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第74巻(丑の巻)
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第51巻(寅の巻)
序文
総説
第1篇 霊光照魔
01 春の菊
〔1316〕
02 怪獣策
〔1317〕
03 犬馬の労
〔1318〕
04 乞食劇
〔1319〕
05 教唆
〔1320〕
06 舞踏怪
〔1321〕
第2篇 夢幻楼閣
07 曲輪玉
〔1322〕
08 曲輪城
〔1323〕
09 鷹宮殿
〔1324〕
10 女異呆醜
〔1325〕
第3篇 鷹魅艶態
11 乙女の遊
〔1326〕
12 初花姫
〔1327〕
13 槍襖
〔1328〕
14 自惚鏡
〔1329〕
15 餅の皮
〔1330〕
第4篇 夢狸野狸
16 暗闘
〔1331〕
17 狸相撲
〔1332〕
18 糞奴使
〔1333〕
19 偽強心
〔1334〕
20 狸姫
〔1335〕
21 夢物語
〔1336〕
余白歌
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第五章
教唆
(
けうさ
)
〔一三二〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:
第1篇 霊光照魔
よみ(新仮名遣い):
れいこうしょうま
章:
第5章 教唆
よみ(新仮名遣い):
きょうさ
通し章番号:
1320
口述日:
1923(大正12)年01月25日(旧12月9日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫と妖幻坊はいちゃいちゃしながら酒を飲んでいた。そこへ初と徳の両人が青い顔をして帰ってきた。高姫が首尾を尋ねると、初と徳は松姫が言うことを聞かず、杢助を兇党界の化け物だと言っていると報告した。
高姫と妖幻坊は、初と徳が松姫にしてやられたことを悟った。妖幻坊は二人に、今度はしっかり武装していくように言いつけ、松姫を倒した方が上役になるとけしかけた。初と徳は喧嘩装束に棍棒を携え、松姫館に進んで行った。
お千代はスマートと共につつじの花をちぎりながら、向こうの谷の森林で遊んでいた。スマートはにわかに体をふるわせて、お千代の袖をくわえて引っ張り始めた。そこへお菊が走ってやってきた。お千代とお菊はスマートの様子がただならないので、もしや松姫の身に何かあったのではないかと松姫館に急いで戻り始めた。
松姫はただ一人、神殿に向かって神示を伺っていた。そこへ戸を押し破って初と徳がやってきた。二人は樫の棒を持って松姫に打ってかかる。松姫はそこにあった机を取って、神助を祈りながらしばらく防戦に努めていた。
松姫は数十合も戦ってもはや体力尽き、二人の棍棒に打ち殺されようかというとき、宙を飛んで駆けてきたスマートは、初と徳の足をくわえて引き倒し、唸りながら睨みつけた。
二人は起き上がり、ほうほうの態で杢助と高姫のところに逃げて行った。初と徳の報告を聞いた杢助と高姫は、なかなか松姫をやっつけるのが容易でないと悟ると、初と徳が勝手に松姫に乱暴を働いたということにして、松姫を懐柔する策に出た。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-08-05 20:15:40
OBC :
rm5105
愛善世界社版:
71頁
八幡書店版:
第9輯 291頁
修補版:
校定版:
73頁
普及版:
34頁
初版:
ページ備考:
001
妖幻坊
(
えうげんばう
)
、
002
高姫
(
たかひめ
)
は、
003
イチヤイチヤ
云
(
い
)
ひながら
酒
(
さけ
)
を
汲
(
く
)
み
交
(
か
)
はし、
004
ヘベレケになつた
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
無理
(
むり
)
をなだめながら、
005
初公
(
はつこう
)
、
006
徳公
(
とくこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
返答
(
へんたふ
)
如何
(
いか
)
にと
心待
(
こころま
)
ちに
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
007
そこへスタスタと
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
して
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのは、
008
初公
(
はつこう
)
、
009
徳公
(
とくこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
であつた。
010
高姫
(
たかひめ
)
は
目敏
(
めざと
)
く
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
011
高姫
『オイ
両人
(
りやうにん
)
、
012
えらい
暇
(
ひま
)
が
要
(
い
)
つたぢやないか、
013
どうだつたな。
014
松姫
(
まつひめ
)
はウンと
云
(
い
)
つただらう』
015
初
(
はつ
)
『へい、
016
イヤもう
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
017
それはそれは
偉
(
えら
)
いものですなア、
018
本当
(
ほんたう
)
に
一寸
(
ちよつと
)
手
(
て
)
に
合
(
あ
)
ひませぬわ』
019
高姫
『
手
(
て
)
に
合
(
あ
)
はぬとは、
020
松姫
(
まつひめ
)
が
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かないと
云
(
い
)
ふのかえ』
021
初
『オイ
徳
(
とく
)
、
022
貴様
(
きさま
)
は
高姫
(
たかひめ
)
さまの
代理
(
だいり
)
ぢやないか、
023
お
前
(
まへ
)
代
(
かは
)
つて
報告
(
はうこく
)
して
呉
(
く
)
れ』
024
徳
(
とく
)
『エエ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
025
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
によつて
種々
(
いろいろ
)
と
申
(
まを
)
しました
所
(
ところ
)
、
026
松姫
(
まつひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
027
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
がのり
憑
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
028
それはそれは
偉
(
えら
)
い
勢
(
いきほひ
)
で、
029
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
云
(
い
)
つた
位
(
くらゐ
)
では
かて
つけませぬがな』
030
高姫
『かてつかぬとはどうしたと
云
(
い
)
ふのだえ。
031
つまり
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
聞
(
き
)
かないと
云
(
い
)
ふのかえ』
032
徳
『ハイ、
033
聞
(
き
)
かないとも
申
(
まを
)
しませぬが、
034
お
前
(
まへ
)
さまにはいろいろのものが
雑居
(
ざつきよ
)
してゐるさうですよ。
035
さうして
杢助
(
もくすけ
)
さまは
大雲山
(
たいうんざん
)
の
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
云
(
い
)
ふ
妖怪
(
えうくわい
)
だといつて
居
(
ゐ
)
ましたよ。
036
何
(
なん
)
とかして
追
(
お
)
つぽり
出
(
だ
)
す
積
(
つも
)
りだと
意気込
(
いきご
)
んで
居
(
を
)
りましたよ』
037
高姫
『
何
(
なん
)
と、
038
杢助
(
もくすけ
)
さまを
妖幻坊
(
えうげんばう
)
だと、
039
いよいよもつて
怪
(
け
)
しからぬ。
040
松姫
(
まつひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
041
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
るとどんな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか
分
(
わか
)
つたものぢやない。
042
これ
杢助
(
もくすけ
)
さま、
043
起
(
お
)
きなさらぬかいな。
044
お
前
(
まへ
)
さまを
本当
(
ほんたう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
ぢやない、
045
化州
(
ばけしう
)
だと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るさうですよ』
046
妖幻
(
えうげん
)
『ハハハハハ、
047
化物
(
ばけもの
)
と
云
(
い
)
つたか、
048
さうであらう。
049
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
でさへも
大化物
(
おほばけもの
)
と
云
(
い
)
はれて
居
(
ゐ
)
るのだから、
050
俺
(
おれ
)
も
化物
(
ばけもの
)
と
云
(
い
)
はれるやうになれば
光栄
(
くわうえい
)
だ。
051
高姫
(
たかひめ
)
喜
(
よろこ
)
べ、
052
これでもつて
俺
(
おれ
)
の
人物
(
じんぶつ
)
の
偉大
(
ゐだい
)
崇高
(
すうかう
)
なる
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
るだらう、
053
アハハハハ』
054
初
(
はつ
)
『それでも
化物
(
ばけもの
)
と
松姫
(
まつひめ
)
の
云
(
い
)
つたのは、
055
そんな
意味
(
いみ
)
ではありますまいぜ、
056
貴方
(
あなた
)
は
何
(
なん
)
でも
大雲山
(
たいうんざん
)
の
妖幻坊
(
えうげんばう
)
だとか
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたよ』
057
妖幻坊の杢助
『
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だ、
058
さう
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はして
置
(
お
)
いては、
059
吾々
(
われわれ
)
の
目的
(
もくてき
)
の
邪魔
(
じやま
)
になる。
060
こりや
何
(
なん
)
とか
致
(
いた
)
さねばなるまい。
061
俺
(
おれ
)
が
行
(
い
)
つて
取
(
と
)
り
挫
(
ひし
)
いでやるのは
容易
(
たやす
)
い
事
(
こと
)
だが、
062
それでは
余
(
あま
)
り
大人気
(
おとなげ
)
ない。
063
オイ
初
(
はつ
)
、
064
徳
(
とく
)
、
065
俺
(
おれ
)
の
最前
(
さいぜん
)
言
(
い
)
つたやうに
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つてやつつけろ。
066
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も
俺
(
おれ
)
の
両腕
(
りやううで
)
となつた
以上
(
いじやう
)
は、
067
今
(
いま
)
が
手柄
(
てがら
)
の
仕所
(
しどころ
)
だ』
068
初
(
はつ
)
『ヘエ、
069
エエやつつけますが、
070
それがそれ
中々
(
なかなか
)
の
強
(
したた
)
かものでげして、
071
実
(
じつ
)
はその、
072
エー
何
(
なん
)
でげす』
073
と
頭
(
あたま
)
をガシガシ
掻
(
か
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
074
高姫
(
たかひめ
)
『コレみつともない。
075
松姫
(
まつひめ
)
にやられて
来
(
き
)
たのだな。
076
時
(
とき
)
に
杢助
(
もくすけ
)
さま、
077
やつつけろと
仰有
(
おつしや
)
つたが、
078
滅多
(
めつた
)
に
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をなさるのぢやありますまいな。
079
松姫
(
まつひめ
)
は
私
(
わたし
)
の
弟子
(
でし
)
ですよ。
080
何程
(
なにほど
)
反対
(
はんたい
)
致
(
いた
)
しても、
081
私
(
わたし
)
は
彼奴
(
あいつ
)
を
構
(
かま
)
うてやらねばなりませぬ』
082
妖幻
(
えうげん
)
『
何
(
なん
)
と
高姫
(
たかひめ
)
さま、
083
貴女
(
あなた
)
は
慈善家
(
じぜんか
)
ぢやなア。
084
ヤ、
085
感心
(
かんしん
)
々々
(
かんしん
)
、
086
それなら
何故
(
なぜ
)
、
087
珍彦
(
うづひこ
)
に
毒酸
(
どくさん
)
を
盛
(
も
)
つたり、
088
虬
(
みづち
)
の
血
(
ち
)
を
盛
(
も
)
つた
盃
(
さかづき
)
を
与
(
あた
)
へたのだ。
089
やつぱり
奥
(
おく
)
には
奥
(
おく
)
があるのかなア、
090
アハハハハ』
091
高姫
『これ
初
(
はつ
)
さま、
092
徳
(
とく
)
さま、
093
きつと
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をしてはなりませぬよ。
094
併
(
しか
)
し
正当
(
せいたう
)
防衛
(
ばうゑい
)
は
此
(
この
)
限
(
かぎ
)
りにあらずだから、
095
どうか
杢助
(
もくすけ
)
さまのお
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
つて
一働
(
ひとはたら
)
きして
下
(
くだ
)
さいな』
096
初
『ヘエ
私
(
わたし
)
は
何
(
なん
)
でも
致
(
いた
)
しますが、
097
この
徳
(
とく
)
の
奴
(
やつ
)
が
臆病
(
おくびやう
)
ですから、
098
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られて
思
(
おも
)
ふやうに
働
(
はたら
)
けませぬわ』
099
妖幻
(
えうげん
)
『それならお
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
行
(
い
)
つてやつて
来
(
き
)
たらどうだ。
100
多寡
(
たくわ
)
が
女
(
をんな
)
の
一匹
(
いつぴき
)
ぢやないか。
101
それ
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
なくて、
102
大望
(
たいまう
)
な
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
るか』
103
初
『
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
では、
104
どうも
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いぢやありませぬか、
105
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
106
貴方
(
あなた
)
の
両腕
(
りやううで
)
ぢやありませぬか、
107
片腕
(
かたうで
)
では
飯
(
めし
)
喰
(
く
)
ふ
事
(
こと
)
も、
108
針仕事
(
はりしごと
)
一
(
ひと
)
つする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ませぬだらう。
109
それだから、
110
どうしても
徳
(
とく
)
を
邪魔
(
じやま
)
になつても
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かなくちや
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いですな』
111
徳
(
とく
)
『
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな、
112
貴様
(
きさま
)
が
一番
(
いちばん
)
がけに
霊縛
(
れいばく
)
にかかつてふん
伸
(
の
)
びたぢやないか』
113
初
『ふん
伸
(
の
)
びたのは
貴様
(
きさま
)
も
同然
(
どうぜん
)
だ、
114
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない』
115
徳
『それでも
第一着
(
だいいつちやく
)
に
貴様
(
きさま
)
がふん
伸
(
の
)
びたのだ。
116
俺
(
おれ
)
はおつき
合
(
あひ
)
にふん
伸
(
の
)
びて
居
(
ゐ
)
たのだ。
117
余程
(
よつぽど
)
松姫
(
まつひめ
)
が
怖
(
おそ
)
ろしいと
見
(
み
)
えるのう。
118
そんな
事
(
こと
)
で
俺
(
おれ
)
の
上役
(
うはやく
)
にはなれぬぞ。
119
サアどうだ、
120
茲
(
ここ
)
で
彼奴
(
あいつ
)
を
倒
(
たふ
)
した
方
(
はう
)
が
上役
(
うはやく
)
にして
頂
(
いただ
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
願
(
ねが
)
はうぢやないか』
121
妖幻
(
えうげん
)
『アハハハハ、
122
そりやさうだ、
123
手柄
(
てがら
)
があつた
方
(
はう
)
が
上役
(
うはやく
)
になるのは
当然
(
あたりまへ
)
だよ、
124
ちやんと
草鞋
(
わらぢ
)
でもはいて
足装束
(
あししやうぞく
)
をし、
125
身動
(
みうご
)
きのし
易
(
やす
)
いやうにして
行
(
ゆ
)
くのだ』
126
初、徳
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました』
127
と
両人
(
りやうにん
)
は、
128
慌
(
あわただ
)
しく
納屋
(
なや
)
に
入
(
い
)
り、
129
喧嘩
(
けんくわ
)
装束
(
しやうぞく
)
に
身
(
み
)
を
固
(
かた
)
め、
130
樫
(
かし
)
の
棍棒
(
こんぼう
)
を
携
(
たづさ
)
へて
松姫館
(
まつひめやかた
)
に
進
(
すす
)
むべく
準備
(
じゆんび
)
に
取
(
と
)
り
掛
(
かか
)
つた。
131
妖幻坊
(
えうげんばう
)
、
132
高姫
(
たかひめ
)
は
以前
(
いぜん
)
の
如
(
ごと
)
く、
133
ひそひそ
何事
(
なにごと
)
か
囁
(
ささや
)
きながら
飲酒
(
いんしゆ
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
134
お
千代
(
ちよ
)
はスマートと
共
(
とも
)
に
躑躅
(
つつじ
)
の
花
(
はな
)
などをちぎり
戯
(
たはむ
)
れながら、
135
向
(
むか
)
ふの
谷
(
たに
)
の
森林
(
しんりん
)
に
何時
(
いつ
)
とはなしに
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
136
スマートは
何
(
なん
)
とはなしに
俄
(
にはか
)
に
体
(
からだ
)
を
慄
(
ふる
)
はせ、
137
遂
(
つひ
)
にはお
千代
(
ちよ
)
の
袖
(
そで
)
を
銜
(
くは
)
へて
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
り
出
(
だ
)
した。
138
お
千代
(
ちよ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
139
お千代
『これスマートや、
140
何
(
なに
)
をするのだい。
141
ちつと
温順
(
おとな
)
しうおしんか』
142
とぴしやつと
横面
(
よこつら
)
をはる。
143
其処
(
そこ
)
へ
慌
(
あわただ
)
しく
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
たのはお
菊
(
きく
)
であつた。
144
お
菊
(
きく
)
はハアハアと
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませ、
145
お
千代
(
ちよ
)
の
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
てやつと
安心
(
あんしん
)
したらしく、
146
お菊
『お
千代
(
ちよ
)
さま、
147
貴女
(
あなた
)
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
たの、
148
私
(
わたし
)
此処
(
ここ
)
まで
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
たのよ。
149
あの
杢助
(
もくすけ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
化物
(
ばけもの
)
だわ。
150
さうして
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
横領
(
わうりやう
)
しようと
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
151
すつかり
素破抜
(
すつぱぬ
)
いてやつて、
152
此処
(
ここ
)
まで
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
たの。
153
きつと
怒
(
おこ
)
つて
追駆
(
おつか
)
けて
来
(
く
)
るに
違
(
ちが
)
ひないと
思
(
おも
)
つたからねえ、
154
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
が
来
(
き
)
たものだわ。
155
そしてその
犬
(
いぬ
)
は
何処
(
どこ
)
から
来
(
き
)
たの』
156
お千代
『これはスマートと
云
(
い
)
つて、
157
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまの
愛犬
(
あいけん
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
よ。
158
どこともなしに
賢
(
かしこ
)
い
犬
(
いぬ
)
よ』
159
お菊
『こりやスマートさま、
160
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつたねえ。
161
何
(
なに
)
さうお
前
(
まへ
)
は
騒
(
さわ
)
ぐの、
162
些
(
ちつ
)
と
静
(
しづか
)
にしなさらぬか』
163
と
頭
(
あたま
)
を
撫
(
な
)
でる。
164
スマートは
益々
(
ますます
)
落付
(
おちつ
)
かぬ
風情
(
ふぜい
)
をする。
165
千代
(
ちよ
)
『どうも
不思議
(
ふしぎ
)
だわ、
166
大方
(
おほかた
)
お
母
(
かあ
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのぢやあるまいか。
167
俄
(
にはか
)
に
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがして
来
(
き
)
ましたわよ』
168
お
菊
(
きく
)
『あの
化物
(
ばけもの
)
奴
(
め
)
、
169
お
母
(
かあ
)
さまを
噛
(
く
)
ひに
行
(
ゆ
)
きよつたのか
知
(
し
)
れませぬ。
170
それでスマートが、
171
こんなに
騒
(
さわ
)
ぐのでせう、
172
お
千代
(
ちよ
)
さま、
173
其
(
その
)
綱
(
つな
)
を
解
(
ほど
)
いておやり』
174
お
千代
(
ちよ
)
は、
175
お千代
『さうねえ』
176
と
云
(
い
)
ひながら
松
(
まつ
)
の
株
(
かぶ
)
に
繋
(
つな
)
いだ
綱
(
つな
)
を
解
(
と
)
いた。
177
スマートは
一目散
(
いちもくさん
)
に、
178
細
(
ほそ
)
くなつて
谷
(
たに
)
を
越
(
こ
)
え
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
179
千代
(
ちよ
)
『
何
(
なん
)
とまア
早
(
はや
)
い
犬
(
いぬ
)
だ
事
(
こと
)
、
180
もう
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えなくなつて
仕舞
(
しま
)
つたわ。
181
お
菊
(
きく
)
さま、
182
私
(
わたし
)
気
(
き
)
に
掛
(
かか
)
るから
一寸
(
ちよつと
)
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ますわ。
183
お
前
(
まへ
)
さまもそこまで
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
184
お菊
『ハイお
供
(
とも
)
致
(
いた
)
しませう。
185
若
(
も
)
しも
化物
(
ばけもの
)
が
暴
(
あば
)
れて
居
(
を
)
つたら
何
(
ど
)
うしませうかねえ』
186
お千代
『サア、
187
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
をお
願
(
ねが
)
ひして
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ふより
仕方
(
しかた
)
がありませぬわ』
188
とこんな
事
(
こと
)
を
話
(
はな
)
し
合
(
あ
)
ひながら、
189
覚束
(
おぼつか
)
ない
足許
(
あしもと
)
で
小柴
(
こしば
)
を
分
(
わ
)
け、
190
松姫館
(
まつひめやかた
)
をさして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
191
さて
松姫
(
まつひめ
)
は
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
戸
(
と
)
を
閉
(
し
)
め
切
(
き
)
つて
神殿
(
しんでん
)
に
向
(
むか
)
ひ、
192
いろいろと
取
(
と
)
るべき
目下
(
もくか
)
の
方針
(
はうしん
)
について
神示
(
しんじ
)
を
伺
(
うかが
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
193
其処
(
そこ
)
へ
裏
(
うら
)
と
表
(
おもて
)
の
戸
(
と
)
を
一度
(
いちど
)
に
押
(
お
)
し
破
(
やぶ
)
り
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
たのは
初
(
はつ
)
、
194
徳
(
とく
)
の
両人
(
りやうにん
)
であつた。
195
松姫
(
まつひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
196
松姫
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
初公
(
はつこう
)
、
197
徳公
(
とくこう
)
、
198
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
何
(
なに
)
しに
来
(
き
)
たのだ』
199
初
(
はつ
)
『そんな
事
(
こと
)
問
(
と
)
ふだけ
野暮
(
やぼ
)
だ。
200
吾々
(
われわれ
)
は
杢助
(
もくすけ
)
さまの
命令
(
めいれい
)
によつて、
201
頑固
(
ぐわんこ
)
なお
前
(
まへ
)
をやつつけに
来
(
き
)
たのだ。
202
最前
(
さいぜん
)
は
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
をしやがつて
大
(
おほ
)
きに
憚
(
はばか
)
りさま。
203
今度
(
こんど
)
は
杢助
(
もくすけ
)
さまから
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
魔法
(
まはふ
)
を
授
(
さづ
)
かり
出直
(
でなほ
)
して
来
(
き
)
たのだから、
204
ジタバタしても
駄目
(
だめ
)
だ、
205
覚悟
(
かくご
)
せい』
206
と
両人
(
りやうにん
)
は
樫
(
かし
)
の
棍棒
(
こんぼう
)
をもつて
打
(
う
)
つてかかる。
207
松姫
(
まつひめ
)
は
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
208
其処
(
そこ
)
にあつた
机
(
つくゑ
)
を
取
(
と
)
るより
早
(
はや
)
く
二人
(
ふたり
)
の
打
(
う
)
ち
込
(
こ
)
む
棒
(
ぼう
)
を
右
(
みぎ
)
へ
左
(
ひだり
)
へうけ
流
(
なが
)
し、
209
暫
(
しばら
)
く
防戦
(
ばうせん
)
につとめて
居
(
ゐ
)
た。
210
そして
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
に
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたまの
)
大神
(
おほかみ
)
、
211
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたまの
)
大神
(
おほかみ
)
、
212
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ、
213
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
へと
念
(
ねん
)
じつつ、
214
命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
二人
(
ふたり
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
の
激
(
はげ
)
しき
棒先
(
ぼうさき
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
る。
215
松姫
(
まつひめ
)
は
数十合
(
すうじふがふ
)
戦
(
たたか
)
つて
見
(
み
)
たが、
216
最早
(
もはや
)
体力
(
たいりよく
)
尽
(
つ
)
き、
217
二人
(
ふたり
)
の
鋭
(
するど
)
き
棒
(
ぼう
)
に
打
(
う
)
ち
殺
(
ころ
)
されむとする
一刹那
(
いつせつな
)
、
218
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
りたる
猛犬
(
まうけん
)
スマートは、
219
矢庭
(
やには
)
に
初公
(
はつこう
)
の
足
(
あし
)
を
銜
(
くは
)
へて
引
(
ひ
)
き
倒
(
たふ
)
した。
220
続
(
つづ
)
いて
徳公
(
とくこう
)
の
足
(
あし
)
を
又
(
また
)
もや
銜
(
くは
)
へて
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
引
(
ひ
)
き
倒
(
たふ
)
し、
221
ウウーウウーと
眼
(
まなこ
)
を
怒
(
いか
)
らし
睨
(
にら
)
みつけて
居
(
ゐ
)
る。
222
されど
霊犬
(
れいけん
)
スマートは
二人
(
ふたり
)
の
体
(
からだ
)
に
些
(
すこ
)
しも
傷
(
きず
)
を
負
(
お
)
はせなかつた。
223
二人
(
ふたり
)
は
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り
這々
(
はふはふ
)
の
体
(
てい
)
にて
杢助
(
もくすけ
)
、
224
高姫
(
たかひめ
)
の
酒宴
(
しゆえん
)
の
席
(
せき
)
へ、
225
バラバラツと
命
(
いのち
)
辛々
(
からがら
)
かけ
込
(
こ
)
んだ。
226
二人
(
ふたり
)
の
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
姿
(
すがた
)
をお
千代
(
ちよ
)
、
227
お
菊
(
きく
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
228
十間
(
じつけん
)
許
(
ばか
)
り
間隔
(
かんかく
)
をおいた
地点
(
ちてん
)
より
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
め、
229
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つてワアワアと
心地
(
ここち
)
よげに
嘲笑
(
あざわら
)
ひして
居
(
ゐ
)
る。
230
妖幻坊
(
えうげんばう
)
、
231
高姫
(
たかひめ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
様子
(
やうす
)
に
不審
(
ふしん
)
を
起
(
おこ
)
し、
232
妖幻
(
えうげん
)
『こりや
両人
(
りやうにん
)
、
233
其
(
その
)
態
(
ざま
)
は
何
(
なん
)
だ、
234
些
(
ちつ
)
と
確
(
しつか
)
りせぬかい』
235
初
(
はつ
)
『イヤもう
大変
(
たいへん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
236
命
(
いのち
)
辛々
(
からがら
)
逃
(
に
)
げて
参
(
まゐ
)
りました』
237
妖幻坊の杢助
『
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
たと
云
(
い
)
ふのだ。
238
松姫
(
まつひめ
)
にとつて
放
(
はふ
)
られたのか。
239
エー、
240
何
(
なん
)
と
弱味噌
(
よわみそ
)
だな』
241
初
『ヘエ
松姫
(
まつひめ
)
も
中々
(
なかなか
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
ですが、
242
松姫
(
まつひめ
)
所
(
どころ
)
か、
243
どてらい
奴
(
やつ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
244
イヤもう
散々
(
さんざん
)
の
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
つて
来
(
き
)
ました』
245
高姫
(
たかひめ
)
『エエ
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬ
奴
(
やつ
)
だな、
246
これ
徳
(
とく
)
、
247
一体
(
いつたい
)
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
たと
云
(
い
)
ふのだえ』
248
徳
(
とく
)
は
慄
(
ふる
)
へながら、
249
徳
『ハイ、
250
松姫
(
まつひめ
)
と
渡
(
わた
)
り
合
(
あ
)
つて
居
(
を
)
りました
所
(
ところ
)
へ、
251
俄
(
にはか
)
に
小北山
(
こぎたやま
)
の
狼
(
おほかみ
)
が
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
252
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
を
銜
(
くは
)
へて
倒
(
たふ
)
しました。
253
それ
故
(
ゆゑ
)
俄
(
にはか
)
に
怖
(
おそ
)
ろしくて、
254
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
が
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
り
手足
(
てあし
)
が
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
き、
255
たうとう
此処
(
ここ
)
まで
命
(
いのち
)
辛々
(
からがら
)
逃
(
に
)
げ
延
(
の
)
びました。
256
何程
(
なんぼ
)
出世
(
しゆつせ
)
さして
貰
(
もら
)
つても、
257
こんな
怖
(
こは
)
い
事
(
こと
)
は
孫子
(
まごこ
)
に
伝
(
つた
)
へてお
断
(
ことわ
)
りです。
258
出世
(
しゆつせ
)
などはもうしたくはありませぬ』
259
妖幻
(
えうげん
)
『
何
(
なん
)
とまア
弱虫
(
よわむし
)
だな、
260
狼
(
おほかみ
)
位
(
ぐらゐ
)
が
何
(
なに
)
怖
(
おそ
)
ろしいのだ。
261
狼
(
おほかみ
)
なんかは
友人
(
いうじん
)
だ……おつとどつこい、
262
友人
(
いうじん
)
も
同様
(
どうやう
)
だ、
263
アハハハハハ』
264
初
(
はつ
)
『もし
杢助
(
もくすけ
)
さま、
265
貴方
(
あなた
)
は
狼
(
おほかみ
)
が
怖
(
こは
)
くないのですか』
266
妖幻坊の杢助
『
狼
(
おほかみ
)
が
怖
(
こは
)
くて
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
居
(
を
)
られるか。
267
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は、
268
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
美
(
うつく
)
しい
顔
(
かほ
)
をして
人間
(
にんげん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
るが
皆
(
みな
)
狼
(
おほかみ
)
だ。
269
ちつと
下
(
さが
)
れば
狐
(
きつね
)
、
270
狸
(
たぬき
)
、
271
蛇
(
へび
)
、
272
鼬
(
いたち
)
、
273
蟇
(
がま
)
のやうな
代物
(
しろもの
)
だ。
274
貴様
(
きさま
)
も
矢張
(
やつぱり
)
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
の
霊
(
みたま
)
と
見
(
み
)
えて、
275
たうとう
尻尾
(
しつぽ
)
を
出
(
だ
)
しやがつたな。
276
口
(
くち
)
程
(
ほど
)
にもない
代物
(
しろもの
)
だ、
277
アハハハハ』
278
高姫
(
たかひめ
)
『どうも
口
(
くち
)
ばかりで、
279
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ふ
霊
(
みたま
)
はないものだ。
280
これ
杢助
(
もくすけ
)
さま、
281
中途半
(
ちうとはん
)
にして
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまい。
282
お
前
(
まへ
)
さまがこれから
行
(
い
)
つて
始末
(
かた
)
をつけて
下
(
くだ
)
さい。
283
若
(
も
)
し
松姫
(
まつひめ
)
が
此処
(
ここ
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
にでも
行
(
い
)
かうものなら、
284
忽
(
たちま
)
ち
露顕
(
ろけん
)
して
困
(
こま
)
るぢやありませぬか。
285
何
(
いづ
)
れは
分
(
わか
)
る
事
(
こと
)
ですが、
286
仕組
(
しぐみ
)
をするまでは、
287
やつぱり
三五教
(
あななひけう
)
に
化
(
ば
)
けて
居
(
ゐ
)
なくちや、
288
完全
(
くわんぜん
)
に
目的
(
もくてき
)
が
達
(
たつ
)
せられないぢやありませぬか。
289
ウラナイ
教
(
けう
)
の
再興
(
さいこう
)
を
企
(
くはだ
)
てるのだから、
290
今
(
いま
)
が
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
時
(
とき
)
ですよ』
291
妖幻坊の杢助
『
俺
(
わし
)
が
行
(
ゆ
)
けば
何
(
なん
)
でもないのだが、
292
併
(
しか
)
し
茲
(
ここ
)
は
一
(
ひと
)
つ
工夫
(
くふう
)
をして、
293
下
(
した
)
から
出
(
で
)
て
松姫
(
まつひめ
)
を
懐柔
(
くわいじう
)
し、
294
樽爼
(
そんそ
)
折衝
(
せつしよう
)
の
間
(
あひだ
)
に
都合
(
つがふ
)
よく
談判
(
だんぱん
)
を
済
(
す
)
ませる
方
(
はう
)
が
無難
(
ぶなん
)
でよからう。
295
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
初公
(
はつこう
)
、
296
徳公
(
とくこう
)
は
乱暴
(
らんばう
)
を
働
(
はたら
)
いた
奴
(
やつ
)
だから、
297
松姫
(
まつひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
尻
(
しり
)
を
引
(
ひ
)
きめくり、
298
三百
(
さんびやく
)
の
笞
(
むち
)
を
加
(
くは
)
へてやれば、
299
それで
松姫
(
まつひめ
)
も
安心
(
あんしん
)
して
此方
(
こつち
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くだらう』
300
高姫
『
成程
(
なるほど
)
、
301
刃
(
やいば
)
に
血
(
ち
)
塗
(
ぬ
)
らずして
敵
(
てき
)
を
降
(
くだ
)
すと
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
方針
(
はうしん
)
、
302
遉
(
さすが
)
は
杢助
(
もくすけ
)
さまだワイ。
303
私
(
わたし
)
もそれなら
賛成
(
さんせい
)
致
(
いた
)
します』
304
初
(
はつ
)
『アアもしもし
杢助
(
もくすけ
)
さま、
305
高姫
(
たかひめ
)
さま、
306
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
荒仕事
(
あらしごと
)
に
行
(
い
)
つたのです。
307
それに
何
(
なん
)
ぞや、
308
松姫
(
まつひめ
)
さまの
前
(
まへ
)
で
尻
(
しり
)
を
捲
(
まく
)
つて、
309
三百
(
さんびやく
)
も
笞
(
むち
)
打
(
う
)
たれて
耐
(
たま
)
りますか、
310
なア
徳
(
とく
)
、
311
本当
(
ほんたう
)
につまらぬぢやないか』
312
徳
(
とく
)
『こんな
事
(
こと
)
なら、
313
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くぢやなかつたになア。
314
杢助
(
もくすけ
)
さまは、
315
さうすりや
矢張
(
やつぱり
)
悪神
(
あくがみ
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ』
316
妖幻
(
えうげん
)
『もう
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は、
317
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
、
318
逃
(
に
)
げようと
思
(
おも
)
つたつて
逃
(
に
)
がすものか。
319
曲輪
(
まがわ
)
の
魔法
(
まはふ
)
によつて
其方
(
そのはう
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
を
巻
(
ま
)
いてあるから
逃
(
に
)
げられるものか、
320
カナリヤが
鳥籠
(
とりかご
)
に
入
(
い
)
れられたやうなものだ』
321
初
(
はつ
)
『のう
徳
(
とく
)
、
322
余
(
あま
)
りぢやないか、
323
命
(
いのち
)
がけの
仕事
(
しごと
)
をさされて、
324
其
(
その
)
上
(
うへ
)
尻
(
しり
)
の
三百
(
さんびやく
)
も
叩
(
たた
)
かれて
耐
(
たま
)
るものかなア』
325
徳
(
とく
)
『アンアンアン、
326
えらい
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たわい、
327
これと
云
(
い
)
ふのも
余
(
あま
)
り
欲
(
よく
)
に
呆
(
はう
)
けたから
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
つたのだ。
328
アンアンアン、
329
三五
(
あななひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
330
えらい
取違
(
とりちが
)
ひを
致
(
いた
)
しました。
331
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ、
332
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
333
と
涙
(
なみだ
)
ながらに
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
す。
334
高姫
(
たかひめ
)
『ホホホホ、
335
正直
(
しやうぢき
)
の
男
(
をとこ
)
だな、
336
態
(
わざ
)
と
芝居
(
しばゐ
)
をするのだから、
337
お
前
(
まへ
)
の
尻
(
しり
)
を
叩
(
たた
)
くやうに
見
(
み
)
せて
地
(
ぢ
)
べたを
叩
(
たた
)
くのだから、
338
些
(
ちつ
)
とも
痛
(
いた
)
い
事
(
こと
)
はない。
339
そして
甘
(
うま
)
く
松姫
(
まつひめ
)
を
得心
(
とくしん
)
させ、
340
無事
(
ぶじ
)
事務
(
じむ
)
の
引継
(
ひきつぎ
)
をさして
了
(
しま
)
ふのだ。
341
さうすればお
前
(
まへ
)
も
立派
(
りつぱ
)
なお
役人
(
やくにん
)
になれるのだからなア』
342
徳
『ヤアそれでやつと
安心
(
あんしん
)
しました。
343
オイ
初
(
はつ
)
、
344
矢張
(
やつぱり
)
高姫
(
たかひめ
)
さまや
杢助
(
もくすけ
)
さまの
智慧
(
ちゑ
)
は
偉
(
えら
)
いものだ。
345
もう
安心
(
あんしん
)
だ、
346
尻
(
しり
)
を
叩
(
たた
)
いて
貰
(
もら
)
はうか』
347
初
『ウン、
348
そんな
尻
(
しり
)
の
叩
(
たた
)
きやうなら、
349
百
(
ひやく
)
でも
千
(
せん
)
でも、
350
ビクとも
致
(
いた
)
さぬ
豪傑
(
がうけつ
)
だ。
351
何卒
(
どうぞ
)
、
352
高姫
(
たかひめ
)
さま、
353
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
、
354
尻
(
しり
)
の
千切
(
ちぎ
)
れる
所
(
とこ
)
までお
叩
(
たた
)
き
下
(
くだ
)
さりませ。
355
之
(
これ
)
位
(
くらゐ
)
の
御用
(
ごよう
)
は
屁
(
へ
)
のお
茶
(
ちや
)
で
厶
(
ござ
)
います』
356
妖幻
(
えうげん
)
『アハハハハ、
357
それなら
是
(
これ
)
から
愈
(
いよいよ
)
第二
(
だいに
)
の
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
にかからうかなア』
358
高姫
(
たかひめ
)
『オホホホホ、
359
何
(
なん
)
とまア、
360
腰抜
(
こしぬけ
)
の
英雄
(
えいゆう
)
、
361
有名
(
いうめい
)
無実
(
むじつ
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
だこと』
362
両人
(
りやうにん
)
『ウエエエエー、
363
ウエーハハハハハ』
364
(
大正一二・一・二五
旧一一・一二・九
加藤明子
録)
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