霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第四章 里庄(りしやう)(なやみ)〔一六八六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻 篇:第1篇 月の高原 よみ(新仮名遣い):つきのこうげん
章:第4章 里庄の悩 よみ(新仮名遣い):りしょうのなやみ 通し章番号:1686
口述日:1924(大正13)年12月15日(旧11月19日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年6月29日
概要: 舞台:タライの村の里庄ジャンクの家 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6604
愛善世界社版:51頁 八幡書店版:第11輯 748頁 修補版: 校定版:51頁 普及版:67頁 初版: ページ備考:
001 タライの(むら)里庄(りしやう)ジャンクは(かさ)なる悲運(ひうん)悄然(せうぜん)として(おく)()火物断(ひものだ)ちをなし、002顔色(がんしよく)(あを)ざめ、003(ほとん)(この)()(ひと)とは()えぬ(まで)にやつれ(なが)004二絃琴(にげんきん)(だん)じて、0041(こころ)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)(なぐさ)めてゐた。
005ジャンク『久方(ひさかた)の、(そら)すみ(わた)日月(じつげつ)
006(ひかり)(きよ)万有(ばんいう)
007()らし(たま)へど醜神(しこがみ)
008(その)(いきほひ)(たけ)くして
009真澄(ますみ)(そら)瞬間(しゆんかん)
010(すみ)(なが)せし常暗(とこやみ)
011(さび)しき()とはなりにけり
012()には百草(ももぐさ)繁茂(はんも)して
013(むらさき)(くれなゐ)(あか)(しろ)
014目出(めで)たき(はな)遠近(をちこち)
015(ところ)()(まで)(さき)(にほ)
016さながら(はな)(むしろ)をば
017()きし(ごと)くに()ゆれ(ども)
018(てん)叢雲(むらくも)(はな)(あらし)
019(しづか)(なみ)(かぜ)()かば
020(うみ)(そこ)ひも白波(しらなみ)
021立髪(たてがみ)ふるひ大津辺(おほつべ)
022(きし)()みつく()(なら)
023天国(てんごく)浄土(じやうど)(たの)みてし
024タライの(むら)(わが)(いへ)
025()変遷(へんせん)にもれずして
026(はしら)(たの)(わが)(つま)
027十年(ととせ)(まへ)病気(いたづき)
028()(よこ)たへて幽界(かくりよ)
029果敢(はか)なき(たび)をなせしより
030(わす)れがたみの一人娘(ひとりご)
031(いへ)(つゑ)とし(ちから)とし
032()へば()()てば(あゆ)めと朝宵(あさよひ)
033(こころ)(くば)(はぐ)くみて
034(やうや)二九(にく)(はる)(むか)
035ヤレ(うれ)しやと(おも)()
036なくなく(しこ)荒風(あらかぜ)
037()きまくられて(つれ)なくも
038(あと)(のこ)りし(われ)(ひと)
039(てん)(なげ)()(こく)
040()べど(さけ)べど行方(ゆくへ)さへ
041(そら)白雲(しらくも)(あて)もなく
042無限(むげん)(なみだ)()もやらず
043()きに(くるし)(わが)不運(ふうん)
044(あは)れみ(たま)自在天(じざいてん)
045大国彦(おほくにひこ)(おん)(まへ)
046(ひとへ)(ねが)(たてまつ)
047(この)()(はしら)(たの)みてし
048スガコの(ひめ)(いま)いづこ
049(あめ)(ゆふべ)(しも)(あさ)
050(こころ)(いた)むる足乳根(たらちね)
051(ちち)(こころ)(おも)()
052(むね)万斛(ばんこく)(なみだ)をば
053(たた)へて(くるし)みゐるならむ
054さは()(なが)(わが)(むすめ)
055如何(いか)なる(まが)(とら)はれて
056(くるし)(なや)みあるとても
057(かみ)(たま)ひし(たま)()
058(いのち)(この)()()(かぎ)
059日頃(ひごろ)(たの)みし(いへ)()
060四方(よも)(つか)はし所在(ありか)をば
061(たづ)(いだ)して(おい)()
062(なみだ)にぬれし衣手(ころもで)
063天津(あまつ)御空(みそら)()のかげに
064(かわ)かし(よろこ)(こと)もあらむ
065それを一途(いちづ)(のぞ)みとし
066(おい)(いのち)(なが)らへて
067(あぢ)なき月日(つきひ)(おく)るなり
068(あはれ)(たま)自在天(じざいてん)
069仮令(たとへ)天地(てんち)()するとも
070(わす)(がた)きは恩愛(おんあい)
071(わが)()(おも)赤心(まごころ)
072まさりしものはあらざらむ
073あゝなつかしやなつかしや
074(ゆめ)になり(とも)スガコ(ひめ)
075(こひ)しき(ちち)よと一言(ひとこと)
076(こと)あげせよや惟神(かむながら)
077(かみ)(めぐみ)(ふか)ければ
078(また)逢瀬(あふせ)川波(かはなみ)
079()うて(なが)るる(あい)(うみ)
080救世(ぐぜい)(ふね)(すく)はれて
081(ちち)(やかた)へイソイソと
082(かへ)()ませよ()(なれ)
083身魂(みたま)(さち)(いの)りつつ
084(あさ)(ゆふ)なに(なげ)くなり
085あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
086神霊(みたま)恩頼(ふゆ)()ぎまつる』
087 かかる(をり)しも玄関番(げんくわんばん)(みちび)かれて隣村(となりむら)侠客(けふかく)インカが088(へだ)ての(ふすま)()しあけ、0881叮嚀(ていねい)辞儀(じぎ)をし(なが)ら、
089インカ『エー、0891旦那(だんな)(さま)090御免(ごめん)(くだ)さいませ』
091 (この)(こゑ)にジャンクは(こと)()()めて、092(なみだ)をかくし(なが)ら、
093ジャンク『ヨー、094ア、095其方(そなた)は、096(おと)名高(なだか)隣村(となりむら)侠客(けふかく)インカ親分(おやぶん)であつたか、097ヨウ、098マア()(くだ)さつた。099そして御用(ごよう)(すぢ)はどんな(こと)かなア、100(はや)()かしてもらひたい』
101インカ『ハイ、102嬢様(ぢやうさま)()行方(ゆくへ)(さが)(もと)め、103(いち)(にち)(はや)旦那(だんな)(さま)(よろこ)んで(いただ)かうと(おも)ひ、104五十(ごじふ)(にん)手下(てした)遠近(ゑんきん)四方(しはう)()くばり、105大捜索(だいさうさく)(いた)しましたが、106(いま)にお所在(ありか)(わか)らず面目(めんぼく)次第(しだい)(ござ)りませぬ。107貴方(あなた)()心中(しんちう)(この)インカ()(さつ)(まを)します』
108ジャンク『ア、109それはお(こころ)(わづら)はし、110(まこと)申訳(まをしわけ)がありませぬ。111(いづ)貴方(あなた)()威光(ゐくわう)()親切(しんせつ)によつて、112(むすめ)のスガコはやがて(かへ)るで(ござ)いませう。113何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)(よろ)しう(ねが)ひます』
114インカ『ハイ、115承知(しようち)(いた)しました。116面目(めんぼく)次第(しだい)(ござ)いませぬが、117(やせ)てもこけても、118遠近(ゑんきん)()()つた侠客(けふかく)(わたし)119(ちから)(かぎ)活動(くわつどう)(いた)し、120(こころ)()(やう)(つと)めるで(ござ)いませう。121(しか)しかかるお(なげき)(なかば)へ、122(また)もや()心配(しんぱい)(こと)申上(まをしあげ)るのは(わたし)()()つて、123(じつ)心苦(こころぐる)しい次第(しだい)(ござ)いますが、124(ぢやう)さまの許嫁(いひなづけ)のサンダー(さま)は、125日夜(にちや)怏々(おうおう)として(たのし)まず、126(つひ)には()行方(ゆくへ)(わか)らなくなり、127父上(ちちうへ)マルク(さま)より(わたし)捜索方(さうさくかた)依頼(いらい)され、128これも(また)二三(にさん)日前(にちまへ)から(ほね)()つて(さが)してゐますが、129どうもお行方(ゆくへ)(わか)りませぬので、130(わたし)(かほ)(だい)なしで(ござ)います』
131ジャンク『(なに)132マルクさまの()子息(しそく)が、133行方(ゆくへ)不明(ふめい)とな。134左様(さやう)(こと)が……出来(でき)てゐるのなら、135これ(ほど)眤懇(じつこん)間柄(あひだがら)136なぜに()ぐに()らしに()(くだ)さらなかつたのだらう。137サテ不思議(ふしぎ)(こと)だなア』
138インカ『(じつ)(ところ)は、139マルクの旦那(だんな)(さま)直様(すぐさま)()通知(つうち)(あそ)ばす(はず)(ござ)いましたが、140旦那(だんな)(さま)嬢様(ぢやうさま)(こと)()いて()心配(しんぱい)最中(さいちう)へ、141こんな(はなし)(まを)()げたら、142(さぞ)(ちから)おとしをなさるだらうと思召(おぼしめ)され、143ソツと人知(ひとし)れず捜索(そうさく)(はじ)められ、144()子息(しそく)のサンダー(さま)()(かへ)りになりさへすれば、145それで貴方(あなた)(さま)()心配(しんぱい)をかけるに(およ)ばないと、146(いま)(まで)(つつ)んでゐられましたので(ござ)いますが、147どうしても行方(ゆくへ)(わか)らぬとすれば、148当家(たうけ)()養子(やうし)()まつたサンダーさまの(こと)(ござ)いますから、149旦那(だんな)(さま)報告(はうこく)せずには()られないので、150今日(こんにち)(わたし)に「一寸(ちよつと)151使(つかひ)()つて()てくれぬか」との()(たの)み、152(まかり)(いで)ました次第(しだい)(ござ)います』
153ジャンク『(なん)と、154(うれひ)(かさ)なれば(かさ)なるものだなア。155(わが)(むすめ)紛失(ふんしつ)といひ、156許嫁(いひなづけ)養子(やうし)サンダーの行方(ゆくへ)不明(ふめい)といひ、157あゝ天道(てんだう)()()か。158かく(まで)(なげ)きの(うち)(かさ)なるものだらうか、159如何(いか)なる宿世(すぐせ)罪業(ざいごふ)かは()らね(ども)160これは(また)(あんま)惨酷(ざんこく)だ、161あゝ』
162吐息(といき)をつき(さし)(うつむ)き、163(あつ)(なみだ)をポロリポロリとおとしてゐる。
164インカ『お(なげき)()無理(むり)(ござ)いませぬが、165(なげ)いて(こと)のすむものでも(ござ)いませぬ。166()(こころ)(おち)つけなさいませ。167きツと(かみ)(さま)()(たす)(くだ)さるでせう』
168ジャンク『ヤ、169有難(ありがた)う、170(くや)んで(かへ)らぬ(こと)を、171(また)しても年老(としより)愚痴(ぐち)172つい(なみだ)がこぼれるのだ、173アハヽヽヽヽヽ。174これもしインカさま、175サンダーはバラモン(ぐん)(とら)はれたのではありますまいか』
176インカ『(かみ)ならぬ()吾々(われわれ)177()うとも申上(まをしあ)げかねますが、178サンダー(さま)何時(いつ)女装(ぢよさう)をしてゐられますから、179大足別(おほだるわけ)軍勢(ぐんぜい)(をんな)(あやま)つてつれ(かへ)つたのかも()れませぬ。180(わたし)一身(いつしん)()して、181バラモンの陣中(ぢんちう)()()み、182実否(じつぴ)(しら)べむかと(ぞん)じますけれど、183(なに)()うても()(あま)大軍(たいぐん)184()()ゑたる虎狼(こらう)(ども)(むれ)185可惜(あたら)犬死(いぬじに)(いた)すよりも……と(ぞん)じ、186卑怯(ひけふ)かは()りませぬが、187(なに)とかして安全(あんぜん)にお(すく)(まを)したいと苦心(くしん)惨澹(さんたん)最中(さいちう)(ござ)います。188()()ては(いのち)(をし)まぬ侠客(けふかく)なれど、189目的(もくてき)(たつ)せずに犬死(いぬじに)するは、190男子(だんし)意気(いき)でも(ござ)いますまい。191()きかへる(むね)(おさ)へて、192(とき)()つて()るやうな次第(しだい)(ござ)います。193(しか)(じや)(せい)()つものぢや(ござ)いませぬ。194きつとお嬢様(ぢやうさま)もサンダー(さま)無事(ぶじ)にお(かへ)りなさるでせう。195心丈夫(こころぢやうぶ)にお()ちなさいませ』
196ジャンク『ハイ、197弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)(やみ)()(なか)198(たれ)にたよる(すべ)もなき腑甲斐(ふがひ)なき里庄(りしやう)()199(ただ)貴方(あなた)(さま)唯一(ゆゐいつ)(たす)(がみ)として、200(ほそ)(いき)()をつないで()ります。201何分(なにぶん)(よろ)しく(ねが)ひます』
202 ()(はな)(ところ)旧臣(きうしん)のタクソンは(あわただ)しく(いり)(きた)り、203(あたま)(たたみ)にすりつけ(なが)ら、
204タクソン『旦那(だんな)(さま)205()愁傷(しうしやう)(ほど)()(さつ)(まを)()げます。206まだ嬢様(ぢやうさま)のお行方(ゆくへ)(なん)便(たよ)りも(ござ)いませぬか』
207ジャンク『ア、208其方(そなた)はタクソンか、209よう()(くだ)さつた。210(むすめ)行方(ゆくへ)(つい)て、211(いま)インカ親分(おやぶん)相談(さうだん)をしてゐた(ところ)だ。212(まへ)大切(だいじ)女房(にようばう)()られ、213さぞ心配(しんぱい)してゐるだらう』
214タクソン『旦那(だんな)(さま)215勿体(もつたい)ない(その)言葉(ことば)216(わたし)女房(にようばう)なんか、217(もの)(かず)でも(ござ)いませぬが、218大切(たいせつ)な、219(ただ)一人(ひとり)嬢様(ぢやうさま)を、220()られ(あそ)ばした旦那(だんな)(さま)のお(こころ)221()つても()てもゐられないで(ござ)いませう。222早速(さつそく)()見舞(みまひ)(まゐ)り、223嬢様(ぢやうさま)(おん)在所(ありか)(さが)()さねば()まないので(ござ)いますが、224バラモン(ぐん)跋扈(ばつこ)跳梁(てうりやう)(ため)に、225(わが)女房(にようばう)はかつさらはれ、226(また)(むら)妻女(さいぢよ)(のこ)らず毒手(どくしゆ)にかかり、227阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)地獄(ぢごく)有様(ありさま)(ござ)いますから、228旦那(だんな)(さま)にはすまぬ(こと)とは()(なが)ら、229(その)(はう)()をとられ、230いろいろ善後策(ぜんごさく)(かう)じ、231つい、232()無沙汰(ぶさた)(いた)しました』
233ジャンク『ナニ、234そんな心配(しんぱい)はしてくれな。235(まへ)村人(むらびと)(ため)非常(ひじやう)(ちから)(つく)してゐるといふ(こと)()いて、236(かげ)(なが)(わたし)感涙(かんるい)にむせんでゐたのだ。237(わたし)(むすめ)はどうでもよい。238(むら)災難(さいなん)(すく)ひさへすれば、239(これ)にまさつた(よろこ)びはないのだ』
240タクソン『旦那(だんな)(さま)慈愛(じあい)(ふか)(その)言葉(ことば)を、241村人(むらびと)()いたなら、242さぞ(よろこ)(こと)(ござ)いませう。243(わたし)貴方(あなた)のお言葉(ことば)(かみ)慈言(じげん)のやうに(こころ)にしみ(わた)り、244有難(ありがた)勿体(もつたい)なさ、245自然(しぜん)落涙(らくるい)(いた)します。246あゝ(とき)にインカの親分(おやぶん)さま、247()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)います。248どうかお嬢様(ぢやうさま)(ため)一臂(いつぴ)(ちから)をお()(くだ)さいますやう、249旦那(だんな)(さま)(かは)り、250(ねがひ)(まを)します』
251 インカも(なみだ)ぐみ(なが)ら、252許嫁(いひなづけ)のサンダーが(また)もやさらはれたといへば、253(なげき)(うへ)(なげき)をかさねる道理(だうり)だ。254(この)タクソンには()らさない(はう)()いだらうと(おも)つたから、255サンダーの(こと)(くち)にせず、
256インカ『お嬢様(ぢやうさま)(こと)()心配(しんぱい)(くだ)さいますな。257キツト(かみ)(さま)がお(すく)(くだ)さるでせう。258(また)(わたし)(かみ)(さま)のお(ちから)()つて最善(さいぜん)努力(どりよく)(つく)さして(いただ)きませう』
259タクソン『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。260モウ()うなれば、261(かみ)(さま)何事(なにごと)もおすがりするより(みち)(ござ)いませぬ。262(とき)に、263旦那(だんな)(さま)264インカ(さま)265(よろこ)(くだ)さいませ。266斎苑(いそ)(やかた)より派遣(はけん)されたる三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)267照国別(てるくにわけ)といふ活神(いきがみ)(さま)(この)(むら)にお()でになり、268サンヨの(いへ)にお立寄(たちよ)(くだ)さいまして、269(ばあ)さまの危難(きなん)をお(すく)(くだ)され、270(その)(うへ)271バラモンの悪神(あくがみ)言向(ことむけ)(やは)してやらうと仰有(おつしや)いましたので、272吾々(われわれ)(ほう)ずる宗旨(しうし)(ちが)ひますけれど、273(かみ)(たすけ)(ふた)つはないと(ぞん)じ、274(ねがひ)(いた)しまして、275(ただ)(いま)当家(たうけ)玄関(げんくわん)(まで)(とも)(いた)しました。276宣伝使(せんでんし)にお(たづ)ねになつたならば277嬢様(ぢやうさま)所在(ありか)判然(はんぜん)するだらうかと(ぞん)じましたので、278旦那(だんな)(さま)照会(せうくわい)もせず、279だしぬけに、280失礼(しつれい)ながら()案内(あんない)(まを)して(まゐ)りました』
281ジャンク『ナニ、282三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)()案内(あんない)(まを)して()たといふのか。283あ、284(なに)はともあれ大自在天(だいじざいてん)(さま)()引合(ひきあは)せだらう。285サアサア玄関(げんくわん)にお()たせ(まを)してはすまない。286(はや)(おく)(とほ)つて(いただ)くやうに……セールは()らぬか、287セール セール』
288 ()ばはれば『ハイ』と(こた)へて、289セールは(この)()(あら)はれ、
290セール『旦那(だんな)(さま)291(なん)御用(ごよう)(ござ)いますか』
292ジャンク『お(まへ)は、293玄関(げんくわん)にお客様(きやくさま)()えてゐるのを()らぬのか、294(はや)くお(むか)(まを)して()い。295玄関番(げんくわんばん)もせずにどこへ()つて()つたのだ』
296セール『ハイ、297(まこと)不都合(ふつがふ)(いた)しました。298(じつ)表門(おもてもん)(あた)つて、299騒々(さうざう)しい(こゑ)がしますので()(もの)(とり)(あへ)()つてみれば、300アンコ、301バンコの大喧嘩(おほげんくわ)302バンコは鉄拳(てつけん)をくらつて気絶(きぜつ)(いた)しましたので、303いろいろと介抱(かいはう)(いた)し、304(やうや)蘇生(そせい)させましたが、305どうやらすると(ふたた)昏睡(こんすい)状態(じやうたい)()(さう)なので、306()(はな)されず介抱(かいはう)(いた)してをりました。307旦那(だんな)(さま)()(なげき)(なかば)へ、308かやうな(くだ)らぬ門番(もんばん)(あらそい)(ごと)(まで)申上(まをしあ)げては()まないと(ぞん)じ、309(さし)(ひか)えて()りました』
310ジャンク『そりや()しからぬ(やつ)だ。311アンコといふ(やつ)は、312(さけ)くせの(わる)(をとこ)だからなア。313(しか)(なに)()もあれ、314宣伝使(せんでんし)()案内(あんない)(まを)して()い』
315 『ハイ』と(こた)へて、316セールは玄関(げんくわん)(たち)(あら)はれ、317一同(いちどう)案内(あんない)した。318照国別(てるくにわけ)(はじ)梅公(うめこう)319照公(てるこう)320エルソンの()(にん)はジャンクの居間(ゐま)に、321一礼(いちれい)(ほどこ)()()いた。
322ジャンク『これはこれは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)323(しづ)伏家(ふせや)()くお(たづ)(くだ)さいました。324何分(なにぶん)(よろ)しく()(ねがひ)(まを)します。325(わたし)(この)(むら)里庄(りしやう)(つと)むるジャンクと(まを)(もの)(ござ)います』
326照国(てるくに)『お(はつ)にお()にかかります。327(この)(むら)入口(いりぐち)にてタクソンさまにお()にかかり、328(うけたま)はればお(やかた)にはお取込(とりこみ)のお()りなさるといふ(こと)329それを()いては宣伝使(せんでんし)吾々(われわれ)330聞捨(ききずて)にもなりませぬから、331()邪魔(じやま)(いた)し、332()機嫌(きげん)(うかが)ひに(まゐ)りました。333何分(なにぶん)神力(しんりき)()らぬ、334修業中(しうげふちう)吾々(われわれ)(ござ)いますから、335(なに)もお()()ひませぬが、336(かみ)(さま)のお(ちから)によりて、337最善(さいぜん)方法(はうはふ)(つく)さして(いただ)きたいと(おも)ひます』
338ジャンク『(たふと)有難(ありがた)(その)()言葉(ことば)339老木(おいき)若芽(わかめ)(ふき)()し、340(はな)()春陽(しゆんやう)()(ただよ)(やう)(ござ)います。341此処(ここ)(ござ)るお(かた)はインカ親分(おやぶん)といつて隣村(となりむら)侠客(けふかく)(ござ)いますが、342(この)(かた)にもいろいろと()心配(しんぱい)にあづかつて()るので(ござ)います』
343照国(てるくに)『あゝ、344これはこれは、345(はつ)にお()にかかります。346あなたが有名(いうめい)侠客(けふかく)のインカ親分(おやぶん)(ござ)いましたか。347何卒(なにとぞ)見知(みし)りおかれまして、348今後(こんご)()眤懇(じつこん)(ねが)ひます』
349インカ『貴方(あなた)(さま)は、350(いま)(うけたま)はれば(たふと)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)351ならず(もの)取締(とりしまり)(いた)野郎(やらう)(ござ)います。352どうか(わたし)のやうなケチな(やつ)でも、353(をとこ)のはしくれと思召(おぼしめ)し、354何卒(なにとぞ)()をかけ(くだ)さいませ』
355 ()かる(ところ)へセールはあわただしく(この)()(あら)はれ、
356セール『旦那(だんな)(さま)(まをし)()げます、357(いま)国王(こくわう)(さま)のお使(つかひ)がみえまして(ござ)います。358如何(いかが)(とり)(はか)らひませうや』
359ジャンク『ハテ国王(こくわう)(さま)のお使(つかひ)とは何事(なにごと)だらう。360(なに)()もあれ、361別殿(べつでん)()案内(あんない)(まを)せ。362すぐさまお()にかかるから……』
363セール『ハイ(かしこ)まりました』
364とセールは足早(あしばや)玄関(げんくわん)()して(いで)てゆく。365一同(いちどう)(かほ)見合(みあは)せ、366何事(なにごと)(おこ)りしならむかと不審(ふしん)(まゆ)をひそめて()た。
367照国別(てるくにわけ)三五(あななひ)(かみ)のあれます(うへ)からは
368いかなる(こと)もゆめな(うれ)ひそ』
369照国(てるくに)()(なか)相身互(あひみたがひ)370まして四海(しかい)兄弟(けいてい)(まを)しますれば、371何卒(なにとぞ)()眤懇(じつこん)(ねが)ひませう』
372 ジャンクは小声(こごゑ)で『ハヽヽヽヽヽ』と(わら)(なが)ら、
373ジャンク『先生(せんせい)(さま)374(しばら)失礼(しつれい)(いた)します。375オイ、376タクソン、377使(つかひ)にお()(かか)つて()るから、378(まへ)宣伝使(せんでんし)(さま)接待(せつたい)をしてゐてくれ』
379タクソン『ハイ承知(しようち)(いた)しました。380勝手(かつて)(おぼ)えし()(いへ)(なか)381()安心(あんしん)なさいませ』
382ジャンク『タクソン、383落度(おちど)のないよう、384()無礼(ぶれい)をせぬ(やう)(たの)んでおくぞや』
385言葉(ことば)(のこ)し、386別室(べつしつ)(はい)つて、3861礼服(れいふく)着用(ちやくよう)し、387別殿(べつでん)さして(すす)()く。
388大正一三・一二・一五 旧一一・一九 於祥雲閣 松村真澄録)
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki