霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第三章 (さけい)浮気(うけい)〔一六八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻 篇:第1篇 月の高原 よみ(新仮名遣い):つきのこうげん
章:第3章 酒浮気 よみ(新仮名遣い):さけいうけい 通し章番号:1685
口述日:1924(大正13)年12月15日(旧11月19日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年6月29日
概要: 舞台:タライの村の里庄ジャンクの家 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-04-11 15:52:38 OBC :rm6603
愛善世界社版:37頁 八幡書店版:第11輯 742頁 修補版: 校定版:37頁 普及版:67頁 初版: ページ備考:
001 タライの(むら)里庄(りしやう)ジャンクの(うち)表門(おもてもん)には、002(かふ)(おつ)二人(ふたり)門番(もんばん)胡坐(あぐら)をかいて雑談(ざつだん)(ふけ)つて()た。
003(かふ)(アンコ)『オイ、004バンコ、005どうも(この)(ごろ)(ぐらゐ)怪体(けたい)時候(じこう)はないぢやないか。006(あさ)(はや)くから()丸様(まるさま)がカンカンとお()りなさるかと(おも)へば、007直様(すぐさま)西(にし)(はう)から黒雲(くろくも)がやつて()()(まる)()んで(しま)ひ、008月様(つきさま)()るかと(おも)へば、009(くも)()まれ、010この(あつ)(くに)底冷(そこづめ)たい(かぜ)()011(なん)とはなしに悪魔(あくま)(おそ)はれさうな気分(きぶん)で、012(さけ)でも()まなければやりきれぬぢやないか』
013バンコ『オイ、014アンコ、015それは(なに)()ふのだ。016(さけ)どころかい、017大事(だいじ)大事(だいじ)一人娘(ひとりむすめ)のお(ひめ)(さま)はお行衛(ゆくゑ)(わか)らず、018ジャンクの旦那(だんな)(さま)日々(にちにち)青息(あをいき)吐息(といき)で、019大自在天(だいじざいてん)(さま)火物断(ひものだち)をし艱難(かんなん)苦労(くらう)をして御座(ござ)るのに、020(その)(いへ)()吾々(われわれ)安閑(あんかん)(さけ)()むやうな不始末(ふしまつ)出来(でき)ようか。021(ひめ)(さま)がお(かへ)りになつたら三日(みつか)なりと五日(いつか)なりとお(いはひ)(さけ)(いただ)かうとままだ。022旦那(だんな)(さま)火物断(ひものだち)をして(ござ)るのに、023吾々(われわれ)結構(けつこう)なお扶持(ふち)(いただ)安閑(あんかん)門番(もんばん)をさして(いただ)いて()るのぢやないか。024勿体(もつたい)ない、025冥加(めうが)()きるぞよ』
026アンコ『()れだつて人間(にんげん)はさう悲観(ひくわん)(ばか)りするものぢやない。027天地(てんち)道理(だうり)(かんが)へて()よ、028黒雲(くろくも)日月(じつげつ)()み、029大蛇(をろち)(ひと)()み、030(へび)(かへる)()み、031大魚(たいぎよ)小魚(せうぎよ)()み、032暴君(ばうくん)(ひと)国家(こくか)()み、033英雄(えいゆう)天下(てんか)()み、034女房(にようばう)(をつと)()み、035大工(だいく)(たから)(つち)(のみ)036人間(にんげん)(さけ)()み、037(ちや)()み、038(みづ)()み、039芸者(げいしや)(ひと)家倉(いへくら)()み、040おまけに(とこ)(した)から()(あが)つて()吾々(われわれ)遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく()んで()(すす)(やつ)(のみ)だ。041それだから門番(もんばん)のみ心力(しんりよく)(つひや)謹慎(きんしん)々々(きんしん)謹慎(きんしん)のみ()(おく)つて()るやうな(こと)で、042どうして人間(にんげん)(さま)生命(いのち)(たも)たれようか。043人間(にんげん)生活(せいくわつ)する(ため)(いき)()るのぢやないか』
044バンコ『馬鹿(ばか)()ふな、045(いま)人間(にんげん)生活(せいくわつ)なんてあるものか。046生活(せいくわつ)()(やつ)生々(いきいき)として社会(しやくわい)最善(さいぜん)(てき)活動(くわつどう)をなし、047(かみ)御子(みこ)として()(ため)048(ひと)(ため)愛善(あいぜん)(とく)(ぢう)し、049信真(しんしん)(ひかり)(よく)して、050善美(ぜんび)なる生涯(しやうがい)(おく)るものを(しよう)して生活者(せいくわつしや)()ふのだ。051どいつも、052こいつも生活難(せいくわつなん)がどうだの、053生命(せいめい)がどうだのと学者(がくしや)()つて(ほざ)いて()るが、054生命(せいめい)がどこにあるか。055何奴(どいつ)此奴(こいつ)も、056機械(きかい)人形(にんぎやう)のやうに、057ウヨウヨと蠢動(しゆんどう)して暗黒界(あんこくかい)堕落(だらく)し、058(むし)(いき)半死(はんし)半生(はんしやう)境遇(きやうぐう)にあり(なが)ら、059新生命(しんせいめい)だとか(なん)とか()つて()るのが、060をかしいわい。061生活難(せいくわつなん)ではなくて生存難(せいぞんなん)(こと)()ふのだらう』
062アンコ『生存難(せいぞんなん)()()半死(はんし)半生(はんしやう)境涯(きやうがい)脱却(だつきやく)しようとして吾々(われわれ)活動(くわつどう)をして()るのだ、063それだから生活(せいくわつ)といふのだ。064今日(こんにち)種々(いろいろ)主義者(しゆぎしや)()065彼奴(あいつ)だつて……………、066(ひだり)(かたむ)いているのぢやないか。067(ひだり)(かたむ)くのは(さけ)(かぎ)る。068それだから左傾(さけい)(さけ)(たう)()ふのぢや、069あゝ(さけ)なるかな、070(さけ)百薬(ひやくやく)(ちやう)だ。071万民(ばんみん)愛護(あいご)(かみ)(さま)だ、072平和(へいわ)曙光(しよくわう)だ』
073バンコ『オイオイ アンコ、074さう脱線(だつせん)しては(こま)るぢやないか、075(さけ)左傾党(さけいたう)とを混同(こんどう)してるぢやないか』
076アンコ『(きま)つた(こと)だ。077(さけ)()うた(うへ)(くだ)()き、078(しま)ひの(はて)には()()らない(かか)横面(よこづら)をはり(たふ)し、079(いへ)から(おひ)()して新規(しんき)播直(まきなほ)しに愛善(あいぜん)(とく)()み、080信真(しんしん)(ひかり)()ちた女神(めがみ)(さま)()れるのが(さけ)(とく)だよ。081(これ)(しよう)して万民愛(ばんみんあい)世界(せかい)改革(かいかく)酒断(しゆだん)手段(しゆだん))と()ふのだ。082左傾党(さけいたう)だつて(おな)じやうなものだ。083(ふる)社会(しやくわい)立替(たてか)へて(あたら)しい平和(へいわ)社会(しやくわい)()(なほ)さうとするのだから、084いづれ一度(いちど)(さけ)(よひ)同様(どうやう)に、085落花(らくくわ)狼藉(らうぜき)乱離(らんり)骨敗(こつぱい)086矛盾(むじゆん)混沌(こんとん)暗黒界(あんこくかい)(きた)さないとも(かぎ)らない。087破壊(はくわい)(ため)破壊(はくわい)でなく、088建設(けんせつ)(ため)破壊(はくわい)だよ。089さあさうだから(ぼく)仮令(たとへ)主人(しゆじん)がどうあらうとも、090(ぼく)(ぼく)として(さけ)信頼(しんらい)するのだ』
091バンコ『()れやさうかも()れぬが、092(さけ)()(かぎ)(さけ)(さけ)たいものだなア』
093アンコ『(やま)さけ(うみ)はあせなむ()ありとも
094(さけ)(こころ)(はな)れざりけり。
095()古歌(こか)があるだらう。096さうだから(ぼく)(さけ)()める(こと)出来(でき)ないのだ。097何奴(どいつ)此奴(こいつ)もなさけない(かほ)をして忠義面(ちうぎづら)(ふり)(まは)し、098()潮流(てうりう)(ただよ)ひ、099時代(じだい)(かぜ)()きまくられて戦慄(せんりつ)して()るのだからなア、100(こま)つたものだよ。101(さけ)反対(はんたい)()けだ、102(さけ)()()()んだら()けよ」と()ふぢやないか。103何程(なにほど)()()()いて浮世(うきよ)(くら)せと()つたつて瓢箪(へうたん)ぢやあるまいし、104(さけ)()まずに()けるものか。105左傾(さけい)(そく)右傾(うけい)(さけ)(そく)()け)なりと()這般(しやはん)真理(しんり)()らない唐変木(たうへんぼく)は、106現代(げんだい)()(しよ)することは出来(でき)やせないぞ』
107バンコ『オイそんな(おほ)きな(こゑ)左傾(さけい)々々(さけい)()ふものぢやないわ。108()(ごろ)はバラモンのスパイが昼夜(ちうや)区別(くべつ)なく往来(わうらい)して()るぞ、109(すこ)危険(きけん)言語(げんご)()けたら()からうぞ。110大黒主(おほくろぬし)から()発布(はつぷ)になつた法律(はふりつ)をお(まへ)(なん)心得(こころえ)()るか』
111アンコ『法律(はふりつ)()ふものは、112正邪(せいじや)善悪(ぜんあく)蹂躙(じうりん)して()つ、113暴君(ばうくん)専政(せんせい)謳歌(おうか)する唯一(ゆゐいつ)機関(きくわん)()ぎないのだ。114強者(きやうしや)益々(ますます)(つよ)弱者(じやくしや)益々(ますます)(よわ)く、115悪徳(あくとく)蔓延(まんえん)する悪魔(あくま)機関(きくわん)だ。116今日(こんにち)法学者(はふがくしや)だつて奸吏(かんり)だつてみんな(ぜん)仮面(かめん)(かぶ)り、117飽迄(あくまで)(あく)遂行(すゐかう)しようとして()るのぢやないか。118それだから暗黒(あんこく)無明(むみやう)世界(せかい)だと()ふのだよ。119現代(げんだい)悲境(ひきやう)(すく)ふのには(さけ)でも()んで浩然(こうぜん)()(やしな)ひ、120恍惚(くわうこつ)として(その)心魂(しんこん)天国(てんごく)楽園(らくゑん)(あそ)ぶためだ。121()(なか)にこれに()したる救世主(きうせいしゆ)があらうか。122あゝ(さけ)なるかな(さけ)なるかな。123(ぼく)飽迄(あくまで)酒党(さけたう)だ。124酒党(さけたう)(すなは)()(たう)125どうだ、126(ぼく)教説(けうせつ)が、127うけ()れたかな』
128バンコ『(みぎ)(たしか)うけとり不申候(まうさずさふらふ)だ、129アハヽヽヽ。130(しか)貴様(きさま)(くさ)いぢやないか』
131アンコ『馬鹿(ばか)()ふな、132(おれ)二十八(にじふはつ)(さい)だ、133壮年(さうねん)花盛(はなざか)りだよ。134(まさ)男子(だんし)として()頂点(ちやうてん)(たつ)した(ところ)だ。135スガコ(ひめ)さまだつて(おれ)にはチヨイ()れだつたのだからなア。136(おれ)もスガコさまのお(かほ)をチヨイチヨイ(をが)むのが(たの)しみに、137こんな(いや)しい門番(もんばん)になつたのだ。138蛟竜(かうりよう)池中(ちちう)(ひそ)むとも、139何時(いつ)(まで)池中(ちちう)のものならむや。140一朝(いつてう)風雲(ふううん)()れば天地(てんち)(わだかま)つて日月(じつげつ)呑吐(どんと)する(てい)神力(しんりき)(いう)する怪男児(くわいだんじ)だよ』
141バンコ『ハヽヽヽヽ、142デカタン(かぜ)のやうに、143()くも()いたものだなア。144スガコ(ひめ)(さま)(あい)して(もら)はうと(おも)へば門番(もんばん)ぢや()()かねえ。145なぜ貴様(きさま)()(とほ)天地(てんち)(わだかま)つて風雲(ふううん)()(おこ)し、146(をとこ)(なか)(をとこ)(うた)はれないのだ。147天下一(てんかいち)人気(にんき)(をとこ)となつて()たまへ。148スガコ(ひめ)以上(いじやう)美人(びじん)(うる)さい(ほど)貴様(きさま)周囲(しうゐ)(あつ)まつて()るやうになるわ。149()んな門番(もんばん)(ぐらゐ)やつて()てスガコ(ひめ)(さま)(たい)し、150(こひ)ぢやの(あい)ぢやの(ぬか)すのは片腹(かたはら)(いた)いわ、151アハヽヽヽ。152()主人(しゆじん)(こころ)()らず、153(ふところ)(なか)(あさ)から(ばん)(まで)酒器(しゆき)(かく)しやがつて、154(ひと)()(ぬす)んでチヨイチヨイと()つかけて()ると()ふケチな根性(こんじやう)だから、155いつ(まで)(あたま)(あが)らないのだ、156ハヽヽヽヽ』
157アンコ『これやバンコ、158(おれ)(かね)(おれ)()むのに(なに)(わる)い。159貴様(きさま)(おれ)先輩(せんぱい)ぢや、1591上役(うはやく)だといつも威張(ゐばり)よるが、160そんな(こと)(ひと)使(つか)へるか。161コセコセと(なん)だい。162部下(ぶか)行動(かうどう)をゴテゴテ()ふやうな(こと)でどうして()(をさ)まるか。163吾々(われわれ)圧迫(あつぱく)すりやする(ほど)(かしら)(もた)げるのだ。164反抗(はんかう)抗議(かうぎ)革命(かくめい)吾輩(わがはい)生命(せいめい)だ。165チエー貴様(きさま)もいまのうちに()()めないとアンコ主義者(しゆぎしや)暴動(ばうどう)(おこ)貴様(きさま)地位(ちゐ)転覆(てんぷく)し、166バンコ末代(まつだい)()かべぬやうになるかも()れないぞ。167エーン。168懐中(くわいちう)()んで()(この)酒徳利(さけどくり)貴様(きさま)看破(かんぱ)された以上(いじやう)169もはや(なん)躊躇(ちうちよ)()るものか。170焼糞(やけくそ)だ、171やけ(ざけ)だ、172言論(げんろん)では追付(おつか)ない。173示威(じゐ)行動(かうどう)だ』
174()(なが)(おに)(わらび)(かた)めてバンコの(あたま)(くび)()べよと(なぐ)りつけた。175バンコはアツと(さけ)んで(その)()(たふ)れた。
176 かかる(ところ)へジャンクの(うち)下僕(しもべ)セールは(あわただ)しく(はし)(きた)り、
177セール『オイ、178(なん)(なん)だ、179(めう)悲鳴(ひめい)(きこ)えたぢやないか』
180アンコ『アハヽヽヽ、181アンコさまが国家(こくか)安固(あんこ)()めに、182バンコ平和(へいわ)基礎(きそ)(つく)()め、183日頃(ひごろ)主義(しゆぎ)主張(しゆちやう)酒義(しゆぎ)酒張(しゆちやう))の実行(じつかう)()かけたのだ。184ても()ても(もろ)いものぢやわい、185イヒヽヽヽ』
186セール『オイ、187アンコ、188そんな気楽(きらく)(こと)()つて()るどころかい。189バンコが人事(じんじ)不省(ふせい)(おちい)つて()るぢやないか』
190アンコ『アハヽヽヽ人事(じんじ)不省(ふせい)(おちい)るのも(てん)(しか)らしむる(ところ)ぢや。191此奴(こやつ)自分(じぶん)(こと)ばかり(かんが)へて人事(じんじ)(かへり)みないから人事(じんじ)不省(ふせい)(おちい)つたのだ。192(その)(くせ)(ひと)(あたま)(あが)つて不正(ふせい)(こと)ばかりやりやがつて、193唯一(ゆゐいつ)吾々(われわれ)娯楽(ごらく)にして()(さけ)をどうだの、194こうだのと(あたま)から圧迫(あつぱく)しやがるものだから195(さけ)(れい)聯盟(れんめい)して(ここ)直接(ちよくせつ)行動(かうどう)となつたのだ、196アハヽヽ』
197セール『チエツ、198酒呑(さけのみ)()ふものは仕方(しかた)のないものぢやなア。199どうれ介抱(かいはう)してやらねばなるまい』
200とセールは(きよ)らかな湯水(ゆみづ)()(きた)り、201頭部(とうぶ)面部(めんぶ)(きら)ひなく伊吹(いぶき)狭霧(さぎり)()きかけ、202…バラモン自在天(じざいてん)(すく)ひたまへ(たす)けたまへ…と流汗(りうかん)淋漓(りんり)として祈願(きぐわん)()めた。203半時(はんとき)(ばか)りたつとバンコは(いき)()きかえし、204セールに()()かれ、205ヒヨロリ ヒヨロリと(わが)居間(ゐま)()して(みちび)かれ()く。
206 (あと)見送(みおく)つてアンコは(あや)しき(わら)ひを(うか)べ、
207アンコ『チヨツ、208エヽ反古(ほご)小撚(こより)(つく)つた羅漢(らかん)のやうな(つら)(さら)しやがつて、209(さけ)がどうのこうのと(なん)だい。210(また)セールもセールだ。211(くらがり)(かはづ)()(つぶ)したやうな(こゑ)()しやがつて、212吾輩(わがはい)意見(いけん)がましい(こと)()きやがつた。213ヘン何奴(どいつ)此奴(こいつ)(ふる)(あたま)だな。214(しか)(おれ)も、215(ちつ)とは()くないかも()れぬ。216あまり直接(ちよくせつ)行動(かうどう)()やすぎたからなア。217(しか)当家(たうけ)旦那(だんな)(さま)もさう()ふもののお()(どく)だ。218一人(ひとり)よりないお(ぢやう)さまは悪漢(わるもの)(よる)()(うば)はれ(いま)にお行衛(ゆくゑ)(わか)らず、219其所(そこ)()けてバラモン(ぐん)大将(たいしやう)大足別(おほだるわけ)()220沢山(たくさん)部下(ぶか)()きつれ闖入(ちんにふ)(きた)り、221金銀(きんぎん)珠玉(しゆぎよく)(うば)()(かへ)つた(あと)だから、222旦那(だんな)(さま)()心配(しんぱい)なさるのも()無理(むり)はあるまい。223アヽ(おも)へば(おも)へばお()毒様(どくさま)だ』
224(ひと)()ちつつ(また)もや(ふところ)から酒徳利(さけどつくり)()し、225(ひたひ)をピシヤピシヤと(みぎ)()(たた)(なが)ら、226(ひだり)()徳利(とくり)(くち)自分(じぶん)(くち)(はこ)んで()る。
227 其所(そこ)(あわただ)しく(もん)(くぐ)つて()(きた)一人(ひとり)(をとこ)があつた。228アンコは目敏(めざと)くこれを()て、
229アンコ『オイオイオイ、230どこへ()くのだ。231此処(ここ)門番(もんばん)(ござ)るぞ。232(この)関所(せきしよ)()えるのにや吾輩(わがはい)許可(きよか)()けねばなるまい。233一体(いつたい)貴様(きさま)()(なん)()ふか』
234(をとこ)(インカ)『ハイ(わたし)隣村(となりむら)百姓(ひやくしやう)でインカと(まをし)ます。235ジャンクの旦那(だんな)(さま)()報告(ほうこく)()取急(とりいそ)(まゐ)りました。236何卒(なにとぞ)(とほ)(くだ)さいませ』
237アンコ『ハヽヽヽヽ。238(まへ)()はインカと()ふのか。239そんなら(もん)通過(つうくわ)允可(いんか)してやらぬでもないが、240貴様(きさま)右傾党(うけいたう)左傾党(さけいたう)か、241どちらだ。242左傾党(さけいたう)なら(この)(さけ)飲下(いんか)して(すす)むのだな』
243インカ『イヤ有難(ありがた)う、244(わたし)(さけ)(はなし)()くとどんな大切(だいじ)(よう)でも(わす)れて仕舞(しま)ふのです。245どうか(かへ)りに()まして(くだ)さい』
246アンコ『ナランナラン、247(ひと)(こころざし)()にすると()(こと)があるか。248()(いつ)ぱいグツと飲下(いんか)して(しか)して(のち)(きみ)使命(しめい)をジャンクの(あるじ)報告(はうこく)すれば()いのだ。249さうクシヤクシヤと()(なか)(せま)(ちひ)さく(くら)すものぢやないよ。250まア一口(ひとくち)やりたまへ』
251とインカの口許(くちもと)(つき)つける。252インカは()(ほそ)うしてガブガブと(おと)()(うれ)しげに()()した。
253アンコ『オイ、254コラコラ貴様(きさま)(みな)()んで(しま)つたぢやないか。255(おれ)をどうして()れるのだ』
256インカ『(まこと)にすみませぬ、257あまり美味(おい)しい(さけ)(くち)(はな)さうと(おも)つたのですが、258副守(ふくしゆ)(やつ)259(から)になる(まで)(はな)して()れなかつたのです。260何卒(どうぞ)()()つた(こと)大目(おほめ)()(くだ)さいな』
261アンコ『よし、262それぢや(おれ)()(こと)()いて()れるか、263()いてくれりや了見(れうけん)する』
264インカ『どんな(こと)(ござ)いますか、265とも(かく)()かして(いただ)きませう』
266アンコ『(おれ)()はアンコだ。267(しか)(なが)(おれ)地位(ちゐ)(あま)安固(あんこ)でない。268(いま)バンコに(たい)して蛮行(ばんかう)をやつたものだから、269どうやら(くび)()びさうだ。270だから此所(ここ)をスタコラヨイヤサと三十六(さんじふろく)(けい)(おく)()()さうとして()(とこ)だが、271此処(ここ)()されちや居所(ゐどころ)(こま)る。272浮浪罪(ふらうざい)(つか)まつては大変(たいへん)だから、273(しばら)くお(まへ)(うち)(やしな)つて(もら)ひたいものだなア』
274インカ『(なん)(こと)かと(おも)へばそんな御用(ごよう)ですか。275ヘイ(よろ)しい、276(わたし)もコマの(むら)侠客(けふかく)ぢや。277(をとこ)(たの)まれちや(あと)には()けませぬ、278安心(あんしん)なさい。279きつと()()けますよ』
280アンコ『やア有難(ありがた)い、281(それ)一寸(ちよつと)安心(あんしん)した。282(しか)(きみ)283(あわただ)しうやつて()たのは(なん)(よう)だ。284一寸(ちよつと)端緒(たんちよ)だけでもよいが、285(ぼく)内報(ないはう)して()れまいか』
286インカ『や、287(じつ)(ところ)自分(じぶん)(むら)大変(たいへん)騒動(さうだう)(おこ)つたのだ。288里庄(りしやう)(せがれ)サンダーさまが当家(たうけ)のお嬢様(ぢやうさま)スガコ(さま)にゾツコン、289ラブして(ござ)つた(ところ)290(まへ)()つての(とほ)りスガコさまが行衛(ゆくゑ)不明(ふめい)になつたのだ。291サンダーさまが失望(しつばう)落胆(らくたん)()発狂(はつきやう)したと()え、292(この)(あひだ)から行衛(ゆくゑ)(わか)らぬのだ。293(それ)()めに村中(むらぢう)(やま)()はず(たに)()はず(ひろ)野原(のはら)(まで)294(かへ)(もど)せと(かね)太鼓(たいこ)(さが)して()たのだが、295(いま)行衛(ゆくゑ)(わか)らぬので許嫁(いひなづけ)のある当家(たうけ)無音信(だま)つて()(わけ)には()かないので、296里庄(りしやう)(たの)まれ使(つかひ)()たのだ。297自分(じぶん)沢山(たくさん)乾児(こぶん)使(つか)つて昼夜(ちうや)兼行(けんかう)(さが)して()るのだが(いま)にわからないのだよ。298(じつ)(きの)(どく)(こと)出来(でき)たものだ。299(それ)のみならず300バラモン(ぐん)通過(つうくわ)(さい)村中(むらぢう)婦女(ふぢよ)誘拐(いうかい)し、301村民(そんみん)大変(たいへん)(こま)つて()る、302(なん)とかして(いち)()(はや)所在(ありか)(さが)さねば303(この)インカだつて(をとこ)(かほ)()たないのだ』
304アンコ『アーさうか、305()れや()(どく)だ。306(おれ)もお(まへ)兄弟分(きやうだいぶん)となつて、307(ひと)捜索隊(さうさくたい)御用(ごよう)でも(つと)めようかなア、308アハヽヽヽ』
309インカ『ヤア、310()(かく)(おく)()つて報告(はうこく)()まして()るから、311(また)(あと)()つくり(はな)さうか』
312()ひながら足早(あしばや)にジャンクの(やかた)をさしてかけり()く。
313 かかる(ところ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、314やつて()たのは照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)()(にん)であつた。315アンコが厳重(げんぢう)(とざ)した(もん)(そと)宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)()(なが)ら、
316照国(てるくに)『お(たの)(まを)す、317(たの)(まを)す』
318アンコ『ナヽ(なん)だ、319バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)はお(ことわ)りだ。320宣伝使(せんでんし)なんかに(よう)はない。321トツトと(かへ)つて(くだ)さい。322当家(たうけ)心配事(しんぱいごと)出来(でき)(うへ)(した)へと大騒動(おほさうどう)だ。323そんな気楽(きらく)さうな(うた)(うた)つて()乞食(こじき)(くぐ)(もん)ぢやない。324トツトと()んで(もら)ひませうかい』
325梅公(うめこう)()(かみ)(この)()(なげ)きを(すく)はむが(ため)に、326(をしへ)御子(みこ)をつかはし門外(もんぐわい)()たせ(たま)へども、327奸悪(かんあく)なる()はこの御使(みつかひ)(むか)()(すく)はるる(こと)()らず、328(じつ)(あは)れむべきの(いた)りだ』
329大声(おほごゑ)叱呼(しつこ)した。
330タクソン『オイ門番(もんばん)331アンコにバンコ、332(おれ)主人(しゆじん)にお()()りのタクソンさまだぞ。333屋敷(やしき)難儀(なんぎ)(すく)ふべく三五教(あななひけう)活神(いきがみ)(さま)をお(むか)(まをし)()たのだ。334(なに)をグヅグヅして()るか。335サア(はや)()けたり、336()けたり』
337アンコ『エイ、338嬶盗(かかぬす)まれのタクソン()339(えら)さうに(ぬか)しやがる。340仕方(しかた)がない、341()けてやらう』
342(つぶや)(なが)ら、343(かんぬき)(はづ)し、344パツと(もん)(ひら)いた。
345タクソン『ヤア()苦労(くらう)346いつも元気(げんき)(かほ)をして()るなア、347結構(けつこう)々々(けつこう)
348()(なが)照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)案内(あんない)邸内(ていない)(ふか)(すす)()る。
349大正一三・一二・一五 旧一一・一九 於祥雲閣 加藤明子録)
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki