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牧場

インフォメーション
題名:牧場 著者:出口王仁三郎
ページ:99
概要: 備考:『故山の夢』p171-175 タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-02 11:54:16 OBC :B121808c46
─二十三四歳の頃─
園部(そのべ)より逃げて帰ればわが父は(ひたひ)凸凹(でこぼこ)眺めておどろく
園部(そのべ)より五里の夜道(よみち)を逃げ帰りほろりとなつた()(いへ)(のき)
凸凹(でこぼこ)如何(どう)して出来た直吉(なほきち)に叩かれたかと父は問ひけり
実状をあかせば父は憤慨しせがれの頭を打ちよつたと(いか)
親でさへ打たぬ頭を直吉(なほきち)()料簡(れうけん)ならぬと雄猛びなしをり
腹立てば煙管(きせる)棍棒(こんぼう)で打つ父が腹立ちまぎれにこんなといふ
ともかくも様子はあとでわかるから今日は休めと()りて()に行く
大切な息子を打つた(なほ)(やつ)もうかへさぬと父()たけびす
この夏は大旱魃(だいかんばつ)ぢや(さいはひ)稲田(いなだ)(みづ)かへさせんとよろこぶ
竪釣瓶(たてつるべ)()む途端に足場はづし井戸に(おちい)り両腕ぬきたり
その時にぬきたる(きず)が六十の今になつてもものいふ苦しさ
搾乳(さくにう)や配達出来ぬに困り果て叔父(をぢ)清六(せいろく)を呼びによこせり
叔父(しゆくふ)なる佐野(さの)清六(せいろく)いろいろと父をなだめて(われ)を連れかへる
井上の家にかへれば夫婦ともプリンと(つら)をふくらしてゐる
馬鹿らしいもう俺はいぬと言ひながら闇夜に(やかた)を駈け出しにけり
()叔父(をぢ)従兄弟(いとこ)井上直吉(なほきち)もおどろきあとより追つかけきたる
いち早く闇にまぎれて藤坂(ふぢさか)薬店(やくてん)()りてひそみゐたりき
奥の間にひそみてをれば()従兄弟(いとこ)叔父(をぢ)諸共(もろとも)藤坂(ふぢさか)(きた)
藤坂(ふぢさか)主人(あるじ)と叔父と井上と店の()()し論戦つとむる
藤坂(ふぢさか)はわたしが医者に仕上げると気焔(きえん)万丈(ばんぢやう)あたる(すべ)なし
()()かし(はなし)の結果うち解けて再び牧場に立ち帰りけり
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