霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 狸姫(たぬきひめ)〔一三三五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第4篇 夢狸野狸 よみ(新仮名遣い):むりやり
章:第20章 狸姫 よみ(新仮名遣い):たぬきひめ 通し章番号:1335
口述日:1923(大正12)年01月27日(旧12月11日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
四人は城の大門をくぐった。八人の天女のような美人の中で、一番年かさと思しき女が進み出て、自分はコーラン国如意王の王女・初花姫だと名乗った。そして、コーラン国はにわかにここに国替えをして、初稚姫によって三五教に変わったところだと四人を城に招いた。
初は、初花姫に杢助・高姫という二人組が来なかったかと尋ねた。初花姫は、杢助と高姫も教えを説いており、初稚姫よりも細かく教えてくれるのでとてもお世話になっていると答えた。
そして、松姫がここにやってきて高姫、杢助と大変な争論が起こったことは事実だが、松姫がその後どうなったかは自分は知らないと答えた。
お千代は、自分の母は確かに牢にぶちこまれたと抗弁した。初花姫は妖幻坊の眷属が化けているのだ、そして自分もこの通り、と言うと、お千代とお菊は大きな古狸となって城の奥に這いこんでしまった。
四人は不審に堪えず、初花姫の正体を見届けてくれようとにらんでいる。初花姫は、四人の神力によってあの女たちの正体が割れたのだと答えた。そして城には悪い狸がたくさんいるから神力の強い方々に退治してほしいと四人を招き入れた。
初花姫は、以前ランチと片彦を招き入れた部屋に四人を案内し、おのおの椅子につかせた。初花姫は父に報告してくると言って、侍女を伴って立ち去った。四人は初花姫と侍女たちの美しさを涎を垂らして語り合っている。
すると光ったものを衣服一面にちりばめた妙齢の美人が入ってきて、自分は初稚姫だと名乗った。そして杢助と高姫という三五教の裏切り者がこの館に入り込み、自分の説を攻撃し、ランチと片彦を捕え、松姫をどこかに隠してしまったという。初稚姫は四人に、杢助と高姫の魔法を打ち破るために力を貸してほしいと頼み込んだ。
一同が杢助と高姫の調伏と、ランチ・片彦・松姫救出の相談をしていると、杢助と高姫がドアを押しあけて入ってきた。杢助と高姫は、初稚姫に打ってかかる。初稚姫は椅子を取って渡り合っている。四人も椅子を取って杢助と高姫に打ってかかった。
杢助と高姫は棍棒を投げつけてこの場を逃げ出した。初稚姫は、急場をすくわれたことを四人に感謝した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-09-18 16:38:11 OBC :rm5120
愛善世界社版:281頁 八幡書店版:第9輯 368頁 修補版: 校定版:288頁 普及版:130頁 初版: ページ備考:
001 ガリヤ、002ケース(ほか)()(にん)大門(おほもん)(くぐ)つた。003さうして天女(てんによ)のやうな(はち)(にん)美人(びじん)姿(すがた)見惚(みと)れて()た。004その(なか)一番(いちばん)(とし)かさと(おぼ)しき(をんな)005()()をしながら言葉(ことば)(やさ)しく、
006(初花姫)『これはこれは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)007ようこそお()(くだ)さいました。008(わらは)如意王(によいわう)(むすめ)初花姫(はつはなひめ)(まを)します』
009ガリヤ『イヤ吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)では(ござ)いませぬ。010これより斎苑(いそ)(やかた)修業(しゆげふ)(まゐ)り、011(うま)合格(がふかく)すれば(はじ)めて宣伝使(せんでんし)になるので(ござ)います。012さうして(わたし)三五教(あななひけう)だと()(こと)は、013どうしてお(わか)りになりましたか』
014初花姫『ハイ、015()(げつ)以前(いぜん)より(つき)(くに)コーラン(ごく)から此処(ここ)まで国替(くにがへ)(いた)しまして、016俄造(にはかづく)りの城廓(じやうくわく)(こしら)()まつて()ります。017(いま)まではウラル(けう)(ござ)いましたが、018バラモン(けう)追立(おひた)てられ此方(こちら)(まゐ)りました(ところ)019三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)初稚姫(はつわかひめ)(さま)がお(いで)になり、020いろいろと()教訓(けうくん)(くだ)さいましたので、021両親(りやうしん)(ただ)ちに三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)し、022(いま)熱心(ねつしん)信者(しんじや)(ござ)います。023さうして初稚姫(はつわかひめ)(さま)奥殿(おくでん)にお(とど)まりになり、024結構(けつこう)なお(はなし)()かして(くだ)さるのだから、025城内(じやうない)一般(いつぱん)(よろこ)びは(たとへ)がたない(ほど)(ござ)います。026さうして初稚姫(はつわかひめ)(さま)のお言葉(ことば)には、027三五教(あななひけう)(かた)三四(さんよ)(にん)()えると()(こと)(ござ)いましたから、028侍女(じぢよ)()れ、029此処(ここ)までお(むか)(かたがた)(あそ)びながら(まゐ)りました。030サア()遠慮(ゑんりよ)はいりませぬ、031何卒(どうぞ)(とほ)(くだ)さいませ』
032ガリヤ『ヤアそれは(ねが)うてもない(こと)(ござ)る。033初稚姫(はつわかひめ)(さま)(すで)宣伝(せんでん)()(のぼ)られ、034斎苑(いそ)(やかた)(まゐ)つても到底(たうてい)()面会(めんくわい)(かな)ふまいと覚悟(かくご)をして()ました。035此処(ここ)()()(かか)れるとは(まつた)(かみ)(さま)()()(あは)せ、036イヤ是非(ぜひ)ともお世話(せわ)(あづ)かりませう』
037ケース『吾々(われわれ)両人(りやうにん)()(げつ)(ぜん)まで、038バラモン(ぐん)棟梁(とうりやう)ランチ将軍(しやうぐん)副官(ふくくわん)(いた)して()りましたガリヤ、039ケースで(ござ)ります。040何時(いつ)()にか立派(りつぱ)建築(けんちく)出来(でき)たぢやありませぬか』
041初花姫昼夜(ちうや)兼行(けんかう)数万(すうまん)人夫(にんぷ)使役(しえき)し、042やつと(この)(ごろ)出来上(できあが)つた(ところ)です。043御覧(ごらん)(とほ)りまだ(かべ)(かわ)いて()りませぬ』
044ケース成程(なるほど)さう(うけたま)はれば、045どこともなしに生々(なまなま)しいやうな気分(きぶん)がする。046(しか)しながら昨冬(さくとう)此処(ここ)陣取(ぢんど)つて()(こと)(おも)へば、047()()はめぐみ、048(くさ)()え、049まるで地獄(ぢごく)から天国(てんごく)()つたやうな()(いた)します』
050初花姫『サア(みな)さま、051(わたし)()案内(あんない)(いた)しませう』
052(はつ)『もし(ひめ)(さま)053折角(せつかく)機嫌(きげん)よくお(あそ)びの途中(とちう)になつては()みませぬ。054()つて()いて(くだ)さいませ。055(しか)一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(いた)しますが、056このお(やかた)には高姫(たかひめ)057杢助(もくすけ)()両人(りやうにん)大将(たいしやう)となつて頑張(ぐわんば)つて()ると()きましたが、058如何(いかが)(ござ)いませうか』
059初花姫『ハイ、060杢助(もくすけ)(さま)高姫(たかひめ)(さま)がお()しになり、061ウラナイ(けう)とやらを非常(ひじやう)にお()きになつて()ます。062初稚姫(はつわかひめ)(さま)のお(はなし)()いて、063(つぎ)()両人(りやうにん)のお(はなし)()きますと、064それはそれは(くは)しう(わか)ります。065つまり初稚姫(はつわかひめ)(さま)は、066ほんの概略(あらまし)仰有(おつしや)るなり、067杢助(もくすけ)068高姫(たかひめ)(さま)()んで(ふく)めるやうに(こま)かう()いて()かして(くだ)さるので、069どちらの(かた)にもお世話(せわ)になつて()ります』
070(とく)『エエ一寸(ちよつと)(うけたま)はりたいですが、071(この)(やかた)小北山(こぎたやま)教主(けうしゆ)松姫(まつひめ)(さま)が、072牢獄(らうごく)()()まれお(くる)しみとの(こと)073それは事実(じじつ)(ござ)いますか。074(いま)ここに松姫(まつひめ)(むすめ)075千代(ちよ)さまと()ふのが、076()いて吾々(われわれ)(たの)まれましたから、077実否(じつぴ)(さぐ)らむと(まゐ)つたのです。078何卒(どうぞ)(つつ)(かく)さず事実(じじつ)仰有(おつしや)つて(もら)ひたいものですな』
079初花姫『ハイ、080(なん)でも松姫(まつひめ)さまとかが()えまして、081大変(たいへん)な、082高姫(たかひめ)(さま)083杢助(もくすけ)(さま)との(あひだ)争論(さうろん)(おこ)つて()たやうです。084(その)()は、085どうなつたか(わらは)(ぞん)じませぬ。086大方(おほかた)仲直(なかなほ)りが出来(でき)たかと(ぞん)じます』
087千代(ちよ)『イエ(みな)さま、088(かあ)さまは(らう)(なか)()()まれたのよ。089さうして(この)初花姫(はつはなひめ)さまに()けて()るのは、090妖幻坊(えうげんばう)眷族(けんぞく)ですから用心(ようじん)なさいませ。091(わたし)だつてこんなものよ』
092()ふより(はや)獅子(しし)のやうな古狸(ふるだぬき)となつて、093ノソリノソリと(おく)目蒐(めが)けて()()んで(しま)つた。094(きく)(また)もや、
095お菊『をぢさま左様(さやう)なら、096(わたし)正体(しやうたい)はこれだわ』
097()ふより(はや)く、098以前(いぜん)のやうな大狸(おほだぬき)となつて(また)もや()()んで(しま)ふ。
099 ()(にん)(をとこ)不審(ふしん)()へず、100初花姫(はつはなひめ)正体(しやうたい)見届(みとど)()れむと、101(まなこ)(いか)らして()ばなしもせず(にら)んで()た。
102初花姫『ホホホホ、103まア(みな)さまの()つかしいお(かほ)104サウ(にら)んで(いただ)くと(わたし)(かほ)(あな)があきますよ。105この浮木(うきき)(もり)には古狸(ふるだぬき)()まして、106チヨイチヨイ ワザを(いた)しますので、107それを(ふせ)ぐために三五教(あななひけう)(かみ)(さま)をお(まつ)りして()るので(ござ)いますよ。108貴方(あなた)(がた)()神力(しんりき)によつてあの可愛(かあい)らしい(をんな)正体(しやうたい)(あら)はれたのですよ。109(なに)()けて()るのか(わか)つたものぢやありませぬ。110ほんに化物(ばけもの)()(なか)ですからな。111(わらは)(なに)かの変化(へんげ)ぢやないか、112よく調(しら)べて(くだ)さい』
113ガリヤ『イヤ(けつ)して(けつ)して貴女(あなた)(うたが)ひませぬ。114(しか)浮木(うきき)(もり)妖怪(えうくわい)巣窟(さうくつ)ですから、115斯様(かやう)(ところ)へお(やかた)をお()てになれば、116随分(ずいぶん)(たぬき)()がなくなるから、117ワザを(いた)しませう』
118初花姫『ハイ(ちち)(こま)つて()ますの、119自分(じぶん)小間使(こまづかひ)だと(おも)つて()れば、120()だらけの()()したりして仕方(しかた)がありませぬ。121何卒(どうぞ)初稚姫(はつわかひめ)(さま)()られますから、122あの(かた)(ちから)(あは)せて妖怪(えうくわい)退治(たいぢ)をして(くだ)さい。123高姫(たかひめ)さま、124杢助(もくすけ)さまも(なん)だか(あや)しいやうな()がします。125(なか)にも杢助(もくすけ)さまなぞは(みみ)がペロペロ(うご)くのですもの』
126ケース『成程(なるほど)127吾々(われわれ)(じつ)(たぬき)()かされ、128真裸(まつぱだか)になつて相撲(すまう)()らされて()ましたよ、129なア(はつ)さま、130(とく)さま、131アハハハハハ』
132初花姫『ホホホホ、133本当(ほんたう)(わる)(たぬき)沢山(たくさん)()ますので、134(なん)とかして退治(たいぢ)せねばならないと(まを)して沢山(たくさん)家来(けらい)四方(よも)(つか)はし狩立(かりた)てましたけれど、135到底(たうてい)人間(にんげん)(ちから)ではいけませぬ。136神力(しんりき)(たか)()(かた)法力(ほふりき)()らねば駄目(だめ)だと(まを)し、137(にはか)信仰(しんかう)(いた)したので(ござ)います。138サア斯様(かやう)(ところ)立話(たちばなし)をして()ては(つま)りませぬ。139何卒(どうぞ)(おく)()つて休息(きうそく)して(くだ)さいませ』
140ガリヤ『(しか)らば遠慮(ゑんりよ)なく()厄介(やつかい)になりませう』
141(いく)つかの(もん)(くぐ)つて玄関口(げんくわんぐち)についた。
142初花姫『サア何卒(どうぞ)(はい)(くだ)さいませ。143俄作(にはかづく)りで準備(じゆんび)(ととの)はず、144不都合(ふつがふ)(いへ)(ござ)います』
145ケース『いやどうも有難(ありがた)う、146(じつ)立派(りつぱ)御殿(ごてん)(ござ)います。147以前(いぜん)とは面目(めんぼく)一新(いつしん)し、148吾々(われわれ)駐屯(ちゆうとん)して()(とき)面影(おもかげ)(すこ)しも(ござ)いませぬ。149まるで別世界(べつせかい)()つたやうで(ござ)います』
150ガリヤ『サア(みな)さま、151御免(ごめん)(かうむ)つて(とほ)らして(いただ)きませう』
152『ハイ』
153一同(いちどう)初花姫(はつはなひめ)(ほか)(しち)(にん)美女(びぢよ)後先(あとさき)(まも)られて、154(おく)(おく)へと(すす)()く。155観音開(くわんのんびら)きの(くら)のやうな一室(いつしつ)(しやう)ぜられた。156以前(いぜん)にランチ、157片彦(かたひこ)両人(りやうにん)(しやう)ぜられた居間(ゐま)である。158五脚(ごきやく)椅子(いす)(まる)いテーブルを(なか)にして行儀(ぎやうぎ)よく(なら)べてある。159さうして随分(ずいぶん)(ひろ)居間(ゐま)であつた。160初花姫(はつはなひめ)()(にん)案内(あんない)(おのおの)椅子(いす)()かしめた。161()(にん)(なん)とはなしに気分(きぶん)のよい居間(ゐま)だと、162満足(まんぞく)(てい)安全(あんぜん)椅子(いす)(もた)れかかり、163欄間(らんま)彫刻(てうこく)などを(なが)めて(しき)りに()めちぎつて()る。164初花姫(はつはなひめ)は、
165初花姫一寸(ちよつと)(ちち)報告(はうこく)(いた)して()ますから、166(みな)さま此処(ここ)()休息(きうそく)(ねが)ひます。167左様(さやう)なら』
168(かる)挨拶(あいさつ)して(しち)(にん)侍女(こしもと)(ともな)(この)()()()つた。169()(にん)(はち)(にん)(をんな)綺麗(きれい)(こと)や、170(なん)ともなしに(しと)やかな(こと)171どれもこれも優劣(いうれつ)のない美人(びじん)なる(こと)などを(よだれ)()らして(かた)()つて()る。172初公(はつこう)(おも)ひだしたやうに、
173(みな)さま、174吾々(われわれ)はかうして結構(けつこう)座敷(ざしき)(やす)んで()るのもよいが、175此処(ここ)()目的(もくてき)松姫(まつひめ)さまを(すく)()(ため)ではなかつたかなア』
176ガリヤ『そりやさうだつた。177(しか)しお千代(ちよ)178(きく)()(やつ)179(ごふ)()(たぬき)正体(しやうたい)(あら)はしよつたぢやないか。180あれから()ると吾々(われわれ)一寸(ちよつと)(たぬき)(だま)されよつたのだ。181さうすると、182あいつの()(こと)(あて)にならぬ。183松姫(まつひめ)(さま)此処(ここ)(とら)はれて()るのは(まつた)(うそ)だと(おも)ふが、184(きみ)(たち)はどう(おも)ふ』
185『サア』
186(さん)(にん)(くび)(ひね)つて()る。187そこへ(ひか)つたものを衣服(いふく)一面(いちめん)(ちりば)めた妙麗(めうれい)美人(びじん)が、188ドアを(ひら)いてニコニコしながらやつて()た。189最前(さいぜん)()初花姫(はつはなひめ)以下(いか)(うつく)しかつたが、190これは(また)素的(すてき)滅法界(めつぽふかい)のナイスである。191そして()(すこ)(たか)く、192どこともなしに(おか)すべからざる威厳(ゐげん)(そな)はつてゐる。193()(にん)(おも)はずハツと(かしら)()敬意(けいい)(へう)した。194美人(びじん)一脚(いつきやく)空椅子(からいす)(こし)(おろ)(しと)やかに、
195(初稚姫)(わらは)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)初稚姫(はつわかひめ)(ござ)います。196よくまアお()(くだ)さいましたなア』
197ガリヤ拙者(せつしや)治国別(はるくにわけ)(さま)弟子(でし)でガリヤと(まを)します。198何卒(どうぞ)見知(みし)りおかれまして()指導(しだう)(ねが)ひます』
199ケース拙者(せつしや)はケースと(まを)します、200何分(なにぶん)宜敷(よろし)くお(ねが)(まを)します』
201(それがし)初公別(はつこうわけ)(まを)します』
202拙者(せつしや)徳公別(とくこうわけ)(まを)す、203未来(みらい)宣伝使(せんでんし)(ござ)います。204何分(なにぶん)宜敷(よろし)く、205万事(ばんじ)()()てを願上(ねがひあ)(たてまつ)ります』
206と、207拍子(びやうし)のぬけた(こゑ)挨拶(あいさつ)をする。
208初稚姫早速(さつそく)ながら貴方(あなた)(がた)にお(ねが)(いた)したい(こと)(ござ)います。209それは(ほか)(こと)では(ござ)いませぬ。210杢助(もくすけ)211高姫(たかひめ)()三五教(あななひけう)()けるユダがこのお(やかた)(うま)()()みまして、212(わらは)(せつ)極力(きよくりよく)攻撃(こうげき)(いた)し、213(また)ランチ、214片彦(かたひこ)両人(りやうにん)石牢(いしらう)()()み、215その(うへ)松姫(まつひめ)(さま)まで何処(どこ)かへ(かく)して仕舞(しま)つたので(ござ)います。216(かれ)高姫(たかひめ)217杢助(もくすけ)(たぬき)使(つか)ひまして(ひと)()をくらまし、218変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)自在(じざい)魔力(まりよく)発揮(はつき)(いた)しますれば、219(わらは)一人(ひとり)のみにては如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ませぬ。220(たれ)かのお(たす)けを()りたいと大神(おほかみ)(さま)(ねん)じて()ました。221(ところ)明日(あす)三五教(あななひけう)信者(しんじや)()(にん)ばかり()こしてやらうと仰有(おつしや)つたので、222(くび)(なが)くして()つて()ました。223城主(じやうしゆ)如意王(によいわう)(さま)初花姫(はつはなひめ)(さま)大変(たいへん)()心配(しんぱい)(ござ)います。224どうかお(ちから)をお()(くだ)さいますまいか』
225ガリヤ『ハイ、226(たの)みまでもなく吾々(われわれ)一旦(いつたん)主人(しゆじん)(あふ)いだランチ、227片彦(かたひこ)(さま)()遭難(さうなん)()いて、228これが(だま)つて()られませうか。229最早(もはや)()のためには(いのち)()てます。230なあケース、231(ひと)獅子(しし)奮迅(ふんじん)活動(くわつどう)をやらうではないか』
232ケース『イヤやりませう、233(ひめ)(さま)234()心配(しんぱい)なさいますな。235きつと悪魔(あくま)退治(たいぢ)してお()にかけませう。236高姫(たかひめ)237杢助(もくすけ)238如何(いか)妖術(えうじゆつ)使(つか)ひましても、239此方(こちら)には正義(せいぎ)(やいば)がありますから、240大神(おほかみ)愛善(あいぜん)(とく)信真(しんしん)(ひかり)によつて、241見事(みんごと)(ばけ)(あら)はしてお()にかけませう』
242初稚姫何卒(なにとぞ)(よろ)しくお(ねが)(いた)します』
243(はつ)吾々(われわれ)(いへど)もお師匠(ししやう)(さま)松姫(まつひめ)(さま)を、244どうしても取返(とりかへ)さなくてはなりませぬ。245徳公(とくこう)両人(りやうにん)(ちから)(あは)せて高姫(たかひめ)246杢助(もくすけ)魔法(まはふ)(やぶ)つて御覧(ごらん)()れませう』
247初稚姫(やかた)様子(やうす)はほぼ()()んで()りますれば、248ランチ、249片彦(かたひこ)(さま)(はじ)松姫(まつひめ)(さま)在処(ありか)(ちから)(あは)せて(さが)()(すく)()して(いただ)きませう。250(ただ)(すこ)心配(しんぱい)なのは松姫(まつひめ)(さま)(こと)(ござ)います。251(なん)でも水牢(すゐらう)(はふ)()んだのではあるまいかと(ぞん)じます』
252(はつ)猪口才(ちよこざい)高姫(たかひめ)253杢助(もくすけ)254(いま)()よ、255(おも)()らして()れるぞ』
256(おも)はず()らず大音声(だいおんじやう)()ばはつた。257(あわただ)しくドアを押開(おしあ)けて(はい)つて()たのは杢助(もくすけ)258高姫(たかひめ)両人(りやうにん)であつた。259両人(りやうにん)棒千切(ぼうちぎれ)()()げ、260初稚姫(はつわかひめ)左右(さいう)より()(いか)らせながら、
261杢助(もくすけ)『ヤア初稚姫(はつわかひめ)262よくも吾々(われわれ)計略(けいりやく)(あな)(おちい)つたなア、263覚悟(かくご)(いた)せ』
264()つてかかる。265初稚姫(はつわかひめ)椅子(いす)()つて()()める、266高姫(たかひめ)(また)棍棒(こんぼう)にて空気(くうき)()りブンブン(うな)らせながら、
267高姫『ヤア初稚姫(はつわかひめ)268覚悟(かくご)(いた)せ、269観念(くわんねん)せい』
270一人(ひとり)(をんな)二人(ふたり)男女(だんぢよ)(わた)()ひ、271(たがひ)秘術(ひじゆつ)(つく)して(たたか)ふ。272()(にん)黙視(もくし)するに(しの)びず、273(おのおの)椅子(いす)()つて、274杢助(もくすけ)275高姫(たかひめ)()つてかかる。276(しち)(にん)(うづ)をまいて室内(しつない)()(くる)ひ、277(やうや)くにして高姫(たかひめ)278杢助(もくすけ)(すき)(うかが)棍棒(こんぼう)をなげつけ、279(くも)(かすみ)(この)()()()した。
280 初稚姫(はつわかひめ)(なみだ)ながらに()(にん)(むか)ひ、281急場(きふば)(すく)はれし(こと)感謝(かんしや)した。
282大正一二・一・二七 旧一一・一二・一一 加藤明子録)
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