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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第8巻(未の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 智利の都
第1章 朝日丸
第2章 五十韻
第3章 身魂相応
第4章 烏の妻
第5章 三人世の元
第6章 火の玉
第2篇 四十八文字
第7章 蛸入道
第8章 改心祈願
第9章 鏡の池
第10章 仮名手本
第3篇 秘露より巴留へ
第11章 海の竜宮
第12章 身代り
第13章 修羅場
第14章 秘露の邂逅
第15章 ブラジル峠
第16章 霊縛
第17章 敵味方
第18章 巴留の関守
第4篇 巴留の国
第19章 刹那心
第20章 張子の虎
第21章 滝の村
第22章 五月姫
第23章 黒頭巾
第24章 盲目審神
第25章 火の車
第26章 讃嘆
第27章 沙漠
第28章 玉詩異
第29章 原山祇
第5篇 宇都の国
第30章 珍山峠
第31章 谷間の温泉
第32章 朝の紅顔
第33章 天上眉毛
第34章 烏天狗
第35章 一二三世
第36章 大蛇の背
第37章 珍山彦
第38章 華燭の典
第6篇 黄泉比良坂
第39章 言霊解一
第40章 言霊解二
第41章 言霊解三
第42章 言霊解四
第43章 言霊解五
余白歌
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霊界物語
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> 第5篇 宇都の国 > 第36章 大蛇の背
<<< 一二三世
(B)
(N)
珍山彦 >>>
第三六章
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せ
)
〔三八六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:
第5篇 宇都の国
よみ(新仮名遣い):
うづのくに
章:
第36章 大蛇の背
よみ(新仮名遣い):
おろちのせ
通し章番号:
386
口述日:
1922(大正11)年02月10日(旧01月14日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一同が蚊々虎の講釈に笑っていると、どこからともなく青臭い風が吹いてきた。駒山彦は大蛇が近づいてきたかと警戒している。
駒山彦は空元気を出して、蚊々虎と先を争って峠を下っていった。すると、ものすごい大蛇が道をふさいで横たわっている。淤縢山津見も近くまで寄ってみたが、あまりに大きさに越えることもならず、思案に暮れ、蚊々虎に妙案がないか、と問いかけた。
蚊々虎は大蛇につかつかと進みよると、拳を固めて大蛇の腹を叩きながら、説教を始めた。そして、天津祝詞を奏上して立派な人間にしてやるから、その代わりに一同を乗せて珍の国まで送ってくれ、と語りかけた。
大蛇は涙を流し、幾度となく頭を下げている。蚊々虎は一同を招いて、大蛇に乗るようにと促した。一同は舌を巻いて呆然としていたが、蚊々虎がひらりと大蛇に乗ると、五月姫が続いた。それを見た一行も大蛇の背に飛び乗った。
蚊々虎は出放題の歌を歌っている。大蛇は勢いよく山を降って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-07 15:44:33
OBC :
rm0836
愛善世界社版:
250頁
八幡書店版:
第2輯 240頁
修補版:
校定版:
254頁
普及版:
112頁
初版:
ページ備考:
001
一同
(
いちどう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
002
蚊々虎
(
かがとら
)
の
面白
(
おもしろ
)
き
講釈
(
かうしやく
)
に
或
(
あるひ
)
は
感
(
かん
)
じ
或
(
あるひ
)
は
笑
(
わら
)
ひ、
003
其
(
その
)
雄弁
(
ゆうべん
)
を
口々
(
くちぐち
)
に
褒
(
ほ
)
めちぎり
居
(
ゐ
)
たる。
004
折
(
をり
)
しも
何処
(
どこ
)
ともなく
青臭
(
あをくさ
)
い
風
(
かぜ
)
がゾーゾーと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
吹
(
ふ
)
き
来
(
き
)
たりけり。
005
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
驚
(
おどろ
)
きながら、
006
駒山彦
『ヤア
出
(
で
)
よつたぞ。
007
あの
声
(
こゑ
)
は
大蛇
(
をろち
)
の
音
(
おと
)
だらう。
008
吾々
(
われわれ
)
は
一
(
ひと
)
つ
覚悟
(
かくご
)
をせなくてはならぬ。
009
腹帯
(
はらおび
)
でも
締
(
し
)
めて
行
(
ゆ
)
かうかい』
010
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
011
蚊々虎
『
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
さまが
此
(
この
)
山
(
やま
)
には
大変
(
たいへん
)
な
大蛇
(
をろち
)
が
居
(
を
)
るなぞと、
012
吾々
(
われわれ
)
の
胆
(
きも
)
を
試
(
ため
)
して
見
(
み
)
やうと
思
(
おも
)
つて、
013
嘘言
(
うそ
)
ばかり
云
(
い
)
つたのだな。
014
長
(
なが
)
いものと
云
(
い
)
つたら
此処
(
ここ
)
まで
来
(
く
)
るのに、
015
蚯蚓
(
みみづ
)
一匹
(
いつぴき
)
居
(
ゐ
)
やせなかつたぢやないか。
016
マア、
017
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
涼
(
すず
)
しい
風
(
かぜ
)
を
十二分
(
じふにぶん
)
に
受
(
う
)
けて、
018
大蛇
(
をろち
)
の
来
(
く
)
るやうに
歌
(
うた
)
でも
歌
(
うた
)
つて
踊
(
をど
)
らうかい。
019
大蛇山
(
をろちやま
)
には
蛇
(
じや
)
が
居
(
を
)
るぢやげな、
020
大
(
おほ
)
きな、
021
大
(
おほ
)
きな
蛇
(
じや
)
ぢやげな、
022
嘘言
(
うそ
)
ぢやげな』
023
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
『
蚊々虎
(
かがとら
)
さま、
024
吾々
(
われわれ
)
は
苟
(
いやし
)
くも
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
025
決
(
けつ
)
して
嘘言
(
うそ
)
は
申
(
まを
)
しませぬ。
026
大蛇
(
をろち
)
はかういふ
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
つた
処
(
ところ
)
には
居
(
を
)
りませぬ。
027
この
峠
(
たうげ
)
を
少
(
すこ
)
しく
下
(
くだ
)
ると、
028
山
(
やま
)
一面
(
いちめん
)
に
茫々
(
ばうばう
)
たる
草
(
くさ
)
ばかりです。
029
その
草
(
くさ
)
の
生
(
は
)
えた
所
(
ところ
)
へかかると、
030
大
(
おほ
)
きな
奴
(
やつ
)
が
彼方
(
あちら
)
にも
此方
(
こちら
)
にも、
031
沢山
(
たくさん
)
に
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
往来
(
わうらい
)
して
居
(
ゐ
)
ます。
032
大蛇
(
をろち
)
の
王
(
わう
)
にでも
出会
(
でつくは
)
さうものなら
大変
(
たいへん
)
ですよ。
033
マア
道中
(
だうちう
)
安全
(
あんぜん
)
のために
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
しませう』
034
蚊々虎
『それ
じや
蚊々虎
(
かがとら
)
の
じや
推
(
すゐ
)
でしたか』
035
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は、
036
駒山彦
『コラまた
洒落
(
しやれ
)
てゐるナ、
037
大蛇
(
をろち
)
の
峠
(
たうげ
)
を
通行
(
つうかう
)
しながら、
038
ソンナ
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
るものがあるか。
039
如何
(
いか
)
に
口
(
くち
)
の
達者
(
たつしや
)
な
蚊々虎
(
かがとら
)
さまでも、
040
実物
(
じつぶつ
)
に
出交
(
でつくわ
)
したら、
041
旗
(
はた
)
を
捲
(
ま
)
いて
退却
(
たいきやく
)
するに
決
(
きま
)
つて
居
(
を
)
るワ』
042
蚊々虎
(
かがとら
)
は
態
(
わざ
)
と
悄気
(
しよげ
)
たやうな
顔
(
かほ
)
をして、
043
蚊々虎
『さうかなア、
044
此
(
この
)
方
(
はう
)
さまは
如何
(
どん
)
な
敵
(
てき
)
でも
恐
(
おそ
)
れぬが、
045
大蛇
(
をろち
)
だけはまだ
経験
(
けいけん
)
が
無
(
な
)
いから、
046
些
(
ちつ
)
と
おろちい
やうな
気
(
き
)
がする。
047
駒公
(
こまこう
)
、
048
貴様
(
きさま
)
今度
(
こんど
)
は
先
(
さき
)
に
行
(
ゆ
)
け、
049
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
中央
(
まんなか
)
だ』
050
駒山彦
(
こまやまひこ
)
『
態
(
ざま
)
見
(
み
)
やがれ、
051
弱虫
(
よわむし
)
奴
(
め
)
が』
052
と
争
(
あらそ
)
ひつつ
大蛇峠
(
をろちたうげ
)
をどんどん
東
(
ひがし
)
に
向
(
むか
)
つて
下
(
くだ
)
る。
053
駒山彦
(
こまやまひこ
)
はどこともなくびくびく
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせながら、
054
態
(
わざ
)
と
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
し、
055
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つて、
056
大蛇峠
(
をろちたうげ
)
を
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
057
その
声
(
こゑ
)
はどこともなく
慄
(
ふる
)
うて
居
(
を
)
る。
058
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
059
蚊々虎
『オイ、
060
お
先達
(
せんだつ
)
、
061
その
声
(
こゑ
)
はどうだい、
062
慄
(
ふる
)
つてるぢやないか。
063
半泣声
(
はんなきごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
064
ソンナ
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くと、
065
大蛇
(
をろち
)
先生
(
せんせい
)
、
066
女
(
をんな
)
だと
思
(
おも
)
つて
飛
(
と
)
びつくぞよ』
067
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
首
(
くび
)
をスクメながら、
068
駒山彦
『ヤア、
069
出
(
で
)
た
出
(
で
)
た、
070
ド
豪
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
071
アンナ
奴
(
やつ
)
がこの
山道
(
やまみち
)
に
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
ては、
072
通
(
とほ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
はしない』
073
と、
074
どすんと
道
(
みち
)
の
傍
(
はた
)
に
腰
(
こし
)
を
据
(
す
)
ゑる。
075
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
076
蚊々虎
『どれどれ、
077
俺
(
おれ
)
が
見
(
み
)
てやらう』
078
と
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
額
(
ひたい
)
にあて、
079
蚊々虎
『ヤア、
080
おい
出
(
で
)
たおい
出
(
で
)
た。
081
素適
(
すてき
)
滅法界
(
めつぽうかい
)
に
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
082
向
(
むか
)
ふの
山
(
やま
)
から
此方
(
こつち
)
の
山
(
やま
)
まで、
083
橋
(
はし
)
を
懸
(
か
)
けた
様
(
やう
)
になつて
居
(
ゐ
)
よるなあ。
084
こいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
085
ドツコイ
尾
(
を
)
も
頭
(
あたま
)
も
黒
(
くろ
)
い
大蛇峠
(
をろちたうげ
)
。
086
オイ
駒
(
こま
)
さま、
087
今日
(
けふ
)
は
一番槍
(
いちばんやり
)
の
功名
(
こうみやう
)
だ。
088
毎度
(
いつも
)
此
(
この
)
方
(
はう
)
さまが
先陣
(
せんぢん
)
を
勤
(
つと
)
めるのだが、
089
あまり
厚顔
(
あつかま
)
しうすると
冥加
(
みやうが
)
が
悪
(
わる
)
い。
090
今日
(
けふ
)
は
先陣
(
せんぢん
)
をお
前
(
まへ
)
に
譲
(
ゆづ
)
つてやらう。
091
サア
立
(
た
)
たぬか、
092
ハヽヽ
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かして、
093
胴
(
どう
)
の
据
(
す
)
わつとる
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
か』
094
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は、
095
駒山彦
『ナヽ
何
(
なん
)
だか
足
(
あし
)
が
重
(
おも
)
たくなつて
歩
(
ある
)
けませぬわ。
096
蚊々
(
かが
)
君
(
くん
)
、
097
頼
(
たの
)
みだ。
098
お
前
(
まへ
)
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ』
099
蚊々虎
『ドツコイさうはいかぬ、
100
君子
(
くんし
)
は
危
(
あやふ
)
きに
近
(
ちか
)
づかずだ。
101
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
だ、
102
アンナ
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
にピンと
跳
(
は
)
ねられて
見
(
み
)
よ。
103
それこそ
吾々
(
われわれ
)
のやうな
人間
(
にんげん
)
は、
104
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
つてプリンプリンプリンぢや。
105
此
(
この
)
方
(
はう
)
はプリンプリンプリンとやられた
機
(
はづ
)
みに
天教山
(
てんけうざん
)
までポイトコセーと
無事
(
ぶじ
)
の
御
(
ご
)
安着
(
あんちやく
)
だ。
106
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
はお
上
(
のぼ
)
りどすか、
107
お
下
(
くだ
)
りだすかの
口
(
くち
)
だよ』
108
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『
刹那心
(
せつなしん
)
だ、
109
蚊々虎
(
かがとら
)
も
屁古垂
(
へこた
)
れたな。
110
どれ
私
(
わたくし
)
が
責任
(
せきにん
)
を
帯
(
お
)
びて
先陣
(
せんぢん
)
を
勤
(
つと
)
めませう』
111
と
怯
(
ひる
)
まず
怖
(
おそ
)
れず、
112
どしどしやつて
行
(
ゆ
)
く。
113
大蛇
(
をろち
)
の
横
(
よこ
)
たはる
数十歩
(
すうじつぽ
)
前
(
まへ
)
まで
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
は
進
(
すす
)
んだが、
114
淤縢山津見
『ヤア、
115
あれ
丈
(
だけ
)
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
が
居
(
を
)
つては
跨
(
またが
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
116
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
える
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
117
これや
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばならぬなあ。
118
蚊々虎
(
かがとら
)
妙案
(
めうあん
)
は
無
(
な
)
いか』
119
蚊々虎
『
有
(
あ
)
るの
無
(
な
)
いのつて、
120
越
(
こ
)
えられるの
越
(
こ
)
えられぬの、
121
怖
(
こは
)
いの
怖
(
こは
)
くないの』
122
駒山彦
(
こまやまひこ
)
『
何方
(
どつち
)
が
真実
(
ほんたう
)
だい。
123
越
(
こ
)
えるの
越
(
こ
)
えられぬのと、
124
どつちが
真実
(
ほんたう
)
だい』
125
蚊々虎
『まあ
蚊々虎
(
かがとら
)
さまの
離
(
はな
)
れ
業
(
わざ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
なさい』
126
と
云
(
い
)
ひながら、
127
大蛇
(
をろち
)
の
前
(
まへ
)
に
つか
つかと
進
(
すす
)
み、
128
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めて、
129
大蛇
(
をろち
)
の
腹
(
はら
)
をポンポンと
叩
(
たた
)
きながら、
130
蚊々虎
『オイ、
131
オイ
大蛇
(
をろち
)
の
先生
(
せんせい
)
、
132
同
(
おな
)
じ
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
に
生
(
せい
)
を
稟
(
う
)
けながら、
133
なぜ
此様
(
こん
)
な
見苦
(
みぐるし
)
い
蛇体
(
じやたい
)
になつて
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのだ。
134
俺
(
おれ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
救
(
すく
)
ひを
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
ふる
貴
(
たつと
)
き
聖
(
きよ
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
135
貴様
(
きさま
)
も
何時
(
いつ
)
までも
此様
(
こん
)
な
浅間
(
あさま
)
しい
姿
(
すがた
)
をして
深山
(
みやま
)
の
奥
(
おく
)
に
住居
(
すまゐ
)
をしてゐるのは
苦
(
くるし
)
からう。
136
日
(
ひ
)
に
三寒
(
さんかん
)
三熱
(
さんねつ
)
の
苦
(
くるし
)
みを
受
(
う
)
けて、
137
人
(
ひと
)
には
嫌
(
きら
)
はれ、
138
怖
(
こは
)
がられ、
139
ホントに
因果
(
いんぐわ
)
なものだナ。
140
俺
(
おれ
)
は
同情
(
どうじやう
)
するよ。
141
是
(
これ
)
から
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
してやるから、
142
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
に
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
い。
143
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
俺
(
おれ
)
たち
五
(
ご
)
人
(
にん
)
を
背
(
せなか
)
に
乗
(
の
)
せて、
144
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
の
見
(
み
)
える
所
(
ところ
)
まで
送
(
おく
)
るのだよ。
145
よいか』
146
大蛇
(
をろち
)
は
鎌首
(
かまくび
)
を
立
(
た
)
て、
147
両眼
(
りやうがん
)
より
涙
(
なみだ
)
をぼろぼろと
落
(
おと
)
し、
148
幾度
(
いくど
)
となく
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げてゐる。
149
蚊々虎
『よし、
150
分
(
わか
)
つた。
151
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
152
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
る
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
盲目
(
めくら
)
だから
俺
(
おれ
)
の
素性
(
すじやう
)
を
些
(
ちつ
)
とも
知
(
し
)
らないが、
153
貴様
(
きさま
)
は
俺
(
おれ
)
の
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
つたと
見
(
み
)
える。
154
よしよし
助
(
たす
)
けてやらう』
155
大蛇
(
をろち
)
は
又
(
また
)
もや
両眼
(
りやうがん
)
より
涙
(
なみだ
)
を
垂
(
た
)
れ、
156
俯伏
(
うつぶ
)
せになつて、
157
早
(
はや
)
く
乗
(
の
)
れよと
云
(
い
)
ふものの
如
(
ごと
)
く、
158
長
(
なが
)
き
胴体
(
どうたい
)
を
三角
(
さんかく
)
なりにして
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
159
蚊々虎
(
かがとら
)
は
手招
(
てまね
)
きしながら、
160
蚊々虎
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
161
ドツコイ
皆
(
みな
)
の
先生
(
せんせい
)
方
(
がた
)
、
162
早
(
はや
)
く
乗
(
の
)
つたり
乗
(
の
)
つたり。
163
随分
(
ずゐぶん
)
足
(
あし
)
も
疲労
(
くたびれ
)
たらう。
164
大蛇
(
をろち
)
先生
(
せんせい
)
、
165
吾々
(
われわれ
)
一行
(
いつかう
)
を
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
近
(
ちか
)
くまで、
166
送
(
おく
)
らして
下
(
くだ
)
さいと
頼
(
たの
)
みよつたぞ。
167
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く
乗
(
の
)
りなさい。
168
乗
(
の
)
り
後
(
おく
)
れるとつまらぬぞ』
169
一同
(
いちどう
)
は
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いて、
170
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
云
(
い
)
はず、
171
呆然
(
ばうぜん
)
として
佇立
(
たたず
)
み
居
(
を
)
る。
172
五月姫
(
さつきひめ
)
は、
173
五月姫
『
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
174
どうでせう、
175
乗
(
の
)
せて
頂
(
いただ
)
きませうか』
176
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
呆
(
あき
)
れて、
177
駒山彦
『これはこれは
大胆
(
だいたん
)
な
女
(
をんな
)
だなあ。
178
アンナものに
乗
(
の
)
せられて
耐
(
たま
)
るものか』
179
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
180
ひらり
と
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せ
)
に
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り、
181
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
り
足
(
あし
)
を
踊
(
をど
)
らせて、
182
平気
(
へいき
)
の
平左
(
へいざ
)
で
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
す。
183
五月姫
(
さつきひめ
)
は
つか
つかと
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
つて
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せ
)
に
ひらり
と
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
りける。
184
駒山彦
(
こまやまひこ
)
『ヤア
女
(
をんな
)
でさへもあの
膽玉
(
きもつたま
)
だ。
185
エイどうならうと
構
(
かま
)
ふものか。
186
皆
(
みな
)
さま
如何
(
どう
)
でせう、
187
乗
(
の
)
つてやりませうか』
188
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『よからう、
189
正鹿山
(
まさかやま
)
さま、
190
如何
(
どう
)
でせう』
191
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
『イヤ
私
(
わたくし
)
も
乗
(
の
)
りませう』
192
と
茲
(
ここ
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
193
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せ
)
に
飛
(
と
)
び
乗
(
の
)
りたり。
194
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
195
蚊々虎
『サア
大蛇
(
をろち
)
大急行
(
だいきふかう
)
だ。
196
走
(
はし
)
つたり
走
(
はし
)
つたり。
197
大蛇
(
だいじや
)
の
背
(
せな
)
に
乗
(
の
)
せられて
198
じや
推
(
すゐ
)
の
深
(
ふか
)
い
じや
神
(
しん
)
らが
199
如何
(
どう
)
じや
斯
(
か
)
う
じや
と
案
(
あん
)
じつつ
200
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
へ
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く
201
大蛇
(
だいじや
)
に
乗
(
の
)
つた
蟇蛙
(
ひきがへる
)
202
軈
(
やが
)
ては
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
まで
203
引
(
ひ
)
かれて
帰
(
かへ
)
る
蟇蛙
(
ひきがへる
)
204
ホントに
愉快
(
ゆくわい
)
じや
ないかいな』
205
蚊々虎
(
かがとら
)
は
出放題
(
ではうだい
)
に
歌
(
うた
)
ひゐる。
206
大蛇
(
をろち
)
は
蜒々
(
えんえん
)
と、
207
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
長大
(
ちやうだい
)
なる
身体
(
しんたい
)
を
振動
(
ふりうご
)
かしながら、
208
勢
(
いきほひ
)
よく
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
209
(
大正一一・二・一〇
旧一・一四
加藤明子
録)
210
(第三二章~第三六章 昭和一〇・三・四 於綾部穹天閣 王仁校正)
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