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天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第24巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 流転の涙
01 粉骨砕身
〔731〕
02 唖呍
〔732〕
03 波濤の夢
〔733〕
04 一島の女王
〔734〕
第2篇 南洋探島
05 蘇鉄の森
〔735〕
06 アンボイナ島
〔736〕
07 メラの滝
〔737〕
08 島に訣別
〔738〕
第3篇 危機一髪
09 神助の船
〔739〕
10 土人の歓迎
〔740〕
11 夢の王者
〔741〕
12 暴風一過
〔742〕
第4篇 蛮地宣伝
13 治安内教
〔743〕
14 タールス教
〔744〕
15 諏訪湖
〔745〕
16 慈愛の涙
〔746〕
霊の礎(一〇)
霊の礎(一一)
神諭
余白歌
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第24巻
> 第3篇 危機一髪 > 第9章 神助の船
<<< 島に訣別
(B)
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土人の歓迎 >>>
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第九章
神助
(
しんじよ
)
の
船
(
ふね
)
〔七三九〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm2409
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あらは
)
れて
002
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
003
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
004
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
005
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
006
高姫
(
たかひめ
)
生命
(
いのち
)
を
棄
(
す
)
つるとも
007
島
(
しま
)
の
八十島
(
やそしま
)
八十
(
やそ
)
の
国
(
くに
)
008
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
や
川
(
かは
)
の
末
(
すゑ
)
009
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
まで
村肝
(
むらきも
)
の
010
心
(
こころ
)
到
(
いた
)
らぬ
隈
(
くま
)
もなく
011
探
(
さが
)
さにや
措
(
を
)
かぬと
雄猛
(
をたけ
)
びし
012
矢竹心
(
やたけごころ
)
の
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も
013
堪
(
たま
)
りかねたる
玉詮議
(
たませんぎ
)
014
左右
(
さいう
)
の
目玉
(
めだま
)
を
白黒
(
しろくろ
)
と
015
忙
(
いそが
)
しさうに
転廻
(
てんくわい
)
し
016
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
との
瀬戸
(
せと
)
の
海
(
うみ
)
017
牛
(
うし
)
に
曳
(
ひ
)
かれて
馬
(
うま
)
の
関
(
せき
)
018
狭
(
せま
)
き
喉首
(
のどくび
)
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
019
数多
(
あまた
)
の
島々
(
しまじま
)
右左
(
みぎひだり
)
020
眺
(
なが
)
めて
越
(
こ
)
ゆる
太平
(
たいへい
)
の
021
波
(
なみ
)
を
辷
(
すべ
)
つてアンボイナ
022
南洋
(
なんやう
)
諸島
(
しよたう
)
の
其
(
その
)
中
(
なか
)
で
023
珍
(
うづ
)
の
竜宮
(
りうぐう
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
024
芽出度
(
めでた
)
き
島
(
しま
)
に
漕
(
こ
)
ぎつけて
025
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
す
内
(
うち
)
026
綾
(
あや
)
の
高天
(
たかま
)
の
聖地
(
せいち
)
より
027
玉照彦
(
たまてるひこ
)
の
神言
(
みこと
)
もて
028
初稚姫
(
はつわかひめ
)
や
玉能姫
(
たまのひめ
)
029
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
030
再度山
(
ふたたびやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
031
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
にて
足揃
(
あしぞろ
)
ひ
032
船
(
ふね
)
を
準備
(
しつら
)
へ
高姫
(
たかひめ
)
が
033
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けむと
034
潮
(
しほ
)
の
八百路
(
やほぢ
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
035
漕
(
こ
)
ぎ
来
(
く
)
る
折
(
をり
)
しも
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
036
仄
(
ほの
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆる
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
037
唯事
(
ただごと
)
ならじと
船
(
ふね
)
を
寄
(
よ
)
せ
038
よくよく
見
(
み
)
れば
此
(
こ
)
は
如何
(
いか
)
に
039
バラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
040
友彦
(
ともひこ
)
初
(
はじ
)
め
清鶴
(
きよつる
)
や
041
武
(
たけ
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
船
(
ふね
)
を
破
(
わ
)
り
042
生命
(
いのち
)
の
綱
(
つな
)
と
岩壁
(
がんぺき
)
に
043
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りにかぢりつき
044
救
(
たす
)
けを
叫
(
さけ
)
ぶ
声
(
こゑ
)
なりし
045
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
快
(
こころよ
)
く
046
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
を
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
047
率
(
ひき
)
ゐ
来
(
きた
)
りし
伴舟
(
ともぶね
)
に
048
友彦
(
ともひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
を
救
(
すく
)
ひつつ
049
男波
(
をなみ
)
女波
(
めなみ
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
050
雄滝
(
をだき
)
雌滝
(
めだき
)
の
懸
(
かか
)
りたる
051
雄島
(
をしま
)
雌島
(
めしま
)
の
合
(
あは
)
せ
島
(
じま
)
052
アンボイナ
島
(
たう
)
の
竜宮
(
りうぐう
)
へ
053
船
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぎつけをちこちと
054
青葉
(
あをば
)
茂
(
しげ
)
れる
山路
(
やまみち
)
を
055
濃霧
(
のうむ
)
に
包
(
つつ
)
まれ
千丈
(
せんぢやう
)
の
056
瀑布
(
ばくふ
)
の
音
(
おと
)
を
知
(
し
)
るべとし
057
近
(
ちか
)
より
見
(
み
)
れば
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
058
漲
(
みなぎ
)
り
落
(
お
)
つる
音
(
おと
)
ばかり
059
一行
(
いつかう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
滝
(
たき
)
の
前
(
まへ
)
に
060
佇
(
たたず
)
み
此
(
こ
)
れの
絶景
(
ぜつけい
)
を
061
驚異
(
きやうい
)
の
眼
(
まなこ
)
をみはりつつ
062
其
(
その
)
壮烈
(
さうれつ
)
を
歎賞
(
たんしやう
)
し
063
涼味
(
りやうみ
)
に
浴
(
よく
)
する
折柄
(
をりから
)
に
064
濃霧
(
のうむ
)
を
透
(
すか
)
して
婆
(
ばば
)
の
声
(
こゑ
)
065
常事
(
ただごと
)
ならじと
近寄
(
ちかよ
)
りて
066
窺
(
うかが
)
ひ
見
(
み
)
れば
高姫
(
たかひめ
)
の
067
腕
(
うで
)
は
血潮
(
ちしほ
)
に
染
(
そま
)
りつつ
068
団栗眼
(
どんぐりまなこ
)
を
怒
(
いか
)
らして
069
面
(
つら
)
をふくらせ
何事
(
なにごと
)
か
070
囁
(
つぶや
)
く
側
(
そば
)
に
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
071
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
に
擬
(
まが
)
ふなる
072
化物面
(
ばけものづら
)
を
曝
(
さら
)
しつつ
073
滝
(
たき
)
の
麓
(
ふもと
)
に
倒
(
たふ
)
れ
居
(
ゐ
)
る
074
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
075
手負
(
ておひ
)
に
向
(
むか
)
つて
鎮魂
(
ちんこん
)
の
076
神法
(
しんぱふ
)
修
(
しふ
)
し
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
077
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
078
百千万
(
ももちよろづ
)
と
言霊
(
ことたま
)
の
079
霊歌
(
れいくわ
)
を
頭上
(
づじやう
)
に
放射
(
はうしや
)
せば
080
幾許
(
いくばく
)
ならず
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
081
元
(
もと
)
の
姿
(
すがた
)
に
全快
(
ぜんくわい
)
し
082
地獄
(
ぢごく
)
で
仏
(
ほとけ
)
に
遭
(
あ
)
ひし
如
(
ごと
)
083
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
感謝
(
かんしや
)
しつ
084
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れにけり
085
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
086
探
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りし
高姫
(
たかひめ
)
の
087
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
つた
嬉
(
うれ
)
しさに
088
真心
(
まごころ
)
こめていろいろと
089
言依別
(
ことよりわけ
)
の
命令
(
めいれい
)
を
090
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
宣
(
の
)
りつれど
091
心
(
こころ
)
ねぢけし
高姫
(
たかひめ
)
は
092
情
(
なさけ
)
を
仇
(
あだ
)
に
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
093
相
(
あい
)
も
変
(
かは
)
らず
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
094
叩
(
たた
)
いてそこらに
八当
(
やつあた
)
り
095
憎々
(
にくにく
)
しげに
罵
(
ののし
)
れば
096
流石
(
さすが
)
無邪気
(
むじやき
)
の
一行
(
いつかう
)
も
097
呆
(
あき
)
れて
言葉
(
ことば
)
なかりけり
098
ヤツサモツサの
押問答
(
おしもんだふ
)
099
やうやう
治
(
をさ
)
まり
一同
(
いちどう
)
は
100
二隻
(
にせき
)
の
船
(
ふね
)
に
分乗
(
ぶんじやう
)
し
101
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
操
(
あやつ
)
れる
102
船
(
ふね
)
には
初稚
(
はつわか
)
玉能姫
(
たまのひめ
)
103
鶴
(
つる
)
武
(
たけ
)
清
(
きよ
)
の
六人
(
むたり
)
連
(
づれ
)
104
波
(
なみ
)
を
乗
(
の
)
り
切
(
き
)
り
竜宮
(
りうぐう
)
を
105
後
(
あと
)
に
眺
(
なが
)
めて
離
(
はな
)
れ
行
(
ゆ
)
く
106
残
(
のこ
)
りの
船
(
ふね
)
は
友彦
(
ともひこ
)
が
107
艪
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
りつ
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
108
高姫
(
たかひめ
)
貫州
(
くわんしう
)
久助
(
きうすけ
)
や
109
スマートボールやお
民
(
たみ
)
等
(
ら
)
の
110
一行
(
いつかう
)
を
乗
(
の
)
せてやうやうと
111
波
(
なみ
)
の
のた
打
(
う
)
つ
和田
(
わだ
)
の
原
(
はら
)
112
西南
(
せいなん
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
113
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
駆
(
か
)
けまはる
114
海蛇
(
かいだ
)
の
姿
(
すがた
)
眺
(
なが
)
めつつ
115
轟
(
とどろ
)
く
胸
(
むね
)
を
押隠
(
おしかく
)
し
116
心
(
こころ
)
にも
無
(
な
)
き
空元気
(
からげんき
)
117
船歌
(
ふなうた
)
うたひ
友彦
(
ともひこ
)
が
118
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
炎天
(
えんてん
)
の
119
大海原
(
おほうなばら
)
に
搾
(
しぼ
)
る
汗
(
あせ
)
120
ニユージランドの
手前
(
てまへ
)
まで
121
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
しも
暴風
(
ばうふう
)
に
122
吹
(
ふ
)
きまくられて
浪
(
なみ
)
高
(
たか
)
く
123
危険
(
きけん
)
刻々
(
こくこく
)
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る
124
左手
(
ゆんで
)
に
立
(
た
)
てる
岩山
(
いはやま
)
の
125
影
(
かげ
)
を
目標
(
めあて
)
に
漕
(
こ
)
ぎ
寄
(
よ
)
せて
126
難
(
なん
)
を
避
(
さ
)
けむと
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
る
127
鬼
(
おに
)
か
獣
(
けもの
)
か
魔
(
ま
)
か
人
(
ひと
)
か
128
得体
(
えたい
)
の
知
(
し
)
れぬ
影
(
かげ
)
二
(
ふた
)
つ
129
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
岩山
(
いはやま
)
を
130
駆
(
か
)
けめぐり
居
(
ゐ
)
る
訝
(
いぶ
)
かしさ
131
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
132
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
133
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
134
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
135
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちは
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
136
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひの
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
137
大海原
(
おほうなばら
)
に
漂
(
ただよ
)
へる
138
此
(
この
)
岩島
(
いはしま
)
を
一同
(
いちどう
)
が
139
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
と
伏拝
(
ふしをが
)
み
140
ここに
小船
(
こふね
)
を
止
(
とど
)
めつつ
141
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
142
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませと
143
祈
(
いの
)
る
言霊
(
ことたま
)
勇
(
いさ
)
ましく
144
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
くに
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
る
145
此
(
この
)
神言
(
かみごと
)
を
聞
(
き
)
きしより
146
二
(
ふた
)
つの
影
(
かげ
)
は
嬉
(
うれ
)
しげに
147
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
下
(
くだ
)
り
来
(
く
)
る
148
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
ぞ
不思議
(
ふしぎ
)
なる。
149
友彦
(
ともひこ
)
は
怪
(
あや
)
しき
二
(
ふた
)
つの
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
て、
150
友彦
『ヤア
高姫
(
たかひめ
)
さま、
151
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
152
愈
(
いよいよ
)
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
時節
(
じせつ
)
到来
(
たうらい
)
、
153
お
喜
(
よろこ
)
びなさいませ。
154
貴女
(
あなた
)
のお
探
(
たづ
)
ねになる
代物
(
しろもの
)
は
漸
(
やうや
)
く
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
在
(
あ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が、
155
的確
(
てきかく
)
に
分
(
わか
)
つて
来
(
き
)
ましたよ』
156
高姫
(
たかひめ
)
吃驚
(
びつくり
)
した
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
で、
157
高姫
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
る。
158
あの
玉
(
たま
)
が
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
隠
(
かく
)
してあると
云
(
い
)
ふのかい』
159
友彦
『
御覧
(
ごらん
)
の
通
(
とほ
)
り、
160
真黒
(
まつくろ
)
黒助
(
くろすけ
)
の、
161
ア…
タマ
が
二
(
ふた
)
つ、
162
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
様
(
やう
)
にギラギラした
目
(
め
)
の
タマ
が
四
(
よ
)
つ、
163
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
し、
164
上下
(
じやうげ
)
左右
(
さいう
)
に
駆
(
か
)
けめぐつて
居
(
を
)
るぢやありませぬか。
165
ありや
屹度
(
きつと
)
玉
(
たま
)
の
妄念
(
もうねん
)
ですよ。
166
黄金
(
わうごん
)
の
隠
(
かく
)
してある
所
(
ところ
)
には
何時
(
いつ
)
も
化物
(
ばけもの
)
が
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
167
彼奴
(
あいつ
)
はキツト
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
精
(
せい
)
が
現
(
あら
)
はれ、
168
人
(
ひと
)
に
盗
(
ぬす
)
まれない
様
(
やう
)
に
保護
(
ほご
)
をして
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
、
169
焦
(
こが
)
れ
焦
(
こが
)
れた……
言
(
い
)
はば……
玉
(
たま
)
の
親
(
おや
)
のお
前
(
まへ
)
さまがやつて
来
(
き
)
たものだから、
170
再
(
ふたた
)
び
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
へ
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
帰
(
かへ
)
つて
貰
(
もら
)
はうと
思
(
おも
)
ひ、
171
妄念
(
もうねん
)
が
現
(
あら
)
はれて
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
居
(
を
)
るのに
違
(
ちが
)
ひない。
172
コンナ
所
(
ところ
)
に……さうでなければ
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
が
住居
(
すまゐ
)
して
居
(
を
)
る
筈
(
はず
)
はない。
173
キツトさうですよ。
174
女
(
をんな
)
の
一心
(
いつしん
)
岩
(
いは
)
でも
突
(
つ
)
き
貫
(
ぬ
)
くとやら、
175
あの
通
(
とほ
)
り
岩
(
いは
)
を
突
(
つ
)
き
貫
(
ぬ
)
いて
玉
(
たま
)
の
精
(
せい
)
が
現
(
あら
)
はれたのでせうよ』
176
高姫
(
たかひめ
)
は
目
(
め
)
をクルクルさせ
乍
(
なが
)
ら、
177
二
(
ふた
)
つの
影
(
かげ
)
を
凝視
(
みつ
)
め、
178
高姫
『
如何
(
いか
)
にも
不思議
(
ふしぎ
)
な
影
(
かげ
)
だ。
179
どう
考
(
かんが
)
へてもコンナ
離
(
はな
)
れ
島
(
じま
)
に
船
(
ふね
)
も
無
(
な
)
し、
180
人
(
ひと
)
の
寄
(
よ
)
りつく
道理
(
だうり
)
がない……サア
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
181
あなたはモウ
玉
(
たま
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
は
無
(
な
)
いと
仰有
(
おつしや
)
つたのだから、
182
微塵
(
みじん
)
も
未練
(
みれん
)
はありますまいな』
183
蜈蚣姫
『
妾
(
わたし
)
はアンナ
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
にチツトも
執着心
(
しふちやくしん
)
は
有
(
あ
)
りませぬ』
184
高姫
『さうでせう。
185
それ
聞
(
き
)
いたら
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
、
186
サア
是
(
こ
)
れから
貫州
(
くわんしう
)
と
二人
(
ふたり
)
此
(
この
)
岩山
(
いはやま
)
を
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
り、
187
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
して
来
(
こ
)
う……イヤイヤ
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
188
腹
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い
連中
(
れんちう
)
、
189
岩山
(
いはやま
)
の
上
(
うへ
)
へあがつて
居
(
を
)
る
後
(
あと
)
の
間
(
ま
)
に、
190
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまに
船
(
ふね
)
でも
盗
(
と
)
られたら、
191
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ。
192
……サア
貫州
(
くわんしう
)
、
193
お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
船
(
ふね
)
の
纜
(
ともづな
)
をキユツと
握
(
にぎ
)
つて
放
(
はな
)
す
事
(
こと
)
はならぬぞえ。
194
……モシ
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
195
お
付合
(
つきあひ
)
に
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
196
蜈蚣姫
『オホヽヽヽ、
197
さう
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさらいでも、
198
滅多
(
めつた
)
に
船
(
ふね
)
を
持
(
も
)
つて
逃
(
に
)
げる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
はしませぬ……とは
請合
(
うけあ
)
はれませぬワイ』
199
高姫
『サアそれだから
険難
(
けんのん
)
だと
云
(
い
)
ふのだ。
200
わしの
天眼通
(
てんがんつう
)
は、
201
お
前
(
まへ
)
さまの
腹
(
はら
)
のドン
底
(
ぞこ
)
までチヤーンと
見抜
(
みぬ
)
いてある。
202
それが
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で、
203
どうして
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
勤
(
つと
)
まるものか……アヽ
仕方
(
しかた
)
がない。
204
貫州
(
くわんしう
)
、
205
お
前
(
まへ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
206
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を、
207
あの
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
に
従
(
つ
)
いて
探
(
さが
)
して
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ。
208
わしは
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまの
監督
(
かんとく
)
をして
居
(
ゐ
)
るから……アーア
油断
(
ゆだん
)
も
隙
(
すき
)
も
有
(
あ
)
つたものぢやないワイ』
209
蜈蚣姫
『オツホヽヽヽ、
210
よう
悪気
(
わるき
)
の
廻
(
まは
)
るお
方
(
かた
)
ですな。
211
お
前
(
まへ
)
さまは
宝
(
たから
)
を
見
(
み
)
ると
直
(
すぐ
)
にそれだから
面白
(
おもしろ
)
い。
212
恰度
(
ちやうど
)
、
213
犬
(
いぬ
)
コロが
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
一所
(
ひととこ
)
に
集
(
あつ
)
まり、
214
顔
(
かほ
)
を
舐
(
な
)
めたり、
215
尾
(
を
)
を
嘗
(
な
)
めたりして
互
(
たがひ
)
に
睦
(
むつ
)
まじう
平和
(
へいわ
)
に
遊
(
あそ
)
んで
居
(
を
)
る、
216
其処
(
そこ
)
へ
腐
(
くさ
)
つた
肉
(
にく
)
の
一片
(
いつぺん
)
を
投
(
な
)
げて
与
(
や
)
ると、
217
忽
(
たちま
)
ち
争闘
(
あらそひ
)
を
始
(
はじ
)
め、
218
親
(
おや
)
の
讐敵
(
かたき
)
に
出会
(
であ
)
うた
様
(
やう
)
に
喧嘩
(
けんくわ
)
をするのと
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
、
219
お
前
(
まへ
)
さまは
宝
(
たから
)
が……まだ
本当
(
ほんたう
)
に
有
(
あ
)
るか
無
(
な
)
いか
知
(
し
)
れもせぬ
前
(
さき
)
から、
220
目
(
め
)
の
色
(
いろ
)
まで
変
(
か
)
へて
騒
(
さわ
)
ぐのだから、
221
本当
(
ほんたう
)
に
見上
(
みあ
)
げた
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
だ。
222
いつかな
悪党
(
あくたう
)
な
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
も
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
感服
(
かんぷく
)
致
(
いた
)
しました。
223
………スマートボール、
224
お
前
(
まへ
)
は
貫州
(
くわんしう
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
の
側
(
そば
)
へ
行
(
い
)
つて、
225
万々一
(
まんまんいち
)
玉
(
たま
)
が
有
(
あ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたら、
226
外
(
ほか
)
の
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
は
如何
(
どう
)
でも
良
(
よ
)
いから、
227
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を、
228
非
(
ひ
)
が
邪
(
じや
)
でもひつたくつて
来
(
く
)
るのだよ。
229
此
(
この
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
ぢやとて、
230
性来
(
うまれつき
)
から
善人
(
ぜんにん
)
でもないのだから
宝
(
たから
)
の
山
(
やま
)
へ
入
(
い
)
り
乍
(
なが
)
ら
手振
(
てぶ
)
りで
帰
(
かへ
)
る
様
(
やう
)
な
馬鹿
(
ばか
)
ぢやない。
231
今迄
(
いままで
)
の
苦労
(
くらう
)
を
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
にはしともないから、
232
わしも
犬
(
いぬ
)
コロになつて、
233
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
争
(
あらそ
)
うて
見
(
み
)
ませうかい。
234
オツホヽヽヽ』
235
高姫
『
一旦
(
いつたん
)
お
前
(
まへ
)
さまは
小糸姫
(
こいとひめ
)
にさへ
会
(
あ
)
へばよい、
236
玉
(
たま
)
なぞに
執着心
(
しふちやくしん
)
は
無
(
な
)
いと、
237
立派
(
りつぱ
)
に
仰有
(
おつしや
)
つたぢやないか。
238
それに
何
(
なん
)
ぞや、
239
今
(
いま
)
となつて
子
(
こ
)
と
玉
(
たま
)
の
変換
(
へんくわん
)
をなさるのかイ』
240
蜈蚣姫
『
変説
(
へんせつ
)
改論
(
かいろん
)
の
持囃
(
もてはや
)
される
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから
当然
(
あたりまへ
)
さ。
241
……コレ、
242
スマートボール、
243
高姫
(
たかひめ
)
さまが
何程
(
なにほど
)
鯱
(
しやち
)
になつても、
244
味方
(
みかた
)
と
云
(
い
)
へば
貫州
(
くわんしう
)
さま
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
245
あとは
残
(
のこ
)
らず
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
幕下
(
ばくか
)
計
(
ばか
)
りだ。
246
寡
(
くわ
)
を
以
(
もつ
)
て
衆
(
しう
)
に
敵
(
てき
)
する
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
だ。
247
何程
(
なにほど
)
多数党
(
たすうたう
)
が
横暴
(
わうばう
)
だと
国民
(
こくみん
)
が
叫
(
さけ
)
んでも、
248
何程
(
なにほど
)
少数党
(
せうすうたう
)
が
正義
(
せいぎ
)
だと
云
(
い
)
つても、
249
矢張
(
やつぱり
)
多数党
(
たすうたう
)
が
勝利
(
しようり
)
を
得
(
う
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だもの、
250
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
、
251
チツトも
騒
(
さわ
)
ぐに
及
(
およ
)
びませぬ。
252
他人
(
ひと
)
の
苦労
(
くらう
)
で
徳
(
とく
)
とると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
恰度
(
ちやうど
)
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
253
高姫
(
たかひめ
)
さま、
254
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら
貴女
(
あなた
)
、
255
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
査
(
しら
)
べて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな。
256
同
(
おな
)
じ
大自在天
(
だいじざいてん
)
に
献上
(
けんじやう
)
するのだもの、
257
誰
(
たれ
)
が
取
(
と
)
つても
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
、
258
それに
貴女
(
あなた
)
は
私
(
わし
)
に
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
らそまいとする
其
(
その
)
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
が
分
(
わか
)
らぬ。
259
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
を
看板
(
かんばん
)
に、
260
ヤツパリ
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
に
献上
(
けんじやう
)
する
考
(
かんが
)
へだらう。
261
何程
(
なにほど
)
布留那
(
ふるな
)
の
弁
(
べん
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまでも、
262
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
の
曲者
(
くせもの
)
を
隠
(
かく
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい……あのマア
迷惑相
(
めいわくさう
)
なお
顔付
(
かほつき
)
、
263
オツホヽヽヽ』
264
とワザと
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
り、
265
高姫流
(
たかひめりう
)
の
嘲笑
(
てうせう
)
振
(
ぶ
)
りをして
見
(
み
)
せる。
266
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
二人
(
ふたり
)
の
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
、
267
断崖
(
だんがい
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
に
手
(
て
)
をかけ
足
(
あし
)
をかけ、
268
大勢
(
おほぜい
)
の
前
(
まへ
)
に
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
り、
269
チャンキー
『わしはチヤンキー、
270
も
一人
(
ひとり
)
はモンキーと
云
(
い
)
ふシロの
島
(
しま
)
の
住人
(
ぢゆうにん
)
だが、
271
三年前
(
さんねんまへ
)
に
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
御
(
おん
)
娘
(
むすめ
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
お
)
送
(
おく
)
り
申
(
まを
)
して、
272
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
渡
(
わた
)
る
途中
(
とちう
)
暴風
(
ばうふう
)
に
出会
(
であ
)
ひ、
273
船
(
ふね
)
を
打割
(
ぶちわ
)
り、
274
辛
(
から
)
うじて
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
駆
(
か
)
けあがり、
275
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
かり、
276
蟹
(
かに
)
やら
貝
(
かひ
)
などを
漁
(
あさ
)
つてみじめな
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
来
(
き
)
た
者
(
もの
)
ですがどうぞお
前
(
まへ
)
さま、
277
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
を
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せて
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
278
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
して
頼
(
たの
)
み
入
(
い
)
る。
279
毛
(
け
)
は
生
(
は
)
え
放題
(
はうだい
)
、
280
髭
(
ひげ
)
は
延
(
の
)
び
次第
(
しだい
)
、
281
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
垢
(
こけ
)
だらけ、
282
目
(
め
)
のみ
光
(
ひか
)
らせて
居
(
を
)
る。
283
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
間近
(
まぢか
)
く
眺
(
なが
)
めた
一同
(
いちどう
)
は、
284
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
を
半信
(
はんしん
)
半疑
(
はんぎ
)
の
念
(
ねん
)
にかられ
乍
(
なが
)
ら
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
285
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせ、
286
蜈蚣姫
『ナニ、
287
お
前
(
まへ
)
は
小糸姫
(
こいとひめ
)
を
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
て
難船
(
なんせん
)
したと
云
(
い
)
ふのか。
288
さうして
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
りますか』
289
チャンキー
『サア
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
られますかな。
290
私
(
わたくし
)
たちは
男
(
をとこ
)
の
事
(
こと
)
でもあり、
291
漸
(
やうや
)
く
此
(
この
)
島
(
しま
)
にかぢりついたのだが、
292
あまりの
驚
(
おどろ
)
きで
如何
(
どう
)
なつた
事
(
こと
)
やらトツクリとは
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
りませぬ。
293
大方
(
おほかた
)
竜宮
(
りうぐう
)
へでも
旅立
(
たびだ
)
たれたのでせう』
294
蜈蚣姫
『
竜宮
(
りうぐう
)
と
云
(
い
)
ふのはオーストラリヤの
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
の
事
(
こと
)
かい』
295
モンキー
『サア
其
(
その
)
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちう
)
に
難破
(
なんぱ
)
したのだから、
296
竜宮違
(
りうぐうちがひ
)
に、
297
乙米姫
(
おとよねひめ
)
様
(
さま
)
の
鎮
(
しづ
)
まり
玉
(
たま
)
ふ
海底
(
うなそこ
)
の
竜宮
(
りうぐう
)
へお
出
(
い
)
でになつたのでせう。
298
本当
(
ほんたう
)
に
綺麗
(
きれい
)
な
女王
(
ぢよわう
)
の
様
(
やう
)
な
方
(
かた
)
で、
299
今
(
いま
)
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しても
自然
(
しぜん
)
に
目
(
め
)
が
細
(
ほそ
)
くなり、
300
涎
(
よだれ
)
が
流
(
なが
)
れますワイ。
301
アヽ
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
をしたものだ』
302
と
憮然
(
ぶぜん
)
として
語
(
かた
)
る。
303
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
今迄
(
いままで
)
張詰
(
はりつ
)
めた
心
(
こころ
)
もガツタリと、
304
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れ
身震
(
みぶる
)
ひし
乍
(
なが
)
ら
船底
(
ふなぞこ
)
にかぶりつき、
305
忍
(
しの
)
び
泣
(
な
)
きに
泣
(
な
)
き
居
(
ゐ
)
る。
306
高姫
(
たかひめ
)
は
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
此
(
この
)
悲歎
(
ひたん
)
に
頓着
(
とんちやく
)
なく、
307
チヤンキー、
308
モンキー
二人
(
ふたり
)
の
胸倉
(
むなぐら
)
をグツと
取
(
と
)
り、
309
高姫
『これ、
310
チヤン、
311
モンとやら、
312
お
前
(
まへ
)
は
誰
(
たれ
)
に
頼
(
たの
)
まれて
玉
(
たま
)
を
隠
(
かく
)
したのだ。
313
玉能姫
(
たまのひめ
)
か、
314
言依別
(
ことよりわけ
)
か、
315
但
(
ただし
)
は
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
る
連中
(
れんちう
)
の
誰
(
たれ
)
かに
頼
(
たの
)
まれて
隠
(
かく
)
したのだらう。
316
よう
考
(
かんが
)
へたものだ。
317
コンナ
遠
(
とほ
)
い
岩山
(
いはやま
)
に
埋没
(
まいぼつ
)
して
置
(
お
)
けば
如何
(
いか
)
にも
知
(
し
)
れぬ
筈
(
はず
)
ぢや。
318
私
(
わし
)
も
今迄
(
いままで
)
立派
(
りつぱ
)
な
立派
(
りつぱ
)
なアンボイナ
島
(
たう
)
や、
319
大島
(
おほしま
)
や、
320
小豆島
(
せうどしま
)
を
探
(
さが
)
さうとしたのが
感違
(
かんちが
)
ひ、
321
アヽ
時節
(
じせつ
)
は
待
(
ま
)
たねばならぬものだ。
322
サアもう
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は、
323
お
前
(
まへ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つて
弁解
(
べんかい
)
しても
白状
(
はくじやう
)
させねば
置
(
お
)
かぬ。
324
何程
(
なにほど
)
隠
(
かく
)
しても、
325
斯
(
こ
)
んな
小
(
ち
)
つぽけな
島
(
しま
)
、
326
小口
(
こぐち
)
から
岩
(
いは
)
を
叩
(
たた
)
き
割
(
わ
)
つても、
327
発見
(
はつけん
)
するのは
容易
(
ようい
)
の
業
(
わざ
)
だ。
328
隠
(
かく
)
しても
知
(
し
)
れる、
329
隠
(
かく
)
さいでも
知
(
し
)
れるのだから、
330
エライ
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はされぬうちにトツトと
白状
(
はくじやう
)
したがお
前
(
まへ
)
の
得
(
とく
)
だよ』
331
チヤンキー、
332
モンキーの
二人
(
ふたり
)
は
寝耳
(
ねみみ
)
に
水
(
みづ
)
の
此
(
この
)
詰問
(
きつもん
)
に、
333
何
(
なに
)
が
何
(
なに
)
やら
合点
(
がてん
)
ゆかず
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
334
チャンキー
『
今
(
いま
)
貴女
(
あなた
)
は
玉
(
たま
)
を
隠
(
かく
)
したとか、
335
どうとか
仰有
(
おつしや
)
いますが、
336
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
の
玉
(
たま
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
337
高姫
『オホヽヽヽ、
338
よう
白
(
しら
)
ばくれたものだなア。
339
それ、
340
お
前
(
まへ
)
が
玉能姫
(
たまのひめ
)
に
頼
(
たの
)
まれた
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
だよ。
341
それを
何処
(
どこ
)
に
隠
(
かく
)
したか、
342
キツパリと
白状
(
はくじやう
)
しなさい』
343
チャンキー
『ソンナ
事
(
こと
)
は
一切
(
いつさい
)
存
(
ぞん
)
じませぬ』
344
モンキー
『
玉
(
たま
)
ナンテ
名
(
な
)
も
聞
(
き
)
いたこたアありませぬワイ』
345
高姫
『ヨシヨシ
強太
(
しぶと
)
い
者
(
もの
)
だ。
346
腹
(
はら
)
を
断
(
た
)
ち
割
(
わ
)
つても、
347
今度
(
こんど
)
こそは
白状
(
はくじやう
)
させねば
置
(
お
)
かぬ。
348
アヽ
面倒
(
めんだう
)
臭
(
くさ
)
い
事
(
こと
)
だ。
349
妾
(
わし
)
が
自
(
みづか
)
ら
査
(
しら
)
べに
行
(
ゆ
)
けば
後
(
あと
)
が
案
(
あん
)
じられる。
350
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまは……ヘン……
吃驚
(
びつくり
)
したよな
顔
(
かほ
)
をして
船底
(
ふなぞこ
)
にかぢりつき
油断
(
ゆだん
)
をさせて、
351
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
山
(
やま
)
へ
往
(
い
)
つたならば
矢庭
(
やには
)
に
船
(
ふね
)
を
出
(
だ
)
し、
352
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
放
(
ほ
)
つとく
積
(
つも
)
りだらうし、
353
アヽ
体
(
からだ
)
が
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
欲
(
ほつ
)
しくなつて
来
(
き
)
たワイ』
354
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
顔
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げ、
355
蜈蚣姫
『わしも
今迄
(
いままで
)
恋
(
こひ
)
しい
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
に
会
(
あ
)
ふのを
楽
(
たのし
)
みに、
356
心
(
こころ
)
の
合
(
あ
)
はぬ
高姫
(
たかひめ
)
と
表面
(
うはべ
)
だけは
調子
(
てうし
)
を
合
(
あは
)
して
来
(
き
)
たが、
357
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
らぬと
聞
(
き
)
けば、
358
モウ
破
(
やぶ
)
れかぶれだ。
359
……サア
友彦
(
ともひこ
)
、
360
お
前
(
まへ
)
も
憎
(
にく
)
い
奴
(
やつ
)
なれど、
361
仮令
(
たとへ
)
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
でも
私
(
わし
)
の
娘
(
むすめ
)
の
夫
(
をつと
)
となつた
以上
(
いじやう
)
は、
362
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ
親子
(
おやこ
)
の
仲
(
なか
)
、
363
キツト
私
(
わし
)
に
加勢
(
かせい
)
をして
呉
(
く
)
れるだらうな』
364
友彦
『ハイお
母
(
かあ
)
さま、
365
よう
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
366
貴女
(
あなた
)
の
命令
(
めいれい
)
なら、
367
高姫
(
たかひめ
)
の
生首
(
なまくび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
けと
仰有
(
おつしや
)
つても、
368
引抜
(
ひきぬ
)
いてお
目
(
め
)
にかけます』
369
蜈蚣姫
『ヤア
頼
(
たの
)
もしや
頼
(
たの
)
もしや、
370
親
(
おや
)
なればこそ、
371
子
(
こ
)
なればこそ。
372
何処
(
どこ
)
にドンナ
味方
(
みかた
)
が
拵
(
こしら
)
へてあるか
分
(
わか
)
つたものぢやない。
373
「ほのぼのと
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
けど、
374
心
(
こころ
)
淋
(
さび
)
しく
思
(
おも
)
ふなよ。
375
力
(
ちから
)
になる
人
(
ひと
)
用意
(
ようい
)
がしてあるぞよ」……と
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
376
……(
声
(
こゑ
)
に
力
(
ちから
)
入
(
い
)
れ)サア
高姫
(
たかひめ
)
、
377
モウ
斯
(
か
)
うなる
以上
(
いじやう
)
は
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
を
引
(
ひ
)
ん
剥
(
む
)
いて
婆
(
ばば
)
と
婆
(
ばば
)
との
力
(
ちから
)
比
(
くら
)
べだ、
378
尋常
(
じんじやう
)
に
勝負
(
しようぶ
)
をなされ』
379
高姫
『ヘン、
380
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまの、
381
あの
噪
(
はし
)
やぎ
様
(
やう
)
……イヤ
狂
(
くる
)
ひやう。
382
誰
(
たれ
)
だつて
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
が
死
(
し
)
んだと
聞
(
き
)
けば、
383
自暴自棄
(
やけくそ
)
も
起
(
おこ
)
るであらう。
384
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ふまいものでもない。
385
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
其処
(
そこ
)
をビクとも
致
(
いた
)
さぬのが
神心
(
かみごころ
)
だ……
女丈夫
(
ぢよぢやうぶ
)
の
大精神
(
だいせいしん
)
だ。
386
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
が
海
(
うみ
)
へ
沈
(
しづ
)
んで
竜宮行
(
りうぐうゆき
)
をしたと
聞
(
き
)
いて
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし、
387
其
(
その
)
愁歎振
(
しうたんぶり
)
は
何
(
なん
)
ですか。
388
見
(
み
)
つともない。
389
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
元来
(
ぐわんらい
)
気丈
(
きぢやう
)
の
性質
(
せいしつ
)
、
390
流石
(
さすが
)
は
生宮
(
いきみや
)
丈
(
だけ
)
あつて、
391
小糸姫
(
こいとひめ
)
が
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
へ
旅立
(
たびだち
)
をしたと
聞
(
き
)
いて、
392
落胆
(
らくたん
)
どころか
却
(
かへつ
)
て
愉快
(
ゆくわい
)
な
気分
(
きぶん
)
に
充
(
みた
)
されました。
393
ナント
身魂
(
みたま
)
の
研
(
みが
)
けた
者
(
もの
)
と、
394
研
(
みが
)
けぬ
者
(
もの
)
との
心
(
こころ
)
の
持様
(
もちやう
)
は
違
(
ちが
)
うたものだナ。
395
オホヽヽヽ』
396
と
自暴自棄
(
やけくそ
)
になつて
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
く。
397
蜈蚣姫
『
人情
(
にんじやう
)
知
(
し
)
らずの
悪垂婆
(
あくたればば
)
の
高姫
(
たかひめ
)
。
398
……サア
友彦
(
ともひこ
)
、
399
親
(
おや
)
の
言
(
い
)
ひ
付
(
つ
)
けだ。
400
櫂
(
かい
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
頭
(
あたま
)
から
擲
(
なぐ
)
りつけて
下
(
くだ
)
さい。
401
一人
(
ひとり
)
よりない
大事
(
だいじ
)
な
娘
(
むすめ
)
が
死
(
し
)
んだのを、
402
却
(
かへつ
)
て
愉快
(
ゆくわい
)
だと
言
(
い
)
ひよつた。
403
……サア
早
(
はや
)
くスマートボール、
404
久助
(
きうすけ
)
、
405
高姫
(
たかひめ
)
を
打
(
う
)
ちのめし、
406
海
(
うみ
)
の
竜宮
(
りうぐう
)
へやつて
下
(
くだ
)
され。
407
チヤンキー、
408
モンキーさま、
409
お
前
(
まへ
)
さまも
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
をかけられて、
410
嘸
(
さぞ
)
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
たうのう。
411
一寸
(
いつすん
)
の
虫
(
むし
)
にも
五分
(
ごぶ
)
の
魂
(
たましひ
)
だ。
412
チツトは
敵討
(
かたきう
)
ちをしなさらぬかいな。
413
敵
(
てき
)
は
貫州
(
くわんしう
)
と
唯
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
、
414
モウ
斯
(
か
)
うなれば
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
のしたい
儘
(
まま
)
だ。
415
……サア
高姫
(
たかひめ
)
、
416
返答
(
へんたふ
)
はどうだ』
417
と
追々
(
おひおひ
)
言葉尻
(
ことばじり
)
が
荒
(
あら
)
くなる。
418
貫州
(
くわんしう
)
は
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げ、
419
貫州
『
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
420
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
さま、
421
マア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
422
蜈蚣姫
『
此
(
この
)
期
(
ご
)
に
及
(
およ
)
んで
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な、
423
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れも
有
(
あ
)
るものか。
424
お
前
(
まへ
)
も
讐敵
(
かたき
)
の
片割
(
かたわ
)
れ、
425
覚悟
(
かくご
)
をしたが
宜
(
よ
)
からう』
426
貫州
『わしだつてコンナ
没分暁漢
(
わからずや
)
の
高姫
(
たかひめ
)
に
殉死
(
じゆんし
)
するのは
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
だ。
427
お
前
(
まへ
)
さまの
方
(
はう
)
に、
428
貫州
(
くわんしう
)
も
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
応援
(
おうゑん
)
するから、
429
……どうだ、
430
聞
(
き
)
き
届
(
とど
)
けて
呉
(
く
)
れるかな』
431
蜈蚣姫
『お
前
(
まへ
)
はメラの
滝
(
たき
)
でチラリと
喋
(
しやべ
)
つた
言葉
(
ことば
)
に
考
(
かんが
)
へ
合
(
あ
)
はすと、
432
あまり
高姫
(
たかひめ
)
を
信用
(
しんよう
)
しとりさうにもないから、
433
赦
(
ゆる
)
してやらう。
434
サアどうぢや
高姫
(
たかひめ
)
、
435
舌
(
した
)
噛
(
か
)
み
切
(
き
)
つて
死
(
し
)
ぬるか、
436
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
海
(
うみ
)
へ
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げるか、
437
それが
厭
(
いや
)
なら
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
が
寄
(
よ
)
つて
懸
(
かか
)
つてふん
縛
(
じば
)
り、
438
海
(
うみ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まうか。
439
最早
(
もはや
)
是
(
これ
)
までと
諦
(
あきら
)
めて、
440
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
一
(
ひと
)
つも
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
名残
(
なごり
)
に
唱
(
とな
)
へたがよからうぞ。
441
オツホヽヽヽ』
442
高姫
(
たかひめ
)
は
悪胴
(
わるどう
)
を
据
(
す
)
ゑ、
443
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
444
涙
(
なみだ
)
をボロリボロリと
零
(
こぼ
)
して
俯向
(
うつむ
)
き
沈
(
しづ
)
む。
445
蜈蚣姫
『オホヽヽヽ、
446
高姫
(
たかひめ
)
さま、
447
嘘
(
うそ
)
ですよ。
448
あまりお
前
(
まへ
)
さまが
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
いから、
449
一
(
ひと
)
つ
我
(
が
)
を
折
(
を
)
つて
上
(
あ
)
げようと
思
(
おも
)
うて
狂言
(
きやうげん
)
をしたのだから、
450
安心
(
あんしん
)
なされませ。
451
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
に
敵
(
てき
)
もなければ
他人
(
たにん
)
もない。
452
私
(
わたし
)
も
今迄
(
いままで
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
とは
違
(
ちが
)
ひます。
453
玉能姫
(
たまのひめ
)
さまや
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまを、
454
あれ
丈
(
だけ
)
ボロ
糞
(
くそ
)
に
言
(
い
)
つてもチツトも
怒
(
おこ
)
らず、
455
親切
(
しんせつ
)
計
(
ばか
)
りで
立
(
た
)
て
通
(
とほ
)
しなさつた
其
(
その
)
心
(
こころ
)
に
感
(
かん
)
じ、
456
善一
(
ぜんひと
)
つの
真心
(
まごころ
)
に
立帰
(
たちかへ
)
つた
此
(
この
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
457
どうしてお
前
(
まへ
)
さまを
苦
(
くる
)
しめませう、
458
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい。
459
其
(
その
)
代
(
かは
)
りお
前
(
まへ
)
さまも、
460
玉能姫
(
たまのひめ
)
さまや
初稚姫
(
はつわかひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
方々
(
かたがた
)
を
鵜
(
う
)
の
毛
(
け
)
の
露
(
つゆ
)
程
(
ほど
)
でも
恨
(
うら
)
む
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
があつては
冥加
(
みやうが
)
に
尽
(
つ
)
きまするぞ』
461
高姫
『ヤアそれで
高姫
(
たかひめ
)
もヤツと
安心
(
あんしん
)
を
致
(
いた
)
しました。
462
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
初稚姫
(
はつわかひめ
)
や
玉能姫
(
たまのひめ
)
の
悪人
(
あくにん
)
計
(
ばか
)
りは、
463
如何
(
どう
)
しても
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬワイ。
464
人
(
ひと
)
我
(
わ
)
れに
辛
(
つら
)
ければ
我
(
わ
)
れ
又
(
また
)
人
(
ひと
)
に
辛
(
つら
)
しとやら
言
(
い
)
つて、
465
年
(
とし
)
をとつて
是
(
こ
)
れだけ
苦労
(
くらう
)
艱難
(
かんなん
)
をするのも、
466
みんな
初稚姫
(
はつわかひめ
)
や
玉能姫
(
たまのひめ
)
のなす
業
(
わざ
)
、
467
如何
(
いか
)
に
天下
(
てんか
)
の
大
(
おほ
)
馬鹿者
(
ばかもの
)
、
468
無神経
(
むしんけい
)
者
(
もの
)
と
云
(
い
)
つても、
469
此
(
この
)
残念
(
ざんねん
)
が
如何
(
どう
)
して
忘
(
わす
)
れられませうか』
470
蜈蚣姫
『
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
や
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
は、
471
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて
御用
(
ごよう
)
遊
(
あそ
)
ばした
丈
(
だけ
)
ぢやありませぬか。
472
元
(
もと
)
からお
前
(
まへ
)
さまを
困
(
こま
)
らさうなどと、
473
ソンナ
悪
(
わる
)
い
心
(
こころ
)
はなかつたのでせう』
474
高姫
『ソンナ
小理屈
(
こりくつ
)
は
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さいますな。
475
例
(
たと
)
へば
主人
(
しゆじん
)
が
下僕
(
しもべ
)
に
対
(
たい
)
し
藪
(
やぶ
)
の
竹
(
たけ
)
を
一本
(
いつぽん
)
伐
(
き
)
つて
来
(
こ
)
いと
命令
(
めいれい
)
したと
見
(
み
)
なさい。
476
竹
(
たけ
)
を
伐
(
き
)
る
時
(
とき
)
の
竹
(
たけ
)
の
露
(
つゆ
)
は
誰
(
たれ
)
にかかりますか。
477
ヤツパリ
下僕
(
しもべ
)
にかかるぢやありませぬか。
478
竹
(
たけ
)
伐
(
き
)
つた
奴
(
やつ
)
は
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
479
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
両
(
りやう
)
阿魔女
(
あまつちよ
)
だ。
480
怨
(
うら
)
みが
懸
(
かか
)
らいで
何
(
なん
)
としようぞいの。
481
アヽ
口惜
(
くや
)
しい、
482
残念
(
ざんねん
)
や、
483
オーン オーン オーン』
484
と
前後
(
ぜんご
)
を
忘
(
わす
)
れ
狼泣
(
おほかみな
)
きに
泣
(
な
)
き
始
(
はじ
)
めける。
485
折
(
をり
)
しも
海鳴
(
うみなり
)
の
音
(
おと
)
、
486
俄
(
にはか
)
に
万雷
(
ばんらい
)
の
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
轟
(
とどろ
)
く
如
(
ごと
)
く
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
り、
487
波
(
なみ
)
は
刻々
(
こくこく
)
に
高
(
たか
)
まる。
488
一同
(
いちどう
)
はチヤンキー、
489
モンキーの
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
490
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
き
岩上
(
がんじやう
)
に
避難
(
ひなん
)
した。
491
船
(
ふね
)
は
纜
(
ともづな
)
を
千切
(
ちぎ
)
られ、
492
何処
(
いづく
)
ともなく、
493
浪
(
なみ
)
のまにまに
流
(
なが
)
れて
了
(
しま
)
つた。
494
水量
(
みづかさ
)
は
追々
(
おひおひ
)
まさり、
495
最早
(
もはや
)
足許
(
あしもと
)
まで
浸
(
ひた
)
して
来
(
く
)
る。
496
山岳
(
さんがく
)
の
様
(
やう
)
な
浪
(
なみ
)
は
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく、
497
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
を
掠
(
かす
)
めて
通
(
とほ
)
る。
498
殆
(
ほとん
)
ど
水中
(
すゐちう
)
に
没
(
ぼつ
)
したと
思
(
おも
)
へば
又
(
また
)
現
(
あら
)
はれ、
499
息
(
いき
)
も
絶
(
た
)
え
絶
(
だ
)
えになり、
500
各自
(
めいめい
)
覚悟
(
かくご
)
の
臍
(
ほぞ
)
を
極
(
き
)
めて
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
501
心
(
こころ
)
の
隔
(
へだ
)
てはスツカリ
除
(
と
)
れて、
502
唯
(
ただ
)
生命
(
いのち
)
を
如何
(
いか
)
にして
保
(
たも
)
たむやと
是
(
こ
)
れのみに
焦慮
(
せうりよ
)
し、
503
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
泣声
(
なきごゑ
)
まぜりに
声
(
こゑ
)
を
嗄
(
か
)
らして
唱
(
とな
)
へ
居
(
ゐ
)
る。
504
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
波
(
なみ
)
に
漂
(
ただよ
)
ひつつ
艪
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
り、
505
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しく
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
一隻
(
いつせき
)
の
稍
(
やや
)
大
(
だい
)
なる
船
(
ふね
)
ありき。
506
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
て、
507
誰
(
たれ
)
彼
(
かれ
)
の
顔
(
かほ
)
も
碌
(
ろく
)
に
見
(
み
)
えなくなり
来
(
き
)
たり。
508
一隻
(
いつせき
)
の
船
(
ふね
)
には
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
神人
(
しんじん
)
が
乗
(
の
)
り
居
(
ゐ
)
たり。
509
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
より、
510
神人
『ノアの
方舟
(
はこぶね
)
現
(
あら
)
はれたり、
511
サア
早
(
はや
)
く
乗
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
へ』
512
と
呼
(
よ
)
ばはり
乍
(
なが
)
ら
足許
(
あしもと
)
へ
漕
(
こ
)
ぎ
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
る。
513
一同
(
いちどう
)
は
天
(
てん
)
にも
昇
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
し
乍
(
なが
)
ら、
514
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
此
(
この
)
船
(
ふね
)
目蒐
(
めが
)
けて、
515
天
(
てん
)
の
祐
(
たす
)
けと
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
めば、
516
船
(
ふね
)
は
波
(
なみ
)
を
押分
(
おしわ
)
け
悠々
(
いういう
)
として
西南
(
せいなん
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
517
斯
(
か
)
く
俄
(
にはか
)
に
鳴動
(
めいどう
)
し、
518
水量
(
みづかさ
)
まさり
来
(
きた
)
りしは、
519
南洋
(
なんやう
)
のテンカオ
島
(
たう
)
と
云
(
い
)
ふ
巨大
(
きよだい
)
なる
島
(
しま
)
が、
520
地辷
(
ぢすべ
)
りの
為
(
ため
)
に
海中
(
かいちう
)
に
沈没
(
ちんぼつ
)
した
為
(
ため
)
、
521
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
現象
(
げんしやう
)
として
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
くなりしなりき。
522
水量
(
みづかさ
)
は
追々
(
おひおひ
)
常態
(
じやうたい
)
に
復
(
ふく
)
しぬ。
523
船
(
ふね
)
は
月
(
つき
)
に
照
(
てら
)
され
乍
(
なが
)
ら
海上
(
かいじやう
)
静
(
しづ
)
かに
走
(
はし
)
り
居
(
ゐ
)
る。
524
船
(
ふね
)
の
中
(
なか
)
の
神人
(
しんじん
)
の
爽
(
さはや
)
かな
声
(
こゑ
)
、
525
玉能姫
『
妾
(
わたし
)
は
玉能姫
(
たまのひめ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
526
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
527
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
528
其
(
その
)
他
(
た
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
529
危
(
あぶ
)
ない
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いましたが、
530
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で、
531
コンナ
御
(
お
)
芽出
(
めで
)
たい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
532
妾
(
わたし
)
達
(
たち
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて、
533
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
が
海神島
(
かいしんとう
)
にお
着
(
つ
)
き
遊
(
あそ
)
ばす
迄
(
まで
)
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
申
(
まう
)
せとの
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で、
534
見
(
み
)
えつ
隠
(
かく
)
れつお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
535
アヽ
有難
(
ありがた
)
い、
536
これで
妾
(
わたし
)
の
使命
(
しめい
)
も
完全
(
くわんぜん
)
に
勤
(
つと
)
まつたと
申
(
まを
)
すもの、
537
マアよう
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
538
玉治別
(
たまはるわけ
)
も
居
(
を
)
られます。
539
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
もここに
乗
(
の
)
つて
居
(
を
)
られます』
540
高姫
『
是
(
こ
)
れと
云
(
い
)
ふのも
全
(
まつた
)
く
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
ぢや。
541
お
前
(
まへ
)
さまも
其
(
その
)
お
蔭
(
かげ
)
で
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
に
対
(
たい
)
して
言
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
も
立
(
た
)
ち、
542
完全
(
くわんぜん
)
に
御用
(
ごよう
)
も
勤
(
つと
)
まつたと
云
(
い
)
ふもの、
543
コンナ
事
(
こと
)
がなければお
前
(
まへ
)
さまが
遥々
(
はるばる
)
此処
(
ここ
)
まで
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのも
無意義
(
むいぎ
)
に
終
(
をは
)
るとこだつた。
544
アヽ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
誰
(
たれ
)
も
つつぼ
に
致
(
いた
)
さぬと
仰有
(
おつしや
)
るが
偉
(
えら
)
いものだなア。
545
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
は
平等愛
(
びやうどうあい
)
を
以
(
もつ
)
て
心
(
こころ
)
となし
給
(
たま
)
ふ。
546
お
前
(
まへ
)
さまもこれでチツトは
我
(
が
)
が
折
(
を
)
れただらう。
547
手柄
(
てがら
)
を
横取
(
よこどり
)
して
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
が
猫糞
(
ねこばば
)
をきめこみ、
548
結構
(
けつこう
)
な
神宝
(
しんぽう
)
を
隠
(
かく
)
して
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして
御座
(
ござ
)
つたが、
549
是
(
こ
)
れで
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
が
分
(
わか
)
つたでせう。
550
サア
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
綺麗
(
きれい
)
サツパリと
皆
(
みな
)
の
前
(
まへ
)
にさらけ
出
(
だ
)
し、
551
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
独占
(
どくせん
)
しようなぞと
云
(
い
)
ふ
執着心
(
しふちやくしん
)
を、
552
此
(
この
)
際
(
さい
)
放
(
ほ
)
かしなさるのが
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
得
(
とく
)
だぞへ、
553
オホヽヽヽ』
554
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
555
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
呆
(
あき
)
れて
何
(
なん
)
の
言葉
(
ことば
)
もなく、
556
黙然
(
もくねん
)
として
俯
(
うつ
)
むき
居
(
ゐ
)
たり。
557
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
艪
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
り
乍
(
なが
)
ら
高姫
(
たかひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
少
(
すこ
)
しくむかついたが、
558
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し、
559
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
を
戒
(
いまし
)
め、
560
さあらぬ
態
(
てい
)
に
船唄
(
ふなうた
)
を
唄
(
うた
)
ひ、
561
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
り
居
(
ゐ
)
たり。
562
高姫
(
たかひめ
)
『コレお
節
(
せつ
)
さま、
563
お
初
(
はつ
)
さま、
564
お
前
(
まへ
)
さまもいい
加減
(
かげん
)
にハンナリとしたらどうだい。
565
助
(
たす
)
けに
来
(
く
)
るのも、
566
助
(
たす
)
けられるのも
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
使
(
つか
)
はれて
居
(
を
)
るのだよ。
567
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
高姫
(
たかひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
を
助
(
たす
)
けてやつたと
慢神心
(
まんしんごころ
)
を
出
(
だ
)
してはなりませぬ。
568
ハヤそれが
大変
(
たいへん
)
な
取違
(
とりちがひ
)
だ。
569
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
になつたれば
神
(
かみ
)
が
助
(
たす
)
けるぞよと、
570
チヤンと
仰有
(
おつしや
)
つてる。
571
家島
(
えじま
)
で
船
(
ふね
)
を
取
(
と
)
られた
時
(
とき
)
も、
572
神
(
かみ
)
がお
節
(
せつ
)
さまを
御用
(
ごよう
)
に
使
(
つか
)
ひ、
573
船
(
ふね
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
さしました。
574
アンボイナ
島
(
たう
)
でも
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り、
575
今
(
いま
)
又
(
また
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
のおはからひで
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
を
指
(
さ
)
して
貰
(
もら
)
ひなさつた。
576
此処
(
ここ
)
で
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
をさして
貰
(
もら
)
ひなさつたのも、
577
ヤツパリ
高姫
(
たかひめ
)
があつたればこそ……
一遍
(
いつぺん
)
々々
(
いつぺん
)
お
前
(
まへ
)
さまは
手柄
(
てがら
)
が
重
(
かさ
)
なつて
結構
(
けつこう
)
だが、
578
ウツカリ
慢神
(
まんしん
)
すると
谷底
(
たにぞこ
)
へ
落
(
おと
)
されますぞや。
579
大分
(
だいぶん
)
に
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
うなり
出
(
だ
)
した。
580
チツト
捻
(
ね
)
ぢて
上
(
あ
)
げようか』
581
と
二人
(
ふたり
)
の
鼻
(
はな
)
を
掴
(
つか
)
みかからうとする。
582
貫州
(
くわんしう
)
は
其
(
その
)
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
583
貫州
『コレ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
584
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
いと
云
(
い
)
つても
余
(
あんま
)
りぢやないか。
585
側
(
そば
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る
私
(
わし
)
でさへも
憎
(
にく
)
らしうて、
586
お
前
(
まへ
)
さまを
殴
(
なぐ
)
りつけたうなつて
来
(
き
)
た。
587
ようもようも
慢神
(
まんしん
)
したものだなア、
588
チツト
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
なさい。
589
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
590
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても
減
(
へ
)
らず
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
いて、
591
よう
口
(
くち
)
が
腫
(
は
)
れぬ
事
(
こと
)
だナア』
592
高姫
『
貫州
(
くわんしう
)
、
593
神界
(
しんかい
)
の
事
(
こと
)
はお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
容喙
(
ようかい
)
すべき
事
(
こと
)
ぢやない。
594
どんなお
仕組
(
しぐみ
)
がしてあるか
分
(
わか
)
りもせぬのに、
595
出
(
だ
)
しやばつて
囀
(
さへづ
)
るものぢやありませぬぞ。
596
バラモン
教
(
けう
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さまでさへも
高姫
(
たかひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
感心
(
かんしん
)
して、
597
何
(
なん
)
とも
仰有
(
おつしや
)
らぬのに、
598
没分暁漢
(
わからずや
)
のお
前
(
まへ
)
が
何
(
なに
)
を
吐
(
ほざ
)
くのだい。
599
お
前
(
まへ
)
も
大分
(
だいぶ
)
に
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
くなつた。
600
一
(
ひと
)
つ
捻
(
ひね
)
つてやらうか』
601
と
稍
(
やや
)
高
(
たか
)
い
鼻
(
はな
)
を
掴
(
つか
)
みかかるのを、
602
貫州
(
くわんしう
)
は
力
(
ちから
)
をこめて
撥
(
は
)
ね
飛
(
と
)
ばした
途端
(
とたん
)
に、
603
高姫
(
たかひめ
)
はザンブと
計
(
ばか
)
り
海中
(
かいちう
)
に
落込
(
おちこ
)
みぬ。
604
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
605
矢庭
(
やには
)
に
棹
(
さを
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
す。
606
高姫
(
たかひめ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
になつて
棹
(
さを
)
に
喰
(
くら
)
ひつき、
607
漸
(
やうや
)
くにして
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げられけり。
608
高姫
『コレ
貫州
(
くわんしう
)
、
609
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すのだい』
610
貫州
『
是
(
こ
)
れも
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
でせう。
611
肱出
(
ひぢでの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
肱
(
ひぢ
)
で
はぢ
かはりましたら、
612
貴女
(
あなた
)
が
曲芸
(
きよくげい
)
を
演
(
えん
)
じてカイツムリとなり、
613
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
一同
(
いちどう
)
に
観覧
(
くわんらん
)
さして
下
(
くだ
)
さいました。
614
本当
(
ほんたう
)
に
抜目
(
ぬけめ
)
のない
愛想
(
あいさう
)
のよい
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまだと、
615
云
(
い
)
はず
語
(
かた
)
らず、
616
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
が
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
して
喜
(
よろこ
)
び
居
(
を
)
りましたワイな』
617
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
618
お
怪我
(
けが
)
は
御座
(
ござ
)
いませなんだか。
619
お
前
(
まへ
)
さまも
余
(
あんま
)
りお
口
(
くち
)
がよろしいからナア』
620
高姫
『
放
(
ほ
)
つといて
下
(
くだ
)
され、
621
口
(
くち
)
がよからうが
悪
(
わる
)
からうが、
622
妾
(
わたし
)
の
口
(
くち
)
は
妾
(
わたし
)
が
自由
(
じいう
)
に
使用
(
しよう
)
するのだ。
623
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
の
改心
(
かいしん
)
が
足
(
た
)
らぬから、
624
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
うて
此
(
この
)
海
(
うみ
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
鹹
(
から
)
い
塩水
(
しほみづ
)
を
呑
(
の
)
んで
罪
(
つみ
)
を
贖
(
あがな
)
ひ、
625
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げたのだ。
626
何故
(
なぜ
)
一言
(
ひとこと
)
の
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
しなさらぬ。
627
……コレコレ、
628
ムカデにお
節
(
せつ
)
、
629
お
初
(
はつ
)
殿
(
どの
)
、
630
分
(
わか
)
りましたかなア』
631
玉能姫
(
たまのひめ
)
『ハイ、
632
どうもお
元気
(
げんき
)
な
事
(
こと
)
には
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
633
その
勢
(
いきほひ
)
なれば
強
(
つよ
)
いものです。
634
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですワ』
635
高姫
『さうだらう。
636
お
前
(
まへ
)
も
大分
(
だいぶん
)
に
高姫
(
たかひめ
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
が
見
(
み
)
えかけたよ、
637
大分
(
だいぶん
)
に
身魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
けたやうだ。
638
モ
一
(
ひと
)
つ
打解
(
うちと
)
けて
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
さへ
白状
(
はくじやう
)
すれば、
639
それこそ
立派
(
りつぱ
)
な
者
(
もの
)
だ。
640
高姫
(
たかひめ
)
の
片腕
(
かたうで
)
になれるべき
素質
(
そしつ
)
は
充分
(
じうぶん
)
にある。
641
モウそろそろ
言
(
い
)
はねばなるまい。
642
言
(
い
)
はねば
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
にして
言
(
い
)
はすぞよと
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた
事
(
こと
)
を
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
ますか。
643
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
、
644
坤
(
ひつじさる
)
の
金神
(
こんじん
)
、
645
金勝要
(
きんかつかねの
)
神
(
かみ
)
、
646
一番
(
いちばん
)
地
(
ぢ
)
になるのが
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
、
647
四魂
(
しこん
)
揃
(
そろ
)
うて、
648
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くお
仕組
(
しぐみ
)
、
649
何程
(
なにほど
)
言依別
(
ことよりわけ
)
が
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
でも、
650
玉照姫
(
たまてるひめ
)
が
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
でも、
651
玉照彦
(
たまてるひこ
)
が
三葉彦
(
みつばひこ
)
の
再来
(
さいらい
)
でも、
652
到底
(
たうてい
)
四魂
(
しこん
)
の
神
(
かみ
)
には
肩
(
かた
)
を
並
(
なら
)
べる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
653
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
は
今迄
(
いままで
)
何
(
なん
)
でも
彼
(
か
)
んでも、
654
言依別
(
ことよりわけ
)
や
其
(
その
)
他
(
た
)
の
枝
(
えだ
)
の
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つたから、
655
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
にチツトも
往
(
い
)
きやせまいがな。
656
四魂
(
しこん
)
の
中
(
なか
)
でも
根本
(
こつぽん
)
の
土台
(
どだい
)
の
地
(
ぢ
)
になる
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
をさし
措
(
お
)
いて、
657
何
(
なに
)
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
るものか、
658
此
(
こ
)
れを
機会
(
きくわい
)
に
改心
(
かいしん
)
が
一等
(
いつとう
)
で
御座
(
ござ
)
るぞや』
659
と
口角泡
(
こうかくあわ
)
を
飛
(
と
)
ばし、
660
誰
(
たれ
)
も
返辞
(
へんじ
)
もせないのに、
661
独
(
ひと
)
り
噪
(
はし
)
やいで
居
(
ゐ
)
る。
662
船中
(
せんちう
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
高姫
(
たかひめ
)
を
気違扱
(
きちがひあつか
)
ひして
相手
(
あひて
)
にならず、
663
言
(
い
)
ひたい
儘
(
まま
)
に
放任
(
はうにん
)
し
置
(
お
)
きたりける。
664
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
丁寧
(
ていねい
)
な
言葉
(
ことば
)
にて、
665
蜈蚣姫
『
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
、
666
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
667
玉治別
(
たまはるわけ
)
様
(
さま
)
、
668
アンボイナ
島
(
たう
)
では
大変
(
たいへん
)
な
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げましたが、
669
どうぞ
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
670
就
(
つ
)
きましては
妾
(
わたし
)
の
娘
(
むすめ
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
魔島
(
またう
)
の
麓
(
ふもと
)
で
船
(
ふね
)
を
破
(
わ
)
り
可哀
(
かあい
)
や
溺死
(
できし
)
を
遂
(
と
)
げました。
671
夫
(
をつと
)
は
今
(
いま
)
は
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
に
居
(
を
)
りますなり。
672
年老
(
としよ
)
つた
妾
(
わたし
)
、
673
夫婦
(
ふうふ
)
別
(
わか
)
れ
別
(
わか
)
れになり、
674
一人
(
ひとり
)
の
娘
(
むすめ
)
には
先立
(
さきだ
)
たれ、
675
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
何
(
なん
)
の
望
(
のぞ
)
みも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
676
どうぞ
今迄
(
いままで
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
海
(
うみ
)
へ
流
(
なが
)
して、
677
どうぞ
妾
(
わたし
)
を
貴方
(
あなた
)
のお
供
(
とも
)
になりと
御
(
お
)
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますまいか。
678
実
(
じつ
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
お
)
心掛
(
こころが
)
け、
679
如何
(
いか
)
な
悪
(
あく
)
に
強
(
つよ
)
い
妾
(
わたし
)
も
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました』
680
と
袖
(
そで
)
に
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
す。
681
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
合掌
(
がつしやう
)
しながら、
682
玉能姫
『
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しまして、
683
老練
(
らうれん
)
な
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
684
どうぞ
宜
(
よろ
)
しく、
685
足
(
た
)
らはぬ
妾
(
わたし
)
の
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
686
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
は
海
(
うみ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
となつたと
仰
(
あふ
)
せられましたが、
687
それは
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なされますな。
688
屹度
(
きつと
)
オーストラリヤの
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
女王
(
ぢよわう
)
となつて、
689
羽振
(
はぶ
)
りを
利
(
き
)
かして
居
(
を
)
られます。
690
妾
(
わたし
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
娘
(
むすめ
)
、
691
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
より
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
の
消息
(
せうそく
)
を
聞
(
き
)
きました。
692
今
(
いま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
を
樹
(
た
)
て
黄竜姫
(
わうれうひめ
)
と
名乗
(
なの
)
つて
立派
(
りつぱ
)
に
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
られます。
693
やがて
芽出
(
めで
)
たく
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
が
出来
(
でき
)
ませう。
694
どうぞ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をなさらぬ
様
(
やう
)
、
695
勇
(
いさ
)
んで
下
(
くだ
)
さいませ』
696
蜈蚣姫
『アヽ
有難
(
ありがた
)
い、
697
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
698
是
(
こ
)
れと
云
(
い
)
ふのも
皆
(
みんな
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
……』
699
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ、
700
直
(
ただち
)
に
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
701
感謝
(
かんしや
)
の
辞
(
じ
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
しけり。
702
高姫
(
たかひめ
)
は
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
したやうな
言葉
(
ことば
)
付
(
つ
)
きで、
703
高姫
『
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
704
どうでお
節
(
せつ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
、
705
当
(
あて
)
にやなりますまいが、
706
仮令
(
たとへ
)
話
(
はなし
)
にせよ、
707
娘
(
むすめ
)
さまに
会
(
あ
)
へると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
をお
聞
(
き
)
きになつたら
嘸
(
さぞ
)
嬉
(
うれ
)
しいでせう。
708
妾
(
わたし
)
も
虚実
(
きよじつ
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
709
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
はふ
国
(
くに
)
、
710
刹那心
(
せつなしん
)
でも
芽出
(
めで
)
たいと
思
(
おも
)
はぬこたアありませぬ。
711
併
(
しか
)
しマア
物
(
もの
)
は
当
(
あた
)
つてみねば
分
(
わか
)
りませぬ。
712
どうも
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
観察
(
くわんさつ
)
では
怪
(
あや
)
しいものだが、
713
折角
(
せつかく
)
そこまでお
前
(
まへ
)
さまが
喜
(
よろこ
)
びて
居
(
を
)
るのだから、
714
妾
(
わたし
)
も
一緒
(
いつしよ
)
にお
付合
(
つきあひ
)
に
喜
(
よろこ
)
びて
置
(
お
)
きませう』
715
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
716
玉治別
『サア
向方
(
むかふ
)
に
見
(
み
)
えるのがニユージランドの
沓島
(
くつじま
)
だ。
717
皆
(
みな
)
さま
少々
(
せうせう
)
波
(
なみ
)
が
荒
(
あら
)
くなるから、
718
其
(
その
)
覚悟
(
かくご
)
して
下
(
くだ
)
さい』
719
(
大正一一・七・三
旧閏五・九
松村真澄
録)
720
此日午前六時二代様三代様も白山、
721
月山に御登山の途に就かるとの電来たる。
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