霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 山河(さんが)不尽(ふじん)〔六六五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻 篇:第1篇 宇都山郷 よみ(新仮名遣い):うづやまごう
章:第3章 山河不尽 よみ(新仮名遣い):さんがふじん 通し章番号:665
口述日:1922(大正11)年05月12日(旧04月16日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年3月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
留公は友彦の処置を怒りながら、畑の芋を踏み潰している。そこへ天の真浦がやってきて、留公を咎めた。
そこへ、先ほどの畑の主がやってきて、留公の仕業を見ると、さらに怒って鍬を留公に振り下ろした。留公がよけると、鍬は天の真浦の宣伝使の足の小指を切り落としてしまった。真浦はとっさに指をひろってくっつけたが、逆さまについてしまった。これが「真浦」という名の由来だという。
男は平伏して真浦に詫びるが、なおも留公がからかうので、怒ってまた留公に鍬を振りかざした。
留公とその男・田吾作は芋争いをしているが、天の真浦は、いずれにしても神様の御魂が宿っている万物一切を粗末にしてはならない、と二人を諭す。留公は翻然として今までの罪を田吾作に詫び、二人は和解した。
天の真浦はバラモン教を言向け和そうと村を目指すが、留公は、バラモン教の宣伝使・友彦が逗留しているのは自分の館であるが、深い溝が掘ってあるので注意するように、と宣伝使に伝える。
留公は、最初は立派な宣伝使だと思って村に留めたのだが、友彦の言行が一致しないこと甚だしく、まるで主人のように我が者顔に振舞っている、と窮状を真浦に訴えた。
留公と田吾作は、三五教に改心することなり、三人は友彦が逗留する留公の屋敷に乗り込んだ。留公と友彦は激しく言い争うが、友彦は最後は言霊によって留公らを撃退しようと、宣伝歌を歌いだした。
それに対抗して、留公も口から出任せの宣伝歌を歌って返す。しかしその様子のおかしさに、友彦も田吾作も笑い転げた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-04-20 18:41:22 OBC :rm2003
愛善世界社版:54頁 八幡書店版:第4輯 168頁 修補版: 校定版:56頁 普及版:24頁 初版: ページ備考:
001 留公(とめこう)はドンドンと地響(ぢひび)きさせ(なが)性凝(しやうこ)りもなく芋畑(いもばたけ)赤子(あかご)()丁寧(ていねい)(ふたた)蹂躙(ふみにじ)り、
002留公『エイ、003(この)(いも)野郎(やらう)004(おれ)影響(えいきやう)(およ)ぼしやがつた、005(いも)だつて油断(ゆだん)のならぬものだ、006エヽもう()うなる(うへ)()いも007(わる)いも008(こは)いも009可愛(かはい)いも010(むつ)かしいも011(うれ)いも012(かな)いもあつたものかい、013三度芋(さんどいも)野郎(やらう)014何処(どこ)までも六本(ろつぽん)(ゆび)蹂躙(じうりん)してやらう。015アタいもいもしい』
016(あし)(ちから)()れて(こころ)ゆく(ばか)()(くだ)いて()る。017そこへ(はし)つて()たのは真浦(まうら)宣伝使(せんでんし)018(この)(てい)()て、
019真浦(まうら)(とめ)さん、020(なに)をして()なさる』
021留公(とめこう)(これ)はしたり、022大変(たいへん)(とこ)発見(はつけん)されました。023(しか)何卒(どうぞ)もう宣伝歌(せんでんか)()けは(ゆる)して(くだ)さい、024(あたま)(かず)(いく)つにも分家(ぶんけ)する(やう)心持(こころもち)がしますから……』
025真浦(まうら)『よしよし(いや)とあれば沈黙(ちんもく)しませう、026(しか)(いま)(まへ)()んで()るのは(いも)ではないか』
027留公(とめこう)『ハイ、028物価(ぶつか)騰貴(とうき)今日(こんにち)029()沢山(たくさん)赤子(あかご)()えては、030第一(だいいち)国民(こくみん)食糧(しよくりやう)(こま)ります。031三度芋(さんどいも)()つて(ねん)三度(さんど)()()(やつ)ぢや、032産児(さんじ)制限(せいげん)()めにサンガー夫人(ふじん)がやつて()て、033(いま)此処(ここ)大活動(だいくわつどう)開始(かいし)した(とこ)ですよ。034何卒(どうぞ)大目(おほめ)()上陸(じやうりく)拒否(きよひ)せない(やう)(ねが)ひます、035アハヽヽヽ』
036真浦(まうら)『そんな(こと)しては(こま)るぢやないか、037天津(あまつ)御空(みそら)(ほし)(かず)(ほど)(ひと)()やし、038(はま)真砂(まさご)(かず)(ほど)赤子(あかご)()まねばならぬ(かみ)(さま)のお(みち)ぢや、039生成(せいせい)化育(くわいく)大道(だいだう)無視(むし)してその(やう)乱暴(らんばう)(こと)をして()いものか』
040留公(とめこう)(わたくし)(これ)国家(こくか)経済(けいざい)(じやう)から()ても、041人類共存(じんるゐきようぞん)(じやう)学理(がくり)から(かんが)へても(もつと)(かみ)意志(いし)(てき)した良法(りやうはふ)だと確信(かくしん)して()ます。042何卒(なにとぞ)(わたくし)演説(えんぜつ)(ひと)()いて()なさい、043()徹底(てつてい)して()ますよ』
044真浦(まうら)演説(えんぜつ)中止(ちゆうし)045(いな)絶対(ぜつたい)解散(かいさん)(めい)じます』
046 (かか)(ところ)以前(いぜん)(をとこ)047(くは)(かた)(なが)怒髪(どはつ)(てん)()いて(はし)(きた)り、
048(をとこ)(田吾作)『こらこら(また)しても大切(だいじ)大切(だいじ)赤子(あかご)(ころ)すのか』
049留公(とめこう)『オヽ、050バラモン(けう)取換(とつか)へこして(まで)051赤子(あかご)征伐(せいばつ)する覚悟(かくご)をきめたのだから、052(なん)()つても中止(ちうし)はせない。053マア(これ)前世(ぜんせ)因縁(いんねん)だと(あきら)めて鄭重(ていちよう)(とむら)ひでもしてやるが()からう』
054 (をとこ)(いか)心頭(しんとう)(たつ)(くは)真向(まつかう)(かざ)留公(とめこう)(あたま)目蒐(めが)けて()()ろした。055留公(とめこう)はヒラリと(たい)(かは)した(はずみ)に、056(くは)()れて真浦(まうら)(あし)小指(こゆび)()(おと)した。057真浦(まうら)(かほ)(しか)()ちた(ゆび)手早(てばや)(ひろ)つて傷口(きずぐち)にあてた。058(ゆび)(その)(まま)密着(みつちやく)した。059(あま)(あは)てたと()えて小指(こゆび)(さき)裏表(うらおもて)()けて仕舞(しま)つた。060(これ)(まで)真浦(まうら)(たい)守彦(もりひこ)()()()いて()たが(ここ)(はじ)めて真浦(まうら)()()出来(でき)たのである。
061(をとこ)(田吾作)(これ)(これ)失礼(しつれい)(こと)(いた)しました、062何卒(どうぞ)(ゆる)して(くだ)さいませ。063勿体(もつたい)ない、064宣伝使(せんでんし)(ゆび)()るなんて……(わたくし)如何(どう)して(この)(つみ)(あがな)うたら(よろ)しいでせう、065神界(しんかい)(たい)して取返(とりかへ)しのならん不調法(ぶてうはふ)(いた)しました』
066()(しづ)む。
067留公(とめこう)世界(せかい)(たす)ける生神(いきがみ)宣伝使(せんでんし)(さま)だ。068(ゆび)一本(いつぽん)()半本(はんぼん)(くらゐ)()れたとて、069そんな(こと)(こた)へる(やう)では宣伝使(せんでんし)ぢやない。070それよりも貴様(きさま)(とこ)赤子(あかご)生命(いのち)071随分(ずゐぶん)無残(むざん)(こと)になつたものだのう』
072(をとこ)(田吾作)(これ)だけ丹精(たんせい)()らして(つく)つた芋種(いもだね)(だい)なしにして()(なが)ら、073まだ業託(ごふたく)(ほざ)きやがるか。074エーもう堪忍袋(かんにんぶくろ)()がきれた、075覚悟(かくご)をせよ』
076(また)もや(くは)()(かざ)留公(とめこう)(せま)る。077宣伝使(せんでんし)(この)(くは)()(しか)受止(うけと)め、
078真浦(まうら)『マアマアお()ちなさい、079短気(たんき)損気(そんき)だ。080(いも)大切(たいせつ)だが(ひと)生命(いのち)大切(たいせつ)だ』
081(をとこ)(田吾作)(あさ)から(ばん)まで自分(じぶん)()んだ()同然(どうぜん)肥料(こえ)()けたり、082(くさ)()いたり、083色々(いろいろ)世話(せわ)をして()可愛(かはい)(いも)()084それをムザムザ()(つぶ)されて……(そだ)ての(おや)如何(どう)して(だま)つて()れませう。085(いも)(いも)だけの精霊(せいれい)宿(やど)つて()る。086屹度(きつと)(くる)しんで()るでせう。087可哀相(かあいさう)に……(この)赤子(あかご)(たれ)(この)無念(むねん)(うつた)へる(こと)出来(でき)ませう、088(わたくし)(いか)つてやらねば(この)赤子(あかご)()(うか)びますまい……アヽ(いも)()よ、089可憐相(かはいさう)(もの)だが、090もう()うなつては仕方(しかた)()い、091(おれ)(これ)からお(まへ)冥福(めいふく)(いの)つてやるから(こころ)(のこ)さずに幽冥界(いうめいかい)旅立(たびだち)して安楽(あんらく)(くら)してくれ、092アンアン』
093(わざ)男泣(をとこな)きに()()てる。
094留公(とめこう)『アハヽヽヽ、095それだから田吾作(たごさく)096貴様(きさま)馬鹿(ばか)だと()ふのだよ、097それ(ほど)可愛(かはい)(いも)なら(おほ)きうなつた(やつ)何故(なぜ)釜煎(かまいり)にしたり庖丁(はうちやう)にかけて()ふのだ。098そんな矛盾(ほことん)(こと)()ふからキ(じるし)だと()はれるのだ。099モシ宣伝使(せんでんし)さま、100ちつと理屈(りくつ)()はぬぢやありませぬか』
101としたり(がほ)()ふ。
102田吾作(たごさく)『それはそうだけれど……(なん)だか可憐相(かはいさう)仕方(しかた)()(わい)103西(にし)(ひがし)()らぬ(よわ)赤子(あかご)無残(むざん)にも()んなに虐殺(ぎやくさつ)すると()(こと)があるものか、104(いも)(いも)としての寿命(じゆみやう)がある(はず)だ。105(あき)()(つる)()れた(とき)寿命(じゆみやう)()きた(とき)だ、106そこで()ふのなら(いも)得心(とくしん)するであらう、107折角(せつかく)(まへ)(うま)れて()不運(ふうん)(やつ)だのう』
108(また)(なみだ)()む。
109留公(とめこう)『オイ田吾作(たごさく)110貴様(きさま)(ひと)(いのち)大切(たいせつ)か、111(いも)()大切(たいせつ)か、112何方(どちら)(しゆ)とするのだ』
113田吾作(たごさく)『きまつた(こと)よ、114貴様(きさま)(いも)(たとへ)たら()(くら)(ごろ)だ。115(この)()最早(もはや)(よう)()代物(しろもの)だから(べつ)()しくも()ければ、116国家(こくか)損失(そんしつ)でも()い。117(かへ)つて社会(しやくわい)塵埃(ごもく)掃除(さうぢ)出来(でき)(やう)なものだい』
118真浦(まうら)『アハヽヽヽ、119随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)芋論(いもろん)()かして(もら)ひました、120(しか)(なが)万物(ばんぶつ)一切(いつさい)(みんな)(かみ)(さま)(れい)宿(やど)つてゐるのだから、121貴賤(きせん)老幼(らうえう)草木(さうもく)器具(きぐ)区別(くべつ)なくそれ相当(さうたう)霊魂(みたま)がある。122万有(ばんいう)一切(いつさい)(すべ)(かみ)(さま)大切(たいせつ)なる(おん)(みたま)宿(やど)つてるから、123()()(いち)(まい)だつて粗末(そまつ)にしてはなりませぬぞや』
124田吾作(たごさく)『そら()たか、125留州(とめしう)126(じるし)阿呆(あはう)()つた(こと)でも矢張(やつぱり)天地(てんち)真理(しんり)(かな)つて()るのが、127ちと(めう)ではないか』
128 留公(とめこう)(くび)(かたむ)()()んで青芝(あをしば)(うへ)端坐(たんざ)何事(なにごと)(しき)りに(かんが)へて()る。129(やうや)くにして(かほ)()げ、
130留公(とめこう)『ヤ、131何事(なにごと)氷解(ひようかい)しました。132田吾作(たごさく)どの、133どうぞ(こら)へて()れ、134(これ)からは(けつ)してもう()んな(こと)はせないから……』
135田吾作(たごさく)(なん)()つても()うなつた以上(いじやう)仕方(しかた)()い、136今後(こんご)()をつけて()れ。137(いも)ばつかりぢやないよ、138(まめ)だつて(むぎ)だつて(みな)(その)(とほ)りだからなア』
139留公(とめこう)『ハイ承知(しようち)(いた)しました、140ちつと心得(こころえ)ます』
141以前(いぜん)(かは)つて丁寧(ていねい)挨拶(あいさつ)する。
142真浦(まうら)『アヽ(これ)(すべ)ての解決(かいけつ)がついた、143(いも)死骸(しがい)最早(もはや)平和(へいわ)克復(こくふく)だ。144サア(これ)からバラモン(けう)友彦(ともひこ)さんにお()(かか)つてお(はなし)(うけたま)はりませうか』
145()かむとするを留公(とめこう)()(とど)め、
146留公(とめこう)『モシ、147宣伝使(せんでんし)(さま)148一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい、149貴方(あなた)(ただ)一人(ひとり)でお()でになつては大変(たいへん)です、150(わたし)(たち)勝手(かつて)()(おぼ)えて()ますが、151(わたし)離座敷(はなれざしき)宣伝使(せんでんし)()いてある、152そこに(かみ)(さま)(まつ)つてあります。153(しか)(なが)(いへ)周囲(まはり)(ひろ)(ふか)(みぞ)()つてあつて迂濶(うつかり)(また)げようものなら……それこそ大変(たいへん)……生命(いのち)()くなりますぜ』
154真浦(まうら)『それは本当(ほんたう)(はなし)か』
155留公(とめこう)本当(ほんたう)ですとも、156現在(げんざい)(わたし)(いへ)ですもの、157(なに)間違(まちが)つた(こと)()ひませう。158軒下(のきした)()して母屋(おもや)()られると()(たとへ)(とほ)り、159(はじ)乞食(こじき)(やう)(ざま)をしてやつて()友彦(ともひこ)宣伝使(せんでんし)が、160(いま)では大変(たいへん)(いきほひ)(わたし)座敷(ざしき)本宅(ほんたく)我物顔(わがものがほ)振舞(ふるま)ひ、161(わたし)丁稚役(でつちやく)162主客(しゆきやく)顛倒(てんたう)(これ)(くらゐ)(はなはだ)しい(こと)はありませぬ。163(わたし)(はじ)めの(ころ)(じつ)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)だと(おも)つて(うつつ)()かし、164()ふが(まま)にして()りましたが、165(この)(ごろ)宣伝使(せんでんし)言行(げんかう)一致(いつち)せない(こと)166(じつ)にお(はなし)になりませぬ。167けれども(わたし)率先(そつせん)して村中(むらぢう)(もの)(すす)(まは)つたと()(かど)があるので、168今更(いまさら)責任(せきにん)(じやう)(この)宣伝使(せんでんし)()はせ(もの)だつたと()つて告白(こくはく)する(わけ)にもゆかず、169本当(ほんたう)(こま)()いて()つた(ところ)ですが、170最前(さいぜん)松鷹彦(まつたかひこ)(うち)使(つかひ)()つた(とき)171(おく)()何百(なんびやく)(にん)とも()れぬ人声(ひとごゑ)宣伝歌(せんでんか)(きこ)えて()た。172その(こゑ)(おそ)ろしさ、173(じつ)無限(むげん)威力(ゐりよく)(そな)はつて()ました。174(わたくし)はバラモン(けう)愛想(あいさう)がつき三五教(あななひけう)入信(にふしん)したいので御座(ござ)いますが、175あの(やう)(あたま)()れる宣伝歌(せんでんか)(うた)はれては(こま)るなり、176如何(どう)したら()いでせうかなア』
177真浦(まうら)宣伝歌(せんでんか)()けば()(ほど)気分(きぶん)()くなつて()るものだ。178(まへ)憑依(ひようい)して()(ふく)守護神(しゆごじん)(きら)ふのだ、179それさへ体内(たいない)より放逐(はうちく)して仕舞(しま)へば(なん)でも()いのだ。180さうしてあの(ちひ)さい(いへ)(ひやく)(にん)()(はず)がない、181(その)(じつ)(わたし)一人(ひとり)より()らなかつたのだ』
182留公(とめこう)『イエイエそれでも沢山(たくさん)なお(こゑ)でした。183年寄(としより)(こゑ)184(わか)(もの)(こゑ)185(すず)(やう)綺麗(きれい)(をんな)(こゑ)(きこ)えましたがなア』
186真浦(まうら)『そら、187そうだらう、188沢山(たくさん)(かみ)(さま)(あつ)まつて宣伝歌(せんでんか)合唱(がつしやう)(あそ)ばす(こと)始終(しじう)あるからだ。189そりやお(まへ)神徳(しんとく)(いただ)(ぐち)だ、190天耳通(てんじつう)(ひら)けかけだから安心(あんしん)して吾々(われわれ)(とな)ふるお(みち)這入(はい)るが()からう』
191留公(とめこう)『そんなら(わたし)入信(にふしん)させて(くだ)さいますか』
192真浦(まうら)『アヽ(よろ)しい(よろ)しい、193何卒(どうぞ)入信(にふしん)して(くだ)さい』
194留公(とめこう)(これ)有難(ありがた)い、195もう()うなる(うへ)百人力(ひやくにんりき)だ。196オイ田吾作(たごさく)197(まへ)仲直(なかなほ)りをした以上(いじやう)は、198(おれ)同様(どうやう)(この)(かた)(したが)つて三五教(あななひけう)信仰(しんかう)しようぢやないか』
199田吾作(たごさく)『ウンそうだ、200さうなれば(この)(むら)天下(てんか)泰平(たいへい)だ。201毎日(まいにち)()にち()()残酷(ざんこく)(ぎやう)強圧(きやうあつ)(てき)にさせられる心配(しんぱい)()らず、202(さだ)めて(をんな)子供(こども)(よろこ)(こと)だらう』
203真浦(まうら)(しか)(わし)がお(まへ)(うち)出張(しゆつちやう)すれば、204友彦(ともひこ)宣伝使(せんでんし)随分(ずゐぶん)(めう)(かほ)をするだらうなア』
205留公(とめこう)『そりや(いた)しませうとも、206今迄(いままで)無鳥郷(むてうきやう)蝙蝠(へんぷく)気取(きど)りで随分(ずゐぶん)威張(ゐば)つて()ましたが、207(うへ)には(うへ)があるから何時迄(いつまで)()()ちきりにはなりますまい、208(これ)()()()(どき)でせう。209サアサア()立替(たてかへ)立直(たてなほ)しは(これ)からだ、210(あま)岩戸(いはと)(ひら)(ぐち)だ』
211雀躍(こをどり)(なが)(さき)()二人(ふたり)(ともな)(わが)()()して(かへ)()く。
212 留公(とめこう)矢庭(やには)友彦(ともひこ)割拠(かつきよ)せる離座敷(はなれざしき)(をど)()り、
213留公(とめこう)『サア友彦(ともひこ)214今日(けふ)から一寸(ちよつと)都合(つがふ)があるので(この)(いへ)()けて(もら)()いのだ。215(わし)今迄(いままで)はバラモン(けう)のお世話係(せわがかり)をやつて()たが、216(まへ)さんから除名(ぢよめい)されてからは何時迄(いつまで)(この)(いへ)()(わけ)にはゆかない。217(これ)から三五教(あななひけう)宣伝(せんでん)をしようとするのだから、218未練(みれん)(のこ)さずトツトと(かへ)つてお()れ』
219 友彦(ともひこ)怪訝(けげん)(かほ)して、
220友彦(ともひこ)『オイ留公(とめこう)221そりや(なに)()ふのだ。222貴様(きさま)223(はじ)めに(なん)()つた、224……(わたし)(いへ)はお粗末(そまつ)(なが)一切(いつさい)(かみ)(さま)にお(そな)へします。225……と大勢(おほぜい)(まへ)立派(りつぱ)(ちか)つたぢやないか』
226留公(とめこう)『そりや(ちか)ひました、227(いや)(ちが)ひました。228(しか)(かみ)(さま)()げるも()げぬもない、229世界中(せかいぢう)(みな)(かみ)(さま)のものだ。230仮令(たとへ)()げると()つた(ところ)でお(まへ)()げたのぢやない、231天地(てんち)(もと)大神(おほかみ)(さま)(たてまつ)つたものだから、232何卒(どうぞ)()()れやがれ』
233友彦(ともひこ)左様(さやう)不都合(ふつがふ)(こと)(まを)すと神罰(しんばつ)立所(たちどころ)(あた)るぞ、234それでも()いか、235(この)友彦(ともひこ)だつて天地(てんち)大神(おほかみ)(さま)236(こと)大国別(おほくにわけ)(かみ)(さま)生宮(いきみや)だ、237(かみ)(さま)生宮(いきみや)(かみ)(さま)(いへ)()るのだ、238貴様(きさま)(やう)四足(よつあし)容器(いれもの)とは(ちが)ふぞ、239エヽ(けが)らはしい、240トツト()てゆけ。241左様(さやう)無体(むたい)(こと)(まを)すと(かみ)(さま)()(かく)として村中(むらぢう)信者(しんじや)承知(しようち)(いた)すまいぞ』
242信者(しんじや)をバツクに落日(らくじつ)孤城(こじやう)固守(こしゆ)せむとする。
243留公(とめこう)(なん)といつても、244もう駄目(だめ)だよ。245零落(おち)ぶれて(そで)(なみだ)のかかる(とき)246(ひと)(こころ)(おく)()らるると()つてな、247除名(ぢよめい)された(おれ)村中(むらぢう)除外者(はねのけもの)になり、248何処(どこ)(たよ)(ところ)もなし、249自暴(じばう)自棄(じき)となつて田吾作(たごさく)芋畑(いもばたけ)駆込(かけこ)み、250(こと)(おこ)りは此奴(こいつ)ぢやと(いも)赤子(あかご)片端(かたつぱし)から()(ころ)最中(さいちう)に、251一人(ひとり)(ひやく)(にん)(こゑ)()すと()立派(りつぱ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)其処(そこ)忽然(こつぜん)として(あら)はれ(たま)ひ、252(この)留公(とめこう)(あたま)を、253(ひざ)(のぼ)つた(ねこ)でも()でる(やう)調子(てうし)可愛(かはい)がり、254(いち)乾児(こぶん)にして(くだ)さつたのだ。255サアサア(はや)出立(しゆつたつ)(いた)さぬと(おもて)三五教(あななひけう)(おん)大将(たいしやう)見張(みは)つて御座(ござ)るぞ』
256友彦(ともひこ)(なに)257三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)見張(みは)つて()るとな、258大方(おほかた)武志(たけし)(みや)神主(かむぬし)(うち)去年(きよねん)(ふゆ)から潜伏(せんぷく)して()守彦(もりひこ)()弱腰(よわごし)宣伝使(せんでんし)だらう。259バラモン(けう)友彦(ともひこ)威勢(ゐせい)(おそ)れて(いま)まで蟄伏(ちつぷく)して()(かわづ)(やう)代物(しろもの)だ、260そんな(もの)仮令(たとへ)千匹(せんびき)万匹(まんびき)やつて()たとて(おどろ)くものかい。261万々一(まんまんいち)(この)()(すす)んで()ようものなら、262それこそ神界(しんかい)()仕組(しぐみ)陥穽(おとしあな)真逆(まつさか)(さま)顛倒(てんたう)生命(いのち)()つるは()(あた)りだ。263心配(しんぱい)(いた)すな、264貴様(きさま)今日(けふ)(かぎ)除名(ぢよめい)処分(しよぶん)取消(とりけ)すから安心(あんしん)せい』
265留公(とめこう)(なに)(ほざ)きやがるのだ、266取消(とりけし)(なに)もあつたものかい、267三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(おれ)詳細(しやうさい)なる報告(はうこく)()つて陥穽(おとしあな)箇所(かしよ)全部(ぜんぶ)承知(しようち)して御座(ござ)るのだ。268さうして(おれ)案内役(あんないやく)だから滅多(めつた)別条(べつでう)()い、269(わが)()一大事(いちだいじ)(せま)つて()()るのにお(まへ)270(ひと)疝気(せんき)頭痛(づつう)()(やう)馬鹿(ばか)真似(まね)はなさいますなや。271(おほ)きに()心配(しんぱい)……有難(ありがた)う』
272(なが)(した)()し、273両手(りやうて)(とんび)羽翼(はね)(ひろ)げた(やう)(ふう)にして二三遍(にさんぺん)虚空(こくう)()き、274(しり)をニユツと突出(つきだ)して()うて()せる。
275 友彦(ともひこ)祭壇(さいだん)(まへ)(ぬかづ)祈願(きぐわん)(ことば)奏上(そうじやう)し、276言霊戦(ことたません)(もつ)真浦(まうら)宣伝(せんでん)撃退(げきたい)せむと、277(こゑ)()()げて(うた)(はじ)めたり。
278友彦常世(とこよ)(くに)(まも)ります
279大国彦(おほくにひこ)大神(おほかみ)
280(うづ)御裔(みすゑ)()れませる
281大国別(おほくにわけ)大神(おほかみ)
282仁慈(じんじ)無限(むげん)救世主(すくひぬし)
283常世(とこよ)(くに)より遥々(はるばる)
284イホの(くに)(まで)(わた)りまし
285霊主(れいしゆ)体従(たいじう)御教(みをしへ)
286(ひら)かむ(ため)霊幸(たまちは)
287(かみ)(ひと)しき鬼雲(おにくも)
288(ひこ)(みこと)鬼熊別(おにくまわけ)
289(その)()数多(あまた)神々(かみがみ)
290豊葦原(とよあしはら)中津国(なかつくに)
291メソポタミヤの顕恩郷(けんおんきやう)
292果実(このみ)(ゆたか)楽園(らくゑん)
293本拠(ほんきよ)(さだ)めフサの(くに)
294ツキの(くに)まで教線(けうせん)
295(ひろ)(たま)ひて自転倒(おのころ)
296(しま)(また)もや(くだ)りまし
297大江(おほえ)(やま)中心(ちうしん)
298(かみ)(ひかり)三岳山(みたけやま)
299(おに)をも(ひし)(おに)(じやう)
300伊吹(いぶき)(やま)まで(ひら)きまし
301世人(よびと)(すく)(たす)けむと
302(こころ)(つく)(たま)()
303(この)()(みだ)悪神(あくがみ)
304(かむ)素盞嗚(すさのを)枉津見(まがつみ)
305(した)(つか)ふる悦子姫(よしこひめ)
306鬼武彦(おにたけひこ)高倉(たかくら)
307(あさひ)月日(つきひ)白狐(びやくこ)()
308悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)振舞(ふるまひ)
309(とき)()ずして本国(ほんごく)
310一先(ひとま)退却(たいきやく)(たま)へど
311(かなら)捲土(けんど)重来(ぢうらい)
312(とき)こそ(いま)(ちか)づきて
313コーカス(さん)やウブスナの
314(やま)()つたる斎苑(いそ)(やかた)
315黄金山(わうごんざん)はまだ(おろか)
316自転倒(おのころ)(じま)中心地(ちうしんち)
317世継王(よつわう)(やま)辺傍(かたほとり)
318(にしき)(みや)(たちま)ちに
319()(ひら)(かへ)(その)(ごと)
320土崩(どほう)瓦解(ぐわかい)()(あた)
321(さき)()えたる三五(あななひ)
322(かみ)(をしへ)風前(ふうぜん)
323灯火(とうくわ)(ごと)()(つき)
324危険(きけん)益々(ますます)(せま)()
325(じつ)(あは)れな(その)教義(をしへ)
326それをも()らぬ守彦(もりひこ)
327(あめ)使(つかひ)名乗(なの)りつつ
328図々(づうづう)しくもバラモンの
329(かみ)使(つかひ)友彦(ともひこ)
330(やかた)()して(きた)るとは
331()んで()()(なつ)(むし)
332それに(したが)留公(とめこう)
333田吾作(たごさく)野郎(やらう)蚯蚓(みみず)きり
334(かはづ)もきれぬ分際(ぶんざい)
335神徳(しんとく)(たか)友彦(ともひこ)
336刃向(はむか)()るとは何事(なにごと)
337()(ほど)()らぬも(ほど)がある
338(てん)()となり()(てん)
339(かは)()()()るとても
340三五教(あななひけう)(まよ)ふなよ
341霊主(れいしゆ)体従(たいじう)(この)教義(をしへ)
342(まこと)(ひと)つの神界(しんかい)
343(ふか)経綸(しぐみ)三五(あななひ)
344(あさ)(をしへ)ぢや(わか)らない
345飯守彦(めしもりひこ)宣伝使(せんでんし)
346留公(とめこう)田吾作(たごさく)諸共(もろとも)
347(いま)から(こころ)立直(たてなほ)
348バラモン(けう)神徳(しんとく)
349()けて身魂(みたま)(みが)()
350神世(かみよ)(きた)神業(しんげふ)
351(こころ)(つく)()(つく)
352天地(てんち)(かは)功績(いさをし)
353千代(ちよ)万代(よろづよ)()てよかし
354これ友彦(ともひこ)(いつは)らぬ
355(まこと)(ひと)つの言葉(ことば)ぞや
356言霊(ことたま)(さち)はふ()(なか)
357(ぜん)ぢや(あく)ぢやと(なん)(こと)
358朝日(あさひ)()るとか(くも)るとか
359(つき)()つとか()くるとか
360大地(だいち)(どろ)(しづ)むとか
361世人(よびと)(あざむ)くコケ(おど)
362そんな馬鹿(ばか)げた言霊(ことたま)
363(これ)だけ(ひら)けた()(なか)
364(ひと)如何(どう)して()くものか
365馬鹿(ばか)(つく)すも(ほど)がある
366(いち)()(はや)()(さま)
367(かみ)(こころ)(みな)(ひと)
368世界(せかい)氏子(うぢこ)(たす)けむと
369大国別(おほくにわけ)御言(みこと)もて
370憂瀬(うきせ)(しづ)民草(たみくさ)
371(すく)はせ(たま)有難(ありがた)
372一度(いちど)()つて(あぢ)はへよ
373()はず(ぎら)ひは仕様(しやう)がない
374(にが)けりや()()(うま)ければ
375遠慮(ゑんりよ)()らぬドシドシと
376(こころ)ゆく(まで)()ふがよい
377(ぜん)(なか)にも(あく)がある
378(あく)(なか)にも(ぜん)がある
379三五教(あななひけう)表向(おもてむき)
380(ぜん)(いへど)内実(ないじつ)
381悪鬼(あくき)悪魔(あくま)囈言(たはごと)
382バラモン(けう)(おもて)から
383(なが)めて()ても(ぜん)である
384(うら)から()ても(また)(ぜん)ぢや
385(その)内実(ないじつ)殊更(ことさら)
386善一筋(ぜんひとすぢ)(かた)めたる
387(むかし)(もと)(かみ)(みち)
388()んな結構(けつこう)御教(みをしへ)
389調(しら)べもせずに一口(ひとくち)
390(あく)雅号(ががう)(はうむ)りて
391(この)()(つぶ)さうと(たく)(やつ)
392(にく)さも(にく)三五教(あななひけう)
393(いち)()(はや)留公(とめこう)
394飯守彦(めしもりひこ)()(やつ)
395(うま)言葉(ことば)にのせられて
396(しり)()(まで)()かれなよ
397(あは)れみ(ぶか)友彦(ともひこ)
398真心(まごころ)()めて()をつける
399大国別(おほくにわけ)(かみ)(さま)
400(かれ)()(こころ)生命(せいめい)
401(あた)えて(ふたた)びバラモンの
402(かみ)(をしへ)(すく)ひませ
403あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
404御霊(みたま)(さち)はひ(まし)ませよ
405あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
406御霊(みたま)(さち)はひ(まし)ませよ』
407(くち)から出任(でまか)せに(あせ)をブルブル(なが)(なが)呶鳴(どな)()てて()る。408留公(とめこう)(この)(うた)()いて躍起(やくき)となり、
409留公『オイ、410バラモン(けう)(おん)大将(たいしやう)411随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)言霊(ことたま)だのう。412雲烟(うんえん)模糊(もこ)として捕捉(ほそく)すべからず、413支離(しり)滅裂(めつれつ)414()くに()へざる亡国(ばうこく)悲歌(ひか)415そんな(こと)(さへづ)ると天地(てんち)(くら)くなつて仕舞(しま)(わい)416サア(これ)から(この)留公(とめこう)十一七(じふいちしち)(ばん)宣伝歌(せんでんか)(うた)つてやらう、417(みみ)(さら)へて謹聴(きんちやう)せい』
418長々(ながなが)前置(まへおき)してエヘンと(ひと)咳払(せきばら)ひ、419(たか)(つばさ)(ひろ)げた(やう)手付(てつき)(こし)(かが)(あし)()()り、420(みぎ)(ひだり)身体(からだ)(ゆす)ぶり(なが)奇声(きせい)怪音(くわいおん)(はな)つて(うた)()した。
421留公此処(ここ)()()秘密郷(ひみつきやう)
422四面(しめん)深山(みやま)(つつ)まれて
423(なか)(なが)るる宇都(うづ)(かは)
424(なが)れも(きよ)()(わた)
425武志(たけし)(みや)(おん)住家(すみか)
426大江(おほえ)(やま)破壊(ばら)されて
427()げて()()たバラモンの
428言霊(ことたま)(にご)ども(ひこ)
429(とり)なき(さと)蝙蝠(かうもり)
430(へび)なき(さと)青蛙(あをかはづ)
431威張(ゐばり)()らして村人(むらびと)
432(なん)ぢやかんぢやとチヨロまかし
433霊主(れいしゆ)体従(たいじう)標榜(へうぼう)
434利己(りこ)一片(いつぺん)強欲心(がうよくしん)
435最極端(さいきよくたん)発揮(はつき)して
436宇都山(うづやま)(むら)(ばば)(かか)
437有難涙(ありがたなみだ)(むせ)ばせつ
438(つひ)(すす)んで吾々(われわれ)
439慣用(くわんよう)手段(しゆだん)(くち)(さき)
440一寸(ちよつと)うまうま()つて()
441さはさり(なが)らつくづくと
442(むね)()()真夜中(まよなか)
443()せりもやらず(うかが)へば
444表面(うはべ)(つつ)金鍍金(きんメツキ)
445(いよいよ)(いろ)()げかけた
446(とき)しもあれや三五(あななひ)
447(まこと)(ひと)つの宣伝使(せんでんし)
448(あめ)使(つかひ)守彦(もりひこ)
449雲路(くもぢ)()けて(くだ)りまし
450武志(たけし)(みや)(おん)(まへ)
451(あら)はれました(ゆき)(みち)
452(ゆき)より(きよ)神心(かみごころ)
453松鷹彦(まつたかひこ)()(いへ)
454去年(きよねん)(ふゆ)から()でまして
455世界(せかい)立替(たてかへ)立直(たてなほ)
456天地(あめつち)(もも)(かみ)(たち)
457宇都(うづ)川辺(かはべ)()(あつ)
458神徳(しんとく)(ここ)(そな)はつて
459バラモン(けう)枉神(まがかみ)
460言向(ことむ)(やは)如何(どう)しても
461往生(わうじやう)(いた)さな是非(ぜひ)はない
462(かみ)(さだ)めの()(くに)
463(ひと)(ちが)うたら(そこ)(くに)
464万劫(まんごふ)末代(まつだい)(あが)れない
465根底(ねそこ)(そこ)のまだ(そこ)
466真黒暗(まつくらやみ)のドン(ぞこ)
467(おと)してやらうかこりや如何(どう)ぢや
468(この)()でさへも()りがある
469(はや)(こころ)をきり()へて
470瓦落多(ぐわらくた)(けう)(ひま)()れて
471(まこと)(かみ)(ひら)きたる
472三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)せよ
473(おれ)(なが)らく友彦(ともひこ)
474師匠(ししやう)(あふ)いで()(よしみ)
475(わか)れに(さい)して親切(しんせつ)
476誠心(まことごころ)()をつける
477()をつけられた(その)(うち)
478()かねば(あと)()らぬぞよ
479(かみ)(こころ)()(ちが)
480留公(とめこう)さまの真心(まごころ)
481()にするならばするがよい
482(みんな)(まへ)()(うへ)
483かかつて(きた)ること(ばか)
484(おれ)はもう()三五(あななひ)
485(かみ)(をしへ)帰順(きじゆん)した
486バラモン(けう)(よう)()
487とは()ふものの(ひと)(みな)
488(おな)御神(みかみ)分霊(わけみたま)
489世界(せかい)同胞(どうはう)(よしみ)もて
490一度(いちど)忠告(ちうこく)(つかまつ)
491(はや)改心(かいしん)して()れよ
492(けつ)して(おれ)損得(そんとく)
493(ひと)つも(かか)はる(こと)ぢやない
494みんなお(まへ)可愛(かはい)から
495(まへ)改心(かいしん)するなれば
496宇都山(うづやま)(むら)神村(かみむら)
497天下(てんか)泰平(たいへい)無事(ぶじ)安穏(あんをん)
498五穀(ごこく)成就(じやうじゆ)()のあたり
499改心(かいしん)せなけりや是非(ぜひ)()
500(とめ)(うで)には(ほね)がある
501天地(てんち)(かみ)になり(かは)
502貴様(きさま)雁首(がんくび)()()こか
503眼玉(めだま)()こか(した)()こか
504地獄(ぢごく)(おに)ぢやなけれども
505()むに()まれぬ大和魂(やまとだま)
506とめてとまらぬ留公(とめこう)
507(おも)()めたる(ぜん)(みち)
508(みち)(まよ)うた里人(さとびと)
509(たす)けにやならぬ(この)場合(ばあひ)
510()第一(だいいち)友彦(ともひこ)
511改心(かいしん)すれば三五(あななひ)
512(かみ)(つかさ)()()いて
513(もと)(ひと)つの(かみ)(みち)
514(はら)(あは)して仲好(なかよ)くし
515(みち)(ひら)()はないか
516(はや)(かんば)しい返事(へんじ)せよ
517返事(へんじ)がなければ是非(ぜひ)()
518(いも)赤子(あかご)(つぶ)(やう)
519(かた)(ぱし)から()みにじり
520(おに)餌食(ゑじき)にしてやろか
521サアサア(はや)うサア(はや)
522返事(へんじ)なされよ三五(あななひ)
523(まこと)(ひと)つの宣伝使(せんでんし)
524言霊戦(ことたません)(ひら)いたら
525とても(かな)はぬ(しり)()
526()けて(はし)らにやなるまいぞ
527そんな()つとも()(こと)
528するより(はや)()()つて
529改心(かいしん)なされ改心(かいしん)
530すれば(たちま)(その)()から
531(よろこ)(いさ)んで神界(しんかい)
532御用(ごよう)屹度(きつと)出来(でき)ますぞ
533三五教(あななひけう)(ぜん)なるか
534(また)(あく)なるか(おれ)()らぬ
535(おれ)(かん)じた動機(どうき)こそ
536不言(ふげん)実行(じつかう)(まこと)のみ
537バラモン(けう)(ぜん)(みち)
538(ぜん)ぢや(ぜん)ぢやと(うた)へども
539言心行(げんしんかう)一致(いつち)せぬ
540一致(いつち)()いだ御教(みをしへ)
541半善(はんぜん)半悪(はんあく)雑種教(ざつしゆけう)
542()んな(をしへ)()(なか)
543()しも(ひろ)まるものならば
544世界(せかい)(ひと)(ことごと)
545みんな不具者(かたわ)になつて仕舞(しま)
546生血(いきち)()ゑたる枉神(まがかみ)
547(しこ)(たく)みと()らないか
548(まへ)天地(てんち)御徳(みとく)にて
549(うま)()でたる(かみ)(みや)
550悪魔(あくま)(すく)(やぶ)()
551なつて天地(てんち)神々(かみがみ)
552如何(どう)して言訳(いひわけ)()つものか
553(はや)改心(かいしん)してお()
554留公(とめこう)さまが一生(いつしやう)
555(まこと)(つく)しのお(ねがひ)ぢや
556(これ)(ほど)(まこと)(たの)むのに
557(くび)左右(さいう)()るならば
558もう是非(ぜひ)なしと(あきら)めて
559直接(ちよくせつ)行動(かうどう)にとりかかる
560返答(へんたふ)()かせ友彦(ともひこ)
561朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
562(つき)()つとも()くるとも
563仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
564(まへ)一人(ひとり)如何(どう)しても
565改心(かいしん)させねば()かないぞ
566あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
567御霊(みたま)(さち)はひ()しまして
568頑固(ぐわんこ)一途(いちづ)友彦(ともひこ)
569(こころ)(てら)させ(たま)へかし
570身魂(みたま)(ひか)らせ(たま)へかし』
571(てき)やら味方(みかた)やら(わけ)(わか)らぬ(うた)(うた)(くび)をすくめ、572糞垂(ばばた)(ごし)になつて、573左右(さいう)()(むね)四辺(あたり)かまきりがすくんだ(やう)手付(てつき)し、574ピリピリ(ふる)(なが)左右(さいう)(あし)一所(いつしよ)にキチンと(あは)()つて()る。575その可笑(をか)しさに友彦(ともひこ)も、576()いて()田吾作(たごさく)も、577(おも)はず(こゑ)()げて(わら)()けたり。
578大正一一・五・一二 旧四・一六 北村隆光録)
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