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逆耳

インフォメーション

題名：逆耳著者：出口王仁三郎

ページ：133

概要：備考：『故山の夢』p247-251 タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-11-05 12:25:02 OBC ：B121808c60

─二十五六歳の頃─

門口(かどぐち)に人の足おときこえつつ彼女の夫かへりきたれり

牛乳屋(ちちや)さん吾(わ)が家(や)に入(い)りて一時間たちしと夫は何気なくいふ

あまりにも草臥(くたび)れ果ててしばしの間(ま)やすみましたと言葉の綾(あや)織る

何気なく彼女に言葉あらためてこころひかれつ門(もん)を出(い)でたり

○

朝なさな彼女に逢ふをたのしみに程遠(ほどとほ)き道を牛乳(ちち)くばりゆく

牛乳(ちち)持ちてゆけば彼女のかげもなし逃げ帰りしと家人(かじん)は言へり

あくる朝牛乳(ちち)配りゆけば仲人が家人(かじん)とひそひそ話(はなし)してをり

吾(わ)が顔を睨(ね)めつけながら仲人は青瓢箪(あをべうたん)と他所事(よそごと)にののしる

富豪(ふうがう)の当家(たうけ)をいとうてかへる奴(やつ)先が見えぬとののしる仲人

○

あまりにも耳の痛さに駈け出せば牛乳屋(ちちや)待つたと親爺がとめる

牛乳屋(ちちや)さんあわてて去(い)ぬに及ばないやすんで帰れと親爺さんいふ

てれくさいながらも縁(えん)に腰かけて仲人の罵(ののし)り聞かされにけり

牛乳屋(ちちや)さんまあ一杯と言ひながら親爺盃(さかづき)われにさしたり

人言(ひとごと)に聞けばお前はあれの恋人と聞いたがどうぢやとなじる仲人

そんなこと夢にも知らぬ知らないと尻(しり)に帆(ほ)かけて逃げ帰りけり

○

仲人は吾(わ)がゆく後(あと)を追ひかけて明日(あす)から牛乳(ぎうにう)買はぬと怒鳴れり

難題をかける家には牛乳(ぎうにう)を買ふといつても売らぬと逃げゆく

仲人は三町(さんちやう)ばかり追ひ来(きた)りおぼえてゐろとにらみののしる

仲人のとがりし声とこはき目に足もとたぢたぢ逃げ行く田(た)の畔(くろ)

この村に得意はあれど翌日は牛乳(ちち)も配らずさぼりたりけり

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