
したと
云
(
い
)
はうか、
095
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
の
糞虫
(
くそむし
)
が
出世
(
しゆつせ
)
して、
096
羽根
(
はね
)
が
生
(
は
)
えて
王
(
わう
)
さまの
頭
(
あたま
)
へとまつたと
云
(
い
)
はうか、
097
蟹彦
(
かにひこ
)
が
将軍
(
しやうぐん
)
になつたやうなものだ。
098
矢張
(
やつぱ
)
り
常世城
(
とこよじやう
)
は
常夜
(
とこよ
)
の
闇
(
やみ
)
だな。
099
これだから
骨折損
(
ほねをりぞん
)
の
草臥儲
(
くたびれまう
)
け、
100
力
(
ちから
)
のある
正直
(
しやうぢき
)
な
奴
(
やつ
)
は
皆
(
みな
)
落
(
おと
)
されるのだ。
101
俺
(
おれ
)
のやうな
上役
(
うはやく
)
の
威光
(
ゐくわう
)
を
笠
(
かさ
)
に
被
(
き
)
て、
102
蔭
(
かげ
)
で
こそ
こそと
下手
(
へた
)
ばつかりやつて
居
(
を
)
るものは、
103
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
結構
(
けつこう
)
なことが
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るのだ。
104
ドレ
是
(
これ
)
から
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
になつて、
105
逆国別
(
さかくにわけ
)
を
眼下
(
がんか
)
に
瞰下
(
みおろ
)
して
呶鳴
(
どな
)
りつけてやらうかい。
106
又
(
また
)
俺
(
おれ
)
の
腕
(
うで
)
はマア
斯
(
こ
)
んなものだと、
107
一泡
(
ひとあわ
)
吹
(
ふ
)
かすのも
面白
(
おもしろ
)
からう』
108
常世神王(に化けた広国別)
『オイ
笠取別
(
かさとりわけ
)
、
109
何
(
なに
)
をブツブツ
言
(
い
)
つてゐるか。
110
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
かぬか』
111
笠取別
『
行
(
ゆ
)
くも
行
(
ゆ
)
かぬもありますか。
112
鶴
(
つる
)
の
一声
(
ひとこゑ
)
、
113
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
代理
(
だいり
)
、
114
貴方
(
あなた
)
は
代理
(
だいり
)
を
御
(
お
)
使
(
つか
)
ひなさつた
以上
(
いじやう
)
は、
115
最早
(
もはや
)
御用
(
ごよう
)
はない
筈
(
はず
)
、
116
御
(
お
)
黙
(
だま
)
り
召
(
め
)
され……ヤアヤア、
117
ロッキー
城
(
じやう
)
の
上使
(
じやうし
)
逆国別
(
さかくにわけ
)
とやら、
118
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
……モシモシ
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
、
119
代理
(
だいり
)
だけ
一寸
(
ちよつと
)
ぬかして
置
(
お
)
きますから、
120
そのおつもりで』
121
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
は
広国姫
(
ひろくにひめ
)
と
共
(
とも
)
に、
122
黙然
(
もくねん
)
として
別殿
(
べつでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へてゐる。
123
笠取別
(
かさとりわけ
)
『
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
代理
(
だいり
)
……ではない
笠取別
(
かさとりわけ
)
……オツトドツコイ
広国別
(
ひろくにわけ
)
、
124
此処
(
ここ
)
にあり。
125
逆国別
(
さかくにわけ
)
に
拝謁
(
はいえつ
)
を
許
(
ゆる
)
す。
126
近
(
ちか
)
う
近
(
ちか
)
う』
127
逆国別
(
さかくにわけ
)
は
悠然
(
いうぜん
)
として
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
128
一揖
(
いちいう
)
しながら
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
座
(
ざ
)
に、
129
つかつかと
上
(
あが
)
り
行
(
ゆ
)
く。
130
笠取別
(
かさとりわけ
)
『ヤア
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
、
131
其処
(
そこ
)
は
拙者
(
せつしや
)
の
場席
(
ばせき
)
でござる。
132
御
(
お
)
退
(
さが
)
り
召
(
め
)
され』
133
逆国別
(
さかくにわけ
)
『
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
、
134
魔術
(
まじゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て
松
(
まつ
)
、
135
竹
(
たけ
)
、
136
梅
(
うめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
偽
(
いつは
)
り、
137
上
(
かみ
)
を
欺
(
あざむ
)
く
不届者
(
ふとどきもの
)
、
138
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
常世城
(
とこよじやう
)
を
明渡
(
あけわた
)
し、
139
且
(
か
)
つ
此
(
この
)
駕籠
(
かご
)
に
乗
(
の
)
つてロッキー
城
(
じやう
)
に
来
(
きた
)
るべく、
140
早
(
はや
)
く
手
(
て
)
を
廻
(
まは
)
せ』
141
笠取別
『これは
怪
(
け
)
しからぬ』
142
と
言
(
い
)
ひも
終
(
をは
)
らぬに、
143
四五
(
しご
)
の
供人
(
ともびと
)
は
逸早
(
いちはや
)
く
笠取別
(
かさとりわけ
)
を
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
めたり。
144
笠取別
(
かさとりわけ
)
『
俺
(
おれ
)
は
笠取別
(
かさとりわけ
)
だ。
145
縄捕
(
なはとり
)
恨
(
うら
)
めしい。
146
笠取
(
かさとり
)
も
恨
(
うら
)
めしいワイ。
147
俺
(
おれ
)
は
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
ぢやない。
148
家来
(
けらい
)
の
家来
(
けらい
)
のその
家来
(
けらい
)
だ。
149
今
(
いま
)
一寸
(
ちよつと
)
臨時
(
りんじ
)
に
神王
(
しんわう
)
になつて
見
(
み
)
たのだ。
150
俺
(
おれ
)
を
縛
(
しば
)
るよりも
本当
(
ほんたう
)
の
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
を
縛
(
しば
)
つて
呉
(
く
)
れ』
151
逆国別
(
さかくにわけ
)
『
如何
(
いか
)
に
巧
(
たくみ
)
に
吾
(
われ
)
を
欺
(
あざむ
)
かむとするも、
152
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
眼力
(
がんりき
)
に
依
(
よ
)
つて、
153
一眼
(
ひとめ
)
睨
(
にら
)
んだ
以上
(
いじやう
)
は、
154
その
方
(
はう
)
は
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
広国別
(
ひろくにわけ
)
、
155
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
だ。
156
ヤアヤア、
157
家来
(
けらい
)
共
(
ども
)
、
158
文句
(
もんく
)
は
聞
(
き
)
くに
及
(
およ
)
ばぬ。
159
早
(
はや
)
く
駕籠
(
かご
)
に
打込
(
うちこ
)
めよ』
160
家来
『ホーイ』
161
と
答
(
こた
)
へて、
162
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
駕籠
(
かご
)
に
捻込
(
ねぢこ
)
み、
163
逆国別
(
さかくにわけ
)
『サア、
164
斯
(
か
)
うなればもう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
、
165
常世城
(
とこよじやう
)
の
明渡
(
あけわた
)
しは
追
(
お
)
つての
事
(
こと
)
、
166
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
本城
(
ほんじやう
)
へ
立帰
(
たちかへ
)
らむ』
167
と
馬
(
うま
)
に
跨
(
またが
)
り、
168
数多
(
あまた
)
の
家来
(
けらい
)
を
引率
(
ひきつ
)
れて、
169
ロッキー
城
(
じやう
)
指
(
さ
)
して
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
170
(
大正一一・二・二五
旧一・二九
外山豊二
録)
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