第一〇章 女異呆醜〔一三二五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻
篇:第2篇 夢幻楼閣
よみ(新仮名遣い):むげんろうかく
章:第10章 女異呆醜
よみ(新仮名遣い):にょいほっしゅ
通し章番号:1325
口述日:1923(大正12)年01月26日(旧12月10日)
口述場所:
筆録者:北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:妖幻坊は萱草の茂る森林に高姫をいざない、妖術を使って豪華な宮殿や宝物を見せてたぶらかした。高姫は、侍女の高子と宮子の寒熱に当てられて失神したが、目を覚ますと高子と宮子がいそいそと自分を介抱していた。
高姫は二人を玉の精だと信じ、それが自分の侍女として仕えて居ることに図に乗って、自分の身魂がどれほど尊いものかをとうとうと説いている。
高子と宮子は高姫の歌に答えて、妖幻坊と高姫を賛美する歌を歌った。高姫は笑壺に入り、うれしくなって自分の腹中の眷属たちとこの境遇を祝い合った。
高姫は高子と宮子と打ち解けて、立派な今の中で歌ったり舞ったり、美しい果実を味わい一日を過ごしていた。その実は萱野原の狸穴で夢を見ているのみであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2023-09-03 19:07:46
OBC :rm5110
愛善世界社版:147頁
八幡書店版:第9輯 319頁
修補版:
校定版:150頁
普及版:69頁
初版:
ページ備考:
002曲輪の玉を使用して
003夢幻の楼閣映出し 004名利と恋に心魂を
005蘯かし狂ふ高姫を 006うまく誤魔化し萱草の
007茫々茂る森林に
009塵や芥や糞尿を 010至善至美なる宮殿や
011其他百の珍品と
013引き入れ茲に曲神は 014天地を救ふ生神の
015誠の道を攪乱し
017暗と泥との魔界とし 018暴威を振ひ永久に
021実にも忌々しき次第なり
023高子の素性は幻相坊 024宮子の素性は幻魔坊
025妖幻坊の両腕と
027高姫心の誇りより 028曲の手管に乗せられて
029浮び方なき魔の中に
031天下に無比の出世を
033日の出神の義理天上 034金毛九尾醜神も
035亦高姫と同様に
037悪魔の機関と使はれて 038喜び居るこそ憐れなれ
042四辺を見れば高、宮の
044高姫司の介抱して
045薬を煎じ湯を沸し 046一心不乱に真心を
048之を眺めて高姫は
050和らげ二人に打向ひ
051高姫『ほんにお前は如意宝珠
053尊き玉の御化身か
055貴女の様なお身魂を 056何程日の出神ぢやとて
057お使ひ申すは何となく 058勿体ない様な気が致す
059何卒貴女は高姫に 060構はず宝座に現はれて
061金剛不壊の神力を 062完全に委曲に現はして
063尊き神の御教を
066お願ひ申す』と手を合し
067頼めば二人は首を振り 068(高子、宮子)『いえいえ私は本城の
069高宮彦の御命令 070天にも地にも代へ難き
071高宮姫の側近く
073命令受けて居りまする
075何卒お使ひ下されて 076日の出神の神業の
077万分一に御使ひ 078遊ばし給へ』と手を合し
079願ふ姿ぞ殊勝なれ 080高姫ますます図に乗つて
081高姫『高子よ、宮子よ、汝は又 082如何した身魂の因縁か
083変性男子の御系統 084常世の姫の御再来
085日の出神の義理天上
087高宮姫の側近く 088仕へ奉ると云ふ事は
089之に越したる幸福は
091之から先は神妙に 092高宮姫の云ふ事を
093一つも背かず聞くがよい 094高宮彦は如意宝珠
095持たせ給へば神力が 096斯くも立派に現はれて
099人民界に籍を置き 100普通の人より勝れたる
101智勇兼備の勇将だ
103到底神には叶ふまい 104此高姫は人間と
108天極紫微宮の其奥の
109御殿にまします月の神 110日の大神の御子とます
111日の出神の義理天上
113尊き身魂の肉の宮 114神人感合した上は
115高宮姫は義理天上 116日の出神は私ぢやぞえ
117曇り果てたる暗の世を 118日の出の守護にしよと思や
119ヤツパリ日の出神様が
121五六七の神世と云ふ事は 122日の出の御代と云ふ事だ
123厳の御霊や瑞御霊
125日の出神の又の名だ 126お前は年が若い故
129さはさりながら如意宝珠 130金剛不壊の身魂なら
131一旦私の腹中に 132這入つて生れた生魂よ
133さすればお前は吾娘 134変化の法で世に出でて
135ここに母子の廻り会ひ
138之から三人村肝の
139心を協せ手を曳いて 140瑞の御霊の三女神
144輝き渡す吾心
145諾ひませよ高、宮の 146二人の御子よ惟神
147神に誓ひて常世姫 148日の出神の生宮が
149完全に委曲に教へおく
152朝日は照るとも曇るとも
154仮令大地は沈むとも
157金剛不壊の如意宝珠 158握つた上は天地を
159一つに丸めて義理天上 160日の出の御代と立直し
161五六七神政の太柱 162常磐堅磐に立並べ
163世の大本の生神と
167厳の霊の大御神 168梵天帝釈自在天
169大国彦の大御神 170盤古神王塩長の
171彦の命や常世彦
173畏み畏み願ぎ奉る
176と一生懸命に狸穴の中に寝言の様に歌つてゐる。177高子は高宮姫の歌に答へて、178綾の袖を胡蝶の如く、179しなやかに振りながら、180自ら歌ひ自ら舞うて高姫の心を慰めた。
181高子『金剛不壊の如意宝珠 182其半分の分霊
183世界の火熱を守護する 184高皇産霊の大神の
185其分身が現はれて
187三千世界を救う為 188心を尽し身を尽し
189獅子奮迅の活動を 190遊ばし給ふ常世姫
191其肉宮の御為に 192近く仕へて神業を
193完成せむと勇み立ち
195御身を守護し奉る 196日の出神の義理天上
198何卒々々吾々を
200弥永久に何時までも
201御目をかけさせ給へかし 202朝日は照るとも曇るとも
204仮令大地は沈むとも
206勢猛く攻め来とも
207吾身の汝に従ひて 208守らむ限り百千の
209猛き獣も曲津見も 210又三五の強敵も
211何か恐れむ敷島の 212大和魂の如意宝珠
214思召されよ母の君
215勇み喜び御前に
220と歌ひ舞ひ終る。221高姫は笑壺に入り、222顔の紐をほどいて前途の光明を夢みつつあつた。223宮子は又歌ふ。
224宮子『日の出神の生宮と
226愈一陽来復の 227花咲く春の廻り来て
228高宮城の司神
230三千世界の万霊を
233吾は水をば守護する
234如意の宝珠の片割れぞ 235宮子の姫と現はれて
236高宮姫の側近く
238瑞の御霊の元の霊 239神皇産霊の大神の
241此世を洗ふ瑞霊
242厳と瑞とが相並び
244二人の御身を守護せば 245三千世界は永久に
246無事泰平に治まりて 247枝もならさぬ神の御代
248五六七の神世は忽ちに 249此地の上に顕現し
250日の出神の神徳が 251輝き渡るは目のあたり
254水の霊の宮子姫
256御前に誓ひ奉る』
257と歌ひ終り、258淑かに座に着いた。259高姫は、
260高姫『何とまア結構な事が重なれば重なるものだな。261もしや夢ではあるまいか』
262と頬を抓つて見たり、263眉毛に唾をつけて見たり、264臍の辺りを突いたり押したりしながら、265腹中のお客さまに向ひ、
266高姫『おい、267義理天上殿、268金毛九尾殿、269其他の眷属共、270此高姫の出世を知つて居るか。271お前達は如何考へる。272もしも高姫が夢を見てゐるのなら、273夢とハツキリと云うて呉れ。274あまり結構過ぎて本当にならないから』
275 腹の中から大声で、
276(義理天上と称する霊)『義理天上日の出神、277今日のお喜び謹んでお祝ひ申す。278高宮姫の肉体、279御苦労で厶る。280オツホホホホ、281先づは目出度い、282お目出度い。283のう金毛九尾、284結構ではないか』
285(金毛九尾と称する霊)『成程々々、286之にて願望成就致すであらう。287いや大蛇殿、288蟇殿、289其他の連中、290お喜び召され、291アツハハハハ』
298とガラクタ霊が勝手に喜び笑ふ声が一つになつて井堰を切つた様な勢で高姫の口へ流れ出づるのであつた。
299高子『お母さま、300何、301心配してゐられますの。302何だか、303云つて居らつしやつたぢやありませぬか』
304高姫『あ、305お前は子供だからまだ分るまいが、306私は今義理天上さまや上義姫様、307旭の豊栄昇姫さま、308リントウビテン大臣さま等と御相談を申して居たのだよ』
309高子『何とまア、310お母さまは八人芸の様な重宝なお方ですね。311なア宮子さま、312私も貴女も、313こんなお母さまを持ち、314高宮彦のお父さまを持つて居るのだから、315三千世界に恐いものはありませぬわネ』
316宮子『さうですとも、317それに違ひありませぬわ』
318高姫『オツホホホホ、319何とまア優しい子だな、320肉体の人間から生れた子だと、321私もチツとばかり悋気が起ろまいものでもないが、322何といつても、323私の腹にあつた如意宝珠から化けて出た子だから安心なものだ。324なア高さま、325宮さま、326お前二人の名をよせるとお父さまの名にもなり、327お母さまの名にもなるね』
330宮子『エヘヘヘヘヘ、331本当に有難いね』
332 斯く三人は打解けて立派な居間の中で、333歌つたり舞うたり、334美はしき果実を味はひながら一日を暮した。335其実、336萱野原の狸穴である事は前述の通りである。
337(大正一二・一・二六 旧一一・一二・一〇 北村隆光録)