霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 巴留(はる)の関守(せきもり)〔三六八〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm0818
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 激潭(げきたん)飛沫(ひまつ)囂々(がうがう)と音(おと)騒(さわ)がしき千仭(せんじん)の谷間(たにま)に、002身(み)を躍(をど)らして飛(と)び入(い)り、003重傷(ぢうしやう)に悩(なや)む荒熊(あらくま)を助(たす)け起(おこ)して吾(わが)背(せ)に負(お)ひ、004漸(やうや)く此処(ここ)に駆上(かけあが)つて来(き)た淤縢山津見(おどやまづみ)は、005荒熊(あらくま)を大地(だいち)に下(おろ)して神言(かみごと)を奏上(そうじやう)し鎮魂(ちんこん)を施(ほどこ)し、006頭部(とうぶ)の傷所(きずしよ)に向(むか)つて息(いき)を吹(ふ)きかけたるに、007不思議(ふしぎ)や荒熊(あらくま)の負傷(ふしやう)は拭(ぬぐ)ふが如(ごと)く癒(い)え、008苦痛(くつう)も全(まつた)く止(と)まりて元(もと)の身体(からだ)に復(ふく)したり。009荒熊(あらくま)は大地(だいち)に両手(りやうて)をつき高恩(かうおん)を涙(なみだ)と共(とも)に感謝(かんしや)し、010且(か)つ無礼(ぶれい)を陳謝(ちんしや)したりける。
011蚊々虎『オイ荒(あら)さま、012ドツコイ黒坊(くろんぼう)の熊(くま)さま、013三五教(あななひけう)の御(ご)神徳(しんとく)とはコンナものだい。014耳(みみ)の穴(あな)を浚(さら)つてとつくりと聞(き)かう。015エヘン、016蚊々虎(かがとら)様(さま)の』
017と云(い)ひつつ指(ゆび)の先(さき)で鼻(はな)を押(お)さへながら、
018蚊々虎『この大(おほ)きな鼻(はな)の穴(あな)からフンと伊吹(いぶき)をやつたが最後(さいご)、019貴様(きさま)は蠑螈(いもり)が泥(どろ)に酔(よ)つたやうに大(おほ)きな口(くち)を開(あ)けよつて、020アヽアーと虚空(こくう)を掴(つか)んで仰向(あふむ)けに顛覆(ひつくり)返(かへ)つたが最後(さいご)、021この深(ふか)い深(ふか)い谷底(たにそこ)へスツテンドウと顛覆(ひつくり)返(かへ)つて頭(あたま)を打(う)ち割(わ)つて、022「アイタツタツタ、023コイタツタツタ、024アーア今日(けふ)は如何(いか)なる悪日(あくじつ)かと、025処(ところ)もあらうにコンナ深(ふか)い深(ふか)い谷底(たにそこ)へ取(と)つて放(ほ)られ、026此処(ここ)で死(し)ぬのか、027後(あと)で女房(にようばう)は嘸(さぞ)やさぞ、028悔(くや)むであらう。029死(し)ぬるこの身(み)は厭(いと)はねど、030昨日(きのふ)に変(かは)る今日(けふ)の空(そら)、031定(さだ)め無(な)き世(よ)と云(い)ひながら、032さてもさてもあまりだわ、033不運(ふうん)が重(かさ)なれば重(かさ)なるものか、034と云(い)つて女房(にようばう)が泣(な)くであらう」などと下(くだ)らぬ事(こと)を、035河鹿(かじか)のやうに、036谷水(たにみづ)に漬(つか)つて吐(ほざ)きよつた其処(そこ)へ、037天道(てんだう)は人(ひと)を殺(ころ)さず、038三五教(あななひけう)の俺(おい)らの先生(せんせい)様(さま)の醜国別(しこくにわけ)オツトドツコイ淤縢山(おどやま)津見(づみ)様(さま)が悠然(いうぜん)として現(あら)はれたまひ、039摂取(せつしゆ)不捨(ふしや)、040大慈(だいじ)大悲(だいひ)の大御心(おほみこころ)をもつてお助(たす)け遊(あそ)ばしたのだよ。041何(なん)と有難(ありがた)いか、042勿体(もつたい)ないか、043エーン改心(かいしん)を致(いた)せ、044慢心(まんしん)は大怪我(おほけが)の基(もと)だぞよ。045慢心(まんしん)するとその通(とほ)り、046谷底(たにそこ)に落(お)ちて酷(ひど)い目(め)に遇(あ)つてアフンと致(いた)さねばならぬぞよと、047三五教(あななひけう)の神(かみ)様(さま)は仰有(おつしや)るのだ。048その実地(じつち)正真(しやうまつ)を此(この)方(はう)がして見(み)せてやつたのだぞ。049改心(かいしん)ほど結構(けつこう)なものは無(な)いぞよ。050エヘン』
051淤縢山津見『コラ、052コラ蚊々虎(かがとら)、053黙(だま)らぬか。054何(なん)といふ法螺(ほら)を吹(ふ)く、055神(かみ)様(さま)の教(をしへ)を聞(き)きかじりよつて、056仕方(しかた)のない奴(やつ)だ。057黙(だま)つて俺(おれ)の云(い)ふ事(こと)を聴(き)いて居(を)れ』
058蚊々虎『ヘン、059大勢(おほぜい)のところで耻(はぢ)を掻(か)かさいでも、060ちつとは俺(おれ)に花(はな)を持(も)たして呉(く)れてもよささうなものだなあ』
061と小声(こごゑ)にて呟(つぶや)く。062荒熊(あらくま)は宣伝使(せんでんし)の顔(かほ)をじつと見上(みあ)げ、
063荒熊『ヨウヨウ、064貴下(あなた)は醜国別(しこくにわけ)様(さま)では無(な)かつたか』
065淤縢山津見『ヤヽさういふお前(まへ)は高彦(たかひこ)ではなかつたか。066これはこれは妙(めう)な処(ところ)で遇(あ)うたものだ。067一体(いつたい)お前(まへ)はコンナ処(ところ)へどうして来(き)たのだ。068常世(とこよ)会議(くわいぎ)の時(とき)には随分(ずゐぶん)偉(えら)い元気(げんき)で弥次(やじ)りよつたが、069かうなつた訳(わけ)を聞(き)かして呉(く)れないか』
070荒熊(高彦)『ハイ、071ハイ、072委細(ゐさい)包(つつ)まず申上(まをしあ)げますが、073併(しか)しながら、074貴下(あなた)は大自在天(だいじざいてん)様(さま)の宰相(さいしやう)醜国別(しこくにわけ)様(さま)、075一旦(いつたん)幽界(あのよ)とやら遠(とほ)い国(くに)へお出(いで)になつたと云(い)ふ事(こと)だのに、076どうしてまあ此処(ここ)へお越(こ)しになつたのか、077ユヽ幽霊(いうれい)ぢや無(な)からうかナア』
078淤縢山津見『幽霊(いうれい)でも何(なん)でもない』
079 実(じつ)は斯様(かやう)々々(かやう)でと、080有(あり)し来歴(らいれき)を詳細(しやうさい)に物語(ものがた)り、081高彦(たかひこ)の経歴談(けいれきだん)を熱心(ねつしん)に聴(き)き入(い)りぬ。082高彦(たかひこ)は両眼(りやうがん)に涙(なみだ)を湛(たた)へながら、
083高彦(荒熊)『私(わたくし)は貴下(あなた)が宰相(さいしやう)として大自在天(だいじざいてん)にお仕(つか)へ遊(あそ)ばした頃(ころ)は、084貴下(あなた)のお加護(かげ)で相当(さうたう)な立派(りつぱ)な役(やく)を与(あた)へられ、085肩(かた)で風(かぜ)を切(き)つて歩(ある)いたものでございますが、086貴下(あなた)の御(ご)帰幽後(きいうご)は鷹取別(たかとりわけ)の天下(てんか)となり、087悪者(わるもの)のために讒言(ざんげん)されて常世(とこよ)神王(しんわう)様(さま)の勘気(かんき)を蒙(かうむ)り、088常世国(とこよのくに)を叩(たた)き払(はら)ひにされて妻子(さいし)眷属(けんぞく)は離散(りさん)し、089私(わたくし)は何処(どこ)へ取(とり)つく島(しま)もなく、090寄(よ)る辺(べ)渚(なぎさ)の捨小舟(すてをぶね)、091漸(やうや)く巴留(はる)の国(くに)に押(お)し流(なが)され、092夜(よる)に紛(まぎ)れてこの国(くに)に上(あが)り、093労働者(らうどうしや)となつて働人(はたらきにん)の仲間(なかま)に紛(まぎ)れ込(こ)み、094些(すこ)し力(ちから)のあるを幸(さいはひ)に今(いま)は僅(わづか)に五人頭(ごにんがしら)となつて、095この巴留(はる)の国(くに)の関守(せきもり)となり、096面白(おもしろ)からぬ月日(つきひ)を送(おく)つて居(を)ります。097この巴留(はる)の国(くに)には常世(とこよ)神王(しんわう)の勢力(せいりよく)侮(あなど)り難(がた)く今(いま)また伊弉冊(いざなみの)命(みこと)様(さま)が何処(どこ)からかお出(いで)になつて、098ロッキー山(ざん)にお鎮(しづ)まりなされ、099常世(とこよ)神王(しんわう)の勢力(せいりよく)ますます旺盛(わうせい)となり、100この巴留(はる)の国(くに)は鷹取別(たかとりわけ)の御(ご)領地(りやうぶん)で、101それはそれは大変(たいへん)厳(きび)しい制度(せいど)を布(し)かれ、102他国(たこく)の者(もの)は一人(ひとり)もこの国(くに)へ這入(はい)れない事(こと)になつて居(ゐ)ます。103万一(まんいち)これから先(さき)へ貴下(あなた)がお越(こ)しなさるやうな事(こと)があれば、104私(わたくし)は関守(せきもり)としての役(やく)が勤(つと)まらず、105鷹取別(たかとりわけ)の面前(めんぜん)に引(ひ)き出(だ)され、106裁(さば)きを受(う)けねばなりませぬ。107その時(とき)私(わたくし)の顔(かほ)を見知(みし)つてゐる鷹取別(たかとりわけ)はヤア貴様(きさま)は高彦(たかひこ)ではないか、108と睨(にら)まれやうものなら、109又(また)もやこの国(くに)を叩(たた)き払(ばら)ひにされて辛(えら)い目(め)に遇(あ)はねばならぬ。110折角(せつかく)命(いのち)を助(たす)けて貰(もら)つて、111その御恩(ごおん)も返(かへ)さず、112これから元(もと)へ帰(かへ)つて下(くだ)さいと申上(まをしあ)げるは恩(おん)を仇(あだ)にかへす道理(だうり)、113ぢやと申(まを)して行(い)つて貰(もら)へば今(いま)申(まを)す通(とほ)りの破目(はめ)に遇(あ)はねばならず、114貴下(あなた)がお出(いで)になるならば、115この関守(せきもり)の荒熊(あらくま)の首(くび)を刎(は)ねて行(い)つて下(くだ)さい』
116と滝(たき)の如(ごと)き涙(なみだ)を垂(た)らして大地(だいち)に泣(な)き伏(ふ)しける。117蚊々虎(かがとら)は笑(わら)ひ出(だ)し、
118蚊々虎『ウワハヽ弱(よわ)い奴(やつ)ぢや。119何(なん)だい、120高(たか)の知(し)れた鷹取別(たかとりわけ)、121彼奴(あいつ)がそれほど恐(おそ)ろしいのか。122俺(おれ)の鼻息(はないき)で貴様(きさま)を吹(ふ)き飛(と)ばしたやうに、123鷹取別(たかとりわけ)もまた吹(ふ)き飛(と)ばしてやるワイ。124エヽ心配(しんぱい)するな、125蚊々虎(かがとら)に従(つ)いて来(こ)い、126俺(おれ)が貴様(きさま)を巴留(はる)の国(くに)の王(わう)様(さま)に為(し)てやるのだ。127面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い』
128淤縢山津見『オイ蚊々虎(かがとら)、129貴様(きさま)は口(くち)が過(す)ぎる。130この国(くに)の守護神(しゆごじん)が、131其辺(そこら)一面(いちめん)に聞(き)いてをるぞ』
132 折(をり)から吹(ふ)き来(く)る夏(なつ)の風(かぜ)、133この場(ば)の囁(ささや)きを乗(の)せて巴留(はる)の都(みやこ)へ送(おく)り行(ゆ)く。
134(大正一一・二・八 旧一・一二 加藤明子録)
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