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第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
01 主従二人
〔843〕
02 乾の滝
〔844〕
03 清めの滝
〔845〕
04 懐旧の歌
〔846〕
第2篇 珍野瞰下
05 下坂の歌
〔847〕
06 樹下の一宿
〔848〕
07 提燈の光
〔849〕
08 露の道
〔850〕
第3篇 神縁微妙
09 醜の言霊
〔851〕
10 妖雲晴
〔852〕
11 言霊の妙
〔853〕
12 マラソン競争
〔854〕
13 都入
〔855〕
第4篇 修理固成
14 霊とパン
〔856〕
15 花に嵐
〔857〕
16 荒しの森
〔858〕
17 出陣
〔859〕
18 日暮シの河
〔860〕
19 蜘蛛の児
〔861〕
20 雉と町
〔862〕
第5篇 山河動乱
21 神王の祠
〔863〕
22 大蜈蚣
〔864〕
23 ブール酒
〔865〕
24 陥穽
〔866〕
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
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第一一章
言霊
(
ことたま
)
の
妙
(
めう
)
〔八五三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第3篇 神縁微妙
よみ(新仮名遣い):
しんえんびみょう
章:
第11章 言霊の妙
よみ(新仮名遣い):
ことたまのみょう
通し章番号:
853
口述日:
1922(大正11)年08月15日(旧06月23日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
言霊の妙用は一声よく天地を震動し、一音よく風雨雷霆を叱咤し駆使する絶対無限の権力があるのだが、これを使用する人々の正邪によって非常な違いが出てくる。昨日まで誤った信仰を続け心がねじまがった石熊は、万有に対して少しも感動を与えないのは、実に神律の厳然として動かすことのできないことから来るのである。
捨子姫の言霊は簡単なものであったが、清明無垢の捨子姫の臍下丹田からほとばしる、万有愛護の至誠から出た言霊には、大蛇といえどもこれに抵抗する余地なく、心和らぎ、言霊の権威によって黒雲も払拭されてしまったのである。
神界最大の重宝である言霊の神器は、混濁する身魂では容易に使用することができないことがわかるのである。
末子姫は厳然として立ち上がり、凪ぎ渡った水面に向かって言葉さわやかに歌い始めた。その歌は、大神の徳を称え、改心と救いを大神に求めるようにと大蛇に促していた。
歌い終わると池の水は二つに分かれ、白竜が姿を表し、末子姫の側近く進んでくると、感謝の涙をはらはらと流し、首を垂れた。しばらくすると白竜はその体を縮小し、見えなくなってしまった。
頭上からは音楽が聞こえて来た。竜神解脱を喜び祝う天人たちが、麗しい女神の姿となった巽の池の竜神を守りつつ天空高く消えていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-01-26 18:49:20
OBC :
rm3011
愛善世界社版:
131頁
八幡書店版:
第5輯 619頁
修補版:
校定版:
141頁
普及版:
51頁
初版:
ページ備考:
001
言霊
(
ことたま
)
の
妙用
(
めうよう
)
は
一声
(
いつせい
)
よく
天地
(
てんち
)
を
震動
(
しんどう
)
し、
002
一音
(
いちおん
)
よく
風雨
(
ふうう
)
雷霆
(
らいてい
)
を
駆使
(
くし
)
し
叱咤
(
しつた
)
する
絶対
(
ぜつたい
)
無限
(
むげん
)
の
権力
(
けんりよく
)
あれ
共
(
ども
)
、
003
之
(
これ
)
を
使用
(
しよう
)
する
人々
(
ひとびと
)
の
正邪
(
せいじや
)
に
依
(
よ
)
りて、
004
非常
(
ひじやう
)
なる
径庭
(
けいてい
)
のあるものである。
005
昨日
(
きのふ
)
迄
(
まで
)
バラモン
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
き、
006
誤
(
あやま
)
りたる
信仰
(
しんかう
)
を
続
(
つづ
)
け、
007
心
(
こころ
)
は
拗
(
ねぢ
)
け、
008
魂
(
たま
)
は
曇
(
くも
)
り、
009
言霊
(
ことたま
)
の
曇
(
くも
)
りたる
者
(
もの
)
は、
010
如何
(
いか
)
に
完全
(
くわんぜん
)
に、
011
能弁
(
のうべん
)
に
善言
(
ぜんげん
)
美詞
(
びし
)
を
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つればとて、
012
万有
(
ばんいう
)
一切
(
いつさい
)
に
対
(
たい
)
し
毫末
(
がうまつ
)
も、
013
其
(
その
)
感動
(
かんどう
)
を
与
(
あた
)
へざるは、
014
実
(
じつ
)
に
神律
(
しんりつ
)
の
厳
(
げん
)
として
冒
(
をか
)
す
可
(
べか
)
らざる
所以
(
ゆゑん
)
である。
015
又
(
また
)
魂
(
こん
)
よく
研
(
みが
)
け
慈愛
(
じあい
)
に
富
(
と
)
み、
016
心中
(
しんちう
)
常
(
つね
)
に
寛容
(
くわんよう
)
の
徳
(
とく
)
ある
捨子姫
(
すてこひめ
)
の
言霊
(
ことたま
)
は、
017
前者
(
ぜんしや
)
に
比
(
ひ
)
して
極
(
きは
)
めて
簡単
(
かんたん
)
なものであつた。
018
されど
暴悪
(
ばうあく
)
無道
(
ぶだう
)
の
醜
(
しこ
)
の
大蛇
(
をろち
)
も、
019
厳
(
げん
)
として
動
(
うご
)
かす
可
(
べか
)
らざる
捨子姫
(
すてこひめ
)
の
清明
(
せいめい
)
無垢
(
むく
)
の
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
より
迸
(
ほとばし
)
れる
万有
(
ばんいう
)
愛護
(
あいご
)
の
至誠
(
しせい
)
より
出
(
い
)
でたる
言霊
(
ことたま
)
には、
020
如何
(
いか
)
に
頑強
(
ぐわんきやう
)
なる
邪神
(
じやしん
)
と
雖
(
いへど
)
も、
021
到底
(
たうてい
)
之
(
こ
)
れに
抵抗
(
ていかう
)
するの
余地
(
よち
)
なく、
022
漸
(
やうや
)
く
心
(
こころ
)
和
(
やは
)
らぎ、
023
浪
(
なみ
)
静
(
しづ
)
まり、
024
雨
(
あめ
)
は
止
(
や
)
みあたりを
包
(
つつ
)
む
黒雲
(
くろくも
)
も
次第
(
しだい
)
に、
025
言霊
(
ことたま
)
の
権威
(
けんゐ
)
に
依
(
よ
)
つて
払拭
(
ふつしき
)
されて
了
(
しま
)
つたのである。
026
これにしても
神界
(
しんかい
)
の
最大
(
さいだい
)
重宝
(
ぢうはう
)
たる
言霊
(
ことたま
)
の
神器
(
しんき
)
は、
027
混濁
(
こんだく
)
せる
身魂
(
みたま
)
の
容易
(
ようい
)
に
使用
(
しよう
)
し
得
(
う
)
可
(
べ
)
からざる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らるるであらう。
028
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
029
末子姫
(
すゑこひめ
)
は
厳然
(
げんぜん
)
として
立上
(
たちあが
)
り、
030
漸
(
やうや
)
く
凪
(
なぎ
)
渡
(
わた
)
りし
水面
(
すゐめん
)
に
向
(
むか
)
ひ
言葉
(
ことば
)
さわやかに
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めた。
031
其
(
その
)
歌
(
うた
)
、
032
末子姫
『
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
らしし
033
此
(
この
)
天地
(
あめつち
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
さよ
034
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
は
青雲
(
あをくも
)
の
035
底
(
そこ
)
ひも
知
(
し
)
らぬ
天
(
あま
)
の
川
(
かは
)
036
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
睥睨
(
へいげい
)
し
037
清
(
きよ
)
く
流
(
なが
)
れて
果
(
は
)
てしなく
038
星
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
はキラキラと
039
永遠
(
とは
)
に
輝
(
かがや
)
く
美
(
うる
)
はしさ
040
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
神
(
かみ
)
東天
(
とうてん
)
に
041
昇
(
のぼ
)
りましては
又
(
また
)
西
(
にし
)
に
042
清
(
きよ
)
き
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しまし
043
夜
(
よ
)
は
又
(
また
)
月
(
つき
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
044
清
(
きよ
)
き
光
(
ひかり
)
を
投
(
な
)
げ
玉
(
たま
)
ひ
045
下界
(
げかい
)
の
万有
(
ばんいう
)
一切
(
いつさい
)
に
046
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
を
垂
(
た
)
れ
玉
(
たま
)
ふ
047
月日
(
つきひ
)
は
清
(
きよ
)
く
天渡
(
あまわた
)
り
048
浜
(
はま
)
の
真砂
(
まさご
)
の
数
(
かず
)
の
如
(
ごと
)
049
光
(
ひかり
)
眩
(
まば
)
ゆき
百星
(
ひやくせい
)
の
050
或
(
あるひ
)
は
白
(
しろ
)
く
又
(
また
)
赤
(
あか
)
く
051
淡
(
あは
)
き
濃
(
こ
)
き
色
(
いろ
)
取交
(
とりま
)
ぜて
052
際涯
(
はてし
)
も
知
(
し
)
らぬ
大空
(
おほぞら
)
を
053
飾
(
かざ
)
らせ
玉
(
たま
)
ふ
尊
(
たふと
)
さよ
054
眼
(
まなこ
)
を
転
(
てん
)
じて
葦原
(
あしはら
)
の
055
瑞穂
(
みづほ
)
の
国
(
くに
)
を
眺
(
なが
)
むれば
056
山野
(
さんや
)
は
青
(
あを
)
く
茂
(
しげ
)
り
合
(
あ
)
ひ
057
野辺
(
のべ
)
の
千草
(
ちぐさ
)
はまちまちに
058
青
(
あお
)
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
黄
(
き
)
紫
(
むらさき
)
と
059
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れたる
楽
(
たの
)
しさよ
060
河
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れはいと
清
(
きよ
)
く
061
稲
(
いね
)
麦
(
むぎ
)
豆
(
まめ
)
粟
(
あは
)
黍
(
きび
)
の
類
(
るゐ
)
062
所狭
(
ところせ
)
きまで
稔
(
みの
)
りつつ
063
味
(
あぢ
)
よき
木実
(
このみ
)
は
野
(
の
)
に
山
(
やま
)
に
064
枝
(
えだ
)
もたわわに
香
(
かを
)
りけり
065
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
神国
(
かみくに
)
を
066
此
(
この
)
土
(
ど
)
の
上
(
うへ
)
に
相写
(
あひうつ
)
し
067
四方
(
よも
)
の
神人
(
かみびと
)
木
(
き
)
や
草
(
くさ
)
や
068
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
や
虫族
(
むしけら
)
の
069
小
(
ちい
)
さきものに
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
070
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
をかけ
玉
(
たま
)
ひ
071
尊
(
たふと
)
き
霊
(
みたま
)
を
配
(
くば
)
らせて
072
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とは
睦
(
むつ
)
び
合
(
あ
)
ひ
073
影
(
かげ
)
と
日向
(
ひなた
)
は
抱
(
いだ
)
き
合
(
あ
)
ひ
074
男子
(
をのこ
)
女子
(
をみな
)
は
相睦
(
あひむつ
)
び
075
上
(
かみ
)
と
下
(
しも
)
とは
隔
(
へだ
)
てなく
076
互
(
たがひ
)
に
心
(
こころ
)
を
打明
(
うちあ
)
けて
077
暮
(
くら
)
す
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
078
高天原
(
たかあまはら
)
の
活映
(
いきうつ
)
し
079
天地
(
てんち
)
の
合
(
あは
)
せ
鏡
(
かがみ
)
ぞや
080
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
081
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
はひて
082
風
(
かぜ
)
吹渡
(
ふきわた
)
り
荒波
(
あらなみ
)
の
083
巽
(
たつみ
)
の
池
(
いけ
)
に
現
(
あ
)
れませる
084
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
生
(
うま
)
れたる
085
大蛇
(
をろち
)
の
神
(
かみ
)
よ
活神
(
いきがみ
)
よ
086
汝
(
なれ
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
087
吾
(
わ
)
れも
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
088
汝
(
なれ
)
と
妾
(
わらは
)
とのみならず
089
山河木草
(
やまかはきくさ
)
鳥獣
(
とりけもの
)
090
大魚
(
おほうを
)
小魚
(
こうを
)
虫族
(
むしけら
)
も
091
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
漏
(
も
)
れざらめ
092
况
(
ま
)
して
尊
(
たふと
)
き
汝
(
な
)
が
姿
(
すがた
)
093
人
(
ひと
)
の
体
(
からだ
)
にいや
優
(
まさ
)
り
094
いよいよ
太
(
ふと
)
くいや
長
(
なが
)
く
095
陸
(
くが
)
にも
棲
(
す
)
めば
水
(
みづ
)
に
棲
(
す
)
み
096
雲
(
くも
)
にも
乗
(
の
)
りて
大空
(
おほぞら
)
を
097
翔
(
かけ
)
りて
昇
(
のぼ
)
る
神力
(
しんりき
)
を
098
生
(
うま
)
れ
乍
(
なが
)
らに
持
(
も
)
たせつつ
099
何故
(
なにゆゑ
)
狭
(
せま
)
き
此
(
この
)
池
(
いけ
)
に
100
鎮
(
しづ
)
まりまして
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
に
101
悪
(
あし
)
き
災
(
わざはひ
)
なし
玉
(
たま
)
ふや
102
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
が
103
八洲
(
やしま
)
の
国
(
くに
)
に
蟠
(
わだかま
)
る
104
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜神
(
しこがみ
)
を
105
稜威
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
へ
106
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
吹棄
(
ふきす
)
てて
107
すべての
物
(
もの
)
に
安息
(
あんそく
)
を
108
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
はる
大神業
(
おほみわざ
)
109
此
(
この
)
神業
(
かむわざ
)
の
一
(
ひと
)
つだも
110
補
(
おぎな
)
ひ
奉
(
まつ
)
り
万有
(
ばんいう
)
に
111
恵
(
めぐみ
)
の
乳
(
ちち
)
を
含
(
ふく
)
ませて
112
救
(
すく
)
はむものと
末子姫
(
すゑこひめ
)
113
捨子
(
すてこ
)
の
姫
(
ひめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
114
まだ
十六
(
じふろく
)
の
莟
(
つぼみ
)
の
身
(
み
)
をば
115
雨
(
あめ
)
に
曬
(
さら
)
され
荒風
(
あらかぜ
)
に
116
梳
(
くしけ
)
づりつつ
霜
(
しも
)
をふみ
117
雪
(
ゆき
)
を
渉
(
わた
)
りてやうやうに
118
浜辺
(
はまべ
)
に
着
(
つ
)
きて
荒波
(
あらなみ
)
に
119
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
へる
和田
(
わだ
)
の
原
(
はら
)
120
漸
(
やうや
)
く
越
(
こ
)
えてテルの
国
(
くに
)
121
テル
山峠
(
やまたうげ
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
122
登
(
のぼ
)
りつ
下
(
くだ
)
りつ
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
123
鞭
(
むち
)
うち
進
(
すす
)
む
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
124
かよわき
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
を
持
(
も
)
つて
125
天涯
(
てんがい
)
万里
(
ばんり
)
の
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
126
渡
(
わた
)
り
来
(
きた
)
るも
何故
(
なにゆゑ
)
ぞ
127
顕幽神
(
けんいうしん
)
の
三界
(
さんかい
)
の
128
身魂
(
みたま
)
を
助
(
たす
)
け
救
(
すく
)
ふ
為
(
ため
)
129
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
130
神
(
かみ
)
の
水火
(
いき
)
より
生
(
うま
)
れたる
131
末子
(
すゑこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
132
完美
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
にきこしめし
133
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
池
(
いけ
)
を
134
見
(
み
)
すてて
天
(
あめ
)
に
昇
(
のぼ
)
りませ
135
如何
(
いか
)
なる
罪
(
つみ
)
のあるとても
136
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
ひ
玉
(
たま
)
ふ
137
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
贖
(
あがな
)
ひに
138
忽
(
たちま
)
ち
消
(
き
)
ゆる
春
(
はる
)
の
雪
(
ゆき
)
139
花
(
はな
)
は
紅
(
くれなゐ
)
、
葉
(
は
)
は
緑
(
みどり
)
140
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
汝
(
な
)
が
命
(
みこと
)
141
感
(
かん
)
じ
玉
(
たま
)
はば
今直
(
いますぐ
)
に
142
此
(
こ
)
れの
古巣
(
ふるす
)
を
振棄
(
ふりす
)
てて
143
元
(
もと
)
つ
御座
(
みくら
)
に
返
(
かへ
)
りませ
144
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
145
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
146
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
つた。
147
不思議
(
ふしぎ
)
や
池水
(
ちすゐ
)
は
左右
(
さいう
)
にパツと
開
(
ひら
)
けて、
148
白竜
(
はくりう
)
の
姿
(
すがた
)
忽然
(
こつぜん
)
として
現
(
あら
)
はれ、
149
末子姫
(
すゑこひめ
)
が
側近
(
そばちか
)
く
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
150
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
し、
151
頭首
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れ、
152
暫
(
しば
)
しは
身動
(
みうご
)
きもせず
俯伏
(
ふふく
)
しゐる。
153
稍
(
やや
)
あつて
白竜
(
はくりう
)
は
其
(
その
)
体
(
たい
)
を
縮小
(
しゆくせう
)
し、
154
遂
(
つひ
)
には
目
(
め
)
に
止
(
と
)
まらなくなつて
了
(
しま
)
つた。
155
──
頭上
(
づじやう
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
音楽
(
おんがく
)
の
声
(
こゑ
)
、
156
一同
(
いちどう
)
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
眺
(
なが
)
むれば、
157
竜神
(
りうじん
)
解脱
(
げだつ
)
の
喜
(
よろこ
)
びに
数多
(
あまた
)
の
天人
(
てんにん
)
舞
(
ま
)
ひ
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
158
さも
麗
(
うるは
)
しき
女神
(
めがみ
)
の
姿
(
すがた
)
と
化
(
くわ
)
したる
巽
(
たつみ
)
の
池
(
いけ
)
の
竜神
(
りうじん
)
を
守
(
まも
)
りつつ、
159
天空
(
てんくう
)
高
(
たか
)
く
消
(
き
)
えて
行
(
ゆ
)
くのであつた。
160
(
大正一一・八・一五
旧六・二三
松村真澄
録)
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