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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第6巻(巳の巻)
序歌
松葉の塵
総説
第1篇 山陰の雪
第1章 宇宙太元
第2章 瀑布の涙
第3章 頓智奇珍
第4章 立春到達
第5章 抔盤狼藉
第6章 暗雲消散
第7章 旭光照波
第2篇 常世の波
第8章 春の海面
第9章 埠頭の名残
第10章 四鳥の別れ
第11章 山中の邂逅
第12章 起死回生
第13章 谷間の囁
第14章 黒竜赤竜
第3篇 大峠
第15章 大洪水(一)
第16章 大洪水(二)
第17章 極仁極徳
第18章 天の瓊矛
第4篇 立花の小戸
第19章 祓戸四柱
第20章 善悪不測
第21章 真木柱
第22章 神業無辺
第23章 諸教同根
第24章 富士鳴戸
第5篇 一霊四魂
第25章 金勝要大神
第26章 体五霊五
第27章 神生み
第28章 身変定
第29章 泣沢女
第30章 罔象神
第6篇 百舌鳥の囁
第31章 襤褸の錦
第32章 瓔珞の河越
第33章 五大教
第34章 三大教
第35章 北光開眼
第36章 三五教
第7篇 黄金の玉
第37章 雲掴み
第38章 黄金の宮
第39章 石仏の入水
第40章 琴平橋
第41章 桶伏山
第8篇 五伴緒神
第42章 途上の邂逅
第43章 猫の手
第44章 俄百姓
第45章 大歳神
第46章 若年神
第47章 二王と観音
第48章 鈿女命
第49章 膝栗毛
第50章 大戸惑
余白歌
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霊界物語
>
霊主体従(第1~12巻)
>
第6巻(巳の巻)
> 第6篇 百舌鳥の囁 > 第31章 襤褸の錦
<<< 罔象神
(B)
(N)
瓔珞の河越 >>>
第三一章
襤褸
(
つづれ
)
の
錦
(
にしき
)
〔二八一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
篇:
第6篇 百舌鳥の囁
よみ(新仮名遣い):
もずのささやき
章:
第31章 襤褸の錦
よみ(新仮名遣い):
つづれのにしき
通し章番号:
281
口述日:
1922(大正11)年01月22日(旧12月25日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年5月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ウラル山の麓アーメニヤに勢力を振るったウラル彦は、大洪水に大神の大慈大悲に救われ、アルタイ山で蟻の責め苦を受けて一時は改心した。しかし年月を経るにしたがって再び、ウラル彦夫婦は色食の道に耽溺し、大蛇の霊魂に憑依された。
大洪水によって活動を抑えられていた悪霊たちも、世が泰平となり人の心が馴れるにしたがって、再び跋扈跳梁するようになってしまった。
盤古神王を偽称したウラル彦は、大中教という教えを興した。これは極端な個人主義、利己主義の教えである。
自分ひとりを中心とする、というもともとの意義は、ウラル彦のみを世界の最大主権者と認める、というものであった。しかしこれもまた大中教の宣伝使たち自身によって誤解され、自分ひとりを中心とする、利己主義の教えとなってしまった。
大中教は葦原の瑞穂国(地球上)に広く行き渡った。
アーメニヤの都の南にカイン河という広い河が流れている。そのほとりで、乞食たちが盤古神王(=ウラル彦)と大中教の利己主義のやり方に不平を語らいあっていた。
そこへ盤古神王の手下の目付がやってきて、乞食たちの話の内容を問いただした。目付たちは、盤古神王の悪口を言うものを捕らえて危害迫害を加えていたのである。
乞食の一人が耳が聞こえない振りをして滑稽な応答で返し、その場をごまかして目付を退散させた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-01 11:48:08
OBC :
rm0631
愛善世界社版:
185頁
八幡書店版:
第1輯 692頁
修補版:
校定版:
183頁
普及版:
75頁
初版:
ページ備考:
001
彼
(
か
)
のウラル
山
(
さん
)
およびアーメニヤの
野
(
の
)
に
神都
(
しんと
)
を
開
(
ひら
)
き、
002
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
的
(
てき
)
神政
(
しんせい
)
を
天下
(
てんか
)
に
流布
(
るふ
)
し、
003
つひには
温順
(
をんじゆん
)
にして、
004
かつ
厳粛
(
げんしゆく
)
なる
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
を
追放
(
つゐはう
)
し、
005
自
(
みづか
)
ら
偽
(
にせ
)
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
となり、
006
大蛇
(
をろち
)
の
霊魂
(
みたま
)
に
使嗾
(
しそう
)
されて、
007
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひたりし
所謂
(
いはゆる
)
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
は、
008
大神
(
おほかみ
)
の
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
恩恵
(
おんけい
)
の
笞
(
むち
)
を
加
(
くは
)
へられ、
009
アルタイ
山
(
さん
)
に
救
(
すく
)
はれて
蟻虫
(
ぎちう
)
の
責苦
(
せめく
)
に
逢
(
あ
)
ひ、
010
ここに
翻然
(
ほんぜん
)
として
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い、
011
再
(
ふたた
)
びウラル
山
(
さん
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り、
012
アーメニヤに
神都
(
しんと
)
を
開
(
ひら
)
きて、
013
諸方
(
しよはう
)
の
神人
(
しんじん
)
を、
014
よく
治
(
をさ
)
め
仁徳
(
じんとく
)
を
施
(
ほどこ
)
し、
015
天地
(
てんち
)
大
(
だい
)
変動後
(
へんどうご
)
の
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
として、
016
人々
(
ひとびと
)
の
尊敬
(
そんけい
)
もつとも
深
(
ふか
)
かりしが、
017
年月
(
としつき
)
を
経
(
ふ
)
るに
随
(
したが
)
ひ、
018
少
(
すこ
)
しく
夫婦
(
ふうふ
)
二神
(
にしん
)
は
神政
(
しんせい
)
に
倦
(
う
)
み、
019
色食
(
しきしよく
)
の
道
(
みち
)
に
耽溺
(
たんでき
)
し、
020
復
(
ふたた
)
び、
021
『
呑
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
闇
(
やみ
)
よ
022
闇
(
やみ
)
の
後
(
あと
)
には
月
(
つき
)
が
出
(
で
)
る
023
人
(
ひと
)
は
呑
(
の
)
め
食
(
く
)
へ
寝
(
ね
)
て
転
(
ころ
)
べ』
024
と、
025
又
(
また
)
もや
大蛇
(
をろち
)
の
霊魂
(
みたま
)
に
憑依
(
ひようい
)
されて、
026
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
を
始
(
はじ
)
むるに
致
(
いた
)
りける。
027
さしもに
悪
(
あく
)
に
強
(
つよ
)
き
大蛇
(
をろち
)
の
身魂
(
みたま
)
も、
028
金狐
(
きんこ
)
および
鬼
(
おに
)
の
身魂
(
みたま
)
も、
029
宇宙
(
うちう
)
の
大変動
(
だいへんどう
)
に
対
(
たい
)
しては、
030
蠑螈
(
いもり
)
、
031
蚯蚓
(
みみず
)
と
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め、
032
神威
(
しんゐ
)
の
赫灼
(
かくしやく
)
たるに
畏縮
(
ゐしゆく
)
してその
影
(
かげ
)
を
潜
(
ひそ
)
めてゐたが、
033
やや
世
(
よ
)
の
泰平
(
たいへい
)
に
馴
(
な
)
れ
神人
(
しんじん
)
の
心
(
こころ
)
に
油断
(
ゆだん
)
を
生
(
しやう
)
ずるに
及
(
およ
)
んで、
034
またもや
悪鬼
(
あくき
)
邪神
(
じやしん
)
は
頭
(
あたま
)
を
擡
(
もた
)
げ
跋扈
(
ばつこ
)
跳梁
(
てうりやう
)
するの
惨状
(
さんじやう
)
となりける。
035
神諭
(
しんゆ
)
にも、
036
『この
世界
(
せかい
)
は、
037
悪魔
(
あくま
)
が
隙
(
すき
)
を
附
(
つ
)
け
狙
(
ねら
)
うて
居
(
を
)
るから、
038
腹帯
(
はらおび
)
をゆるめぬやうに
致
(
いた
)
されよ』
039
と
示
(
しめ
)
されたる
如
(
ごと
)
く、
040
一寸
(
ちよつと
)
の
油断
(
ゆだん
)
あれば
悪神
(
あくがみ
)
は
風
(
かぜ
)
のごとく
襲
(
おそ
)
ひきたつて、
041
その
身魂
(
みたま
)
を
悪化
(
あくくわ
)
せしめ
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
に
落
(
おと
)
し
行
(
ゆ
)
かむとするものなり。
042
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
[
※
校定版・八幡版ではここに「(ウラル彦の偽称)」という補足が挿入されている。
]
は、
043
大蛇
(
をろち
)
の
霊魂
(
みたま
)
に
身魂
(
しんこん
)
を
左右
(
さいう
)
され、
044
つひには
一派
(
いつぱ
)
の
教
(
をしへ
)
を
立
(
た
)
てた。
045
これを
大中教
(
だいちうけう
)
といふ。
046
この
教
(
をしへ
)
の
意味
(
いみ
)
は、
047
要
(
えう
)
するに
極端
(
きよくたん
)
なる
個人
(
こじん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
教理
(
けうり
)
にして、
048
己一人
(
おのれひとり
)
を
中心
(
ちうしん
)
とする
主義
(
しゆぎ
)
である。
049
大
(
だい
)
は
一
(
いち
)
人
(
にん
)
である。
050
一人
(
ひとり
)
を
中心
(
ちうしん
)
とするといふ
意義
(
いぎ
)
は、
051
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
唯
(
ただ
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
、
052
この
世界
(
せかい
)
の
神
(
かみ
)
であり、
053
王者
(
わうじや
)
であり、
054
最大
(
さいだい
)
権威者
(
けんゐしや
)
である、
055
此
(
この
)
一人
(
ひとり
)
を
中心
(
ちうしん
)
として、
056
総
(
すべ
)
ての
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじう
)
せよと
云
(
い
)
ふ
教
(
をしへ
)
の
立
(
た
)
て
方
(
かた
)
であつた。
057
然
(
しか
)
るに
数多
(
あまた
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
058
立教
(
りつけう
)
の
意義
(
いぎ
)
を
誤解
(
ごかい
)
し、
059
大蛇
(
をろち
)
や
金狐
(
きんこ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
の
悪霊
(
あくれい
)
に
左右
(
さいう
)
されて
遂
(
つひ
)
には
己
(
おの
)
れ
一人
(
ひとり
)
を
中心
(
ちうしん
)
とするを
以
(
もつ
)
て、
060
大中教
(
だいちうけう
)
の
主義
(
しゆぎ
)
と
誤解
(
ごかい
)
するに
致
(
いた
)
つたのである。
061
実
(
じつ
)
に
最
(
もつと
)
も
忌
(
い
)
む
可
(
べ
)
き
利己主義
(
われよし
)
の
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
と
変
(
かは
)
りける。
062
この
大中教
(
だいちうけう
)
は、
063
葦原
(
あしはら
)
の
瑞穂国
(
みづほのくに
)
(
地球
(
ちきう
)
上
(
じやう
)
)に
洽
(
あまね
)
く
拡
(
ひろ
)
がり
渡
(
わた
)
りて、
064
大山杙
(
おほやまぐひの
)
神
(
かみ
)
、
065
小山杙
(
こやまぐひの
)
神
(
かみ
)
、
066
野槌
(
のづちの
)
神
(
かみ
)
、
067
茅野姫
(
かやぬひめの
)
神
(
かみ
)
の
跋扈
(
ばつこ
)
跳梁
(
てうりやう
)
となり、
068
金山彦
(
かなやまひこ
)
、
069
金山姫
(
かなやまひめ
)
、
070
火
(
ほの
)
焼速男
(
やきはやをの
)
神
(
かみ
)
、
071
迦具槌
(
かぐづちの
)
神
(
かみ
)
、
072
火
(
ひの
)
迦々毘野
(
かがびのの
)
神
(
かみ
)
、
073
大宜津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめの
)
神
(
かみ
)
、
074
天
(
あま
)
の
磐樟船
(
いはくすぶねの
)
神
(
かみ
)
、
075
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりぶねの
)
神
(
かみ
)
などの
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじゆう
)
的
(
てき
)
荒振
(
あらぶる
)
神々
(
かみがみ
)
が、
076
地上
(
ちじやう
)
の
各所
(
かくしよ
)
に
顕現
(
けんげん
)
するの
大勢
(
たいせい
)
を
馴致
(
じゆんち
)
したりける。
077
ここに
於
(
おい
)
て
国
(
くに
)
の
御柱
(
みはしらの
)
神
(
かみ
)
なる
神
(
かむ
)
伊弉冊
(
いざなみの
)
命
(
みこと
)
は、
078
地上
(
ちじやう
)
神人
(
しんじん
)
の
統御
(
とうぎよ
)
に
力
(
ちから
)
尽
(
つ
)
き
給
(
たま
)
ひて、
079
黄泉国
(
よもつくに
)
に
神避
(
かむさ
)
りましたることは、
080
既
(
すで
)
に
述
(
の
)
べたる
通
(
とほ
)
りなり。
081
アーメニヤの
神都
(
しんと
)
を
南
(
みなみ
)
に
距
(
さ
)
ること
僅
(
わづ
)
かに
数十丁
(
すうじつちやう
)
の
田舎
(
いなか
)
の
村
(
むら
)
を、
082
東西
(
とうざい
)
に
流
(
なが
)
れてゐる
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
き
河
(
かは
)
あり、
083
之
(
これ
)
をカイン
河
(
がは
)
といふ。
084
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
の
日向
(
ひなた
)
ぼつこりに、
085
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
る
四五
(
しご
)
の
乞食
(
こじき
)
の
群
(
むれ
)
あり。
086
口々
(
くちぐち
)
に
何事
(
なにごと
)
か
頻
(
しき
)
りに
語
(
かた
)
らひ
居
(
を
)
りぬ。
087
甲
(
かふ
)
『
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
奴
(
やつ
)
は、
088
乞食
(
こじき
)
三日
(
みつか
)
すりや
味
(
あぢ
)
が
忘
(
わす
)
れられぬと
云
(
い
)
うてるさうだ。
089
一体
(
いつたい
)
乞食
(
こじき
)
と
云
(
い
)
ふものは
一定
(
いつてい
)
の
事業
(
しごと
)
もなし、
090
世界中
(
せかいぢう
)
をぶらついて
人
(
ひと
)
の
余
(
あま
)
り
物
(
もの
)
を、
091
頭
(
あたま
)
をペコペコと
下
(
さ
)
げて、
092
貰
(
もら
)
つては
食
(
く
)
ひ、
093
名所
(
めいしよ
)
旧蹟
(
きうせき
)
を
勝手
(
かつて
)
気儘
(
きまま
)
に
飛
(
と
)
び
歩
(
ある
)
き、
094
鼻唄
(
はなうた
)
でも
謡
(
うた
)
つて
気楽
(
きらく
)
にこの
世
(
よ
)
を
渡
(
わた
)
るものの
様
(
やう
)
に
考
(
かんが
)
へてゐるらしい。
095
なかなか
乞食
(
こじき
)
だつて
辛
(
つら
)
いものだ。
096
三日
(
みつか
)
も
乞食
(
こじき
)
するや、
097
万劫
(
まんご
)
末代
(
まつだい
)
その
辛
(
つら
)
さが
忘
(
わす
)
れられぬと
云
(
い
)
ふことを、
098
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
利己主義
(
われよし
)
の
人間
(
にんげん
)
は
苦労
(
くらう
)
知
(
し
)
らずだから、
099
そんな
坊
(
ぼつ
)
ちやま
見
(
み
)
たやうな
囈語
(
たはごと
)
を
吐
(
は
)
くのだよ。
100
同
(
おな
)
じ
時代
(
じだい
)
に
生
(
うま
)
れ、
101
横目
(
よこめ
)
立鼻
(
たちはな
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
愛児
(
あいじ
)
と
生
(
うま
)
れて、
102
一方
(
いつぱう
)
には
沢山
(
たくさん
)
な
山
(
やま
)
や
田地
(
でんち
)
を
持
(
も
)
ち、
103
家
(
いへ
)
、
104
倉
(
くら
)
を
建
(
た
)
て、
105
妾
(
てかけ
)
、
106
足懸
(
あしか
)
けを
沢山
(
たくさん
)
に
囲
(
かこ
)
うて
綾錦
(
あやにしき
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
107
毎日
(
まいにち
)
々々
(
まいにち
)
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
うて、
108
「
呑
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
は
暗
(
やみ
)
よ、
109
呑
(
の
)
め
食
(
くら
)
へ
寝
(
ね
)
て
転
(
ころ
)
べ」なんて、
110
盤古
(
ばんこ
)
大尽
(
だいじん
)
を
気取
(
きど
)
りやがつて、
111
天下
(
てんか
)
を
吾
(
わ
)
が
物
(
もの
)
顔
(
がほ
)
してゐる
餓鬼
(
がき
)
と、
112
俺
(
おれ
)
らのやうに
毎日
(
まいにち
)
々々
(
まいにち
)
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
の
軒
(
のき
)
を
拝借
(
はいしやく
)
したり、
113
樹
(
き
)
の
下
(
した
)
に
雨露
(
うろ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ、
114
若布
(
わかめ
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
か、
115
雑巾屋
(
ざふきんや
)
の
看板
(
かんばん
)
のやうな
誠
(
まこと
)
にどうも
御
(
ご
)
立派
(
りつぱ
)
な
襤褸錦
(
つづれにしき
)
を
纏
(
まと
)
うてござる
御
(
お
)
方
(
かた
)
と
比
(
くら
)
べたら
何
(
ど
)
うだらう。
116
お
月
(
つき
)
さまに
鼈
(
すつぽん
)
か、
117
天
(
てん
)
の
雲
(
くも
)
に
沼
(
ぬま
)
の
泥
(
どろ
)
か、
118
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい。
119
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
俺
(
おれ
)
はもう
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
嫌
(
いや
)
になつてきた。
120
一体
(
いつたい
)
盤古
(
ばんこ
)
大神
(
だいじん
)
てな
奴
(
やつ
)
は、
121
ありや
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
再来
(
さいらい
)
だよ』
122
乙
(
おつ
)
『コラコラ、
123
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
言
(
い
)
ふない。
124
それまた
向方
(
むかふ
)
へ
変
(
へん
)
な
奴
(
やつ
)
がきをるぞ。
125
あいつは
山杙
(
やまぐひ
)
とか
川杙
(
かはぐひ
)
とか
云
(
い
)
ふ
悪神
(
わるがみ
)
に
使
(
つか
)
はれて
居
(
ゐ
)
る
奴役人
(
どやくにん
)
だらう。
126
この
間
(
あいだ
)
も
鈍刕
(
どんしう
)
が
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
の
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
をひそひそ
話
(
はなし
)
して
居
(
ゐ
)
たら、
127
山杙
(
やまぐひ
)
とかの
狗
(
いぬ
)
が
嗅
(
か
)
ぎ
出
(
だ
)
しやがつて、
128
無理
(
むり
)
矢理
(
やり
)
に
鈍刕
(
どんしう
)
を
踏縛
(
ふんじば
)
つて、
129
ウラル
山
(
さん
)
の
山奥
(
やまおく
)
へ
伴
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
嬲
(
なぶり
)
ものにしたと
云
(
い
)
ふことだ。
130
恐
(
こは
)
い
恐
(
こは
)
い、
131
鬼
(
おに
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
132
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
れ
居
(
を
)
れ。
133
言
(
い
)
はぬは
言
(
い
)
ふにいや
優
(
まさ
)
るだ』
134
この
時
(
とき
)
、
135
黒
(
くろ
)
い
目
(
め
)
をぎよろつかせた
顔色
(
がんしよく
)
の
赭黒
(
あかぐろ
)
い
目付役
(
めつけやく
)
が、
136
乞食
(
こじき
)
の
群
(
むれ
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち
止
(
ど
)
まり、
137
『ヤイ、
138
貴様
(
きさま
)
は
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
囁
(
ささや
)
いてゐたのか』
139
甲
(
かふ
)
『ハイ、
140
結構
(
けつこう
)
なお
日和
(
ひより
)
さまで
暖
(
あたた
)
かいことでございますな。
141
嬉
(
うれ
)
しさうに
四方
(
よも
)
の
山々
(
やまやま
)
は
笑
(
わら
)
ひ、
142
鳥
(
とり
)
は
花
(
はな
)
の
木
(
き
)
に
歌
(
うた
)
つてゐます。
143
実
(
じつ
)
に
結構
(
けつこう
)
な
天国
(
てんごく
)
の
春
(
はる
)
ですな。
144
これも
全
(
まつた
)
く
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
仁政
(
じんせい
)
の
賜
(
たまもの
)
と
思
(
おも
)
へば、
145
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
がこぼれます。
146
ハイハイ』
147
と
他事
(
よそごと
)
をいふ。
148
目付役
(
めつけやく
)
はやや
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らして、
149
『
馬鹿
(
ばか
)
ツ、
150
そんなことを
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのぢや
無
(
な
)
い。
151
今
(
いま
)
何
(
なに
)
を
囁
(
ささや
)
いてゐたかといふのだ』
152
甲
(
かふ
)
は
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
153
耳
(
みみ
)
を
手
(
て
)
で
囲
(
かこ
)
ふやうな
風
(
ふう
)
して
聾
(
つんぼ
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
154
『
私
(
わたくし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
耳
(
みみ
)
が
遠
(
とほ
)
いので、
155
しつかり
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
は
聞
(
き
)
きとれませぬが、
156
何
(
なん
)
でも
囁
(
ささや
)
くとか
ささ
を
呑
(
の
)
んでゐるとか、
157
仰有
(
おつしや
)
るやうに
聴
(
き
)
きました。
158
間違
(
まちが
)
ひましたら
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
なさい。
159
イヤもうこの
頃
(
ごろ
)
は、
160
日
(
ひ
)
は
長
(
なが
)
し
腹
(
はら
)
は
減
(
へ
)
るなり、
161
喉
(
のど
)
は
渇
(
かわ
)
くなり、
162
甘
(
うま
)
い
ささ
の
一杯
(
いつぱい
)
でも
呑
(
の
)
ましてくれる
人
(
ひと
)
があれば、
163
本当
(
ほんたう
)
に
結構
(
けつこう
)
ですが、
164
今
(
いま
)
このカイン
河
(
がは
)
の
水
(
みづ
)
をどつさり
呑
(
の
)
んで、
165
ささ
やつとこせいと
腹
(
はら
)
を
叩
(
たた
)
きました。
166
腹
(
はら
)
はよう
鳴
(
な
)
りますよ。
167
私
(
わたくし
)
の
聾
(
つんぼ
)
でさへ
聞
(
きこ
)
えるくらゐですから、
168
貴方
(
あなた
)
がたが
御
(
お
)
聴
(
き
)
きになつたら、
169
本当
(
ほんたう
)
に
面白
(
おもしろ
)
いでせうよ。
170
尾
(
を
)
も
白狸
(
しろだぬき
)
の
腹鼓
(
はらつづみ
)
、
171
面白
(
おもしろ
)
うなつておいでたな。
172
ささ
やつとこせー、
173
よーいやな。
174
なんぼよういやなと
云
(
い
)
つたつて、
175
水
(
みづ
)
では
尚且
(
やつぱり
)
酔
(
ゑひ
)
がまはらぬ。
176
よい
ささ
一杯
(
いつぱい
)
ふれまつて
下
(
くだ
)
さい』
177
と
屁
(
へ
)
に
酔
(
よ
)
うたやうな
答
(
こた
)
へに、
178
目付
(
めつけ
)
も
取
(
とり
)
つくしまも
無
(
な
)
く、
179
面
(
つら
)
ふくらし
踵
(
きびす
)
を
返
(
かへ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
180
(
大正一一・一・二二
旧大正一〇・一二・二五
外山豊二
録)
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(N)
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