霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三三章 天上(てんじやう)眉毛(まゆげ)〔三八三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻 篇:第5篇 宇都の国 よみ(新仮名遣い):うづのくに
章:第33章 天上眉毛 よみ(新仮名遣い):てんじょうまゆげ 通し章番号:383
口述日:1922(大正11)年02月10日(旧01月14日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
日が暮れてきたところで、一同は夜を明かすことになった。正鹿山津見によると、この先は大蛇峠と言って大蛇がたくさん出るところで、夜に越えるのは危ないという。
一行は宣伝歌を歌い、野宿することになった。
蚊々虎は目を覚まして、寝ている一同の顔を評論しながら、草の汁で落書きを始めた。そして自分には「世界一の色男」と書いて面白がっている。駒山彦が蚊々虎の笑い声に目を覚まして蚊々虎をたしなめるた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-06-07 15:37:34 文字数:3006 OBC :rm0833
愛善世界社版:223頁 八幡書店版:第2輯 230頁 修補版: 校定版:227頁 普及版:99頁 初版: ページ備考:
001炎熱(えんねつ)焼(や)くが如(ごと)き夏(なつ)の空(そら)
002花(はな)の都(みやこ)と謳(うた)はれし
003巴留(はる)の都(みやこ)を後(あと)にして
004淤縢山津見(おどやまづみ)の一行(いつかう)は
005漸(やうや)うここに辿(たど)り着(つ)き
006桃上彦(ももがみひこ)を相添(あひそ)へて
007天津(あまつ)御神(みかみ)の珍(うづ)の御子(みこ)
008世(よ)の民草(たみぐさ)を救(すく)はむと
009声(こゑ)も涼(すず)しき宣伝歌(せんでんか)
010足(あし)を揃(そろ)へて珍山(うづやま)の
011峠(たうげ)を下(くだ)る雄々(をを)しさよ。
012 日(ひ)は漸(やうや)く西(にし)に傾(かたむ)き、013山(やま)と山(やま)との谷道(たにみち)には大(だい)なる影(かげ)映(さ)し来(き)たる。
014 駒山彦(こまやまひこ)は、
015駒山彦『ヤア、016大分(だいぶ)に涼(すず)しくなつて来(き)たねー。017無(な)ければならず、018有(あ)つては困(こま)るものは太陽(たいやう)の光熱(くわうねつ)だ。019斯(か)うして山蔭(やまかげ)に日(ひ)が隠(かく)れると、020夜(よる)のやうに涼(すず)しくなつて来(き)た。021斯(か)う云(い)ふ涼味(すずしさ)は旅行(たび)をして見(み)ねば味(あぢ)はふことは出来(でき)ぬものだナア』
022 蚊々虎(かがとら)は口(くち)を尖(とが)らせ、
023蚊々虎『貴様(きさま)何(なに)を言(い)ふか、024罰当(ばちあた)り奴(め)が。025無(な)ければならぬものの、026有(あ)つては困(こま)るとは、027そら何(なん)だ、028宣(の)り直(なほ)せ宣(の)り直(なほ)せ。029無(な)ければならぬもので、030無(な)くては困(こま)る日天(につてん)様(さま)、031暑(あつ)い光熱(くわうねつ)を頭(あたま)の上(うへ)から照(てら)して下(くだ)さつたのは、032神(かみ)様(さま)の厚(あつ)い御恵(みめぐみ)だ。033さうして涼(すず)しき蔭(かげ)を吾(われ)らに投(な)げ与(あた)へ、034澄(す)み切(き)つた風(かぜ)を吹(ふ)かして下(くだ)さるのは、035神(かみ)様(さま)の吾々(われわれ)を保護(ほご)したまふ清(きよ)き涼(すず)しき御恵(みめぐみ)の御(お)かげだと宣(の)り直(なほ)さぬか』
036駒山彦『やあ、037此奴(こいつ)は一(ひと)つ失策(しくじ)つた。038御(お)天道(てんだう)様(さま)、039いま蚊々虎(かがとら)の云(い)つた通(とほ)りに駒山彦(こまやまひこ)は宣(の)り直(なほ)します』
040蚊々虎『ソラ見(み)たか』
041駒山彦『空(そら)見(み)たつて日天(につてん)様(さま)は、042山(やま)に御(お)隠(かく)れになつてゐるじやないか』
043蚊々虎『空呆(そらとぼ)けるない』
044 淤縢山津見(おどやまづみ)は、
045淤縢山津見『ヤアヤア、046また始(はじ)まつたか。047面白(おもしろ)いねー』
048 五月姫(さつきひめ)は俯(うつ)むいて、
049五月姫『ホヽヽヽヽ』
050と微(かす)かに笑(わら)ふ。
051 蚊々虎(かがとら)は、
052蚊々虎『五月(さつき)の空(そら)の五月姫(さつきひめ)、053床(ゆか)しい声(こゑ)で花(はな)の唇(くちびる)を開(ひら)いて、054ホヽヽヽヽ杜鵑(ほととぎす)、055声(こゑ)も聞(きこ)えりや姿(すがた)も見(み)える。056見(み)れば見(み)るほど気高(けだか)い姿(すがた)の花菖蒲(はなあやめ)、057黒白(あやめ)も分(わ)かぬ暗(やみ)の夜(よ)に、058綾(あや)に尊(たふと)き五月姫(さつきひめ)の御(おん)道伴(みちづ)れ。059世(よ)の中(なか)は何(ど)うしても女(をんな)に限(かぎ)るねー。060男(をとこ)ばつかり歩(ある)いて居(を)ると、061何時(いつ)となしにゴツゴツとして角張(かくば)つて、062どうもうまく車(くるま)の運転(うんてん)がつかぬやうだ』
063駒山彦(こまやまひこ)『蚊々虎(かがとら)、064貴様(きさま)はくの字形(じなり)の腰付(こしつ)きで、065女(をんな)が無(な)ければ角(かど)が立(た)つの、066ゴツゴツするのとようも言(い)へたものぢや。067貴様(きさま)らに、068何(なん)ぼ五月姫(さつきひめ)だつて暑苦(あつくる)しい、069誰(たれ)が秋波(しうは)を送(おく)るものかい。070好(よ)い気(き)になりよつて、071煽(おだ)て揚(あ)げられて、072天下(てんか)の色男(いろをとこ)は俺(おれ)だいと云(い)ふやうな、073その鼻息(はないき)は何(なん)だい』
074蚊々虎『大分(だいぶ)駒(こま)の息(いき)も荒(あら)くなつたが、075弱(よわ)い奴(やつ)だな。076苦(くる)しいのか、077夫(そ)れ程(ほど)苦(くる)しければ恰度(ちやうど)其処(そこ)に都合(つがふ)の好(よ)い岩(いは)がある。078其処(そこ)で一服(いつぷく)やつたら何(ど)うだ。079足(あし)の弱(よわ)い、080腰(こし)の弱(よわ)い宣伝使(せんでんし)を伴(つ)れて歩(ある)くと、081足手(あして)纏(まと)ひになつて困(こま)る。082まあ貴様(きさま)一服(いつぷく)でもするが好(よ)いわ。083モシモシ淤縢山(おどやま)さま、084正鹿山(まさかやま)さま貴方(あなた)達(たち)も何(なん)なら一服(いつぷく)なさつたら如何(どう)ですか。085五月姫(さつきひめ)さま貴方(あなた)は女(をんな)にも似合(にあ)はぬ御(お)脚(あし)は達者(たつしや)だ。086脚(あし)の達者(たつしや)なもの同士(どうし)一足(ひとあし)御(お)先(さき)へ失敬(しつけい)しませうか』
087駒山彦『ヤア、088うまい事(こと)を云(い)ひよる。089貴様(きさま)の腹(はら)は読(よ)めたぞ。090五月(さつき)さま、091貴方(あなた)も休(やす)みなさい。092蚊々虎(かがとら)一人(ひとり)先(さき)に行(い)つて、093道(みち)を踏(ふ)ん迷(まよ)つて谷底(たにそこ)へ落(お)ちて寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)だ。094先(さき)へ行(ゆ)け、095骨(ほね)くらゐは駒山彦(こまやまひこ)が道伴(みちづ)れの好意(よしみ)で拾(ひろ)つてやるワイ』
096蚊々虎『ヤア、097邪魔(じやま)臭(くさ)い縁起(えんぎ)でも無(な)いこと云(い)ひよるから、098俺(おれ)も一(ひと)つ達者(たつしや)な足(あし)を辛抱(しんばう)して休(やす)ましてやろかい』
099駒山彦『倒頭(たうとう)本音(ほんね)を吹(ふ)きよつた。100アハヽヽヽ』
101 一行(いつかう)は、102平面(へいめん)な岩(いは)の上(うへ)に足(あし)を伸(の)ばして暫時(しばらく)休息(きうそく)する。103太陽(たいやう)は全(まつた)く地平線(ちへいせん)下(か)に没(ぼつ)せしと見(み)えて、104四辺(あたり)は追々(おひおひ)と暗(くら)くなり来(き)たる。
105 正鹿山津見(まさかやまづみ)は不安(ふあん)な顔(かほ)で、
106正鹿山津見『まだ是(これ)から珍(うづ)の都(みやこ)へは余程(よほど)の道程(みちのり)があります。107この先(さき)にモー一(ひと)つ大(おほ)きな山(やま)を越(こ)さねばなりませぬが、108何分(なにぶん)荊棘(けいきよく)の茂(しげ)つた猪(しし)より通(かよ)つたことの無(な)い、109而(そ)して嶮(けは)しい山道(やまみち)ですから、110悠(ゆつ)くりと此処(ここ)で夜(よ)を明(あ)かしませうか。111この先(さき)の山(やま)は天雲山(てんうんざん)と云(い)つて此(この)珍山峠(うづやまたうげ)よりも余程(よほど)高(たか)いですよ。112而(そ)して此(この)頃(ごろ)は大変(たいへん)な大蛇(をろち)や毒蛇(どくじや)が道(みち)に横(よこ)たはつて居(ゐ)ますから、113夜(よる)の旅(たび)は危険(きけん)ですからな。114此(こ)の峠(たうげ)を大蛇峠(をろちたうげ)と云(い)ふ位(くらゐ)ですから』
115蚊々虎『何(なに)ツ!、116大蛇峠(をろちたうげ)ですか、117大蛇(をろち)が出(で)ると、118其奴(そいつ)は面白(おもしろ)い。119日頃(ひごろ)の腕試(うでだめ)し度胸(どきよう)試(だめ)しだ。120夫(そ)れを聞(き)けば蚊々虎(かがとら)の腕(うで)はりゆうりゆうと鳴(な)つて来(く)る。121ヤア、122面白(おもしろ)い、123矢(や)も楯(たて)も堪(たま)らぬやうになつて来(き)たワ。124オイ、125一同(いちどう)の宣伝使(せんでんし)、126一(ひと)つ大蛇(だいじや)に向(むか)つて宣伝歌(せんでんか)でも聞(き)かしてやらうじやないか。127宣伝歌(せんでんか)の徳(とく)に依(よ)つて大蛇(だいじや)は神格化(しんかくくわ)して大変(たいへん)な美人(びじん)になるよ』
128 駒山彦(こまやまひこ)は呆(あき)れて、
129駒山彦『また美人(びじん)のことを云(い)ひよる。130貴様(きさま)一人(ひとり)行(ゆ)くが好(よ)いワ』
131蚊々虎『驚(おどろ)いたか、132肝(きも)を潰(つぶ)したか、133おつ魂消(たまげ)たか、134何(なん)だい其(そ)の顔色(かほいろ)は。135青大将(あをだいしやう)のやうに真蒼(まつさを)になりよつて、136阿呆(あはう)大将(だいしやう)奴(め)が』
137駒山彦『コラコラ、138蚊々虎(かがとら)、139阿呆(あはう)大将(だいしやう)と云(い)ふことがあるか、140駒山(こまやま)の前(まへ)で宣(の)り直(なほ)せ』
141蚊々虎『宣(の)り直(なほ)すとも、142今(いま)まで駱駝(らくだ)に乗(の)つてゐたが、143今度(こんど)は大蛇(だいじや)の背(せなか)に乗(の)り直(なほ)しだ』
144駒山彦『偉(えら)い法螺(ほら)を吹(ふ)くね。145実物(じつぶつ)を拝見(はいけん)したら反対(あべこべ)に蚊々虎(かがとら)の方(はう)から、146尾(を)を巻(ま)いて遁(に)げるだらう』
147 正鹿山津見(まさかやまづみ)は静(しづ)かに、
148正鹿山津見『闇夜(やみよ)の事(こと)と云(い)ひ、149峻山(しゆんざん)絶壁(ぜつぺき)といひ、150夜道(よみち)に日(ひ)は暮(くれ)ませぬ。151まあ、152悠(ゆつ)くりと致(いた)しませう』
153 淤縢山津見(おどやまづみ)は、154その尾(を)について、
155淤縢山津見『また新(あたら)しい日輪(にちりん)様(さま)を拝(をが)むまで、156此処(ここ)で祝詞(のりと)を奏上(あげ)て御(お)日待(ひま)ちを致(いた)しませうか』
157一同(いちどう)『よろしからう』
158と巌上(がんじやう)に端坐(たんざ)し、159天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、160宣伝歌(せんでんか)を一通(ひととほ)り歌(うた)つて、161岩(いは)の褥(しとね)に腕枕(うでまくら)、162星(ほし)の紋(もん)のついた青(あを)い蒲団(ふとん)を被(かぶ)つて、163華胥(くわしよ)の国(くに)に遊楽(いうらく)の身(み)となりぬ。164半(はん)円(ゑん)の月(つき)は東天(とうてん)をかすめて昇(のぼ)り来(き)たる。165五(ご)人(にん)の姿(すがた)は手(て)に取(と)る如(ごと)く明(あきら)かに見(み)え出(だ)し来(き)たりぬ。
166 蚊々虎(かがとら)は目(め)を醒(さま)し、
167蚊々虎『ヤア、168何(ど)れも此(こ)れも、169よく臥(ふ)せり居(を)つたものだナア。170人間(にんげん)も罪(つみ)の無(な)いものだワイ。171何奴(どいつ)の顔(かほ)が一番(いちばん)罪(つみ)のない顔(かほ)をしてゐるか、172一々(いちいち)点検(てんけん)をしてやらうかい。173まづ第一(だいいち)に淤縢山津見(おどやまづみ)の首実検(くびじつけん)に及(およ)ぶとしようか。174ヤア、175此奴(こいつ)は昔(むかし)から悪(わる)い奴(やつ)だと思(おも)つたが、176ホンニ一寸(ちよつと)悪(わる)さうな顔(かほ)をしてをるワイ。177この口許(くちもと)が一寸(ちよつと)憎(にく)らしい。178大(おほ)きな口(くち)を開(あ)けよつて、179涎(よだれ)を出(だ)して居(を)る所(ところ)の態(ざま)と云(い)つたら、180見(み)られたものぢや無(な)いワイ。181幸(さいは)ひ峠(たうげ)を下(くだ)る時(とき)にむしつてきた桑(くは)の実(み)がある。182此奴(こいつ)で一(ひと)つ顔(かほ)を彩(ゑど)つてやらうかナア』
183と独語(ひとりごと)を云(い)ひながら、184口(くち)の辺(あた)り目(め)の周囲(まはり)に紫(むらさき)の汁(しる)を塗(ぬり)つけた。185月影(つきかげ)にすかして見(み)て、
186蚊々虎『ヤア、187面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い、188明日(あす)の朝(あさ)になつたら随分(ずゐぶん)吃驚(びつくり)することだらう。189此奴(こいつ)は「地獄(ぢごく)行(ゆ)き」と書(か)いて置(お)いてやれ』
190と頬辺(ほほべた)に印(しるし)を入(い)れる。
191蚊々虎『ヤア、192正鹿山津見(まさかやまづみ)の顔(かほ)か。193此奴(こいつ)は割(わり)とは悪人(あくにん)に似合(にあ)はぬ好(よ)い顔(かほ)だな。194彩(ゑど)ると却(かへ)つて似合(にあ)はぬかも知(し)れないが、195片怨(かたうら)みがあるといかぬから、196何(なん)なと書(か)いてやらうか』
197と鼻(はな)を紫(むらさき)に塗(ぬ)つて了(しま)つた。
198蚊々虎『サア、199これから矢釜敷家(やかましや)の駒公(こまこう)だ。200此奴(こいつ)の額(ひたい)に何(なん)と書(か)いてやらうかナ。201分(わか)つた「五月姫(さつきひめ)欲(ほ)しさに、202よう妬(や)く男(をとこ)」と、203ハヽヽヽヽ是(これ)で好(い)い。204サアこれから五月姫(さつきひめ)の番(ばん)だ、205花(はな)の顔(かんばせ)月(つき)の眉(まゆ)、206何処(どこ)にも欠点(けつてん)がないワイ。207それでも御(お)附合(つきあひ)に何(なん)とかせなくてはなるまい。208オーさうだ、209角隠(つのかく)しの天上(てんじやう)眉毛(まゆげ)だ』
210と、211チヨボチヨボと額(ひたい)に円(まる)を描(ゑが)いた。
212蚊々虎『やあ、213此奴(こいつ)は素的(すてき)だ。214ますます別嬪(べつぴん)になつた。215何処(どこ)とも無(な)しに愛嬌(あいけう)が弥増(いやまし)て威厳(ゐげん)が加(くは)はつた。216ヤア、217これで済(す)みか。218俺(おれ)だけ無疵(むきず)で居(を)つては面白(おもしろ)くないから、219俺(おれ)も一(ひと)つやつてやらうかな、220ウンさうだ。221「世界一(せかいいち)の色男(いろをとこ)」と書(か)いて置(お)いてやろかい。222ハヽヽヽヽ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い、223ドツコイ面黒(おもくろ)い面黒(おもくろ)い、224五百(ごひやく)羅漢(らかん)の陳列場(ちんれつぢやう)見(み)たやうになつて了(しま)つた。225ワハヽヽヽ』
226 駒山彦(こまやまひこ)は目(め)を醒(さ)まして、
227駒山彦『誰(たれ)だ、228安眠(あんみん)の妨害(ばうがい)する奴(やつ)は。229人間(にんげん)はな、230刹那心(せつなしん)だよ。231寝(ね)る時(とき)にはグツと寝(ね)て、232働(はたら)く時(とき)には働(はたら)くのだぞ。233気違(きちが)ひの様(やう)に五月姫(さつきひめ)と婚礼(こんれい)でもしてゐるやうな夢(ゆめ)でも見(み)居(を)つたのか。234何(なん)だい、235夜中(よなか)に笑(わら)ひよつて早(はや)く寝(ね)ぬか』
236蚊々虎『ハイハイ、237寝(ね)ます寝(ね)ます、238お前(まへ)等(たち)も頭(あたま)を上(あ)げぬと寝(ね)るがよいワイ。239ヤア、240早(はや)く寝(ね)て了(しま)つたな。241全(まる)で鱶(ふか)の化物(ばけもの)を見(み)たやうな奴(やつ)だ。242ワハヽヽヽ、243誰(たれ)も彼(かれ)も罪(つみ)の無(な)いやうな有(あ)るやうな顔(かほ)してよく寝(ね)てるワイ。244この蚊々虎(かがとら)も附(つ)き合(あ)ひだ。245狸(たぬき)の空寝入(そらねい)りでもやらかさうかナア』
246とゴロツと肘(ひぢ)を枕(まくら)に横(よこ)たわりける。
247  真心(まごころ)や巌面(いはおも)寝暖(ゐぬく)桑(くは)の夢(ゆめ)(弓)
248(大正一一・二・一〇 旧一・一四 外山豊二録)
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