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神詣

インフォメーション

題名：神詣著者：出口王仁三郎

ページ：65

概要：備考：『故山の夢』p120-124 タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-10-31 08:23:10 OBC ：B121808c32

─二十二三歳の頃─

産土の神に夜(よ)な夜(よ)なまゐ詣で迷信家よとわらはれしわれ

人の眼(め)をしのびて夜(よ)な夜(よ)な疲れたる身を産土の社(やしろ)に運びぬ

産土の夕(ゆふ)べのやみの杜(もり)かげをしのびて一人(ひとり)宮に詣でし

くらがりの産土の宮の杜(もり)かげの夜半(よは)にたたずむ女いやらし

何人(なんびと)と声をかくれば白い歯を闇(やみ)にあらはしホホと笑ひぬ

笑ひたる女よくよくしらぶれば乞食に歩行(ある)く狂女なりけり

この狂女髪(かみ)ふり乱し吾(わ)が後(あと)を喜楽(きらく)喜楽(きらく)と追ひつつ呼びくる

小幡橋(をばたばし)真下(ました)の闇に身をかくし狂女の影をやりすごしけリ

ガタガタと歯の根もあはぬ恐ろしさ命縮(ちぢ)むる思ひせし夜半(よは)

人臭い此処(ここ)らに居(ゐ)るかと叫びつつ狂女は橋の上にひきかへし来(く)る

そろそろと橋の真下にせまり来る姿に恐れて川に飛び込む

川の瀬の闇にちらつく白波(しらなみ)を目あてに命からがら逃げゆく

失恋の果てに狂女となりにける彼女の姿すさまじかりけり

○

あくる夜半(よは)産土の杜(もり)に詣でみればまた黒き影一つたちをり

神様にすまぬと思(も)へど黒きかげの恐ろしきまま黙祷なしけり

足音をしのばせながらさぐるごと腰をかがめて杜(もり)をはひ出す

吾(われ)を世にたたせ給はば百倍の御恩(ごおん)返(がへ)しを為さむと誓ひぬ

霜(しも)の降(ふ)る深夜神前(みまへ)にたたずめば駒(こま)のひづめの音(おと)聞(きこ)え来(く)も

たくづぬの白毛(しろげ)の駒(こま)にまたがりて異様(いやう)の神人(しんじん)近づくが見ゆ

四辺(しへん)みな闇なる神の清庭(すがには)に白馬(はくば)の神人(しんじん)見ゆるたふとさ

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