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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第8巻(未の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 智利の都
第1章 朝日丸
第2章 五十韻
第3章 身魂相応
第4章 烏の妻
第5章 三人世の元
第6章 火の玉
第2篇 四十八文字
第7章 蛸入道
第8章 改心祈願
第9章 鏡の池
第10章 仮名手本
第3篇 秘露より巴留へ
第11章 海の竜宮
第12章 身代り
第13章 修羅場
第14章 秘露の邂逅
第15章 ブラジル峠
第16章 霊縛
第17章 敵味方
第18章 巴留の関守
第4篇 巴留の国
第19章 刹那心
第20章 張子の虎
第21章 滝の村
第22章 五月姫
第23章 黒頭巾
第24章 盲目審神
第25章 火の車
第26章 讃嘆
第27章 沙漠
第28章 玉詩異
第29章 原山祇
第5篇 宇都の国
第30章 珍山峠
第31章 谷間の温泉
第32章 朝の紅顔
第33章 天上眉毛
第34章 烏天狗
第35章 一二三世
第36章 大蛇の背
第37章 珍山彦
第38章 華燭の典
第6篇 黄泉比良坂
第39章 言霊解一
第40章 言霊解二
第41章 言霊解三
第42章 言霊解四
第43章 言霊解五
余白歌
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霊界物語
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第8巻(未の巻)
> 第4篇 巴留の国 > 第26章 讃嘆
<<< 火の車
(B)
(N)
沙漠 >>>
第二六章
讃嘆
(
ウローウロー
)
〔三七六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第8巻 霊主体従 未の巻
篇:
第4篇 巴留の国
よみ(新仮名遣い):
はるのくに
章:
第26章 讃嘆
よみ(新仮名遣い):
うろーうろー
通し章番号:
376
口述日:
1922(大正11)年02月09日(旧01月13日)
口述場所:
筆録者:
東尾吉雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年6月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行はすわ敵軍かと警戒するが、これは巴留の国の人民たちが、宣伝使がやってきてから鷹取別の軍勢が退却して行ったので、感謝のために貢物を持ってやって来たのであった。
蚊々虎はこの騒ぎの中でまたもや滑稽なやり取りをして一同を煙に巻いている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-07 14:56:37
OBC :
rm0826
愛善世界社版:
175頁
八幡書店版:
第2輯 213頁
修補版:
校定版:
177頁
普及版:
78頁
初版:
ページ備考:
001
門内
(
もんない
)
には
駱駝
(
らくだ
)
の
嘶
(
いなな
)
く
声
(
こゑ
)
、
002
群衆
(
ぐんしう
)
の
話
(
はな
)
し
声
(
ごゑ
)
、
003
刻々
(
こくこく
)
に
高
(
たか
)
まり
来
(
き
)
たる。
004
蚊々虎
(
かがとら
)
はムツクと
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し、
005
玄関
(
げんくわん
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
006
蚊々虎
『ヤアヤアその
物音
(
ものおと
)
は
敵
(
てき
)
か
味方
(
みかた
)
か、
007
実否
(
じつぴ
)
は
如何
(
いか
)
に』
008
と、
009
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
ててゐる。
010
高彦
(
たかひこ
)
は
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、
011
高彦
『オイオイ、
012
周章
(
あわ
)
てるな、
013
なぜ
刹那心
(
せつなしん
)
を
発揮
(
はつき
)
せぬか』
014
蚊々虎
『
刹那心
(
せつなしん
)
ぢやと
云
(
い
)
つたつて、
015
斯
(
か
)
う
成
(
な
)
つて
来
(
き
)
てはどうもかうも
有
(
あ
)
つたものかい。
016
刹那心
(
せつなしん
)
も
切
(
せつ
)
無
(
な
)
いワイ、
017
この
蚊々
(
かが
)
さまは』
018
高彦
『アハヽヽヽ、
019
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
だな、
020
法螺
(
ほら
)
計
(
ばか
)
り
吹
(
ふ
)
きよつて。
021
昨日
(
きのふ
)
のやうな
勇気
(
ゆうき
)
はよう
出
(
だ
)
さぬのか』
022
蚊々虎
『
出
(
だ
)
さいでか、
023
まあ
見
(
み
)
ておれ。
024
これから
蚊々虎
(
かがとら
)
は
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて、
025
この
鉄拳
(
てつけん
)
を
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り、
026
打
(
ぶ
)
つて
打
(
ぶ
)
つて
打
(
ぶ
)
ち
倒
(
たふ
)
し、
027
勝鬨
(
かちどき
)
挙
(
あ
)
ぐるは
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
さ。
028
細工
(
さいく
)
は
流々
(
りうりう
)
仕上
(
しあ
)
げを
見
(
み
)
てから
何
(
なん
)
なと
言
(
い
)
へ』
029
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
030
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
門外
(
もんぐわい
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
しける。
031
高彦
(
たかひこ
)
は
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
り
乍
(
なが
)
ら、
032
高彦
『オーイ、
033
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
034
アー
往
(
い
)
つて
了
(
しま
)
ひよつた。
035
周章者
(
あわてもの
)
だなあ、
036
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
かい、
037
モシモシ
淤縢山
(
おどやま
)
津見
(
づみ
)
様
(
さま
)
、
038
如何
(
いかが
)
取
(
と
)
り
計
(
はか
)
らひませう』
039
淤縢山津見
『まあ
急
(
せ
)
くに
及
(
およ
)
ばぬ。
040
悠
(
ゆつ
)
くりお
茶
(
ちや
)
など
飲
(
の
)
んで
心
(
こころ
)
を
落着
(
おちつ
)
けたら
良
(
よ
)
からう』
041
駒山彦
『
察
(
さつ
)
するところ、
042
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
配下
(
てした
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
が、
043
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
を
亡
(
ほろ
)
ぼすべく、
044
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せたのでは
有
(
あ
)
りますまいかナア
淤縢山
(
おどやま
)
さま』
045
淤縢山津見
『サア
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
には
何
(
なん
)
とも
判
(
わか
)
らぬなあ』
046
この
時
(
とき
)
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
玄関
(
げんくわん
)
より
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た
蚊々虎
(
かがとら
)
は、
047
蚊々虎
『オーイ、
048
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
049
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
、
050
確
(
しつか
)
り
致
(
いた
)
せ、
051
敵
(
てき
)
は
間近
(
まぢか
)
く
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せたりだ。
052
駒山彦
(
こまやまひこ
)
を
始
(
はじ
)
めとし、
053
慗
(
なまじ
)
いに
身
(
み
)
を
逃
(
のが
)
れむとして
敵
(
てき
)
の
捕虜
(
とりこ
)
となり、
054
死恥
(
しにはぢ
)
を
見
(
み
)
せむよりは、
055
潔
(
いさぎよ
)
くこの
場
(
ば
)
で
割腹
(
かつぷく
)
々々
(
かつぷく
)
。
056
サアサア
腹
(
はら
)
を
切
(
き
)
つたり
切
(
き
)
つたり』
057
高彦
『アハヽヽヽ、
058
オイ、
059
狂言
(
きやうげん
)
をするない。
060
あの
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いたか。
061
ウローウローと
言
(
い
)
つてるではないか。
062
吾々
(
われわれ
)
一行
(
いつかう
)
を、
063
この
辺
(
へん
)
の
人民
(
じんみん
)
が
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のやうに
思
(
おも
)
つて、
064
お
祝
(
いはひ
)
に
来
(
き
)
てるのだぞ。
065
駱駝
(
らくだ
)
の
声
(
こゑ
)
と
言
(
い
)
ひ、
066
喜
(
よろこ
)
びの
声
(
こゑ
)
と
云
(
い
)
ひ、
067
あの
言霊
(
ことたま
)
にどうして
敵意
(
てきい
)
を
含
(
ふく
)
んで
居
(
を
)
るか。
068
貴様
(
きさま
)
もいい
周章者
(
あわてもの
)
だ。
069
それだから
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
、
070
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
に
魂
(
たましひ
)
を
据
(
す
)
ゑて
居
(
を
)
らぬと、
071
まさか
の
時
(
とき
)
には
狼狽
(
うろた
)
へて、
072
キリキリ
舞
(
ま
)
ひを
致
(
いた
)
さな
成
(
な
)
らぬと
仰有
(
おつしや
)
るのだよ。
073
何
(
なん
)
だ、
074
この
態
(
ざま
)
は、
075
キリキリ
舞
(
まひ
)
を
仕
(
し
)
よつて、
076
恥
(
はぢ
)
でも
知
(
し
)
れ。
077
五月姫
(
さつきひめ
)
さまが、
078
襖
(
ふすま
)
を
細目
(
ほそめ
)
に
開
(
あ
)
けて、
079
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやるぞ』
080
蚊々虎
『ソンナことは
遠
(
とほ
)
の
昔
(
むかし
)
に
百
(
ひやく
)
も
承知
(
しようち
)
だ
千
(
せん
)
も
合点
(
がつてん
)
だ。
081
駒山彦
(
こまやまひこ
)
の
奴
(
やつ
)
、
082
俺
(
おれ
)
を
地獄
(
ぢごく
)
から
迎
(
むか
)
ひに
来
(
き
)
たなんて
脅
(
おど
)
かしよつたから、
083
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
返報
(
へんぱう
)
がへし
をして
見
(
み
)
たのだ。
084
貴様
(
きさま
)
は
要
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひよつて、
085
俺
(
おれ
)
の
妙計
(
めうけい
)
の
裏
(
うら
)
を
掻
(
か
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるかい。
086
実
(
じつ
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
へば、
087
五月姫
(
さつきひめ
)
様
(
さま
)
でさへも、
088
その
父
(
とう
)
さまの
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
さまでさへも、
089
丁重
(
ていちよう
)
に
待遇
(
もてな
)
して、
090
教
(
をしへ
)
を
受
(
う
)
けられるやうな
立派
(
りつぱ
)
な
蚊々虎
(
かがとら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を、
091
お
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
せ、
092
お
礼
(
れい
)
に
行
(
い
)
かねば
成
(
な
)
らぬと、
093
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
が
言合
(
いひあは
)
して、
094
色々
(
いろいろ
)
の
珍
(
めづら
)
しい
物
(
もの
)
を
沢山
(
どつさり
)
持
(
も
)
つて、
095
駱駝
(
らくだ
)
に
積
(
つ
)
んでな、
096
蚊々虎
(
かがとら
)
に
進上
(
しんじやう
)
したいと
云
(
い
)
つていよるのだよ。
097
ヘン、
098
豪勢
(
がうせい
)
なものだらう』
099
高彦
『アハヽヽヽ、
100
笑
(
わら
)
はせやがらあ。
101
ヘー
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
に、
102
誰
(
たれ
)
が
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
呉
(
く
)
れる
者
(
もの
)
があつて
堪
(
たま
)
るか。
103
みな
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と、
104
高彦
(
たかひこ
)
さまの
改心
(
かいしん
)
演説
(
えんぜつ
)
に
感心
(
かんしん
)
してお
祝
(
いはひ
)
に
来
(
き
)
たのだよ。
105
余
(
あんま
)
り
自惚
(
うぬぼ
)
れて
貰
(
もら
)
ふまいかい。
106
貴様
(
きさま
)
は
自惚
(
うぬぼ
)
れるのも
一番
(
いちばん
)
だが、
107
恐
(
こは
)
がるのも、
108
威張
(
ゐば
)
るのも
一番
(
いちばん
)
だ。
109
それだから
馬鹿
(
ばか
)
の
一番
(
いちばん
)
と
云
(
い
)
ふのだよ、
110
ウフヽヽヽ』
111
蚊々虎
『
何
(
なん
)
なと
勝手
(
かつて
)
に
吐
(
ほざ
)
けい。
112
百千万
(
ひやくせんまん
)
の
敵
(
てき
)
にも、
113
ビクとも
致
(
いた
)
さぬ
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いことは
無
(
な
)
い
蚊々虎
(
かがとら
)
だ。
114
木端
(
こつぱ
)
武者
(
むしや
)
は
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
らう』
115
高彦
『オイ、
116
また
狂言
(
きやうげん
)
するのか。
117
五月姫
(
さつきひめ
)
が
窺
(
のぞ
)
いてるよ』
118
玄関
(
げんくわん
)
に
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
声
(
こゑ
)
として、
119
『
頼
(
たの
)
みます、
120
頼
(
たの
)
みます。
121
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
さまに
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さい』
122
玄関番
(
げんくわんばん
)
は、
123
玄関番
『ハイ』
124
と
答
(
こた
)
へて、
125
直
(
ただ
)
ちに
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
走
(
はし
)
り
入
(
い
)
り、
126
この
旨
(
むね
)
を
伝
(
つた
)
へたるに、
127
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
は、
128
五月姫
(
さつきひめ
)
と
共
(
とも
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
一同
(
いちどう
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれて、
129
闇山津見
『
昨夜
(
さくや
)
は
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
しました。
130
今日
(
こんにち
)
はどうか
御悠
(
ごゆる
)
りと
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
131
就
(
つき
)
ましては
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
の
人民
(
じんみん
)
共
(
ども
)
が、
132
宣伝使
(
せんでんし
)
の
労
(
らう
)
を
犒
(
ねぎら
)
ひたいと
申
(
まを
)
して
種々
(
いろいろ
)
の
御
(
お
)
土産物
(
みやげもの
)
を
持参
(
ぢさん
)
致
(
いた
)
しました。
133
今
(
いま
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
がこれへ
参
(
まゐ
)
りますから、
134
何
(
ど
)
うか
話
(
はなし
)
をしてやつて
下
(
くだ
)
さいませ』
135
淤縢山津見
『
重
(
かさ
)
ね
重
(
がさ
)
ねの
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
、
136
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます。
137
何時
(
いつ
)
でもお
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りませう』
138
斯
(
か
)
く
挨拶
(
あいさつ
)
を
交
(
かは
)
す
折
(
をり
)
しも、
139
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
140
代表者
(
だいへうしや
)
としてこの
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
141
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ
叮嚀
(
ていねい
)
に
辞儀
(
じぎ
)
をしながら、
142
代表者
『
宣伝使
(
せんでんし
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます。
143
この
地方
(
ちはう
)
は、
144
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
み、
145
強盗
(
がうたう
)
をする、
146
婦女子
(
ふぢよし
)
を
嬲
(
なぶ
)
り
者
(
もの
)
にする、
147
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
致
(
いた
)
らざる
無
(
な
)
く、
148
昨日
(
きのふ
)
迄
(
まで
)
は
何事
(
なにごと
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
するかも
知
(
し
)
れないと
云
(
い
)
つて、
149
この
国人
(
くにびと
)
は
戦々
(
せんせん
)
兢々
(
きようきよう
)
として
仕事
(
しごと
)
も
手
(
て
)
につかず、
150
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
しまして、
151
国魂
(
くにたま
)
の
神
(
かみ
)
のお
祭
(
まつり
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
ました
処
(
ところ
)
が、
152
思
(
おも
)
はずも
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えると
共
(
とも
)
に、
153
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
も、
154
悪神
(
あくがみ
)
の
私語
(
ささやき
)
も、
155
ピタリと
影
(
かげ
)
を
隠
(
かく
)
し、
156
声
(
こゑ
)
を
潜
(
ひそ
)
めて
了
(
しま
)
ひました。
157
大方
(
おほかた
)
この
大沙漠
(
だいさばく
)
を
横断
(
わうだん
)
して、
158
西
(
にし
)
の
国
(
くに
)
へ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
つたのでせう。
159
吾々
(
われわれ
)
人民
(
じんみん
)
が
塗炭
(
とたん
)
の
苦
(
くるし
)
みをお
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さいました
其
(
そ
)
の
御
(
ご
)
高恩
(
かうおん
)
の
万分
(
まんぶん
)
の
一
(
いち
)
に
酬
(
むく
)
ゆる
為
(
た
)
めに、
160
吾々
(
われわれ
)
は
人民
(
じんみん
)
を
代表
(
だいへう
)
して、
161
茲
(
ここ
)
に
数十頭
(
すうじつとう
)
の
駱駝
(
らくだ
)
を
献上
(
けんじやう
)
致
(
いた
)
したいと
思
(
おも
)
うて
参
(
まゐ
)
りました。
162
御
(
ご
)
受納
(
じゆなふ
)
下
(
くだ
)
さらば
有難
(
ありがた
)
き
仕合
(
しあはせ
)
に
存
(
ぞん
)
じます』
163
と、
164
云
(
い
)
ふを
聴
(
き
)
きて、
165
蚊々虎
『ああさうか、
166
それは
良
(
よ
)
く
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
た。
167
結構
(
けつこう
)
だ。
168
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何
(
なに
)
よりも
改心
(
かいしん
)
が
一等
(
いつとう
)
だと、
169
宣
(
のたま
)
はせられる。
170
高砂島
(
たかさごじま
)
の
国魂
(
くにたま
)
、
171
竜世姫
(
たつよひめの
)
神
(
かみ
)
は
実
(
じつ
)
に
偉
(
えら
)
い
神
(
かみ
)
さまだ。
172
さうしてそれよりま
一
(
ひと
)
つ
偉
(
えら
)
いのは、
173
この
蚊々虎
(
かがとら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ』
174
代表者
『はい、
175
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
176
その
偉
(
えら
)
いお
方
(
かた
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
られますか。
177
一度
(
いちど
)
拝顔
(
はいがん
)
を
願
(
ねが
)
ひたいものです』
178
蚊々虎
『
居
(
を
)
られますとも、
179
確
(
たしか
)
にこの
場
(
ば
)
に
鎮座
(
ちんざ
)
まします。
180
篤
(
とつくり
)
と
拝
(
をが
)
んで
帰
(
かへ
)
るがよからう』
181
高彦
(
たかひこ
)
クスクスと
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
す。
182
蚊々虎
『
不謹慎
(
ふきんしん
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
183
何
(
なに
)
が
可笑
(
をか
)
しいか。
184
黙
(
だま
)
れ
黙
(
だま
)
れ』
185
蚊々虎
(
かがとら
)
は
代表
(
だいへう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
186
蚊々虎
『
蚊々虎
(
かがとら
)
といふ
生神
(
いきがみ
)
の、
187
立派
(
りつぱ
)
な
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
に
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
より
無
(
な
)
い
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
188
この
御
(
おん
)
方
(
かた
)
だ』
189
と
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
左手
(
ゆんで
)
にて
握
(
にぎ
)
り、
190
食指
(
ひとさしゆび
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
191
空中
(
くうちう
)
を
東
(
ひがし
)
から
西
(
にし
)
へと
指
(
ゆび
)
ざし、
192
その
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
を
自分
(
じぶん
)
の
鼻
(
はな
)
の
上
(
うへ
)
に、
193
テンと
乗
(
の
)
せて
見
(
み
)
せる。
194
高彦
(
たかひこ
)
は、
[
※
御校正本・愛世版には「高彦は」の文字はない。校定版・八幡版では付加されている。
]
195
高彦
『オイ、
196
三五教
(
あななひけう
)
は
耐
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びだ』
197
と
云
(
い
)
ひつつ、
198
横面
(
よこづら
)
をピシヤリとやる。
199
蚊々虎
(
かがとら
)
『
何
(
なに
)
をツ、
200
チヨ、
201
チヨコザイナ。
202
蚊々虎
(
かがとら
)
を
知
(
し
)
らぬか』
203
高彦
『オイ、
204
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し、
205
耐
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
びだよ。
206
それが
生神
(
いきがみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だよ』
207
五月姫
(
さつきひめ
)
は
思
(
おも
)
はず、
208
五月姫
『オホヽヽヽ』
209
と
倒
(
こけ
)
て
笑
(
わら
)
ふ。
210
代表者
『
貴方
(
あなた
)
がその
結構
(
けつこう
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
211
それにしても
余
(
あま
)
りお
軽
(
かる
)
う
御座
(
ござ
)
いますな』
212
蚊々虎
『
軽
(
かる
)
いぞ
軽
(
かる
)
いぞ、
213
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
様
(
やう
)
に
罪
(
つみ
)
の
重
(
おも
)
い
者
(
もの
)
では
宣伝使
(
せんでんし
)
は
出来
(
でき
)
ぬからのう』
214
駒山彦
『
蚊々虎
(
かがとら
)
さま、
215
偉
(
えら
)
い
勢
(
いきほひ
)
ですな、
216
駒山彦
(
こまやまひこ
)
も
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました』
217
蚊々虎
『ウン、
218
それでよい。
219
長
(
なが
)
く
饒舌
(
しやべ
)
ると
屑
(
くづ
)
が
出
(
で
)
る。
220
言
(
い
)
はぬは
言
(
い
)
ふに
弥勝
(
いやまさ
)
るだ。
221
オイ、
222
代表者
(
だいへうしや
)
共
(
ども
)
、
223
生神
(
いきがみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
224
人民
(
じんみん
)
の
厚
(
あつ
)
き
志
(
こころざし
)
、
225
確
(
たし
)
かに
受納
(
じゆなふ
)
致
(
いた
)
したと
申
(
まを
)
し
伝
(
つた
)
へよ』
226
代表者
『ハイ、
227
畏
(
かしこ
)
まりました』
228
代表
(
だいへう
)
甲
(
かふ
)
『オイ、
229
一寸
(
ちよつと
)
此奴
(
こいつ
)
は
可笑
(
をか
)
しいぜ』
230
代表
(
だいへう
)
乙
(
おつ
)
『
神
(
かみ
)
さまなんて、
231
アンナものだよ』
232
代表
(
だいへう
)
丙
(
へい
)
『
妙
(
めう
)
な
神
(
かみ
)
さまも
有
(
あ
)
つたものだな』
233
蚊々虎
(
かがとら
)
ニヤリニヤリ、
234
蚊々虎
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
共
(
ども
)
は
何
(
なに
)
を
私語
(
ささや
)
くか。
235
生神
(
いきがみ
)
の
前
(
まへ
)
だぞ』
236
淤縢山津見
『イヤ、
237
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
、
238
私
(
わたくし
)
が
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
で
御座
(
ござ
)
ります。
239
何
(
ど
)
うか
皆
(
みな
)
さまに
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
240
今
(
いま
)
偉
(
えら
)
さうに
申上
(
まをしあ
)
げました
彼
(
かれ
)
は、
241
蚊々虎
(
かがとら
)
と
云
(
い
)
ふ
私
(
わたくし
)
共
(
ども
)
の
荷物
(
にもつ
)
を
持
(
も
)
つ
従僕
(
しもべ
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
242
何
(
ど
)
うかお
心
(
こころ
)
に
障
(
さ
)
へられぬやうに。
243
宣伝使
(
せんでんし
)
はアンナ
者
(
もの
)
かと
思
(
おも
)
はれちや、
244
教
(
をしへ
)
の
疵
(
きず
)
になりますから、
245
私
(
わたくし
)
は
改
(
あらた
)
めて
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
します』
246
蚊々虎
(
かがとら
)
は
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らし、
247
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
睨
(
にら
)
み
詰
(
つ
)
めて
居
(
ゐ
)
たりける。
248
高彦
(
たかひこ
)
は
堪
(
た
)
へかねて
249
高彦
『ウワハヽヽヽヽ』
250
闇山
(
くらやま
)
津見
(
づみ
)
も
同
(
おな
)
じく
251
闇山津見
『フツフツヽヽヽヽヽ』
252
駒山彦
(
こまやまひこ
)
もまた
253
駒山彦
『クワツ クワツ クワツ クワツ』
254
五月姫
(
さつきひめ
)
も
255
五月姫
『オホヽヽヽヽ』
256
代表者
(
だいへうしや
)
は
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
して
257
代表者
『エヘヽヽヽヽ』。
258
(
大正一一・二・九
旧一・一三
東尾吉雄
録)
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