霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 埠頭(ふとう)名残(なごり)〔二五九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻 篇:第2篇 常世の波 よみ(新仮名遣い):とこよのなみ
章:第9章 埠頭の名残 よみ(新仮名遣い):ふとうのなごり 通し章番号:259
口述日:1922(大正11)年01月17日(旧12月20日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、船の底で旅の疲れに疲れ果て、夢を見ていたのは、鷹住別であった。鷹住別は夢の中に、妻の春日姫の姿を見ていた。宣伝の旅にやつれた妻の姿を見た鷹住別は、思わず、宣伝の使命は終わったので一緒にモスコーに帰ろう、と問いかけた。
そこにガラガラと碇を下ろす音が聞こえて、鷹住別は夢を破られた。鷹住別は岸に上陸すると、空を眺めて思わず望郷の念に駆られていた。
すると、どこからともなく『天に代わりし宣伝使。心ゆるめな、錨を下ろすな。浮世の荒波に向かって突進せよ』という声が雷のように響いた。
鷹住別は自らの心の弱さを天地に謝罪し、常世の国を横断すべく進んでいった。
さて、森林にて弘子彦と春日姫は、しばし来し方を語り合って旅の疲れを慰めあっていたが、港の方から船の出港を呼ばわる船頭の声が聞こえると、二人は心を励まして立ち上がり、名残を惜しみつつ春日姫は埠頭へと向かっていった。
弘子彦は西方指して、常世の国を宣伝すべく別れて行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-01 21:31:20 OBC :rm0609
愛善世界社版:57頁 八幡書店版:第1輯 651頁 修補版: 校定版:58頁 普及版:24頁 初版: ページ備考:
001 鷹住別(たかすみわけ)は、002船底(ふなぞこ)(なが)(たび)(つか)()夢路(ゆめぢ)辿(たど)りつつありぬ。003見渡(みわた)(かぎ)(なみ)(たひら)かな海面(かいめん)に、004(ふね)順風(じゆんぷう)真帆(まほ)()げつつ、005006(ひがし)()して(すす)みつつありしが、007(やうや)くにして無事(ぶじ)東岸(とうがん)()きにける。
008 ()西海(せいかい)(なみ)(いま)(しづ)まむとする(とき)しも、009忽然(こつぜん)として其処(そこ)に、010モスコーに()りしわが(つま)春日姫(かすがひめ)(あら)はれ、
011春日姫(こひ)しきわが(つま)よ』
012(かた)(みぎ)()()べて、013わが右手(めて)(にぎ)りしめ(うつ)むいて(なつ)かしげに()()りにける。014春日姫(かすがひめ)は、015(をつと)(あと)(した)ひはるばる海山(うみやま)()え、016艱難(かんなん)苦労(くらう)して(やつ)()てたる姿(すがた)のまま(なに)一言(いちごん)もいはず、017(なみだ)両眼(りやうがん)(たた)へて()るにぞ、018鷹住別(たかすみわけ)(こころ)(うご)き、019春日姫(かすがひめ)()をとり、020最早(もはや)わが宣伝(せんでん)一通(ひととほ)行渡(ゆきわた)りたれば、021(こひ)しき(つま)(とも)にモスコーに(かへ)らむと、022春日姫(かすがひめ)(むか)ひて、
023鷹住別『わが使命(しめい)最早(もはや)()みたり。024(なんぢ)女性(ぢよせい)のか(よわ)()として宣伝使(せんでんし)となるは、025(すこ)しく(なんぢ)()にとりては荷重(におも)し。026いざ(とも)にモスコーに(かへ)(たの)しき(ゆめ)(むさぼ)らむ』
027といふ(をり)しも、028ガラガラと(いかり)(おろ)(おと)(おどろ)(ゆめ)(やぶ)れける。
029 ()れば(ふね)常世(とこよ)(くに)東岸(とうがん)安着(あんちやく)しゐたりぬ。
030 鷹住別(たかすみわけ)(ゆめ)より()め、031(ふと)(いき)()きながら、032とつおいつ故郷(ふるさと)(そら)()りかへり、033呆然(ばうぜん)として(そら)()(くも)(あふ)()ながら、
034鷹住別『アヽあの(くも)はわが故郷(ふるさと)(そら)より(なが)れきたるか。035(おも)へば(おも)へば(こひ)しき故郷(ふるさと)(そら)よ』
036両手(りやうて)()み、037船底(ふなぞこ)(ふか)(おも)ひに(しづ)む。038(とき)しも何人(なんびと)(こゑ)とも()らず、
039(てん)(かは)りし宣伝使(せんでんし)040(こころ)ゆるめな、041(いかり)(おろ)すな。042浮世(うきよ)荒浪(あらなみ)(むか)つて突進(とつしん)せよ』
043といふ(こゑ)(らい)のごとくに(ひび)きけるにぞ、044鷹住別(たかすみわけ)(ただ)ちにわが()薄志(はくし)弱行(じやくかう)を、045天地(てんち)にむかつて号泣(がうきふ)し、046かつ謝罪(しやざい)し、047それより鷹住別(たかすみわけ)常世(とこよ)(くに)(あし)(まか)せて横断(わうだん)する(こと)となりにける。
048
049 松風(まつかぜ)わたる森林(しんりん)(いはほ)(こし)()ちかけて、050ヒソヒソ(かた)男女(だんぢよ)二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)ありき。
051(をんな)(春日姫)貴下(きか)(うはさ)(たか)聖地(せいち)ヱルサレムの天使(てんし)神国別(かみくにわけの)(みこと)にましまさずや。052しかるに今日(こんにち)のみすぼらしき()姿(すがた)何事(なにごと)ぞ。053浮世(うきよ)(つね)とは()ひながら、054()心労(しんらう)(さつ)(まゐ)らす』
055(なみだ)片手(かたて)(やさ)しき(くちびる)(ひら)きければ、
056男神(をがみ)(弘子彦)『われは貴下(きか)推量(すゐりやう)(たが)はず、057(うた)にて申上(まをしあ)げたるごとく、058(むかし)はヱルサレムの聖地(せいち)において(とき)めき(わた)神国別(かみくにわけの)(みこと)059国祖(こくそ)国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)()隠退(いんたい)(さき)だち、060万寿山(まんじゆざん)()(しの)び、061(つひ)には天教山(てんけうざん)(すく)はれ()くも(たふと)宣伝使(せんでんし)となり、062()弘子彦(ひろやすひこ)(あらた)め、063(こころ)(かる)()扮装(いでたち)064(しほ)るる(はな)もまた()(はる)(うめ)(はな)065一度(いちど)(ひら)(うれ)しき神世(かみよ)(まつ)()の、066五六七(みろく)神政(しんせい)宣伝使(せんでんし)067われは(かへ)つて今日(こんにち)境遇(きやうぐう)満足(まんぞく)するものなり』
068()くより、069(をんな)はやや(はづか)()に、
070春日姫『アヽ()(たふと)(おん)(こころざし)かな。071(わらは)(をつと)鷹住別(たかすみわけ)身魂(みたま)(きよ)月照(つきてる)(かみ)(すく)はれ、072天地(てんち)道理(だうり)(さと)り、073()終末(をはり)(ちか)づける神人(かみがみ)(なや)みを(すく)はむと、074モスコーを(あと)に、075(わらは)(のこ)して何処(いづこ)あてともなく宣伝(せんでん)出掛(でか)(たま)ひぬ。076(わらは)(をんな)()(をつと)艱難(かんなん)辛苦(しんく)坐視(ざし)するに(しの)びむやと、077(くも)(ふか)(やかた)()てて()荒浪(あらなみ)(たたか)ひつつ、078此処(ここ)まで(きた)りしものの、079(なん)となく(こころ)(さび)しき一人旅(ひとりたび)080(あん)(わづら)折柄(をりから)に、081アヽ(いさ)ましき貴司(きか)()姿(すがた)(はい)し、082枯木(かれき)(はな)()()でしごとく(よろこ)びに()へず。083アヽわが(をつと)鷹住別(たかすみわけ)は、084いづこの(そら)さまよひたまふか。085女心(をんなごころ)未練(みれん)にも、086(あめ)(あした)(ゆき)(ゆふべ)087(をつと)()(うへ)(おも)()で、088(おも)はぬ(そで)()時雨(しぐれ)089日蔭(ひかげ)姿(すがた)のこの旅路(たびぢ)090一目(ひとめ)()ひたく(おも)へども、091この()(おも)真心(まごころ)の、092(たふと)(かき)(へだ)てられ、093(いま)一目(ひとめ)淡雪(あはゆき)の、094春日(かすが)()くる(おも)ひ、095果敢(はか)なき春日姫(かすがひめ)()れの()御覧(ごらん)あれ』
096流石(さすが)(やさ)しき女性(ぢよせい)の、097(なみだ)(あめ)一雫(ひとしづく)098()つるを(かく)して、099笑顔(ゑがほ)をつくる(いぢ)らしさ、100他所(よそ)()()(あは)れなり。
101 弘子彦(ひろやすひこ)はたちまち、102春日姫(かすがひめ)(あさ)(ゆふ)なに、103(をつと)(した)真心(まごころ)ほだされて地教(ちけう)(やま)(かく)れたる竜世姫(たつよひめ)()(うへ)(おも)(うか)べ、104(また)もや(しの)(なみだ)()れにける。105このとき船守(ふなもり)大声(おほごゑ)に、
106船守『オーイ、107オーイ、108(いま)(ふね)()るぞ。109(はや)()らぬと()(おく)れるぞ。110吾妻(あづま)(くに)への船出(ふなで)ぢや』
111(よば)はる。
112 この(こゑ)()くより男女(だんぢよ)二人(ふたり)は、113何時(いつ)まで(はな)すも(かぎ)りなし、114名残(なごり)はつきじと、115われとわが(こころ)(はげ)まし、116スツク()(あが)り、117春日姫(かすがひめ)埠頭(ふとう)へ、118弘子彦(ひろやすひこ)西方(せいはう)()して姿(すがた)(ぼつ)しける。119二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)(たがひ)見返(みかへ)(ふり)かへり、120()きぬ(なみだ)一時雨(ひとしぐれ)121(あは)れなりける次第(しだい)なり。
122大正一一・一・一七 旧大正一〇・一二・二〇 外山豊二録)
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