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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第8巻(未の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 智利の都
第1章 朝日丸
第2章 五十韻
第3章 身魂相応
第4章 烏の妻
第5章 三人世の元
第6章 火の玉
第2篇 四十八文字
第7章 蛸入道
第8章 改心祈願
第9章 鏡の池
第10章 仮名手本
第3篇 秘露より巴留へ
第11章 海の竜宮
第12章 身代り
第13章 修羅場
第14章 秘露の邂逅
第15章 ブラジル峠
第16章 霊縛
第17章 敵味方
第18章 巴留の関守
第4篇 巴留の国
第19章 刹那心
第20章 張子の虎
第21章 滝の村
第22章 五月姫
第23章 黒頭巾
第24章 盲目審神
第25章 火の車
第26章 讃嘆
第27章 沙漠
第28章 玉詩異
第29章 原山祇
第5篇 宇都の国
第30章 珍山峠
第31章 谷間の温泉
第32章 朝の紅顔
第33章 天上眉毛
第34章 烏天狗
第35章 一二三世
第36章 大蛇の背
第37章 珍山彦
第38章 華燭の典
第6篇 黄泉比良坂
第39章 言霊解一
第40章 言霊解二
第41章 言霊解三
第42章 言霊解四
第43章 言霊解五
余白歌
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霊界物語
>
霊主体従(第1~12巻)
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第8巻(未の巻)
> 第4篇 巴留の国 > 第25章 火の車
<<< 盲目審神
(B)
(N)
讃嘆 >>>
第二五章
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
〔三七五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:
第4篇 巴留の国
よみ(新仮名遣い):
はるのくに
章:
第25章 火の車
よみ(新仮名遣い):
ひのくるま
通し章番号:
375
口述日:
1922(大正11)年02月09日(旧01月13日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
淤縢山津見一行は三五教の教えを闇山津見に詳細に説き明かし、夜明けを迎えた。寝室で休もうとしていた三人の耳に、宣伝歌が聞こえてきた。
闇山津見の館に迎えられた宣伝使は、駒山彦であった。
駒山彦は死んだものと思っていた蚊々虎は、幽霊だと思って恐れるが、駒山彦、淤縢山津見、高彦はそれをからかっている。
駒山彦は、筑紫の国からの船中で日の出神に出会い、三五教に改心した経緯を一同に語った。そして、淤縢山津見一行に加えてくれるようにと頼んだ。
そのとき、門外に幾百人もの人声が聞こえた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-14 20:30:22
OBC :
rm0825
愛善世界社版:
167頁
八幡書店版:
第2輯 211頁
修補版:
校定版:
169頁
普及版:
74頁
初版:
ページ備考:
001
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
の
館
(
やかた
)
における
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
一行
(
いつかう
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
説示
(
せつじ
)
は、
002
益々
(
ますます
)
微
(
び
)
に
入
(
い
)
り
細
(
さい
)
に
渉
(
わた
)
り、
003
遂
(
つひ
)
に
鶏鳴
(
けいめい
)
に
達
(
たつ
)
したり。
004
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
005
闇山津見
『
思
(
おも
)
はず
尊
(
たふと
)
き
御
(
お
)
話
(
はなし
)
に
実
(
み
)
が
入
(
い
)
りまして、
006
最早
(
もはや
)
五更
(
ごかう
)
となりました。
007
皆
(
みな
)
さま
御
(
お
)
疲労
(
くたびれ
)
でせう、
008
暫
(
しば
)
らく
御
(
お
)
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
009
と
別室
(
べつしつ
)
に
寝所
(
しんしよ
)
を
作
(
つく
)
り、
010
奥
(
おく
)
の
一室
(
ひとま
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したり。
011
蚊々虎
『
大変
(
たいへん
)
に
草臥
(
くたびれ
)
ました。
012
何
(
ど
)
うです、
013
一
(
ひと
)
つ
休
(
やす
)
まして
貰
(
もら
)
ひませうか。
014
実際
(
じつさい
)
ブラジル
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えて
来
(
き
)
て、
015
蚊々虎
(
かがとら
)
の
脚
(
あし
)
は
棒
(
ぼう
)
のやうになつて
了
(
しま
)
ひましたよ』
016
淤縢山津見
『それだから
広言
(
くわうげん
)
は
後
(
あと
)
にせよと
云
(
い
)
ふのだ。
017
千
(
せん
)
里
(
り
)
万里
(
まんり
)
も
応
(
こた
)
へぬとか、
018
たとへ
数万
(
すうまん
)
の
敵
(
てき
)
が
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
るとも
張
(
は
)
り
倒
(
たふ
)
すとか
偉
(
えら
)
い
元気
(
げんき
)
だつたが、
019
随分
(
ずゐぶん
)
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くなあ。
020
お
前
(
まへ
)
の
刹那心
(
せつなしん
)
も
調法
(
てうはふ
)
なものだよ』
021
蚊々虎
『ナア
高彦
(
たかひこ
)
、
022
些
(
ちつ
)
とは
休養
(
きうやう
)
といふことをせなくては、
023
身体
(
からだ
)
のためにならぬ。
024
眠
(
ね
)
る
時
(
とき
)
には
眠
(
ね
)
る。
025
遊
(
あそ
)
ぶ
時
(
とき
)
には
遊
(
あそ
)
ぶ。
026
活動
(
くわつどう
)
する
時
(
とき
)
には、
027
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
活動
(
くわつどう
)
すれば
好
(
い
)
いぢやないか』
028
高彦
『
大変
(
たいへん
)
雲行
(
くもゆ
)
きが
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
ましたな。
029
何
(
ど
)
うやら
明日
(
あす
)
は
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
りさうだ。
030
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
つたら、
031
また
悠々
(
ゆつくり
)
休
(
やす
)
まして
貰
(
もら
)
はうかい。
032
昨日
(
きのふ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
に
随
(
つ
)
いて
大活動
(
だいくわつどう
)
だつた。
033
大沙漠
(
だいさばく
)
を
横断
(
わうだん
)
するのも
勇壮
(
ゆうさう
)
なものだ。
034
時
(
とき
)
に
昨夜
(
ゆふべ
)
の
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・三版(御校正本)・愛世版では「神憑り」、校定版では「神がかり」。
]
は
何
(
ど
)
うだつた。
035
随分
(
ずゐぶん
)
詮
(
つま
)
らぬものだなあ、
036
蚊々虎
(
かがとら
)
さま』
037
蚊々虎
『ナーニ、
038
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
俄
(
にはか
)
審神者
(
さには
)
に
分
(
わか
)
つてたまらうかい。
039
これから
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・三版(御校正本)・愛世版では「神憑り」、校定版では「神がかり」。
]
兼
(
けん
)
審神者
(
さには
)
だ。
040
モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
041
今日
(
けふ
)
から
私
(
わたし
)
が
審神者
(
さには
)
の
役
(
やく
)
だ。
042
そこへ
一遍
(
いつぺん
)
御
(
お
)
坐
(
すわ
)
りなさい。
043
眠
(
ね
)
るのが
厭
(
いや
)
なら
審神者
(
さには
)
でもして、
044
守護神
(
しゆごじん
)
を
現
(
あら
)
はして
上
(
あ
)
げようかい。
045
ブラジル
峠
(
たうげ
)
でこの
神主
(
かむぬし
)
に
悪霊
(
あくれい
)
が
憑
(
つ
)
いたからと
云
(
い
)
つて、
046
何時
(
いつ
)
までも
悪霊
(
あくれい
)
ばかりが
憑
(
つ
)
いてたまるものか。
047
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
の
審神者
(
さには
)
は
先入主
(
せんにふしゆ
)
をよう
除
(
と
)
らぬから、
048
薩張
(
さつぱ
)
り
平凡
(
べぼ
)
審神者
(
さには
)
をするのだ。
049
矢張
(
やつぱ
)
り
過去
(
くわこ
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
050
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
が
判
(
わか
)
らぬのだよ』
051
淤縢山津見
『ソンナラ
改
(
あらた
)
めて
審神者
(
さには
)
をしてやらうか』
052
蚊々虎
『
人民
(
じんみん
)
の
癖
(
くせ
)
に
神
(
かみ
)
を
審神者
(
さには
)
すると
云
(
い
)
ふことがあるか』
053
淤縢山津見
『さうだらう、
054
化
(
ば
)
けを
現
(
あら
)
はされては
面目
(
めんぼく
)
ないからな』
055
高彦
『
五月姫
(
さつきひめ
)
の
前
(
まへ
)
で
邪神
(
じやしん
)
だの、
056
あて
にならぬのと
面目玉
(
めんぼくだま
)
を
潰
(
つぶ
)
されては、
057
審神者
(
さには
)
して
貰
(
もら
)
ふ
気
(
き
)
にもならぬのう』
058
この
時
(
とき
)
門外
(
もんぐわい
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えきたる。
059
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
まして
聴
(
き
)
きゐる。
060
宣伝歌
(
せんでんか
)
は
追々
(
おひおひ
)
と
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
き
)
たる。
061
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
導
(
みちび
)
かれて、
062
この
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれたる
宣伝使
(
せんでんし
)
あり。
063
彼
(
かれ
)
は
被面布
(
ひめんぷ
)
を
捲
(
まく
)
り
上
(
あ
)
げ、
064
一行
(
いつかう
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
する。
065
駒山彦
『
私
(
わたくし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
です。
066
承
(
うけたま
)
はれば
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
に
同
(
おな
)
じ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
見
(
み
)
えたといふことで、
067
取
(
と
)
るものも
取敢
(
とりあ
)
へず
参
(
まゐ
)
りました。
068
私
(
わたくし
)
は
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
に
宣伝
(
せんでん
)
を
行
(
や
)
つてゐるものです』
069
蚊々虎
(
かがとら
)
は
熟々
(
つらつら
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
070
蚊々虎
『ヤア、
071
お
前
(
まへ
)
はコヽヽ
駒山彦
(
こまやまひこ
)
じやないか。
072
俺
(
おい
)
等
(
ら
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
高白山
(
かうはくざん
)
を
攻
(
せ
)
めた
時
(
とき
)
、
073
爆弾
(
ばくだん
)
に
命中
(
あた
)
つて
脆
(
もろ
)
くも
死
(
し
)
んだ
筈
(
はず
)
のお
前
(
まへ
)
が、
074
何
(
ど
)
うして
此処
(
ここ
)
へやつて
来
(
き
)
たのだ。
075
ハヽア
夜前
(
やぜん
)
俺
(
おい
)
らが
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・三版(御校正本)・愛世版では「神憑り」、校定版では「神がかり」。
]
をやつたので、
076
貴様
(
きさま
)
救
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
はうと
思
(
おも
)
つて
幽冥界
(
いうめいかい
)
から
来
(
き
)
たのだな。
077
道理
(
だうり
)
で
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
が
蒼黒
(
あをぐろ
)
いワイ。
078
コラ
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
幽霊
(
いうれい
)
、
079
俺
(
おれ
)
が
今
(
いま
)
審神者
(
さには
)
をしてやらう』
080
駒山彦
『オーお
前
(
まへ
)
は
蚊々虎
(
かがとら
)
か。
081
ようまあ
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
を
)
つたね。
082
お
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
が
忘
(
わす
)
れられぬので
幽冥界
(
いうめいかい
)
から
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
たのだよ。
083
さあさ
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
かう。
084
閻魔
(
えんま
)
様
(
さん
)
が
待
(
ま
)
つてゐるぞ。
085
貴様
(
きさま
)
はあんまり
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
ばかりやつたので、
086
閻魔
(
えんま
)
の
庁
(
ちやう
)
から
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
たのだ。
087
門口
(
かどぐち
)
には
赤鬼
(
あかおに
)
や、
088
青鬼
(
あをおに
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
来
(
き
)
て
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
る。
089
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
顔
(
かほ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るので
検視
(
けんし
)
の
役
(
やく
)
に
来
(
き
)
たのだ。
090
サーサ
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
091
蚊々虎
『
駒山彦
(
こまやまひこ
)
、
092
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
093
モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さま、
094
此奴
(
こいつ
)
は
曲津
(
まがつ
)
でせう。
095
審神者
(
さには
)
して
下
(
くだ
)
さいな。
096
困
(
こま
)
つたものがやつて
来
(
き
)
ました』
097
淤縢山津見
『
審神者
(
さには
)
するに
及
(
およ
)
ばぬ。
098
この
霊眼
(
れいがん
)
で
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
たらチヤンと
分
(
わか
)
つてゐるのだ。
099
成程
(
なるほど
)
貴様
(
きさま
)
は
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
100
是
(
これ
)
から
閻魔
(
えんま
)
さまにお
目玉
(
めだま
)
でも
頂戴
(
ちやうだい
)
して、
101
修行
(
しうぎやう
)
した
上
(
うへ
)
で
幽冥界
(
いうめいかい
)
の
宣伝
(
せんでん
)
でも
行
(
や
)
つたらよからう。
102
現界
(
げんかい
)
も
幽界
(
いうかい
)
も
同
(
おな
)
じことだ。
103
唯
(
ただ
)
生命
(
いのち
)
がなくなる
丈
(
だ
)
けの
違
(
ちが
)
ひだ、
104
とつとと
行
(
い
)
つたらよからう。
105
アーア
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬものだな』
106
蚊々虎
『モシモシ、
107
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
地獄
(
ぢごく
)
の
御
(
お
)
使
(
つかひ
)
さま、
108
貴方
(
あなた
)
も
知
(
し
)
つての
通
(
とほ
)
り、
109
俺
(
わし
)
よりもモツト
悪
(
わる
)
い
張本人
(
ちやうほんにん
)
が
此所
(
ここ
)
に
居
(
を
)
ります。
110
此奴
(
こいつ
)
はなあ、
111
今
(
いま
)
は
偉
(
えら
)
さうに
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
ナンテ
云
(
い
)
うてゐよるが、
112
元
(
もと
)
は
醜国別
(
しこくにわけ
)
と
云
(
い
)
つて、
113
有
(
あ
)
らうことか
有
(
あ
)
るまいことか、
114
御
(
ご
)
三体
(
さんたい
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
宮
(
みや
)
毀
(
こぼ
)
ちの
張本人
(
ちやうほんにん
)
だ。
115
私
(
わたし
)
はこの
男
(
をとこ
)
に
頤
(
あご
)
の
先
(
さき
)
で
使
(
つか
)
はれた
丈
(
だけ
)
だ。
116
閻魔
(
えんま
)
さまも
一寸
(
ちよつと
)
聞
(
きこ
)
えませぬ。
117
罪
(
つみ
)
の
大小
(
だいせう
)
軽重
(
けいぢう
)
をよく
審判
(
しんぱん
)
して
下
(
くだ
)
さい。
118
コンナ
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
を
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
放
(
ほつ
)
といて、
119
蚊々虎
(
かがとら
)
さまのやうな
正直
(
しやうぢき
)
な
者
(
もの
)
を
幽世
(
あのよ
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くとは、
120
余
(
あんま
)
り
胴欲
(
どうよく
)
ぢや』
121
高彦
(
たかひこ
)
『エー
蚊々虎
(
かがとら
)
さま、
122
刹那心
(
せつなしん
)
だよ。
123
先
(
さき
)
の
事
(
こと
)
は
何
(
ど
)
うならうと
心配
(
しんぱい
)
せいでもよい。
124
年貢
(
ねんぐ
)
の
納
(
をさ
)
め
時
(
どき
)
だ。
125
男
(
をとこ
)
らしくとつとと
行
(
い
)
つたがよからう。
126
序
(
つい
)
でに、
127
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さまも……
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
る
宣伝使
(
せんでんし
)
はエヘン、
128
この
高彦
(
たかひこ
)
さま
一人
(
ひとり
)
だ。
129
五月姫
(
さつきひめ
)
と
是
(
これ
)
から
二人
(
ふたり
)
、
130
宣伝
(
せんでん
)
に
歩
(
ある
)
くのだよ』
131
蚊々虎
『
莫迦
(
ばか
)
にするない。
132
俺
(
おれ
)
は
そいつ
が
修羅
(
しゆら
)
の
妄想
(
まうさう
)
だ。
133
モシモシ、
134
駒山彦
(
こまやまひこ
)
のお
使
(
つかひ
)
さま、
135
この
高彦
(
たかひこ
)
といふ
奴
(
やつ
)
はな、
136
今
(
いま
)
まで
此
(
こ
)
の
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
に
荒熊
(
あらくま
)
と
云
(
い
)
うて
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
ばつかりしてゐた
奴
(
やつ
)
だ。
137
貴方
(
あんた
)
も
知
(
し
)
つてるだらう。
138
昔
(
むかし
)
は
俺
(
わし
)
らと
一緒
(
いつしよ
)
に
随分
(
ずゐぶん
)
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をした
奴
(
やつ
)
だ。
139
いつそ
のこと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
とも
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな』
140
駒山彦
『イヤ、
141
さうは
行
(
ゆ
)
きませぬ。
142
今度
(
こんど
)
は
一人
(
ひとり
)
だけ
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へして
帰
(
かへ
)
ります。
143
御
(
お
)
車
(
くるま
)
が
一台
(
いちだい
)
より
来
(
き
)
て
居
(
を
)
りませぬから』
144
蚊々虎
『ヤア、
145
洒落
(
しやれ
)
てるね。
146
地獄
(
ぢごく
)
へ
行
(
ゆ
)
くのに
車
(
くるま
)
が
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
たのか。
147
ドンナ
立派
(
りつぱ
)
な
車
(
くるま
)
だい』
148
駒山彦
『それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
ですよ』
149
蚊々虎
『エー
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
、
150
そいつ
は
御免
(
ごめん
)
だ。
151
ソンナラ
籤引
(
くじびき
)
をしようかい』
152
淤縢山津見
『アハヽヽヽヽ
馬鹿
(
ばか
)
だね。
153
嘘
(
うそ
)
だよ。
154
蚊々虎
(
かがとら
)
、
155
幽霊
(
いうれい
)
でも
何
(
なん
)
でもありはしないが、
156
貴様
(
きさま
)
は
今
(
いま
)
まで
偉
(
えら
)
さうに
審神者
(
さには
)
になつてやるの、
157
立派
(
りつぱ
)
な
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・三版(御校正本)・愛世版では「神憑り」、校定版では「神がかり」。
]
になるのと
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
いたが、
158
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
彼
(
あ
)
の
霊衣
(
れいい
)
が
判
(
わか
)
らぬか。
159
幽界
(
いうかい
)
から
来
(
き
)
たものなら
三角
(
さんかく
)
になつて
居
(
を
)
る
筈
(
はず
)
だ。
160
彼
(
あ
)
の
円満
(
ゑんまん
)
な
五色
(
ごしき
)
の
光彩
(
くわうさい
)
を
放
(
はな
)
つてゐる
霊衣
(
れいい
)
が
判
(
わか
)
らぬか』
161
蚊々虎
『ほんにほんに、
162
余
(
あんま
)
り
周章
(
あわ
)
てて
霊衣
(
れいい
)
に
気
(
き
)
がつかなかつた』
163
淤縢山津見
『
貴様
(
きさま
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
霊衣
(
れいい
)
が
見
(
み
)
えるのか。
164
貴様
(
きさま
)
の
霊衣
(
れいい
)
は
三角
(
さんかく
)
になりかけて
居
(
を
)
るぞ。
165
三角
(
さんかく
)
になる
奴
(
やつ
)
は
冥土
(
めいど
)
行
(
ゆ
)
きの
近
(
ちか
)
づいた
証拠
(
しるし
)
だ。
166
アハヽヽヽヽ』
167
蚊々虎
(
かがとら
)
は
自分
(
じぶん
)
の
頭
(
あたま
)
へ
手
(
て
)
をやり、
168
身体中
(
からだぢう
)
を
探
(
さぐ
)
つて
霊衣
(
れいい
)
が
手
(
て
)
に
触
(
さは
)
らぬかと
捜
(
さが
)
してゐる。
169
駒山彦
(
こまやまひこ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
170
駒山彦
『
私
(
わたくし
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
な
縁
(
えん
)
にて
筑紫
(
つくし
)
の
国
(
くに
)
より、
171
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
へ
渡
(
わた
)
る
船中
(
せんちう
)
に
於
(
おい
)
て、
172
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
に
邂
(
めぐ
)
り
逅
(
あ
)
ひ、
173
結構
(
けつこう
)
な
教
(
をしへ
)
を
承
(
うけたま
)
はり、
174
夫
(
そ
)
れより
悪心
(
あくしん
)
を
翻
(
ひるがへ
)
し、
175
旧友
(
きういう
)
と
共
(
とも
)
に
此
(
こ
)
の
高砂島
(
たかさごじま
)
に
渡
(
わた
)
り
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
を
猿世彦
(
さるよひこ
)
と
南北
(
なんぽく
)
に
別
(
わか
)
れ、
176
宣伝
(
せんでん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りました。
177
然
(
しか
)
るに
風
(
かぜ
)
の
便
(
たよ
)
りに
承
(
うけたま
)
はれば、
178
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
179
ブラジル
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
えられたと
云
(
い
)
ふこと、
180
巴留
(
はる
)
の
都
(
みやこ
)
には
鷹取別
(
たかとりわけ
)
といふ
悪神
(
あくがみ
)
が
居
(
を
)
つて、
181
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
全滅
(
ぜんめつ
)
させようと、
182
いろいろ
計画
(
けいくわく
)
をして
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ふことですから、
183
吾々
(
われわれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
御
(
お
)
手伝
(
てつだ
)
ひがしたいと
思
(
おも
)
うて
参
(
まゐ
)
つたのです。
184
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
お
)
供
(
とも
)
に
御
(
お
)
加
(
くは
)
へ
下
(
くだ
)
さらば
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます』
185
蚊々虎
『
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
186
蚊々虎
(
かがとら
)
が
御
(
お
)
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
す』
187
駒山彦
『
私
(
わたくし
)
は
蚊々虎
(
かがとら
)
さまに
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひしたのぢやありませぬ。
188
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さまに
願
(
ねが
)
うたのですよ』
189
蚊々虎
『
俺
(
おれ
)
が
許
(
ゆる
)
したら
同
(
おんな
)
じことだ。
190
ねエ、
191
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さま』
192
このとき
門外
(
もんぐわい
)
に、
193
幾百
(
いくひやく
)
人
(
にん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
人声
(
ひとごゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たりぬ。
194
(
大正一一・二・九
旧一・一三
外山豊二
録)
195
(第一二章~第二五章 昭和一〇・三・二 於神聖会総本部 王仁校正)
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(B)
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