霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 空威張(からゐばり)〔三〇六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻 篇:第1篇 大台ケ原 よみ(新仮名遣い):おおだいがはら
章:第6章 空威張 よみ(新仮名遣い):からいばり 通し章番号:306
口述日:1922(大正11)年01月30日(旧01月03日) 口述場所: 筆録者:井上留五郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
港に集まる船を眼下に眺めて、四、五の旅人が話しにふけっている。それは、かつて竜宮城の司神であったが、邪神の計略で玉を失ってしまった田依彦一行であった。
大台ケ原の大事忍男神について、「人を食らう邪神だ」、「いや、どんな大事変があっても泰然自若として忍び、世に尽くしてくれる神だ」、と論評している。
そして、田依彦の姉婿の豆寅が、大台ケ原の岩窟に引っ張っていかれて十年経つことに話題が及ぶと、そこへ、日の出神・大戸日別・天吹男の従者となって意気揚々と豆寅が現れた。
道端に潜む田依彦らは、夕闇をいいことに、豆寅のはげ頭に枝を投げつけると、豆寅は驚いて、滑稽な姿で泣き叫んだ。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-01 20:25:08 文字数:2213 OBC :rm0706
愛善世界社版:32頁 八幡書店版:第2輯 47頁 修補版: 校定版:35頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 日(ひ)は西海(せいかい)に没(ぼつ)せむとして、002海面(かいめん)には金銀(きんぎん)の波(なみ)漂(ただよ)ふ。
003 港(みなと)に向(むか)つて集(あつ)まり来(きた)る百舟(ももぶね)千船(ちぶね)の真帆(まほ)片帆(かたほ)、004眼下(がんか)に眺(なが)めて四五(しご)の旅人(たびびと)、005坂路(さかみち)に腰(こし)うちかけ談(はなし)に耽(ふけ)り居(ゐ)るあり。
006田依彦(たよりひこ)『あゝ今日(けふ)も貰(もら)ふのかナ』
007芳彦(よしひこ)『貰(もら)ふつて何(なに)を。008俺(おい)らに呉(く)れる奴(やつ)は何(なん)にもありやしない。009呉(く)れると云(い)つたら、010俺(おれ)らの行(や)る事(こと)が何(な)ンの彼(か)のと吐(ぬ)かして、011大屋(おほや)毘古(びこ)が怒(おこ)つて、012ちよいちよい拳骨(げんこつ)を呉(く)れる位(ぐらい)のものだよ』
013田依彦(たよりひこ)『くれると云(い)つたら、014日(ひ)が暮(く)れることだ。015それで、016くれるなら貰(もら)ふかと云(い)つたのだイ』
017時彦(ときひこ)『馬鹿(ばか)、018貴様(きさま)は何時(いつ)も水(みづ)の中(なか)で屁(へ)を放(こ)いた様(やう)なことばつかり云(い)ひよつて、019まるで猿猴(ゑんこう)が池(いけ)の月(つき)を取(と)る様(やう)な考(かんがへ)ばつかり起(おこ)して、020貰(もら)ふ事(こと)ばかり考(かんが)へてゐるが、021それほど貰(もら)ひたけりや乞食(こじき)にでもなつたがよいワイ。022田依彦(たよりひこ)と云(い)へば、023ちつとは頼(たよ)りにもなりさうなものだのに、024何時(いつ)とても頼(たよ)りない事(こと)をいふ奴(やつ)だなあ。025便(たよ)り渚(なぎさ)の捨小舟(すてをぶね)、026取(と)りつく島(しま)も無(な)いわいなだよ、027イヒヽヽヽ』
028田依彦(たよりひこ)『何(なに)吐(ぬか)しよる、029是(これ)でも元(もと)は竜宮城(りうぐうじやう)の立派(りつぱ)な御(お)方(かた)さまだぞ』
030芳彦(よしひこ)『玉(たま)とられ男(をとこ)奴(め)が』
031田依彦(たよりひこ)『貴様(きさま)はなンだい。032八尋殿(やひろどの)の酒宴(さかもり)に竹熊(たけくま)の計略(けいりやく)にかかりよつて、033負(ま)けぬ気(き)を出(だ)して、034玉(たま)を奪(と)られよつた張本人(ちやうほんにん)ぢやないか』
035時彦(ときひこ)『もー玉(たま)の談(はなし)は止(よ)さうかい』
036田依彦(たよりひこ)『時彦(ときひこ)、037貴様(きさま)はアーメニヤ[※数行後にも「アーメニヤ」が出る。御校正本・愛世版ではどちらも「アーメニヤ」だが、校定版・八幡版では「デカタン」に変えている。時彦は第1巻第45章で、デカタン高原において玉を奪われている。アーメニヤにおける時彦の玉にまつわるエピソードは無い。後の方では、アーメニヤにウラル彦が現れたという意味のことが書いてあり、そちらはアーメニヤで正しい。そのため霊界物語ネットではどちらも「アーメニヤ」のままにしておく。]の野(の)で古狸(ふるだぬき)につままれよつてナ』
038時彦(ときひこ)『もー云(い)ふな、039玉(たま)の談(はなし)はこれ退(ぎ)りだ。040もう玉切(たまぎ)れだよ』
041芳彦(よしひこ)『たまらぬだらう』
042時彦(ときひこ)『フン、043たまつたものぢや無(な)い。044たまたま持(も)ちは持(も)ちながら』
045田依彦(たよりひこ)『冗談(ぜうだん)ぢやないぞ。046それよりもこのごろ大事(おほこと)忍男(おしを)さまの御(お)布令(ふれ)が廻(まは)つたが、047聞(き)いてるかイ』
048時彦(ときひこ)『何(な)ンぞ大事(だいじ)が起(おこ)つたのかい』
049田依彦(たよりひこ)『いや、050神(かみ)さまの名(な)だ。051時彦(ときひこ)の欺(だま)されよつたアーメニヤ[※数行前に出る「アーメニヤ」のコメントを参照せよ。]の野(の)で、052くれる彦(ひこ)とかくれぬ彦(ひこ)とか、053田依彦(たよりひこ)の好(す)きな神(かみ)さまが現(あら)はれよつてな「飲(の)めよ騒(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)や闇(やみ)だ」なンて判(わか)つた事(こと)を云(い)ひよるぢやないか』
054芳彦(よしひこ)『さうだ、055よう判(わか)つたことをいふね。056「万劫(まんごふ)末代(まつだい)この玉(たま)は、057命(いのち)に代(か)へても渡(わた)しやせぬ、058五六七(みろく)神政(しんせい)の暁(あかつき)までは、059たとひ火(ひ)の中(なか)水(みづ)の底(そこ)」なンて、060気張(きば)つてをつた時彦(ときひこ)でも玉(たま)を奪(と)られるのだから、061ほンとに一寸先(いつすんさき)は闇雲(やみくも)だ。062闇雲(やみくも)といつたら此(この)頃(ごろ)の大台(おほだい)ケ原(はら)の神(かみ)さまぢやないか。063毎日(まいにち)日日(ひにち)彼方(あちら)の人(ひと)を奪(と)り、064此方(こちら)の人間(にんげん)を奪(と)り、065甲(かふ)も喰(く)はれた乙(おつ)も呑(の)まれたと、066喰(く)はれたり、067呑(の)まれたり、068引張(ひつぱ)られたりする噂(うはさ)ばかりだ。069ぐづぐづして居(ゐ)ると玉(たま)どころの騒(さわ)ぎぢやない、070命(いのち)までも奪(と)られて了(しま)ふぞ。071それで昔(むかし)から無(な)い大事(おほごと)、072命(いのち)は惜(をし)いなり、073そこで大事(おほこと)忍男(おしを)と云(い)ふのだよ。074どえらい悪神(あくがみ)ぢやて』
075玉彦(たまひこ)『馬鹿(ばか)云(い)へ。076大事(おほこと)忍男(おしを)さまと云(い)ふのは、077それは何(ど)ンな大事変(だいじへん)があつても、078大艱難(だいかんなん)が出(で)てきても、079大台(おほだい)ケ原(はら)の山(やま)の様(やう)に泰然(たいぜん)自若(じじやく)として能(よ)く忍(しの)び、080世界(せかい)のために尽(つく)してくださると云(い)ふことだよ。081お前(まへ)たちの忍(しの)ぶと云(い)ふことは、082自分(じぶん)より強(つよ)い者(もの)が出(で)てきて、083怖(こは)さに堪(こら)へ忍(しの)ぶのであつて、084実際(じつさい)は屈(くつ)するのだ。085吾々(われわれ)はそンな忍(しの)びとは違(ちが)ふ。086大事(おほこと)忍男(おしを)さまの大御心(おほみこころ)を心(こころ)として、087いかなる艱難(かんなん)辛苦(しんく)をも能(よ)く堪(た)へ忍(しの)びて、088一言(いちごん)の小言(こごと)もおつしやらぬのだよ』
089時彦(ときひこ)『ハヽア、090それで嬶(かかあ)に呆(とぼ)けよつて、091玉(たま)を奪(と)られて、092屈(くつ)するのでなくつて能(よ)く忍(しの)ぶのだな、093偉(えら)いものだい。094併(しか)しこのごろ日(ひ)の出神(でのかみ)とか云(い)ふ、095偉(えら)い宣伝使(せんでんし)がこの辺(へん)を廻(まは)つてをるぢやないか。096なンでも大台(おほだい)ケ原(はら)の大事(おほこと)忍男(おしを)さまを亡(ほろ)ぼすと云(い)つて、097ただ単独(ひとり)山(やま)を登(のぼ)つて行(い)つたさうぢや。098どうせ、099飛(と)ンで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)だがなア。100ともかく、101時(とき)の天下(てんか)に従(したが)へ。102時節(じせつ)にや叶(かな)はぬ。103なンぼ力(ちから)の強(つよ)い神(かみ)だつて大勢(おほぜい)と一人(ひとり)では叶(かな)はない。104お負(まけ)に大(おほ)きな巌窟(いはや)の中(なか)に構(かま)へてをる魔神(まがみ)さまに向(むか)つて戦(たたか)つたところで、105勝敗(しようはい)は見(み)え透(す)いてゐる。106どれどれ早(はや)く帰(い)のかい』
107芳彦(よしひこ)『おい、108田依彦(たよりひこ)、109貴様(きさま)のとこの姉婿(あねむこ)の豆寅(まめとら)は、110たうとう巌窟(がんくつ)の中(なか)へ引張(ひつぱ)られて行(い)つたぢやないか、111きつと今頃(いまごろ)にや喰(く)はれて了(しま)うて居(を)るぜ。112引張(ひつぱ)られよつてから殆(ほとん)ど十(じふ)年(ねん)になるが、113何(なん)の音沙汰(おとさた)も無(な)いぢやないか』
114田依彦(たよりひこ)『音信(たより)しやうにも、115言伝(ことづて)しやうにも巌窟(いはや)の中(なか)では仕方(しかた)がない。116それよりも早(はや)う帰(かへ)つて草香姫(くさかひめ)にな、117機嫌(きげん)でもとつてやるがよからう。118それもう、119そこらが暗(くら)くなつて来(き)たぞ、120帰(い)のう帰(い)のう』
121と立(た)ち上(あが)らむとする処(ところ)へ、122豆寅(まめとら)は日(ひ)の出神(でのかみ)、123大戸日別(おほとびわけ)、124天吹男(あまのふきを)の三柱(みはしら)と共(とも)に宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら、125現(あら)はれ来(き)たり。
126 豆寅(まめとら)は勢(いきほひ)よく肩(かた)を聳(そび)やかしながら、
127『日(ひ)は黄昏(たそがれ)となりぬれど
128光(ひか)り眩(まば)ゆき禿頭(はげあたま)
129豆寅(まめとら)さまが現(あら)はれて
130日(ひ)の出神(でのかみ)の御(ご)家来(けらい)と
131なつたる今日(けふ)の嬉(うれ)しさは
132死(し)ンでも生(い)きても忘(わす)られぬ
133千(せん)年(ねん)万(まん)年(ねん)たつたとて
134この嬉(うれ)しさが忘(わす)られよか
135巌窟(いはや)の中(なか)を逃(のが)れ出(で)て
136漸(やうや)く此処(ここ)へ帰(かへ)つてくるは来(き)たものの
137一(いつ)ぺん草香(くさか)の顔(かほ)見(み)たい
138十(じふ)年(ねん)振(ぶり)でさぞやさぞ
139女房(にようばう)の草香(くさか)は喜(よろこ)ンで
140やにはに飛(と)びつき獅噛(しがみ)付(つ)き
141まめであつたか豆寅(まめとら)さま
142嬉(うれ)し嬉(うれ)しと泣(な)くであろ
143それに付(つ)けても何時(いつ)までも
144音信(たより)の無(な)いは田依彦(たよりひこ)
145玉(たま)を抜(ぬ)かれた玉彦(たまひこ)や
146死(し)んでもよしの芳彦(よしひこ)や
147胸(むね)もときとき時彦(ときひこ)を
148けなりがらしていちやついて
149一(ひと)つ吃驚(びつくり)させてやろ
150あゝ面白(おもしろ)い面白(おもしろ)い
151面白狸(おもしろたぬき)の腹鼓(はらづつみ)
152山(やま)が裂(さ)けよが倒(たふ)れよが
153びくとも致(いた)さぬ豆寅(まめとら)の
154一(ひと)つ度胸(どきよう)を見(み)せてやれ
155やれやれ嬉(うれ)しい嬉(うれ)しい』
156と手(て)を振(ふ)り足(あし)を奇妙(きめう)に踊(をど)らせながら、157この坂路(さかみち)を下(くだ)りきたる。
158 路傍(みちばた)に憩(いこ)へる田依彦(たよりひこ)以下(いか)の四(よ)人(にん)は、159暗(くら)がりに光(ひか)る豆寅(まめとら)の頭(あたま)に向(むか)つて、160傍(かたはら)の木(き)の枝(えだ)を取(と)つて光(ひかり)を目当(めあて)に、161ぴしやりと投(な)げつけたれば、162豆寅(まめとら)は『アツ』と叫(さけ)んでその場(ば)に仆(たふ)れ、
163『でゝゝ出(で)た出(で)た、164ばゝ化物(ばけもの)。165ひゝゝ日(ひ)の出神(でのかみ)、166おゝお助(たす)けお助(たす)け』
167と声(こゑ)をかぎりに泣(な)き叫(さけ)ぶこそ可笑(をか)しけれ。
168(大正一一・一・三〇 旧一・三 井上留五郎録)
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