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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第27巻(寅の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 聖地の秋
01 高姫館
〔783〕
02 清潔法
〔784〕
03 魚水心
〔785〕
第2篇 千差万別
04 教主殿
〔786〕
05 玉調べ
〔787〕
06 玉乱
〔788〕
07 猫の恋
〔789〕
第3篇 神仙霊境
08 琉と球
〔790〕
09 女神託宣
〔791〕
10 太平柿
〔792〕
11 茶目式
〔793〕
第4篇 竜神昇天
12 湖上の怪物
〔794〕
13 竜の解脱
〔795〕
14 草枕
〔796〕
15 情意投合
〔797〕
第5篇 清泉霊沼
16 琉球の神
〔798〕
17 沼の女神
〔799〕
18 神格化
〔800〕
余白歌
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> 第5篇 清泉霊沼 > 第16章 琉球の神
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第一六章
琉球
(
りうきう
)
の
神
(
かみ
)
〔七九八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻
篇:
第5篇 清泉霊沼
よみ(新仮名遣い):
せいせんれいしょう
章:
第16章 琉球の神
よみ(新仮名遣い):
りゅうきゅうのかみ
通し章番号:
798
口述日:
1922(大正11)年07月27日(旧06月04日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年6月20日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫が去った後、言依別命一行が木の洞穴に戻ってきた。言依別命は無事に琉球の玉を手に入れたことを伝えた。清彦らは、教主に挨拶をなした後、この場所に至った経緯を報告した。清彦と照彦は、父である常楠と思わぬところで出会うことになり、挨拶を交わした。
清彦と照彦は、高姫が言依別命を追ってここまでやってきたことを話した。言依別命は、自分が琉と球の玉を持って高砂島へ渡れば、形骸に囚われた高姫が玉を狙って罪を作ることになる、と心配した。
言依別命は、玉の精霊を自分と国依別に移して、玉は若彦に命じて玉能姫の館に持ち帰るように命じた。言依別命は、この神業が成就したら若彦は玉能姫の夫として共に棲んでもよいことを示唆した。言依別命は常楠翁に対して、琉球島の王となるように命じ、清彦・照彦と共に島を守るように命じた。
言依別命は島人二人を伴って高砂島へ出立した。清彦と照彦は、清子姫と照子姫の姿がいつの間にか消えていることに気付き、落胆した。しかし、自分たちには紀の国に残してきた妻子があったことを思い出し、天則違反をせずに済んだことを感謝した。
しかしながら後に、二人の妻子は夫を捨ててどこかに姿を消してしまったことが判明した。また常楠翁は後に、ハーリス山奥深くに進み入って生き神となり、今に至るまで琉球島を守護することとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-11-05 19:33:27
OBC :
rm2716
愛善世界社版:
255頁
八幡書店版:
第5輯 334頁
修補版:
校定版:
263頁
普及版:
112頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
が
立去
(
たちさ
)
つた
後
(
あと
)
の
洞穴
(
どうけつ
)
は、
002
水入
(
みづい
)
らずの
男女
(
だんぢよ
)
四
(
よ
)
名
(
めい
)
、
003
互
(
たがひ
)
に
秘密
(
ひみつ
)
を
半
(
なかば
)
打明
(
うちあ
)
けて
一種
(
いつしゆ
)
異様
(
いやう
)
の
気分
(
きぶん
)
に
打
(
う
)
たれてゐる。
004
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は、
005
国依別
(
くによりわけ
)
、
006
若彦
(
わかひこ
)
、
007
常楠
(
つねくす
)
、
008
チヤール、
009
ベース
其
(
その
)
他
(
た
)
の
土人
(
どじん
)
を
引伴
(
ひきつ
)
れ、
010
此
(
この
)
洞穴
(
どうけつ
)
指
(
さ
)
して
一先
(
ひとま
)
づ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
011
入口
(
いりぐち
)
より
中
(
なか
)
を
覗
(
のぞ
)
けば
灯火
(
あかり
)
がついて
居
(
ゐ
)
る。
012
さうして
奥
(
おく
)
の
方
(
はう
)
に
何
(
なに
)
か
人影
(
ひとかげ
)
が
見
(
み
)
えてゐる。
013
国依別
(
くによりわけ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
014
国依別
(
くによりわけ
)
『ヤア
皆
(
みな
)
さま、
015
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
016
誰
(
たれ
)
か
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
土人
(
どじん
)
と
見
(
み
)
えるが、
017
灯火
(
あかり
)
をつけて
待
(
ま
)
つてゐる
様
(
やう
)
です』
018
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
一足先
(
ひとあしさき
)
に
入
(
はい
)
つた。
019
清彦
(
きよひこ
)
は
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
020
清彦
(
きよひこ
)
『ヤア』
021
とばかりに
驚
(
おどろ
)
き、
022
側
(
そば
)
に
駆寄
(
かけよ
)
つて、
023
清彦
(
きよひこ
)
『これはこれは
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
024
ヤア
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
025
大勢
(
おほぜい
)
の
方々
(
かたがた
)
、
026
よくマア
御
(
お
)
いで
下
(
くだ
)
さいました。
027
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
の
通
(
とほ
)
りの
荒屋
(
あばらや
)
、
028
苺
(
いちご
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
御座
(
ござ
)
いますれば、
029
悠乎
(
ゆつくり
)
と
御
(
お
)
召
(
あが
)
り
遊
(
あそ
)
ばして
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
030
国依別
(
くによりわけ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
清彦
(
きよひこ
)
ぢやないか。
031
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
我輩
(
わがはい
)
の
邸宅
(
ていたく
)
を
横領
(
わうりやう
)
して、
032
主人
(
しゆじん
)
気取
(
きど
)
りになつて
了
(
しま
)
つたのだな……
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
033
其
(
その
)
他
(
た
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
034
清彦
(
きよひこ
)
が
御
(
お
)
留守宅
(
るすたく
)
へやつて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
ります』
035
清彦
(
きよひこ
)
『どうぞ
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
036
国依別
(
くによりわけ
)
『
主客
(
しゆきやく
)
顛倒
(
てんたう
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
037
ヤア
奥
(
おく
)
には
照彦
(
てるひこ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
二人
(
ふたり
)
の
頗
(
すこぶ
)
る
美人
(
びじん
)
が
居
(
ゐ
)
るではないか。
038
中々
(
なかなか
)
抜目
(
ぬけめ
)
の
無
(
な
)
い
男
(
をとこ
)
だね』
039
言依別
(
ことよりわけ
)
『アヽ
若彦
(
わかひこ
)
さま、
040
常楠
(
つねくす
)
さま、
041
サア
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
進
(
すす
)
み
下
(
くだ
)
さい』
042
常楠
(
つねくす
)
と
若彦
(
わかひこ
)
は
琉
(
りう
)
、
043
球
(
きう
)
の
玉
(
たま
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
044
洞穴内
(
どうけつない
)
の
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
き
処
(
ところ
)
に
安置
(
あんち
)
し、
045
拍手
(
かしはで
)
を
打
(
う
)
ち
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
何事
(
なにごと
)
か
小声
(
こごゑ
)
に
唱
(
とな
)
へてゐる。
046
清彦
(
きよひこ
)
、
047
照彦
(
てるひこ
)
、
048
清子姫
(
きよこひめ
)
、
049
照子姫
(
てるこひめ
)
は
両手
(
りやうて
)
をつき、
050
四人
『
是
(
これ
)
は
是
(
これ
)
は
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
051
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
ところ
)
で
御
(
お
)
目
(
め
)
にかかりました。
052
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
053
言依別
(
ことよりわけ
)
『ヤア
有難
(
ありがた
)
う。
054
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
を
以
(
もつ
)
て
竜
(
たつ
)
の
腮
(
あぎと
)
の
琉
(
りう
)
、
055
球
(
きう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
はうまく
手
(
て
)
に
入
(
い
)
りました。
056
就
(
つい
)
ては
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
どうして
又
(
また
)
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
たのですか』
057
清子姫
(
きよこひめ
)
『ハイ、
058
妾
(
わたし
)
は
比沼
(
ひぬ
)
の
真奈井
(
まなゐ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
に
於
(
おい
)
て、
059
照子姫
(
てるこひめ
)
様
(
さま
)
と
禊
(
みそぎ
)
を
修
(
しう
)
して
居
(
を
)
りました。
060
処
(
ところ
)
が
瑞
(
みづ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
は
俄
(
にはか
)
に
鳴動
(
めいどう
)
を
始
(
はじ
)
め、
061
四辺
(
あたり
)
に
芳香
(
はうかう
)
薫
(
くん
)
じ、
062
微妙
(
びめう
)
の
音楽
(
おんがく
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
ると
思
(
おも
)
ふ
間
(
ま
)
もなく、
063
忽然
(
こつぜん
)
として
現
(
あら
)
はれ
玉
(
たま
)
ひし
豊国姫
(
とよくにひめ
)
の
御
(
ご
)
神姿
(
しんし
)
、
064
言葉
(
ことば
)
静
(
しづ
)
かに
宣
(
の
)
らせ
玉
(
たま
)
ふやう………この
宝座
(
ほうざ
)
は、
065
妾
(
わらは
)
寸時
(
しばらく
)
神界
(
しんかい
)
の
都合
(
つがふ
)
によつて
或
(
ある
)
地点
(
ちてん
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ、
066
神霊
(
しんれい
)
不在
(
ふざい
)
となれば、
067
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
068
由良
(
ゆら
)
の
港
(
みなと
)
の
秋山彦
(
あきやまひこ
)
が
館
(
やかた
)
に、
069
竜宮
(
りうぐう
)
の
麻邇
(
まに
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
集
(
あつ
)
まり
玉
(
たま
)
へば
之
(
これ
)
を
奉迎
(
ほうげい
)
せよ……
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
、
070
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
も
御
(
お
)
でましになつてゐる……との
事
(
こと
)
に、
071
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ
由良港
(
ゆらみなと
)
へ
参
(
まゐ
)
りしも
後
(
あと
)
の
祭
(
まつり
)
となり、
072
其
(
その
)
儘
(
まま
)
聖地
(
せいち
)
に
上
(
のぼ
)
り、
073
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
074
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
神勅
(
しんちよく
)
や、
075
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
教示
(
けうじ
)
を
拝
(
はい
)
して
高熊山
(
たかくまやま
)
に
登
(
のぼ
)
り、
076
三
(
さん
)
週間
(
しうかん
)
の
行
(
ぎやう
)
を
為
(
な
)
し、
077
いろいろの
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
を
承
(
うけたま
)
はつて、
078
漸
(
やうや
)
くここに
参
(
まゐ
)
つたもので
厶
(
ござ
)
います。
079
ところが
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て
船
(
ふね
)
を
暗礁
(
あんせう
)
に
乗
(
の
)
り
上
(
あ
)
げ、
080
生命
(
いのち
)
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
を
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
に
助
(
たす
)
けられ、
081
結構
(
けつこう
)
なる
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
をうけましたもので
厶
(
ござ
)
います』
082
言依別
(
ことよりわけ
)
『それは
皆
(
みな
)
さま、
083
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
084
吾々
(
われわれ
)
とても
琉
(
りう
)
、
085
球
(
きう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
無事
(
ぶじ
)
に
拝領
(
はいりやう
)
し
来
(
きた
)
れば、
086
これよりは
益々
(
ますます
)
神徳
(
しんとく
)
著
(
いちじる
)
く、
087
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
も
完全
(
くわんぜん
)
に
成就
(
じやうじゆ
)
する
事
(
こと
)
と
悦
(
よろこ
)
んで
居
(
を
)
ります』
088
国依別
(
くによりわけ
)
『モシモシ
常楠
(
つねくす
)
さま、
089
貴方
(
あなた
)
の
血縁
(
けつえん
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
此処
(
ここ
)
に
御
(
お
)
越
(
こ
)
しになつてゐるといふのも、
090
不思議
(
ふしぎ
)
の
経綸
(
けいりん
)
ぢやありませぬか。
091
照彦
(
てるひこ
)
に
清彦
(
きよひこ
)
、
092
照子姫
(
てるこひめ
)
に
清子姫
(
きよこひめ
)
、
093
これ
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つの
不思議
(
ふしぎ
)
、
094
…
常楠
(
つねくす
)
に
常彦
(
つねひこ
)
、
095
…これも
亦
(
また
)
不思議
(
ふしぎ
)
。
096
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い
事
(
こと
)
だが
言依別
(
ことよりわけ
)
様
(
さま
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
、
097
若彦
(
わかひこ
)
さまにチヤール、
098
ベース、
099
名
(
な
)
までよく
情意
(
じやうい
)
投合
(
とうがふ
)
してゐる
様
(
やう
)
ですなア。
100
アハヽヽヽ』
101
常楠
(
つねくす
)
『お
前
(
まへ
)
は
清彦
(
きよひこ
)
、
102
照彦
(
てるひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
103
ようマアこんな
処
(
ところ
)
まで
探
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
てくれた。
104
親
(
おや
)
なればこそ、
105
子
(
こ
)
なればこそだ』
106
清彦
(
きよひこ
)
、
107
照彦
(
てるひこ
)
両人
(
りやうにん
)
は
一度
(
いちど
)
に、
108
両人
(
りやうにん
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
斯様
(
かやう
)
なところでお
父
(
とう
)
さまに
御
(
お
)
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
らうなどとは、
109
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
つてゐませんでした。
110
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
の
後
(
あと
)
をつけ
狙
(
ねら
)
つて
高姫
(
たかひめ
)
一行
(
いつかう
)
が
参
(
まゐ
)
つたと
聞
(
き
)
き、
111
心
(
こころ
)
も
心
(
こころ
)
ならず、
112
御
(
お
)
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
つて
御用
(
ごよう
)
の
末端
(
はしくれ
)
にもと
思
(
おも
)
ひ、
113
出
(
で
)
て
参
(
まゐ
)
りました。
114
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
最早
(
もはや
)
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
島
(
しま
)
を
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
御用
(
ごよう
)
了
(
をは
)
り、
115
御
(
ご
)
出立
(
しゆつたつ
)
の
跡
(
あと
)
ならんと
落胆
(
らくたん
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたが、
116
併
(
しか
)
しここで
御
(
お
)
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りましたのは
何
(
なに
)
より
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います』
117
言依別
(
ことよりわけ
)
『あゝさうであつたか。
118
それは
大
(
おほ
)
いに
心配
(
しんぱい
)
を
掛
(
か
)
けたなア。
119
併
(
しか
)
し
高姫
(
たかひめ
)
さまは
執拗
(
しつえう
)
にも
斯様
(
かやう
)
なところまで、
120
吾々
(
われわれ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つて
来
(
き
)
たのかなア』
121
清彦
(
きよひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さまは
仮令
(
たとへ
)
高砂島
(
たかさごじま
)
の
果
(
はて
)
までも
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
後
(
あと
)
を
尋
(
たづ
)
ね
廻
(
まは
)
り、
122
七
(
なな
)
つの
宝玉
(
ほうぎよく
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
して
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
を
改心
(
かいしん
)
させなならぬと
言
(
い
)
つて、
123
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
とてこの
洞穴
(
どうけつ
)
に
御
(
お
)
越
(
こ
)
しに
相成
(
あひな
)
り、
124
常彦
(
つねひこ
)
、
125
春彦
(
はるひこ
)
と
共
(
とも
)
に、
126
大変
(
たいへん
)
に
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
に
毒吐
(
どくつ
)
いた
揚句
(
あげく
)
、
127
一刻
(
いつこく
)
も
猶予
(
いうよ
)
ならぬ。
128
言依別
(
ことよりわけ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つてやらうと
云
(
い
)
つて、
129
慌
(
あわただ
)
しくここを
立去
(
たちさ
)
られた
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
130
モウ
今頃
(
いまごろ
)
は
何処
(
どこ
)
かの
浜辺
(
はまべ
)
から、
131
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
してゐる
位
(
くらゐ
)
でせう』
132
言依別
(
ことよりわけ
)
『
何処
(
どこ
)
までも
玉
(
たま
)
にかけたら
執念深
(
しふねんぶか
)
い
高姫
(
たかひめ
)
だなア。
133
アヽ
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い』
134
と
双手
(
もろで
)
を
組
(
く
)
んで
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れる。
135
言依別
(
ことよりわけ
)
『さうすれば
高姫
(
たかひめ
)
さまは、
136
又
(
また
)
我々
(
われわれ
)
の
渡
(
わた
)
る
高砂島
(
たかさごじま
)
へも
行
(
ゆ
)
くに
違
(
ちが
)
ひ
無
(
な
)
い。
137
琉
(
りう
)
、
138
球
(
きう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
持
(
も
)
つて
参
(
まゐ
)
れば、
139
又
(
また
)
しても
罪
(
つみ
)
を
作
(
つく
)
らす
様
(
やう
)
なものだ。
140
是
(
これ
)
から
国依別
(
くによりわけ
)
と
両人
(
りやうにん
)
が
玉
(
たま
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
我
(
わ
)
が
身魂
(
みたま
)
に
移
(
うつ
)
し、
141
形骸
(
けいがい
)
丈
(
だけ
)
は……
若彦
(
わかひこ
)
さま、
142
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが
二
(
ふた
)
つとも
貴方
(
あなた
)
が
守護
(
しゆご
)
して、
143
再度山
(
ふたたびやま
)
の
麓
(
ふもと
)
なる
玉能姫
(
たまのひめ
)
の
館
(
やかた
)
へ
持帰
(
もちかへ
)
り、
144
夫婦
(
ふうふ
)
揃
(
そろ
)
うて
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
保管
(
ほくわん
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
145
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
をして
下
(
くだ
)
さい。
146
貴方
(
あなた
)
も
此
(
この
)
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
した
上
(
うへ
)
は、
147
玉能姫
(
たまのひめ
)
の
夫
(
をつと
)
として
同棲
(
どうせい
)
されても
差支
(
さしつかへ
)
は
有
(
あ
)
りますまい』
148
若彦
(
わかひこ
)
はハツと
驚
(
おどろ
)
き、
149
有難涙
(
ありがたなみだ
)
に
暮
(
く
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
150
若彦
(
わかひこ
)
『
情
(
なさけ
)
の
籠
(
こも
)
つた
教主
(
けうしゆ
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
151
有難
(
ありがた
)
く
存
(
ぞん
)
じます。
152
左様
(
さやう
)
なれば
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
保護
(
ほご
)
致
(
いた
)
し、
153
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
の
神館
(
かむやかた
)
へ
持帰
(
もちかへ
)
り、
154
貴方
(
あなた
)
の
聖地
(
せいち
)
へ
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
迄
(
まで
)
大切
(
たいせつ
)
に
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
します』
155
言依別
(
ことよりわけ
)
『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
156
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さい。
157
……
又
(
また
)
常楠翁
(
つねくすをう
)
は
此
(
この
)
琉球島
(
りうきうじま
)
の
土人
(
どじん
)
の
神
(
かみ
)
となり、
158
王
(
わう
)
となつて
永遠
(
ゑいゑん
)
に
此処
(
ここ
)
に
鎮
(
しづ
)
まり
神業
(
しんげふ
)
に
尽
(
つく
)
して
貰
(
もら
)
ひたい。
159
……
清彦
(
きよひこ
)
、
160
照彦
(
てるひこ
)
は
常楠
(
つねくす
)
と
共
(
とも
)
に
本島
(
ほんたう
)
を
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
し、
161
余力
(
よりよく
)
あれば
台湾島
(
たいわんたう
)
へも
渡
(
わた
)
つて
三五教
(
あななひけう
)
を
広
(
ひろ
)
め、
162
国魂神
(
くにたまがみ
)
となつて
土民
(
どみん
)
を
永遠
(
ゑいゑん
)
に
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
163
言依別
(
ことよりわけ
)
はこれより
国依別
(
くによりわけ
)
と
共
(
とも
)
に、
164
高砂島
(
たかさごじま
)
へ
渡
(
わた
)
り、
165
夫
(
それ
)
より
常世国
(
とこよのくに
)
を
廻
(
めぐ
)
つて
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
、
166
産土
(
うぶすな
)
山脈
(
さんみやく
)
の
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
立向
(
たちむか
)
ふ
考
(
かんが
)
へだ。
167
随分
(
ずゐぶん
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
を
頂
(
いただ
)
いて
壮健
(
さうけん
)
無事
(
ぶじ
)
に
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
されよ』
168
と
宣示
(
せんじ
)
する。
169
一同
(
いちどう
)
はハツとばかりに
有難涙
(
ありがたなみだ
)
を
出
(
いだ
)
し、
170
頭
(
かしら
)
を
地
(
ち
)
につけて
涕泣
(
ていきふ
)
稍
(
やや
)
久
(
ひさ
)
しうしてゐる。
171
ここに
言依別
(
ことよりわけ
)
は
琉
(
りう
)
の
珠
(
たま
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
腹
(
はら
)
に
吸
(
す
)
ひ
玉
(
たま
)
ひ、
172
国依別
(
くによりわけ
)
は
球
(
きう
)
の
珠
(
たま
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
吸
(
す
)
ひ、
173
終
(
をは
)
つて
二個
(
にこ
)
の
玉手箱
(
たまてばこ
)
を
若彦
(
わかひこ
)
に
渡
(
わた
)
した。
174
若彦
(
わかひこ
)
は
押頂
(
おしいただ
)
いて、
175
直
(
ただち
)
にチヤール、
176
ベースの
二人
(
ふたり
)
に
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
らせ
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
保護
(
ほご
)
し、
177
荒浪
(
あらなみ
)
をわけて、
178
再
(
ふたた
)
び
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
す
事
(
こと
)
となつた。
179
これより
若彦
(
わかひこ
)
、
180
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
に
於
(
おい
)
て
夫婦
(
ふうふ
)
の
息
(
いき
)
を
合
(
あは
)
せ、
181
神界
(
しんかい
)
の
為
(
ため
)
に
大功
(
たいこう
)
を
顕
(
あら
)
はしたのである。
182
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
183
琉球
(
りうきう
)
全体
(
ぜんたい
)
の
守護権
(
しゆごけん
)
を、
184
常楠
(
つねくす
)
、
185
清彦
(
きよひこ
)
、
186
照彦
(
てるひこ
)
に
一任
(
いちにん
)
し、
187
悠々
(
いういう
)
として
土人
(
どじん
)
二
(
に
)
名
(
めい
)
を
引伴
(
ひきつ
)
れ、
188
船
(
ふね
)
を
操
(
あやつ
)
らせ
乍
(
なが
)
ら、
189
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
を
蹶
(
け
)
つて
高砂島
(
たかさごじま
)
に
向
(
むか
)
つて
出発
(
しゆつぱつ
)
された。
190
又
(
また
)
清子姫
(
きよこひめ
)
、
191
照子姫
(
てるこひめ
)
は
言依別
(
ことよりわけ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
暗夜
(
やみよ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り、
192
高砂島
(
たかさごじま
)
へ
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
となつた。
193
清彦
(
きよひこ
)
、
194
照彦
(
てるひこ
)
はこの
二人
(
ふたり
)
の
美女
(
びぢよ
)
が
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
195
此
(
この
)
島
(
しま
)
より
消
(
き
)
え
去
(
さ
)
りしに
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
落胆
(
らくたん
)
したが、
196
よく
顧
(
かへり
)
みれば、
197
自分
(
じぶん
)
には
紀
(
き
)
の
国
(
くに
)
に
妻子
(
さいし
)
ある
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し、
198
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
の
行動
(
かうどう
)
となるに
思
(
おも
)
ひ
当
(
あた
)
り、
199
この
恋
(
こひ
)
を
断念
(
だんねん
)
する
事
(
こと
)
となつた。
200
然
(
しか
)
るに
清彦
(
きよひこ
)
、
201
照彦
(
てるひこ
)
二人
(
ふたり
)
の
妻子
(
さいし
)
は、
202
夫
(
をつと
)
を
捨
(
す
)
てて
何処
(
いづく
)
へか
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したる
事
(
こと
)
後
(
のち
)
に
至
(
いた
)
つて
判然
(
はんぜん
)
し、
203
常楠
(
つねくす
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
つて
貴人
(
きじん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
妻
(
つま
)
となし、
204
清彦
(
きよひこ
)
は
琉球
(
りうきう
)
の
北
(
きた
)
の
島
(
しま
)
を、
205
照彦
(
てるひこ
)
は
南
(
みなみ
)
の
島
(
しま
)
を
管掌
(
くわんしやう
)
し、
206
永遠
(
ゑいゑん
)
にその
子孫
(
しそん
)
を
伝
(
つた
)
へたのである。
207
又
(
また
)
常楠
(
つねくす
)
はハーリス
山
(
ざん
)
の
山
(
やま
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つて
生神
(
いきがみ
)
となり、
208
俗界
(
ぞくかい
)
より
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
209
今
(
いま
)
に
到
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
不老
(
ふらう
)
不死
(
ふし
)
の
仙術
(
せんじゆつ
)
を
体得
(
たいとく
)
し、
210
琉球島
(
りうきうじま
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
となつてゐる。
211
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
212
(
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旧六・四
外山豊二
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