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血潮

インフォメーション
題名：血潮 著者：出口王仁三郎
ページ：135
概要： 備考：『故山の夢』p252-256 タグ： データ凡例： データ最終更新日：2023-11-05 14:54:33 OBC ：B121808c61
─二十五六歳の頃─
母親の肩で風(かぜ)きりかへりたる三日目の朝(あさ)彼女のふみ来(く)る
玉章(たまづさ)を披(ひら)きて見れば京都市へ奉公にやらるとしるしありけり
京都市の呉服店にて奉公すると彼女の手紙こまごまきたる
真心の君におはせば一度位(ぐらゐ)は訪ね来(き)ませとしるしありたり
矢も楯(たて)もたまらず京都市大宮通り四条(しでう)の呉服店を訪(と)ひゆく
呉服店に入(い)りて品物調べつつ待てども彼女のおもかげもなし
上女中(かみぢよちう)なりしがためか店の間(ま)に何時(いつ)まで待てど彼女は見えず
店員に顔のぞかるるじれつたさ羽織地一反(いつたん)買ひてかへれり
○
丹波より六里の雪の道ゆきてかへる夕(ゆふ)べのさびしきこころ
彼女等(ら)のこと思はじと雄心(をごころ)に諦(あきら)めみれどもわすらえなくに
待てど待てど来(き)まさぬ君(きみ)ぞ恨(うら)めしと暫(しばら)くたちて彼女の文(ふみ)来(く)る
真(ま)ごころの文(ふみ)見て胸の高鳴りのやまぬくるしさ又京(きやう)に上(のぼ)る
呉服屋の店をふたたび訪(と)ひゆきて待てど彼女の声だも聞かず
二時間余(よ)店に待ちしがあきらめてまた袴地(はかまぢ)を買ひてかへりぬ
それ以後は彼女の方(はう)より文(ふみ)も来(こ)ず吾(われ)もゆかなく年(とし)ふりにけり
○
青春の血に燃えつつも行末をおもへば恋の鋒先(ほこさき)ゆるみぬ［※『故山の夢』では「鋒」ではなく「鉾」。］
独り立つ身にしあらねば恋心(こひごころ)おこすべきかはと諦(あきら)めてけり
時折に彼女のうはさきくごとにあきらめし胸ふたたび高鳴る
若き日の血潮(ちしほ)燃えたつ秋の日に紅葉狩(もみぢがり)してこころなぐさむ
忘れむと思(も)へどときどき夢に見る彼女の姿に悩みし若き日
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