霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三八章 歓天(くわんてん)喜地(きち)〔八八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻 篇:第5篇 神の慈愛 よみ(新仮名遣い):かみのじあい
章:第38章 歓天喜地 よみ(新仮名遣い):かんてんきち 通し章番号:88
口述日:1921(大正10)年11月06日(旧10月07日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年1月27日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
清照彦は最愛の妻に死に別れ、両親を討滅することになった。荒熊彦夫妻はかろうじて逃れたが、清照彦は追撃せず、両親が無事に落ち延びて、どこかで隠棲することを願った。
しかし風の便りに、両親はローマで捉えられ、殺されたという噂を耳にした。清照彦は悲嘆のあまり自刃しようとしたが、天空から女神が現れて、しばらく隠忍するようにと諭し、必ず妻と両親に再会させよう、約束した。
清照彦は合点がいかなかったが、自分が死んでしまっては両親と妻の霊を慰める者がいなくなってしまうと、思いとどまった。
清照彦は悲哀のうちにも暮らしていたが、あるとき十曜の神旗が立った鳥船が数十も、高白山めがけて下り来た。鳥船からは言霊別命らが現れ、稚桜姫命の神使として清照彦の忠孝を賞するためにやってきたのだ、と来意を告げた。
清照彦が不審の念を抱きつつも来意を謝すると、鳥船から降ろした輿から現れたのは、父母の荒熊彦・荒熊姫、そして自害したはずの妻・末世姫であった。清照彦は思いもかけぬ親子夫婦の対面にうれし涙にくれた。
高白山は元のとおり荒熊彦夫妻が治めることになり、清照彦は長高山を治めるよう神命が下った。
末世姫は自害したと見えたが、その貞節に感じた天使によって身代わりに助けられ、ずっと言霊別命の側に仕えていたのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-11-13 16:55:12 OBC :rm0238
愛善世界社版:189頁 八幡書店版:第1輯 226頁 修補版: 校定版:193頁 普及版:89頁 初版: ページ備考:
001 清照彦(きよてるひこ)最愛(さいあい)(つま)()(わか)れ、002(あつ)くこれを(はうむ)るのいとまもなく、003言霊別(ことたまわけの)(みこと)進退(のつぴき)ならぬ厳命(げんめい)(せつ)し、004ただちに高白山(かうはくざん)(むか)ひ、005呑剣(どんけん)断腸(だんちやう)(おも)ひをなして、006骨肉(こつにく)父母(ふぼ)両親(りやうしん)討滅(たうめつ)するのやむなき窮境(きうきやう)にたちいたつた。007されど神命(しんめい)()するに(よし)なく、008大義(たいぎ)(おも)んじ、009ここに()をもつて()(あら)悲惨(ひさん)なる戦闘(せんとう)開始(かいし)した。
010 荒熊彦(あらくまひこ)011荒熊姫(あらくまひめ)一方(いつぱう)血路(けつろ)(ひら)(から)うじて(まぬが)るることを()た。012この(とき)清照彦(きよてるひこ)は、013ただちに追撃(つゐげき)せばこれを(ほろ)ぼすこと(じつ)容易(ようい)であつた。014されど(てき)といひながら、015肉身(にくしん)(じやう)にひかされ、016わざとこれを見逃(みのが)し、017(こころ)(なか)にその(かげ)(をが)みつつ、018父母(ふぼ)前途(ぜんと)気遣(きづか)ひ、019いづれへなりとも両親(りやうしん)(かく)れて(やす)余生(よせい)(おく)らむことを祈願(きぐわん)した。020親子(おやこ)(じやう)としてはさもあるべきことである。
021 荒熊彦(あらくまひこ)は、022散軍(さんぐん)(あつ)めて(なほ)()りずまに羅馬城(ローマじやう)(すす)み、023決死(けつし)覚悟(かくご)をもつて(たたか)ふた。024されど天運(てんうん)つたなき荒熊彦(あらくまひこ)(ちから)()き、025つひに大島彦(おほしまひこ)のために捕虜(ほりよ)となり、026夫婦(ふうふ)ともに(ひそか)幽閉(いうへい)され、027面白(おもしろ)からぬ(いく)ばくかの月日(つきひ)(おく)つた。
028 清照彦(きよてるひこ)は、029(かぜ)共響(むたひび)きに両親(りやうしん)羅馬(ローマ)(やぶ)れ、030幽閉(いうへい)され、031(くる)しみつつあることを(つた)()きて、032(こころ)(こころ)ならず、033煩悶(はんもん)苦悩(くなう)しつつ面白(おもしろ)からぬ月日(つきひ)(さび)しく(おく)つてゐた。034清照彦(きよてるひこ)忠義(ちうぎ)(あつ)く、035孝道(かうどう)(ふか)神司(かみ)なれば、036その心中(しんちゆう)煩悶(はんもん)一入(ひとしほ)(さつ)するに(あま)りありといふべし。037清照彦(きよてるひこ)(あめ)(あした)(かぜ)(ゆうべ)(そら)(あふ)いで吐息(といき)()らし、038われ両親(りやうしん)憂目(うきめ)()ながら坐視(ざし)するに(しの)びず、039これを(すく)はむとすれば主命(しゆめい)(そむ)き、040大逆(たいぎやく)(つみ)(かさ)ぬるにいたるべし。041あゝ両親(りやうしん)といひ(つま)といひ、042(いま)(ある)ひは幽界(いうかい)に、043あるひは敵城(てきじやう)(とら)はれ、044()たるもの如何(いか)(こころ)鬼畜(きちく)()すとも(しの)(がた)し、045いつそ自刃(じじん)()げ、046もつて忠孝(ちうかう)大義(たいぎ)(まつた)うせむ、047決心(けつしん)せる(をり)しも、048また飛報(ひはう)あり、
049荒熊彦(あらくまひこ)夫妻(ふさい)は、050羅馬(ローマ)において大島彦(おほしまひこ)のために(ころ)されたり』
051と。052これを()きたる清照彦(きよてるひこ)()(たて)もたまらず、053(われ)山海(さんかい)洪恩(こうおん)ある(こひ)しき両親(りやうしん)(わか)(つま)(わか)れ、054()きて(なん)(たの)しみもなし、055自刃(じじん)するはこの(とき)なりと、056(てん)(むか)つて吾身(わがみ)不遇(ふぐう)(なげ)号泣(がうきふ)し、057短刀(たんたう)逆手(さかて)()双肌(もろはだ)()いで覚悟(かくご)をきはむるをりしも、058天空(てんくう)より(ひかり)(つよ)宝玉(ほうぎよく)眼前(がんぜん)落下(らくか)するよと()えしが、059たちまちその光玉(くわうぎよく)破裂(はれつ)して、060(なか)より(うるは)しく(やさ)しき女神(めがみ)(あら)はれたまひ、
061(われ)天極(てんきよく)紫微宮(しびきう)より(きた)れる天使(てんし)なり。062天津(あまつ)(かみ)(なんぢ)忠孝(ちうかう)両全(りやうぜん)至誠(しせい)(あはれ)みたまひ、063ここに(なんぢ)(すく)ふべく(われ)(くだ)したまへり。064(なんぢ)しばらく隠忍(いんにん)して(とき)()て、065(なんぢ)がもつとも敬愛(けいあい)する両親(りやうしん)および(つま)再会(さいくわい)せしめむ。066(ゆめ)(うたが)ふなかれ』
067との言葉(ことば)(のこ)して、068(ふたた)鮮光(せんくわう)まばゆき(たま)()天上(てんじやう)にその(かげ)(かく)した。069(あと)清照彦(きよてるひこ)(ゆめ)夢見(ゆめみ)心地(ここち)して、070合点(がつてん)のゆかぬ(いま)天女(てんによ)言葉(ことば)071われは憂苦(いうく)のあまり(つひ)(きやう)せるには(あら)ざるか。072あるひは父母(ふぼ)073(つま)(おも)ふのあまり、074一念(いちねん)()つて幻影(げんえい)(みと)めしに(あら)ずやと、075みづから(うたが)ふのであつた。076されどどこやら(こころ)(そこ)に、077一道(いちだう)光明(くわうみやう)(かがや)くのを(みと)めた。078(なに)はともあれ、079(われ)ここに自刃(じじん)せば、080たれか両親(りやうしん)および(つま)(れい)(なぐさ)むるものあらむ、081(こころ)()(なほ)し、082時節(じせつ)覚束(おぼつか)なくも()つことに決心(けつしん)した。
083 ()つこと幾星霜(いくせいさう)084(やま)(みどり)(つつ)まれ、085諸々(もろもろ)(とり)(はる)(うた)ひ、086(うるは)しき(はな)芳香(はうかう)(はな)ち、087所狭(ところせま)きまで()()ち、088神司(かみがみ)はその光景(くわうけい)()(よろこ)(いさ)み、089あたかも天国(てんごく)(はる)()へるがごとく()(くる)うてゐた。090されど清照彦(きよてるひこ)(こころ)(そら)はますます(くも)り、091(はな)()けども、092(とり)(うた)へども、093諸神司(しよしん)(いさ)(あそ)べども、094自分(じぶん)()つては()るもの()くもの、095すべてが(われ)(のろ)ふもののごとく、096悲哀(ひあい)(なみだ)はかはく(すべ)なく、097()()憂愁(いうしう)(ねん)()すばかりであつた。
098 清照彦(きよてるひこ)(てん)一方(いつぱう)(なが)め、099長大(ちやうだい)歎息(たんそく)()らす(をり)しも、100天空(てんくう)(たか)数十(すうじふ)鳥船(とりふね)(つばさ)(つら)高白山(かうはくざん)めがけて(くだ)(きた)るあり、101いづれの鳥船(とりふね)にもみな十曜(とえう)神旗(しんき)()てられてあつた。102清照彦(きよてるひこ)は、103かかる(なげ)きの(さい)104(また)もや竜宮城(りゆうぐうじやう)よりいかなる厳命(げんめい)(くだ)りしならむかと、105(こころ)千々(ちぢ)(くだ)きつつ(おも)(かしら)(いた)めた。
106 鳥船(とりふね)はたちまち清照彦(きよてるひこ)面前(めんぜん)(ちか)(くだ)(きた)りて、107(うち)より言霊別(ことたまわけの)(みこと)108元照彦(もとてるひこ)109梅若彦(うめわかひこ)英気(えいき)()ちたる顔色(がんしよく)にて(あら)はれ(きた)り、110言霊別(ことたまわけの)(みこと)第一(だいいち)(すす)んで清照彦(きよてるひこ)にむかひ慇懃(いんぎん)(れい)()べ、111かつ(かたち)(あらた)正座(しやうざ)(なほ)り、
112『われ(いま)113稚桜姫(わかざくらひめの)(みこと)神使(しんし)として、114当城(たうじやう)(きた)りし理由(りいう)は、115(なんぢ)賞賜(しやうし)のためなり』
116()ひをはつて、117数多(あまた)従臣(じゆうしん)(めい)善美(ぜんび)(つく)した御輿(みこし)鳥船(とりふね)よりかつぎおろさしめ、118清照彦(きよてるひこ)(まへ)()ゑ、
119(なんぢ)忠孝(ちうかう)(まつた)うし、120かつ至誠(しせい)をよく天地(てんち)貫徹(くわんてつ)したり。121国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)(ふか)くこれを(よみ)して(なんぢ)珍宝(ちんぽう)授与(じゆよ)(たま)ひたり。122(つつし)んで拝受(はいじゆ)されよ』
123莞爾(くわんじ)として(ひか)へてをられた。124清照彦(きよてるひこ)不審(ふしん)(ねん)ますます()れず、125とも(かく)もその厚意(こうい)感謝(かんしや)した。126前方(ぜんぱう)輿(こし)よりは顔色(がんしよく)(うるは)しく勇気(ゆうき)凛々(りんりん)たる男神(をとこがみ)(あら)はれた。127つらつら()れば(おも)ひがけなきわが(ちち)荒熊彦(あらくまひこ)であつた。128第二(だいに)輿(こし)(ひら)いて(はは)荒熊姫(あらくまひめ)(あら)はれた。129第三(だいさん)輿(こし)よりは自殺(じさつ)せしと(おも)ひし最愛(さいあい)(つま)末世姫(すゑよひめ)(あら)はれ、130ただちに清照彦(きよてるひこ)()()つてうれし()きに()く。131清照彦(きよてるひこ)(ゆめ)夢見(ゆめみ)心地(ここち)して(なん)言葉(ことば)()くばかり、132ここに()(にん)一度(いちど)(こゑ)(はな)つて(うれ)(なみだ)(とき)(うつ)した。133親子(おやこ)夫婦(ふうふ)目出(めで)たき対面(たいめん)に、134高白山(かうはくざん)()(くさ)(そら)景色(けしき)も、135一入(ひとしほ)(ひかり)()へるやうであつた。
136 ここに言霊別(ことたまわけの)(みこと)懐中(くわいちゆう)より一書(いつしよ)取出(とりだ)し、137(こゑ)(すず)しく神文(しんもん)()()かした。138その意味(いみ)は、
139長高山(ちやうかうざん)(なんぢ)荒熊彦(あらくまひこ)140荒熊姫(あらくまひめ)これを主宰(しゆさい)せよ。141また高白山(かうはくざん)清照彦(きよてるひこ)永遠(ゑいゑん)にこれを主宰(しゆさい)せよ』
142との神勅(しんちよく)である。
143附記
144末世姫(すゑよひめ)長高山(ちやうかうざん)城中(じやうちう)において自刃(じじん)せむとしたるとき、145たちまちその貞節(ていせつ)(かん)じ、146天使(てんし)(きた)りて身代(みがは)りとなり、147末世姫(すゑよひめ)無事(ぶじ)言霊別(ことたまわけの)(みこと)(そば)(ちか)(つか)へてゐた。
148大正一〇・一一・六 旧一〇・七 加藤明子録)
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