霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第66巻(巳の巻)
序文
総説
第1篇 月の高原
01 暁の空
〔1683〕
02 祖先の恵
〔1684〕
03 酒浮気
〔1685〕
04 里庄の悩
〔1686〕
05 愁雲退散
〔1687〕
06 神軍義兵
〔1688〕
第2篇 容怪変化
07 女白浪
〔1689〕
08 神乎魔乎
〔1690〕
09 谷底の宴
〔1691〕
10 八百長劇
〔1692〕
11 亞魔の河
〔1693〕
第3篇 異燭獣虚
12 恋の暗路
〔1694〕
13 恋の懸嘴
〔1695〕
14 相生松風
〔1696〕
15 喰ひ違ひ
〔1697〕
第4篇 恋連愛曖
16 恋の夢路
〔1698〕
17 縁馬の別
〔1699〕
18 魔神の囁
〔1700〕
19 女の度胸
〔1701〕
20 真鬼姉妹
〔1702〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第66巻
> 第2篇 容怪変化 > 第8章 神乎魔乎
<<< 女白浪
(B)
(N)
谷底の宴 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第八章
神乎
(
かみか
)
魔乎
(
まか
)
〔一六九〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻
篇:
第2篇 容怪変化
よみ(新仮名遣い):
ようかいへんげ
章:
第8章 神乎魔乎
よみ(新仮名遣い):
かみかまか
通し章番号:
1690
口述日:
1924(大正13)年12月16日(旧11月20日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年6月29日
概要:
舞台:
オーラ山
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6608
愛善世界社版:
115頁
八幡書店版:
第11輯 771頁
修補版:
校定版:
115頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
美
(
び
)
の
化身
(
けしん
)
、
002
愛
(
あい
)
の
権化
(
ごんげ
)
、
003
善
(
ぜん
)
の
極致
(
きよくち
)
、
004
真情
(
しんじやう
)
の
発露
(
はつろ
)
にして
平和
(
へいわ
)
の
女神
(
めがみ
)
と
渇仰
(
かつかう
)
憧憬
(
どうけい
)
さるる
天成
(
てんせい
)
の
美人
(
びじん
)
も、
005
一度
(
ひとたび
)
霜雪
(
さうせつ
)
を
踏
(
ふ
)
み
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どたう
)
の
中
(
なか
)
に
漂
(
ただよ
)
ひ、
006
あらゆる
危険
(
きけん
)
と
罪悪
(
ざいあく
)
との
渦
(
うづ
)
に
巻
(
ま
)
かれて、
007
其
(
その
)
精神内
(
せいしんない
)
に
急激
(
きふげき
)
なる
変調
(
へんてう
)
を
来
(
きた
)
した
時
(
とき
)
は、
008
忽
(
たちま
)
ち
鬼女
(
きぢよ
)
となり
悪魔
(
あくま
)
となり、
009
竜蛇
(
りゆうだ
)
となり
国
(
くに
)
を
傾
(
かたむ
)
け
城
(
しろ
)
を
覆
(
くつが
)
へし、
010
あらゆる
男子
(
だんし
)
の
心胆
(
しんたん
)
をとろかし、
011
男子
(
だんし
)
の
稜々
(
りようりよう
)
たる
気骨
(
きこつ
)
も、
012
肉離
(
にくばな
)
れのする
所
(
ところ
)
まで
魔
(
ま
)
の
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
ばすものである。
013
実
(
げ
)
にも
女
(
をんな
)
は
外道
(
げだう
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
、
014
鬼畜
(
きちく
)
の
親玉
(
おやだま
)
、
015
悪魔
(
あくま
)
の
集合場
(
しふがふぢやう
)
、
016
暗黒
(
あんこく
)
無明
(
むみやう
)
の
張本
(
ちやうほん
)
となつて
天下
(
てんか
)
を
混乱
(
こんらん
)
し、
017
あらゆる
害毒
(
がいどく
)
を
流布
(
るふ
)
するに
至
(
いた
)
る。
018
彼
(
かれ
)
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
梅花
(
ばいくわ
)
の
唇
(
くちびる
)
、
019
柳
(
やなぎ
)
の
眉
(
まゆ
)
、
020
鈴
(
すず
)
をはつたやうな
眼
(
め
)
、
021
白
(
しろ
)
い
顔
(
かほ
)
の
中央
(
ちうあう
)
に、
022
こんもりとした
恰好
(
かつかう
)
のよい
鼻
(
はな
)
、
023
白珊瑚
(
しろさんご
)
の
歯
(
は
)
の
色
(
いろ
)
、
024
背
(
せ
)
は
高
(
たか
)
からず
低
(
ひく
)
からず、
025
地蔵
(
ぢざう
)
の
肩
(
かた
)
、
026
ふつくりとして
恰好
(
かつかう
)
のよい
乳房
(
ちぶさ
)
、
027
滑
(
なめ
)
らかな
玉
(
たま
)
の
肌
(
はだ
)
、
028
髪
(
かみ
)
は
漆
(
うるし
)
の
如
(
ごと
)
く
瑠璃
(
るり
)
の
如
(
ごと
)
く
黒
(
くろ
)
き
艶
(
つや
)
を
腮辺
(
しへん
)
に
放
(
はな
)
ち、
029
象牙
(
ざうげ
)
細工
(
ざいく
)
のやうな
手首
(
てくび
)
、
030
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
、
031
瑪瑙
(
めなう
)
のやうな
爪
(
つめ
)
の
色
(
いろ
)
、
032
歩行
(
ほかう
)
する
姿
(
すがた
)
は
春
(
はる
)
の
花
(
はな
)
の
微風
(
びふう
)
に
揺
(
ゆ
)
れるが
如
(
ごと
)
く、
033
縦
(
たて
)
から
見
(
み
)
ても
横
(
よこ
)
から
見
(
み
)
ても
034
どこに
点
(
てん
)
の
打
(
う
)
ち
所
(
どころ
)
のない
嬋娟
(
せんけん
)
窈窕
(
えうてう
)
たる
傾国
(
けいこく
)
の
美人
(
びじん
)
であつた。
035
彼
(
かれ
)
はタライの
村
(
むら
)
の
吾
(
わが
)
家
(
いへ
)
にある
頃
(
ころ
)
より、
036
その
美貌
(
びばう
)
が
災
(
わざはひ
)
して、
037
あらゆる
男子
(
だんし
)
に
恋
(
こひ
)
の
矢玉
(
やだま
)
を
集中
(
しふちう
)
されたが、
038
彼
(
かれ
)
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
の
意思
(
いし
)
に
合
(
あ
)
つた
賢明
(
けんめい
)
にして
勇壮
(
ゆうさう
)
なる
男子
(
だんし
)
の
本領
(
ほんりやう
)
を
具備
(
ぐび
)
した
恋人
(
こひびと
)
が
見付
(
みつ
)
からなかつた。
039
さうして
彼
(
かれ
)
は
蜥蜴面
(
とかげづら
)
、
040
蛙面
(
かはづづら
)
、
041
閻面
(
えんまづら
)
、
042
南瓜面
(
かぼちやづら
)
、
043
瓢箪面
(
へうたんづら
)
、
044
瓜実顔
(
うりざねがほ
)
、
045
茄子
(
なすび
)
のやうな
黒
(
くろ
)
い
顔
(
かほ
)
等
(
とう
)
の
悪性
(
あくしやう
)
男
(
をとこ
)
に
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
され、
046
日夜
(
にちや
)
男子
(
だんし
)
たるものの
弱点
(
じやくてん
)
を
知
(
し
)
り、
047
嘔吐
(
おうど
)
を
催
(
もよほ
)
す
思
(
おも
)
ひに
十六
(
じふろく
)
の
春
(
はる
)
より
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
光陰
(
くわういん
)
を
味気
(
あぢき
)
なく
情
(
なさ
)
けなく
感
(
かん
)
じつつ
暮
(
くら
)
してゐた。
048
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
男子
(
だんし
)
と
云
(
い
)
ふ
男子
(
だんし
)
は
一人
(
ひとり
)
として
碌
(
ろく
)
なものはない、
049
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
ては
才子
(
さいし
)
と
見
(
み
)
え
勇者
(
ゆうしや
)
と
見
(
み
)
え、
050
或
(
あるひ
)
は
人情
(
にんじやう
)
深
(
ふか
)
き
有徳者
(
いうとくしや
)
と
見
(
み
)
え、
051
間然
(
かんぜん
)
する
所
(
ところ
)
なき
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
だと
世
(
よ
)
の
誉
(
ほまれ
)
を
専
(
もつぱ
)
らにする
男子
(
だんし
)
に
接
(
せつ
)
して
見
(
み
)
ても、
052
その
魂
(
たましひ
)
を
包
(
つつ
)
んだ
肉体
(
にくたい
)
と
云
(
い
)
ふ
表皮
(
へうひ
)
を
破羅
(
はら
)
剔抉
(
てきけつ
)
して
精神
(
せいしん
)
のドン
底
(
ぞこ
)
を
洞察
(
どうさつ
)
すると、
053
何
(
いづ
)
れも
悪臭
(
あくしう
)
蝟集
(
ゐしふ
)
して
恰
(
あたか
)
も
塵捨場
(
ごみすてば
)
の
如
(
ごと
)
く、
054
糞尿
(
ふんねう
)
の
堆積
(
たいせき
)
せるが
如
(
ごと
)
くに
感
(
かん
)
じ、
055
恋
(
こひ
)
てふものの
到底
(
たうてい
)
、
056
完全
(
くわんぜん
)
に
味
(
あぢ
)
はふべからざる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つた。
057
彼
(
かれ
)
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
他
(
た
)
の
女
(
をんな
)
に
比
(
くら
)
べて
理智
(
りち
)
に
富
(
と
)
んでゐた。
058
凡
(
すべ
)
てが
男性
(
だんせい
)
的
(
てき
)
であつた。
059
それ
故
(
ゆゑ
)
なまめかしい
香油
(
かうゆ
)
の
香
(
にほひ
)
や
白粉
(
おしろい
)
の
香
(
にほひ
)
で、
060
ごまかして
居
(
ゐ
)
るハイカラ
男子
(
だんし
)
を
見
(
み
)
ては
蛇蝎
(
だかつ
)
の
如
(
ごと
)
くに
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
うた。
061
さうして
男子
(
だんし
)
てふものの
卑怯
(
ひけふ
)
さ、
062
腑甲斐
(
ふがひ
)
なさ、
063
女
(
をんな
)
に
対
(
たい
)
して
無力
(
むりよく
)
なる
真理
(
しんり
)
を
悟
(
さと
)
つた。
064
彼
(
かれ
)
は
如何
(
いか
)
にもして
自分
(
じぶん
)
に
勝
(
まさ
)
る
逞
(
たくま
)
しい、
065
雄々
(
をを
)
しい
男子
(
だんし
)
と
結婚
(
けつこん
)
して
見
(
み
)
たいとの
念慮
(
ねんりよ
)
を
離
(
はな
)
さなかつた。
066
時
(
とき
)
しもあれ、
067
バラモン
教
(
けう
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
なるもの、
068
荒風
(
あらかぜ
)
吹
(
ふ
)
き
捲
(
ま
)
くる
或
(
ある
)
日
(
ひ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
、
069
門口
(
かどぐち
)
に
立
(
た
)
つて
一夜
(
いちや
)
の
宿
(
やど
)
を
乞
(
こ
)
うた。
070
彼
(
かれ
)
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
は
戸
(
と
)
の
節穴
(
ふしあな
)
より
修験者
(
しゆげんじや
)
を
垣間
(
かいま
)
見
(
み
)
れば
071
帽子
(
ばうし
)
を
深
(
ふか
)
く
被
(
かぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
るためその
面体
(
めんてい
)
は
確
(
しか
)
と
分
(
わか
)
らねど、
072
どこともなしに
逞
(
たくま
)
しい、
073
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
だと
直覚
(
ちよくかく
)
した。
074
そこで
彼
(
かれ
)
は
心
(
こころ
)
よく
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
いて
修験者
(
しゆげんじや
)
を
呼
(
よ
)
び
入
(
い
)
れ、
075
いろいろと
世
(
よ
)
の
有様
(
ありさま
)
を
徹宵
(
てつせう
)
して
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ひ
076
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
普通人
(
ふつうじん
)
とは
異
(
こと
)
なり、
077
どこともなく
山気
(
やまけ
)
のあるに
心
(
こころ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
078
不満足
(
ふまんぞく
)
乍
(
なが
)
らも……
普通
(
ふつう
)
の
男子
(
だんし
)
に
比
(
くら
)
ぶればチツトは
男
(
をとこ
)
らしい
処
(
ところ
)
もある、
079
盈
(
み
)
つれば
虧
(
か
)
くる
世
(
よ
)
の
習
(
ならひ
)
、
080
到底
(
たうてい
)
明暗
(
めいあん
)
行交
(
ゆきか
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
には、
081
円満
(
ゑんまん
)
とか
具足
(
ぐそく
)
とか
完全
(
くわんぜん
)
とか
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
望
(
のぞ
)
まれなからう、
082
エーままよ、
083
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
と、
084
母
(
はは
)
と
妹
(
いもうと
)
にはすまないが
共
(
とも
)
に
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
085
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
抜
(
ぬ
)
け
出
(
いだ
)
し、
086
一
(
ひと
)
つ
天下
(
てんか
)
を
驚
(
おどろ
)
かすやうな
大賭博
(
おほばくち
)
が
打
(
う
)
つて
見
(
み
)
たい。
087
のるか、
088
そるかだ、
089
事
(
こと
)
の
成功
(
せいこう
)
不成功
(
ふせいこう
)
は
問
(
と
)
ふ
所
(
ところ
)
でない。
090
一度
(
いちど
)
死
(
し
)
んだら
二度
(
にど
)
とは
死
(
し
)
なぬ。
091
何事
(
なにごと
)
も
死
(
し
)
を
決
(
けつ
)
して
断行
(
だんかう
)
すれば
鬼神
(
きしん
)
も
避
(
さ
)
くるとかや、
092
あゝ
断行
(
だんかう
)
々々
(
だんかう
)
……と
首肯
(
うなづ
)
き
乍
(
なが
)
ら
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
から
玄真坊
(
げんしんばう
)
を
口説
(
くど
)
き
落
(
おと
)
し、
093
あくる
日
(
ひ
)
の
真夜中
(
まよなか
)
頃
(
ごろ
)
、
094
両人
(
りやうにん
)
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
執
(
と
)
つて、
095
十八
(
じふはち
)
年
(
ねん
)
住
(
す
)
みなれし
故郷
(
こきやう
)
を
後
(
あと
)
に、
096
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
漂浪
(
さまよ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
097
遂
(
つひ
)
に
十八
(
じふはつ
)
才
(
さい
)
の
暮
(
くれ
)
、
098
此
(
この
)
オーラ
山
(
ざん
)
に
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
り
大陰謀
(
だいいんぼう
)
実行
(
じつかう
)
の
第一歩
(
だいいつぽ
)
を
進
(
すす
)
めんとしたのである。
099
彼女
(
かのぢよ
)
は
時期
(
じき
)
の
至
(
いた
)
るまで
表面
(
うはべ
)
に
柔順
(
じうじゆん
)
と
貞淑
(
ていしゆく
)
を
粧
(
よそほ
)
ひ
豺狼
(
さいらう
)
の
心
(
こころ
)
を
深
(
ふか
)
く
胸
(
むね
)
に
包
(
つつ
)
み、
100
おひおひ
月日
(
つきひ
)
が
経
(
た
)
つに
従
(
したが
)
つて、
101
鼻持
(
はなもち
)
のならぬ
香
(
にほひ
)
を
感
(
かん
)
じて
来
(
き
)
た
玄真坊
(
げんしんばう
)
に、
102
表面
(
へうめん
)
あらゆる
媚
(
こび
)
を
呈
(
てい
)
し、
103
夫婦
(
ふうふ
)
となつて
時
(
とき
)
の
至
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
ちつつあつた。
104
彼
(
かれ
)
は、
105
もはや、
1051
躊躇
(
ちうちよ
)
すべき
時
(
とき
)
に
非
(
あら
)
ず、
106
シーゴー
坊
(
ばう
)
や
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
部下
(
ぶか
)
に
集
(
あつ
)
まる
三千
(
さんぜん
)
人
(
にん
)
の
悪党輩
(
あくたうばら
)
を
利用
(
りよう
)
してトルマン
国
(
ごく
)
を
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れ、
107
バルガン
城
(
じやう
)
を
根拠
(
こんきよ
)
として
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
七
千
(
せん
)
余国
(
よこく
)
の
大女帝
(
だいによてい
)
となり、
108
驍名
(
げうめい
)
を
天下
(
てんか
)
に
輝
(
かがや
)
かさむ
事
(
こと
)
を
日夜
(
にちや
)
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
つてゐたのである。
109
それ
故
(
ゆゑ
)
彼
(
かれ
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
塗
(
ぬ
)
つて
居
(
ゐ
)
た
金箔
(
きんぱく
)
を
剥
(
は
)
がし
生地
(
きぢ
)
を
表
(
あら
)
はして、
110
シーゴー、
111
玄真
(
げんしん
)
の
二
(
に
)
巨頭
(
きよとう
)
に
向
(
むか
)
ひ
思
(
おも
)
ひきつた
言動
(
げんどう
)
に
出
(
いで
)
たのである。
112
果
(
はた
)
して
二
(
に
)
巨頭
(
きよとう
)
は
彼
(
かれ
)
の
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
なる
言
(
げん
)
と、
113
其
(
その
)
度胸
(
どきよう
)
に
心胆
(
しんたん
)
を
奪
(
うば
)
はれ、
114
旭
(
あさひ
)
に
霜
(
しも
)
の
当
(
あた
)
つて
消
(
き
)
ゆるが
如
(
ごと
)
く、
115
もろくも
彼
(
かれ
)
が
前
(
まへ
)
に
甲
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ、
116
彼
(
かれ
)
を
女帝
(
によてい
)
と
仰
(
あふ
)
ぎ
謀主
(
ぼうしゆ
)
となし、
117
遂
(
つひ
)
に
幕下
(
ばくか
)
となる
事
(
こと
)
を
甘諾
(
かんだく
)
したのである。
118
シーゴー『
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
、
119
吾々
(
われわれ
)
が
日頃
(
ひごろ
)
の
望
(
のぞ
)
みを
遂行
(
すゐかう
)
する
為
(
ため
)
には、
120
如何
(
いか
)
なる
方法
(
はうはふ
)
手段
(
しゆだん
)
をとれば、
121
いいでせうか。
122
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
度
(
た
)
いもので
厶
(
ござ
)
います』
123
ヨリコ『お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
は
妾
(
わらは
)
の
言
(
げん
)
に
背
(
そむ
)
きはせないか。
124
まづ、
125
それから
定
(
き
)
めておかう』
126
シーゴー『
今
(
いま
)
となつて
何
(
なに
)
しにお
言葉
(
ことば
)
に
背
(
そむ
)
きませう』
127
ヨリコ『よしよし、
128
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
如何
(
どう
)
だ』
129
玄真
(
げんしん
)
『
私
(
わたし
)
もシーゴーと
同意見
(
どういけん
)
で
厶
(
ござ
)
います』
130
ヨリコ『そんなら、
131
妾
(
わらは
)
が
空前
(
くうぜん
)
絶後
(
ぜつご
)
の
大計画
(
だいけいくわく
)
、
132
神算
(
しんさん
)
鬼謀
(
きぼう
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
を
教
(
をし
)
へてやらう。
133
先
(
ま
)
づ
当山
(
たうざん
)
に
古
(
ふる
)
くより
祀
(
まつ
)
られある
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
を
策源地
(
さくげんち
)
と
定
(
さだ
)
め、
134
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
表面
(
へうめん
)
天
(
てん
)
より
降
(
くだ
)
りし
救世主
(
きうせいしゆ
)
となり、
135
シーゴーは
三千
(
さんぜん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
統率
(
とうそつ
)
し、
136
妾
(
わらは
)
は
天
(
てん
)
より
降
(
くだ
)
りし
棚機姫
(
たなばたひめ
)
の
化神
(
けしん
)
となつて
天下
(
てんか
)
の
万民
(
ばんみん
)
を
誑惑
(
けふわく
)
し、
137
まづ
第一
(
だいいち
)
に
挙兵
(
きよへい
)
準備
(
じゆんび
)
のため
金品
(
きんぴん
)
、
138
糧食
(
りやうしよく
)
、
139
軍器
(
ぐんき
)
を
徴集
(
ちようしふ
)
する
事
(
こと
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
せねばならぬ』
140
シーゴー『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
、
141
先立
(
さきだ
)
つものは
金銭
(
かね
)
と
糧食
(
りやうしよく
)
と
武器
(
ぶき
)
で
厶
(
ござ
)
います。
142
それを
無事
(
ぶじ
)
に
蒐集
(
しうしふ
)
する
方法
(
はうはふ
)
は
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
したら
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
いますか』
143
ヨリコ『
先
(
ま
)
づ
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
天来
(
てんらい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
と
揚言
(
やうげん
)
し、
144
当山
(
たうざん
)
の
有名
(
いうめい
)
なる
大杉
(
おほすぎ
)
の
上
(
うへ
)
に、
145
日夜
(
にちや
)
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
下
(
くだ
)
つて
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
くと
遠近
(
をちこち
)
に
触
(
ふ
)
れ
廻
(
ま
)
はり、
146
ギャマンの
中
(
なか
)
に
油
(
あぶら
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
147
之
(
これ
)
に
火
(
ひ
)
を
点
(
てん
)
じ、
148
昼
(
ひる
)
の
中
(
うち
)
より
杉
(
すぎ
)
の
木
(
き
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
十五六
(
じふごろく
)
ケ
(
こ
)
計
(
ばか
)
り
火
(
ひ
)
を
点
(
てん
)
じ
遠近
(
ゑんきん
)
の
民
(
たみ
)
を
驚
(
おどろ
)
かせ、
149
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
を
信仰
(
しんかう
)
の
中心
(
ちうしん
)
と
定
(
さだ
)
めるのだ。
150
一方
(
いつぱう
)
シーゴーは
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
使役
(
しえき
)
し、
151
あらゆる
富豪
(
ふうがう
)
の
家
(
いへ
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
152
美人
(
びじん
)
を
奪
(
うば
)
ひ
帰
(
かへ
)
り、
153
当山
(
たうざん
)
の
天然
(
てんねん
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
幽閉
(
いうへい
)
し
置
(
お
)
き、
154
而
(
しか
)
して
後
(
のち
)
、
155
シーゴーは
救世主
(
きうせいしゆ
)
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
高弟
(
かうてい
)
と
称
(
しよう
)
し、
156
娘
(
むすめ
)
を
奪
(
うば
)
はれし
家々
(
いへいへ
)
に
修験者
(
しゆげんじや
)
となつて
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ
頻
(
しき
)
りに
宣伝
(
せんでん
)
をなし、
157
幸
(
さいはひ
)
に
之
(
これ
)
を
信
(
しん
)
じて
来
(
きた
)
るものには
天地
(
あめつち
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
を
招待
(
せうたい
)
し、
158
神助
(
しんじよ
)
を
願
(
ねが
)
ふため、
159
信者
(
しんじや
)
の
財産
(
ざいさん
)
の
高
(
たか
)
に
応
(
おう
)
じ
一戸
(
いつこ
)
につき
金子
(
きんす
)
五十
(
ごじふ
)
両
(
りやう
)
乃至
(
ないし
)
五百
(
ごひやく
)
両
(
りやう
)
、
160
之
(
これ
)
に
加
(
くは
)
ふるに
穀物
(
こくもつ
)
は
一俵
(
いつぺう
)
乃至
(
ないし
)
百俵
(
ひやくぺう
)
を
神
(
かみ
)
に
献
(
たてまつ
)
らしめ、
161
夜
(
よる
)
の
間
(
ま
)
に、
162
オーラ
川
(
がは
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に
鉄線
(
てつせん
)
を
通
(
つう
)
じ、
163
滑車
(
くわつしや
)
を
以
(
もつ
)
て
谷底
(
たにそこ
)
に
輸送
(
ゆそう
)
し、
164
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
は
沢山
(
たくさん
)
の
運送船
(
うんそうせん
)
を
造
(
つく
)
り、
165
米麦
(
こめむぎ
)
は
船
(
ふね
)
にて
八
(
はち
)
里
(
り
)
の
下流
(
かりう
)
ホーロの
谷間
(
たにあひ
)
迄
(
まで
)
輸送
(
ゆそう
)
し
166
バルガン
城
(
じやう
)
攻撃
(
こうげき
)
の
時
(
とき
)
の
糧食
(
りやうしよく
)
に
宛
(
あ
)
て
167
妾
(
わらは
)
は
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め、
168
迷信
(
めいしん
)
深
(
ふか
)
き
愚夫
(
ぐふ
)
愚婦
(
ぐふ
)
に
神託
(
しんたく
)
を
伝
(
つた
)
へ、
169
出師
(
すゐし
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
致
(
いた
)
さうではないか。
170
これに
勝
(
ま
)
したる
巧妙
(
かうめう
)
な
手段
(
しゆだん
)
はあるまいと
思
(
おも
)
ふ。
171
両人
(
りやうにん
)
、
172
吾
(
わが
)
神策
(
しんさく
)
には
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたであらう』
173
シーゴー『
成程
(
なるほど
)
、
174
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ
御
(
ご
)
計画
(
けいくわく
)
、
175
いや、
176
もう
感心
(
かんしん
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
177
オイ
玄真坊
(
げんしんばう
)
、
178
知識
(
ちしき
)
の
源泉
(
げんせん
)
たる
天来
(
てんらい
)
の
女傑
(
ぢよけつ
)
、
179
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
の
及
(
およ
)
ぶ
所
(
ところ
)
ではない。
180
どうだ、
181
お
前
(
まへ
)
も
感心
(
かんしん
)
しただらうのう』
182
玄真
(
げんしん
)
『イヤ、
183
もうズツト
感心
(
かんしん
)
した。
184
それでは
一
(
ひと
)
つ
大芝居
(
おほしばゐ
)
にとりかからう』
185
之
(
これ
)
よりシーゴーは
谷間
(
たにあひ
)
の
大木
(
たいぼく
)
を
伐
(
き
)
り
倒
(
たふ
)
し、
186
沢山
(
たくさん
)
な
舟
(
ふね
)
を
造
(
つく
)
り、
187
兵糧
(
ひやうらう
)
運搬
(
うんぱん
)
の
用
(
よう
)
に
供
(
きよう
)
すべく
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
使役
(
しえき
)
して、
188
昼夜
(
ちうや
)
兼行
(
けんかう
)
して
舟
(
ふね
)
の
建造
(
けんざう
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
し、
189
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
大杉
(
おほすぎ
)
の
木
(
き
)
に
縄梯子
(
なはばしご
)
をかけ、
190
ギヤマンのランプを
樹上
(
じゆじやう
)
高
(
たか
)
く
輝
(
かがや
)
かすことに
苦心
(
くしん
)
した。
191
附近
(
ふきん
)
の
村民
(
そんみん
)
はオーラ
山
(
さん
)
の
大杉
(
おほすぎ
)
の
木
(
き
)
に、
192
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
燦爛
(
さんらん
)
たる
光
(
ひかり
)
のとどまり
輝
(
かがや
)
くのを
見
(
み
)
て
何
(
いづ
)
れも
不審
(
ふしん
)
の
眉
(
まゆ
)
をひそめ、
193
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
るるを
待
(
ま
)
つて
村人
(
むらびと
)
が
花火
(
はなび
)
を
見
(
み
)
る
如
(
ごと
)
くワイワイと
囃
(
はや
)
し
立
(
た
)
て、
194
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
批評
(
ひひやう
)
を
下
(
くだ
)
してゐた。
195
シーゴーは
三千
(
さんぜん
)
の
部下
(
ぶか
)
の
中
(
なか
)
より
力
(
ちから
)
の
強
(
つよ
)
い
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
奴
(
やつ
)
を
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
斗
(
ばか
)
り
選
(
えら
)
み、
196
遠近
(
ゑんきん
)
の
村落
(
そんらく
)
に
放
(
はな
)
ち、
197
あわよくば
直接
(
ちよくせつ
)
金品
(
きんぴん
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
198
或
(
あるひ
)
は
富豪
(
ふうがう
)
の
娘
(
むすめ
)
を
掻攫
(
かつさら
)
ひ、
199
密
(
ひそか
)
にオーラ
山
(
さん
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り
数多
(
あまた
)
の
天然
(
てんねん
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
押込
(
おしこ
)
めおく
事
(
こと
)
にとりかかつた。
200
遠近
(
ゑんきん
)
の
村民
(
そんみん
)
は
盗賊
(
たうぞく
)
横行
(
わうかう
)
し、
201
娘
(
むすめ
)
や
妻
(
つま
)
を
奪
(
うば
)
はれると
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
が、
202
それから、
2021
それへと
伝
(
つた
)
はり、
203
何
(
いづ
)
れも
夜分
(
やぶん
)
になると
戸
(
と
)
を
鎖
(
とざ
)
し、
204
遂
(
つひ
)
には
樹上
(
じゆじやう
)
の
梢
(
こずえ
)
の
光
(
ひかり
)
を
見物
(
けんぶつ
)
するものもなくなつた。
205
シーゴーは
修験者
(
しゆげんじや
)
に
化
(
ば
)
け
済
(
す
)
まし、
206
遠近
(
ゑんきん
)
の
村落
(
そんらく
)
を、
207
シーゴー『
諸行
(
しよぎやう
)
無常
(
むじやう
)
、
208
是生
(
ぜしやう
)
滅法
(
めつぽふ
)
、
209
生滅
(
しやうめつ
)
滅已
(
めつい
)
、
210
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
、
211
本来
(
ほんらい
)
無東西
(
むとうざい
)
、
212
何所有
(
かしよう
)
南北
(
なんぼく
)
、
213
迷故
(
めいこ
)
三界
(
さんかい
)
城
(
じやう
)
、
214
悟
(
ご
)
故
(
こ
)
十
(
じつ
)
方
(
ぱう
)
空
(
くう
)
、
215
生者
(
しやうじや
)
必滅
(
ひつめつ
)
、
216
会者
(
ゑしや
)
定離
(
ぢやうり
)
、
217
南無
(
なむ
)
波羅門
(
ばらもん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
、
218
帰命
(
きみやう
)
頂礼
(
ちやうらい
)
謹上
(
ごんじやう
)
再拝
(
さいはい
)
』
219
と
錫杖
(
しやくぢやう
)
を
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら
220
村々
(
むらむら
)
の
目星
(
めぼ
)
しき
門戸
(
もんこ
)
に
立
(
た
)
つて
順礼
(
じゆんれい
)
した。
221
この
宣伝
(
せんでん
)
は
大
(
おほい
)
に
効
(
かう
)
を
奏
(
そう
)
し、
222
何
(
いづ
)
れも
戦々
(
せんせん
)
恟々
(
きようきよう
)
として
悲歎
(
ひたん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
む
人
(
ひと
)
は、
223
オーラ
山
(
さん
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
を
頼
(
たよ
)
り
一切
(
いつさい
)
の
災厄
(
さいやく
)
を
免
(
まぬが
)
れむ
事
(
こと
)
を
希求
(
ききう
)
するに
至
(
いた
)
つた。
224
シーゴーは
部下
(
ぶか
)
を
修験者
(
しゆげんじや
)
に
仕立
(
した
)
て
遠近
(
ゑんきん
)
を
巡錫
(
じゆんしやく
)
せしめ、
225
『オーラ
山
(
さん
)
には
天来
(
てんらい
)
の
大
(
だい
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
出現
(
しゆつげん
)
し
玉
(
たま
)
ひ、
226
山河
(
さんか
)
草木
(
さうもく
)
、
227
禽獣
(
きんじう
)
虫魚
(
ちうぎよ
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
228
万有
(
ばんいう
)
愛護
(
あいご
)
の
教
(
をしへ
)
を
垂
(
た
)
れさせ
玉
(
たま
)
ひ、
229
遂
(
つひ
)
には
天地
(
てんち
)
の
神明
(
しんめい
)
もその
徳
(
とく
)
に
感
(
かん
)
じ、
230
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
救世主
(
きうせいしゆ
)
のまします
珍
(
うづ
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
の
傍
(
かたはら
)
に
立
(
た
)
てる
大杉
(
おほすぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
天降
(
あまくだ
)
り、
231
燦爛
(
さんらん
)
たる
光明
(
くわうみやう
)
を
放
(
はな
)
ち
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
かせ
玉
(
たま
)
ふ。
232
前古
(
ぜんこ
)
未曽有
(
みぞう
)
の
瑞祥
(
ずゐしやう
)
なり』
233
と
言葉
(
ことば
)
巧
(
たくみ
)
に
宣伝
(
せんでん
)
をしたので
234
娘
(
むすめ
)
を
失
(
うしな
)
ひしもの、
235
妻
(
つま
)
を
失
(
うしな
)
ひしもの、
236
病
(
やまひ
)
に
苦
(
くるし
)
めるものは、
237
吾
(
われ
)
も
吾
(
われ
)
もと
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
ひオーラ
山
(
さん
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
に
面会
(
めんくわい
)
せむと、
238
蟻
(
あり
)
の
甘
(
あま
)
きに
集
(
つど
)
ふが
如
(
ごと
)
く
参詣
(
さんけい
)
する
事
(
こと
)
となつた。
239
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
人跡
(
じんせき
)
さへ
絶
(
た
)
えたるオーラ
山
(
さん
)
は
救世主
(
きうせいしゆ
)
出現
(
しゆつげん
)
ありとの
評判
(
ひやうばん
)
に、
240
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく
金銭
(
きんせん
)
、
241
物品
(
ぶつぴん
)
、
242
穀物
(
こくもつ
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
243
家
(
いへ
)
の
重宝
(
ぢうはう
)
として
保存
(
ほぞん
)
しありし、
2431
槍
(
やり
)
薙刀
(
なぎなた
)
等
(
など
)
の
武器
(
ぶき
)
迄
(
まで
)
も
神器
(
しんき
)
と
称
(
しよう
)
して
奉納
(
ほうなふ
)
する
事
(
こと
)
となり
244
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
穀物
(
こくもつ
)
の
山
(
やま
)
、
245
矛
(
ほこ
)
の
林
(
はやし
)
が
築
(
きづ
)
かれた。
246
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
処
(
ところ
)
狭
(
せ
)
き
迄
(
まで
)
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る
人々
(
ひとびと
)
に
向
(
むか
)
ひ、
247
大杉
(
おほすぎ
)
の
大木
(
たいぼく
)
を
小楯
(
こだて
)
にとり、
248
さも
鷹揚
(
おうやう
)
なる
口調
(
くてう
)
にて、
249
玄真
(
げんしん
)
『
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一切
(
いつさい
)
の
衆生
(
しゆじやう
)
、
250
善男
(
ぜんなん
)
善女
(
ぜんによ
)
、
251
吾
(
わが
)
教
(
をし
)
ふる
言
(
げん
)
を
聞
(
き
)
け。
252
吾
(
われ
)
は
父
(
ちち
)
なく
母
(
はは
)
なく
天
(
てん
)
を
以
(
もつ
)
て
父
(
ちち
)
となし
地
(
ち
)
を
以
(
もつ
)
て
母
(
はは
)
となす
宇宙
(
うちう
)
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
天帝
(
てんてい
)
の
再来
(
さいらい
)
なるぞ。
253
先
(
ま
)
づ
吾
(
われ
)
を
信
(
しん
)
ずるものは
躄
(
あしなへ
)
は
立
(
た
)
ち、
254
盲
(
めくら
)
は
明
(
あか
)
りを
見
(
み
)
、
255
聾
(
みみしい
)
は
聞
(
き
)
き、
256
癩病
(
らいびやう
)
は
清
(
きよ
)
まり、
257
身体
(
しんたい
)
壮健
(
さうけん
)
にして
無限
(
むげん
)
の
長寿
(
ちやうじゆ
)
を
保
(
たも
)
ち、
258
富貴
(
ふうき
)
繁昌
(
はんぜう
)
し、
259
死
(
し
)
しては
天国
(
てんごく
)
に
上
(
のぼ
)
り、
260
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
芳香
(
はうかう
)
馥郁
(
ふくいく
)
たる
天国
(
てんごく
)
の
楽園
(
らくゑん
)
に
無限
(
むげん
)
無極
(
むきよく
)
に
歓喜
(
くわんき
)
の
生涯
(
しやうがい
)
を
送
(
おく
)
り、
261
求
(
もと
)
めずして
百味
(
ひやくみ
)
の
飲食
(
おんじき
)
を
給
(
きふ
)
せられ、
262
不老
(
ふらう
)
不死
(
ふし
)
なるべし。
263
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
かかる
美
(
うる
)
はしき
天国
(
てんごく
)
に
至
(
いた
)
らむ
事
(
こと
)
を
望
(
のぞ
)
まば
吾
(
わが
)
救世主
(
きうせいしゆ
)
の
言
(
げん
)
を
聞
(
き
)
け。
264
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
花婿
(
はなむこ
)
をとり、
265
花嫁
(
はなよめ
)
をとるにも、
266
相当
(
さうたう
)
の
結納
(
ゆひなふ
)
が
要
(
い
)
るだらう、
267
金銭
(
かね
)
なり、
268
物品
(
ぶつぴん
)
なり、
269
箪笥
(
たんす
)
、
270
長持
(
ながもち
)
、
271
旗
(
はた
)
、
272
指物
(
さしもの
)
、
273
武器
(
ぶき
)
等
(
など
)
は
嫁入
(
よめい
)
りに
要
(
えう
)
する
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
結納
(
ゆひなふ
)
なるべし。
274
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
天国
(
てんごく
)
の
楽園
(
らくゑん
)
に
至
(
いた
)
り
天人
(
てんにん
)
と
結婚
(
けつこん
)
をなし、
275
平和
(
へいわ
)
の
生涯
(
しやうがい
)
を
永遠
(
ゑいゑん
)
に
送
(
おく
)
らむとせば、
276
先
(
ま
)
づ
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
結納金
(
ゆひなふきん
)
を
献上
(
けんじやう
)
すべし。
277
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
米穀
(
べいこく
)
その
他
(
た
)
あらゆる
武器
(
ぶき
)
を
天帝
(
てんてい
)
の
化神
(
けしん
)
たる
吾
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
奉
(
たてまつ
)
り、
278
永遠
(
えいゑん
)
無窮
(
むきう
)
の
幸福
(
かうふく
)
を
得
(
え
)
よ。
279
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
知
(
し
)
る
如
(
ごと
)
く、
280
吾
(
われ
)
を
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
として
久方
(
ひさかた
)
の
天津空
(
あまつそら
)
より
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
下
(
くだ
)
らせ
玉
(
たま
)
ひ、
281
吾
(
わが
)
徳
(
とく
)
を
慕
(
した
)
ひ、
282
吾
(
わが
)
説法
(
せつぱふ
)
を
聴聞
(
ちやうもん
)
し
玉
(
たま
)
ふ。
283
その
証拠
(
しようこ
)
には
毎夜
(
まいよ
)
この
神木
(
しんぼく
)
に
星光
(
せいくわう
)
燦爛
(
さんらん
)
たるを
見
(
み
)
るならむ。
284
決
(
けつ
)
して
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
285
怪
(
あや
)
しむ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
286
疑
(
うたがひ
)
は
信仰
(
しんかう
)
の
門
(
もん
)
を
破
(
やぶ
)
り、
287
疑
(
うたがひ
)
は
地獄
(
ぢごく
)
を
造
(
つく
)
り、
288
暗黒
(
あんこく
)
を
作
(
つく
)
り、
289
滅亡
(
めつぼう
)
を
招
(
まね
)
くものぞ。
290
愛善
(
あいぜん
)
なる
神
(
かみ
)
に
対
(
たい
)
するには
愛
(
あい
)
と
善
(
ぜん
)
を
以
(
もつ
)
てせよ。
291
信真
(
しんしん
)
なる
神
(
かみ
)
に
対
(
たい
)
するには
信
(
しん
)
と
真
(
まこと
)
とを
以
(
もつ
)
てせよ。
292
神
(
かみ
)
は
相応
(
さうおう
)
の
理
(
り
)
に
住
(
ぢう
)
し
玉
(
たま
)
ひ、
293
内面
(
ないめん
)
外面
(
ぐわいめん
)
共
(
とも
)
に
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
行為
(
かうゐ
)
を
調査
(
てうさ
)
し
玉
(
たま
)
ふ。
294
神
(
かみ
)
の
愛
(
あい
)
するは
即
(
すなは
)
ち
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
愛
(
あい
)
し
吾
(
わが
)
家
(
いへ
)
を
愛
(
あい
)
し、
295
国土
(
こくど
)
を
愛
(
あい
)
するの
謂
(
ゐ
)
ひなり。
296
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
297
善男
(
ぜんなん
)
善女
(
ぜんによ
)
よ、
298
一切
(
いつさい
)
の
衆生
(
しゆじやう
)
よ、
299
帰命
(
きみやう
)
頂礼
(
ちやうらい
)
神道
(
しんだう
)
加持
(
かぢ
)
、
300
謹上
(
ごんじやう
)
再拝
(
さいはい
)
々々
(
ごんじやう
)
々々
(
さいはい
)
』
301
日々
(
ひび
)
集
(
つど
)
ひくる
愚夫
(
ぐふ
)
愚婦
(
ぐふ
)
に
対
(
たい
)
し、
302
右
(
みぎ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
繰
(
くり
)
返
(
かへ
)
し、
303
鼻
(
はな
)
をすすらせ
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
をこぼさせ
軍資
(
ぐんし
)
の
蒐集
(
しうしふ
)
に
心力
(
しんりよく
)
を
注
(
そそ
)
いでゐた。
304
さうして
大切
(
たいせつ
)
な
娘
(
むすめ
)
や
妻
(
つま
)
を
紛失
(
ふんしつ
)
したるものに
対
(
たい
)
しては
特別
(
とくべつ
)
の
祈祷
(
きたう
)
と
称
(
しよう
)
し、
305
沢山
(
たくさん
)
の
金品
(
きんぴん
)
を
献納
(
けんなふ
)
せしめ、
306
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
の
贋
(
にせ
)
棚機姫
(
たなばたひめ
)
が
忍
(
しの
)
び
居
(
ゐ
)
る
天王
(
てんわう
)
の
社
(
やしろ
)
に
伴
(
ともな
)
ひ
行
(
ゆ
)
き、
307
神勅
(
しんちよく
)
を
受
(
う
)
けしめつつあつた。
308
何
(
いづ
)
れも
深山
(
しんざん
)
の
事
(
こと
)
とて
朝
(
あさ
)
は
夜明
(
よあ
)
け
頃
(
ごろ
)
より
参来
(
まゐき
)
集
(
つど
)
ふものあれども、
309
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
託宣
(
たくせん
)
により、
310
七
(
なな
)
つ
下
(
さが
)
れば
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
此
(
この
)
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
らせた。
311
その
理由
(
りいう
)
は、
312
『
七
(
なな
)
つ
時
(
どき
)
以後
(
いご
)
は
天神
(
てんしん
)
地祇
(
ちぎ
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
、
313
毎夜
(
まいよ
)
下
(
くだ
)
り
玉
(
たま
)
ひて、
314
天下
(
てんか
)
救済
(
きうさい
)
の
為
(
ため
)
に
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
説法
(
せつぱふ
)
を
聞
(
き
)
かせ
玉
(
たま
)
ふ。
315
それ
故
(
ゆゑ
)
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
の
劣
(
おと
)
れる
凡人
(
ぼんじん
)
は
遠慮
(
ゑんりよ
)
すべし。
316
万一
(
まんいち
)
強
(
し
)
ひて
止
(
とど
)
まらむとするものは
神罰
(
しんばつ
)
忽
(
たちま
)
ちに
至
(
いた
)
るべし』
317
と
脅威
(
けふゐ
)
し、
318
信徒
(
しんと
)
の
帰
(
かへ
)
り
去
(
さ
)
つた
後
(
あと
)
は、
319
あらゆる
美味
(
びみ
)
を
食
(
くら
)
ひ、
320
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
み、
321
ヨリコ
姫
(
ひめ
)
を
真中
(
まんなか
)
にシーゴー、
322
玄真坊
(
げんしんばう
)
は
三
(
みつ
)
つ
巴
(
どもゑ
)
となり、
323
その
他
(
た
)
の
頭分
(
かしらぶん
)
は
傍
(
かたはら
)
に
侍
(
じ
)
して
暴飲
(
ばういん
)
暴食
(
ばうしよく
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
つて
居
(
ゐ
)
たのである。
324
ヨリコ『シーゴー
殿
(
どの
)
、
325
随分
(
ずいぶん
)
お
骨折
(
ほねをり
)
と
見
(
み
)
えて、
326
非常
(
ひじやう
)
な
効果
(
かうくわ
)
が
上
(
あが
)
りましたよ。
327
世界
(
せかい
)
の
愚夫
(
ぐふ
)
愚婦
(
ぐふ
)
共
(
ども
)
は
蟻
(
あり
)
の
如
(
ごと
)
くに
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
328
沢山
(
たくさん
)
な
金銭
(
きんせん
)
物品
(
ぶつぴん
)
を
此
(
この
)
きつい
山
(
やま
)
も
顧
(
かへり
)
みず
送
(
おく
)
つて
来
(
く
)
るやうになつたのは
全
(
まつた
)
くお
前
(
まへ
)
のお
骨折
(
ほねをり
)
だ。
329
此
(
この
)
調子
(
てうし
)
で
六
(
ろく
)
ケ
月
(
げつ
)
も
続
(
つづ
)
いたならば、
330
最早
(
もはや
)
兵糧
(
ひやうらう
)
は
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
331
仮
(
たと
)
へ
十万
(
じふまん
)
の
部下
(
ぶか
)
と
雖
(
いへど
)
も、
332
容易
(
ようい
)
に
養
(
やしな
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るだらう。
333
汝
(
なんぢ
)
の
天晴
(
あつぱれ
)
な
働
(
はたら
)
きはまさに
勲一等
(
くんいつとう
)
功一級
(
こういつきふ
)
だよ』
334
シーゴーは
得意
(
とくい
)
な
顔
(
かほ
)
して
335
さも
嬉
(
うれ
)
しさうに、
336
シーゴー『
不束
(
ふつつか
)
な
吾々
(
われわれ
)
の
微弱
(
びじやく
)
なる
働
(
はたら
)
き、
337
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
のお
褒
(
ほ
)
めに
預
(
あづか
)
りまして
身
(
み
)
に
余
(
あま
)
る
光栄
(
くわうえい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
338
尚
(
なほ
)
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
、
339
犬馬
(
けんば
)
の
労
(
らう
)
を
厭
(
いと
)
ひませぬ。
340
どうか
大望
(
たいまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
上
(
うへ
)
は
宜
(
よろ
)
しくお
引立
(
ひきたて
)
をお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
341
ヨリコ『そんな
事
(
こと
)
は、
342
言
(
い
)
はいでも
分
(
わか
)
つてゐるよ。
343
お
前
(
まへ
)
は
妾
(
わし
)
の
右
(
みぎ
)
の
腕
(
うで
)
だ、
344
腕
(
うで
)
なしには
働
(
はたら
)
きは、
345
どんな
英雄
(
えいゆう
)
だつて
豪傑
(
がうけつ
)
だつて
出来
(
でき
)
はせないよ。
346
乾児
(
こぶん
)
あつての
親分
(
おやぶん
)
、
347
親分
(
おやぶん
)
あつての
乾児
(
こぶん
)
だ』
348
シーゴー『エヘヽヽヽ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
349
鹿猪
(
ろくちよ
)
尽
(
つ
)
きて
猟犬
(
れふけん
)
煮
(
に
)
らる……と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
惨
(
みじ
)
めな
目
(
め
)
に
合
(
あ
)
はしちや、
350
いけませぬよ』
351
ヨリコ『ホヽヽヽヽ
何
(
いづ
)
れ
悪党
(
あくたう
)
と
悪党
(
あくたう
)
との
結合
(
けつがふ
)
だもの、
352
それも
保証
(
ほしよう
)
の
限
(
かぎ
)
りではなからうよ、
353
ホヽヽヽ』
354
玄真
(
げんしん
)
『
女帝
(
によてい
)
様
(
さま
)
、
355
私
(
わたし
)
の
働
(
はたら
)
きはどうで
厶
(
ござ
)
いますか』
356
ヨリコ『お
前
(
まへ
)
の
働
(
はたら
)
きは
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
だ。
357
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
だからね』
358
玄真
(
げんしん
)
『どちらの
功績
(
いさをし
)
が
大
(
おほ
)
きう
厶
(
ござ
)
いますか。
359
それを
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
かないと、
360
ネツカラ
励
(
はげ
)
みがつきませぬがな。
361
そして
競争心
(
きやうさうしん
)
が
一向
(
いつかう
)
起
(
おこ
)
りませぬがな。
362
凡
(
すべ
)
て
物事
(
ものごと
)
は
競争
(
きやうさう
)
によつて
進歩
(
しんぽ
)
し
発達
(
はつたつ
)
するのですからな』
363
ヨリコ『お
前
(
まへ
)
は
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
だよ。
364
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
も
必要
(
ひつえう
)
なれば
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
も
必要
(
ひつえう
)
だ。
365
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
は
何
(
いづ
)
れも
兄
(
けい
)
たり
難
(
がた
)
く
弟
(
てい
)
たり
難
(
がた
)
しと
云
(
い
)
ふ
間柄
(
あひだがら
)
だ。
366
決
(
けつ
)
して
手柄
(
てがら
)
に
甲乙
(
かふおつ
)
はない。
367
妾
(
わらは
)
の
手柄
(
てがら
)
はお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
の
手柄
(
てがら
)
、
368
否
(
いや
)
部下
(
ぶか
)
一同
(
いちどう
)
の
手柄
(
てがら
)
、
369
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
初
(
はじ
)
め
部下
(
ぶか
)
一般
(
いつぱん
)
の
手柄
(
てがら
)
は
妾
(
わらは
)
の
手柄
(
てがら
)
、
370
上下
(
じやうか
)
一致
(
いつち
)
不離
(
ふり
)
不即
(
ふそく
)
の
鞏固
(
きようこ
)
の
関係
(
くわんけい
)
が
結
(
むす
)
ばれてゐるのだ。
371
何
(
いづ
)
れも
協心
(
けふしん
)
戮力
(
りくりよく
)
して
印度
(
いんど
)
統一
(
とういつ
)
の
為
(
ため
)
に
活動
(
くわつどう
)
して
下
(
くだ
)
さい。
372
今日
(
けふ
)
は
部下
(
ぶか
)
一般
(
いつぱん
)
にも
祝
(
いはひ
)
の
酒
(
さけ
)
を
与
(
あた
)
へたがよからうぞよ』
373
シーゴー『ハイ、
374
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
375
部下
(
ぶか
)
も
喜
(
よろこ
)
ぶで
厶
(
ござ
)
いませう』
376
かかる
所
(
ところ
)
へ
小頭
(
こがしら
)
のパンクと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
377
恐々
(
こはごは
)
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
378
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
両手
(
りやうて
)
を
突
(
つ
)
き、
379
パンク『お
頭様
(
かしらさま
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あげ
)
ます。
380
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
りました。
381
どうかシーゴー
様
(
さま
)
にでも
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
つて
取
(
とり
)
押
(
おさ
)
へて
貰
(
もら
)
はなくては、
382
到底
(
たうてい
)
パンクの
腕
(
うで
)
では
解決
(
かいけつ
)
がつきませぬ』
383
ヨリコ『パンク、
384
どんな
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つたのか』
385
パンク『ハイ
申
(
まをし
)
上
(
あげ
)
兼
(
か
)
ねますが
386
部下
(
ぶか
)
共
(
ども
)
が
食糧
(
しよくりやう
)
の
事
(
こと
)
について
叱事
(
こごと
)
を
申
(
まを
)
し、
387
もうお
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
つて
国
(
くに
)
に
帰
(
かへ
)
り
正業
(
せいげふ
)
につくとか
申
(
まを
)
しまして
388
二百
(
にひやく
)
人
(
にん
)
斗
(
ばか
)
り
同盟軍
(
どうめいぐん
)
を
組織
(
そしき
)
しました。
389
成
(
な
)
るべく、
390
こんな
内輪
(
うちわ
)
揉
(
も
)
めはお
頭
(
かしら
)
に
聞
(
き
)
かし
度
(
たく
)
はありませぬが、
391
もう
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
392
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
主張
(
しゆちやう
)
する
所
(
ところ
)
によれば、
393
お
頭
(
かしら
)
や
頭株
(
あたまかぶ
)
は
百味
(
ひやくみ
)
の
飲食
(
おんじき
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
ち、
394
俺
(
おれ
)
たちは
高梁
(
かうりやん
)
や
炒米
(
ちよみ
)
の
味
(
あぢ
)
ないものに
甘
(
あま
)
んじ
菜葉
(
なつぱ
)
斗
(
ばか
)
り
食
(
く
)
はして、
395
骨
(
ほね
)
から
肉離
(
にくばな
)
れがして、
396
到底
(
たうてい
)
動
(
うご
)
けないから
帰
(
かへ
)
らう
帰
(
かへ
)
らうと
云
(
い
)
つてゐるのです』
397
ヨリコ『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
、
398
それも
尤
(
もつと
)
もだらう。
399
これシーゴーさま、
400
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
今
(
いま
)
、
401
妾
(
わらは
)
の
云
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り
酒
(
さけ
)
を
一般
(
いつぱん
)
にふれまひ、
402
かう
沢山
(
たくさん
)
集
(
あつ
)
まつた
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
たしてやつて
下
(
くだ
)
さい。
403
獅子
(
しし
)
、
404
狼
(
おほかみ
)
、
405
虎
(
とら
)
、
406
山犬
(
やまいぬ
)
等
(
など
)
も
腹
(
はら
)
さへよけりや
人
(
ひと
)
に
噛
(
か
)
みつかぬものだから、
407
ホヽヽヽヽ』
408
シーゴーはパンクと
共
(
とも
)
に
409
谷底
(
たにぞこ
)
の
部下
(
ぶか
)
の
集団
(
しふだん
)
を
目
(
め
)
がけてヨリコの
命
(
めい
)
を
伝
(
つた
)
ふべく
縄梯子
(
なはばしご
)
に
乗
(
の
)
つて
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
410
(
大正一三・一二・一六
旧一一・二〇
於祥雲閣
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 女白浪
(B)
(N)
谷底の宴 >>>
霊界物語
>
第66巻
> 第2篇 容怪変化 > 第8章 神乎魔乎
Tweet
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【08 神乎魔乎|第66巻(巳の巻)|霊界物語/rm6608】
合言葉「みろく」を入力して下さい→