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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第8巻(未の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 智利の都
第1章 朝日丸
第2章 五十韻
第3章 身魂相応
第4章 烏の妻
第5章 三人世の元
第6章 火の玉
第2篇 四十八文字
第7章 蛸入道
第8章 改心祈願
第9章 鏡の池
第10章 仮名手本
第3篇 秘露より巴留へ
第11章 海の竜宮
第12章 身代り
第13章 修羅場
第14章 秘露の邂逅
第15章 ブラジル峠
第16章 霊縛
第17章 敵味方
第18章 巴留の関守
第4篇 巴留の国
第19章 刹那心
第20章 張子の虎
第21章 滝の村
第22章 五月姫
第23章 黒頭巾
第24章 盲目審神
第25章 火の車
第26章 讃嘆
第27章 沙漠
第28章 玉詩異
第29章 原山祇
第5篇 宇都の国
第30章 珍山峠
第31章 谷間の温泉
第32章 朝の紅顔
第33章 天上眉毛
第34章 烏天狗
第35章 一二三世
第36章 大蛇の背
第37章 珍山彦
第38章 華燭の典
第6篇 黄泉比良坂
第39章 言霊解一
第40章 言霊解二
第41章 言霊解三
第42章 言霊解四
第43章 言霊解五
余白歌
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霊界物語
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霊主体従(第1~12巻)
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第8巻(未の巻)
> 第4篇 巴留の国 > 第20章 張子の虎
<<< 刹那心
(B)
(N)
滝の村 >>>
第二〇章
張子
(
はりこ
)
の
虎
(
とら
)
〔三七〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:
第4篇 巴留の国
よみ(新仮名遣い):
はるのくに
章:
第20章 張子の虎
よみ(新仮名遣い):
はりこのとら
通し章番号:
370
口述日:
1922(大正11)年02月08日(旧01月12日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
淤縢山津見は高彦とその仲間四人らとともにブラジル山の西へ西へと歩を進めた。前方の原野には、黄昏の闇に燈火が瞬いているのが見える。
その中に、松明の光がこうこうと輝いて、大勢のわめき声が聞こえている。一行がその方向に向かっていくと、それは蚊々虎が数百人の群集に取り巻かれながら、怒鳴りつけていたのであった。
蚊々虎は巴留の国の軍勢に向かって、三五教の宣伝歌を歌い、黄泉比良坂の戦いが目前に迫っており、改心しろ、と説教している。
群集はそれを聞いて、きちがいだ、いや勇気のある宣伝使だ、とさまざまに批評している。
群衆の中から、へべれけに酔った男が蚊々虎の前に現れて、酒を飲むなという三五教の教えにいちゃもんをつけはじめた。蚊々虎は男の因縁を無視して、カン声を張り上げて酒を戒める歌を歌った。
男は怒って蚊々虎を殴りつける。蚊々虎はなおも酒をやめよ、と歌う。酔った男はますます怒って蚊々虎を脅しつけるが、蚊々虎がウーンと一声怒鳴りつけると、男はよろめいて転倒し、傍らの石に頭をぶつけて血を流し始めた。
この男は喧嘩虎と言って、巴留の国の鼻抓み者であった。誰も喧嘩虎を助けるものはいない有様であった。喧嘩虎は自分の悪口を言った仲間に喧嘩をふっかけ始めた。
蚊々虎はそこへ割って入って、喧嘩虎に勝負を挑みかける。喧嘩虎は立ち上がって蚊々虎に殴りかかった。蚊々虎はただ、喧嘩虎の打つままに任せている。
そこへ、声さわやかな宣伝歌が聞こえてきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-07 16:35:29
OBC :
rm0820
愛善世界社版:
134頁
八幡書店版:
第2輯 199頁
修補版:
校定版:
136頁
普及版:
59頁
初版:
ページ備考:
001
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
は
荒熊
(
あらくま
)
の
高彦
(
たかひこ
)
その
他
(
た
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
と
倶
(
とも
)
に
静々
(
しづしづ
)
と、
002
ブラジルの
山
(
やま
)
を
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
003
遥
(
はる
)
か
前方
(
ぜんぱう
)
に
展開
(
てんかい
)
されたる
原野
(
げんや
)
あり、
004
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
黄昏
(
たそがれ
)
の
暗
(
やみ
)
を
縫
(
ぬ
)
うて
燈火
(
あかり
)
が
瞬
(
またた
)
きゐる。
005
前方
(
ぜんぱう
)
遥
(
はる
)
かに
見渡
(
みわた
)
せば
松明
(
たいまつ
)
の
光
(
ひかり
)
、
006
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き
大勢
(
おほぜい
)
の
喚
(
わめ
)
き
声
(
ごゑ
)
聞
(
きこ
)
えけり。
007
一行
(
いつかう
)
は、
008
その
声
(
こゑ
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
つて
急
(
いそ
)
ぎけり。
009
見
(
み
)
れば
蚊々虎
(
かがとら
)
を
真中
(
まんなか
)
に、
010
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
群衆
(
ぐんしう
)
は
遠巻
(
とほまき
)
に
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
きて
何事
(
なにごと
)
か
呶鳴
(
どな
)
りつけ
居
(
を
)
る。
011
蚊々虎
(
かがとら
)
は
中央
(
ちうあう
)
の
高座
(
かうざ
)
に
上
(
あが
)
り、
012
蚊々虎
『
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
てる
)
とも
曇
(
くも
)
るとも
013
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
014
たとへ
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
015
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
016
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
017
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける
018
ヤイ、
019
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
の
奴
(
やつ
)
共
(
ども
)
、
020
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
との
立別
(
たてわけ
)
の
戦争
(
せんそう
)
は、
021
今
(
いま
)
におつ
始
(
ぱじ
)
まるぞ。
022
黄泉
(
よもつ
)
比良坂
(
ひらさか
)
の
戦
(
たたか
)
ひが
目前
(
もくぜん
)
に
差
(
さ
)
し
迫
(
せま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
023
何
(
なに
)
をキヨロキヨロして
居
(
ゐ
)
るのだい。
024
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで「
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
暗夜
(
やみよ
)
、
025
暗
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る」などと、
026
真黒
(
まつくろ
)
けの
一寸先
(
いつすんさき
)
の
判
(
わか
)
らぬウラル
彦
(
ひこ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
に
呆
(
とぼ
)
けて、
027
酒
(
さけ
)
ばかり
喰
(
くら
)
つて
腸
(
はらわた
)
まで
腐
(
くさ
)
らして
居
(
ゐ
)
る
連中
(
れんぢう
)
だらう。
028
勿体
(
もつたい
)
なくも
黄金山
(
わうごんざん
)
から
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
遊
(
あそ
)
ばした
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
029
常照彦
(
とこてるひこ
)
とは
我輩
(
わがはい
)
の
事
(
こと
)
だ。
030
確
(
しつ
)
かり
聞
(
き
)
け、
031
諾
(
き
)
かな
諾
(
き
)
く
様
(
やう
)
にして
改心
(
かいしん
)
さして
遣
(
や
)
るぞ。
032
おーい。
033
盲目
(
めくら
)
共
(
ども
)
、
034
聾
(
つんぼ
)
共
(
ども
)
、
035
どうだ
改心
(
かいしん
)
するか、
036
するならすると
男
(
をとこ
)
らしく
キツパリ
此処
(
ここ
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げろ』
037
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
から、
038
甲
(
かふ
)
『オイオイ
何
(
なん
)
だ
彼奴
(
あいつ
)
は、
039
偉
(
えら
)
さうに
吐
(
ぬ
)
かしよつて、
040
よつぽど
酒
(
さけ
)
が
飲
(
の
)
み
度
(
た
)
いと
見
(
み
)
えるぞ。
041
貴様
(
きさま
)
らウラル
彦
(
ひこ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
聞
(
き
)
いて
酒
(
さけ
)
ばかり
飲
(
の
)
んで
俺
(
おれ
)
には
少
(
すこ
)
しも
飲
(
の
)
まして
呉
(
く
)
れぬと
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
を
)
るではないか』
042
乙
(
おつ
)
『
貴様
(
きさま
)
、
043
聞
(
き
)
き
違
(
ちが
)
ひだ。
044
彼奴
(
あいつ
)
はなあ、
045
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
俺
(
おい
)
らに
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むな、
046
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むと
腸
(
はらわた
)
が
腐
(
くさ
)
つて
死
(
し
)
んで
終
(
しま
)
うと
云
(
い
)
うて
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
047
彼奴
(
あいつ
)
の
言草
(
いひぐさ
)
はチツとは
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬが
然
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
を
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
つて、
048
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
に
単身
(
ひとりみ
)
で
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで、
049
生命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
彼様
(
あん
)
な
強
(
きつ
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うてるのだ。
050
何
(
なに
)
ほど
度胸
(
どきよう
)
があつても、
051
吾身
(
わがみ
)
を
捨
(
す
)
てて
懸
(
かか
)
らな、
052
アンナ
大胆
(
だいたん
)
なことは
云
(
い
)
はれるものぢやないよ』
053
丙
(
へい
)
『
何
(
なに
)
、
054
彼
(
あ
)
りや
狂人
(
きちがひ
)
だよ。
055
当
(
あた
)
り
前
(
まへ
)
の
精神
(
せいしん
)
でソンナ
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
が
云
(
い
)
へるか。
056
これほど
皆
(
みんな
)
が
一
(
いち
)
に
酒
(
さけ
)
、
057
二
(
に
)
に
女
(
をんな
)
、
058
三
(
さん
)
に○○
[
※
御校正本・愛世版では「○○」で伏せ字になっているが、校定版・八幡版では「博打(ばくち)」という文字が入っている。
]
と
云
(
い
)
うて
居
(
を
)
るその
一番
(
いちばん
)
の
楽
(
たのし
)
みを
放
(
ほ
)
かせと
云
(
い
)
ふのだもの、
059
どうせ
吾々
(
われわれ
)
のお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬことを
喋
(
しや
)
べくるのだから、
060
生命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
にかけて、
061
ああやつて
歩
(
ある
)
いてゐるのだ。
062
チツとは
聞
(
き
)
いてやらぬと
冥加
(
みやうが
)
が
悪
(
わる
)
いて』
063
甲
(
かふ
)
『
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
064
この
間
(
あひだ
)
ウラル
彦
(
ひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
には、
065
沢山
(
たくさん
)
の
瓢箪
(
ふくべ
)
を
腰
(
こし
)
につけて
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
酒
(
さけ
)
をグツと
飲
(
の
)
んでは、
066
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
め
飲
(
の
)
めと
勧
(
すす
)
めて
居
(
を
)
つたが、
067
何程
(
いくら
)
飲
(
の
)
めと
云
(
い
)
つたとて、
068
俺
(
おい
)
らは
酒
(
さけ
)
をもつて
居
(
ゐ
)
ないのに
飲
(
の
)
む
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ないし、
069
宣伝使
(
せんでんし
)
奴
(
め
)
が
甘
(
うま
)
さうに
飲
(
の
)
んで
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
きよるのを、
070
唇
(
くちびる
)
を
嘗
(
な
)
めて
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
して、
071
羨
(
けな
)
り
相
(
さう
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るのも
余
(
あんま
)
り
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かぬぜ。
072
それよりも
彼奴
(
あいつ
)
のやうに
自分
(
じぶん
)
が
飲
(
の
)
まずにおいて、
073
皆
(
みんな
)
に
飲
(
の
)
むな
飲
(
の
)
むなと
言
(
い
)
ふ
方
(
はう
)
が、
074
まだましだよ。
075
根性
(
こんじやう
)
なりと
僻
(
ひが
)
まいで
宜
(
よ
)
いからなあ』
076
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
より
酒
(
さけ
)
に
へべれけ
に
酔
(
よ
)
うた
男
(
をとこ
)
、
077
片肌
(
かたはだ
)
をグツと
脱
(
ぬ
)
ぎ、
078
黒
(
くろ
)
ん
坊
(
ばう
)
が
黄疸
(
わうだん
)
を
病
(
や
)
んだ
様
(
やう
)
な
膚
(
はだへ
)
を
現
(
あら
)
はし
乍
(
なが
)
ら、
079
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
歩々
(
ほほ
)
蹣跚
(
まんさん
)
として
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
り、
080
男
(
をとこ
)
(虎公)
『やい、
081
やーい、
082
貴様
(
きさま
)
あ、
083
ささ
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むなと
吐
(
ぬか
)
すぢやないかエーン、
084
酒
(
さけ
)
は
飲
(
の
)
んだら
悪
(
わる
)
いかい、
085
馬鹿
(
ばか
)
な
奴
(
やつ
)
だなあ、
086
これほど
甘
(
うま
)
いものを
喰
(
くら
)
うなと
吐
(
ぬ
)
かしよる
奴
(
やつ
)
は
一体
(
いつたい
)
全体
(
ぜんたい
)
、
087
何処
(
どこ
)
の
唐変木
(
たうへんぼく
)
だい。
088
エーン、
089
酒
(
さけ
)
が
無
(
な
)
うてこの
世
(
よ
)
が
渡
(
わた
)
られると
思
(
おも
)
うとるのか、
090
馬鹿
(
ばか
)
、
091
何
(
なん
)
でもかでも
酒
(
さけ
)
が
無
(
な
)
ければ、
092
夜
(
よ
)
も
明
(
あ
)
けぬ、
093
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れぬ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
094
そして
貴様
(
きさま
)
、
095
さけ
もさけも、
096
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
097
酒
(
さけ
)
ほど
甘
(
うま
)
いものがあらうか、
098
四百
(
しひやく
)
種病
(
しゆびやう
)
の
病
(
やまひ
)
より
酒
(
さけ
)
を
止
(
や
)
めるほど
辛
(
つら
)
い
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つとるか、
099
貴様
(
きさま
)
のやうな
唐変木
(
たうへんぼく
)
には
話
(
はなし
)
が
出来
(
でき
)
ぬワイ。
100
トツトと
帰
(
かへ
)
れ。
101
俺
(
おれ
)
の
処
(
ところ
)
のお
多福
(
たふく
)
奴
(
め
)
が、
102
毎日
(
まいにち
)
日
(
ひ
)
にち
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むな
飲
(
の
)
むなと
吐
(
ぬ
)
かしよつて、
103
むか
付
(
つ
)
くの
むか
付
(
つ
)
かぬのつて、
104
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
腸
(
はらわた
)
が
沸
(
に
)
えくり
返
(
かへ
)
る。
105
それで
俺
(
おら
)
あ、
106
意地
(
いぢ
)
になつて
嫌
(
いや
)
でもない
酒
(
さけ
)
を
無理
(
むり
)
に
飲
(
の
)
んでやるのだ。
107
それに
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
か
知
(
し
)
らぬが、
108
自家
(
うち
)
の
嬶
(
かかあ
)
と
同
(
おな
)
じやうに
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むな、
109
喰
(
くら
)
ふなとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい。
110
真実
(
ほんと
)
に
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしやがらあ、
111
コンナ
事
(
こと
)
でも
自家
(
うち
)
の
嬶
(
かかあ
)
が
聞
(
き
)
きよつたら、
112
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
が
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだら
腸
(
はらわた
)
が
腐
(
くさ
)
るとおつしやつたと、
113
白
(
しろ
)
い
歯
(
は
)
をむき
出
(
だ
)
し、
114
団栗眼
(
どんぐりめ
)
を
釣
(
つ
)
りよつて
イチヤイチヤ
云
(
い
)
ふにきまつてらあ。
115
糞面白
(
くそおもしろ
)
くもない。
116
俺
(
おれ
)
の
処
(
ところ
)
の
嬶
(
かかあ
)
の
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ぬ
中
(
うち
)
に
早
(
はや
)
う
去
(
い
)
なぬか、
117
待
(
ま
)
ち
遠
(
ど
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
118
何
(
なに
)
を
ほざ
いて
居
(
ゐ
)
やがるか』
119
蚊々虎
(
かがとら
)
は
泥酔者
(
よひどれ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
耳
(
みみ
)
にもかけず
疳声
(
かんごゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて、
120
蚊々虎
『
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
酒
(
さけ
)
ほど
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
は
無
(
な
)
い
121
家
(
いへ
)
を
破
(
やぶ
)
るも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
122
離縁
(
りえん
)
になるのも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
123
喧嘩
(
けんくわ
)
をするのも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
124
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てるも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
125
小言
(
こごと
)
の
起
(
おこ
)
るも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
126
ケンケン
云
(
い
)
ふのも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
127
酒
(
さけ
)
ほど
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
は
無
(
な
)
い
128
腸
(
はらわた
)
腐
(
くさ
)
らす
悪酒
(
わるざけ
)
に
129
酔
(
ゑ
)
うて
管巻
(
くだま
)
く
悪者
(
わるもの
)
は
130
扨
(
さて
)
もさても
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
131
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むなら
水
(
みづ
)
を
飲
(
の
)
め』
132
と
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
すを、
133
泥酔者
(
よひどれ
)
はますます
怒
(
おこ
)
つて、
134
蚊々虎
(
かがとら
)
の
横面
(
よこづら
)
目蒐
(
めが
)
けてポカンと
殴
(
なぐ
)
りつける。
135
蚊々虎
(
かがとら
)
は
又
(
また
)
もや
疳声
(
かんごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
136
蚊々虎
『
人
(
ひと
)
を
殴
(
なぐ
)
るも
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め
137
夫婦
(
めをと
)
喧嘩
(
げんくわ
)
も
酒
(
さけ
)
の
為
(
た
)
め』
138
男
(
をとこ
)
(虎公)
『まだ
吐
(
ぬ
)
かしよるか、
139
しぶとい
奴
(
やつ
)
だ。
140
もつと
殴
(
なぐ
)
つてやらうか』
141
蚊々虎
(
かがとら
)
は
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
142
泥酔者
(
よひどれ
)
に
向
(
むか
)
つて
ウーン
と
一声
(
ひとこゑ
)
呶鳴
(
どな
)
りつけたるに、
143
泥酔者
(
よひどれもの
)
はヒヨロヒヨロと
よろめき
ながら、
144
傍
(
かたはら
)
の
石原
(
いしはら
)
に
顛倒
(
てんたう
)
し
額
(
ひたい
)
を
打
(
う
)
ちて、
145
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
く
血
(
ち
)
を
流
(
なが
)
しゐる。
146
大勢
(
おほぜい
)
の
中
(
なか
)
より、
147
甲
(
かふ
)
『おいおい、
148
泥酔者
(
よひどれ
)
が
転
(
こ
)
けよつた。
149
あらあ
何
(
なん
)
だ、
150
血
(
ち
)
が
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやないか、
151
救
(
たす
)
けてやらぬかい』
152
乙
(
おつ
)
『
救
(
たす
)
けてやれと
云
(
い
)
うたつて、
153
コンナ
者
(
もの
)
に
相手
(
あひて
)
になる
者
(
もの
)
は、
154
この
広
(
ひろ
)
い
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
には
一人
(
ひとり
)
もありはせないよ。
155
彼奴
(
あいつ
)
は
グデン
虎
(
とら
)
の
グニヤ
虎
(
とら
)
の
喧嘩虎
(
けんくわとら
)
と
云
(
い
)
うて
大変
(
たいへん
)
に
酒
(
さけ
)
の
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
156
指一本
(
ゆびいつぽん
)
でも
触
(
さ
)
へ
様
(
やう
)
ものなら、
157
因縁
(
いんねん
)
をつけよつて
ヘタバリ
込
(
こ
)
んで、
158
十日
(
とをか
)
でも
二十日
(
はつか
)
でも
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
云
(
い
)
うて
只
(
ただ
)
の
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
む
奴
(
やつ
)
だ。
159
アンナ
者
(
もの
)
に
相手
(
あひて
)
になつたらそれこそ
家
(
いへ
)
も
倉
(
くら
)
も
山
(
やま
)
も
田
(
た
)
も
飲
(
の
)
まれて
了
(
しま
)
ふぞ。
160
相手
(
あひて
)
になるな、
161
放
(
ほ
)
つとけ
放
(
ほ
)
つとけ。
162
彼奴
(
あいつ
)
が
死
(
し
)
によると
皆
(
みな
)
の
厄介
(
やくかい
)
除
(
よ
)
けだ。
163
国中
(
くにぢう
)
の
者
(
もの
)
が
餅
(
もち
)
でも
搗
(
つ
)
いて
祝
(
いは
)
ふかも
知
(
し
)
れないよ』
164
乙
(
おつ
)
『
彼奴
(
あいつ
)
が
噂
(
うはさ
)
に
高
(
たか
)
い
酒
(
さけ
)
喰
(
くら
)
ひの
喧嘩虎
(
けんくわとら
)
か。
165
やあ
煩
(
うる
)
さい
煩
(
うる
)
さい、
166
よう
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れた』
167
虎
(
とら
)
『だ、
168
だ、
169
誰
(
たれ
)
だい、
170
俺
(
おれ
)
を
グデン
虎
(
とら
)
の
グヅ
虎
(
とら
)
の
喧嘩虎
(
けんくわとら
)
だと、
171
何処
(
どこ
)
に
俺
(
おれ
)
がグヅを
巻
(
ま
)
いたか、
172
喧嘩
(
けんくわ
)
をしたか。
173
さあ
承知
(
しようち
)
せぬ、
174
俺
(
おれ
)
を
誰様
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
る。
175
俺
(
おれ
)
は
広
(
ひろ
)
い
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
でも
二人
(
ふたり
)
とない
虎
(
とら
)
さまだ。
176
虎
(
とら
)
さまが
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
むのが
何
(
なに
)
が
不思議
(
ふしぎ
)
だい。
177
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
みは
皆
(
みんな
)
酔
(
ゑ
)
うと
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
りよつて、
178
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
張子
(
はりこ
)
の
虎
(
とら
)
になるのだ。
179
虎
(
とら
)
が
酒
(
さけ
)
飲
(
の
)
んだのが、
180
な、
181
な、
182
何
(
なに
)
が
悪
(
わる
)
い。
183
さあ
承知
(
しようち
)
せぬ、
184
貴様
(
きさま
)
の
家
(
うち
)
は
知
(
し
)
つとるから
之
(
これ
)
から
行
(
い
)
つて
家
(
いへ
)
も、
185
倉
(
くら
)
も、
186
山
(
やま
)
も、
187
田
(
た
)
も、
188
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
り
飲
(
の
)
んで
遣
(
や
)
らうかい。
189
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
、
190
酒
(
さけ
)
の
燗
(
かん
)
をして
置
(
お
)
きよらぬかい』
191
と
団栗目
(
どんぐりめ
)
をむいて
睨
(
にら
)
みつける。
192
甲
(
かふ
)
乙
(
おつ
)
『モシモシ、
193
虎
(
とら
)
さまとやら、
194
お
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
りまして
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
195
私
(
わたくし
)
は
決
(
けつ
)
して
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
したのではありませぬ。
196
他
(
よそ
)
の
国
(
くに
)
にソンナ
人
(
ひと
)
があるげなと
云
(
い
)
うたのです。
197
取違
(
とりちがひ
)
して
貰
(
もら
)
つては
困
(
こま
)
ります』
198
虎公
『いかぬいかぬ、
199
誤魔化
(
ごまくわ
)
すか。
200
何
(
なん
)
でも
宜
(
よ
)
い、
201
飲
(
の
)
んだら
良
(
よ
)
いのだ、
202
コラ、
203
八頭
(
やつがしら
)
八尾
(
やつを
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
子
(
こ
)
とは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だぞ。
204
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
飲
(
の
)
むのが
商売
(
しやうばい
)
だ』
205
二人
(
ふたり
)
は
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
め
当惑
(
たうわく
)
して
居
(
を
)
る。
206
蚊々虎
(
かがとら
)
はこの
場
(
ば
)
に
現
(
あらは
)
れて、
207
蚊々虎
『おい
虎公
(
とらこう
)
、
208
酒
(
さけ
)
喰
(
くら
)
ひ、
209
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
云
(
い
)
ふか、
210
俺
(
おれ
)
の
腕
(
うで
)
を
見
(
み
)
い、
211
誰
(
たれ
)
だと
思
(
おも
)
つてる、
212
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
213
貴様
(
きさま
)
が
喧嘩虎
(
けんくわとら
)
なら
此方
(
こな
)
さんは
蚊々虎
(
かがとら
)
ぢや、
214
虎
(
とら
)
と
虎
(
とら
)
との、
215
一
(
ひと
)
つ
勝負
(
しようぶ
)
を
始
(
はじ
)
めようかい』
216
虎公
『な、
217
何
(
なん
)
だ、
218
喧嘩
(
けんくわ
)
か、
219
喧嘩
(
けんくわ
)
は
酒
(
さけ
)
の
次
(
つぎ
)
に
好
(
す
)
きだ。
220
こいつ、
221
酒
(
さけ
)
の
肴
(
さかな
)
に
喧嘩
(
けんくわ
)
でもやらうかい、
222
面白
(
おもしろ
)
からう』
223
と
虎
(
とら
)
は
立上
(
たちあが
)
つて、
224
蚊々虎
(
かがとら
)
目蒐
(
めが
)
けて
飛
(
と
)
び
掛
(
かか
)
る。
225
蚊々虎
(
かがとら
)
は
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
として
彼
(
かれ
)
が
打擲
(
ちやうちやく
)
するままに
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
居
(
ゐ
)
る。
226
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ
暗
(
やみ
)
を
破
(
やぶ
)
つて、
227
(淤縢山津見の声)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あらは
)
れて
228
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわけ
)
る』
229
と
声
(
こゑ
)
爽
(
さはや
)
かな
宣伝歌
(
せんでんか
)
は
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たりける。
230
(
大正一一・二・八
旧一・一二
北村隆光
録)
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【第20章 張子の虎|第8巻|霊主体従|霊界物語|/rm0820】
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