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第一八章 海原(うなばら)(みや)〔三一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻 篇:第4篇 鬼門より竜宮へ よみ(新仮名遣い):きもんよりりゅうぐうへ
章:第18章 海原の宮 よみ(新仮名遣い):うなばらのみや 通し章番号:318
口述日:1922(大正11)年01月31日(旧01月04日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ニュージーランドの沓嶋は、人の上陸を禁じた島である。ただ、飲料水を取るために船が寄港したのであった。
日の出神は、二柱の宣伝使を従えて上陸し、海原彦神の鎮まる宮に詣で、海上の無事を祈願した。
船中で酒を飲みながら四方山話にふけっていたのは、大台ケ原で山を焼いた、田依彦、時彦、芳彦であった。時彦を芳彦は酔って喧嘩を始めた。そこへ日の出神が戻ってきた。
田依彦は、大台ケ原で豆寅の奴扱いにされてつらくて堪らないので、日の出神を追ってやって来たことを告げ、立派な名を頂戴したい、と申し出た。三人のおかしなやり取りに、日の出神も苦笑している。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:ニユージランド(ニュージーランド) データ凡例: データ最終更新日:2020-05-10 01:07:55 OBC :rm0718
愛善世界社版:109頁 八幡書店版:第2輯 74頁 修補版: 校定版:115頁 普及版:47頁 初版: ページ備考:
001 (ふね)(やうや)くニユージランドの沓島(くつじま)(みなと)()きぬ。002この(しま)人々(ひとびと)上陸(じやうりく)することを(きん)じられありき。003(ただ)この(しま)より()()づる飲料水(いんれうすゐ)(ふね)(たくは)ふる(ため)寄港(きかう)したるなり。
004 ()出神(でのかみ)は、005天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、006()宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、007二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)(ともな)上陸(じやうりく)し、008海原彦(うなばらひこの)(かみ)(しづ)まります(みや)(まう)で、009海上(かいじやう)無事(ぶじ)祈願(きぐわん)し、010風波(ふうは)都合(つがふ)にてこの(しま)一月(ひとつき)(ばか)避難(ひなん)する(こと)となりにける。
011 船中(せんちう)人々(ひとびと)無聊(むれう)(くる)しみ、012(また)もや(めづ)らしき(はなし)(たがひ)(はじ)()し、013国々(くにぐに)自慢(じまん)をなしゐたり。
014 (なか)二三(にさん)色黒(いろくろ)大男(おほをとこ)と、015(かほ)細長(ほそなが)()(たか)(だい)()()ける(をとこ)と、016(すこ)しく()(ひく)痩顔(やせがほ)(さん)(にん)(をとこ)が、017チビリチビリと(さけ)()みながら(はなし)(ふけ)()る。
018芳彦『おい、019時彦(ときひこ)020あんまり(さけ)(くら)うと大台(おほだい)(はら)出会(でくわ)した()出神(でのかみ)()つとるぢやないか、021見付(みつ)けられたら大変(たいへん)だぞ』
022時彦芳彦(よしひこ)023(かま)ふない。024(いま)025()出神(でのかみ)(やま)(あが)つて()つたぢやないか。026その(あひだ)(せい)()して貴様(きさま)()め、027(おれ)()むのだ。028おい、029田依彦(たよりひこ)030そンな(おほ)きな()ばつかりギロつかさずに()()め』
031田依彦貴様(きさま)規則(きそく)(やぶ)ると、032(おれ)承知(しようち)せぬぞ。033(おれ)(さけ)(にほ)ひを()ぐのも(きら)ひだのに、034両方(りやうはう)から(おれ)(こま)らせようと(おも)ひよつて、035また(さけ)(くら)ふのか。036今度(こんど)こそは()出神(でのかみ)さまに()うてこます037この(なが)(うみ)(うへ)をアタ世間(せけん)(せま)い、038(さけ)(くら)ひたいものだから、039名乗(なのり)()げずに、040何時(いつ)俯向(うつむ)いて(かほ)(かく)して貴様(きさま)だけなら()いが、041(おれ)まで俯向(うつむ)かせられて(たま)つたものかい』
042時彦(ときひこ)(ごふ)()くぢやないかい。043(わか)(をとこ)(をんな)()(うみ)()()みたり、044(あが)つたりしよつてな、045(しまひ)には()()宣伝使(せんでんし)を、046ちよろまかして夫婦(ふうふ)になるなンて、047馬鹿(ばか)にしとるじやないか。048(おい)らは遥々(はるばる)とこの(なみ)(うへ)を、049常世(とこよ)()くのも、050ウラル(ひこ)さまの乾児(こぶん)となつて、051(うま)(さけ)鱈腹(たらふく)()まして(もら)うためだ。052(くに)御柱(みはしら)(かみ)さまが()(くに)とかへ()げて()つたと()つて、053宣伝使(せんでんし)とやらが(さわ)いでゐるが、054()(くに)とか、055夜見(よみ)(くに)とか()ふのは、056常世(とこよ)(くに)のことだい。057きつと(さけ)(つか)つて酒池(しゆち)肉林(にくりん)といふ、058贅沢(ぜいたく)三昧(さんまい)(あそ)ばして御座(ござ)るのよ。059(おい)らもその酒池(しゆち)肉林(にくりん)()ひたさに、060可愛(かあい)女房(にようばう)()てて()くのぢやないかエーン』
061 田依彦(たよりひこ)(まる)()()()し、062(くち)(とが)らせ、
063田依彦貴様(きさま)はいよいよ()しからぬ(やつ)だ。064常世(とこよ)(くに)稚桜姫(わかざくらひめの)(みこと)(あら)はれ(あそ)ばして、065神政(しんせい)(ふたた)()(ひら)(あそ)ばす。066()れに(つい)(むかし)竜宮(りうぐう)家来(けらい)は、067(もと)のごとくに使(つか)うてやらうとおつしやるのだから、068(いち)()(はや)()かうじやないかと、069(おれ)此処(ここ)まで(さそ)()しよつたのは(うそ)だつたな』
070時彦(ときひこ)今頃(いまごろ)貴様(きさま)(うそ)()()いたのかい。071田依(たより)ない(やつ)ぢや。072()れで(たよ)()(ひこ)(みな)()ふのだよ。073(たよ)りに(おも)女房(にようばう)(たま)()られた玉彦(たまひこ)(たま)なしにされて(その)(うへ)(たま)()られたこの時彦(ときひこ)に、074(たま)()られて(なん)(ざま)075貴様(きさま)性念玉(しやうねんだま)()(どく)ながら(くさ)つて()るよ。076(しか)しなンぼ(くさ)つて()ても仕様(しやう)()い。077貴様(きさま)一緒(いつしよ)にかうして(くら)さにやならぬ(くさ)(えん)だもの』
078 田依彦(たよりひこ)は、
079田依彦(なに)080馬鹿(ばか)()かす』
081()ふより(はや)鉄拳(てつけん)(かた)めて、082時彦(ときひこ)横面(よこづら)をポカンとやる。
083 時彦(ときひこ)(さけ)(まは)り、084(した)(もつ)れ、085(あし)はひよろひよろなりき。086(くち)ばかり達者(たつしや)なるが、087身体(からだ)自由(じいう)一寸(ちよつと)()かぬ。088(ふね)人々(ひとびと)は、
089人々喧嘩(けんくわ)喧嘩(けんくわ)だ』
090総立(そうだち)になつて(なが)めてゐる。091()出神(でのかみ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、092海原(うなばら)(かみ)(みや)(あと)にして、093この(ふね)(むか)つて(かへ)りきたる。
094 時彦(ときひこ)095芳彦(よしひこ)蝸々虫(でんでんむし)のやうに(ちぢ)まつて、096(ふね)(そこ)平太(へた)ばりぬ。097田依彦(たよりひこ)は、098むつくと立上(たちあが)り、
099田依彦『もしもし()出神(でのかみ)(さま)100(わたくし)田依彦(たよりひこ)であります。101大台(おほだい)(はら)()(わか)(いた)(まを)しましてから、102豆寅(まめとら)久々能智(くくのち)()立派(りつぱ)(おん)()頂戴(ちやうだい)して、103大屋(おほや)毘古(びこ)一緒(いつしよ)(いへ)(つく)りをやつて()ります。104それはそれは(えら)鼻息(はないき)で、105(わたくし)らは奴扱(やつこあつか)ひにされて(たま)りませぬので、106たうとう貴下(あなた)(あと)(した)つて(まゐ)りました。107何卒(なにとぞ)(わたくし)にも結構(けつこう)()()けて(くだ)さい。108何時(いつ)までも田依彦(たよりひこ)でも(たよ)るところがなければ仕方(しかた)がありませぬ』
109と、110()をギヨロギヨロさせながら(たの)()る。
111日の出神『あゝさうか。112()れに相違(さうゐ)なければ感心(かんしん)(をとこ)だ。113しかし其処(そこ)平太(へた)ばつて()二人(ふたり)は、114時彦(ときひこ)芳彦(よしひこ)では()いか。115(しき)りに、116(さけ)(にほ)ひがするなア。117その徳利(とくり)(たれ)のだ』
118田依彦『ハイ、119これはトヽヽヽヽトヽヽヽヽトントもう(わか)りませぬ。120トキドキこンな(こと)があります』
121日の出神『それは芳彦(よしひこ)のじやないか』
122田依彦『ハイハイ、123田依彦(たよりひこ)はヨヽヽヽヽヨヽヽヽヽヨソの(ひと)かと(おも)ひます。124ヨヽヽヽヽ()うて()ります』
125日の出神『なンだ貴様(きさま)は、126(にはか)(どもり)になつたのか』
127田依彦『ハイ、128ドヽヽヽヽドヽヽヽヽドウもなりませぬ。129(とき)や、130(よし)(わたくし)()ふことを()かぬものだから、131(わたくし)共々(ともども)にイヤもう()うもかうも申上(まをしあ)げやうはありませぬ。132何卒(なにとぞ)神直日(かむなほひ)()のがし133(きき)のがし(くだ)さいませ。134(しか)し、135此奴(こいつ)燗直日(かんなほひ)()うて、136冷酒(ひや)()ンでゐます。137(わたくし)(そば)()つて、138貴下(あなた)()つかりやせぬかと(おも)ひまして、139ヒヤヒヤアブアブしとりました。140(わたくし)性来(しやうらい)(さけ)(ぎら)ひですから、141(ひと)つも()みませぬ。142時彦(ときひこ)や、143芳彦(よしひこ)は、144たとひ()うならうとも(わたくし)だけは(ゆる)して(くだ)さい。145()出神(でのかみ)さま』
146日の出神馬鹿(ばか)()ふな、147貴様(きさま)だけが(たす)かつたら()いのか』
148田依彦『イーエ、149()()くは貴様(きさま)も、150(とき)も、151(よし)(たす)けて(もら)ひたいものです。152おい(とき)153(よし)154(つら)()げい。155()出神(でのかみ)さまだぞ。156()から()()るやうな()一遍(いつぺん)()はされて()い、157(さけ)(ゐい)()めるだらう。158(いま)なんと()かした。159(くに)御柱(みはしら)(かみ)さまは、160常世(とこよ)(くに)(さけ)()みに()かつしやつたなンて()うただらう』
161 ()出神(でのかみ)微笑(びせう)しながら、
162日の出神()加減(かげん)にせよ。163(いま)(ふね)()る。164(ふね)(なか)悠久(ゆつくり)(あぶら)(しぼ)つてやらうかい』
165 (ふね)(また)もや(いかり)()()げ、166順風(じゆんぷう)()()げて竜宮島(りうぐうじま)さして(すす)()く。
167大正一一・一・三一 旧一・四 外山豊二録)
168(第一三章~第一八章 昭和一〇・二・二三 於徳山 王仁校正)
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