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第一六章 (あら)しの(もり)〔八五八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第4篇 修理固成 よみ(新仮名遣い):しゅうりこせい
章:第16章 荒しの森 よみ(新仮名遣い):あらしのもり 通し章番号:858
口述日:1922(大正11)年08月16日(旧06月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ウラル教徒を追い払った国依別が、宣伝使としての一人旅を満喫しながら森の木陰に休んでいると、星明りの中、走りよってくる二つの影がある。国依別が呼び止めて誰何すると、二人は平伏し、自分たちは飢饉から救ってもらった国人でキジ、マチとそれぞれ名乗った。
二人の若者・キジとマチは、国依別を慕って弟子になるために追って来たのだという。国依別は、せっかく一人旅の愉快さに心を躍らせていたところで迷ったが、自分を慕って山川を越えて追って来てくれた男たちを追い返すのに忍びなく、これも神様の大御心と思い切り、二人の随行を許した。
キジとマチは喜び、三人はヒルの都を目指していくこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-02-14 18:59:04 OBC :rm3016
愛善世界社版:189頁 八幡書店版:第5輯 639頁 修補版: 校定版:202頁 普及版:75頁 初版: ページ備考:
001(かしら)淡雲(たんうん)(いただ)
002(こし)(かすみ)(おび)(ひき)まはし
003ヒルとテルとの国堺(くにざかひ)
004大山脈(だいさんみやく)(その)(なか)
005屹然(きつぜん)として()
006青葉(あをば)(ころも)(まと)ひたる
007御倉山(みくらやま)(ふもと)渓流(けいりう)
008淙々(そうそう)として天然(てんねん)(こと)(だん)
009涼風(りやうふう)(つね)新鮮(しんせん)空気(くうき)(おく)
010天国(てんごく)浄土(じやうど)(この)仙境(せんきやう)
011(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)(あめ)()らず(かぜ)()かず
012木々(きぎ)(こずゑ)(しほ)れて
013(あたか)枯葉(こえふ)(ごと)
014あゝ如何(いか)なる(てん)(いまし)めか
015国魂神(くにたまがみ)御怒(みいか)りに()でたるか
016()(おそ)ろしき残酷(ざんこく)(うち)
017(おちい)りし(ごと)国人(くにびと)悲哀(ひあい)(こゑ)
018(あした)(ちち)()(わか)
019(ゆふ)べに(はは)()えぬ(きやう)(おく)
020幼児(をさなご)はかわける慈母(じぼ)(ちち)にすがり
021(かな)しげに()(さけ)
022あゝ天地(あめつち)(あひだ)
023(かみ)はまさずや、おはさずや
024御倉山(みくらやま)谷川(たにがは)(みづ)(きよ)
025(うを)溌溂(はつらつ)として激流(げきりう)(およ)
026人間(にんげん)(この)(くるし)める惨状(さんじやう)
027(ゆめ)にも()らぬ(ひと)()
028あゝ(かみ)()(うま)れし人間(にんげん)
029饑餲(きかつ)(まく)(つつ)まれて
030餓鬼道(がきだう)(ちまた)(まよ)
031(くるし)める(この)(あは)れさ
032(ひと)(うゑ)(くるし)
033(うを)洋々(やうやう)として清流(せいりう)(あそ)
034(はた)して(なに)天意(てんい)ぞや
035あゝ(この)矛盾(むじゆん)、あゝ(この)悲惨(ひさん)
036天地(てんち)(かみ)()そなはせ
037国魂神(くにたまがみ)国人(くにびと)
038(まも)りまさずや朝夕(あさゆふ)
039(そら)打仰(うちあふ)(つち)()
040(いの)りし甲斐(かひ)もあらざりしや
041(いま)()(つか)()()ぢて
042黄泉(よもつ)(くに)よりうとび()
043()()(まか)すより
044詮術(せんすべ)もなき(この)悲惨(ひさん)さよ。
045国人(くにびと)老若(らうにやく)男女(なんによ)(へだ)てもなく
046国魂(くにたま)(やしろ)()して
047家路(いへぢ)(あと)竜世姫(たつよひめ)
048谷川(たにがは)()(ひざまづ)
049(こゑ)(よわ)りて(むし)()
050秋野(あきの)にすだく(ごと)くなる
051()(あて)られぬ悲惨(ひさん)(まく)
052()つて()ろした(とき)しもあれや
053(とき)(うかが)(すき)(ねら)
054()ちに()ちたるウラル(けう)
055(かみ)(つかさ)のブール
056アナン、ユーズの(さん)(にん)
057(ほか)二三(にさん)伴人(ともびと)(とも)
058(たちま)(この)()(あら)はれて
059軽生(けいせい)重死(ぢうし)教理(けうり)()きぬ
060されどされど人々(ひとびと)
061(いま)()のあたり(うゑ)()
062(たま)()(いのち)()れなむとする
063(いま)(この)(とき)この(さい)
064如何(いか)(たふと)(かみ)(をしへ)なればとて
065パンを(はな)れて(かみ)慈愛(じあい)(こころ)
066いかで肯定(こうてい)()
067否定(ひてい)(やみ)谷川(たにがは)
068空気(くうき)(にご)して物凄(ものすご)
069あゝ天道(てんだう)(ひと)(ころ)さず
070人生(じんせい)一期(いちご)九分(くぶ)九厘(くりん)
071(はや)(たま)()()れなむとする
072(その)(とき)もあれ
073仁慈(じんじ)()てる(かみ)(つかさ)
074言依別(ことよりわけ)大教主(だいけうしゆ)
075国依別(くによりわけ)(ともな)ひて
076(はと)(ごと)くに(くだ)りまし
077あゝ()(せい)大神(おほかみ)(こころ)
078老若(らうにやく)男女(なんによ)(むね)(うち)
079谷川(たにがは)水音(みなおと)ならで
080(むね)のとどろき
081(よろこ)びの飛沫(ひまつ)(かな)しみの(なみ)
082(みなぎ)りおつる滝津瀬(たきつせ)
083否定(ひてい)(なみだ)(あはれ)なる。
084ウラルの(をしへ)神司(かむづかさ)
085熱弁(ねつべん)(ふる)
086口角(こうかく)飛沫(ひまつ)をとばし
087(しき)りに天国(てんごく)福音(ふくいん)宣示(せんじ)
088(かみ)(れい)なり(ひと)はパンのみにて
089()くるものにあらず。
090あゝ(れい)なる(かな)(れい)なる(かな)
091生命(いのち)(みづ)にかわける(もの)
092かわく(こと)なく()くる(こと)なき
093(たま)真清水(ましみづ)()きよ
094天国(てんごく)(なんぢ)のものなり
095大三災(だいさんさい)小三災(せうさんさい)
096こもごも(きた)(やみ)()
097(いとま)()げて(かみ)御国(みくに)
098(いま)(すく)はれむとする
099審判(さばき)御手(みて)(くだ)されたり
100あゝ(なんぢ)()(かみ)慈愛(じあい)()
101混濁(こんだく)せる下界(げかい)
102(こころ)()くなと(をし)
103あゝ(なん)たる悲惨(ひさん)残酷(ざんこく)
104(ひと)はパンのみにて(いく)(もの)
105あらざると(とも)(また)(ひと)()
106(れい)のみにて()くる(もの)にあらず
107(れい)(にく)とは陰陽(いんやう)(ごと)
108夫婦(ふうふ)(ごと)
109ウラル(けう)(れい)偏重(へんぢう)
110(てん)堕落(だらく)し、(かみ)(くるし)
111現幽(げんいう)一致(いつち)霊肉(れいにく)同根(どうこん)
112教理(けうり)()
113()(にく)(なや)みを(すく)
114(れい)(すく)
115三五教(あななひけう)()救世(きうせい)真理(しんり)
116(みづ)御霊(みたま)()れませる
117言依別(ことよりわけ)神司(かむづかさ)
118国依別(くによりわけ)慈愛(じあい)言葉(ことば)
119同情(どうじやう)(なみだ)
120かわきたる(ひと)(よみがへ)
121(その)(にく)(さか)え、(れい)(わら)
122枯野(かれの)(ごと)地獄(ぢごく)(ごと)
123(すさ)みし(つち)(うへ)
124(この)谷川(たにがは)(みづ)にうるほひ
125(にく)()
126(たちま)地獄(ぢごく)天国(てんごく)(くわ)する
127(かみ)(かなら)ずしも(とほ)きにまさず
128(たか)きにあらず
129天国(てんごく)(たのし)みは眼前(がんぜん)にあり
130()(うち)にあり
131(こころ)(うち)法悦(はふえつ)(はな)(ひら)
132歓喜(よろこび)(みづ)永久(とこしへ)()
133あゝ(なん)たる(かみ)慈愛(じあい)
134御恵(みめぐみ)
135言依別(ことよりわけ)慈愛(じあい)(なみだ)
136暗澹(あんたん)たる天地(てんち)(やみ)をてらし
137国依別(くによりわけ)()(おも)
138(あか)(こころ)森羅(しんら)万象(ばんしやう)
139天津(あまつ)()(ひか)りに()
140あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
141()のあたり天国(てんごく)(なが)
142浄土(じやうど)(たの)しむ
143三五教(あななひけう)(ぜん)
144ウラルの(をしへ)(ぜん)
145(れい)()きむとして(たい)()
146(たい)()きむとして(れい)()
147かかる悲惨(ひさん)天地(あめつち)
148(かみ)はいかでか看過(かんくわ)せむ
149(れい)()(にく)()
150霊肉(れいにく)一致(いつち)顕幽(けんいう)一本(いつぽん)真諦(しんたい)()
151(たて)(よこ)との綾錦(あやにしき)
152()()(たま)栲幡姫(たくはたひめ)
153(あやつ)(いと)のいと(なが)
154いや永久(とこしへ)(かみ)栄光(えいくわう)
155(めぐみ)(かみ)(おん)()(うま)
156(かみ)生宮(いきみや)()れます
157人々(ひとびと)(うへ)(くだ)れかし
158あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
159(かみ)御前(みまへ)鰭伏(ひれふ)して
160まだ()(さき)()(なか)
161世人(よびと)(ため)(いの)(たてまつ)る。
162国依別(くによりわけ)御倉山(みくらやま)渓間(けいかん)
163(かみ)(をしへ)()きさとし
164(うゑ)(くるし)国人(くにびと)(いのち)(すく)
165永久(とこしへ)(かは)らず(うご)かず
166(なや)みもなく(ほろ)びもなき
167(かみ)御国(みくに)真相(しんさう)()
168娑婆(しやば)(そく)寂光(じやくくわう)浄土(じやうど)真諦(しんたい)
169人々(ひとびと)眼前(がんぜん)顕示(けんじ)
170(かみ)威徳(ゐとく)慈光(じくわう)(よく)せしめ
171国人(くにびと)(なか)より
172いとも(すぐ)れたる
173パークスなる(をとこ)
174(くは)しく(をしへ)()(しめ)
175()足彦(たるひこ)(あらた)めさせ
176御倉(みくら)宮司(みやつかさ)として
177数多(あまた)人々(ひとびと)(いとま)()
178宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)
179山伝(やまづた)ひに惟神(かむながら)()(まか)
180やうやうチルの(むら)
181(あら)しの(もり)(さし)かかる
182()りしもウラル(けう)神司(かむづかさ)
183御倉(みくら)(やま)谷川(たにがは)にて
184言依別(ことよりわけ)国依別(くによりわけ)
185神退(かむやら)ひに退(やら)はれたる
186意恨(いこん)()らさむと
187宣伝使(せんでんし)ブールを先頭(せんとう)
188アナン、ユーズの神司(かむづかさ)
189数多(あまた)信徒(しんと)使嗾(しそう)
190天国(てんごく)破壊者(はくわいしや)として
191十重(とへ)二十重(はたへ)取巻(とりま)
192(たま)()(いのち)(うば)はむと
193(たけ)(くる)(その)可笑(をか)しさ
194国依別(くによりわけ)(きた)()つたる(たましひ)
195(ひかり)(くは)へて(きう)(たま)
196(その)霊光(れいくわう)()(ひた)
197(いま)神徳(しんとく)(あら)はれ(どき)
198(しう)(むか)つて右手(みぎて)指頭(しとう)より
199さも強烈(きやうれつ)なる
200五色(ごしき)霊光(れいくわう)発射(はつしや)したれば
201ブール、アナン
202ユーズを(はじ)めとし
203生命(いのち)カラガラ()げて()く。
204 国依別(くによりわけ)はウラル(けう)()()の、205蜘蛛(くも)()()らすが(ごと)く、206四方(しはう)散乱(さんらん)した()に、207(しばら)(いき)(やす)め、208(あら)しの(もり)木蔭(こかげ)腰打(こしうち)かけて、209しばし瞑想(めいさう)(ふけ)りつつ、210国依別(くによりわけ)独語(ひとりごと)
211国依別『アヽ宣伝使(せんでんし)(じつ)愉快(ゆくわい)(もの)だワイ。212三五教(あななひけう)御教(みをしへ)に、213宣伝使(せんでんし)一人(ひとり)(もの)(さだ)められてある。214言依別(ことよりわけ)(さま)御倉(みくら)谷間(たにあひ)(おい)て、215すげなくも(たもと)(わか)(たま)ひし(とき)216(なん)となく(さび)しみを(かん)じ、217()(みこと)冷酷(れいこく)(うら)んだ。218(しか)(なが)ら、219大教主(だいけうしゆ)言葉(ことば)(ふか)(つつし)み、220(ただ)一言(ひとこと)反問(はんもん)さへせなかつた。221(しか)(なが)(いま)になつて()れば、222(じつ)一人旅(ひとりたび)(くらゐ)愉快(ゆくわい)なものはない。223否々(いないな)(けつ)して(われ)一人旅(ひとりたび)にあらず、224(かみ)(なんぢ)(とも)にありとの神示(しんじ)は、225炳乎(へいこ)として日星(につせい)(ごと)(かがや)(たま)ふ。226正義(せいぎ)(てき)する(あだ)もなく、227(まこと)(きず)つくる(やいば)もなし。228あゝ面白(おもしろ)(かな)宣伝(せんでん)(たび)! あゝ(いさ)ましき(かな)宣伝使(せんでんし)職掌(しよくしやう)! 広大(くわうだい)無辺(むへん)大宇宙(だいうちう)住処(ぢうしよ)とし、229天地(てんち)(あひだ)跋渉(ばつせふ)する(こころ)愉快(ゆくわい)さ! ねぢけ(まが)れるウラル(けう)神司(かむづかさ)230信徒(しんと)を、231いざ()れよりは(すく)(たす)けて、232娑婆(しやば)(そく)寂光(じやくくわう)浄土(じやうど)真諦(しんたい)()きさとし、233現代(げんだい)面白(おもしろ)く、234(たの)しく(いさ)ましく、235(すご)させ、236(また)霊魂(れいこん)(よろこ)びと(やす)きを(あた)へ、237(もつ)(かみ)御国(みくに)地上(ちじやう)建設(けんせつ)せむ。238アヽ惟神(かむながら)239御霊(みたま)(さち)はひましまして、240(あめ)(した)青人草(あをひとぐさ)を、241(なつ)木草(きくさ)青々(あをあを)(さか)ゆるが(ごと)く、242()(さか)えしめ(たま)へ! 国依別(くによりわけ)243(てん)(せぐく)まり、244()(ぬきあし)して、245大神(おほかみ)御前(みまへ)祈願(きぐわん)(たてまつ)る』
246両手(りやうて)(あは)せ、247法悦(はふえつ)(よろこ)びを(あぢ)はふ。
248 (この)(とき)(あわた)だしく(この)()(むか)つて(はし)(きた)(ふた)つの(かげ)があつた。249国依別(くによりわけ)(この)(かげ)星明(ほしあか)りにすかし(なが)め、
250国依別『ヤアそれなる(ひと)よ、251()れは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)国依別(くによりわけ)なり。252(あわた)だしく(いづ)れに(むか)つて()(たま)ふか?』
253突然(とつぜん)(もり)木蔭(こかげ)より(こゑ)をかけられ、254二人(ふたり)(たちま)大地(だいち)(しや)がみ(なが)ら、
255キジ、マチ『ハイ(わたくし)はあなたに(すく)はれました、256キジと(まを)(もの)御座(ござ)います、257……(わたくし)はマチと(まを)(もの)御座(ござ)います。258……両親(りやうしん)餓死(がし)し、259妻子(さいし)(また)饑餓(きが)(せま)られて帰幽(きいう)260(いま)吾々(われわれ)両人(りやうにん)(とも)261両親(りやうしん)妻子(さいし)(うしな)ひし不運(ふうん)()(うへ)262最早(もはや)(この)()()きて(なに)(たの)しみもなしと()(けつ)し、263御倉(みくら)(やま)谷川(たにがは)(よこた)はり()()(うち)264有難(ありがた)くも、265あなた(さま)()二人(ふたり)266何処(いづこ)よりか(あら)はれ(たま)ひ、267吾々(われわれ)国人(くにびと)生命(いのち)(たす)(たま)ひし有難(ありがた)さ。268かかる(たふと)神恩(しんおん)(よく)(なが)ら、269(その)御恩(ごおん)(はう)ぜず、270のめのめと酔生(すゐせい)夢死(むし)するに(しの)びず。271吾々(われわれ)(すく)はれし(ごと)(また)()(ひと)(すく)ひまつり、272神恩(しんおん)(はう)ぜむと、273(あと)(した)遥々(はるばる)(まゐ)つた(もの)御座(ござ)います。274どうぞあなた(さま)従僕(じゆうぼく)となし、275(とも)をさして(いただ)きたう(ぞん)じまして、276ここまで(まゐ)りました。277幾重(いくへ)にも(よろ)しく()(ゆる)しの(ほど)()(ねが)(いた)します』
278 国依別(くによりわけ)(こころ)(うち)に、
279国依別『ハテ(こま)つたなア、280折角(せつかく)一人旅(ひとりたび)愉快(ゆくわい)(さと)り、281天空(てんくう)海濶(かいくわつ)(なん)気遣(きづか)ひもなく、282自由(じいう)自在(じざい)(かみ)(くに)跋渉(ばつせふ)せむと(よろこ)(いさ)んだのも(つか)()だ。283……折角(せつかく)ここまで(とほ)山坂(やまさか)()え、284(した)うて()二人(ふたり)(をとこ)285無下(むげ)(ことわ)(わけ)にも()こまい。286アヽ仕方(しかた)がない。287これも(かみ)(さま)大御心(おほみこころ)だらう……』
288(くち)(うち)(つぶ)やき(なが)ら、289(おも)()つた(やう)に、290国依別(くによりわけ)二人(ふたり)(むか)ひ、
291国依別三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)一人旅(ひとりたび)するのが、292(かみ)(をきて)である。293されど今回(こんくわい)(かぎ)(ゆる)しませう』
294キジ『早速(さつそく)()(ゆる)し、295有難(ありがた)(ぞん)じます』
296マチ『何卒(なにとぞ)不束(ふつつか)(もの)御座(ござ)いますが、297(よろ)しく()(ねが)(いた)します』
298(うれ)(なみだ)()れる。299(これ)より国依別(くによりわけ)は、300キジ、301マチの若者(わかもの)引連(ひきつ)れ、302ヒルの(みやこ)()して(すす)()く。
303大正一一・八・一六 旧六・二四 松村真澄録)
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