霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 天祥山(てんしやうざん)〔八四〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第4篇 海から山へ よみ(新仮名遣い):うみからやまへ
章:第18章 天祥山 よみ(新仮名遣い):てんしょうざん 通し章番号:840
口述日:1922(大正11)年08月13日(旧06月21日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
マールとボールはヨブに諭されて己の誤りをただし、高姫一行の道案内をして天祥山のハンドの滝まで道案内をすることになった。
ナイアガラに比すべき大瀑布であるハンドの滝の音は、十四五町前からも聞こえてきた。天祥山から吹き降ろす涼風に、滝に近づくにつれて熱帯のこの地でも肌寒くなってきた。
マールはこの山は猛獣が多かったが、町民たちが猛獣の害を除くべく三五教に祈願を始め、それがために二年ほど前から猛獣はだいぶ少なくなったと話した。ただ数は少ないが、モールバンドという怪物が居るという事を伝えて一行に気をつけた。
大瀑布に近づくと、飛沫はあたりに散って互いの姿もはっきり見えないほどになってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-01-06 17:05:47 OBC :rm2918
愛善世界社版:263頁 八幡書店版:第5輯 561頁 修補版: 校定版:272頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001大海中(おほわだなか)(うか)びたる
002カーリン(たう)()(たか)
003無頼(ぶらい)悪漢(あくかん)マール、ボールは
004(しま)男女(なんによ)(きら)はれて
005詮術(せんすべ)もなき(かな)しさに
006夜陰(やいん)(じやう)じヨブの(いへ)
007(しの)びて(たから)掠奪(りやくだつ)
008(やみ)(まぎ)れて逃出(にげいだ)
009天網(てんまう)恢々(くわいくわい)()なれ(ども)
010()れぬ(ため)しに()れずして
011逃行(にげゆ)姿(すがた)門口(かどぐち)
012(この)()のヨブに見付(みつ)けられ
013(まへ)はマール、ボールかと
014(こゑ)かけられて恐縮(きようしゆく)
015(ここ)にグヅグヅしてゐたら
016(しま)規則(きそく)()らされて
017明日(あす)(かなら)締首(しめくび)
018所刑(しおき)()ふは()れた(こと)
019()げるに()かずと磯端(いそばた)
020小舟(こぶね)(ぬす)んで両人(りやうにん)
021波立(なみた)(さわ)海原(うなばら)
022櫓櫂(ろかい)(あやつ)生命(いのち)()
023(きた)(きた)へと()いで()
024(にはか)()()暴風(ばうふう)
025小舟(こぶね)()()()(ごと)
026(ここ)(あやふ)(たま)()
027やつと(いのち)(ひろ)ひつつ
028ゼムの(みなと)漂着(へうちやく)
029(あと)()(かへ)(なが)むれば
030(ただ)一時(いつとき)出来(でき)(ごころ)
031(おか)した(つみ)(おそ)ろしさ
032(あと)より追手(おつて)のかかるよな
033不安(ふあん)(くも)(つつ)まれて
034天地(てんち)(かみ)罪悪(ざいあく)
035(わび)をなさむと天祥(てんしやう)
036(やま)にかかれる大瀑布(だいばくふ)
037ハンドの(たき)()()たせ
038七日(なぬか)七夜(ななや)荒行(あらげふ)
039(つと)むる(をり)しも(おそ)ろしや
040モールバンドの怪獣(くわいじう)
041(おも)はずここへのそのそと
042(あら)はれ(きた)りて両人(りやうにん)
043尻尾(しつぽ)(さき)鋭利(えいり)なる
044(けん)をふり()てふりすごき
045二人(ふたり)(むか)つて()(きた)
046進退(しんたい)(ここ)(きは)まりし
047マール、ボールは(むね)()
048(てん)をば(はい)()(はい)
049(ちから)(かぎ)りに太祝詞(ふとのりと)
050(あま)数歌(かずうた)(ひと)(ふた)()
051()()()(なな)()
052(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)
053(こころ)(くだ)いて(いの)()
054モールバンドは容赦(ようしや)なく
055尻尾(しつぽ)(ちから)集中(しふちう)
056二人(ふたり)()たむとする(とこ)
057(にはか)(きこ)ゆる宣伝歌(せんでんか)
058次第(しだい)次第(しだい)近付(ちかづ)けば
059流石(さすが)獰猛(だうまう)怪獣(くわいじう)
060次第(しだい)次第(しだい)萎縮(ゐしゆく)して
061(ほこ)をば(をさ)()(ちぢ)
062(かしら)をさげてノタノタと
063あたりの(はやし)()(かく)
064後白雲(あとしらくも)となりにけり。
065マール、ボールの両人(りやうにん)
066九死(きうし)一生(いつしやう)(この)場合(ばあひ)
067(たす)(たま)ひし生神(いきがみ)
068何神(なにがみ)なるぞと(ちか)よりて
069両手(りやうて)(あは)(ひざまづ)
070(なみだ)(とも)(うかが)へば
071三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
072鷹依姫(たかよりひめ)竜国別(たつくにわけ)
073(かみ)(つかさ)(はじ)めとし
074テーリスタンやカーリンス
075()(にん)(うづ)神司(かむづかさ)
076(ここ)二人(ふたり)平伏(へいふく)
077救命(きうめい)謝恩(しやおん)()()べて
078鷹依姫(たかよりひめ)弟子(でし)となり
079(この)滝水(たきみづ)()(ひた)
080(あさ)(ゆふ)なに大神(おほかみ)
081(いの)りてここに(まう)()
082数多(あまた)(ひと)(すく)ひつつ
083(たのし)月日(つきひ)(おく)りしが
084いよいよ今日(けふ)(たま)()
085(いのち)(ひろ)ひし一年目(いちねんめ)
086(いのち)(おや)恩人(おんじん)
087(しへた)げまつりし高姫(たかひめ)
088ここに待受(まちう)鷹依姫(たかよりひめ)
089(のり)(つかさ)(あだ)()
090万分一(まんぶんいち)恩報(おんはう)
091(つか)へまつりて天地(あめつち)
092(かみ)御前(みまへ)赤誠(せきせい)
093(あら)はし()れむと()ちゐたる
094(とき)しもあれや高姫(たかひめ)
095常彦(つねひこ)春彦(はるひこ)(はじ)めとし
096ヨブを()きつれ悠々(いういう)
097天祥山(てんしやうざん)(ゆび)さして
098(すす)んで(きた)四人(よにん)()
099マール、ボールの両人(りやうにん)
100これこそ的切(てきき)高姫(たかひめ)
101九寸(くすん)五分(ごぶ)をば振翳(ふりかざ)
102(みぎ)(ひだり)()きつける
103流石(さすが)高姫(たかひめ)()をかはし
104飛鳥(ひてう)(ごと)()退()けば
105カーリン(たう)のヨブさまは
106二人(ふたり)(なか)()つて()
107まづまづ()てよ両人(りやうにん)
108(まへ)はマール、ボールの両人(りやうにん)
109如何(どう)してお(まへ)はここへ()
110様子(やうす)()かせと()ばはれば
111ヨブと()くより両人(りやうにん)
112(おどろ)周章(あわて)()をつかへ
113(こころ)(おに)()められて
114あやまり()るぞ健気(けなげ)なれ
115あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
116御霊(みたま)(さち)はひましまして
117因縁者(いんねんもの)寄合(よりあひ)
118(この)街道(かいだう)(かみ)(みち)
119うまらつばら()きあかし
120鷹依姫(たかよりひめ)高姫(たかひめ)
121(ゆき)より(きよ)(むね)(うち)
122(かがや)(わた)るぞ(たふと)けれ
123あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
124御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
125 マール、126ボールの両人(りやうにん)は、127高姫(たかひめ)128ヨブの訓戒(くんかい)()り、129釈然(しやくぜん)として(わが)(かんが)への(あやま)れることを(さと)り、130天祥山(てんしやうざん)のハンドの(たき)(まで)案内者(あんないしや)として(すす)()(こと)となつた。
131 (ここ)一行(いつかう)(ろく)(にん)途々(みちみち)(いさ)ましく宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、132路傍(ろばう)大蜥蜴(おほとかげ)(あぶ)(はち)などを脅威(けふゐ)しつつ、133(はや)くも天祥山(てんしやうざん)山口(やまぐち)(さし)かかつた。134ハンドの(たき)(まで)は、135まだ十四五(じふしご)(ちやう)距離(きより)がある。136され(ども)ナイヤガラの瀑布(ばくふ)()いでの名高(なだか)大滝(おほたき)137淙々(そうそう)たる(たき)(おと)()()(ごと)(きこ)えて()た。138油蝉(あぶらぜみ)(ひぐらし)()(こゑ)は、139(みみ)(ろふ)せむ(ばか)()()てる。140流石(さすが)熱国(ねつこく)のブラジルの(この)地域(ちゐき)141二三(にさん)()(あひだ)天祥山(てんしやうざん)より()(おろ)涼風(りやうふう)に、142(あたか)内地(ないち)(あき)(ごと)く、143(たき)近付(ちかづ)くに(したが)肌寒(はださむ)く、144()さへガチガチと()()して()た。
145常彦(つねひこ)随分(ずゐぶん)(すず)しい(ところ)ですなア。146高砂島(たかさごじま)(わた)つて以来(いらい)147斯様(かやう)(すず)しい()()うた(こと)(はじ)めてです。148(この)(やま)には種々(いろいろ)(おそ)ろしい猛獣(まうじう)()んでゐると()ふことを、149船中(せんちう)(きやく)より()きましたが、150(じつ)物凄(ものすご)光景(くわうけい)ぢやありませぬか』
151マール『(この)(やま)には獅子(しし)152山犬(やまいぬ)153(とら)154(くま)などの猛獣(まうじう)出没(しゆつぼつ)(いた)しまして、155()()(さと)(あら)はれ(きた)り、156年老(としよ)りや子供(こども)(がい)(あた)へますから、157吾々(われわれ)三五教(あななひけう)(かみ)(さま)(この)瀑布(ばくふ)(かたはら)にお(まつ)りいたし、158朝夕(あさゆふ)人民(じんみん)安全(あんぜん)(ため)に、159()祈念(きねん)をこらして()ります。160(その)()神徳(かげ)にや(この)(ごろ)猛獣(まうじう)(かげ)余程(よほど)()つて()ました。161()(ねん)以前(いぜん)(くら)ぶれば、162二十分(にじふぶん)(いち)(くらゐ)より()らなくなりました。163そしてモウ(ひと)(おそ)ろしいモールバンドと()怪獣(くわいじう)時々(ときどき)やつて()ます。164(その)(けだもの)(ざう)十匹(じつぴき)()せた(やう)胴体(どうたい)をし、165水掻(みづか)きのある(つめ)(なが)四本足(しほんあし)で、166(わに)(やう)尻尾(しつぽ)(さき)鋭利(えいり)(けん)がついてゐて、167すべての猛獣(まうじう)(その)()でしばき(たふ)し、168()つて()(おそ)ろしき動物(どうぶつ)()ります。169(この)(ごろ)猛獣(まうじう)(すくな)くなつたので、170モールバンドも滅多(めつた)(まゐ)りませぬが、171()しも(かれ)()()まつたが最後(さいご)172人間(にんげん)だろが、173(けだもの)だらうが、174容赦(ようしや)なく(かた)つぱしから()(たた)(ころ)し、175(みな)()つて(しま)うと()(おそ)ろしい(やつ)ですから随分(ずゐぶん)()()けねばなりますまい。176時々(ときどき)(あつ)くなるとハンドの(たき)(よこ)たはつて滝水(たきみづ)()び、177グウグウと(いびき)をかいて()てゐることがあります。178(わたくし)昨年来(さくねんらい)四五回(しごくわい)()つけました。179さういふ(とき)にはソーツと(あし)(しの)ばせて(ちか)よらない(はう)得策(とくさく)です。180鷹依姫(たかよりひめ)宣伝使(せんでんし)(やう)()神徳(しんとく)があれば言霊(ことたま)(もつ)()()らす(こと)出来(でき)ますが、181到底(たうてい)吾々(われわれ)(ごと)神徳(しんとく)のなき(もの)近寄(ちかよ)らぬのが一番(いちばん)ですよ。182(しか)今日(けふ)(わたくし)があの(たき)()いて鷹依姫(たかよりひめ)さまに(いのち)(ひろ)つて(もら)つた記念日(きねんび)ですから、183これからあの(たき)(した)祭典(さいてん)(おこな)ひ、184天地(てんち)大神(おほかみ)(さま)()(れい)申上(まをしあ)げねばなりませぬ。185(さひは)ひあなた(がた)宣伝使(せんでんし)()らせられますから、186(ひと)(この)祭典(さいてん)賑々(にぎにぎ)しく()手伝(てつだ)(くだ)さいませぬか』
187高姫(たかひめ)『それは(なに)より好都合(かうつがふ)です』
188()(なが)(はや)くも(たき)側近(そばちか)辿(たど)()いた。
189 大瀑布(だいばくふ)飛沫(ひまつ)はあたりに()つて(きり)(ごと)濛々(もうもう)とそこらの樹木(じゆもく)(つつ)んでゐる。190(たがひ)姿(すがた)さへもハツキリ()えぬ(まで)(ふか)(きり)()ちこめて()た。
191大正一一・八・一三 旧六・二一 松村真澄録)
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