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第三五章 北光(きたてる)開眼(かいがん)〔二八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻 篇:第6篇 百舌鳥の囁 よみ(新仮名遣い):もずのささやき
章:第35章 北光開眼 よみ(新仮名遣い):きたてるかいがん 通し章番号:285
口述日:1922(大正11)年01月22日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
今度はもう一人の漂浪人が、自分は強者に片目をえぐられ、何とか敵を取ろうと旅をしているが、これを忘れて敵を赦すことができるでしょうか、と質問した。
北光天使は答えて言う:
憎しみが憎しみを生むことによって、鬼や悪魔が人間にとりつくのであり、そこをよく忍耐しなくてはならない。怨みは忘れなければならない。
先方が悪いのであれば、神様はきっと敵を討ってくださる。
人はただ、己を正しくして善をなせば、神様の御心にかなって幸福になるのである。
あなたが非道い目にあったのも、因縁であり、そこをよく直日に見直し聞き直さなければならない。善悪正邪の判断は、人間にはできないのであり、神の他力によって救われるにみである、と。
最初に小便をかけた漂浪人の甲は、この教えを聞いて怒り心頭に達し、怒鳴り散らすと竹槍でもって北光天使の片目をぐさりと抉った。
北光天使は泰然として竹槍を抜き取り、天に向かって感謝の祈りを捧げた。甲は北光天使を罵ると、竹槍でもう一つの目も突こうとした。
東彦はとっさに甲の手を掴んで押しのけた。甲はよろよろとして倒れ、エデン川に真っ逆さまに転落してしまった。北光天使はとっさに河中に飛び込んで、甲を助け出した。
この北光天使の行為に、さしも猛悪な甲も慈心に感じて悔改め、弟子となった。宣伝使は甲に、清河彦と名を与えた。
北光天使は、天岩戸開きにあたって偉勲を立てた、天の目一箇神の前身である。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-01 12:11:20 OBC :rm0635
愛善世界社版:212頁 八幡書店版:第1輯 703頁 修補版: 校定版:212頁 普及版:88頁 初版: ページ備考:
001 霊鷲山(れいしうざん)宣伝神(せんでんしん)北光(きたてるの)天使(かみ)泰然(たいぜん)自若(じじやく)として、002一心(いつしん)不乱(ふらん)神教(しんけう)()(すす)めつつあつた。003一同(いちどう)(うち)より、
004(おつ)宣伝使(せんでんし)にお(たづ)ねします。005(わたくし)御存(ごぞん)じのとほり、006片目(かため)(えぐ)られました。007(さいは)ひに片目(かため)(たす)かつたので、008どうなりかうなり、009この()(あか)りは()えますが、010時々(ときどき)(しやく)(さは)ります。011貴下(あなた)()(はなし)(うけたまは)り、012かつ()忍耐(にんたい)(つよ)きに感動(かんどう)しまして、013(わたくし)貴下(あなた)のやうに(うるは)しき(こころ)になつて、014直日(なほひ)とやらに見直(みなほ)()(なほ)さうと、015覚悟(かくご)()めましたが、016どうしたものか、017(はら)(そこ)(わる)(むし)(ひそ)んで()まして承知(しようち)をして()れませぬ。018これでも(かみ)(さま)御意(ぎよい)(かな)ひませうか。019どうやらすると、020(あだ)()て、021(あだ)()て、022(なに)をぐづぐづしてゐる。023肝腎(かんじん)眼球(めのたま)(えぐ)られよつて、024卑怯(ひけふ)未練(みれん)にもその(てき)(ゆる)しておくやうな、025(よわ)(こころ)()つなと(ささや)きます。026どうしたら(これ)()えるでせうか。027どうしたら(これ)(おも)はぬやうに、028綺麗(きれい)(わす)れる(こと)ができませうか』
029北光彦(きたてるひこ)御尤(ごもつとも)です、030それが人間(にんげん)(あさ)ましさです。031しかし、032そこ忍耐(にんたい)せなくてはならないのです。033何事(なにごと)惟神(かむながら)(まか)せなさい。034吾々(われわれ)がかうして一口(ひとくち)(はなし)をする()も、035()悪魔(あくま)吾々(われわれ)身辺(しんぺん)(ねら)つて()るのです。036また吾々(われわれ)(こころ)(なか)には、037(つね)(おに)悪魔(あくま)出入(でいり)をします。038それで人間(にんげん)(うま)(つき)直日(なほひ)(みたま)といふ立派(りつぱ)守護神(しゆごじん)相談(さうだん)して、039よく(かへり)みなくてはなりませぬ。040(わら)つて(くら)すも()いて(くら)すも、041(いか)つて(くら)すも(いさ)んで(くら)すも(おな)一生(いつしやう)です。042()にかく(わす)れるが(よろ)しい。043(あだ)()つべき理由(りいう)があり、044先方(むかう)(わる)ければ(かみ)(さま)はきつと(あだ)()つて(くだ)さるでせう。045人間(にんげん)(なに)よりも忍耐(にんたい)といふことが第一(だいいち)であります。046(ひと)(のろ)はず、047(ひと)審判(さばか)048ただ人間(にんげん)(かみ)御心(みこころ)(まか)して()けばこの()安全(あんぜん)です。049何事(なにごと)(かみ)(さま)御心(みこころ)であつて、050人間(にんげん)自分(じぶん)運命(うんめい)左右(さいう)する(こと)も、051どうする(こと)出来(でき)ないものです。052()くるも()するも、053みな(かみ)(さま)御手(みて)(うち)(にぎ)られて()るのである。054ただ(ひと)(おのれ)(ただ)しうして(ひと)(ぜん)(ほどこ)せば、055それが(かみ)(さま)御心(みこころ)(かな)ひ、056幸福(かうふく)()となるのです。057人間(にんげん)としてこの()にある(かぎ)り、058どうしても(かみ)(さま)のお()()まるやうな善事(ぜんじ)をなすことはできませぬ。059()()罪悪(ざいあく)(かさ)ねてその(つみ)(おも)みによつて種々(しゆじゆ)因縁(いんねん)(むす)ばれて()るのです。060あなたが眼球(めだま)(えぐ)られたのも(けつ)して偶然(ぐうぜん)ではありますまい。061(ほん)守護神(しゆごじん)たる直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)し、062(かへり)みて御覧(ごらん)なさい。063悪人(あくにん)だと(おも)つても悪人(あくにん)でなく(かみ)(さま)使(つか)はれてをる人間(にんげん)もあり、064善人(ぜんにん)だと()えてもまた悪魔(あくま)使(つか)はれてをる人間(にんげん)もあります。065善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)到底(たうてい)人間(にんげん)として判断(はんだん)出来(でき)ませぬ。066ただ惟神(かむながら)(まか)せて、067(かみ)他力(たりき)()つて安養(あんやう)浄土(じやうど)(すく)うて(もら)ふのが人生(じんせい)本意(ほんい)であります。068惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
069合掌(がつしやう)する。070(をり)しも(かふ)は、
071『ヤイ(みな)(やつ)072こんな(とぼ)けた教示(けうじ)()馬鹿(ばか)があるか。073それこそ(つよ)(もの)(がち)(をしへ)だ。074此奴(こいつ)はきつとウラル(ひこ)間諜(まはしもの)だぞ。075(おれ)のやうな(よわ)(もの)を、076(した)(さき)で、077ちよろまかしよるのだ。078オイ金州(きんしう)079貴様(きさま)片目(かため)(えぐ)られて、080今朝(けさ)まで(あだ)()つと()かして(りき)んでけつかつたが、081(いま)(ざま)つたらどうだい。082さつぱり宣伝使(せんでんし)(めくら)にせられよつて、083(いま)片方(かたはう)()()られてしまふのを()らぬか。084オイ片目(かため)085所存(しよぞん)(ほぞ)かんち086(いや)087(かた)めてかからぬと馬鹿(ばか)目玉(めだま)()はされるぞ。088コラヤイ、089何処(どこ)から北光彦(きたてるひこ)宣伝使(せんでんし)090貴様(きさま)えらい()()はしたらうか』
091といふより(はや)く、092削竹(そぎたけ)()つて宣伝使(せんでんし)(みぎ)()ぐさ()いた。093宣伝使(せんでんし)泰然(たいぜん)としてその竹槍(たけやり)()()り、094片手(かたて)()()さへながら、095(みぎ)()竹槍(たけやり)()ち、096押戴(おしいただ)(てん)(いの)(はじ)めた。
097(かふ)『ヤイ(はら)()つか。098天道(てんだう)(さま)(はや)(ばち)(あた)へて(くだ)さいなんて、099竹槍(たけやり)(あたま)(うへ)(いただ)きやがつてるのだらう。100滅多(めつた)此方(こなた)さまに(ばつ)(あた)つてたまるかい。101(かな)しいか、102(いた)いか、103(くる)しいか、104(なみだ)(こぼ)しよつて。105(いま)まで太平楽(たいへいらく)法螺(ほら)ばかり()れてその吠面(ほへづら)(なん)だ。106今迄(いままで)広言(くわうげん)()ず、107(なに)をメソメソ(つぶや)いてゐるのだイ』
108(げん)(きは)めて嘲弄(てうろう)した。109宣伝使(せんでんし)竹槍(たけやり)(かしら)(いただ)き、110右手(めて)にて()()さへながら、校定版・八幡版では「右手(めて)」ではなく「左手(ゆんで)」になっている。これは、前の方で「右の手に竹槍を持ち」と書いてあり、その竹槍を右手で持ったまま、同時に目を押さえるのではおかしいため、「左手」に変更したものと思われる
111北光天使『アヽ天地(てんち)大神(おほかみ)(さま)112(わたくし)貴神(あなた)(ふか)(ひろ)きその御恵(みめぐみ)と、113(たふと)御稜威(みいづ)()(なか)(まよ)へる人々(ひとびと)宣伝(せんでん)して(かみ)(くに)福音(ふくいん)実現(じつげん)することを(よろこ)びと(いた)します。114(こと)今日(こんにち)広大(くわうだい)無辺(むへん)()恩寵(おんちやう)(いただ)きました。115(ふた)つの()(うしな)つた人間(にんげん)さへあるに、116(わたくし)如何(いか)なる(さいはひ)(ひと)つの()(あた)へて(くだ)さいました。117さうして(ひと)つのお()()げになつた()は、118物質界(ぶつしつかい)()ることは出来(でき)なくなりましたが、119その(かは)りに、120(こころ)(まなこ)豁然(かつぜん)として(はちす)(はな)(ひら)くが(ごと)(あきらか)になり、121三千(さんぜん)世界(せかい)通達(つうたつ)するの霊力(れいりよく)(あた)へて(くだ)さいました。122今日(けふ)如何(いか)なる有難(ありがた)(たふと)日柄(ひがら)でありませう。123天地(てんち)大神(おほかみ)(さま)感謝(かんしや)(ささ)げます』
124鄭重(ていちよう)祈願(きぐわん)(ささ)げ、125天津(あまつ)祝詞(のりと)(こゑ)(ほがら)かに奏上(そうじやう)した。126一同(いちどう)人々(ひとびと)感涙(かんるい)(むせ)んでその()平伏(ひれふ)しうれし(なみだ)袖絞(そでしぼ)る。127(かふ)冷静(れいせい)にこの光景(くわうけい)見遣(みや)りながら、
128『オイ腰抜(こしぬ)け、129弱虫(よわむし)130(はな)()れ、131小便(せうべん)()れ、132()らず(ぐち)(たた)くな。133三文(さんもん)獅子舞(ししまい)(くち)ばかりぢや。134それほど()()かれて(うれ)しけりやお慈悲(じひ)に、135(ひと)()いてやらうか』
136(また)もや竹槍(たけやり)()つて(ひだり)()()かうとした。137このとき東彦(あづまひこの)(みこと)はその竹槍(たけやり)右手(みぎて)にグツと(にぎ)つたとたんに右方(うはう)()した。138(かふ)はよろよろとして(たふ)れ、139(かたはら)のエデン(がは)(きし)より真逆(まつさか)さまに顛落(てんらく)した。140北光(きたてるの)天使(かみ)(おどろ)いて真裸体(まつぱだか)となり河中(かちう)()()り、141(かふ)(あし)(つか)浅瀬(あさせ)()いて(これ)(すく)うた。
142 これよりさしも猛悪(まうあく)なりし乱暴者(らんばうもの)(かふ)衷心(ちうしん)よりその慈心(じしん)(かん)じ、143()(あらた)めて弟子(でし)となり宣伝(せんでん)従事(じうじ)することとはなりぬ。144宣伝使(せんでんし)(これ)清河彦(きよかはひこ)()(あた)へたり。145(ちな)みに北光(きたてるの)天使(かみ)天岩戸(あまのいわと)(びら)きに(つい)偉勲(ゐくん)()てたる(あめ)目一箇(まひとつの)(かみ)前身(ぜんしん)なりける。
146大正一一・一・二二 旧大正一〇・一二・二五 加藤明子録)
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