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毛布

インフォメーション
題名:毛布 著者:出口王仁三郎
ページ:80
概要: 備考:『故山の夢』p146-150 タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-10-31 17:10:26 OBC :B121808c38
─二十三四歳の頃─
物ごころさとりはじめて夜遊(よあそ)びに赤毛布(あかげつと)肩にかけて()でたり
毛布(けつと)(うら)小砂利(こじやり)()の葉の付着せるを翌朝(よくあさ)見出(みい)でて顔赤めつつ
夜遊びに毛布(けつと)かかへて出る奴は(をとこ)惣嫁(そうか)よとわらふ(とも)がき
二人()夜辻(よつじ)に人の気配しておどろき毛布(けつと)捨ててて逃げたり
小夜(さよ)()けて毛布(けつと)拾はむと潜みゆけば跡方(あとかた)もなく(ふくろふ)の鳴く
(ふくろふ)の鳴く()(われ)をあざけるごと耳にさはりて腹の立つ夜半(よは)
(ふくろふ)の鳴く()(にく)しとたたずめば木下(こした)(かげ)より細い手が出る
怪物(ばけもの)が出たかとこはごは近よれば毛布(けつと)要らぬかと()苦笑(にがわら)
箸豆(はしまめ)なあなたの心なほるまで毛布(けつと)あづかりおくと()の声
種種(いろいろ)と言ひ訳すれどあざ笑ひ首を左右にふりつつすすり泣く
この毛布(けつと)わたしが上げた真心と泣きつつ(いか)れる是非もなき夜半(よは)
赤毛布(あかげつと)しきの田舎の青年の恋にも涙のある世なりけり
秋されば村人交交(こもごも)稲の番を()()な辻の藁小屋(わらごや)になす
秋の()の長き徒然(つれづれ)(あぜ)(まめ)根こそぎにしてあぶりては食ふ
(わら)の火にあぶりし秋の畦豆(あぜまめ)ははぢけたるまま焼けて残れる
藁灰(わらばひ)の中の焦豆(こげまめ)()り出して食ふくちびるの真黒(まくろ)になりたる
(はひ)(まじ)り焼けたる豆を(くち)にして黒き唾液(だえき)をプツプと吐き出す
(いね)盗む奴は()ぬかと木を()つて野路(のみち)をめぐる秋の()寒し
稲盗む人かげ見付け大声に呼べば稲の()捨てて逃げたリ
稲盗む奴は百姓何人(なんびと)としらべ見れども手がかりさへなし
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