霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 ブラジル峠(たうげ)〔三六五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻 篇:第3篇 秘露より巴留へ よみ(新仮名遣い):ひるよりはるへ
章:第15章 ブラジル峠 よみ(新仮名遣い):ぶらじるとうげ 通し章番号:365
口述日:1922(大正11)年02月08日(旧01月12日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年6月15日
概要: 舞台:ブラジル山 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
淤縢山津見(醜国別)は蚊々虎を連れてブラジル峠を上っていく。春とはいえ、赤道直下の酷熱の中を、蚊々虎に荷物を持たせて登って行く。
蚊々虎はちょっと一服させて欲しい、と頼んだが、淤縢山津見は竜宮の底で苦労艱難を嘗めて門番をしてきたことを思えば、どうということなはい、と説教する。
蚊々虎は愚痴をこぼす。淤縢山津見がそれを咎めると、逆に淤縢山津見のかつての悪事を責める。淤縢山津見が昔のことは過ぎ越し苦労するな、と諭しても、何かと理屈をつけて淤縢山津見をからかった。
淤縢山津見が昔の主人に向かって無礼であろう、と返すと、蚊々虎は、過ぎ越し苦労するなとおっしゃったじゃないか、と返す有様。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-06-04 18:15:40 文字数:2583 OBC :rm0815
愛善世界社版:94頁 八幡書店版:第2輯 184頁 修補版: 校定版:96頁 普及版:41頁 初版: ページ備考:
001春霞(はるがすみ)棚引(たなびき)渡(わた)る海原(うなばら)の
002浪(なみ)掻(か)き分(わ)けて立昇(たちのぼ)る
003日(ひ)の出神(でのかみ)の宣伝使(せんでんし)
004醜(しこ)の曲津(まがつ)を払(はら)はむと
005醜国別(しこくにわけ)の体主霊従(からみたま)
006霊主(れいしゆ)体従(たいじゆう)と成(な)り変(かは)り
007禊(みそぎ)祓(はら)ひし生魂(いくみたま)
008心(こころ)つくしのたちばなの
009淤縢山津見(おどやまづみ)と改(あらた)めて
010従属(みとも)の司(かみ)も腰骨(こしぼね)の
011蚊々虎(かがとら)彦(ひこ)を伴(ともな)ひつ
012教(をしへ)を巴留(はる)の国境(くにざかひ)
013ブラジル山(やま)に差掛(さしかか)る。
014 春(はる)とはいへど赤道(せきだう)直下(ちよくか)の酷熱(こくねつ)地帯(ちたい)、015木葉(このは)を身体(からだ)一面(いちめん)に纏(まと)ひ暑熱(しよねつ)を凌(しの)ぎ乍(なが)ら、016腰(こし)の屈(かが)める蚊々虎(かがとら)彦(ひこ)に荷物(にもつ)を持(も)たせ、017ブラジル峠(たうげ)を登(のぼ)り行(ゆ)く。
018蚊々虎『モシモシ一寸(ちよつと)一服(いつぷく)さして下(くだ)さいな。019汗(あせ)は滝(たき)の如(ごと)く、020着物(きもの)も何(なに)も夕立(ゆふだち)に逢(あ)うたやうにびしよ濡(ぬ)れになつて了(しま)つた。021何処(どこ)かに水(みづ)でもあれば一杯(いつぱい)飲(の)みたいものですワ』
022淤縢山津見『確(しつ)かりせぬか蚊々虎(かがとら)、023何(なん)だ、024海(うみ)の底(そこ)に吾々(われわれ)は長(なが)らくの苦労(くらう)艱難(かんなん)を嘗(な)めて金門(かなど)の番(ばん)をして来(き)たことを思(おも)へば、025熱(あつ)いの苦(くる)しいのと云(い)つて居(を)れるか。026空気(くうき)は十分(じふぶん)に無(な)し彼方(あちら)此方(こちら)を見(み)ても水(みづ)ばつかりで、027碌(ろく)に息(いき)も出来(でき)はしない。028何(なに)ほど嶮(けは)しい坂(さか)だつて、029汗(あせ)が出(で)ると云(い)つても、030涼(すず)しい風(かぜ)がちよいちよい来(く)るじやないか。031十分(じふぶん)に汗(あせ)を搾(しぼ)り足(あし)を疲(つか)らして、032もう一歩(いつぽ)も前進(ぜんしん)することが出来(でき)ないやうになつた所(ところ)で、033一服(いつぷく)するのだ。034その時(とき)の楽(たのし)さと云(い)ふものは、035本当(ほんたう)に楽(らく)の味(あぢ)が判(わか)るよ。036竜宮(りうぐう)の苦(くる)しい、037息(いき)も碌(ろく)に出来(でき)ない所(ところ)から、038陸(あげ)へ揚(あ)げて貰(もら)つた嬉(うれ)しさと云(い)ふものは、039たとへ足(あし)が棒(ぼう)になつても万分(まんぶん)の一(いち)の苦労(くらう)でも無(な)いワ。040貴様(きさま)はまだ苦労(くらう)が足(た)りないからさう云(い)ふ弱(よわ)いことを云(い)ふのだ。041俺(おれ)に随(つ)いて来(こ)い』
042蚊々虎『それはあまり胴欲(どうよく)ぢやございませぬか。043私(わたくし)は竜宮(りうぐう)へ行(い)つたことが無(な)いから、044貴下(あなた)のお話(はなし)は嘘(うそ)か、045本当(ほんたう)か知(し)りませぬが、046水(みづ)の中(なか)で苦(くる)しいのは分(わか)つて居(を)ります。047併(しか)し本当(ほんたう)の水(みづ)の中(なか)なら三分(さんぷん)か、048五分(ごふん)経(たた)ぬ間(ま)に息(いき)が断(き)れて了(しま)うぢやありませぬか。049それに長(なが)らく竜宮(りうぐう)に貴下(きか)は居(を)られたのぢやから、050それを思(おも)へば貴下(きか)の御(お)言葉(ことば)は割引(わりびき)して聞(き)かねばなりますまい。051私(わたくし)はもう半時(はんとき)も休(やす)まずに、052この山道(やまみち)を歩(ある)かされようものなら、053身体(からだ)の汁(しる)はさつぱり汗(あせ)になつて出(で)て了(しま)ひ、054コンナ熱(あつ)い山(やま)の中(なか)で木乃伊(みいら)になつて了(しま)ひます。055ソンナ殺生(せつしやう)な事(こと)を云(い)はずと貴下(きか)も改心(かいしん)なさつたぢやないか、056ちつと位(くらゐ)の情容赦(なさけようしや)は有(あ)りさうなものだナア』
057と涙(なみだ)を溢(こぼ)す。
058淤縢山津見『オイ蚊々虎(かがとら)、059貴様(きさま)はなんだい、060男(をとこ)じやないか。061この位(くらゐ)なことで屁古垂(へこた)れて涙(なみだ)を流(なが)すと云(い)ふことがあるかい』
062蚊々虎『私(わたくし)は決(けつ)して泣(な)きませぬ』
063淤縢山津見『ソンナラ誰(たれ)が泣(な)くのだ』
064蚊々虎『ハイハイ、065私(わたくし)は立派(りつぱ)な一人前(いちにんまへ)の男(をとこ)です。066苟(いやし)くも男子(だんし)たるもの如何(いか)なる艱難(かんなん)辛苦(しんく)に逢(あ)うてもびくとも致(いた)しませぬ。067私(わたくし)について居(ゐ)るお客(きやく)さまが泣(な)くのですよ』
068淤縢山津見『お客(きやく)さまて何(なん)だ、069貴様(きさま)の副守(ふくしゆ)か、070よう泣(な)く奴(やつ)だな。071蚊々虎(かがとら)と云(い)ふからには、072蚊(か)の守護神(しゆごじん)でも憑(つ)いて居(を)るのぢやらう。073今(いま)まで人(ひと)の生血(いきち)を吸(す)ふやうな悪(わる)い事(こと)ばかり行(や)つて来(き)た報(むく)いだ。074貴様(きさま)の腰(こし)は何(なん)だい、075くの字(じ)に曲(まが)つて了(しま)つとるぢやないか。076今(いま)までの罪滅(つみほろぼ)しだ。077副守(ふくしゆ)に構(かま)はず、078本(ほん)守護神(しゆごじん)の勇気(ゆうき)を出(だ)して俺(おれ)に随(つ)いて来(こ)ぬかい』
079蚊々虎『貴下(あなた)は今(いま)まで醜国別(しこくにわけ)と云(い)うて、080随分(ずゐぶん)善(よ)くないことをなさいましたなあ。081私(わたくし)は貴下(あなた)の御(ご)命令(めいれい)でこいつは悪(わる)いな、082コンナことしたらきつと善(よ)い報(むく)いはないと思(おも)つたが、083頭(あたま)からがみつける様(やう)に云(い)はれるものだから、084今(いま)までは虎(とら)の威(ゐ)を借(か)る狐(きつね)のやうに、085心(こころ)にも無(な)いことを行(や)つてきました。086言(い)はば貴下(あなた)が悪(あく)の張本人(ちやうほんにん)だ。087私(わたくし)は唯(ただ)機械(きかい)に使(つか)はれたのみですワ』
088淤縢山津見『ウン、089何方(どつち)にせよ使(つか)はれたのみか、090使(つか)はれぬしらみか、091人(ひと)の生血(いきち)を吸(す)ふ蚊(か)か、092虎(とら)か、093狼(おほかみ)か、094熊(くま)か、095山狗(やまいぬ)かだよ』
096蚊々虎『モシモシそれは余(あまり)ぢやありませぬか。097虎(とら)、098狼(おほかみ)とは貴下(あなた)のことですよ。099日(ひ)の出神(でのかみ)さまに助(たす)けて貰(もら)うて淤縢山津見(おどやまづみ)とやらいふ立派(りつぱ)な名(な)を貰(もら)つて、100偉(えら)さうにしてござるが、101貴下(あなた)は人(ひと)を威(おど)す淤縢山津見(おどやまづみ)だ。102余(あんま)りどつせ、103ちつと昔(むかし)のことも考(かんが)へて見(み)なさい。104大(おほ)きな口(くち)もあまり叩(たた)けますまい。105此処(ここ)には貴下(あなた)と私(わたくし)とただ二人(ふたり)で傍(はた)に聞(き)いてをるものも無(な)いから遠慮(ゑんりよ)なく申(まを)しますが、106本当(ほんたう)に醜(しこ)の曲津(まがつ)と云(い)つたら貴下(あなた)のことですよ』
107淤縢山津見『三五教(あななひけう)は過(す)ぎ越(こ)し苦労(くらう)や、108取越(とりこ)し苦労(くらう)は大禁物(だいきんもつ)だ。109何事(なにごと)も神直日(かむなほひ)、110大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し、111宣(の)り直(なほ)す教(をしへ)だから、112ソンナ死(し)んだ児(こ)の年(とし)を数(かぞ)へるやうな、113下(くだ)らぬ事(こと)は止(よ)したがよからうよ。114過(す)ぎ去(さ)つたことはもう一(ひと)つも云(い)はぬがよいワ』
115蚊々虎『ヘーイ、116うまく仰有(おつしや)いますワイ。117竜宮(りうぐう)で門番(もんばん)をして苦(くるし)かつたつて、118仰有(おつしや)つたじやないか、119それは過(す)ぎ越(こ)し苦労(くらう)ぢやないのですか』
120淤縢山津見『よう理屈(りくつ)をいふ奴(やつ)ぢやな。121今(いま)までのことはさらりと川(かは)へ流(なが)すのだい。122さうして心中(しんちう)に一点(いつてん)の黒雲(くろくも)も無(な)く、123清明(せいめい)無垢(むく)の精神(せいしん)になつて、124神(かみ)様(さま)の御用(ごよう)をするのだよ』
125蚊々虎『また地金(ぢがね)が出(で)やしませぬかな。126何(なに)ほど立派(りつぱ)な黄金(わうごん)の玉(たま)でも、127竹熊(たけくま)の持(も)つて居(ゐ)るやうな鍍金玉(めつきだま)では直(すぐ)に剥(は)げると云(い)ふことがありますよ。128地金(ぢがね)が石(いし)であれば何(なに)ほど金(きん)が塗(ぬ)つてあつても二(ふた)つ三(み)つ擦(こす)ると生地(きぢ)が現(あら)はれて来(く)るものですからナア』
129淤縢山津見『莫迦(ばか)いへ、130俺(おれ)の身魂(みたま)は中(なか)まで水晶(すゐしやう)だ。131元(もと)は立派(りつぱ)な分霊(わけみたま)だ。132雉(きぢ)もなかねば射(う)たれまいといふことがある。133もう生地(きぢ)の話(はな)しは止(や)めて呉(く)れ』
134蚊々虎『ヘーン、135うまいこと仰有(おつしや)りますワイ。136口(くち)は重宝(ちようほう)なものですな』
137淤縢山津見『オー最早(もはや)山頂(さんちやう)に達(たつ)した。138オイ蚊々虎(かがとら)、139話(はな)しをしとる間(ま)に何時(いつ)の間(ま)にか、140山(やま)の頂辺(てつぺん)に来(き)てしまつたよ。141貴様(きさま)が苦(くるし)い苦(くるし)い、142もう一歩(いつぽ)も歩(ある)けぬなどと屁古垂(へこた)れよつて男(をとこ)らしくもない、143副守(ふくしゆ)か何(なに)か知(し)らぬが、144吠面(ほえづら)かわいて見(み)られた態(ざま)ぢや無(な)かつたぞ。145もう此処(ここ)まで来(く)れば涼(すず)しい風(かぜ)が当(あた)つて、146今(いま)までの苦労(くらう)の仕忘(しわす)れだ。147お前(まへ)の顔(かほ)の黒(くろ)くなつたのも、148これも苦労(くらう)の仕忘(しわす)れになつて、149白(しろ)い顔(かほ)になると重宝(ちようほう)だが、150これ丈(だけ)は矢張(やつぱ)り生地(きぢ)が鉄(てつ)だから、151金(きん)にはならぬよ。152まあ、153顔(かほ)が黒(くろ)いたつて心配(しんぱい)するには及(およ)ばない。154貴様(きさま)の何時(いつ)も得意(とくい)な暗黒(くらがり)で、155ちよいちよい何々(なになに)するのには持(も)つて来(こ)いだ。156暗(やみ)に烏(からす)が飛(た)つたやうなもので、157誰(たれ)も見付(みつ)けるものが無(な)いからな。158本当(ほんたう)に苦労(くらう)の苦労(くらう)甲斐(がひ)があるよ』
159蚊々虎『暗黒(くらがり)に出(で)るのは矢張(やつぱ)り蚊(か)ですもの、160貴下(あなた)の仰有(おつしや)ることが本当(ほんたう)かも知(し)れませぬ。161間違(まちが)つてゐるかも知(し)れませぬ。162しかし貴下(あなた)の名(な)はいま出世(しゆつせ)して淤縢山津見(おどやまづみ)とか仰有(おつしや)つたが何(なん)と黒(くろ)い名(な)ですな。163恐(こは)さうなおどおどとした暗(やみ)の晩(ばん)に烏(からす)の飛(た)つたやうな暗(やみ)ずみナンテ、164あまり人(ひと)のことは言(い)はれますまい。165日(ひ)の出神(でのかみ)さまも偉(えら)いワイ。166それ相当(さうたう)な名(な)を下(くだ)さる。167人(ひと)を威(おどか)したり、168暗雲(やみくも)になつて訳(わけ)も分(わか)らぬ明瞭(はつきり)せぬ墨(すみ)のやうな屁理屈(へりくつ)を列(なら)べる醜国別(しこくにわけ)に淤縢山津見(おどやまづみ)とは、169よくも洒落(しやれ)たものだワイ、170アハヽヽヽ』
171淤縢山津見『オイ蚊々虎(かがとら)、172主人(しゆじん)に向(むか)つて何(なに)を言(い)ふ。173無礼(ぶれい)であらうぞよ』
174蚊々虎『ヘン、175昔(むかし)は昔(むかし)、176今(いま)は今(いま)と、177日(ひ)の出神(でのかみ)が歌(うた)はれたことを貴下(あなた)覚(おぼ)えてゐますか。178昔(むかし)は昔(むかし)、179今(いま)は今(いま)後(あと)は何(なん)だつたか忘(わす)れました。180エヘン』
181(大正一一・二・八 旧一・一二 外山豊二録)
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