霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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親子

インフォメーション
題名:親子 著者:出口王仁三郎
ページ:157
概要: 備考:『故山の夢』p300-304 タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-06 15:24:47 OBC :B121808c71
─二十六七歳の頃─
夕暮(ゆふぐれ)()が住む(やかた)にたづね()しをみなをおくる真夜中の道
小幡橋(をばたばし)わたるころより雪降りて吹く風さむく家路にともなふ
約二里の彼女がやかたへ雪の道高下駄(たかげた)はきておくり着きたり
中村の彼女の父はおどろきてお前は何処(どこ)馬骨(ばこつ)かと()
侠客(けふかく)の名を売つてゐた多田亀(ただかめ)は一人むすめの彼女の父なる
多田亀(ただかめ)()が首筋を(おさ)へつけこれでもどうだと拳骨ふりあぐ
()(いへ)の一人娘を貴様()の自由にさせぬと声高(こわだか)に呶鳴る
僕ばかり悪いのではないお互ひよと首(おさ)へられつ言ひかへしたり
ふりあげたその拳骨を如何(どう)するかお前の可愛い娘の男よ
多田亀(ただかめ)はプツと吹き出し手をはなしお前は度胸が太いとほめる
俺とこの養子になるならこの娘やつてもよいと微笑みて言ふ
百日目に養家(やうか)を出されたこの男これでもお気に()るかと(われ)云ふ
そんなこととくの昔に聞いてゐる俺は娘のこころ次第だ
()(をんな)両手をついてお父さん貰つておくれよ一生の願ひだ
これからは侠客(けふかく)の道(をし)へてやるなどとそろそろ喧嘩の(はなし)
(さかづき)を片手ににこにこ多田亀(ただかめ)は穴のあくほどわが顔をみる
一寸(ちよつと)気の利いた男よ侠客(けふかく)になればかならず名を挙げるだらう
多田亀(ただかめ)といへば丹波の山中(やまなか)で押しも押されもせない侠客(けふかく)
背はたかく身体(からだ)はふとく(ちから)強く一寸(ちよつと)見てさへおそろしき男
鬼とでも組みつくやうな侠客(けふかく)も娘の愛におぼれしとみゆ
やがてもう()があけるから穴太(あなを)まで送つてあげよ彼女に父いふ
親と子の縁を結びの(さかづき)を重ねてひよろひよろ雪道(ゆきみち)かへる
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