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第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
01 暁の空
〔1683〕
02 祖先の恵
〔1684〕
03 酒浮気
〔1685〕
04 里庄の悩
〔1686〕
05 愁雲退散
〔1687〕
06 神軍義兵
〔1688〕
第2篇 容怪変化
07 女白浪
〔1689〕
08 神乎魔乎
〔1690〕
09 谷底の宴
〔1691〕
10 八百長劇
〔1692〕
11 亞魔の河
〔1693〕
第3篇 異燭獣虚
12 恋の暗路
〔1694〕
13 恋の懸嘴
〔1695〕
14 相生松風
〔1696〕
15 喰ひ違ひ
〔1697〕
第4篇 恋連愛曖
16 恋の夢路
〔1698〕
17 縁馬の別
〔1699〕
18 魔神の囁
〔1700〕
19 女の度胸
〔1701〕
20 真鬼姉妹
〔1702〕
余白歌
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> 第1篇 月の高原 > 第2章 祖先の恵
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第二章
祖先
(
そせん
)
の
恵
(
めぐみ
)
〔一六八四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第1篇 月の高原
よみ(新仮名遣い):
つきのこうげん
章:
第2章 祖先の恵
よみ(新仮名遣い):
そせんのめぐみ
通し章番号:
1684
口述日:
1924(大正13)年12月15日(旧11月19日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
タライの村のサンヨの家
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6602
愛善世界社版:
21頁
八幡書店版:
第11輯 736頁
修補版:
校定版:
21頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
デカタン
高原
(
かうげん
)
の
大暴風
(
だいばうふう
)
は
岩石
(
がんせき
)
を
飛
(
と
)
ばし
樹木
(
じゆもく
)
を
捻
(
ねぢ
)
倒
(
たふ
)
し、
002
棟
(
むね
)
の
低
(
ひく
)
い
此
(
この
)
家
(
いへ
)
迄
(
まで
)
もキクキクと
梁
(
うつばり
)
を
鳴
(
な
)
らしてゐる。
003
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
老婆
(
らうば
)
のサンヨは
日課
(
につくわ
)
の
如
(
ごと
)
く
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
大風
(
おほかぜ
)
に
馴
(
なれ
)
て
少
(
すこ
)
しも
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
せず、
004
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
揺
(
ゆ
)
れる
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
に
平然
(
へいぜん
)
たるものであつた。
005
照国別
(
てるくにわけ
)
、
006
照公
(
てるこう
)
、
007
梅公
(
うめこう
)
、
008
タクソン、
009
エルソンは
車坐
(
くるまざ
)
となつて
010
バラモン
軍
(
ぐん
)
の
荒
(
あら
)
したる
跡
(
あと
)
の
実況談
(
じつきやうだん
)
につき
問答
(
もんだふ
)
を
始
(
はじ
)
めてゐた。
011
梅公
(
うめこう
)
『
何
(
なん
)
とマア
素敵
(
すてき
)
滅法界
(
めつぱふかい
)
に
強烈
(
きやうれつ
)
な
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くぢやないか。
012
お
婆
(
ばあ
)
さま、
013
お
前
(
まへ
)
さまはこんな
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いても
平然
(
へいぜん
)
としてゐるが、
014
恐
(
おそ
)
ろしい
事
(
こと
)
はないかい』
015
サンヨ『
此
(
この
)
風
(
かぜ
)
はデカタン
高原
(
かうげん
)
の
名物
(
めいぶつ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
016
年
(
ねん
)
に
一度
(
いちど
)
や
二度
(
にど
)
は
家
(
いへ
)
も
空中
(
くうちう
)
に
吹
(
ふ
)
き
上
(
あ
)
げるやうな
強風
(
きやうふう
)
が
吹
(
ふ
)
きます。
017
それ
故
(
ゆゑ
)
、
018
何
(
いづ
)
れの
家
(
うち
)
も
地下室
(
ちかしつ
)
を
掘
(
ほ
)
り
避難
(
ひなん
)
する
事
(
こと
)
になつてゐます。
019
こんな
風
(
かぜ
)
はまだまだ
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
です。
020
それよりも
恐
(
おそ
)
ろしいのはバラモンの
風
(
かぜ
)
で
厶
(
ござ
)
います』
021
梅公
(
うめこう
)
『フン、
022
非常
(
ひじやう
)
な
風
(
かぜ
)
の
荒
(
あら
)
い
国
(
くに
)
だな。
023
之
(
これ
)
が
所謂
(
いはゆる
)
風国
(
ふうこく
)
強塀
(
きやうへい
)
と
云
(
い
)
ふのだらう、
024
アツハヽヽヽ』
025
照公
(
てるこう
)
『バラモン
風
(
かぜ
)
と
云
(
い
)
ふのは、
026
どんな
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くのですかな』
027
サンヨ『ジフテリヤよりもインフルエンザよりもひどい
風
(
かぜ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
028
家
(
いへ
)
を
焼
(
や
)
き、
029
財物
(
ざいぶつ
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
030
人家
(
じんか
)
へ
這入
(
はい
)
つて
女房
(
にようばう
)
や
娘
(
むすめ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく、
031
皆
(
みな
)
何処
(
どこ
)
かへ、
032
攫
(
さら
)
つて
行
(
ゆ
)
く
鬼風
(
おにかぜ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
033
何
(
なに
)
よりも、
034
かよりも、
035
之
(
これ
)
位
(
くらゐ
)
恐
(
おそ
)
ろしい
風
(
かぜ
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ』
036
梅公
(
うめこう
)
『
成程
(
なるほど
)
、
037
弱味
(
よわみ
)
につけ
込
(
こ
)
む
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
と
云
(
い
)
ふ
謎
(
なぞ
)
だな。
038
これこれタクソンさま、
039
エルソンさま、
040
バラモンの
嵐
(
あらし
)
の
跡
(
あと
)
の
実況
(
じつきやう
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さらないか。
041
吾々
(
われわれ
)
にも
対抗策
(
たいかうさく
)
があるからなア』
042
タクソン『ハイ、
043
お
尋
(
たづ
)
ねなくとも
逐一
(
ちくいち
)
事情
(
じじやう
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げ、
044
お
助
(
たす
)
けを
乞
(
こ
)
ひ
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つてゐた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
045
私
(
わたし
)
の
妻
(
つま
)
はミールと
申
(
まを
)
しますが、
046
まだ
二十才
(
はたち
)
の
花盛
(
はなざか
)
り、
047
数日
(
すうじつ
)
以前
(
いぜん
)
にバラモン
軍
(
ぐん
)
が
此
(
この
)
里
(
さと
)
に
駐屯
(
ちうとん
)
致
(
いた
)
し、
048
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
を
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ、
049
一切
(
いつさい
)
の
食料
(
しよくれう
)
や
金銭
(
きんせん
)
等
(
など
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
050
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
なり、
051
村中
(
むらぢう
)
の
綺麗
(
きれい
)
な
娘
(
むすめ
)
と
見
(
み
)
れば
全部
(
ぜんぶ
)
掻
(
か
)
ツ
攫
(
さら
)
へて
参
(
まゐ
)
りました。
052
それのみならず、
053
之
(
これ
)
から
数
(
すう
)
里
(
り
)
隔
(
へだ
)
てたオーラ
山
(
さん
)
の
山
(
やま
)
続
(
つづ
)
き、
054
シノワ
谷
(
だに
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
には
馬賊
(
ばぞく
)
の
団体
(
だんたい
)
が
数千
(
すうせん
)
人
(
にん
)
割拠
(
かつきよ
)
して、
055
時々
(
ときどき
)
遠近
(
ゑんきん
)
の
村落
(
そんらく
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
056
金品
(
きんぴん
)
を
徴発
(
ちようはつ
)
し、
057
女房
(
にようばう
)
娘
(
むすめ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく
皆
(
みな
)
掻
(
か
)
ツ
攫
(
さら
)
へて
参
(
まゐ
)
りますので、
058
吾々
(
われわれ
)
人民
(
じんみん
)
は
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
くして
眠
(
ねむ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないので
厶
(
ござ
)
います。
059
シノワ
谷
(
だに
)
の
馬賊
(
ばぞく
)
を
退治
(
たいぢ
)
して
下
(
くだ
)
さるかと
思
(
おも
)
へば、
060
バラモン
軍
(
ぐん
)
の
大足別
(
おほだるわけ
)
は
馬賊
(
ばぞく
)
に
勝
(
まさ
)
る
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
、
061
吾々
(
われわれ
)
バラモン
信者
(
しんじや
)
は
最早
(
もはや
)
生活
(
せいくわつ
)
の
途
(
みち
)
もきれ、
062
塗炭
(
とたん
)
の
苦
(
くるし
)
みを
嘗
(
な
)
め、
063
不運
(
ふうん
)
に
泣
(
な
)
いて
居
(
を
)
ります。
064
どうか
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
によつて、
065
此
(
この
)
苦難
(
くなん
)
を
免
(
まぬが
)
れさして
頂
(
いただ
)
きたう
厶
(
ござ
)
います』
066
梅公
(
うめこう
)
『
先生
(
せんせい
)
、
067
聞
(
き
)
けば
聞
(
き
)
く
程
(
ほど
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ぢやありませぬか。
068
現
(
げん
)
、
069
幽
(
いう
)
、
070
神
(
しん
)
の
三界
(
さんかい
)
を
救済
(
きうさい
)
すべき
吾々
(
われわれ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
として
看過
(
かんくわ
)
出来
(
でき
)
ないぢやありませぬか。
071
アヽ
血
(
ち
)
は
湧
(
わ
)
き
腕
(
うで
)
は
躍
(
をど
)
る。
072
愈
(
いよいよ
)
自分
(
じぶん
)
の
活動
(
くわつどう
)
舞台
(
ぶたい
)
が
開
(
ひら
)
かれたやうぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
073
照国
(
てるくに
)
『
成程
(
なるほど
)
、
074
お
前
(
まへ
)
のいふ
通
(
とほ
)
りだ。
075
愈
(
いよいよ
)
真剣
(
しんけん
)
に
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
の
活動
(
くわつどう
)
すべき
舞台
(
ぶたい
)
を
与
(
あた
)
へられたのだな。
076
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
梅公
(
うめこう
)
、
077
あまり
事
(
こと
)
を
軽率
(
けいそつ
)
にやつては
失敗
(
しつぱい
)
するから、
078
ここは
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せして、
079
徐
(
おもむろ
)
に
神策
(
しんさく
)
を
進
(
すす
)
めて
行
(
ゆ
)
くのが
万全
(
ばんぜん
)
の
策
(
さく
)
だらうよ』
080
梅公
(
うめこう
)
『
成程
(
なるほど
)
、
081
御尤
(
ごもつとも
)
千万
(
せんばん
)
、
082
水
(
みづ
)
も
漏
(
も
)
らさぬ
貴方
(
あなた
)
のお
考
(
かんが
)
へ。
083
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
聞
(
き
)
いては、
084
余
(
あま
)
り
泰然
(
たいぜん
)
自若
(
じじやく
)
と
済
(
す
)
まし
込
(
こ
)
んでる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かぬぢやありませぬか。
085
オイ、
086
タクソン
君
(
くん
)
、
087
君
(
きみ
)
も
掛替
(
かけがへ
)
のない
一人
(
ひとり
)
の
女房
(
にようばう
)
をバラモン
軍
(
ぐん
)
に
掠奪
(
りやくだつ
)
されて
088
男
(
をとこ
)
らしくもない
涙
(
なみだ
)
をこぼしてゐるよりも、
089
どうだ、
090
俺
(
おれ
)
の
家来
(
けらい
)
となつて
女房
(
にようばう
)
奪回戦
(
だつくわいせん
)
に
参加
(
さんか
)
する
気
(
き
)
はないか。
091
精神
(
せいしん
)
一到
(
いつたう
)
何事
(
なにごと
)
か
成
(
な
)
らざらむやだ。
092
お
前
(
まへ
)
に
信仰
(
しんかう
)
と
熱心
(
ねつしん
)
と
勇気
(
ゆうき
)
とさへあらば、
093
キツト
此
(
この
)
目的
(
もくてき
)
は
達
(
たつ
)
し
得
(
え
)
られるだらうよ』
094
タクソン『ハイ、
095
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
096
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
女房
(
にようばう
)
を
取
(
と
)
られたと
云
(
い
)
つて
男
(
をとこ
)
の
目
(
め
)
から
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
してゐるのぢやありませぬ。
097
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
涙
(
なみだ
)
を
濺
(
そそ
)
いでゐるのです』
098
梅公
(
うめこう
)
『ハヽヽヽヽ、
099
ヤア
大
(
おほ
)
きく
出
(
で
)
よつたな。
100
さうなくては
男子
(
だんし
)
は
叶
(
かな
)
はぬ、
101
見上
(
みあ
)
げた
男
(
をとこ
)
だ、
102
愈
(
いよいよ
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた。
103
梅公別
(
うめこうわけ
)
の
弟子
(
でし
)
にしてやるから、
104
吾輩
(
わがはい
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
忠実
(
ちうじつ
)
に
守
(
まも
)
るのだよ』
105
タクソン『イヤ、
106
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
107
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
は
先生
(
せんせい
)
の
家来
(
けらい
)
にして
頂
(
いただ
)
きたいのです。
108
貴方
(
あなた
)
には
先生
(
せんせい
)
があるでせう』
109
梅公
(
うめこう
)
『
先生
(
せんせい
)
は
余
(
あま
)
り
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
も
高
(
たか
)
く
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
の
程度
(
ていど
)
も、
110
お
前
(
まへ
)
とは
非常
(
ひじやう
)
に
距離
(
きより
)
があるから、
111
直々
(
ぢきぢき
)
のお
弟子
(
でし
)
には
勿体
(
もつたい
)
ない。
112
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
るぞ。
113
それより
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
によつて
俺
(
おれ
)
の
弟子
(
でし
)
にしてやる。
114
神
(
かみ
)
は
順序
(
じゆんじよ
)
だからな。
115
順序
(
じゆんじよ
)
を
離
(
はな
)
れて
神
(
かみ
)
もなく
道
(
みち
)
もない。
116
なア
先生
(
せんせい
)
、
117
暫
(
しばら
)
く
私
(
わたし
)
の
直接
(
ちよくせつ
)
の
弟子
(
でし
)
にしても
宜
(
い
)
いでせう』
118
照国
(
てるくに
)
『
信仰
(
しんかう
)
は
自由
(
じいう
)
だ。
119
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
タクソンさまの
意志
(
いし
)
に
任
(
まか
)
すがよからう。
120
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
によつてなア』
121
照公
(
てるこう
)
『ハヽヽヽ、
122
オイ
梅
(
うめ
)
さま、
123
どうですか、
124
先生
(
せんせい
)
のお
目
(
め
)
から
見
(
み
)
れば
君
(
きみ
)
とタクソン
君
(
くん
)
とは
甲乙
(
かふおつ
)
の
区別
(
くべつ
)
がつかないやうだよ。
125
バラモン
教
(
けう
)
で
余程
(
よほど
)
魂
(
みたま
)
が
研
(
みが
)
いてあると
見
(
み
)
へて、
126
どこともなしに
面貌
(
めんばう
)
に
光
(
ひかり
)
が
輝
(
かがや
)
いてゐるやうだ。
127
流石
(
さすが
)
先生
(
せんせい
)
は
偉
(
えら
)
いわい』
128
梅公
(
うめこう
)
『そんなら、
129
タクソン
君
(
くん
)
、
130
君
(
きみ
)
の
意志
(
いし
)
に
任
(
まか
)
す。
131
オイ、
132
エルソン
君
(
くん
)
、
133
君
(
きみ
)
は
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
によつて
僕
(
ぼく
)
の
弟子
(
でし
)
にしてやる。
134
満足
(
まんぞく
)
だらうなア』
135
エルソン『ハイ、
136
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
137
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
は
年
(
とし
)
は
若
(
わか
)
うても、
138
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
は
聊
(
いささ
)
か、
139
学
(
まな
)
んで
居
(
を
)
りまする。
140
仮令
(
たとへ
)
バラモン
教
(
けう
)
でも
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
には
二
(
ふた
)
つは
厶
(
ござ
)
いますまい。
141
私
(
わたし
)
はタクソンと
竹馬
(
ちくば
)
の
友
(
とも
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
142
行動
(
かうどう
)
を
共
(
とも
)
にする
考
(
かんが
)
へです。
143
何卒
(
どうぞ
)
貴方
(
あなた
)
は
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
となつて
下
(
くだ
)
さいな』
144
梅公
(
うめこう
)
『ハヽヽヽヽ、
145
偉
(
えら
)
い
馬力
(
ばりき
)
だな』
146
照公
(
てるこう
)
『
又
(
また
)
梅公
(
うめこう
)
、
147
凹
(
へこ
)
まされたのか、
148
それだから「
吾
(
われ
)
程
(
ほど
)
のものなきやうに
思
(
おも
)
うて
偉
(
えら
)
さうに
申
(
まを
)
してをると、
149
スカタン
喰
(
く
)
ふぞよ」と
御
(
ご
)
神諭
(
しんゆ
)
にお
示
(
しめ
)
しになつてゐるのだ。
150
梅
(
うめ
)
え
事
(
こと
)
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
つても、
151
さう
梅
(
うめ
)
え
事
(
こと
)
には
問屋
(
とひや
)
が
卸
(
おろ
)
さないよ。
152
マア
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
の
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
となつて
仲良
(
なかよ
)
く
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
するがよからう。
153
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
少
(
すこ
)
しも
乾児
(
こぶん
)
は
欲
(
ほ
)
しくない。
154
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
が
欲
(
ほ
)
しいのだ』
155
梅公
(
うめこう
)
『
親分
(
おやぶん
)
、
156
乾児
(
こぶん
)
の
関係
(
くわんけい
)
ならば、
157
マサカの
時
(
とき
)
には
命令
(
めいれい
)
が
行
(
おこな
)
はれ
秩序
(
ちつじよ
)
整然
(
せいぜん
)
と、
158
物事
(
ものごと
)
の
埓
(
らち
)
があきよいが、
159
兄弟
(
きやうだい
)
と
云
(
い
)
ふものは
水臭
(
みずくさ
)
いものだよ。
160
「
兄弟
(
きやうだい
)
は
他人
(
たにん
)
の
初
(
はじ
)
まり」と
云
(
い
)
ふからな』
161
照公
(
てるこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
162
「
兄弟
(
きやうだい
)
は
他人
(
たにん
)
が
初
(
はじ
)
まり」と
云
(
い
)
ふのだ。
163
他人
(
たにん
)
同志
(
どうし
)
が
寄
(
よ
)
つて
兄弟
(
きやうだい
)
の
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
ぶのだ。
164
それで
特
(
とく
)
に
義兄弟
(
ぎきやうだい
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
165
四海
(
しかい
)
兄弟
(
きやうだい
)
も、
166
ここから
初
(
はじ
)
まるのだ。
167
兄弟
(
きやうだい
)
力
(
ちから
)
を
合
(
あは
)
せて
弱小
(
じやくせう
)
な
団体
(
だんたい
)
も
遂
(
つひ
)
には
強大
(
きやうだい
)
となるのだ。
168
あゝ
強大
(
きやうだい
)
なるかな
強大
(
きやうだい
)
なるかな。
169
兄弟
(
きやうだい
)
(
鏡台
(
きやうだい
)
)は
所謂
(
いはゆる
)
鏡
(
かがみ
)
の
台
(
だい
)
だ。
170
互
(
たがひ
)
に
勇
(
いさ
)
み
交
(
かは
)
して
短所
(
たんしよ
)
を
補
(
おぎな
)
ひ
長所
(
ちやうしよ
)
を
採
(
と
)
り、
171
悪
(
あく
)
を
去
(
さ
)
り
善
(
ぜん
)
をとり、
172
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
するのが
所謂
(
いはゆる
)
四海
(
しかい
)
兄弟
(
きやうだい
)
、
173
天下
(
てんか
)
同胞
(
どうはう
)
の
義務
(
ぎむ
)
だよ』
174
梅公
(
うめこう
)
『イヤ、
175
重々
(
ぢうぢう
)
の
御
(
ご
)
説法
(
せつぽふ
)
、
176
豁然
(
かつぜん
)
として
白蓮華
(
びやくれんげ
)
の
咲
(
さ
)
き
香
(
にほ
)
ふが
如
(
ごと
)
く、
177
胸中
(
きようちう
)
の
新天地
(
しんてんち
)
が
開
(
ひら
)
けたやうだ。
178
そんなら
之
(
これ
)
から
吾々
(
われわれ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
親友
(
しんいう
)
兼
(
けん
)
兄弟
(
きやうだい
)
となつて、
179
世界
(
せかい
)
の
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
を
明
(
あきら
)
かに
裁
(
さば
)
く
所
(
ところ
)
の
鑑
(
かがみ
)
とならうぢやないか。
180
国公
(
くにこう
)
は
親子
(
おやこ
)
対面
(
たいめん
)
の
嬉
(
うれ
)
しさにアーメニヤに
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
181
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
が
二人
(
ふたり
)
になつて、
182
稍
(
やや
)
寂寥
(
せきれう
)
の
気分
(
きぶん
)
にうたれてゐた
所
(
ところ
)
だ。
183
ここに
天
(
てん
)
より
二人
(
ふたり
)
の
補充
(
ほじゆう
)
兄弟
(
きやうだい
)
を
与
(
あた
)
へられ、
184
愈
(
いよいよ
)
四魂
(
しこん
)
揃
(
そろ
)
うて
轡
(
くつわ
)
を
並
(
なら
)
べてハルナの
都
(
みやこ
)
へ
進軍
(
しんぐん
)
と
出掛
(
でかけ
)
ようかい』
185
婆
(
ばあ
)
さまは
勝手
(
かつて
)
覚
(
おぼ
)
へし
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
、
186
真黒気
(
まつくろけ
)
に
燻
(
くすぶ
)
つた
土瓶
(
どびん
)
に
白湯
(
さゆ
)
を
沸
(
わ
)
かし、
187
天然竹
(
てんねんだけ
)
を
切
(
き
)
つた
其
(
その
)
儘
(
まま
)
の
竹製
(
たけせい
)
の
茶碗
(
ちやわん
)
に
湯
(
ゆ
)
をなみなみと
注
(
つ
)
いで
一行
(
いつかう
)
に
饗応
(
きやうおう
)
し、
188
裏
(
うら
)
の
瀬戸口
(
せとぐち
)
に
枝
(
えだ
)
もたわわに
実
(
な
)
つてゐた
棗
(
なつめ
)
の
実
(
み
)
をむしり
来
(
きた
)
り、
189
サンヨ『
折角
(
せつかく
)
おこし
下
(
くだ
)
さいまして、
190
何
(
なん
)
のお
愛想
(
あいそう
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
191
之
(
これ
)
は
此
(
この
)
里
(
さと
)
にて
有名
(
いうめい
)
な
棗
(
なつめ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
192
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
バラモン
軍
(
ぐん
)
がやつてきて
大方
(
おほかた
)
拗
(
むし
)
りとりましたが、
193
僅
(
わづ
)
か
残
(
のこ
)
つてゐるのを、
194
浚
(
さら
)
へて
持
(
も
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
195
何卒
(
どうぞ
)
お
食
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
196
照国別
(
てるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は、
197
『
美事
(
みごと
)
な
大
(
おほ
)
きな
棗
(
なつめ
)
だ。
198
頂戴
(
ちやうだい
)
しませう』
199
と
各自
(
めいめい
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
つて
食
(
く
)
ひ
初
(
はじ
)
めた。
200
梅公
(
うめこう
)
『
何
(
なん
)
と、
201
うまい
果物
(
くだもの
)
だな。
202
種
(
たね
)
は
小
(
ちひ
)
さく
実
(
み
)
は
大
(
おほ
)
きく、
203
まるつきり
林檎
(
りんご
)
を
喰
(
く
)
つてるやうだ。
204
婆
(
ばあ
)
さま、
205
此
(
この
)
村
(
むら
)
には
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
は
沢山
(
たくさん
)
あるだらうなア』
206
サンヨ『ハイ、
207
此
(
この
)
村
(
むら
)
の
名物
(
めいぶつ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
208
今年
(
ことし
)
は
余程
(
よほど
)
不作
(
ふさく
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
209
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
二人
(
ふたり
)
や
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
年中
(
ねんぢう
)
の
食料
(
しよくれう
)
は、
210
どうなり、
2101
かうなり
続
(
つづ
)
けるで
厶
(
ござ
)
いませう』
211
梅公
(
うめこう
)
『
天然
(
てんねん
)
の
恩恵
(
おんけい
)
だな。
212
肥料
(
こやし
)
もやらず
世話
(
せわ
)
もせず、
213
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
実
(
な
)
らして
下
(
くだ
)
さる
実
(
み
)
を
勝手
(
かつて
)
に
食
(
く
)
はして
貰
(
もら
)
つていいのか。
214
それでは、
215
あまり
冥加
(
みやうが
)
がよくないだらう。
216
人間
(
にんげん
)
が
遊惰
(
いうだ
)
になるのも
無理
(
むり
)
がないわい』
217
サンヨ『
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
はコーラン
国
(
ごく
)
から
取
(
とり
)
寄
(
よ
)
せたもので
厶
(
ござ
)
いまして、
218
此
(
この
)
村
(
むら
)
にも
余
(
あま
)
り
沢山
(
たくさん
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
219
さうして
日々
(
にちにち
)
虫取
(
むしと
)
りに
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
らねば、
220
一
(
いち
)
日
(
にち
)
油断
(
ゆだん
)
すれば
其
(
その
)
虫
(
むし
)
が
繁殖
(
はんしよく
)
して
葉
(
は
)
を
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
も
残
(
のこ
)
らず
噛
(
か
)
んで
了
(
しま
)
ひます。
221
葉
(
は
)
が
無
(
な
)
くなれば
木
(
き
)
が
枯
(
か
)
れるのです。
222
仲々
(
なかなか
)
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ませぬよ。
223
仲々
(
なかなか
)
生活
(
みすぎ
)
は
楽
(
らく
)
ぢやありませぬ』
224
梅公
(
うめこう
)
『さうかな、
225
ヤツパリ
天然
(
てんねん
)
に
生
(
は
)
える
果物
(
くだもの
)
でも
世話
(
せわ
)
が
要
(
い
)
るものかいな。
226
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
肥料
(
ひれう
)
は
要
(
い
)
らないだらう。
227
此
(
この
)
辺
(
へん
)
は
地
(
ち
)
が
肥
(
こえ
)
てゐるから』
228
サンヨ『
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
を
頂
(
いただ
)
く
家
(
うち
)
は
祖先
(
そせん
)
の
恩恵
(
おんけい
)
によるのです。
229
さうですから、
230
余
(
あま
)
り
何処
(
どこ
)
にも、
231
沢山
(
たくさん
)
はありませぬ』
232
梅公
(
うめこう
)
『
祖先
(
そせん
)
の
恩恵
(
おんけい
)
と
云
(
い
)
ふが、
233
其
(
その
)
祖先
(
そせん
)
と
云
(
い
)
ふのは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
指
(
さ
)
して
云
(
い
)
ふのか、
234
或
(
あるひ
)
は
此
(
この
)
家
(
や
)
の
祖先
(
そせん
)
を
云
(
い
)
ふのか。
235
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
人間
(
にんげん
)
は
何
(
いづ
)
れも
神祖
(
しんそ
)
、
236
人祖
(
じんそ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
を
受
(
う
)
けないものはない
筈
(
はず
)
だ。
237
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
先祖
(
せんぞ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
とは、
238
チツト
受
(
う
)
け
取
(
と
)
れぬぢやないか』
239
サンヨ『
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
を
植
(
うゑ
)
る
時
(
とき
)
には
犠牲
(
いけにへ
)
が
要
(
い
)
ります。
240
私
(
わたし
)
の
大祖先
(
だいそせん
)
は
子孫
(
しそん
)
を
愛
(
あい
)
する
為
(
た
)
めに
自分
(
じぶん
)
の
腹
(
はら
)
を
切
(
き
)
り、
241
その
血潮
(
ちしほ
)
を
根
(
ね
)
に
染
(
そ
)
め、
242
肉体
(
にくたい
)
は
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
に
葬
(
ほうむ
)
らせ、
243
祖先
(
そせん
)
の
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
の
肥料
(
こやし
)
となり、
244
万古
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
子孫
(
しそん
)
安楽
(
あんらく
)
の
為
(
ため
)
に
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さるのです。
245
それ
故
(
ゆゑ
)
、
246
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
は
生命
(
いのち
)
と
申
(
まを
)
しまして、
247
あまり
沢山
(
たくさん
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
248
今
(
いま
)
お
食
(
あが
)
りに
成
(
な
)
つたでせうが
249
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
は
酸
(
すつ
)
ぱくて
甘
(
あま
)
いでせう。
250
之
(
これ
)
は
人間
(
にんげん
)
の
血液
(
けつえき
)
や
肉
(
にく
)
の
味
(
あぢ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
251
吾々
(
われわれ
)
は
祖先
(
そせん
)
の
血
(
ち
)
を
啜
(
すす
)
り、
252
肉
(
にく
)
を
食
(
た
)
べて
安全
(
あんぜん
)
に
暮
(
くら
)
してゐるのですから、
253
云
(
い
)
はば、
254
あの
棗
(
なつめ
)
は
先祖
(
せんぞ
)
の
肉体
(
にくたい
)
も
同様
(
どうやう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
255
梅公
(
うめこう
)
『
何
(
なん
)
と
先祖
(
せんぞ
)
の
恩
(
おん
)
と
云
(
い
)
ふものは
尊
(
たふと
)
いものだな。
256
吾々
(
われわれ
)
の
祖先
(
そせん
)
も
国
(
くに
)
を
肇
(
はじ
)
め
徳
(
とく
)
を
樹
(
た
)
て、
257
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
き、
258
子孫
(
しそん
)
を
安住
(
あんぢう
)
させむ
為
(
ため
)
苦労
(
くらう
)
をして
下
(
くだ
)
さつたのだ。
259
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
も
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
祖先
(
そせん
)
崇拝教
(
すうはいけう
)
だ。
260
人類愛
(
じんるゐあい
)
の
神教
(
しんけう
)
だ。
261
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
262
と、
263
流石
(
さすが
)
、
2631
洒脱
(
しやだつ
)
な
梅公
(
うめこう
)
も
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
感涙
(
かんるい
)
に
咽
(
むせ
)
んでゐる。
264
照国別
(
てるくにわけ
)
『
遠津
(
とほつ
)
御祖
(
みおや
)
、
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みは
雨
(
あめ
)
となり
265
土
(
つち
)
となりてぞ
子孫
(
みこ
)
をば
救
(
すく
)
ふ。
266
親々
(
おやおや
)
の
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
に
生
(
い
)
き
乍
(
なが
)
ら
267
親
(
おや
)
を
忘
(
わす
)
るる
邪神
(
まがかみ
)
もあり。
268
親
(
おや
)
の
恩
(
おん
)
忘
(
わす
)
れし
時
(
とき
)
は
身
(
み
)
も
魂
(
たま
)
も
269
亡
(
ほろ
)
びに
向
(
むか
)
ふ
初
(
はじ
)
めなりけり』
270
サンヨ『
春
(
はる
)
夏
(
なつ
)
の
別
(
わか
)
ちなくして
此
(
この
)
棗
(
なつめ
)
271
実
(
みの
)
るも
祖先
(
おや
)
の
恵
(
めぐ
)
みなりけり。
272
親々
(
おやおや
)
の
恵
(
めぐみ
)
忘
(
わす
)
れし
酬
(
むく
)
いにや
273
今日
(
けふ
)
の
歎
(
なげ
)
きの
身
(
み
)
にふりかかる。
274
今
(
いま
)
よりは
心
(
こころ
)
の
柱
(
はしら
)
樹
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
275
祖先
(
みおや
)
の
祭
(
まつり
)
厚
(
あつ
)
く
仕
(
つか
)
へむ』
276
梅公
(
うめこう
)
『
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
け
行
(
ゆ
)
く
277
白梅
(
しらうめ
)
の
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
初
(
そ
)
めてより。
278
梅
(
うめ
)
林檎
(
りんご
)
棗
(
なつめ
)
の
味
(
あぢ
)
も
皆
(
みな
)
同
(
おな
)
じ
279
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
なりせば』
280
照公
(
てるこう
)
『
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
祖先
(
おや
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
居
(
ゐ
)
ながらに
281
受
(
う
)
けし
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
賜物
(
たまもの
)
。
282
親々
(
おやおや
)
の
踏
(
ふ
)
みてし
道
(
みち
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
283
世
(
よ
)
の
犠牲
(
いけにへ
)
にならむとぞ
思
(
おも
)
ふ』
284
タクソン『
吾
(
わが
)
家
(
や
)
にも
祖先
(
おや
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
棗
(
なつめ
)
あり
285
いざ
之
(
これ
)
よりは
詫言
(
わびごと
)
やせむ。
286
御恵
(
みめぐみ
)
を
忘
(
わす
)
れ
果
(
は
)
てたる
酬
(
むく
)
いにや
287
吾
(
わが
)
恋妻
(
こひづま
)
は
攫
(
さら
)
はれにけり』
288
エルソン『
吾
(
わが
)
恋
(
こ
)
ふる
妹
(
いも
)
は
枉霊
(
まがひ
)
に
奪
(
うば
)
はれて
289
袖
(
そで
)
の
涙
(
なみだ
)
の
乾
(
かわ
)
く
間
(
ま
)
もなし。
290
如何
(
いか
)
にして
姫
(
ひめ
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
らむと
291
只
(
ただ
)
思
(
おも
)
ふより
外
(
ほか
)
なかりけり』
292
タクソン『
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げ
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
293
此
(
この
)
タライの
村
(
むら
)
の
里庄
(
りしやう
)
ジャンク
様
(
さま
)
の
娘
(
むすめ
)
、
294
スガコ
姫
(
ひめ
)
は
絶世
(
ぜつせい
)
の
美人
(
びじん
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
295
バラモンの
軍隊
(
ぐんたい
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
数日
(
すうじつ
)
以前
(
いぜん
)
に、
296
何者
(
なにもの
)
にか
掻
(
かつ
)
攫
(
さら
)
はれ、
297
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
りませぬので、
298
ジャンク
一家
(
いつか
)
の
歎
(
なげ
)
きは
一通
(
ひととほ
)
りぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
299
私
(
わたくし
)
もジャンク
様
(
さま
)
の
家
(
いへ
)
の
子
(
こ
)
として、
300
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
仕
(
つか
)
へてゐますが、
301
家
(
いへ
)
の
宝
(
たから
)
をとられ、
302
嬢様
(
ぢやうさま
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
探
(
さが
)
す
暇
(
ひま
)
もなく、
303
女房
(
にようばう
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
について
頭
(
あたま
)
を
悩
(
なや
)
めてゐます。
304
何卒
(
どうぞ
)
貴方
(
あなた
)
のお
伴
(
とも
)
となつて、
305
嬢様
(
ぢやうさま
)
や
女房
(
にようばう
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
探
(
さが
)
し
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
306
どうか、
307
お
伴
(
とも
)
にお
加
(
くは
)
へ
下
(
くだ
)
さいますまいか』
308
照国
(
てるくに
)
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
しました。
309
御
(
ご
)
心底
(
しんてい
)
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
310
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
にお
任
(
まか
)
せなさいませ』
311
タクソン『ハイ、
312
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
313
之
(
これ
)
で
私
(
わたし
)
も
甦
(
よみがへ
)
つたやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
します』
314
エルソン『
先生
(
せんせい
)
、
315
私
(
わたし
)
もお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
316
何卒
(
どうぞ
)
、
3161
お
伴
(
とも
)
にお
引
(
ひき
)
連
(
つ
)
れを、
317
強
(
た
)
つてお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
318
私
(
わたし
)
は
独身者
(
どくしんもの
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
319
家
(
いへ
)
に
系累
(
けいるゐ
)
もなく
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
伴
(
とも
)
には
最適任
(
さいてきにん
)
者
(
しや
)
と
存
(
ぞん
)
じます』
320
照国
(
てるくに
)
『よしよし、
321
お
前
(
まへ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
来
(
く
)
るがよからう』
322
梅公
(
うめこう
)
『オイ、
323
エルソン
君
(
くん
)
、
324
君
(
きみ
)
は
何
(
なん
)
だか
心
(
こころ
)
に
秘密
(
ひみつ
)
を
抱
(
いだ
)
いてゐるやうだな』
325
エルソン『ハイ、
326
私
(
わたくし
)
も
相思
(
さうし
)
の
女
(
をんな
)
が
厶
(
ござ
)
いました。
327
その
女
(
をんな
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ね、
328
此
(
この
)
お
婆
(
ばあ
)
さまに
会
(
あ
)
はして
上
(
あ
)
げねばなりませぬ』
329
梅公
(
うめこう
)
『ハヽヽヽヽ、
330
さうすると
当家
(
たうけ
)
の
妹娘
(
いもうとむすめ
)
と
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
とか、
331
相思
(
さうし
)
とか、
332
の
経緯
(
いきさつ
)
があるのだな。
333
これ、
334
お
婆
(
ばあ
)
さま、
335
あなたは
此
(
この
)
エルソンに
娘
(
むすめ
)
を
与
(
や
)
らうと
云
(
い
)
つたのですか。
336
さいぜん、
337
私
(
わたし
)
に
娘
(
むすめ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
依頼
(
いらい
)
すると
仰有
(
おつしや
)
つたでせう』
338
サンヨ『ホヽヽヽヽ
油断
(
ゆだん
)
のならぬのは
娘
(
むすめ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
339
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
此
(
この
)
エルソンさまと
親
(
おや
)
に
秘密
(
ないしよ
)
で
約束
(
やくそく
)
をしたのかも
知
(
し
)
れませぬ。
340
宅
(
うち
)
の
娘
(
むすめ
)
は
年
(
とし
)
をとつても
子供
(
こども
)
だ
子供
(
こども
)
だと
思
(
おも
)
つてゐましたが、
341
油断
(
ゆだん
)
のならぬのは
娘
(
むすめ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
342
これこれエルソンさま、
343
お
前
(
まへ
)
は
娘
(
むすめ
)
の
花香
(
はなか
)
と
何
(
なに
)
か
約束
(
やくそく
)
でもなさつたのかい』
344
エルソン『ハイ……イーエ……エー……まだ
予定
(
よてい
)
で
厶
(
ござ
)
います』
345
サンヨ『お
前
(
まへ
)
さまの
方
(
はう
)
で
定
(
き
)
めてゐるのだらう。
346
娘
(
むすめ
)
の
花香
(
はなか
)
はお
前
(
まへ
)
さまから
一回
(
いつくわい
)
の
交渉
(
かうせふ
)
も
受
(
う
)
けてゐないのだらうなア』
347
エルソン『
花香
(
はなか
)
さまに
対
(
たい
)
し、
348
どうせう、
349
こうせう(
交渉
(
かうせう
)
)と
胸
(
むね
)
を
痛
(
いた
)
めてゐる
最中
(
さいちう
)
、
350
お
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
らなくなつたので、
351
私
(
わたし
)
も
憤慨
(
ふんがい
)
の
極
(
きよく
)
に
達
(
たつ
)
し、
352
おのれバラモン
軍
(
ぐん
)
、
353
吾
(
わが
)
愛人
(
あいじん
)
の
仇
(
あだ
)
だ
354
仮令
(
たとへ
)
天
(
てん
)
を
駆
(
かけ
)
り
地
(
ち
)
を
潜
(
くぐ
)
る
妙術
(
めうじゆつ
)
、
3541
彼
(
かれ
)
にありとも
355
恋愛
(
れんあい
)
至上
(
しじやう
)
の
真心
(
まごころ
)
は
金鉄
(
きんてつ
)
も
熔
(
とろ
)
かす
勢
(
いきほ
)
ひ、
356
あく
迄
(
まで
)
も
花香
(
はなか
)
様
(
さま
)
を
奪
(
うば
)
ひ
回
(
かへ
)
し、
357
私
(
わたし
)
の
赤心
(
まごころ
)
を
買
(
か
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
考
(
かんが
)
へで
厶
(
ござ
)
います。
358
どうかお
婆
(
ばあ
)
さま、
359
私
(
わたし
)
が
花香
(
はなか
)
さまを
無事
(
ぶじ
)
に
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
りましたら、
360
その
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
として
当家
(
たうけ
)
の
養子
(
やうし
)
にして
下
(
くだ
)
さるでせうな』
361
サンヨ『ホヽヽヽヽ
何
(
なん
)
とマア
抜目
(
ぬけめ
)
のない
男
(
をとこ
)
だこと、
362
仲々
(
なかなか
)
お
前
(
まへ
)
さまも
隅
(
すみ
)
には
置
(
お
)
けませぬわい』
363
梅公
(
うめこう
)
『ハヽヽヽヽそれで
一切
(
いつさい
)
事情
(
じじやう
)
が
判然
(
はんぜん
)
して
来
(
き
)
た。
364
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には
変則
(
へんそく
)
的
(
てき
)
恋愛
(
れんあい
)
に
熱中
(
ねつちう
)
する
連中
(
れんぢう
)
もあるものだな。
365
オイ、
366
エルソン
君
(
くん
)
、
367
それだけの
熱心
(
ねつしん
)
があればキツト
成功
(
せいこう
)
するよ。
368
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
俺
(
おれ
)
がお
婆
(
ばあ
)
さまの
委託
(
ゐたく
)
を
受
(
う
)
け、
369
舐
(
ねぶ
)
つて
喰
(
く
)
はうと
焚
(
た
)
いて
喰
(
く
)
はうと
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
との
事
(
こと
)
だつたが、
370
それ
丈
(
だ
)
けお
前
(
まへ
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
があるのを
聞
(
き
)
くと、
371
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
も
君
(
きみ
)
の
心理
(
しんり
)
情態
(
じやうたい
)
が
憐
(
あは
)
れになつて
来
(
き
)
た。
372
僕
(
ぼく
)
は
花香姫
(
はなかひめ
)
に
対
(
たい
)
する
一切
(
いつさい
)
の
権利
(
けんり
)
を
君
(
きみ
)
に
譲渡
(
じやうと
)
するよ。
373
なアお
婆
(
ばあ
)
さま、
374
それで
宜
(
い
)
いでせう。
375
云
(
い
)
はば
生死
(
せいし
)
不明
(
ふめい
)
の
美人
(
びじん
)
を
托
(
たく
)
されたのだから、
376
お
婆
(
ばあ
)
さまだとてエルソンさまの
女房
(
にようばう
)
にするのに
不足
(
ふそく
)
はありますまい』
377
サンヨ『エルソンさまも
村中
(
むらぢう
)
の
褒
(
ほ
)
めものなり、
378
模範
(
もはん
)
青年
(
せいねん
)
と
云
(
い
)
はれて
居
(
ゐ
)
るから、
379
キツト
娘
(
むすめ
)
も
喜
(
よろこ
)
ぶでせう。
380
此
(
この
)
事
(
こと
)
については
私
(
わたし
)
は
何
(
なに
)
も
申
(
まを
)
しませぬ、
381
梅公
(
うめこう
)
さまにお
任
(
まか
)
せ
致
(
いた
)
します』
382
梅公
(
うめこう
)
『
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
開
(
ひら
)
けたお
婆
(
ばあ
)
さまだ、
383
いや
感心
(
かんしん
)
々々
(
かんしん
)
。
384
これお
婆
(
ばあ
)
さま、
385
之
(
これ
)
から
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
も
聞
(
き
)
きなさい。
386
然
(
しか
)
しバラモンの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
捨
(
す
)
てよとは
云
(
い
)
はないからなア』
387
サンヨ『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
388
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
吾
(
わが
)
家
(
いへ
)
においで
下
(
くだ
)
さつたのをいい
機会
(
きくわい
)
として、
389
今日
(
けふ
)
から
信仰
(
しんかう
)
に
入
(
い
)
れて
頂
(
いただ
)
きませう』
390
タクソン『もし
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
391
どうかお
邪魔
(
じやま
)
でも
厶
(
ござ
)
いませうが、
392
一度
(
いちど
)
私
(
わたし
)
の
主人
(
しゆじん
)
と
会
(
あ
)
ふため、
393
里庄
(
りしやう
)
の
宅
(
うち
)
へお
立寄
(
たちより
)
下
(
くだ
)
されますまいか。
394
里庄
(
りしやう
)
はキツト
喜
(
よろこ
)
ぶで
厶
(
ござ
)
いませうから』
395
照国
(
てるくに
)
『
里庄
(
りしやう
)
の
宅
(
うち
)
も
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
して
厶
(
ござ
)
るだらう。
396
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
尋
(
たづ
)
ねする
事
(
こと
)
にしよう。
397
さア
一同
(
いちどう
)
出立
(
しゆつたつ
)
の
用意
(
ようい
)
をなされ……、
398
イヤお
婆
(
ばあ
)
さま、
399
永
(
なが
)
らくお
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しました。
400
もう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
401
と
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
し
402
里庄
(
りしやう
)
の
宅
(
たく
)
に
向
(
むか
)
つて
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
403
老婆
(
らうば
)
サンヨは
杖
(
つゑ
)
にすがり
乍
(
なが
)
ら
門
(
かど
)
の
外
(
そと
)
迄
(
まで
)
見送
(
みおく
)
り、
404
名残
(
なごり
)
惜
(
を
)
しげに
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
の
見
(
み
)
えぬ
迄
(
まで
)
見送
(
みおく
)
つてゐた。
405
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
406
(
大正一三・一二・一五
旧一一・一九
於祥雲閣
北村隆光
録)
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