霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三四章 三大教(さんだいけう)〔二八四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻 篇:第6篇 百舌鳥の囁 よみ(新仮名遣い):もずのささやき
章:第34章 三大教 よみ(新仮名遣い):さんだいきょう 通し章番号:284
口述日:1922(大正11)年01月22日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:井上留五郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
漂浪人たちが東彦の宣伝使の教えを聞いているところへ、また白髪異様の宣伝使が、節面白く謡いながらやってきた。この宣伝使は、霊鷲山の山麓・玉の井の郷に現れた三葉彦神の教理・三大教を奉じる宣伝使・北光天使であった。
霊鷲山は、印度と西蔵の境に立つ高山であり、また黄金山は、聖地エルサレムの傍らに立つ橄欖山の別名である。
白髪異様の老宣伝使・北光天使は、東彦天使が宣伝をしている傍らに立ち、聞き入っていた。東彦は北光天使が聞いていることも知らずに、一心不乱に五大教の教理を説いている。
東彦はふと息をついたところで北光天使に気づき、お互いに名を交わした。東彦は、北光天使がどのような教理を奉じているのかを問いかけた。
北光天使は、宣伝使とは、神がその口を借りて深甚微妙の教理を説示するものである。神の道は神人の知識考量でもって伝えるべきものではないはずだ、と答えた。
東彦は、そのような宣伝使の重大なる意義を忘れて宗派の別を問うたことに恥じ入った。
二人の宣伝使は岩の上に立ち、天津祝詞を奏上して天地の大神の洪徳を賛美し、三大教と五大教の宣伝歌を一つにして歌った。
今度は北光天使が岩の上に坐を占めて、教えを説いた。
漂浪人の一人は、東彦の教えは神が善と悪を立て別ける、という教えだったが、北光天使の教えは、直日に見直せ聞き直せ、と内省と諦めを促している。悪いのは自分たちではなく、この世を欲しいままにしている強者ではないか、と咬み付いた。
北光天使は、どのような仕打ちを受けても、あくまで忍耐と寛容が肝心である、と返した。質問した男はこれを聞いて怒り、北光天使の背後に立って頭から小便をかけだした。
北光天使は小便を浴びながらも泰然として講演を続けている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-04-23 18:47:10 文字数:2865 OBC :rm0634
愛善世界社版:204頁 八幡書店版:第1輯 699頁 修補版: 校定版:204頁 普及版:84頁 初版: ページ備考:
001 黄金山(わうごんさん)下(か)の埴安彦(はにやすひこの)神(かみ)の教示(けうじ)を天下(てんか)に宣伝(せんでん)する東彦(あづまひこ)は、002一同(いちどう)を集(あつ)め、003岩上(がんじやう)に端坐(たんざ)し五大教(ごだいけう)の教理(けうり)を説示(せつじ)する折(をり)しも、004遥(はるか)の前方(ぜんぱう)より、005又(また)もや白髪(はくはつ)異様(いやう)の宣伝使(せんでんし)現(あら)はれ来(きた)り、
006北光天使『この世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ) 御魂(みたま)もひろき大直日(おほなほひ)
007 ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は 直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞(き)き直(なほ)せ
008 身(み)の過(あやま)ちは宣(の)り直(なほ)せ』
009と節(ふし)面白(おもしろ)く謡(うた)ひつつ、010此方(こなた)に向(むか)ひて進(すす)み来(く)る。
011 頭髪(とうはつ)は飽(あ)くまで白(しろ)く、012髯(ひげ)は八握(やつか)の胸先(むなさき)に垂(た)れ、013是(これ)また純白(じゆんぱく)にして、014銀(ぎん)の如(ごと)き光沢(くわうたく)を放(はな)ち居(ゐ)たり。
015 この宣伝使(せんでんし)は、016霊鷲山(りやうしうさん)麓(ろく)の玉(たま)の井(ゐ)の郷(さと)に現(あら)はれ出(い)でたる三葉彦(みつばひこの)神(かみ)の教理(けうり)三大教(さんだいけう)を、017天下(てんか)に宣布(せんぷ)する北光(きたてるの)天使(かみ)であつた。018さうしてこの霊鷲山(れいしうざん)は印度(いんど)と西蔵(チベツト)の境(さかひ)に屹立(きつりつ)する高山(かうざん)であり、019黄金山(わうごんざん)は聖地(せいち)ヱルサレムの傍(かたはら)に聳(そび)え立(た)つ橄欖山(かんらんざん)の別名(べつめい)なり。
020 白髪(はくはつ)異様(いやう)の老(らう)宣伝使(せんでんし)は、021東彦(あづまひこの)天使(かみ)の宣教(せんけう)を耳(みみ)を澄(す)ませて路傍(ろばう)に立(た)ちながら静(しづか)に聴(き)き入(い)る。022東彦(あづまひこの)天使(かみ)はこの宣伝使(せんでんし)が、023吾(わが)傍(かたはら)に来(きた)りて教理(けうり)を立聞(たちぎ)きせることを夢(ゆめ)にも知(し)らず、024一心(いつしん)不乱(ふらん)に側目(わきめ)も振(ふ)らず五大教(ごだいけう)の教理(けうり)を説示(せつじ)しつつありき。
025 北光(きたてるの)天使(かみ)は一同(いちどう)に目礼(もくれい)するのも打忘(うちわす)れ、026襟(えり)を正(ただ)して無我(むが)夢中(むちう)にこの教理(けうり)を聴(き)きつつありき。027東彦(あづまひこの)天使(かみ)は少(すこ)しく息(いき)を休(やす)めむとして口(くち)を閉(と)ぢ、028あたりを見(み)れば、029白髪(はくはつ)異様(いやう)の宣伝使(せんでんし)が平岩(ひらいは)の傍(かたはら)に佇立(ちよりつ)しゐるに驚(おどろ)き、
030東彦天使『貴下(あなた)は何人(なにびと)なるや』
031と軽(かる)き目礼(もくれい)と共(とも)に問(と)ひかくるに、032白髪(はくはつ)異様(いやう)の宣伝使(せんでんし)は、033慇懃(いんぎん)に答礼(たふれい)を施(ほどこ)しながら、
034北光天使『吾(われ)は霊鷲山(りやうしうざん)の麓(ふもと)に坐(ま)します三葉彦(みつばひこの)神(かみ)の宣伝使(せんでんし)なり。035今(いま)貴下(きか)の御(ご)説示(せつじ)を聴(き)き感歎(かんたん)措(お)く能(あた)はず拝聴(はいちやう)したり。036願(ねが)はくは吾(われ)にも教理(けうり)の蘊奥(うんあう)を説示(せつじ)し給(たま)はずや』
037と懇請(こんせい)する。
038 東彦(あづまひこの)天使(かみ)は宣伝使(せんでんし)と聞(き)き、039直(ただち)に岩(いは)の座(ざ)を下(くだ)りその前(まへ)に進(すす)み、040慇懃(いんぎん)に会釈(ゑしやく)しながら、
041東彦天使『吾(われ)は愚鈍(ぐどん)の性質(せいしつ)にして、042貴下(きか)らに教理(けうり)を説(と)くの力(ちから)なし。043只(ただ)吾(われ)より後(おく)れたる信者(しんじや)に対(たい)し、044神(かみ)の道(みち)を朧気(おぼろげ)ながら口伝(くちづた)へするのみ』
045と謙譲(けんじやう)の色(いろ)を表(あら)はし、046固(かた)く辞(じ)し、047かつ、
048東彦天使『貴下(きか)は如何(いか)なる教理(けうり)を宣伝(せんでん)したまふや、049聴(き)かま欲(ほ)し』
050と云(い)ふにぞ、051北光(きたてるの)天使(かみ)は、
052北光天使『こは心得(こころえ)ぬ貴下(きか)の御(お)言葉(ことば)かな。053そもそも神(かみ)の道(みち)は神人(しんじん)の知識(ちしき)また考量(かうりやう)を以(もつ)て伝(つた)ふ可(べ)きものにあらず。054神(かみ)は宣伝使(せんでんし)の口(くち)を藉(か)りて以(もつ)て甚深(じんしん)微妙(びめう)の教理(けうり)を説示(せつじ)し給(たま)ふにあらざるか』
055と問(と)ひ返(かへ)したるに、056東彦(あづまひこの)天使(かみ)はその理(り)に服(ふく)し、
057東彦天使『吾(われ)は誤(あやま)れり。058日夜(にちや)大神(おほかみ)の神示(しんじ)を宣伝(せんでん)弘布(ぐふ)する身(み)でありながら、059かくの如(ごと)き重大(ぢうだい)なる意義(いぎ)を忘却(ばうきやく)し居(ゐ)たり。060嗚呼(ああ)耻(はづ)かしや』
061とさし俯向(うつむ)きて、062袖(そで)に顔(かほ)を隠(かく)すを見(み)て、063北光(きたてるの)天使(かみ)は気(き)の毒(どく)がり、
064北光天使『致(いた)らぬ吾(われ)らの過言(くわごん)無礼(ぶれい)許(ゆる)させたまへ。065吾(われ)は神人(かみびと)を思(おも)ふの余(あま)り、066かくも不遜(ふそん)の言辞(げんじ)を、067宣伝使(せんでんし)たる貴下(きか)に申上(まをしあ)げしは不覚(ふかく)の至(いた)りなり。068実(げ)に耻(はづ)かしさの限(かぎ)りよ』
069と吾(わが)心(こころ)に省(かへり)み、070大(おほい)に耻(は)づるものの様(やう)なりける。
071 ここに二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)は岩上(がんじやう)に立(た)ち、072宣伝歌(せんでんか)を交(かは)る交(がは)る謡(うた)ひて、073天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、074天地(てんち)の大神(おほかみ)の洪徳(こうとく)を賛美(さんび)したりける。075而(しか)して二人(ふたり)の宣伝歌(せんでんか)を合一(がふいつ)して、076一(ひと)つの歌(うた)に延長(えんちやう)したり。
077『神(かみ)が表面(おもて)に現(あら)はれて
078善(ぜん)と悪(あく)とを立(た)て別(わ)ける
079魂(たま)を研(みが)けよ立替(たてか)へよ
080身(み)の行為(おこなひ)も立直(たてなほ)せ
081この世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
082霊魂(みたま)もひろき大直日(おほなほひ)
083ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
084直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞(き)き直(なほ)せ
085身(み)の過失(あやまち)は宣(の)り直(なほ)せ』
086 東彦(あづまひこの)天使(かみ)は席(せき)を譲(ゆづ)つて、087北光(きたてるの)天使(かみ)を平岩(ひらいは)の上(うへ)へ安坐(あんざ)せしめ、088神(かみ)の教示(けうじ)を聴(き)き入(い)りぬ。089この時(とき)一同(いちどう)は合掌(がつしやう)して神徳(しんとく)を讃美(さんび)し、090異口(いく)同音(どうおん)に宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ふ。091一同(いちどう)の顔(かほ)には以前(いぜん)に引代(ひきか)へ、092愉快(ゆくわい)に充(み)てる血色(けしき)漂(ただよ)ひける。
093甲(かふ)『只今(ただいま)の宣伝使(せんでんし)に御(お)尋(たづ)ね致(いた)します。094前刻(ぜんこく)より黄金山(わうごんざん)の宣伝使(せんでんし)様(さま)に承(うけたま)はりますには、095この世(よ)の中(なか)は善悪(ぜんあく)の立替(たてかへ)があり、096大慈(だいじ)大悲(だいひ)の神(かみ)様(さま)が現(あら)はれて善人(ぜんにん)を助(たす)け、097悪人(あくにん)を亡(ほろ)ぼし、098強(つよ)きを挫(くじ)き、099弱(よわ)きを救(すく)ひ、100吾々(われわれ)の地(ち)に落(お)ちたる人民(じんみん)を天国(てんごく)に救(すく)うて下(くだ)さると云(い)ふ事(こと)であります。101実(じつ)に吾々(われわれ)は再生(さいせい)の思(おも)ひと、102歓喜(くわんき)に堪(た)へませぬ。103然(しか)るに、104又(また)もや貴神(あなた)がここに現(あら)はれて、105「ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は、106直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ云々(うんぬん)」と仰(おほ)せられましたが、107一体(いつたい)これは何(ど)う云(い)う事(こと)でありませうか。108詳(くは)しく御(ご)説示(せつじ)を願(ねが)ひます。109吾々(われわれ)は祖先(そせん)伝来(でんらい)の山(やま)や田地(でんち)を悪人(あくにん)に占領(せんりやう)せられ、110女房(にようばう)は奪(うば)ひ取(と)られ、111住居(すみか)は焼(や)かれ、112食(く)ふに食(しよく)なく、113眠(ねむ)るに家(いへ)なく、114親子(おやこ)夫婦(ふうふ)は四方(しはう)に離散(りさん)し、115実(じつ)に在(あ)るにあられぬ、116悲(かな)しい世(よ)を送(おく)つて居(を)ります。117私(わたくし)はそれ故(ゆゑ)斯(か)く乞食(こじき)となりて四方(しはう)を廻(めぐ)り、118家(いへ)を焼(や)き女房(にようばう)を奪(うば)つた悪者(わるもの)を探(さが)し求(もと)めて、119仇(あだ)を討(う)つてやらうと考(かんが)へ、120苦労(くらう)艱難(かんなん)を致(いた)してをりますが、121若(も)し神(かみ)様(さま)がこの世(よ)に在(い)らつしやるのならば、122何故(なぜ)こんな不公平(ふこうへい)な事(こと)があるのに、123黙(だま)つて見(み)て居(を)られるのでせうか。124私(わたくし)はこの世(よ)に神(かみ)の存在(そんざい)を疑(うたが)ひます。125先(さき)の宣伝使(せんでんし)の言(い)はれたやうに、126善悪(ぜんあく)を立替(たてかへ)る神(かみ)様(さま)が在(あ)るとすれば、127一(いち)日(にち)も早(はや)くこの無念(むねん)を晴(は)らして欲(ほ)しいと思(おも)ひます。128然(しか)るに只今(ただいま)貴下(あなた)の御(お)言葉(ことば)の中(なか)に「ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は、129直霊(なほひ)に見直(みなほ)せ聞(き)き直(なほ)せ」と仰(あふ)せになりましたが、130これは要(えう)するに何事(なにごと)も諦(あきら)めよとの教(をしへ)ではありますまいか。131先(さき)の神(かみ)様(さま)の教(をしへ)と貴下(あなた)の教(をしへ)とは、132どうしてもつばねが合(あ)はないやうな考(かんが)へがするのです。133どうぞ詳(くは)しく御(お)諭(さと)しを願(ねが)ひたう存(ぞん)じます』
134 ここに北光(きたてるの)天使(かみ)は、
135北光天使『神(かみ)様(さま)は至善(しぜん)至美(しび)至仁(しじん)至愛(しあい)の御(お)方(かた)である。136故(ゆゑ)に悪(あく)を憎(にく)み、137無慈悲(むじひ)を御(お)嫌(きら)ひ遊(あそ)ばすのは云(い)ふ迄(まで)もない。138しかし人間(にんげん)はいかに立派(りつぱ)な賢(かしこ)い者(もの)でも、139神(かみ)様(さま)の御(お)智慧(ちゑ)に比(くら)べて見(み)れば、140実(じつ)に耻(はづ)かしいものであります。141災(わざはひ)多(おほ)く、142悪魔(あくま)の蔓延(はびこ)る今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)は、143どうしても無限(むげん)絶対力(ぜつたいりよく)におはします神(かみ)様(さま)の力(ちから)に依頼(たよ)らねばならぬ。144あなたが家(いへ)を焼(や)かれ、145山林(さんりん)田畑(でんばた)を掠奪(りやくだつ)され、146女房(にようばう)を取(と)られて、147その怨(うら)みを晴(は)らさうと思(おも)ひ、148諸方(しよはう)を尋(たづ)ね廻(まは)らるるのは人情(にんじやう)として尤(もつと)もであり、149吾々(われわれ)も満腔(まんこう)の同情(どうじやう)をよせますが、150併(しか)し、151そこを人間(にんげん)は忍耐(にんたい)して、152敵(てき)を赦(ゆる)してやらねばならぬのです。153そこが人間(にんげん)の尊(たふと)い所(ところ)であつて、154神(かみ)様(さま)の大御心(おほみこころ)に叶(かな)うといふものです』
155と聞(き)くや否(いな)や、156甲(かふ)はムツクと起(た)ち上(あが)り、
157甲『馬鹿(ばか)』
158と叫(さけ)び、159かつ隼(はやぶさ)の様(やう)な眼(め)を剥(む)いて北光(きたてるの)天使(かみ)を睨(にら)みつけ、160息(いき)をはづませながら、
161甲『オヽ俺(おれ)はコヽ斯(こ)んな宣伝使(せんでんし)の吐(ぬ)かす事(こと)は、162キヽ気(き)に食(く)はぬ。163腰抜(こしぬけ)野郎(やらう)奴(め)。164嬶(かか)を奪(と)られ、165家(いへ)を焼(や)かれ、166悪人(あくにん)に財産(ざいさん)を全部(すつかり)ふんだくられ、167寝(ね)る家(いへ)もなく、168食(く)ふ物(もの)もなし、169親子(おやこ)は散(ち)り散(ぢ)りばらばらになつて、170在(あ)るにあられぬ艱難(かんなん)苦労(くらう)をして居(を)るのに、171苦労(くらう)知(し)らずの人情(にんじやう)知(し)らず奴(め)。172ナヽ何(なに)が、173カヽ神(かみ)さまだ。174赦(ゆる)してやれも糞(くそ)もあつたものかい。175尻(けつ)が呆(あき)れらア。176あまり人(ひと)を馬鹿(ばか)にするない。177そんならお前(まへ)の頭(あたま)に、178オヽ俺(おれ)が今(いま)小便(せうべん)を引(ひ)つかけてやるが、179それでもお前(まへ)はオヽ怒(おこ)らぬか』
180といひながら、181宣伝使(せんでんし)の背後(はいご)に立(た)ち、182端坐(たんざ)せる北光(きたてるの)天使(かみ)の頭(あたま)をめがけて、183ジヤアジヤアと放(や)りだした。184東彦(あづまひこの)天使(かみ)その他(た)の一同(いちどう)は、
185『待(ま)て待(ま)て』
186と叫(さけ)ぶ。187その間(あひだ)に小便(せうべん)は全部(すつかり)放出(はうしゆつ)し了(をは)りぬ。
188 北光(きたてるの)天使(かみ)は莞爾(につこ)として坐(すわ)りゐたり。
189 甲(かふ)は尚(なほ)も口汚(くちぎた)なく、
190甲『ヤイ腰抜(こしぬけ)、191弱蟲(よわむし)、192小便(せうべん)垂(た)れ、193洟(はな)垂(た)れ』
194と罵(ののし)る。195一同(いちどう)は、
196『オイ貴様(きさま)が小便(せうべん)垂(た)れぢやないか。197今(いま)現(げん)に小便(せうべん)を垂(た)れたであらう。198人(ひと)のことだと思(おも)つて自分(じぶん)の事(こと)を吐(ぬ)かして居(ゐ)らア。199オイ、200洟(はな)を拭(ふ)かぬかい。201水洟(みづばな)垂(た)らしやがつて、202洟(はな)垂(た)れの小便(せうべん)垂(た)れとは貴様(きさま)のことだよ』
203といふに、204甲(かふ)は躍起(やつき)となり、
205甲『なに、206俺(おれ)が小便(せうべん)垂(た)れたのぢやない。207小便(せうべん)の方(はう)から出(で)よつたのだ。208俺(おれ)や、209洟(はな)垂(た)れアせぬ、210洟(はな)の方(はう)から出(で)て来(き)やがつたのだい』
211と不減口(へらずぐち)を叩(たた)く。
212 北光(きたてるの)天使(かみ)は泰然(たいぜん)として、213小便(せうべん)を浴(あ)びたまま講演(かうえん)をつづける。
214(大正一一・一・二二 旧大正一〇・一二・二五 井上留五郎録)
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