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第10巻(酉の巻)
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第13巻(子の巻)
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天祥地瑞
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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第24巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 流転の涙
01 粉骨砕身
〔731〕
02 唖呍
〔732〕
03 波濤の夢
〔733〕
04 一島の女王
〔734〕
第2篇 南洋探島
05 蘇鉄の森
〔735〕
06 アンボイナ島
〔736〕
07 メラの滝
〔737〕
08 島に訣別
〔738〕
第3篇 危機一髪
09 神助の船
〔739〕
10 土人の歓迎
〔740〕
11 夢の王者
〔741〕
12 暴風一過
〔742〕
第4篇 蛮地宣伝
13 治安内教
〔743〕
14 タールス教
〔744〕
15 諏訪湖
〔745〕
16 慈愛の涙
〔746〕
霊の礎(一〇)
霊の礎(一一)
神諭
余白歌
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> 第4篇 蛮地宣伝 > 第14章 タールス教
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第一四章 タールス
教
(
けう
)
〔七四四〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
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主な登場人物
[?]
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備考:
タグ:
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データ最終更新日:
OBC :
rm2414
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
合点
(
がてん
)
ゆかず、
002
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
押出
(
おしだ
)
され
天然
(
てんねん
)
の
岩
(
いは
)
の
鏡
(
かがみ
)
に
向
(
むか
)
つて
吾
(
わが
)
鼻
(
はな
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
たるに、
003
鼻
(
はな
)
は
不細工
(
ぶさいく
)
に
膨
(
ふく
)
れ
上
(
あが
)
り、
004
熟
(
じゆく
)
した
紫葡萄
(
むらさきぶだう
)
の
様
(
やう
)
な
色
(
いろ
)
になり
居
(
ゐ
)
たりける。
005
玉治別
『ヤア、
006
是
(
これ
)
で
読
(
よ
)
めた。
007
真黒
(
まつくろ
)
ケの
此
(
この
)
鼻
(
はな
)
では、
008
テールス
姫
(
ひめ
)
さまも……エツパエツパ……と
仰有
(
おつしや
)
つた
筈
(
はず
)
だ。
009
イーエス イーエス……と
仰有
(
おつしや
)
るのも
尤
(
もつと
)
もだ。
010
エヽ
残念
(
ざんねん
)
な……どうぞして
此
(
この
)
鼻
(
はな
)
が
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
りになれば、
011
も
一
(
ひと
)
つ
揶揄
(
からか
)
つて
友彦
(
ともひこ
)
の
慢心
(
まんしん
)
せぬ
様
(
やう
)
に
戒
(
いまし
)
めてやるのだが、
012
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
聞
(
きこ
)
えませぬワイ。
013
到頭
(
たうとう
)
残念
(
ざんねん
)
乍
(
なが
)
ら
大失敗
(
だいしつぱい
)
かな。
014
それは
如何
(
どう
)
でも
宜
(
い
)
いが、
015
数多
(
あまた
)
の
土人
(
どじん
)
が
折角
(
せつかく
)
尊敬
(
そんけい
)
して
呉
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
たのに
如何
(
どう
)
して
此
(
この
)
面
(
つら
)
が
向
(
む
)
けられよう……アヽ
天教山
(
てんけうざん
)
に
在
(
ま
)
します
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
016
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
花
(
はな
)
の
黒
(
くろ
)
いのをお
癒
(
なほ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
017
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
018
はな
は
桜木
(
さくらぎ
)
、
019
人
(
ひと
)
は
武士
(
ぶし
)
、
020
名
(
な
)
を
後
(
のち
)
の
世
(
よ
)
に
穢
(
けが
)
さぬ
様
(
やう
)
に、
021
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
さま
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
022
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
暫時
(
しばらく
)
の
間
(
あひだ
)
、
023
赤
(
あか
)
い
はな
を
持
(
も
)
たせて
下
(
くだ
)
さいませ』
024
と
一心
(
いつしん
)
に
念
(
ねん
)
じた。
025
不思議
(
ふしぎ
)
や
葡萄
(
ぶだう
)
の
様
(
やう
)
な
鼻
(
はな
)
の
色
(
いろ
)
はサツと
除
(
と
)
れ、
026
一層
(
いつそう
)
麗
(
うるは
)
しき
鮮紅色
(
せんこうしよく
)
の
鼻
(
はな
)
となつて
仕舞
(
しま
)
つた。
027
玉治別
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
028
早速
(
さつそく
)
お
聞
(
き
)
き
届
(
とど
)
け
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
029
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
030
もう
友彦
(
ともひこ
)
の
膏
(
あぶら
)
は
取
(
と
)
りませぬ。
031
之
(
これ
)
から
私
(
わたくし
)
は
此処
(
ここ
)
を
立去
(
たちさ
)
つて
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
進
(
すす
)
み、
032
次
(
つぎ
)
の
部落
(
ぶらく
)
を
宣伝
(
せんでん
)
します』
033
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
034
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
へ
悠々
(
いういう
)
と
下
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
た。
035
チーチヤーボールは
又
(
また
)
もや
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
打驚
(
うちおどろ
)
き、
036
チーチヤーボール
『ボース ボース、
037
チユーチ チユーチ、
038
チーリスタン、
039
ポーリンス、
040
テーク テーク、
041
オツポツポ オツポツポ』
042
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
恐
(
こわ
)
相
(
さう
)
に
後退
(
あとしざ
)
りする。
043
此
(
この
)
意味
(
いみ
)
は、
044
『
此
(
この
)
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
か
悪魔
(
あくま
)
か、
045
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
大化物
(
おほばけもの
)
だ。
046
迂濶
(
うつかり
)
して
居
(
を
)
ると
如何
(
どん
)
な
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
るか
知
(
し
)
れぬ……
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
、
047
用心
(
ようじん
)
せい。
048
さうして
皆々
(
みなみな
)
、
049
お
詫
(
わび
)
をせい』
050
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
である。
051
一同
(
いちどう
)
はチーチヤーボールの
言葉
(
ことば
)
に
頭
(
かしら
)
を
大地
(
だいち
)
につけ、
052
一同
『プースー プースー』
053
と
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
謝
(
あやま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
054
「プースー」と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は「お
許
(
ゆる
)
し」と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
である。
055
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
口
(
くち
)
から
出放題
(
ではうだい
)
に、
056
玉治別
『トーリンボース トーリンボース』
057
と
言
(
い
)
つた。
058
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
した
)
に
足
(
あし
)
を
上
(
うへ
)
にノタノタと
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
した。
059
中心
(
ちうしん
)
を
失
(
うしな
)
つて
何
(
ど
)
れも
是
(
これ
)
もバタバタと
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
倒
(
たふ
)
れて
仕舞
(
しま
)
つた。
060
玉治別
『クース、
061
リヤー、
062
ポール、
063
ストン』
064
と
出放題
(
ではうだい
)
を
言
(
い
)
つて
見
(
み
)
た。
065
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
は、
066
『
皆
(
みな
)
さま
許
(
ゆる
)
して
上
(
あ
)
げますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさい』
067
と
言
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
に
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
になつて
居
(
ゐ
)
たのである。
068
一同
(
いちどう
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて「ウワーウワー」と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
胴上
(
どうあ
)
げし「エツサーエツサー」と
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
一
(
いち
)
里
(
り
)
ばかり
山道
(
やまみち
)
を
送
(
おく
)
り、
069
谷
(
たに
)
一
(
ひと
)
つ
向
(
むか
)
ふへ
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
でも
送
(
おく
)
る
様
(
やう
)
にして
送
(
おく
)
りつけ、
070
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
鬨
(
とき
)
を
作
(
つく
)
つて
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
071
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
後見送
(
あとみおく
)
つて、
072
玉治別
『
何
(
なん
)
だ、
073
薩張
(
さつぱ
)
り
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬ。
074
まるで
疱瘡神
(
はうそうがみ
)
でも
送
(
おく
)
る
様
(
やう
)
にしやがつた。
075
余程
(
よほど
)
俺
(
おれ
)
が
恐
(
こわ
)
かつたと
見
(
み
)
えるワイ、
076
アハヽヽヽ。
077
……
時
(
とき
)
に
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
、
078
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
は
何方
(
どちら
)
へお
行
(
ゆ
)
きなされたらう。
079
洒落
(
しやれ
)
どころの
話
(
はなし
)
ぢやない。
080
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
おん
)
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
さねば
申訳
(
まをしわけ
)
が
無
(
な
)
い』
081
と
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
082
其処
(
そこ
)
へガサガサと
足音
(
あしおと
)
をさせ
乍
(
なが
)
ら
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
きた
)
るものがある。
083
見
(
み
)
れば
大
(
だい
)
なる
白狐
(
びやくこ
)
であつた。
084
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
白狐
(
びやくこ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
085
玉治別
『やア
貴方
(
あなた
)
は
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
眷属
(
けんぞく
)
月日
(
つきひ
)
明神
(
みやうじん
)
様
(
さま
)
、
086
ようこそ
御
(
お
)
いで
下
(
くだ
)
さいました。
087
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
088
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
の
所在
(
ありか
)
をお
知
(
し
)
らせ
下
(
くだ
)
さいませ』
089
白狐
(
びやくこ
)
は
無言
(
むごん
)
のまま、
090
打頷
(
うちうなづ
)
き
尾
(
を
)
を
二三遍
(
にさんぺん
)
左右
(
さいう
)
に
掉
(
ふ
)
り、
091
ノソノソと
歩
(
あゆ
)
み
出
(
だ
)
した。
092
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
白狐
(
びやくこ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
093
樹木
(
じゆもく
)
茂
(
しげ
)
れる
山林
(
さんりん
)
の
中
(
なか
)
を
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
小柴
(
こしば
)
を
分
(
わ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
094
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せな
)
を
踏
(
ふ
)
み
越
(
こ
)
え
或
(
あるひ
)
は
跨
(
また
)
げ、
095
二三
(
にさん
)
里
(
り
)
ばかり
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
随
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
096
谷
(
たに
)
の
底
(
そこ
)
に
幽
(
かすか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
、
097
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
まして
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
れば
確
(
たしか
)
に
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
098
玉能姫
(
たまのひめ
)
の
声
(
こゑ
)
の
様
(
やう
)
であつた。
099
念
(
ねん
)
の
為
(
た
)
めと
再
(
ふたた
)
び
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いで
声
(
こゑ
)
の
所在
(
ありか
)
を
確
(
たしか
)
めた
上
(
うへ
)
、
100
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
けば
白狐
(
びやくこ
)
の
姿
(
すがた
)
は
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
もなくなり
居
(
ゐ
)
たりけり。
101
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
谷底
(
たにそこ
)
の
声
(
こゑ
)
をしるべに
草
(
くさ
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
け
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
102
不思議
(
ふしぎ
)
や
今迄
(
いままで
)
聞
(
きこ
)
えた
声
(
こゑ
)
はピタリと
止
(
と
)
まり、
103
谷川
(
たにがは
)
の
岩
(
いは
)
に
打
(
ぶつ
)
かかる
水音
(
みづおと
)
のみ
囂々
(
がうがう
)
と
聞
(
きこ
)
え、
104
雪
(
ゆき
)
の
如
(
ごと
)
き
飛沫
(
ひまつ
)
を
飛
(
と
)
ばして
居
(
ゐ
)
るのみで、
105
人
(
ひと
)
の
影
(
かげ
)
らしきもの
少
(
すこ
)
しも
見当
(
みあ
)
たらない。
106
谷川
(
たにがは
)
の
上流
(
じやうりう
)
下流
(
かりう
)
を
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに、
107
玉治別
『
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
、
108
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
』
109
と
呼
(
よ
)
ばはりつつ
捜索
(
そうさく
)
すれども
何
(
なん
)
の
応答
(
いらへ
)
もなく、
110
谷川
(
たにがは
)
の
水音
(
みづおと
)
に
加
(
くは
)
へて
猛獣
(
まうじう
)
の
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
、
111
刻々
(
こくこく
)
に
烈
(
はげ
)
しく
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
112
谷川
(
たにがは
)
の
彼方
(
あなた
)
を
見
(
み
)
れば
蜿蜒
(
えんえん
)
たる
大蛇
(
だいじや
)
、
113
鎌首
(
かまくび
)
を
立
(
た
)
て
三四
(
さんし
)
尺
(
しやく
)
もあらむと
思
(
おも
)
はるる
舌
(
した
)
をペロペロと
出
(
だ
)
し、
114
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
睨
(
にら
)
みつけて
居
(
ゐ
)
る。
115
玉治別
『ヤア、
116
大変
(
たいへん
)
な
太
(
ふと
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
117
確
(
たしか
)
に
此処
(
ここ
)
にお
二人
(
ふたり
)
の
声
(
こゑ
)
がして
居
(
ゐ
)
た
筈
(
はず
)
だが、
118
大方
(
おほかた
)
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
119
呑
(
の
)
んで
仕舞
(
しま
)
ひやがつたのだらう。
120
アヽ
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
をした。
121
友彦
(
ともひこ
)
等
(
ら
)
を
面白
(
おもしろ
)
半分
(
はんぶん
)
揶揄
(
からか
)
つて
居
(
ゐ
)
た
天罰
(
てんばつ
)
で
遅
(
おそ
)
くなつたか。
122
も
一歩
(
ひとあし
)
早
(
はや
)
かりせば、
123
お
二人
(
ふたり
)
をヤミヤミと
蛇腹
(
じやふく
)
に
葬
(
はうむ
)
るのではなかつたのに、
124
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
には……
油断
(
ゆだん
)
は
大敵
(
たいてき
)
、
125
一寸
(
ちよつと
)
の
間
(
ま
)
も
油断
(
ゆだん
)
を
致
(
いた
)
すな、
126
改心
(
かいしん
)
の
上
(
うへ
)
にも
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して、
127
一呼吸
(
ひといき
)
の
間
(
ま
)
も
神
(
かみ
)
を
忘
(
わす
)
れな、
128
慢心
(
まんしん
)
は
大怪我
(
おほけが
)
の
基
(
もと
)
だ……と
戒
(
いまし
)
められてある。
129
我々
(
われわれ
)
も
日々
(
にちにち
)
口癖
(
くちぐせ
)
の
様
(
やう
)
に
世人
(
せじん
)
に
向
(
むか
)
つて……
慢心
(
まんしん
)
をすな、
130
改心
(
かいしん
)
をせよ……と
言
(
い
)
つて
宣伝
(
せんでん
)
に
廻
(
まは
)
つたが、
131
遂
(
つい
)
には
無意識
(
むいしき
)
的
(
てき
)
に
蓄音機
(
ちくおんき
)
の
様
(
やう
)
に
出
(
で
)
る
様
(
やう
)
になつて、
132
言葉
(
ことば
)
ばかり
立派
(
りつぱ
)
で
魂
(
たましひ
)
が
脱
(
ぬ
)
けて
居
(
を
)
つた。
133
それだからコンナ
失敗
(
しつぱい
)
を
演
(
えん
)
じたのだ。
134
エヽ
憎
(
につく
)
き
大蛇
(
だいじや
)
の
奴
(
やつ
)
、
135
……
否々
(
いやいや
)
決
(
けつ
)
して
大蛇
(
だいじや
)
が
悪
(
わる
)
いのではない。
136
彼奴
(
あいつ
)
は
所在
(
あらゆる
)
生物
(
せいぶつ
)
を
呑
(
の
)
むのが
商売
(
しやうばい
)
だ、
137
生物
(
いきもの
)
を
呑
(
の
)
んで
天寿
(
てんじゆ
)
を
保
(
たも
)
つ
代物
(
しろもの
)
だから
大蛇
(
だいじや
)
を
怨
(
うら
)
めるのは
我々
(
われわれ
)
の
見当
(
けんたう
)
違
(
ちが
)
ひ、
138
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
、
139
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
も
矢張
(
やつぱ
)
り
注意
(
ちゆうい
)
が
足
(
た
)
らなかつたのだ。
140
みすみす
二人
(
ふたり
)
を
呑
(
の
)
んだ
大蛇
(
だいじや
)
を
前
(
まへ
)
に
見
(
み
)
ながら
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
たずに
帰
(
かへ
)
らねばならぬのか。
141
最早
(
もはや
)
大蛇
(
だいじや
)
を
殺
(
ころ
)
して、
142
無念
(
むねん
)
を
晴
(
は
)
らして
見
(
み
)
た
処
(
ところ
)
が、
143
お
二人
(
ふたり
)
の
生命
(
いのち
)
が
助
(
たす
)
かると
言
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
でもなし、
144
要
(
い
)
らざる
殺生
(
せつしやう
)
をするよりも
此
(
この
)
実地
(
じつち
)
教訓
(
けうくん
)
を
玉治別
(
たまはるわけ
)
が
胸
(
むね
)
に
畳
(
たた
)
み
込
(
こ
)
み、
145
之
(
これ
)
から
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
、
146
生命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
三人分
(
さんにんぶん
)
の
活動
(
くわつどう
)
をして
見
(
み
)
よう。
147
さうすればお
二人
(
ふたり
)
の
心
(
こころ
)
を
慰
(
なぐさ
)
むる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るであらう』
148
と
独語
(
ひとりご
)
ちつつ
谷
(
たに
)
の
傍
(
かたはら
)
に
立
(
た
)
つて
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
149
大蛇
(
をろち
)
に
向
(
むか
)
つて
鎮魂
(
ちんこん
)
を
施
(
ほどこ
)
し、
150
玉治別
『
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く………
大本皇
(
おほもとすめ
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
151
大蛇
(
をろち
)
の
罪
(
つみ
)
を
御
(
お
)
宥
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
152
早
(
はや
)
く
人間界
(
にんげんかい
)
へ
生
(
うま
)
れさしてやつて
下
(
くだ
)
さいませ』
153
と
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らす。
154
大蛇
(
をろち
)
は
両眼
(
りやうがん
)
より
涙
(
なみだ
)
をポロポロと
流
(
なが
)
し、
155
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
向
(
むか
)
つて
頭
(
かうべ
)
を
下
(
さ
)
げ
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
156
悠々
(
いういう
)
として
嶮
(
けは
)
しき
岩山
(
いはやま
)
を
上
(
のぼ
)
り、
157
遂
(
つい
)
に
其
(
その
)
長大
(
ちやうだい
)
なる
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しけり。
158
俄
(
にはか
)
に
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
に
当
(
あた
)
つて
数多
(
あまた
)
の
足音
(
あしおと
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
159
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
不図
(
ふと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り
見
(
み
)
れば、
160
猩々
(
しやうじやう
)
の
群
(
むれ
)
の
数十匹
(
すうじつひき
)
、
161
中
(
なか
)
には
赤児
(
あかご
)
を
抱
(
いだ
)
き
乳
(
ちち
)
を
含
(
ふく
)
ませ
乍
(
なが
)
ら、
162
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る。
163
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
した。
164
猩々
(
しやうじやう
)
の
群
(
むれ
)
は
各々
(
おのおの
)
跪
(
ひざまづ
)
き、
165
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ「キヤア キヤア」と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
166
感謝
(
かんしや
)
するものの
如
(
ごと
)
くであつた。
167
猩々
(
しやうじやう
)
の
中
(
なか
)
より
最
(
もつと
)
も
勝
(
すぐ
)
れて
大
(
だい
)
なるもの
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
手
(
て
)
をつき
乍
(
なが
)
ら
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
168
背
(
せな
)
に
無理
(
むり
)
に
負
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
169
嶮
(
けは
)
しき
道
(
みち
)
を
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
くに
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
170
数多
(
あまた
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
負
(
お
)
はれたる
後
(
うしろ
)
より
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
る。
171
此
(
この
)
時
(
とき
)
、
172
山岳
(
さんがく
)
も
崩
(
くづ
)
るるばかりの
大音響
(
だいおんきやう
)
聞
(
きこ
)
え、
173
周囲
(
しうゐ
)
三四丈
(
さんしじやう
)
ばかり、
174
長
(
なが
)
さ
五六十
(
ごろくじつ
)
間
(
けん
)
もあらむと
思
(
おも
)
ふ
太刀肌
(
たちはだ
)
の
大蛇
(
だいじや
)
、
175
尻尾
(
しつぽ
)
に
鋭利
(
えいり
)
なる
剣
(
つるぎ
)
を
光
(
ひか
)
らせ
乍
(
なが
)
ら、
176
玉治別
(
たまはるわけ
)
が
端坐
(
たんざ
)
し
居
(
ゐ
)
たりし
谷川
(
たにがは
)
を
一瀉
(
いつしや
)
千里
(
せんり
)
の
勢
(
いきほひ
)
にて
囂々
(
がうがう
)
と
音
(
おと
)
させ
乍
(
なが
)
ら、
177
ネルソン
山
(
ざん
)
の
方
(
はう
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
178
若
(
も
)
し
猩々
(
しやうじやう
)
の
助
(
たす
)
けなかりせば、
179
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
生命
(
いのち
)
は
如何
(
いかが
)
なりしか
殆
(
ほとん
)
ど
計
(
はか
)
り
知
(
し
)
れざる
破目
(
はめ
)
に
陥
(
おちい
)
つたであらう。
180
猩々
(
しやうじやう
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
ひ、
181
谷
(
たに
)
を
幾
(
いく
)
つとなく
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え、
182
或
(
ある
)
高山
(
かうざん
)
の
山腹
(
さんぷく
)
の
稍
(
やや
)
平坦
(
へいたん
)
なる
地点
(
ちてん
)
に
導
(
みちび
)
きドツカと
下
(
おろ
)
した。
183
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
猩々
(
しやうじやう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
184
玉治別
『アヽ
何
(
いづ
)
れの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
185
危
(
あやふ
)
き
処
(
ところ
)
をよくもお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいました。
186
お
礼
(
れい
)
には
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
致
(
いた
)
しませう』
187
と
猩々
(
しやうじやう
)
の
群
(
むれ
)
に
向
(
むか
)
つて、
188
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
189
指頭
(
しとう
)
より
霊光
(
れいくわう
)
を
発射
(
はつしや
)
した。
190
さしも
多数
(
たすう
)
の
猩々
(
しやうじやう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
霊光
(
れいくわう
)
に
照
(
てら
)
され、
191
烟
(
けむり
)
の
如
(
ごと
)
く
消
(
き
)
えて
仕舞
(
しま
)
つた。
192
一塊
(
いつくわい
)
の
白煙
(
はくえん
)
は
其処
(
そこ
)
より
立昇
(
たちのぼ
)
るよと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
193
美
(
うるは
)
しき
一人
(
ひとり
)
の
女神
(
めがみ
)
、
194
ニコニコし
乍
(
なが
)
ら
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
近
(
ちか
)
より
来
(
きた
)
り、
195
両手
(
りやうて
)
をつかへ、
196
女神
『
妾
(
わらは
)
は
猩々
(
しやうじやう
)
の
精
(
せい
)
で
御座
(
ござ
)
います。
197
折角
(
せつかく
)
人間
(
にんげん
)
の
姿
(
すがた
)
に
生
(
うま
)
れ
乍
(
なが
)
ら
斯様
(
かやう
)
な
浅間
(
あさま
)
しき
言葉
(
ことば
)
も
通
(
つう
)
ぜぬ
獣
(
けもの
)
と
生
(
うま
)
れ、
198
身
(
み
)
の
不幸
(
ふかう
)
を
嘆
(
なげ
)
いて
居
(
を
)
りました。
199
然
(
しか
)
るに
有難
(
ありがた
)
き
尊
(
たふと
)
き
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
き、
200
我々
(
われわれ
)
は
之
(
これ
)
にて
人間
(
にんげん
)
に
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
り、
201
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
た
)
めに
大活動
(
だいくわつどう
)
を
致
(
いた
)
します。
202
さうして
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
探
(
たづ
)
ね
遊
(
あそ
)
ばす
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
203
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
でいらつしやいます、
204
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
205
軈
(
やが
)
てお
会
(
あ
)
ひになる
時
(
とき
)
があるでせう。
206
此
(
この
)
先
(
さき
)
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いませうとも、
207
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな』
208
と
言
(
い
)
ふかと
見
(
み
)
れば、
209
姿
(
すがた
)
は
消
(
き
)
えて
白煙
(
はくえん
)
も
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
薄
(
うす
)
れゆき、
210
遂
(
つい
)
には
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
も
見
(
み
)
えなくなつた。
211
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
居
(
ゐ
)
た。
212
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
の
森林
(
しんりん
)
より
忽
(
たちま
)
ち
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
十四五
(
じふしご
)
人
(
にん
)
の
文身
(
いれずみ
)
した
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
、
213
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るなり、
214
男
『ウツポツポ ウツポツポ、
215
ホーレンス、
216
サーチライス』
217
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せて
拝
(
をが
)
み
倒
(
たふ
)
す。
218
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
にて、
219
玉治別
『……ハヽア
又
(
また
)
……サーチライス………だな。
220
俺
(
おれ
)
の
鼻
(
はな
)
が
赤
(
あか
)
くなつたので、
221
友彦
(
ともひこ
)
の
二代目
(
にだいめ
)
にして
呉
(
く
)
れるのかな。
222
然
(
しか
)
し
如何
(
どん
)
な
別嬪
(
べつぴん
)
が
居
(
を
)
つても、
223
俺
(
おれ
)
には
国依別
(
くによりわけ
)
の
妹
(
いもうと
)
のお
勝
(
かつ
)
と
言
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
女房
(
にようばう
)
が
国許
(
くにもと
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るのだから、
224
そんな
巫山戯
(
ふざけ
)
た
真似
(
まね
)
は
出来
(
でき
)
ないし、
225
有難
(
ありがた
)
迷惑
(
めいわく
)
だ。
226
然
(
しか
)
し
大将
(
たいしやう
)
は
女
(
をんな
)
ばかりに
限
(
かぎ
)
らない。
227
ひよつとしたら
此
(
この
)
棟梁
(
とうりやう
)
は
男
(
をとこ
)
かも
知
(
し
)
れない、
228
さうすれば
大変
(
たいへん
)
に
都合
(
つがふ
)
が
好
(
い
)
いがな………』
229
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
230
玉治別
『
我
(
われ
)
こそは
天教山
(
てんけうざん
)
に
在
(
ま
)
します、
231
神
(
かむ
)
伊弉諾
(
いざなぎの
)
大神
(
おほかみ
)
の
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
木花姫
(
このはなひめの
)
命
(
みこと
)
であるぞ』
232
と
赤
(
あか
)
い
鼻
(
はな
)
を
指
(
ゆび
)
で
抑
(
おさ
)
へて
見
(
み
)
せた。
233
一同
(
いちどう
)
は「ウワーウワー」と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
234
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
せる
様
(
やう
)
に
大切
(
たいせつ
)
にし
乍
(
なが
)
ら、
235
土
(
つち
)
も
踏
(
ふ
)
まさず
丁寧
(
ていねい
)
に
身体
(
からだ
)
を
持
(
も
)
ち
上
(
あ
)
げ、
236
傍
(
かたはら
)
の
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
をパツと
開
(
ひら
)
いて
蟻
(
あり
)
が
蚯蚓
(
みみず
)
を
引込
(
ひきこ
)
む
様
(
やう
)
な
調子
(
てうし
)
で
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
く
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
く。
237
二三丁
(
にさんちやう
)
ばかり
隧道
(
すゐどう
)
を
担
(
かつ
)
がれ、
238
パツと
俄
(
にはか
)
に
明
(
あか
)
るくなつたと
思
(
おも
)
へば、
239
大
(
おほ
)
きな
あかり
採
(
と
)
りが
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
る。
240
それより
奥
(
おく
)
に
担
(
かつ
)
がれ、
241
又
(
また
)
もや
四五丁
(
しごちやう
)
ばかり
進
(
すす
)
んだと
思
(
おも
)
うた
処
(
ところ
)
へ
一同
(
いちどう
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
242
一同
『ウツポツポ、
243
ジヤンジヤヒエール、
244
ウツパツパ』
245
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
恭
(
うやうや
)
しく
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
場所
(
ばしよ
)
に
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
下
(
おろ
)
し、
246
チルテルと
言
(
い
)
ふ
其
(
その
)
中
(
なか
)
での
大将
(
たいしやう
)
らしき
男
(
をとこ
)
、
247
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り、
248
傍
(
かたはら
)
の
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
を
押
(
お
)
し
奥
(
おく
)
に
連
(
つ
)
れ
込
(
こ
)
んだ。
249
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
広
(
ひろ
)
い
岩窟
(
がんくつ
)
であり、
250
芭蕉
(
ばせう
)
の
葉
(
は
)
の
七八倍
(
しちはちばい
)
もある
様
(
やう
)
な
大
(
おほ
)
きな
葉
(
は
)
が、
251
鱗形
(
うろこなり
)
に
厚
(
あつ
)
く
敷
(
し
)
き
詰
(
つ
)
めてあつた。
252
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
青
(
あを
)
く
枯
(
か
)
れた
香
(
かを
)
りは
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
へぬ
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
253
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ、
254
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
を
漆
(
うるし
)
の
如
(
ごと
)
く
黒
(
くろ
)
く
塗
(
ぬ
)
つた
三十
(
さんじふ
)
恰好
(
かつかう
)
の
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
、
255
文身
(
いれずみ
)
もせず
男
(
をとこ
)
振
(
ぶ
)
りの
良
(
い
)
い
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い、
256
何
(
なん
)
とはなしに
高尚
(
かうしやう
)
な
風姿
(
ふうし
)
にて、
257
ニコニコし
乍
(
なが
)
ら
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り、
258
丁寧
(
ていねい
)
に
両手
(
りやうて
)
をつき、
259
男
『ホーレンス、
260
サーチライス、
261
ウツタツタ ウツタツタ、
262
カーリス カーリス』
263
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
264
忽
(
たちま
)
ち
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
り
頻
(
しき
)
りに
揺
(
ゆす
)
つた。
265
玉治別
(
たまはるわけ
)
はニコニコしながら、
266
右
(
みぎ
)
の
拳
(
こぶし
)
を
握
(
にぎ
)
り、
267
人差指
(
ひとさしゆび
)
をツンと
立
(
た
)
て、
268
天井
(
てんじやう
)
の
方
(
はう
)
をチユウチユウと
二三回
(
にさんくわい
)
指
(
ゆび
)
さして
見
(
み
)
せた。
269
さうして、
270
玉治別
『アーマ アーマ、
271
タラリー タラリー、
272
トータラリ トータラリ、
273
リート リート、
274
ジヤンジヤヒエール、
275
オノコロジマ、
276
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
277
神司
(
かむつかさ
)
』
278
と
言
(
い
)
つた、
279
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
はタールス
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
であつて、
280
名
(
な
)
をタールスと
言
(
い
)
ふ。
281
タールスは、
282
タールス
『ホーレンス、
283
タールス、
284
チツク チツク、
285
アツパツパ、
286
テーリス テーリス』
287
と
挨拶
(
あいさつ
)
する。
288
此
(
この
)
意味
(
いみ
)
は、
289
『
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
290
よくまア、
291
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
292
只今
(
ただいま
)
より
貴方
(
あなた
)
を
救世主
(
きうせいしゆ
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ、
293
誠
(
まこと
)
を
捧
(
ささ
)
げてお
仕
(
つか
)
へ
致
(
いた
)
します。
294
何卒
(
どうぞ
)
長
(
なが
)
らく
此処
(
ここ
)
にお
鎮
(
しづ
)
まり
下
(
くだ
)
さいませ』
295
といふ
事
(
こと
)
であつた。
296
玉治別
(
たまはるわけ
)
は、
297
玉治別
『テーリス テーリス』
298
と
半
(
なか
)
ば
歪
(
ゆが
)
みなりの
此処
(
ここ
)
の
語
(
ご
)
を
使
(
つか
)
つた。
299
その
意味
(
いみ
)
は、
300
『
何事
(
なにごと
)
も
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
してお
世話
(
せわ
)
になります』
301
といふ
事
(
こと
)
なり。
302
タールスは
尊敬
(
そんけい
)
至
(
いた
)
らざるなく、
303
玉治別
(
たまはるわけ
)
を
最
(
もつと
)
も
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
き
最上等
(
さいじやうとう
)
の
室
(
ま
)
に
導
(
みちび
)
き、
304
珍
(
めづ
)
らしき
果物
(
くだもの
)
を
出
(
だ
)
して
饗応
(
きやうおう
)
し、
305
生神
(
いきがみ
)
の
降臨
(
かうりん
)
と
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
感謝
(
かんしや
)
して
居
(
ゐ
)
た。
306
ネルソン
山
(
ざん
)
以西
(
いせい
)
の
住民
(
ぢうみん
)
は
昔
(
むかし
)
より、
307
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
308
天
(
てん
)
より
降
(
ふ
)
り
給
(
たま
)
ひ、
309
万民
(
ばんみん
)
を
霊肉
(
れいにく
)
ともに
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ふと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
堅
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じて
居
(
ゐ
)
た。
310
こはジヤンナの
郷
(
さと
)
でも
同様
(
どうやう
)
である。
311
此処
(
ここ
)
はアンナヒエールと
言
(
い
)
ふ
里
(
さと
)
であつた。
312
此
(
この
)
時
(
とき
)
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
313
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
314
アンナヒエールの
里
(
さと
)
に
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
315
チルテル
以下
(
いか
)
数十
(
すうじふ
)
名
(
めい
)
の
里人
(
さとびと
)
は、
316
果樹
(
くわじゆ
)
の
実
(
み
)
を
採
(
と
)
らんとてアンナの
大樹
(
たいじゆ
)
の
下
(
もと
)
に
集
(
あつ
)
まつて
居
(
ゐ
)
た。
317
其処
(
そこ
)
へ
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
れるを
見
(
み
)
てチルテルは
真先
(
まつさき
)
に
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
で、
318
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
目礼
(
もくれい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
319
チルテル
『アツタツタ、
320
ネース ネース』
321
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
玉能姫
(
たまのひめ
)
の
手
(
て
)
を
執
(
と
)
らむとした。
322
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
強
(
つよ
)
く
振
(
ふ
)
り
放
(
はな
)
した。
323
チルテルは、
324
チルテル
『エーパツパ、
325
エーネース エーネース』
326
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
327
顔面
(
がんめん
)
怒気
(
どき
)
を
含
(
ふく
)
んで
大勢
(
おほぜい
)
に
目配
(
めくば
)
せするや、
328
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
二人
(
ふたり
)
を
手籠
(
てご
)
めになしタールスの
岩窟内
(
がんくつない
)
に
運
(
はこ
)
び
込
(
こ
)
みぬ。
329
(
是
(
これ
)
から
分
(
わか
)
りやすき
様
(
やう
)
に
日本語
(
にほんご
)
にて
物語
(
ものがた
)
る)
330
チルテル
『
汝
(
なんぢ
)
は
何処
(
いづく
)
の
女
(
をんな
)
だ。
331
此処
(
ここ
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
332
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
でも
最
(
もつと
)
も
獰猛
(
だうまう
)
な
人種
(
じんしゆ
)
にして、
333
他郷
(
たきやう
)
の
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
として、
334
恐
(
おそ
)
れ
戦
(
おのの
)
き
此
(
この
)
地
(
ち
)
を
踏
(
ふ
)
んだものはない。
335
然
(
しか
)
るに
図々
(
づうづう
)
しくも
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
336
此
(
この
)
里
(
さと
)
に
断
(
ことわ
)
りもなく
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
るこそ
不届
(
ふとど
)
き
至極
(
しごく
)
の
女
(
をんな
)
ども、
337
此
(
この
)
チルテルは
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
血
(
ち
)
も
涙
(
なみだ
)
もある
男
(
をとこ
)
だ。
338
何
(
なん
)
とかして
助
(
たす
)
けてやり
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
ひ
親切
(
しんせつ
)
に
手
(
て
)
を
執
(
と
)
れば
素気
(
すげ
)
なくも
振
(
ふ
)
り
放
(
はな
)
し
敵意
(
てきい
)
を
表
(
へう
)
する
横道者
(
わうだうもの
)
、
339
さアもう
斯
(
か
)
うなる
上
(
うへ
)
は
此方
(
こちら
)
の
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
だ。
340
煮
(
た
)
いて
喰
(
く
)
はうと
焼
(
や
)
いて
喰
(
く
)
はうと
此方
(
こつち
)
の
儘
(
まま
)
だ』
341
と、
342
鬼
(
おに
)
の
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
に
真黒気
(
まつくろけ
)
に
文身
(
いれずみ
)
した
奴
(
やつ
)
、
343
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
より
取囲
(
とりかこ
)
む。
344
玉能姫
『ホヽヽヽヽ、
345
僅
(
わづ
)
かに
二人
(
ふたり
)
の
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
を、
346
大
(
おほ
)
きな
男
(
をとこ
)
が
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
、
347
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
蟻
(
あり
)
が
蝉
(
せみ
)
の
死骸
(
しがい
)
でも
穴
(
あな
)
へ
引込
(
ひつこ
)
む
様
(
やう
)
に「エツサエツサ」と
担
(
かつ
)
ぎ
込
(
こ
)
み、
348
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によう
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
349
吾々
(
われわれ
)
は
天教山
(
てんけうざん
)
に
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ふ
花赤神
(
はなあかがみ
)
の
一
(
いち
)
の
眷属
(
けんぞく
)
、
350
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
351
初稚姫
(
はつわかひめ
)
と
言
(
い
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
で
御座
(
ござ
)
るぞや。
352
取違
(
とりちが
)
ひ
致
(
いた
)
すと
量見
(
りやうけん
)
ならぬぞ』
353
と
目
(
め
)
をキリリツと
釣
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げたり。
354
チルテル
『
花赤神
(
はなあかがみ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
とは
真赤
(
まつか
)
な
偽
(
いつは
)
りだらう。
355
よし、
356
そんな
偽
(
いつは
)
りを
申
(
まを
)
すと
今
(
いま
)
に
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
を
剥
(
む
)
いてやるぞ。
357
花赤
(
はなあか
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
はタールス
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
と
今
(
いま
)
奥
(
おく
)
にてお
話
(
はなし
)
の
最中
(
さいちう
)
だ。
358
一度
(
いちど
)
お
目
(
め
)
に
懸
(
か
)
け
様
(
やう
)
ものなら、
359
忽
(
たちま
)
ち
汝
(
なんぢ
)
の
化
(
ばけ
)
が
露顕
(
あらは
)
れるだらう。
360
左様
(
さやう
)
な
偽
(
いつは
)
りを
申
(
まを
)
すよりも、
361
今日
(
けふ
)
は
目出度
(
めでた
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
降臨日
(
かうりんび
)
だから
赦
(
ゆる
)
して
遣
(
つか
)
はす。
362
よつて
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
素直
(
すなほ
)
に
聞
(
き
)
くが
宜
(
よ
)
い。
363
常
(
つね
)
の
日
(
ひ
)
ならば
汝
(
なんぢ
)
の
生命
(
いのち
)
は
無
(
な
)
い
処
(
ところ
)
である。
364
さア
我
(
わが
)
教主
(
けうしゆ
)
は
未
(
いま
)
だ
女房
(
にようばう
)
はお
持
(
も
)
ち
遊
(
あそ
)
ばさず、
365
何
(
なん
)
とかして
文身
(
いれずみ
)
のない
女
(
をんな
)
を
女房
(
にようばう
)
に
致
(
いた
)
したいと
常々
(
つねづね
)
仰有
(
おつしや
)
つて
御座
(
ござ
)
るのだ。
366
恰度
(
ちやうど
)
よい
処
(
ところ
)
だ。
367
ウンと
言
(
い
)
はつしやい。
368
さすれば
我々
(
われわれ
)
は
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
より………
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
、
369
奥様
(
おくさま
)
と
崇
(
あが
)
め
奉
(
たてまつ
)
つて、
370
如何
(
どん
)
な
御用
(
ごよう
)
でも
御
(
ご
)
無理
(
むり
)
でも
聞
(
き
)
きます
程
(
ほど
)
に、
371
万々一
(
まんまんいち
)
不承諾
(
ふしようだく
)
とあれば
本日
(
ほんじつ
)
は
成敗
(
せいばい
)
を
赦
(
ゆる
)
し、
372
明日
(
あす
)
はお
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
生命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
つて
仕舞
(
しま
)
ふから、
373
覚悟
(
かくご
)
をきめて
返答
(
へんたふ
)
をなさい』
374
初稚姫
『モシ
玉能姫
(
たまのひめ
)
さま、
375
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても、
376
仮令
(
たとへ
)
殺
(
ころ
)
されても
応
(
おう
)
ずる
事
(
こと
)
はなりませぬぞや。
377
貴女
(
あなた
)
には
立派
(
りつぱ
)
な
若彦
(
わかひこ
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふ
夫
(
をつと
)
がおありなさるのだから』
378
玉能姫
『お
言葉
(
ことば
)
までもなく、
379
妾
(
わたし
)
は
決
(
けつ
)
して
生命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
られても
左様
(
さやう
)
な
難題
(
なんだい
)
には
応
(
おう
)
じませぬから、
380
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
381
チルテル
『こりや、
382
小女
(
こめ
)
ツチヨ、
383
何
(
なに
)
悪智慧
(
わるぢゑ
)
をかうのだ。
384
不届
(
ふとど
)
き
千万
(
せんばん
)
な……
俺
(
おれ
)
を
何方
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
る、
385
ジヤンジヤヒエールのチルテルさんとは、
386
アンナヒエールの
郷
(
さと
)
に
於
(
おい
)
て
誰
(
たれ
)
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
もない、
387
鬼
(
おに
)
をも
取挫
(
とりひし
)
ぐチヤーチヤーだぞ。
388
チヤー
チヤー
吐
(
ぬか
)
すと
最早
(
もはや
)
堪忍
(
かんにん
)
ならぬ。
389
膺懲
(
こらしめ
)
の
為
(
た
)
めに
此
(
この
)
鉄拳
(
てつけん
)
を
喰
(
くら
)
へ』
390
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
391
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
鬼
(
おに
)
の
蕨
(
わらび
)
を
頭上
(
づじやう
)
より
喰
(
くら
)
はさむとする。
392
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は、
393
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
く
体
(
たい
)
を
躱
(
かわ
)
し「オホヽヽヽ」と
平気
(
へいき
)
で
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
394
白狐
(
びやくこ
)
の
姿
(
すがた
)
は
両人
(
りやうにん
)
の
目
(
め
)
に
明
(
あきら
)
かに
映
(
えい
)
じて
居
(
ゐ
)
る。
395
チルテル
初
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
は「タールス
教主
(
けうしゆ
)
の
女房
(
にようばう
)
になれ」と
種々
(
いろいろ
)
嚇
(
おど
)
しつ
慊
(
すか
)
しつ、
396
遂
(
つい
)
には
声高
(
こわだか
)
となつて
来
(
き
)
た。
397
チルテルは
斯
(
か
)
くては
果
(
は
)
てじと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
走
(
はし
)
り
入
(
い
)
り、
398
タールスの
前
(
まへ
)
に
両手
(
りやうて
)
をつき、
399
チルテル
『
只今
(
ただいま
)
麗
(
うるは
)
しき
女
(
をんな
)
二人
(
ふたり
)
、
400
此
(
この
)
郷
(
さと
)
に
迷
(
まよ
)
ひ
来
(
きた
)
り、
401
玉能姫
(
たまのひめ
)
とか、
402
初稚姫
(
はつわかひめ
)
とか
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りましたが、
403
実
(
じつ
)
に
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
で
御座
(
ござ
)
います。
404
貴方
(
あなた
)
の
女房
(
にようばう
)
には
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
いの
適役
(
はまりやく
)
、
405
若
(
わか
)
い
方
(
はう
)
は
先
(
さき
)
でお
妾
(
めかけ
)
と
遊
(
あそ
)
ばしたら
宜
(
よろ
)
しからうと
存
(
ぞん
)
じ、
406
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
へ
連
(
つ
)
れ
込
(
こ
)
みましたが、
407
なかなかの
剛情者
(
がうじやうもの
)
で、
408
少
(
すこ
)
しも、
409
我々
(
われわれ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
尻
(
しり
)
に
聞
(
き
)
かして、
410
頤
(
あご
)
で
返事
(
へんじ
)
を
致
(
いた
)
す
横道者
(
わうだうもの
)
、
411
如何
(
いかが
)
取計
(
とりはか
)
らひませうや』
412
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いた
玉治別
(
たまはるわけ
)
はハツト
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせたが、
413
さあらぬ
態
(
てい
)
にて
控
(
ひか
)
へ
居
(
を
)
る。
414
タールス
『
何
(
なに
)
、
415
美
(
うつく
)
しき
女
(
をんな
)
が
二人
(
ふたり
)
迄
(
まで
)
も
来
(
き
)
たか、
416
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
引連
(
ひきつ
)
れ
来
(
きた
)
れ。
417
因縁
(
いんねん
)
の
有無
(
うむ
)
を
調
(
しら
)
べ
見
(
み
)
む、
418
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く』
419
と
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てる。
420
「ハイ」と
答
(
こた
)
へてチルテルは
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立退
(
たちの
)
き、
421
チルテル
『サア
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
422
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
423
今日
(
けふ
)
は
花赤神
(
はなあかがみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
で、
424
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
の
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
、
425
其処
(
そこ
)
へ
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
参
(
まゐ
)
つたのも
何
(
なに
)
かの
因縁
(
いんねん
)
であらう。
426
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
の
為
(
ため
)
、
427
チルテルの
後
(
うしろ
)
に
従
(
つ
)
いて
御座
(
ござ
)
れ』
428
玉能姫
『ハイ、
429
有難
(
ありがた
)
う。
430
然
(
しか
)
らば
参
(
まゐ
)
りませう。
431
……
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
、
432
貴女
(
あなた
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に』
433
と
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
手
(
て
)
をとり、
434
チルテルの
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
教主
(
けうしゆ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
導
(
みちび
)
いた。
435
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るなり、
436
「アツ」と
言
(
い
)
はむとせしが
自
(
みづか
)
ら
制
(
せい
)
し
止
(
とど
)
めた。
437
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
438
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
439
救世主
(
きうせいしゆ
)
に
会
(
あ
)
ひし
如
(
ごと
)
く
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
に
喜
(
よろこ
)
んだ。
440
然
(
しか
)
し、
441
様子
(
やうす
)
ある
事
(
こと
)
と
態
(
わざ
)
と
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
442
タールスは
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
443
タールス
『オーレンス、
444
サーチライス、
445
アツタツタ、
446
今日
(
こんにち
)
は
遥々
(
はるばる
)
天上
(
てんじやう
)
より
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
下
(
くだ
)
さいまして、
447
アンナヒエールの
郷人
(
さとびと
)
は
欣喜
(
きんき
)
雀躍
(
じやくやく
)
、
448
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
を
祝福
(
しゆくふく
)
致
(
いた
)
し
居
(
を
)
ります
処
(
ところ
)
へ、
449
又
(
また
)
もや
当国
(
たうごく
)
に
於
(
おい
)
ては
類稀
(
たぐひまれ
)
なる
是
(
これ
)
なる
美人
(
びじん
)
、
450
而
(
しか
)
も
二人
(
ふたり
)
までこれへ
参
(
まゐ
)
りましたのは、
451
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せで
御座
(
ござ
)
いませう。
452
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
に
致
(
いた
)
しましたら
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いませう』
453
玉治別
『イーエス イーエス、
454
エータルス エータルス、
455
エツパツパ、
456
パーツク パーツク、
457
エツパツパ』
458
と
言
(
い
)
つた。
459
タールスは
頭
(
あたま
)
をガシガシ
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら
再
(
ふたた
)
び、
460
タールス
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いませうが、
461
何
(
なん
)
とかしてお
許
(
ゆる
)
し
頂
(
いただ
)
く
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りますまいか。
462
ならう
事
(
こと
)
なら、
463
私
(
わたし
)
が
宿
(
やど
)
の
妻
(
つま
)
と
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います。
464
又
(
また
)
若
(
わか
)
い
方
(
はう
)
は
我
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
として
大切
(
たいせつ
)
に
育
(
そだ
)
て
上
(
あ
)
げ、
465
天晴
(
あつぱれ
)
タールス
教
(
けう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
と
仕上
(
しあ
)
げる
覚悟
(
かくご
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
466
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
467
と
頼
(
たの
)
み
込
(
こ
)
んだ。
468
玉治別
『
是
(
これ
)
なる
女
(
をんな
)
は
高天原
(
たかあまはら
)
より
降
(
くだ
)
り
給
(
たま
)
へる
天女
(
てんによ
)
にして、
469
人民
(
じんみん
)
の
左右
(
さいう
)
すべきものに
非
(
あら
)
ず。
470
万々一
(
まんまんいち
)
過
(
あやま
)
つて
神慮
(
しんりよ
)
に
触
(
ふ
)
るる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
あらば、
471
汝
(
なんぢ
)
が
生命
(
いのち
)
は
直
(
ただち
)
に
召取
(
めしと
)
らるるであらうぞ』
472
と
声
(
こゑ
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて、
473
きめつけた。
474
タールスは
其
(
その
)
厳
(
きび
)
しき
言霊
(
ことたま
)
の
威
(
ゐ
)
に
打
(
う
)
たれ、
475
思
(
おも
)
はず
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
476
タールス
『
今後
(
こんご
)
は
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬから、
477
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さい』
478
と
嘆願
(
たんぐわん
)
した。
479
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
心中
(
しんちう
)
に
可笑
(
をか
)
しさを
堪
(
こら
)
へ、
480
ソツと
見
(
み
)
ぬ
様
(
やう
)
な
風
(
ふう
)
して
両女
(
りやうぢよ
)
の
顔
(
かほ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
んだ。
481
両女
(
りやうぢよ
)
の
目
(
め
)
は
同時
(
どうじ
)
に
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
両眼
(
りやうがん
)
に
注
(
そそ
)
がれた。
482
是
(
これ
)
より
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
此
(
この
)
里
(
さと
)
の
言葉
(
ことば
)
をスツカリ
覚
(
おぼ
)
えた
上
(
うへ
)
、
483
三五教
(
あななひけう
)
の
教理
(
けうり
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
484
タールスを
立派
(
りつぱ
)
なる
神司
(
かむつかさ
)
に
仕上
(
しあ
)
げ、
485
チルテルも
同
(
おな
)
じく
神司
(
かむつかさ
)
となり、
486
アンナヒエールの
里人
(
さとびと
)
を
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
大神
(
おほかみ
)
の
道
(
みち
)
に
帰順
(
きじゆん
)
せしめ、
487
二三
(
にさん
)
ケ
月
(
げつ
)
滞在
(
たいざい
)
の
上
(
うへ
)
、
488
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
里
(
さと
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で、
489
西北
(
せいほく
)
さして
山伝
(
やまづた
)
ひに
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くのであつた。
490
七八
(
しちはち
)
里
(
り
)
の
間
(
あひだ
)
はチルテルを
初
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
見送
(
みおく
)
りをなし、
491
茲
(
ここ
)
に
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
惜
(
をし
)
き
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げたりける。
492
(
大正一一・七・五
旧閏五・一一
北村隆光
録)
493
窓外和知川の氾濫を眺めつつ
494
(昭和一〇・三・八 於吉野丸船室 王仁校正)
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