霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四九章 乗(の)り直(なほ)せ〔三四九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻 篇:第9篇 小波丸 よみ(新仮名遣い):さざなみまる
章:第49章 乗り直せ よみ(新仮名遣い):のりなおせ 通し章番号:349
口述日:1922(大正11)年02月02日(旧01月06日) 口述場所: 筆録者:桜井重雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
船は、瀬戸の海の一つ島の近くにやって来た。向こうから来る船のへさきにも、被面布をかけた宣伝使がたっている。
北光神は、やってくる船の宣伝使に歌で名を問いかけた。これは広道別であった。これから阿弗利加の熊襲の国に渡って、曲霊を言向け和すという。二人はすれ違いに、被面布を取って互いの安全を祝した。
船中の客たちは、かつてここにシオン山という高い山があったが、大洪水の際に地の底に沈んでしまい、竜宮海と瀬戸の海が一つになったのだ、と昔話をしている。
かつて稚桜姫命が竜宮城を治めていた時代の話に花を咲かせた。甲は、善と悪とが立て別けられたのは大洪水以前の話だ、と三五教の教えを一笑に付している。
すると船の中から宣伝歌を歌う者がある。甲は頭痛がしだした。そして宣伝使に向かって悪態をつく。するとまた別の宣伝使が宣伝歌を歌いだした。
甲は船が岸に着くや否や、船を飛び出して姿を隠してしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:サルヂニヤ島(一つ島) データ凡例: データ最終更新日:2020-05-06 19:52:54 文字数:2469 OBC :rm0749
愛善世界社版:300頁 八幡書店版:第2輯 142頁 修補版: 校定版:311頁 普及版:127頁 初版: ページ備考:
001 折(をり)から吹(ふ)き来(く)る真夏(まなつ)の夜風(よかぜ)に面(おもて)を吹(ふ)かせながら、002船頭(せんどう)は舳(へさき)に立(た)つて、
003竜宮(りうぐう)見(み)たさに瀬戸海(せとうみ)越(こ)せば
004向(むか)ふに見(み)えるは一(ひと)つ島(じま)
005と歌(うた)ひ出(だ)したり。
006 船(ふね)は小波(さざなみ)の上(うへ)を静(しづ)かに辷(すべ)り行(ゆ)く。007空(そら)一面(いちめん)に疎(まばら)の星(ほし)が輝(かがや)き、008月(つき)は中空(ちうくう)に水(みづ)の滴(したた)るやうな顔(かほ)をして海面(かいめん)を覗(のぞ)いてゐる。009海(うみ)の底(そこ)には竜(りう)の盤紆(うね)るやうな月影(つきかげ)沈(しづ)ンでゐる。010この時(とき)前方(ぜんぱう)より艪(ろ)を漕(こ)ぎ舵(かぢ)を操(あやつ)りながら、011グーイグーイ、012ギークギークと音(おと)をさせて、013此方(こなた)に向(むか)つて進(すす)み来(く)る一艘(いつそう)の船(ふね)があつた。014その船(ふね)の舳(へさき)に蓑笠(みのかさ)を着(ちやく)し、015被面布(ひめんぷ)をつけた男(をとこ)が立(た)つてゐる。016北光(きたてるの)神(かみ)は、017その船(ふね)に向(むか)つて声(こゑ)を張上(はりあ)げ、
018北光神『心(こころ)を尽(つく)し身(み)を尽(つく)し
019天地(てんち)の神(かみ)に麻柱(あななひ)の
020道(みち)を立(た)て抜(ぬ)く宣伝使(せんでんし)
021四方(よも)の国々(くにぐに)巡(めぐ)り来(き)て
022やうやう此処(ここ)に北光(きたてる)の
023我(われ)は目一箇(まひとつの)神(かみ)なるぞ
024名告(なの)らせ給(たま)へその船(ふね)の
025舳(へさき)に立(た)てる宣伝使(せんでんし)
026舳(へさき)に立(た)てる神人(かみびと)よ』
027と歌(うた)へば、028その声(こゑ)に応(おう)じて向(むか)ふの船(ふね)より、
029広道別『天津(あまつ)御神(みかみ)や国津(くにつ)神(かみ)
030木(こ)の花姫(はなひめ)の御教(みをしへ)を
031四方(よも)の国々(くにぐに)島々(しまじま)に
032広道別(ひろみちわけ)の宣伝使(せんでんし)
033汝(なれ)は何(いづ)れに坐(ま)しますか
034我(われ)はこれより亜弗利加(アフリカ)の
035熊襲(くまそ)の国(くに)に渡(わた)るなり
036熊襲(くまそ)の国(くに)は猛(たけ)くとも
037神(かみ)の依(よ)さしの言霊(ことたま)に
038四方(よも)の曲霊(まがひ)を悉(ことごと)く
039言向和(ことむけや)はせ天教(てんけう)の
040山(やま)に坐(ま)します木(こ)の花姫(はなひめ)の
041神(かみ)の命(みこと)や黄金(わうごん)の
042山(やま)の麓(ふもと)に現(あ)れませる
043埴安(はにやす)神(かみ)の御(おん)前(まへ)に
044奇(く)しき功(いさを)を立(た)つるまで
045浪路(なみぢ)を渡(わた)る宣伝使(せんでんし)
046稜威(みいづ)も広(ひろ)き広道別(ひろみちわけ)の
047神(かみ)の使(つかひ)は我(われ)なるぞ
048神(かみ)の使(つかひ)は我(われ)なるぞ』
049と歌(うた)ふ声(こゑ)も幽(かす)かになり行(ゆ)く。050二人(ふたり)は互(たが)ひに立(た)ち上(あ)がり、051被面布(ひめんぷ)を振(ふ)つてその安全(あんぜん)を祝(しゆく)し合(あ)ひける。052船中(せんちう)の人々(ひとびと)は亦(また)もや雑談(ざつだん)を始(はじ)め出(だ)したり。
053甲(かふ)『もう、054つい竜宮城(りうぐうじやう)が見(み)えるぜ。055おとなしくせぬと、056竜宮(りうぐう)さまが怒(おこ)つて荒浪(あらなみ)を立(た)てられたらまた昨日(きのふ)のやうに八百屋(やほや)店(みせ)を出(だ)して苦(くる)しまねばならぬから、057小(ちひ)さい声(こゑ)で話(はな)しをしようかい』
058乙(おつ)『お前(まへ)らこの竜宮(りうぐう)の訳(わけ)を知(し)つてるか、059今(いま)こそかうして船(ふね)に乗(の)つて瀬戸(せと)の海(うみ)から竜宮城(りうぐうじやう)まで楽(らく)に行(ゆ)けるが、060昔(むかし)は竜宮(りうぐう)と瀬戸(せと)の海(うみ)との真中(まんなか)に、061それはそれは高(たか)い山(やま)があつて、062その山(やま)はシオン山(ざん)というてな、063何(なん)でもえらい玉(たま)が出(で)たといふことだ。064それが大洪水(だいこうずゐ)のあつた時(とき)に、065地震(ぢしん)が揺(ゆ)つてその山(やま)が地(ち)の底(そこ)に沈(しづ)ンで了(しま)ひ、066竜宮(りうぐう)と瀬戸(せと)の海(うみ)とが一(ひと)つになつて了(しま)うたといふことだよ』
067丙(へい)『そんな事(こと)かい、068そんな事(こと)は祖父(ぢい)の代(だい)から誰(たれ)でも聞(き)いてゐる事(こと)だよ。069もつと珍(めづら)しい話(はなし)はないのかい』
070乙(おつ)『竜宮城(りうぐうじやう)には稚桜姫(わかざくらひめ)といふ、071それはそれは美(うつく)しい神(かみ)様(さま)があつて、072そこに大八洲彦(おほやしまひこの)命(みこと)とか、073大足彦(おほだるひこ)とかいふ立派(りつぱ)な神(かみ)様(さま)が竜宮城(りうぐうじやう)とヱルサレムの宮(みや)を守(まも)つて御座(ござ)つた。074さうすると常世(とこよ)の国(くに)の常世姫(とこよひめ)といふ偉(えら)い女性(ぢよせい)が竜宮(りうぐう)を占領(せんりやう)しようと思(おも)うて、075何遍(なんべん)も何遍(なんべん)も偉(えら)い神(かみ)様(さま)の戦(たたか)ひが始(はじ)まつたということだのう。076今(いま)の竜宮(りうぐう)もヱルサレムの宮(みや)も昔(むかし)の話(はなし)と比(くら)べて見(み)ると、077本当(ほんたう)にみじめなものだ。078ヨルダン河(がは)というて大(おほ)きな河(かは)があつたのが、079その河(かは)も洪水(こうずゐ)の時(とき)に埋(うま)つて了(しま)ひ、080今(いま)では小(ちい)さい細(ほそ)い川(かは)となつて、081汚(きたな)い水(みづ)が流(なが)れて居(を)る。082変(かは)れば変(かは)る世(よ)の中(なか)だ。083これを思(おも)へば何(ど)ンな偉(えら)い神(かみ)様(さま)でもあかぬものだな。084翔(た)つ鳥(とり)も落(お)ちる勢(いきほひ)の稚桜姫(わかざくらひめ)といふ神(かみ)様(さま)も、085大八洲(おほやしま)彦(ひこ)といふ神(かみ)様(さま)もさつぱり常世姫(とこよひめ)とかにわやにされて、086今(いま)は吾々(われわれ)の行(ゆ)く事(こと)のできぬ富士(ふじ)とやらへ逃(に)げて行(ゆ)かれたといふ事(こと)だよ』
087丙(へい)『フーン、088さうかい。089さうすると我々(われわれ)も今(いま)豪(えら)さうに言(い)つて居(を)つてもどう変(かは)るやら分(わか)らぬな』
090乙(おつ)『知(し)れた事(こと)よ、091神(かみ)様(さま)でも時世(ときよ)時節(じせつ)には敵(かな)はぬのだもの、092我々(われわれ)はなほ更(さら)の事(こと)だ。093併(しか)しこの船(ふね)には立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)が乗(の)つて居(ゐ)られるといふ事(こと)だが、094一遍(いつぺん)話(はなし)を聞(き)かして貰(もら)つたら如何(どう)だらう』
095甲(かふ)『イヤ最(も)う宣伝使(せんでんし)の歌(うた)も好(よ)い加減(かげん)なものだよ。096神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)けるなンて、097冷飯(ひやめし)に湯気(ゆげ)が立(た)つたやうな事(こと)を吐(ぬ)かすのだもの、098阿呆(あはう)らしくて聞(き)かれたものぢやない。099そンな歌(うた)は大洪水(だいこうずゐ)前(ぜん)の事(こと)だ。100大洪水(だいこうずゐ)のときは善(ぜん)の神(かみ)様(さま)は天教山(てんけうざん)とか天橋(てんけう)とかに助(たす)けられ、101悪(わる)い者(もの)は洪水(こうずゐ)に漂(ただよ)うたり、102百足虫(むかで)の山(やま)や蟻(あり)の山(やま)に揚(あ)げられて、103善悪(ぜんあく)の立別(たてわけ)がハツキリあつたさうだ。104俺(おれ)等(ら)の祖父(ぢい)の代(だい)の話(はなし)だから詳(くは)しい事(こと)は知(し)らぬが、105今(いま)ごろにそんな事(こと)を歌(うた)ふ奴(やつ)は、106死(し)ンだ子(こ)の年(とし)を数(かぞ)へるやうなものだ。107阿呆(あほ)らしいぢやないか。108これだけ開(ひら)けた世(よ)の中(なか)が、109さう易々(やすやす)と立替(たてか)はつて堪(たま)るかい。110善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)けるとか変(かは)るとかいふが、111俺(おれ)の処(とこ)の村(むら)の久公(きうこう)のやうな悪人(あくにん)は段々(だんだん)と栄(さか)えて来(く)るなり、112新公(しんこう)のやうな善人(ぜんにん)は益々(ますます)貧乏(びんばふ)して、113終(しま)ひには道具(だうぐ)を売(う)つて親子(おやこ)夫婦(ふうふ)が生別(いきわか)れして乞食(こじき)に出(で)たぢやないか。114俺(おれ)はそれを思(おも)うと神(かみ)様(さま)を頼(たの)む気(き)にならぬがなア。115宣伝使(せんでんし)の歌(うた)なンて古(ふる)めかしいわい、116六日(むゆか)の菖蒲(あやめ)十日(とをか)の菊(きく)だ。117併(しか)しながら、118憂晴(うさばら)しに聞(き)くのは善(よ)いが、119それをほンまの事(こと)だと思(おも)つたら、120量見(りやうけん)が違(ちが)ふぞ。121宣伝使(せんでんし)といふものは、122方便(はうべん)を使(つか)つて吾々(われわれ)に悪(わる)い事(こと)をせぬやうにするのだが、123今日(こんにち)のやうに悪(あく)が栄(さか)えて善(ぜん)が衰(おとろ)へるやうな暗(くら)がりの世(よ)の中(なか)に、124何(なに)ほど宣伝使(せんでんし)が呶鳴(どな)つたところで、125屁(へ)の突張(つつぱり)にもなつたものぢやないよ』
126 この時(とき)、127船(ふね)の一方(いつぱう)より、
128宣伝使『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
129善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわけ)る』
130甲(かふ)『それ始(はじ)まつた、131頭(あたま)が痛(いた)い。132こいつは耐(たま)らぬ。133この船(ふね)には怪体(けたい)な奴(やつ)が乗(の)つてけつかるものだ』
134宣伝使『この世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
135心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
136ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
137直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
138身(み)の過(あやまち)は宣(の)り直(なほ)せ』
139乙(おつ)『オイ貴様(きさま)心配(しんぱい)せいでもよいわ。140宣伝使(せんでんし)が今(いま)乗(の)り直(なほ)すと言(い)つてゐた。141今(いま)其処(そこ)へ来(く)る船(ふね)に乗(の)り直(なほ)して呉(く)れるわい。142さうしたらいやな歌(うた)は聞(き)かいでもよいわ』
143甲(かふ)『早(はや)く乗(の)り直(なほ)しやがらぬかいな』
144宣伝使『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて……』
145甲(かふ)『ソレ亦(また)始(はじ)めよつた。146アイタヽヽヽ』
147宣伝使『善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわけ)る……』
148甲(かふ)『あゝたゝ怺(たま)らぬ怺(たま)らぬ』
149と言(い)ひながら、150甲(かふ)は立(た)つて、
151甲『やいやいやい宣伝使(せんでんし)
152それ来(く)るそれ来(く)る船(ふね)が来(く)る
153お前(まへ)のやうな痛(いた)い事(こと)
154囀(さへづ)る奴(やつ)はあの船(ふね)に
155一(いち)時(じ)も早(はや)く乗(の)り直(なほ)せ
156早(はや)う乗(の)れ乗(の)れ乗(の)り直(なほ)せ
157そら来(き)たそら来(き)た船(ふね)が来(き)た
158乗(の)らぬか乗(の)らぬか宣伝使(せんでんし)
159貴様(きさま)のお蔭(かげ)で頭痛(づつう)がする』
160と呶鳴(どな)つてゐる。161後(うしろ)の方(はう)より亦(また)もや乙(おつ)の宣伝使(せんでんし)が立(た)つて、
162宣伝使『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
163善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわけ)る』
164甲(かふ)『また出(で)よつた。165一体(いつたい)この船(ふね)は何(なん)だい。166もう船(ふね)の旅(たび)は懲(こ)り懲(ご)りだ』
167船頭(せんどう)『お客(きやく)さま、168船(ふね)が着(つ)いた。169早(はや)く上(あが)らつしやれ』
170と叫(さけ)ぶ。171甲(かふ)は頭(あたま)を抱(かか)へて、172いの一番(いちばん)に船(ふね)を飛出(とびだ)し、173どこともなく姿(すがた)を隠(かく)したり。174この男(をとこ)は果(はた)して何者(なにもの)ならむか。
175(大正一一・二・二 旧一・六 桜井重雄録)
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