霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第24巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 流転の涙
01 粉骨砕身
〔731〕
02 唖呍
〔732〕
03 波濤の夢
〔733〕
04 一島の女王
〔734〕
第2篇 南洋探島
05 蘇鉄の森
〔735〕
06 アンボイナ島
〔736〕
07 メラの滝
〔737〕
08 島に訣別
〔738〕
第3篇 危機一髪
09 神助の船
〔739〕
10 土人の歓迎
〔740〕
11 夢の王者
〔741〕
12 暴風一過
〔742〕
第4篇 蛮地宣伝
13 治安内教
〔743〕
14 タールス教
〔744〕
15 諏訪湖
〔745〕
16 慈愛の涙
〔746〕
霊の礎(一〇)
霊の礎(一一)
神諭
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第24巻
> 第3篇 危機一髪 > 第11章 夢の王者
<<< 土人の歓迎
(B)
(N)
暴風一過 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一一章
夢
(
ゆめ
)
の
王者
(
わうじや
)
〔七四一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻
篇:
第3篇 危機一髪
よみ(新仮名遣い):
ききいっぱつ
章:
第11章 夢の王者
よみ(新仮名遣い):
ゆめのおうじゃ
通し章番号:
741
口述日:
1922(大正11)年07月03日(旧閏05月09日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月10日
概要:
舞台:
地恩城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
黄竜姫の奥殿では、蜈蚣姫と小糸姫(黄竜姫)が久しぶりの親子の対面を果たしていた。小糸姫は、今は五十子姫、梅子姫の感化によって神素盞嗚尊の教えを奉じて三五教に帰依していることを明かした。
蜈蚣姫はこの物語に驚いたが、友彦のことを許すかどうかと娘に尋ねた。案に相違して小糸姫は友彦をずっと想っていたと明かし、友彦を城内に迎えるとまた縁りを戻してしまった。
と思いきや、これは友彦の夢であった。友彦は玉治別らと一緒に城外に逃れて茂みの中で寝てしまっていた。寝返りを打ったとたんに二三間下の岩に墜落して、腰をしたたか打ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-08-06 18:32:38
OBC :
rm2411
愛善世界社版:
180頁
八幡書店版:
第4輯 678頁
修補版:
校定版:
185頁
普及版:
84頁
初版:
ページ備考:
001
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
奥殿
(
おくでん
)
には、
002
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
と
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
の
女王
(
ぢよわう
)
なる
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
二人
(
ふたり
)
端坐
(
たんざ
)
して、
003
親娘
(
おやこ
)
再会
(
さいくわい
)
の
悲喜劇
(
ひきげき
)
が
演
(
えん
)
ぜられ
居
(
ゐ
)
たりける。
004
小糸姫
『
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
005
久濶
(
しばらく
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
006
ツイ
幼
(
をさ
)
な
心
(
ごころ
)
に
前後
(
ぜんご
)
の
区別
(
くべつ
)
も
弁
(
わきま
)
へず、
007
卑
(
いや
)
しき
下僕
(
しもべ
)
の
友彦
(
ともひこ
)
に
唆
(
そその
)
かされ、
008
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
様
(
さま
)
を
打
(
う
)
ち
捨
(
す
)
てて
家出
(
いへで
)
を
致
(
いた
)
しました、
009
重々
(
ぢゆうぢゆう
)
不孝
(
ふかう
)
の
罪
(
つみ
)
、
010
お
詫
(
わび
)
の
申
(
まを
)
し
様
(
やう
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
011
何卒
(
どうぞ
)
今迄
(
いままで
)
の
事
(
こと
)
は
憎
(
にく
)
い
奴
(
やつ
)
ぢやと
思召
(
おぼしめ
)
さず、
012
お
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
013
と
下坐
(
げざ
)
に
直
(
なほ
)
つて
悔悟
(
くわいご
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
する。
014
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
015
蜈蚣姫
『
何
(
なん
)
の
何
(
なん
)
の、
016
叱
(
しか
)
りませう。
017
一時
(
ひととき
)
は
両親
(
りやうしん
)
共
(
とも
)
に
大変
(
たいへん
)
な
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
しまして、
018
殆
(
ほとん
)
ど
此
(
この
)
世
(
よ
)
が
厭
(
いや
)
になり、
019
いつそ
夫婦
(
ふうふ
)
の
者
(
もの
)
が
淵川
(
ふちかは
)
へでも
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げて
死
(
し
)
なうかと
迄
(
まで
)
も
悲観
(
ひくわん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
みました。
020
然
(
しか
)
し
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で、
021
淋
(
さび
)
しき
悲
(
かな
)
しき
心
(
こころ
)
にも
一道
(
いちだう
)
の
光明
(
くわうみやう
)
が
輝
(
かがや
)
き
始
(
はじ
)
め
再
(
ふたた
)
び
夫婦
(
ふうふ
)
は
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
022
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
から
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
、
023
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
まで
教線
(
けうせん
)
を
張
(
は
)
り、
024
肺肝
(
はいかん
)
を
砕
(
くだ
)
き
活動
(
くわつどう
)
をして
見
(
み
)
ましたが、
025
如何
(
どう
)
しても
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
行動
(
かうどう
)
が
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
のお
心
(
こころ
)
に
召
(
め
)
さぬと
見
(
み
)
え、
026
する
事
(
こと
)
為
(
な
)
す
事
(
こと
)
、
027
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
と
喰
(
く
)
ひ
違
(
ちが
)
ひ、
028
夫
(
をつと
)
の
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
は
波斯
(
フサ
)
と
印度
(
ツキ
)
との
国境
(
くにざかひ
)
、
029
テルモン
山
(
ざん
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
僅
(
わづか
)
に
教
(
をしへ
)
の
園
(
その
)
を
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひ、
030
妾
(
わたし
)
は
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
駆
(
か
)
け
廻
(
めぐ
)
り、
031
風
(
かぜ
)
の
便
(
たよ
)
りに
其方
(
そなた
)
の
所在
(
ありか
)
を
聞
(
き
)
き
知
(
し
)
り、
032
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
を
越
(
こ
)
えて
漸
(
やうや
)
う
此島
(
ここ
)
に
着
(
つ
)
きました。
033
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
が
聞
(
き
)
かれたなら、
034
嘸
(
さぞ
)
お
喜
(
よろこ
)
びなさる
事
(
こと
)
であらう。
035
まア
立派
(
りつぱ
)
に
成
(
な
)
つて
下
(
くだ
)
さつた。
036
斯様
(
かやう
)
な
大
(
おほ
)
きな
島
(
しま
)
の
女王
(
ぢよわう
)
となる
迄
(
まで
)
には、
037
随分
(
ずゐぶん
)
苦労
(
くらう
)
をなさつたでせう』
038
小糸姫
『イエイエ、
039
尠
(
すこ
)
しも
苦労
(
くらう
)
ナンカ
致
(
いた
)
しませぬ。
040
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
にまかせ、
041
国祖
(
こくそ
)
国治立
(
くにはるたちの
)
尊
(
みこと
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
遊
(
あそ
)
ばす
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じ、
042
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
心
(
こころ
)
とし、
043
焦慮
(
あせ
)
らず
燥
(
さわ
)
がず、
044
人
(
ひと
)
を
憎
(
にく
)
まず
妬
(
ねた
)
まず、
045
心
(
こころ
)
からの
慈愛
(
じあい
)
を
旨
(
むね
)
となし
万民
(
ばんみん
)
に
臨
(
のぞ
)
みました。
046
その
徳
(
とく
)
によつて
此
(
この
)
国
(
くに
)
は
無事
(
ぶじ
)
泰平
(
たいへい
)
に
治
(
をさ
)
まり
果実
(
くわじつ
)
よく
稔
(
みの
)
り、
047
民
(
たみ
)
は
鼓腹
(
こふく
)
撃壤
(
げきじやう
)
、
048
恰
(
あたか
)
も
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
の
昔
(
むかし
)
の
様
(
やう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
049
何卒
(
どうぞ
)
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
050
貴女
(
あなた
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
共
(
とも
)
今迄
(
いままで
)
の
心
(
こころ
)
を
立替
(
たてかへ
)
立直
(
たてなほ
)
し、
051
国祖
(
こくそ
)
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
を
奉体
(
ほうたい
)
し、
052
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つになつて
下
(
くだ
)
さいませ。
053
誠
(
まこと
)
ほど
強
(
つよ
)
いものの
結構
(
けつこう
)
なものは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
054
如何
(
いか
)
なる
敵
(
てき
)
も
赦
(
ゆる
)
すのが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御心
(
みこころ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
055
蜈蚣姫
『いかにも
立派
(
りつぱ
)
なお
心掛
(
こころが
)
け、
056
さうでなくては
結構
(
けつこう
)
なお
道
(
みち
)
は
開
(
ひら
)
けますまい。
057
さうしてお
前様
(
まへさま
)
の
御
(
ご
)
用助
(
ようだす
)
けをする
方
(
かた
)
は
誰方
(
どなた
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
058
小糸姫
『ハイ、
059
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
、
060
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
のバラモンの
本山
(
ほんざん
)
に
御座
(
ござ
)
つた
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
061
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
、
062
それに
付
(
つ
)
き
添
(
そ
)
う
今子姫
(
いまこひめ
)
、
063
宇豆姫
(
うづひめ
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
方々
(
かたがた
)
が、
064
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
神力
(
しんりき
)
を
現
(
あら
)
はし、
065
其
(
その
)
手柄
(
てがら
)
を
皆
(
みんな
)
妾
(
わたし
)
にお
譲
(
ゆづ
)
り
下
(
くだ
)
され、
066
妾
(
わたし
)
を
此
(
この
)
島
(
しま
)
の
女王
(
ぢよわう
)
として
下
(
くだ
)
さつたのです』
067
蜈蚣姫
『
何
(
なに
)
、
068
あの
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
、
069
梅子姫
(
うめこひめ
)
がソンナ
立派
(
りつぱ
)
な
行
(
おこな
)
ひを
致
(
いた
)
しましたか。
070
姉妹
(
きやうだい
)
八
(
はち
)
人
(
にん
)
申
(
まを
)
し
合
(
あは
)
せ、
071
顕恩城
(
けんおんじやう
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
072
大棟梁
(
だいとうりやう
)
様
(
さま
)
の
裏
(
うら
)
をかいて、
073
メチヤメチヤに
叩
(
たた
)
き
壊
(
こは
)
した
悪神
(
あくがみ
)
ではありませぬか』
074
小糸姫
『あの
方々
(
かたがた
)
は
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
娘子
(
むすめご
)
、
075
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
下僕
(
しもべ
)
となつて、
076
バラモン
教
(
けう
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
救
(
すく
)
はむ
為
(
ため
)
に、
077
天降
(
あまくだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたので
御座
(
ござ
)
います。
078
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
く
思
(
おも
)
はれてはなりませぬ。
079
今日
(
こんにち
)
の
処
(
ところ
)
では、
080
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
今子姫
(
いまこひめ
)
と
共
(
とも
)
に
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
聖地
(
せいち
)
へ
指
(
さ
)
してお
帰
(
かへ
)
りになり、
081
只今
(
ただいま
)
は
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
、
082
宇豆姫
(
うづひめ
)
と
共
(
とも
)
に
妾
(
わたし
)
の
日夜
(
にちや
)
の
神政
(
しんせい
)
を
補助
(
ほじよ
)
指導
(
しだう
)
して
下
(
くだ
)
さる、
083
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
なお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
います。
084
何卒
(
どうぞ
)
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
085
一度
(
いちど
)
丁寧
(
ていねい
)
に
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さいませ』
086
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
に
驚
(
おどろ
)
き
舌
(
した
)
を
捲
(
ま
)
き、
087
『ヘーツ』と
言
(
い
)
つたきり
暫時
(
しばし
)
言葉
(
ことば
)
も
出
(
い
)
でず、
088
思案
(
しあん
)
投
(
な
)
げ
首
(
くび
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
したりける。
089
少時
(
しばらく
)
あつて
侍女
(
じぢよ
)
が
運
(
はこ
)
びきたる
豆茶
(
まめちや
)
に
喉
(
のど
)
を
潤
(
うるほ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
090
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
語
(
ご
)
を
次
(
つい
)
で、
091
蜈蚣姫
『お
前様
(
まへさま
)
はそれ
丈
(
だ
)
け
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
の
道
(
みち
)
を
守
(
まも
)
り、
092
結構
(
けつこう
)
な
女王
(
ぢよわう
)
とまで
成
(
な
)
りなさつた
位
(
くらゐ
)
だから、
093
今迄
(
いままで
)
の
如何
(
いか
)
なる
無礼
(
ぶれい
)
を
加
(
くは
)
へた
者
(
もの
)
でも
赦
(
ゆる
)
しませうなア』
094
小糸姫
『ハイ、
095
赦
(
ゆる
)
すの、
096
赦
(
ゆる
)
さぬのと……
左様
(
さやう
)
な
大
(
だい
)
それた……
人間
(
にんげん
)
として
資格
(
しかく
)
は
持
(
も
)
ちませぬ。
097
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
仕組
(
しぐみ
)
ですから……』
098
蜈蚣姫
『
仮令
(
たとへ
)
友彦
(
ともひこ
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
でも、
099
謝
(
あやま
)
つて
来
(
き
)
たならば
貴女
(
あなた
)
は
赦
(
ゆる
)
しますか』
100
小糸姫
『
人間
(
にんげん
)
の
性
(
せい
)
は
善
(
ぜん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
101
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めさへすれば
元
(
もと
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
分霊
(
わけみたま
)
、
102
罪
(
つみ
)
も
穢
(
けがれ
)
も
御座
(
ござ
)
いますまい。
103
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
は
友彦
(
ともひこ
)
をお
怨
(
うら
)
みで
御座
(
ござ
)
いませうが、
104
決
(
けつ
)
して
友彦
(
ともひこ
)
が
悪
(
わる
)
いのでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
105
妾
(
わたし
)
こそ
友彦
(
ともひこ
)
に
対
(
たい
)
して、
106
実
(
じつ
)
に
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しました。
107
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
き、
108
斯様
(
かやう
)
な
結構
(
けつこう
)
な
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
になつたにつけても、
109
明暮
(
あけくれ
)
思
(
おも
)
ふのは
御
(
ご
)
両親
(
りやうしん
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
、
110
次
(
つぎ
)
には
友彦
(
ともひこ
)
の
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
111
寝
(
ね
)
ても
起
(
お
)
きても……アヽ
実
(
じつ
)
に
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
であつた……と
思
(
おも
)
へば
うら
恥
(
はづか
)
しくて
立
(
た
)
つても
居
(
ゐ
)
ても
居
(
を
)
られない
様
(
やう
)
です。
112
何卒
(
どうぞ
)
一度
(
いちど
)
お
目
(
め
)
にかかつてお
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
いもので
御座
(
ござ
)
います。
113
それ
故
(
ゆゑ
)
妾
(
わたし
)
は
貞節
(
ていせつ
)
を
守
(
まも
)
り、
114
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
を
)
ります』
115
と
涙
(
なみだ
)
を
袖
(
そで
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
116
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
はアフンと
許
(
ばか
)
り
呆
(
あき
)
れかへり、
117
蜈蚣姫
『
恋
(
こひ
)
に
上下
(
じやうげ
)
の
隔
(
へだ
)
てなしとは、
118
よくも
言
(
い
)
つたものだな。
119
矢張
(
やは
)
りお
前
(
まへ
)
さまは
友彦
(
ともひこ
)
が
恋
(
こひ
)
しいのですか』
120
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
俯向
(
うつむ
)
いて
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
涙
(
なみだ
)
にかきくれる。
121
蜈蚣姫
『
万々一
(
まんまんいち
)
其
(
その
)
友彦
(
ともひこ
)
が
詐偽師
(
さぎし
)
、
122
大泥棒
(
おほどろばう
)
、
123
人
(
ひと
)
の
嬶
(
かか
)
ア
盗
(
ぬす
)
みをする
悪党
(
あくたう
)
であつたら、
124
お
前
(
まへ
)
さまは
如何
(
どう
)
しますか』
125
小糸姫
『チツトも
構
(
かま
)
ひませぬ。
126
友彦
(
ともひこ
)
さまを
悪人
(
あくにん
)
にしたのも
皆
(
みな
)
妾
(
わたし
)
の
罪
(
つみ
)
、
127
それなれば
尚々
(
なほなほ
)
大切
(
だいじ
)
にして
上
(
あ
)
げねばなりますまい』
128
蜈蚣姫
『ヘエ
左様
(
さやう
)
ですか』
129
と
娘
(
むすめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
訝
(
いぶ
)
かしげに
打
(
う
)
ち
看守
(
みまも
)
る。
130
此
(
この
)
時
(
とき
)
一人
(
ひとり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
慌
(
あわただ
)
しく
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
131
侍女
『
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます。
132
今
(
いま
)
玄関口
(
げんくわんぐち
)
に
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
の
赤
(
あか
)
い、
133
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
い、
134
不細工
(
ぶさいく
)
な
男
(
をとこ
)
が
一人
(
ひとり
)
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
135
……「
俺
(
おれ
)
は
女王
(
ぢよわう
)
の
夫
(
をつと
)
だ、
136
一遍
(
いつぺん
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
に
会
(
あ
)
はせ」……と
呶鳴
(
どな
)
つて
居
(
を
)
りますので、
137
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
どもが、
138
コンナ
気違
(
きちが
)
ひを
寄
(
よ
)
せてはならないと
種々
(
いろいろ
)
と
致
(
いた
)
しますれど、
139
力強
(
ちからづよ
)
の
鼻赤
(
はなあか
)
男
(
をとこ
)
、
140
容易
(
ようい
)
に
治
(
をさ
)
まりませぬ。
141
小糸姫
(
こいとひめ
)
に
告
(
つ
)
げと
許
(
ばか
)
り
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りますが、
142
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませうか』
143
と
聞
(
き
)
くより
小糸姫
(
こいとひめ
)
は
顔色
(
がんしよく
)
をサツと
変
(
へん
)
じ、
144
小糸姫
『
何
(
なに
)
、
145
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
の
赤
(
あか
)
い
男
(
をとこ
)
が、
146
小糸姫
(
こいとひめ
)
に
会
(
あ
)
ひたいと
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ますか。
147
さア
妾
(
わたし
)
も
参
(
まゐ
)
りませう。
148
……
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
149
暫時
(
しばらく
)
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
150
と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
て、
151
侍女
(
じぢよ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
長廊下
(
ながらうか
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
152
表玄関
(
おもてげんくわん
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
153
あとに
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
舌
(
した
)
を
捲
(
ま
)
き、
154
蜈蚣姫
『ナント
強
(
きつ
)
い
惚気
(
のろけ
)
様
(
やう
)
だなア。
155
雀
(
すずめ
)
百
(
ひやく
)
まで
雄鳥
(
をんどり
)
を
忘
(
わす
)
れぬとやら、
156
妾
(
わし
)
も
如何
(
どう
)
やら
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
様
(
さま
)
が
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
されて、
157
お
懐
(
なつか
)
しうなつて
来
(
き
)
たワ』
158
と
四辺
(
あたり
)
に
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
幸
(
さいは
)
ひ、
159
思
(
おも
)
ひのままに
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
160
玄関口
(
げんくわんぐち
)
に
現
(
あら
)
はれた
小糸姫
(
こいとひめ
)
は、
161
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
数多
(
あまた
)
の
下僕
(
しもべ
)
を
手玉
(
てだま
)
にとり
荒
(
あ
)
れ
狂
(
くる
)
ふ
友彦
(
ともひこ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
162
ニコニコし
乍
(
なが
)
ら「
友彦
(
ともひこ
)
殿
(
どの
)
、
163
友彦
(
ともひこ
)
殿
(
どの
)
」と
声
(
こゑ
)
を
掛
(
か
)
けたり。
164
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
友彦
(
ともひこ
)
は
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
165
俄
(
にはか
)
に
襟
(
えり
)
を
繕
(
つくろ
)
ひ
身体
(
からだ
)
の
恰好
(
かつかう
)
を
直
(
なほ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
166
友彦
『やア
小糸姫
(
こいとひめ
)
どの、
167
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りでお
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りました。
168
随分
(
ずゐぶん
)
凄
(
すご
)
い
腕前
(
うでまへ
)
でしたね』
169
小糸姫
『
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
のない
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
170
さア
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
にお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
171
妾
(
わたし
)
がお
手
(
て
)
を
執
(
と
)
つてあげませう』
172
一同
(
いちどう
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
此
(
この
)
行為
(
かうゐ
)
に
呆
(
あき
)
れはて、
173
ポカンとして
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
め
居
(
ゐ
)
たり。
174
友彦
(
ともひこ
)
は
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
握
(
にぎ
)
つた
手
(
て
)
を
打
(
う
)
ち
払
(
はら
)
ひ、
175
友彦
『
滅相
(
めつさう
)
も
無
(
な
)
い、
176
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
至
(
いた
)
らざるなき
恐
(
おそ
)
ろしき
貴女
(
あなた
)
、
177
迂濶
(
うつかり
)
手
(
て
)
でも
引
(
ひ
)
かれ
様
(
やう
)
なものなら
電気
(
でんき
)
にかけられた
様
(
やう
)
に、
178
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
の
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
らねばなりますまい。
179
エー、
180
恐
(
おそ
)
ろしや
恐
(
おそ
)
ろしや
僅
(
わづ
)
か
十六
(
じふろく
)
か
十七
(
じふしち
)
で、
181
コンナ
大
(
おほ
)
きな
島
(
しま
)
の
女王
(
ぢよわう
)
に
成
(
な
)
る
様
(
やう
)
な
腕前
(
うでまへ
)
、
182
活殺
(
くわつさつ
)
自在
(
じざい
)
の
権能
(
けんのう
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
る
貴女
(
あなた
)
、
183
何卒
(
どうぞ
)
生命
(
いのち
)
ばかりは
昔
(
むかし
)
の
交誼
(
よしみ
)
で
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
184
貴女
(
あなた
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
私
(
わたし
)
に
泡
(
あわ
)
を
喰
(
く
)
はせたから、
185
もうあれで
得心
(
とくしん
)
でせう。
186
此
(
この
)
上
(
うへ
)
苛
(
いじ
)
めるのは
胴欲
(
どうよく
)
で
御座
(
ござ
)
います』
187
小糸姫
『
恋
(
こひ
)
しき
友彦
(
ともひこ
)
様
(
さま
)
、
188
何
(
なに
)
御
(
ご
)
冗談
(
じようだん
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますナ。
189
日日
(
ひにち
)
毎日
(
まいにち
)
、
190
夢幻
(
ゆめまぼろし
)
と
貴下
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひつめ、
191
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りました。
192
さア
安心
(
あんしん
)
して
奥
(
おく
)
へ
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
193
母
(
はは
)
の
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
も
奥
(
おく
)
に
休息
(
きうそく
)
して
居
(
を
)
られますから……』
194
友彦
(
ともひこ
)
は
稍
(
やや
)
安心
(
あんしん
)
の
態
(
てい
)
にて、
195
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
を
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
で
隠
(
かく
)
す
様
(
やう
)
にし
乍
(
なが
)
ら、
196
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
細
(
ほそ
)
き
手
(
て
)
に
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
られ
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
197
小糸姫
『
友彦
(
ともひこ
)
さま、
198
アタ
恰好
(
かつかう
)
の
悪
(
わる
)
い、
199
右
(
みぎ
)
のお
手
(
て
)
をソンナ
処
(
ところ
)
へ
当
(
あ
)
てたりして、
200
何
(
なに
)
をなさいます』
201
友彦
『あまり
鼻
(
はな
)
が
赤
(
あか
)
くて
見
(
み
)
つとも
無
(
な
)
う
御座
(
ござ
)
いますから……』
202
小糸姫
『ホヽヽヽヽ、
203
妾
(
わたし
)
は
其
(
その
)
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
が
好
(
す
)
きなのですよ。
204
世界中
(
せかいぢう
)
に
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
の
赤
(
あか
)
い
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
が、
205
さう
沢山
(
たくさん
)
にありますものか、
206
ホヽヽヽヽ』
207
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
208
友彦
(
ともひこ
)
は
嬉
(
うれ
)
しさと
嫌
(
いや
)
らしさと
恥
(
はづか
)
しさが
一
(
ひと
)
つになり、
209
足
(
あし
)
もワナワナ
奥殿
(
おくでん
)
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
210
奥
(
おく
)
の
一室
(
ひとま
)
には
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
211
夫
(
をつと
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
思
(
おも
)
ひやり
眼
(
まなこ
)
を
腫
(
はら
)
して
居
(
ゐ
)
る。
212
其処
(
そこ
)
へ
嫌
(
いや
)
な
嫌
(
いや
)
な
友彦
(
ともひこ
)
の
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へて、
213
嬉
(
うれ
)
しげに
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た
小糸姫
(
こいとひめ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
打
(
う
)
ち
驚
(
おどろ
)
き、
214
蜈蚣姫
『まア、
215
小糸姫
(
こいとひめ
)
様
(
さま
)
、
216
冗談
(
じようだん
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たら
本当
(
ほんたう
)
ですか。
217
アンナ
糞彦
(
くそひこ
)
を
奥殿
(
おくでん
)
へ
引張
(
ひつぱ
)
り
込
(
こ
)
み
遊
(
あそ
)
ばしては、
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
威徳
(
ゐとく
)
に
関
(
かか
)
はりませう。
218
冗談
(
じようだん
)
も
良
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
になさいませ。
219
………これこれ
友彦
(
ともひこ
)
、
220
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
知
(
し
)
らずも
程
(
ほど
)
がある。
221
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
来
(
く
)
る
処
(
ところ
)
ぢやない、
222
さアトツトと
下僕
(
しもべ
)
の
部屋
(
へや
)
へでも
下
(
さが
)
つて
休息
(
きうそく
)
しなされ。
223
何程
(
なにほど
)
小糸姫
(
こいとひめ
)
がお
前
(
まへ
)
に
執着
(
しふちやく
)
されても
肝腎
(
かんじん
)
の
此
(
この
)
親
(
おや
)
が
許
(
ゆる
)
しませぬぞや』
224
小糸姫
『
妾
(
わたし
)
は
肉体
(
にくたい
)
こそ
貴女
(
あなた
)
の
娘
(
むすめ
)
、
225
今
(
いま
)
は
一国
(
いつこく
)
の
権利
(
けんり
)
を
握
(
にぎ
)
る
女王
(
ぢよわう
)
で
御座
(
ござ
)
れば、
226
如何
(
いか
)
に
貴女
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
なりとて
承
(
うけたま
)
はるわけには
参
(
まゐ
)
りませぬ。
227
……
友彦
(
ともひこ
)
様
(
さま
)
、
228
今迄
(
いままで
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
はお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
229
……
母上
(
ははうへ
)
様
(
さま
)
、
230
友彦
(
ともひこ
)
様
(
さま
)
の
今迄
(
いままで
)
の
罪
(
つみ
)
は
許
(
ゆる
)
してやつて
下
(
くだ
)
さい。
231
今日
(
こんにち
)
より
友彦
(
ともひこ
)
様
(
さま
)
を
更
(
あらた
)
めて
妾
(
わたし
)
が
夫
(
をつと
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ、
232
竜頭王
(
りうづわう
)
と
御名
(
みな
)
を
与
(
あた
)
へまする。
233
……いざ
竜頭王
(
りうづわう
)
殿
(
どの
)
、
234
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より
妾
(
わたし
)
は
貴下
(
あなた
)
の
妻
(
つま
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
235
何卒
(
どうぞ
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しまする』
236
友彦
(
ともひこ
)
は
夢
(
ゆめ
)
では
無
(
な
)
いかと
頬
(
ほほ
)
を
抓
(
つめ
)
つて
見
(
み
)
たり、
237
其処
(
そこら
)
四辺
(
あたり
)
を
突
(
つ
)
いて
見
(
み
)
て
茫然
(
ばうぜん
)
として
居
(
ゐ
)
る。
238
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ
梅子姫
(
うめこひめ
)
は
美
(
うつく
)
しき
器
(
うつは
)
に
種々
(
いろいろ
)
の
珍味
(
ちんみ
)
を
盛
(
も
)
り、
239
徐々
(
しづしづ
)
として
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
240
梅子姫
『これはこれは
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
様
(
さま
)
、
241
ようこそ
御
(
お
)
入来
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいました。
242
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りでお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
ります。
243
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
にて、
244
何
(
なに
)
より
大慶
(
たいけい
)
至極
(
しごく
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
245
妾
(
わたし
)
は
顕恩城
(
けんおんじやう
)
に
仕
(
つか
)
へて
居
(
を
)
りました
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
娘
(
むすめ
)
梅子姫
(
うめこひめ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
246
これなる
一人
(
ひとり
)
は
宇豆姫
(
うづひめ
)
と
申
(
まを
)
し、
247
元
(
もと
)
は
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
の
侍女
(
じぢよ
)
、
248
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
眤懇
(
ぢつこん
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
りまする』
249
蜈蚣姫
『
何
(
なん
)
とまア
年
(
とし
)
が
寄
(
よ
)
つた
事
(
こと
)
、
250
如何
(
いか
)
にもお
前
(
まへ
)
さまは
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
に
間違
(
まちが
)
ひは
無
(
な
)
い。
251
意地
(
いぢ
)
の
悪
(
わる
)
さうな
顔
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
ら、
252
ようまア、
253
娘
(
むすめ
)
をここ
迄
(
まで
)
助
(
たす
)
けて
出世
(
しゆつせ
)
をさして
下
(
くだ
)
さいました。
254
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
255
余
(
あま
)
り
偉
(
えら
)
い
出世
(
しゆつせ
)
で、
256
此
(
この
)
親
(
おや
)
もチツト
位
(
くらゐ
)
妬
(
ねた
)
ましうなつた
位
(
くらゐ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
257
あまり
出世
(
しゆつせ
)
をし
過
(
す
)
ぎて、
258
母親
(
ははおや
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
かぬ
様
(
やう
)
になつて
仕舞
(
しま
)
ひました。
259
何卒
(
どうぞ
)
貴女
(
あなた
)
から
一
(
ひと
)
つ
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
遊
(
あそ
)
ばして
下
(
くだ
)
さいませ。
260
小糸姫
(
こいとひめ
)
が
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
我儘者
(
わがままもの
)
になりますのも、
261
温順
(
をんじゆん
)
な
女
(
をんな
)
になりますのも、
262
指導者
(
しだうしや
)
の
感化力
(
かんくわりよく
)
によりますのぢや。
263
貴女
(
あなた
)
から
一
(
ひと
)
つ
淑
(
しと
)
やかになつて、
264
親子
(
おやこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
道
(
みち
)
をお
悟
(
さと
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
265
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
娘
(
むすめ
)
に
意見
(
いけん
)
をして
下
(
くだ
)
さらば、
266
偶
(
たまたま
)
会
(
あ
)
うた
親
(
おや
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
く
従順
(
じうじゆん
)
な
淑女
(
しゆくぢよ
)
になるでせう。
267
それに
何
(
なん
)
ぞや、
268
人
(
ひと
)
もあらうに、
269
鼻赤
(
はなあか
)
の
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
不細工
(
ぶさいく
)
な
性念
(
しようねん
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
を、
270
今日
(
けふ
)
から
竜頭王
(
りうづわう
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ
奉
(
たてまつ
)
るなぞと……ヘン……あまり
呆
(
あき
)
れて
物
(
もの
)
が
言
(
い
)
はれませぬワイなア』
271
と
肩
(
かた
)
をプリンプリンと
大
(
おほ
)
きくシヤクツて、
272
不平
(
ふへい
)
の
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
き
処
(
どこ
)
を
探
(
さが
)
し
居
(
ゐ
)
たり。
273
友彦
『
吾
(
われ
)
は
今日
(
こんにち
)
より
今迄
(
いままで
)
の
友彦
(
ともひこ
)
に
非
(
あら
)
ず。
274
オーストラリヤの
女王
(
ぢよわう
)
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
が
夫
(
をつと
)
、
275
竜頭王
(
りうづわう
)
で
御座
(
ござ
)
る。
276
此
(
この
)
国
(
くに
)
の
権利
(
けんり
)
は
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
掌握
(
しやうあく
)
致
(
いた
)
したれば、
277
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
指図
(
さしづ
)
に
任
(
まか
)
せ、
278
慎
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ
凡
(
すべ
)
ての
行動
(
かうどう
)
を
執
(
と
)
つたがよからう』
279
と
初
(
はじ
)
めて
王者
(
わうじや
)
振
(
ぶ
)
りを
発揮
(
はつき
)
し、
280
恥
(
はづか
)
し
相
(
さう
)
に
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
宣示
(
せんじ
)
したり。
281
蜈蚣姫
『ヘン、
282
友彦
(
ともひこ
)
さま、
283
措
(
お
)
来
(
き
)
なさいませ。
284
何程
(
なにほど
)
竜宮島
(
りうぐうじま
)
の
権利
(
けんり
)
を
握
(
にぎ
)
つたと
言
(
い
)
つても、
285
妾
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
しては
効力
(
かうりよく
)
はありますまい。
286
妾
(
わたし
)
は
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
母
(
はは
)
ですよ。
287
謂
(
い
)
はばお
前
(
まへ
)
さまの
義理
(
ぎり
)
の
母
(
はは
)
ですよ。
288
何程
(
なにほど
)
主権者
(
しゆけんしや
)
になつたと
言
(
い
)
つても、
289
親
(
おや
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
背
(
そむ
)
く
訳
(
わけ
)
には
往
(
ゆ
)
きますまい。
290
友彦
(
ともひこ
)
さま、
291
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
きませうかい』
292
と
嫉妬
(
しつと
)
と
軽侮
(
けいぶ
)
とゴツチヤ
交
(
ま
)
ぜにして、
293
鼻息
(
はないき
)
荒
(
あら
)
く
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずに
立膝
(
たてひざ
)
になり、
294
友彦
(
ともひこ
)
の
面部
(
めんぶ
)
を
睨
(
にら
)
みつめて
居
(
ゐ
)
る。
295
一座
(
いちざ
)
白
(
しら
)
けきつた
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
ま
を
持
(
も
)
たさむと、
296
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
手
(
て
)
を
執
(
と
)
り、
297
宇豆姫
『さア、
298
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
299
此方
(
こちら
)
に
風景
(
ふうけい
)
の
佳
(
い
)
い
立派
(
りつぱ
)
な
居間
(
ゐま
)
が
御座
(
ござ
)
います。
300
先
(
ま
)
づ
悠
(
ゆつく
)
りと
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
下
(
くだ
)
さいませ。
301
お
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
302
蜈蚣姫
『ハイハイ、
303
有難
(
ありがた
)
う。
304
若
(
わか
)
い
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
側
(
そば
)
に
皺苦茶
(
しわくちや
)
婆
(
ばば
)
アが
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
坐
(
すわ
)
つて
居
(
を
)
るのは、
305
お
座
(
ざ
)
が
白
(
しら
)
けませう。
306
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
損
(
そこ
)
ねてもなりませぬから、
307
それならば
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
此処
(
ここ
)
を
一先
(
ひとま
)
づ
立退
(
たちの
)
きませう。
308
これこれ
友彦
(
ともひこ
)
……オツト ドツコイ……
竜頭王
(
りうづわう
)
様
(
さま
)
、
309
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
、
310
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
仲
(
なか
)
よう
天下
(
てんか
)
の
経綸
(
けいりん
)
を
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
遊
(
あそ
)
ばせ。
311
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
になるといけませぬから、
312
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かして
風景
(
ふうけい
)
の
佳
(
い
)
い
処
(
ところ
)
で、
313
お
茶
(
ちや
)
なつと
一杯
(
いつぱい
)
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しませう』
314
と
言葉
(
ことば
)
をシヤクリ
乍
(
なが
)
ら、
315
畳触
(
たたみざは
)
り
荒
(
あら
)
く
身体
(
からだ
)
をピンピンと
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
りつつ、
316
一間
(
ひとま
)
の
内
(
うち
)
へ
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
317
後
(
あと
)
に
二人
(
ふたり
)
は、
318
互
(
たがひ
)
に
一別
(
いちべつ
)
以来
(
いらい
)
の
経路
(
けいろ
)
を
語
(
かた
)
り、
319
身
(
み
)
の
失敗談
(
しつぱいだん
)
を
打明
(
うちあ
)
け、
320
夕立雲
(
ゆふだちぐも
)
の
霽
(
は
)
れたる
如
(
ごと
)
く
再
(
ふたた
)
び
旧
(
もと
)
の
割
(
わり
)
なき
仲
(
なか
)
となりにける。
321
○
322
折
(
をり
)
から
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
烈風
(
れつぷう
)
に
竜頭王
(
りうづわう
)
の
安坐
(
あんざ
)
せる
高殿
(
たかどの
)
は
吹
(
ふ
)
き
倒
(
たふ
)
され、
323
バチバチガタガタと
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みじん
)
に
打
(
う
)
ち
砕
(
くだ
)
かれ、
324
身
(
み
)
は
高処
(
かうしよ
)
より
材木
(
ざいもく
)
の
破片
(
はへん
)
と
共
(
とも
)
に
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
み、
325
ハツト
驚
(
おどろ
)
きの
目
(
め
)
を
覚
(
さま
)
せば、
326
……
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
327
城外
(
じやうぐわい
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みに、
328
友彦
(
ともひこ
)
は
数多
(
あまた
)
の
下僕
(
しもべ
)
等
(
ら
)
に
舁
(
か
)
つぎ
出
(
いだ
)
され
捨
(
す
)
てられ
乍
(
なが
)
ら
疲
(
つか
)
れ
果
(
は
)
ててつい
熟睡
(
じゆくすゐ
)
し、
329
寝返
(
ねがへ
)
り
打
(
う
)
つた
途端
(
とたん
)
に
二三間
(
にさんげん
)
下
(
した
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
へ
墜落
(
つゐらく
)
し、
330
腰
(
こし
)
をしたたか
打
(
う
)
ち
居
(
ゐ
)
たりける。
331
(
大正一一・七・三
旧閏五・九
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 土人の歓迎
(B)
(N)
暴風一過 >>>
霊界物語
>
第24巻
> 第3篇 危機一髪 > 第11章 夢の王者
Tweet
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【11 夢の王者|第24巻(亥の巻)|霊界物語/rm2411】
合言葉「みろく」を入力して下さい→