霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 張子(はりこ)の虎(とら)〔三七〇〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm0820
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 淤縢山津見(おどやまづみ)は荒熊(あらくま)の高彦(たかひこ)その他(た)の四(よ)人(にん)と倶(とも)に静々(しづしづ)と、002ブラジルの山(やま)を西(にし)へ西(にし)へと降(くだ)り行(ゆ)く。003遥(はる)か前方(ぜんぱう)に展開(てんかい)されたる原野(げんや)あり、004彼方(あちら)此方(こちら)に黄昏(たそがれ)の暗(やみ)を縫(ぬ)うて燈火(あかり)が瞬(またた)きゐる。005前方(ぜんぱう)遥(はる)かに見渡(みわた)せば松明(たいまつ)の光(ひかり)、006皎々(かうかう)と輝(かがや)き大勢(おほぜい)の喚(わめ)き声(ごゑ)聞(きこ)えけり。007一行(いつかう)は、008その声(こゑ)の方(はう)に向(むか)つて急(いそ)ぎけり。
009 見(み)れば蚊々虎(かがとら)を真中(まんなか)に、010数百(すうひやく)人(にん)の群衆(ぐんしう)は遠巻(とほまき)に取(と)り巻(ま)きて何事(なにごと)か呶鳴(どな)りつけ居(を)る。011蚊々虎(かがとら)は中央(ちうあう)の高座(かうざ)に上(あが)り、
012蚊々虎『朝日(あさひ)は照(てる)とも曇(くも)るとも
013月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
014たとへ大地(だいち)は沈(しづ)むとも
015誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
016神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
017善(ぜん)と悪(あく)とを立(た)て別(わ)ける
018ヤイ、019巴留(はる)の国(くに)の奴(やつ)共(ども)、020善(ぜん)と悪(あく)との立別(たてわけ)の戦争(せんそう)は、021今(いま)におつ始(ぱじ)まるぞ。022黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)の戦(たたか)ひが目前(もくぜん)に差(さ)し迫(せま)つて居(ゐ)るのだ。023何(なに)をキヨロキヨロして居(ゐ)るのだい。024お前(まへ)達(たち)は朝(あさ)から晩(ばん)まで「飲(の)めよ騒(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)は暗夜(やみよ)、025暗(やみ)の後(あと)には月(つき)が出(で)る」などと、026真黒(まつくろ)けの一寸先(いつすんさき)の判(わか)らぬウラル彦(ひこ)の宣伝歌(せんでんか)に呆(とぼ)けて、027酒(さけ)ばかり喰(くら)つて腸(はらわた)まで腐(くさ)らして居(ゐ)る連中(れんぢう)だらう。028勿体(もつたい)なくも黄金山(わうごんざん)から御(ご)出張(しゆつちやう)遊(あそ)ばした天下(てんか)の宣伝使(せんでんし)、029常照彦(とこてるひこ)とは我輩(わがはい)の事(こと)だ。030確(しつ)かり聞(き)け、031諾(き)かな諾(き)く様(やう)にして改心(かいしん)さして遣(や)るぞ。032おーい。033盲目(めくら)共(ども)、034聾(つんぼ)共(ども)、035どうだ改心(かいしん)するか、036するならすると男(をとこ)らしくキツパリ此処(ここ)で神(かみ)様(さま)に申(まを)し上(あ)げろ』
037 群衆(ぐんしう)の中(なか)から、
038甲(かふ)『オイオイ何(なん)だ彼奴(あいつ)は、039偉(えら)さうに吐(ぬ)かしよつて、040よつぽど酒(さけ)が飲(の)み度(た)いと見(み)えるぞ。041貴様(きさま)らウラル彦(ひこ)の宣伝歌(せんでんか)を聞(き)いて酒(さけ)ばかり飲(の)んで俺(おれ)には少(すこ)しも飲(の)まして呉(く)れぬと呶鳴(どな)つて居(を)るではないか』
042乙(おつ)『貴様(きさま)、043聞(き)き違(ちが)ひだ。044彼奴(あいつ)はなあ、045三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)で俺(おい)らに酒(さけ)を飲(の)むな、046酒(さけ)を飲(の)むと腸(はらわた)が腐(くさ)つて死(し)んで終(しま)うと云(い)うて呶鳴(どな)つて居(を)るのだ。047彼奴(あいつ)の言草(いひぐさ)はチツとは気(き)に喰(く)はぬが然(しか)し吾々(われわれ)を助(たす)けてやらうと思(おも)つて、048大勢(おほぜい)の中(なか)に単身(ひとりみ)で飛(と)び込(こ)んで、049生命(いのち)を的(まと)に彼様(あん)な強(きつ)い事(こと)を云(い)うてるのだ。050何(なに)ほど度胸(どきよう)があつても、051吾身(わがみ)を捨(す)てて懸(かか)らな、052アンナ大胆(だいたん)なことは云(い)はれるものぢやないよ』
053丙(へい)『何(なに)、054彼(あ)りや狂人(きちがひ)だよ。055当(あた)り前(まへ)の精神(せいしん)でソンナ馬鹿(ばか)な事(こと)が云(い)へるか。056これほど皆(みんな)が一(いち)に酒(さけ)、057二(に)に女(をんな)、058三(さん)に○○[※御校正本・愛世版では「○○」で伏せ字になっているが、校定版・八幡版では「博打(ばくち)」という文字が入っている。]と云(い)うて居(を)るその一番(いちばん)の楽(たのし)みを放(ほ)かせと云(い)ふのだもの、059どうせ吾々(われわれ)のお気(き)に入(い)らぬことを喋(しや)べくるのだから、060生命(いのち)を的(まと)にかけて、061ああやつて歩(ある)いてゐるのだ。062チツとは聞(き)いてやらぬと冥加(みやうが)が悪(わる)いて』
063甲(かふ)『何(なん)だか知(し)らぬが、064この間(あひだ)ウラル彦(ひこ)の宣伝使(せんでんし)が来(き)た時(とき)には、065沢山(たくさん)の瓢箪(ふくべ)を腰(こし)につけて自分(じぶん)一人(ひとり)酒(さけ)をグツと飲(の)んでは、066酒(さけ)飲(の)め飲(の)めと勧(すす)めて居(を)つたが、067何程(いくら)飲(の)めと云(い)つたとて、068俺(おい)らは酒(さけ)をもつて居(ゐ)ないのに飲(の)む事(こと)も出来(でき)ないし、069宣伝使(せんでんし)奴(め)が甘(うま)さうに飲(の)んで管(くだ)を巻(ま)きよるのを、070唇(くちびる)を嘗(な)めて青(あを)い顔(かほ)して、071羨(けな)り相(さう)に聞(き)いて居(ゐ)るのも余(あんま)り気(き)が利(き)かぬぜ。072それよりも彼奴(あいつ)のやうに自分(じぶん)が飲(の)まずにおいて、073皆(みんな)に飲(の)むな飲(の)むなと言(い)ふ方(はう)が、074まだましだよ。075根性(こんじやう)なりと僻(ひが)まいで宜(よ)いからなあ』
076 大勢(おほぜい)の中(なか)より酒(さけ)にへべれけに酔(よ)うた男(をとこ)、077片肌(かたはだ)をグツと脱(ぬ)ぎ、078黒(くろ)ん坊(ばう)が黄疸(わうだん)を病(や)んだ様(やう)な膚(はだへ)を現(あら)はし乍(なが)ら、079宣伝使(せんでんし)の前(まへ)に歩々(ほほ)蹣跚(まんさん)として進(すす)み寄(よ)り、
080男(をとこ)(虎公)『やい、081やーい、082貴様(きさま)あ、083ささ酒(さけ)を飲(の)むなと吐(ぬか)すぢやないかエーン、084酒(さけ)は飲(の)んだら悪(わる)いかい、085馬鹿(ばか)な奴(やつ)だなあ、086これほど甘(うま)いものを喰(くら)うなと吐(ぬ)かしよる奴(やつ)は一体(いつたい)全体(ぜんたい)、087何処(どこ)の唐変木(たうへんぼく)だい。088エーン、089酒(さけ)が無(な)うてこの世(よ)が渡(わた)られると思(おも)うとるのか、090馬鹿(ばか)、091何(なん)でもかでも酒(さけ)が無(な)ければ、092夜(よ)も明(あ)けぬ、093日(ひ)も暮(く)れぬ世(よ)の中(なか)だ。094そして貴様(きさま)、095さけもさけも、096世(よ)の中(なか)に、097酒(さけ)ほど甘(うま)いものがあらうか、098四百(しひやく)種病(しゆびやう)の病(やまひ)より酒(さけ)を止(や)めるほど辛(つら)い事(こと)は無(な)いと云(い)ふ事(こと)を知(し)つとるか、099貴様(きさま)のやうな唐変木(たうへんぼく)には話(はなし)が出来(でき)ぬワイ。100トツトと帰(かへ)れ。101俺(おれ)の処(ところ)のお多福(たふく)奴(め)が、102毎日(まいにち)日(ひ)にち酒(さけ)を飲(の)むな飲(の)むなと吐(ぬ)かしよつて、103むか付(つ)くのむか付(つ)かぬのつて、104腹(はら)が立(た)つて腸(はらわた)が沸(に)えくり返(かへ)る。105それで俺(おら)あ、106意地(いぢ)になつて嫌(いや)でもない酒(さけ)を無理(むり)に飲(の)んでやるのだ。107それに貴様(きさま)は何処(どこ)の奴(やつ)か知(し)らぬが、108自家(うち)の嬶(かかあ)と同(おな)じやうに酒(さけ)を飲(の)むな、109喰(くら)ふなとは何(なん)の事(こと)だい。110真実(ほんと)に人(ひと)を馬鹿(ばか)にしやがらあ、111コンナ事(こと)でも自家(うち)の嬶(かかあ)が聞(き)きよつたら、112三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)が酒(さけ)を飲(の)んだら腸(はらわた)が腐(くさ)るとおつしやつたと、113白(しろ)い歯(は)をむき出(だ)し、114団栗眼(どんぐりめ)を釣(つ)りよつてイチヤイチヤ云(い)ふにきまつてらあ。115糞面白(くそおもしろ)くもない。116俺(おれ)の処(ところ)の嬶(かかあ)の出(で)て来(こ)ぬ中(うち)に早(はや)う去(い)なぬか、117待(ま)ち遠(ど)い奴(やつ)だ。118何(なに)をほざいて居(ゐ)やがるか』
119 蚊々虎(かがとら)は泥酔者(よひどれ)の言葉(ことば)を耳(みみ)にもかけず疳声(かんごゑ)を張(は)り上(あ)げて、
120蚊々虎『世(よ)の中(なか)に酒(さけ)ほど悪(わる)い奴(やつ)は無(な)い
121家(いへ)を破(やぶ)るも酒(さけ)の為(た)め
122離縁(りえん)になるのも酒(さけ)の為(た)め
123喧嘩(けんくわ)をするのも酒(さけ)の為(た)め
124生命(いのち)を捨(す)てるも酒(さけ)の為(た)め
125小言(こごと)の起(おこ)るも酒(さけ)の為(た)め
126ケンケン云(い)ふのも酒(さけ)の為(た)め
127酒(さけ)ほど悪(わる)い奴(やつ)は無(な)い
128腸(はらわた)腐(くさ)らす悪酒(わるざけ)に
129酔(ゑ)うて管巻(くだま)く悪者(わるもの)は
130扨(さて)もさても気(き)の毒(どく)な
131酒(さけ)を飲(の)むなら水(みづ)を飲(の)め』
132と歌(うた)ひ出(だ)すを、133泥酔者(よひどれ)はますます怒(おこ)つて、134蚊々虎(かがとら)の横面(よこづら)目蒐(めが)けてポカンと殴(なぐ)りつける。135蚊々虎(かがとら)は又(また)もや疳声(かんごゑ)を張上(はりあ)げて、
136蚊々虎『人(ひと)を殴(なぐ)るも酒(さけ)の為(た)め
137夫婦(めをと)喧嘩(げんくわ)も酒(さけ)の為(た)め』
138男(をとこ)(虎公)『まだ吐(ぬ)かしよるか、139しぶとい奴(やつ)だ。140もつと殴(なぐ)つてやらうか』
141 蚊々虎(かがとら)は目(め)を塞(ふさ)ぎ、142泥酔者(よひどれ)に向(むか)つてウーンと一声(ひとこゑ)呶鳴(どな)りつけたるに、143泥酔者(よひどれもの)はヒヨロヒヨロとよろめきながら、144傍(かたはら)の石原(いしはら)に顛倒(てんたう)し額(ひたい)を打(う)ちて、145滝(たき)の如(ごと)く血(ち)を流(なが)しゐる。146大勢(おほぜい)の中(なか)より、
147甲(かふ)『おいおい、148泥酔者(よひどれ)が転(こ)けよつた。149あらあ何(なん)だ、150血(ち)が出(で)て居(ゐ)るぢやないか、151救(たす)けてやらぬかい』
152乙(おつ)『救(たす)けてやれと云(い)うたつて、153コンナ者(もの)に相手(あひて)になる者(もの)は、154この広(ひろ)い巴留(はる)の国(くに)には一人(ひとり)もありはせないよ。155彼奴(あいつ)はグデン虎(とら)のグニヤ虎(とら)の喧嘩虎(けんくわとら)と云(い)うて大変(たいへん)に酒(さけ)の悪(わる)い奴(やつ)だ。156指一本(ゆびいつぽん)でも触(さ)へ様(やう)ものなら、157因縁(いんねん)をつけよつてヘタバリ込(こ)んで、158十日(とをか)でも二十日(はつか)でも愚図(ぐづ)々々(ぐづ)云(い)うて只(ただ)の酒(さけ)を飲(の)む奴(やつ)だ。159アンナ者(もの)に相手(あひて)になつたらそれこそ家(いへ)も倉(くら)も山(やま)も田(た)も飲(の)まれて了(しま)ふぞ。160相手(あひて)になるな、161放(ほ)つとけ放(ほ)つとけ。162彼奴(あいつ)が死(し)によると皆(みな)の厄介(やくかい)除(よ)けだ。163国中(くにぢう)の者(もの)が餅(もち)でも搗(つ)いて祝(いは)ふかも知(し)れないよ』
164乙(おつ)[※甲の間違いか?]『彼奴(あいつ)が噂(うはさ)に高(たか)い酒(さけ)喰(くら)ひの喧嘩虎(けんくわとら)か。165やあ煩(うる)さい煩(うる)さい、166よう云(い)うて呉(く)れた』
167虎(とら)『だ、168だ、169誰(たれ)だい、170俺(おれ)をグデン虎(とら)のグヅ虎(とら)の喧嘩虎(けんくわとら)だと、171何処(どこ)に俺(おれ)がグヅを巻(ま)いたか、172喧嘩(けんくわ)をしたか。173さあ承知(しようち)せぬ、174俺(おれ)を誰様(どなた)と心得(こころえ)て居(を)る。175俺(おれ)は広(ひろ)い巴留(はる)の国(くに)でも二人(ふたり)とない虎(とら)さまだ。176虎(とら)さまが酒(さけ)を飲(の)むのが何(なに)が不思議(ふしぎ)だい。177酒(さけ)飲(の)みは皆(みんな)酔(ゑ)うと首(くび)を振(ふ)りよつて、178誰(たれ)も彼(かれ)も張子(はりこ)の虎(とら)になるのだ。179虎(とら)が酒(さけ)飲(の)んだのが、180な、181な、182何(なに)が悪(わる)い。183さあ承知(しようち)せぬ、184貴様(きさま)の家(うち)は知(し)つとるから之(これ)から行(い)つて家(いへ)も、185倉(くら)も、186山(やま)も、187田(た)も、188御(ご)註文(ちゆうもん)通(どほ)り飲(の)んで遣(や)らうかい。189二人(ふたり)の奴(やつ)、190酒(さけ)の燗(かん)をして置(お)きよらぬかい』
191と団栗目(どんぐりめ)をむいて睨(にら)みつける。
192甲(かふ) 乙(おつ)『モシモシ、193虎(とら)さまとやら、194お気(き)に障(さは)りまして誠(まこと)に済(す)みませぬ。195私(わたくし)は決(けつ)して貴方(あなた)の事(こと)を申(まを)したのではありませぬ。196他(よそ)の国(くに)にソンナ人(ひと)があるげなと云(い)うたのです。197取違(とりちがひ)して貰(もら)つては困(こま)ります』
198虎公『いかぬいかぬ、199誤魔化(ごまくわ)すか。200何(なん)でも宜(よ)い、201飲(の)んだら良(よ)いのだ、202コラ、203八頭(やつがしら)八尾(やつを)の大蛇(をろち)の子(こ)とは俺(おれ)の事(こと)だぞ。204何(なに)も彼(か)も飲(の)むのが商売(しやうばい)だ』
205 二人(ふたり)は顔(かほ)を顰(しか)め当惑(たうわく)して居(を)る。206蚊々虎(かがとら)はこの場(ば)に現(あらは)れて、
207蚊々虎『おい虎公(とらこう)、208酒(さけ)喰(くら)ひ、209何(なに)を愚図(ぐづ)々々(ぐづ)云(い)ふか、210俺(おれ)の腕(うで)を見(み)い、211誰(たれ)だと思(おも)つてる、212三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だ。213貴様(きさま)が喧嘩虎(けんくわとら)なら此方(こな)さんは蚊々虎(かがとら)ぢや、214虎(とら)と虎(とら)との、215一(ひと)つ勝負(しようぶ)を始(はじ)めようかい』
216虎公『な、217何(なん)だ、218喧嘩(けんくわ)か、219喧嘩(けんくわ)は酒(さけ)の次(つぎ)に好(す)きだ。220こいつ、221酒(さけ)の肴(さかな)に喧嘩(けんくわ)でもやらうかい、222面白(おもしろ)からう』
223と虎(とら)は立上(たちあが)つて、224蚊々虎(かがとら)目蒐(めが)けて飛(と)び掛(かか)る。225蚊々虎(かがとら)は泰然(たいぜん)自若(じじやく)として彼(かれ)が打擲(ちやうちやく)するままに身(み)を任(まか)せ居(ゐ)る。226斯(かか)る処(ところ)へ暗(やみ)を破(やぶ)つて、
227(淤縢山津見の声)『神(かみ)が表(おもて)に現(あらは)れて
228善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわけ)る』
229と声(こゑ)爽(さはや)かな宣伝歌(せんでんか)は聞(きこ)え来(き)たりける。
230(大正一一・二・八 旧一・一二 北村隆光録)
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