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第二二章 五月姫(さつきひめ)〔三七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻 篇:第4篇 巴留の国 よみ(新仮名遣い):はるのくに
章:第22章 五月姫 よみ(新仮名遣い):さつきひめ 通し章番号:372
口述日:1922(大正11)年02月08日(旧01月12日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
この日は巴留の国の国魂の祭の後、群集が直会の酒に酔いつぶれていたところ、蚊々虎をやってきて、喧嘩虎との騒ぎに発展したのであった。
淤縢山津見の演説が終わり、宣伝歌を歌っていると、群衆の中から天女のような美人が現れ、地方の酋長の娘・五月姫であると名乗った。五月姫は宣伝使のお供をしたいと申し出た。
五月姫は巴留の国の東半分を治める闇山津見の娘であった。群集は威勢ある闇山津見の娘が宣伝使の供を申し出たことで、三五教の徳をますます思い知った。
蚊々虎と高彦は五月姫と滑稽な問答をするが、五月姫は三人を館に招いて、教えを聞きたいと申し出た。三人は五月姫について闇山津見の館に進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-06-07 14:44:01 OBC :rm0822
愛善世界社版:147頁 八幡書店版:第2輯 203頁 修補版: 校定版:149頁 普及版:65頁 初版: ページ備考:
001 この()巴留(はる)(くに)国魂(くにたま)(まつ)()く、002数多(あまた)群衆(ぐんしう)(ひろ)芝生(しばふ)()で、003神籬(ひもろぎ)()種々(くさぐさ)(もの)(けん)じ、004直会(なほらひ)(さけ)()(つぶ)れ、005()()つて松明(たいまつ)(とぼ)して、006(いま)直会(なほらひ)()退散(たいさん)せむとせる折柄(をりから)に、007蚊々虎(かがとら)一目散(いちもくさん)(はし)(きた)つて宣伝歌(せんでんか)(うた)(はじ)()たり。008蚊々虎(かがとら)喧嘩虎(けんくわとら)喧嘩芳(けんくわよし)打擲(ちやうちやく)され、009勘忍袋(かんにんぶくろ)(おさ)へて我慢(がまん)してゐた矢先(やさき)010淤縢山津見(おどやまづみ)011高彦(たかひこ)二人(ふたり)(あら)はれたのでホツト一息(ひといき)し、012(また)もや宣伝歌(せんでんか)(うた)ひ、013(かは)つて高彦(たかひこ)改心(かいしん)演説(えんぜつ)があつて、014(つぎ)淤縢山津見(おどやまづみ)が、015(こゑ)(すず)しく宣伝歌(せんでんか)調子(てうし)よく(うた)ひゐたり。
016 群衆(ぐんしう)(なか)より天女(てんによ)(ごと)美人(びじん)(あら)はれ、017宣伝使(せんでんし)(まへ)(あたま)()げ、
018五月姫宣伝使(せんでんし)(さま)019(まこと)有難(ありがた)御座(ござ)いました。020(わらは)はこの地方(ちはう)酋長(しうちやう)闇山(くらやま)津見(づみ)(むすめ)021五月姫(さつきひめ)(まを)すもの、022なにとぞ(わらは)大慈(だいじ)大悲(だいひ)大御心(おほみこころ)(もつ)()(とも)()使(つか)(くだ)さいますれば有難(ありがた)(ぞん)じます』
023(はづか)()(たの)()る。024群衆(ぐんしう)酋長(しうちやう)(むすめ)五月姫(さつきひめ)がこの()(あら)はれ、025宣伝使(せんでんし)叮嚀(ていねい)挨拶(あいさつ)せる(てい)()(おほ)いに(おどろ)き、026口々(くちぐち)に、
027(かふ)『なんと宣伝使(せんでんし)()ふものは(えら)いものだな。028巴留(はる)(くに)(ひがし)半分(はんぶん)()(かま)(あそ)ばす闇山(くらやま)津見(づみ)(おん)(むすめ)五月姫(さつきひめ)(さま)が、029あの(とほ)乞食(こじき)のやうな宣伝使(せんでんし)(あたま)()げて「何卒(なにとぞ)()(とも)()れて()つて(くだ)さい」と仰有(おつしや)るのだもの、030(なん)(おれ)(ひと)宣伝使(せんでんし)になつて、031アンナ別嬪(べつぴん)(あたま)()げさしたり「(わらは)何処(どこ)までも()れて()つて(くだ)さい」ナンテ、032(はな)(くちびる)をパツト(ひら)いて(たの)ましたいものだ』
033(おつ)『この助平(すけべい)野郎(やらう)
034矢庭(やには)(かふ)横面(よこづら)をピシヤリと(なぐ)りつける。
035(かふ)()くない、036()いたつて(かんば)しいことはありやしないぞ。037貴様(きさま)のやうな蟇鞋面(ひきがへるづら)(たれ)宣伝使(せんでんし)になつたとて()いて()きたいナンテ()ふものがあるかい。038()いて()きます竹槍(たけやり)で、039欠杭(かつくひ)(さき)(くそ)でも(つけ)()いて()きます(くらゐ)のものだよ、040アハヽヽヽ』
041 蚊々虎(かがとら)五月姫(さつきひめ)(むか)ひ、
042蚊々虎『エヘン、043()(なか)(なに)(たふと)いと()つた(ところ)で、044天下(てんか)万民(ばんみん)(すく)うて肝腎(かんじん)霊魂(みたま)水晶(すゐしやう)(みが)()げる(きよ)(やく)をする(くらゐ)045(たふと)いものはありませぬ。046さあさ、047()いて御座(ござ)れ、048蚊々虎(かがとら)(ゆる)す。049モシモシ()主人(しゆじん)050でない、051(しこ)052ドツコイ淤縢山津見(おどやまづみ)宣伝使(せんでんし)(さま)053拙者(せつしや)腕前(うでまへ)はこの(とほ)り。054浦山吹(うらやまぶき)(はな)()(ざか)りですよ』
055五月姫(さつきひめ)『イエイエ、056(わらは)貴方(あなた)のやうな()(かた)()れて()つて(もら)ひたくはありませぬ。057(なに)ほど(たふと)宣伝使(せんでんし)(さま)でも、058ソンナ(くろ)()(かほ)では()つともなくて(そと)(ある)けませぬワ、059ホヽヽヽヽ』
060蚊々虎(かほ)(いろ)(くろ)くつても、061(こころ)(いろ)(あか)いぞ。062(あか)(こころ)神心(かみごころ)だ。063(かみ)(こころ)になれなれ人々(ひとびと)よ、064(ひと)(かみ)()065(まへ)(ひと)()066(かみ)(かは)りを(いた)宣伝使(せんでんし)蚊々虎(かがとら)()いて()れば大丈夫(だいぢやうぶ)だよ。067結構(けつこう)(はな)()きますよ』
068五月姫貴方(あなた)(はな)(まこと)立派(りつぱ)牡丹(ぼたん)のやうなはなでございます。069奥様(おくさま)(さぞ)()(よろこ)びでせう。070(えん)(めう)なもので合縁(あひえん)奇縁(きえん)()ひまして、071(わらは)如何(どう)したものか、072貴方(あなた)のお(かほ)(むし)()きませぬ。073何卒(なにとぞ)そちら(かた)()(とも)をさして(いただ)きたう御座(ござ)います』
074 高彦(たかひこ)(みぎ)食指(ひとさしゆび)にて(はな)(おさ)へて、075(かほ)をぬつと()()し、076(おれ)かと()はぬばかりに(あご)しやくつ()せる。
077蚊々虎『オイ、078関守(せきもり)の、079谷転(たにころ)びの、080死損(しにぞこな)ひの、081荒熊(あらくま)082自惚(うぬぼ)れない。083この世界一(せかいいち)男前(をとこまへ)084蚊々虎(かがとら)でも肱鉄(ひぢてつ)()(かま)(あそ)ばす女神(めがみ)さまだ。085貴様(きさま)しやつ(つら)(たれ)()いて()るものがあるものかい』
086高彦(たかひこ)『モシモシ五月姫(さつきひめ)(さま)087()れは一体(いつたい)(たれ)(こと)ですか。088(はづか)(さう)俯向(うつむ)いてばかり()らずに明瞭(はつきり)()つて(くだ)さい。089高彦(たかひこ)(わたくし)でせう』
090 五月姫(さつきひめ)(くび)左右(さいう)()り、
091五月姫『いーえ、092(ちが)ひます、093(ちが)ひます』
094蚊々虎『ソンナら(たれ)だい』
095五月姫『もう一人(ひとり)()(かた)
096蚊々虎莫迦(ばか)にしよる。097オイ、098(しこ)099オド、100幽霊(いうれい)101宮毀(みやつぶ)し、102竜宮(りうぐう)門番(もんばん)103()(なか)物好(ものず)きな(やつ)があればあるものだ。104コンナ渋紙面(しぶがみづら)がよいといの。105オイ(しこ)宣伝使(せんでんし)さま(おご)(おご)れ。106本当(ほんたう)大勢(おほぜい)(なか)(はぢ)()かしよつて、107蚊々虎(かがとら)はもうお(まへ)(たち)一緒(いつしよ)宣伝(せんでん)()めだ。108コンナ美人(びじん)(おれ)折角(せつかく)宣伝(せんでん)して()いたのに、109(あと)(はう)からチヨツクリ()()て、110仕様(しやう)()(こゑ)(うた)(うた)ふものだから、111さつぱり()(かぶ)()られて(しま)つた。112オイ高彦(たかひこ)113(まへ)二人(ふたり)この()とつとつと()()らうぢやないか』
114高彦(荒熊)蚊々虎(かがとら)115さうは()かぬよ。116この宣伝使(せんでんし)()(とも)吾々(われわれ)何処(どこ)までもするのだから』
117蚊々虎『ヤア(わか)つた。118宣伝使(せんでんし)(あと)にこの別嬪(べつぴん)()いて()くものだから、119貴様(きさま)(てい)のよいことを()ひよつて五月姫(さつきひめ)()(とも)をするつもりだらう。120そして(あひだ)には(くさ)()(ひと)つも(いただ)かして(もら)はうと(おも)ひよつて、121本当(ほんたう)(いや)らしい(やつ)だナ。122貴様(きさま)(をんな)にかけたら()(ほそ)くしよつて、123その(ざま)たら()一体(いつたい)(なん)だい』
124高彦(荒熊)貴様(きさま)(つら)(なん)だい。125オイ(よだれ)()かぬか。126(みつ)ともないぞ』
127 淤縢山津見(おどやまづみ)は、128黙然(もくねん)として両手(りやうて)()吐息(といき)()らしてをる。129五月姫(さつきひめ)(おも)()つたやうに、
130五月姫『もうし(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(さま)131(わらは)住処(すみか)(じつ)(ちい)さき荒屋(あばらや)御座(ござ)りまするが、132貴方(あなた)(がた)()(とま)(くだ)さいまするには、133(こと)()ぎませぬ。134(わらは)(ちち)闇山(くらやま)津見(づみ)も、135三五教(あななひけう)宣伝(せんでん)非常(ひじやう)有難(ありがた)がつて()ります。136何卒(なにとぞ)(わらは)()いて()()(くだ)さいませ』
137(さき)()ちて(あゆ)()す。
138 淤縢山津見(おどやまづみ)(はじ)めて(くち)(ひら)き、
139淤縢山津見(なに)()もあれ、140闇山(くらやま)津見(づみ)()()にかかつて、141三五教(あななひけう)教理(けうり)()いて(もら)はう。142(しか)らば今晩(こんばん)()世話(せわ)になりませう』
143五月姫『あゝ早速(さつそく)()承諾(しようだく)144(わらは)両親(りやうしん)(さぞ)(よろこ)ぶことで御座(ござ)りませう。145コレコレ(とも)(もの)146駕籠(かご)此処(ここ)()つてお()で』
147『アーイ』
148(こた)へて暗黒(くらがり)より一挺(いつちやう)駕籠(かご)(あか)りの(まへ)(かつ)()す。
149五月姫『なにとぞ宣伝使(せんでんし)(さま)150これに()()(くだ)さいませ』
151淤縢山津見吾々(われわれ)天下(てんか)宣伝(せんでん)するもの、152苦労(くらう)艱難(かんなん)吾々(われわれ)天職(てんしよく)153勿体(もつたい)ない、154駕籠(かご)()ることは到底(たうてい)出来(でき)ませぬ。155駕籠(かご)()らねばならなければ(ひら)()(ことわ)りを(まを)します』
156蚊々虎『やあ、157()()()ければ、158蚊々虎(かがとら)でも幸抱(しんぼう)いたしますよ』
159 五月姫(さつきひめ)は、
160五月姫貴方(あなた)駕籠(かご)ぢやありませぬ』
161 蚊々虎(かがとら)(した)一寸(ちよつと)()して、
162蚊々虎『あなたの駕籠(かご)ぢやありませぬと(おほ)せられるワイ』
163肱鉄砲(ひぢてつぽう)真似(まね)をしながら、164淤縢山津見(おどやまづみ)(あと)から蚊々虎(かがとら)不承(ふしよう)無精(ぶしよう)()いて()く。
165 駕籠(かご)(から)のまま何処(どこ)とも()しに(かげ)(かく)しける。166五月姫(さつきひめ)(さき)()(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(ともな)ひ、167闇山(くらやま)津見(づみ)(やかた)(かへ)()く。
168大正一一・二・八 旧一・一二 外山豊二録)
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