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霊界物語
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第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
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第6巻(巳の巻)
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第10巻(酉の巻)
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第13巻(子の巻)
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第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
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第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
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第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第14巻(丑の巻)
序歌
信天翁(四)
凡例
総論歌
第1篇 五里夢中
01 三途川
〔551〕
02 銅木像
〔552〕
03 鷹彦還元
〔553〕
04 馬詈
〔554〕
05 風馬牛
〔555〕
第2篇 幽山霊水
06 楽隠居
〔556〕
07 難風
〔557〕
08 泥の川
〔558〕
09 空中滑走
〔559〕
第3篇 高加索詣
10 牡丹餅
〔560〕
11 河童の屁
〔561〕
12 復縁談
〔562〕
13 山上幽斎
〔563〕
14 一途川
〔564〕
15 丸木橋
〔565〕
16 返り咲
〔566〕
第4篇 五六七号
17 一寸一服
〔567〕
跋文
余白歌
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第一二章
復縁談
(
ふくえんだん
)
〔五六二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻
篇:
第3篇 高加索詣
よみ(新仮名遣い):
こーかすまいり
章:
第12章 復縁談
よみ(新仮名遣い):
ふくえんだん
通し章番号:
562
口述日:
1922(大正11)年03月24日(旧02月26日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年11月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行は、小山村という小部落に着いた。そして盲目の婆の小さな家に泊まることになった。しかし六はなぜか作り声をして、自分とわからないようにしている。
家の婆の話を聞くと、お竹という娘がいるが、二度目の亭主である六という男がウラル教になって極道をしたため、逃げてきて今は松屋という店に勤めているのだ、という。
勝公は、三五教では夫婦の契りは二度まで赦されるが、三度目は天則で厳禁されている、と解説した。婆は、娘はもう他に嫁ぐことができないと嘆く。勝公は、その六という男をすっかり改心させて解決させて見せましょう、と婆に言う。
そして、実は六公が三五教に改心して、ここに来ていることを婆に告げる。婆は、六公の改心の告白を聞いて喜んだ。
勝公は、コーカス参りが終わったら、戻って来て改めて婚礼を挙げようと提案し、一同は賛成する。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-09-13 21:39:06
OBC :
rm1412
愛善世界社版:
192頁
八幡書店版:
第3輯 229頁
修補版:
校定版:
199頁
普及版:
91頁
初版:
ページ備考:
001
勝彦
(
かつひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
始
(
はじ
)
め、
002
弥次彦
(
やじひこ
)
、
003
与太彦
(
よたひこ
)
、
004
六公
(
ろくこう
)
の
一行
(
いつかう
)
は、
005
烏
(
からす
)
勘三郎
(
かんざぶらう
)
の
一軍
(
いちぐん
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
し、
006
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
峠
(
たうげ
)
の
幾
(
いく
)
つかを
越
(
こ
)
えて、
007
又
(
また
)
もや
一
(
ひと
)
つの
部落
(
ぶらく
)
に
着
(
つ
)
いた。
008
此処
(
ここ
)
は
二三十
(
にさんじつ
)
軒
(
けん
)
斗
(
ばか
)
り
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
に
家
(
いへ
)
の
散在
(
さんざい
)
せる
小部落
(
せうぶらく
)
で
小山村
(
こやまむら
)
と
云
(
い
)
ふ。
009
弥
(
や
)
『ヤーまた
此処
(
ここ
)
にも
一
(
いち
)
小天地
(
せうてんち
)
が
形造
(
かたちづく
)
られてあるワイ。
010
どこにか
都合
(
つがふ
)
の
好
(
よ
)
い
家
(
いへ
)
を
探
(
さが
)
して
休息
(
きうそく
)
をさして
貰
(
もら
)
はうかい』
011
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つてキヨロキヨロと
適当
(
てきたう
)
の
家
(
いへ
)
を
探
(
さが
)
してゐる。
012
小
(
ちい
)
さき
草葺
(
くさぶき
)
の
家
(
いへ
)
の
門口
(
かどぐち
)
に
一人
(
ひとり
)
の
婆
(
ば
)
アが
立
(
た
)
つてゐる。
013
弥
(
や
)
『モシモシお
婆
(
ば
)
アサン、
014
どうぞ
一服
(
いつぷく
)
さして
下
(
くだ
)
さるまいか』
015
婆
(
ばば
)
『わしは
盲目
(
めくら
)
だから、
016
どなただかお
顔
(
かほ
)
が
分
(
わか
)
らない。
017
お
前
(
まへ
)
サンは
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
く
旅人
(
たびびと
)
だい、
018
伴
(
つれ
)
の
衆
(
しう
)
は
有
(
あ
)
るのかい』
019
弥
(
や
)
『ハイハイ、
020
伴
(
つれ
)
の
者
(
もの
)
は
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
、
021
山坂
(
やまさか
)
をいくつも
跋
(
わた
)
つて
来
(
き
)
たのだから、
022
脚
(
あし
)
が
棒
(
ぼう
)
のやうになつて
知覚
(
ちかく
)
精神
(
せいしん
)
は
何処
(
どこ
)
やらへ
転宅
(
てんたく
)
したと
見
(
み
)
え、
023
チツトも
吾々
(
われわれ
)
の
命令
(
めいれい
)
に
足
(
あし
)
の
奴
(
やつ
)
服従
(
ふくじゆう
)
せないやうになつて
来
(
き
)
ました。
024
どうぞ
此
(
この
)
縁側
(
えんがは
)
を
一寸
(
ちよつと
)
貸
(
か
)
して
下
(
くだ
)
さらぬか。
025
儂
(
わし
)
はこれからコーカス
山
(
ざん
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
するものですから』
026
婆
(
ばば
)
『アーさうかな。
027
それは
能
(
よ
)
う
御
(
ご
)
信心
(
しんじん
)
が
出来
(
でき
)
ます。
028
私
(
わたくし
)
もコーカス
山
(
ざん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
信心
(
しんじん
)
して
居
(
ゐ
)
る
信者
(
しんじや
)
の
一人
(
ひとり
)
だ。
029
ウラル
教
(
けう
)
なら
平
(
ひら
)
に
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
りだが、
030
コーカス
参
(
まゐ
)
りをする
方
(
かた
)
なら、
031
きつと
三五教
(
あななひけう
)
だらう。
032
マア
悠
(
ゆつ
)
くりと
休
(
やす
)
んでゐて
下
(
くだ
)
さい』
033
弥
(
や
)
『
三五教
(
あななひけう
)
も
三五教
(
あななひけう
)
、
034
チヤキチヤキだ』
035
勝
(
かつ
)
『モシモシお
婆
(
ば
)
アサン、
036
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
勝彦
(
かつひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
でございます』
037
与
(
よ
)
『
私
(
わたし
)
は
与太彦
(
よたひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
信者
(
しんじや
)
でございます。
038
どうぞ
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
039
婆
(
ばば
)
『
今
(
いま
)
お
前
(
まへ
)
サン
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
と
云
(
い
)
はつしやつたが、
040
お
声
(
こゑ
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
ぢやないか。
041
モウ
一人
(
ひとり
)
の
方
(
かた
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かれたのだい』
042
六
(
ろく
)
は
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
して、
043
六
(
ろく
)
『わたくしはロークと
申
(
まを
)
す
吝
(
けち
)
な
野郎
(
やらう
)
でごんす
程
(
ほど
)
に、
044
どうぞよろしう
御
(
お
)
見知
(
みし
)
り
置
(
お
)
かれまするやうに』
045
婆
(
ばば
)
『
見知
(
みし
)
り
置
(
お
)
けと
云
(
い
)
つても
私
(
わたし
)
は
盲目
(
めくら
)
だ。
046
お
声
(
こゑ
)
を
聞知
(
ききし
)
り
置
(
お
)
くより
仕方
(
しかた
)
がないワ。
047
アハヽヽヽヽ』
048
弥
(
や
)
『
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
広
(
ひろ
)
い
家
(
うち
)
にお
婆
(
ば
)
アサン、
049
たつた
一人
(
ひとり
)
かい』
050
婆
(
ばば
)
『ナニ
老爺
(
おやぢ
)
ドンは
中風
(
ちうぶう
)
に
罹
(
かか
)
つて、
051
裏
(
うら
)
の
離棟
(
はなれ
)
で
今年
(
ことし
)
で
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
振
(
ぶ
)
り、
052
床
(
とこ
)
に
就
(
つ
)
いたきり
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
ります』
053
弥
(
や
)
『お
婆
(
ば
)
アサン、
054
お
子
(
こ
)
サンは
無
(
な
)
いのかい』
055
婆
(
ばば
)
『
子
(
こ
)
は
二人
(
ふたり
)
あるが、
056
兄
(
あに
)
は
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
から
女房
(
にようばう
)
を
伴
(
つ
)
れて
私
(
わたし
)
の
眼
(
め
)
が
癒
(
なほ
)
るやうにと、
057
コーカス
詣
(
まゐ
)
りをしたのだ。
058
モウ
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
したら
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ませう。
059
それに
一人
(
ひとり
)
の
妹
(
いもうと
)
があるのだが
彼奴
(
あいつ
)
は
運
(
うん
)
が
悪
(
わる
)
うて、
060
一旦
(
いつたん
)
嫁
(
かたづ
)
いた
亭主
(
おやぢ
)
が
俄
(
にはか
)
にウラル
教
(
けう
)
の
捕手
(
とりて
)
の
役人
(
やくにん
)
になり、
061
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
ふ
賭博
(
ばくち
)
を
打
(
う
)
つ、
062
女
(
をんな
)
には
づぼ
る、
063
どうにも
斯
(
こ
)
うにも
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い
男
(
をとこ
)
だ。
064
そこで
私
(
わたくし
)
の
娘
(
むすめ
)
のお
竹
(
たけ
)
と
云
(
い
)
ふのを
嫁
(
よめ
)
にやつてあつたけれども、
065
お
竹
(
たけ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
なり、
066
何時
(
いつ
)
も
家内
(
かない
)
がゴテゴテして
到頭
(
たうとう
)
夜中
(
やちう
)
に
逃出
(
にげだ
)
して
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
よつたのだ。
067
何程
(
なにほど
)
勤
(
つと
)
めてもアンナ
極道
(
ごくだう
)
亭主
(
おやぢ
)
の
所
(
ところ
)
へは
仮令
(
たとへ
)
死
(
し
)
んでも
帰
(
かへ
)
らぬと
云
(
い
)
ふて
頑張
(
ぐわんば
)
るものだから、
068
仕方
(
しかた
)
無
(
な
)
しに
十九
(
じふく
)
番坂
(
ばんざか
)
の
麓
(
ふもと
)
の
山田村
(
やまだむら
)
の
松屋
(
まつや
)
といふ
家
(
うち
)
へ
奉公
(
ほうこう
)
にやつたのだ。
069
年
(
とし
)
が
寄
(
よ
)
つてから
彼奴
(
あいつ
)
の
為
(
ため
)
に
偉
(
えら
)
い
苦労
(
くらう
)
をしとるのだ。
070
お
前
(
まへ
)
サンも
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
サンなら、
071
一
(
ひと
)
つ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
祈
(
いの
)
つて
下
(
くだ
)
さらぬか』
072
弥
(
や
)
『ハイハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
073
御
(
ご
)
祈念
(
きねん
)
さして
貰
(
もら
)
ひませう。
074
さうしてその
娘
(
むすめ
)
は
年
(
ねん
)
でも
切
(
き
)
つたのか、
075
ホンの
当座
(
たうざ
)
奉公
(
ぼうこう
)
か、
076
何方
(
どちら
)
だい』
077
婆
(
ばば
)
『
縁談
(
えんだん
)
があれば
何処
(
どこ
)
か
嫁
(
かたづ
)
けねばならぬから、
078
年
(
ねん
)
は
切
(
き
)
つては
居
(
を
)
らぬのだ。
079
お
前
(
まへ
)
サンもさうして
世界
(
せかい
)
を
歩
(
ある
)
きなさるのなら
適当
(
てきたう
)
な
所
(
ところ
)
があつたら
世話
(
せわ
)
してやつて
下
(
くだ
)
さい。
080
親
(
おや
)
の
口
(
くち
)
から
褒
(
ほ
)
めるぢやないが、
081
お
竹
(
たけ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
082
夫
(
それ
)
は
信心
(
しんじん
)
の
強
(
つよ
)
い
正直
(
しやうぢき
)
な
気
(
き
)
の
優
(
やさ
)
しい
女
(
をんな
)
だ。
083
私
(
わたくし
)
もお
竹
(
たけ
)
の
婿
(
むこ
)
がきまる
迄
(
まで
)
は
爺
(
ぢい
)
サンも
共
(
とも
)
に
死
(
し
)
んでも
死
(
し
)
なれぬと
云
(
い
)
ふて
居
(
を
)
るのだ。
084
どうぞ
良
(
よ
)
い
縁
(
えん
)
の
有
(
あ
)
るやうに
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に、
085
とつくりと
祈念
(
きねん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
086
与
(
よ
)
『お
竹
(
たけ
)
サンの
今迄
(
いままで
)
の
婿
(
むこ
)
サンと
云
(
い
)
ふのは、
087
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
だな』
088
婆
(
ばば
)
『それはそれは
意地
(
いぢ
)
の
悪
(
わる
)
さうな
顔
(
かほ
)
をした
根性
(
こんじやう
)
の
曲
(
まが
)
つた
六
(
ろく
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だ。
089
碌
(
ろく
)
でも
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
だと
見
(
み
)
える。
090
どうした
因縁
(
いんねん
)
か、
091
アンナ
心
(
こころ
)
の
良
(
よ
)
いお
竹
(
たけ
)
が、
092
げぢげぢ
のやうに
嫌
(
きら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る
碌
(
ろく
)
でなしの
六助
(
ろくすけ
)
に
縁付
(
えんづ
)
くとは、
093
神
(
かみ
)
サンもチト
胴欲
(
どうよく
)
ぢやと、
094
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
爺
(
ぢい
)
と
婆
(
ばば
)
とが
悔
(
くや
)
んで
居
(
ゐ
)
るのだ。
095
アーア
今頃
(
いまごろ
)
はお
竹
(
たけ
)
はどうして
居
(
ゐ
)
るか
知
(
し
)
らぬが、
096
可愛想
(
かあいさう
)
に、
097
アーンアーン、
098
アンアン』
099
弥次彦
(
やじひこ
)
は
六
(
ろく
)
の
顔
(
かほ
)
を
一寸
(
ちよつと
)
見
(
み
)
て、
100
顋
(
あご
)
をしやくり、
101
弥
(
や
)
『オイ、
102
ロークサン、
103
どうだい。
104
チツトお
前
(
まへ
)
も
御
(
ご
)
祈念
(
きねん
)
して
上
(
あ
)
げぬかい』
105
六
(
ろく
)
『ハーイ、
106
ゴーキネンシテ、
107
アゲマシヨカイ』
108
弥
(
や
)
『アハヽヽヽ、
109
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
だ』
110
婆
(
ばば
)
『お
竹
(
たけ
)
の
奴
(
やつ
)
は
亭主
(
おやぢ
)
マン
が
悪
(
わる
)
うて、
111
其
(
そ
)
の
六公
(
ろくこう
)
の
前
(
まへ
)
にも
一度
(
いちど
)
嫁
(
とつ
)
いだのぢやが、
112
其奴
(
そいつ
)
がまた
酒
(
さけ
)
喰
(
くら
)
ひで、
113
しかも
大泥坊
(
おほどうばう
)
で
村
(
むら
)
ばね
に
会
(
あ
)
ふたものだから、
114
泣
(
な
)
きの
涙
(
なみだ
)
で
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て
悲
(
かな
)
しい
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
を
)
つた。
115
其処
(
そこ
)
へ
仲人
(
なかうど
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
116
盲目
(
めくら
)
の
私
(
わたし
)
にツベコベと、
117
木
(
き
)
に
餅
(
もち
)
がなるやうなことを
云
(
い
)
つて
六公
(
ろくこう
)
の
家
(
うち
)
へ
嫁
(
よめ
)
にやつたのだが、
118
その
六公
(
ろくこう
)
が
最前
(
さいぜん
)
も
言
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
119
棒
(
ぼう
)
にも
箸
(
はし
)
にもかからぬ
仕方
(
しかた
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
120
娘
(
むすめ
)
も
可愛想
(
かあいさう
)
なものだ。
121
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
には
二度
(
にど
)
迄
(
まで
)
は
縁付
(
えんづ
)
きは
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ぬから
神
(
かみ
)
は
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
るが、
122
三度
(
さんど
)
になれば
天
(
てん
)
の
御
(
ご
)
規則
(
きそく
)
に
戻
(
もど
)
るとかと
云
(
い
)
つて、
123
それは
八釜敷
(
やかまし
)
い
教
(
をしへ
)
だから
可愛想
(
かあいさう
)
に
娘
(
むすめ
)
も
若後家
(
わかごけ
)
を
立
(
た
)
てると
云
(
い
)
ふて
決心
(
けつしん
)
はして
居
(
ゐ
)
るものの、
124
親
(
おや
)
の
心
(
こころ
)
として
仮令
(
たとへ
)
天
(
てん
)
の
御
(
ご
)
規則
(
きそく
)
は
破
(
やぶ
)
れても、
125
モー
一遍
(
いつぺん
)
私
(
わたし
)
の
生命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
ててでも
好
(
よ
)
い
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
たしてやり
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
ふのが
一心
(
いつしん
)
ぢや。
126
お
前
(
まへ
)
サンも
三五教
(
あななひけう
)
のお
方
(
かた
)
ぢやさうながどうだらうなア。
127
一遍
(
いつぺん
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
下
(
くだ
)
さいますまいか』
128
弥
(
や
)
『ヤアこれは
難題
(
なんだい
)
だ。
129
吾々
(
われわれ
)
には
到底
(
たうてい
)
解決
(
かいけつ
)
が
付
(
つ
)
かない。
130
モシモシ
勝彦
(
かつひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
131
何
(
なん
)
とか
解決
(
かいけつ
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さいな』
132
勝
(
かつ
)
『
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
に
親子
(
おやこ
)
は
一世
(
いつせ
)
、
133
夫婦
(
ふうふ
)
は
二世
(
にせ
)
と
教
(
をし
)
へてある。
134
此
(
この
)
事
(
こと
)
に
就
(
つい
)
て
随分
(
ずゐぶん
)
信者
(
しんじや
)
の
中
(
なか
)
にも
迷
(
まよ
)
ふ
人
(
ひと
)
があるが、
135
之
(
これ
)
を
明瞭
(
はつきり
)
と
解釈
(
かいしやく
)
すれば、
136
夫婦
(
ふうふ
)
といふものは、
137
夫
(
をつと
)
でも
女房
(
にようばう
)
でも
二度
(
にど
)
より
替
(
か
)
へられないのが
不文律
(
ふぶんりつ
)
だ』
138
婆
(
ばば
)
『さうすると
先
(
せん
)
の
夫
(
をつと
)
なり、
139
女房
(
にようばう
)
なりの
片一方
(
かたいつぱう
)
が
死
(
し
)
ぬ。
140
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ないから
又
(
また
)
後
(
のち
)
の
夫
(
をつと
)
なり、
141
女房
(
にようばう
)
を
迎
(
むか
)
へる。
142
さうなると
死
(
し
)
んでからは
夫
(
をつと
)
が
二人
(
ふたり
)
あつたり、
143
女房
(
にようばう
)
が
二人
(
ふたり
)
あつたりするやうなことが
出来
(
でき
)
るぢやないか。
144
それでは
何
(
ど
)
うも
神界
(
しんかい
)
へ
行
(
い
)
つて
何方
(
どちら
)
の
女房
(
にようばう
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
暮
(
くら
)
したら
本当
(
ほんたう
)
だか
判
(
わか
)
らぬと
云
(
い
)
ふて、
145
皆
(
みな
)
のものがいろいろと
評議
(
へうぎ
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだが、
146
お
前
(
まへ
)
サンは
如何
(
どう
)
思
(
おも
)
ひますか』
147
勝
(
かつ
)
『
夫婦
(
ふうふ
)
と
云
(
い
)
ふものは
無論
(
むろん
)
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
で
結
(
むす
)
ばれるものではあるが、
148
身魂
(
みたま
)
と
云
(
い
)
ふものは、
149
いくら
にも
分
(
わか
)
れて
此
(
この
)
世
(
よ
)
へ
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るものだ。
150
併
(
しか
)
し
余程
(
よほど
)
神力
(
しんりき
)
の
有
(
あ
)
る
神
(
かみ
)
の
身魂
(
みたま
)
なれば
四魂
(
しこん
)
と
云
(
い
)
つて
四
(
よ
)
つにも
分
(
わか
)
れて
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
るものだが、
151
一通
(
ひととほ
)
りの
人間
(
にんげん
)
は
先
(
ま
)
づ
荒魂
(
あらみたま
)
とか
和魂
(
にぎみたま
)
とか
二魂
(
にこん
)
が
現
(
あら
)
はれて
来
(
く
)
るのが
普通
(
ふつう
)
だ。
152
それだから
二度迄
(
にどまで
)
は
同
(
おな
)
じ
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
が
神
(
かみ
)
の
引合
(
ひきあ
)
はせで、
153
不知
(
しらず
)
不識
(
しらず
)
に
縁
(
えん
)
を
結
(
むす
)
ぶ
事
(
こと
)
となる。
154
それだから
三人目
(
さんにんめ
)
の
夫
(
をつと
)
や、
155
女房
(
にようばう
)
は
身魂
(
みたま
)
が
合
(
あ
)
はぬから、
156
どうしても
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
が
勤
(
つと
)
まらないのみならず、
157
神界
(
しんかい
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
を
紊
(
みだ
)
し
身魂
(
みたま
)
の
混乱
(
こんらん
)
を
来
(
きた
)
す
事
(
こと
)
になるから
厳禁
(
げんきん
)
されて
居
(
ゐ
)
るのだ。
158
また
霊界
(
れいかい
)
に
行
(
い
)
つた
夫婦
(
ふうふ
)
は
肉体欲
(
にくたいよく
)
がチツトも
無
(
な
)
い、
159
心
(
こころ
)
と
心
(
こころ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
だから
幽体
(
いうたい
)
はあつても
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
人間
(
にんげん
)
のやうな
行
(
おこな
)
ひは、
160
チツトもする
必要
(
ひつえう
)
も
無
(
な
)
く、
161
欲望
(
よくばう
)
も
起
(
おこ
)
らぬから
綺麗
(
きれい
)
なものだ。
162
中
(
なか
)
には
執着心
(
しふちやくしん
)
の
強
(
つよ
)
い
身魂
(
みたま
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
息
(
いき
)
ある
動物
(
どうぶつ
)
を
使
(
つか
)
ふて、
163
ナントか、
164
かとか
云
(
い
)
ふて
わざ
をする
奴
(
やつ
)
がある。
165
けれどもコンナのは
例外
(
れいぐわい
)
だ。
166
恰度
(
ちやうど
)
幽界
(
いうかい
)
へ
行
(
い
)
つてからの
夫婦
(
ふうふ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
167
仲
(
なか
)
の
好
(
よ
)
い
兄弟
(
きやうだい
)
のやうなものだ。
168
肉体
(
にくたい
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
は
肉体
(
にくたい
)
の
系統
(
けいとう
)
を
繋
(
つな
)
ぐための
御用
(
ごよう
)
なり、
169
神界
(
しんかい
)
の
身魂
(
みたま
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
は
神界
(
しんかい
)
に
於
(
お
)
ける
経
(
たて
)
と
緯
(
よこ
)
との
御用
(
ごよう
)
をするのが
夫婦
(
ふうふ
)
の
身魂
(
みたま
)
の
神業
(
しんげふ
)
だ』
170
婆
(
ばば
)
『コレハコレハ
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によく
教
(
をし
)
へて
下
(
くだ
)
さいました。
171
アヽさうすればあのお
竹
(
たけ
)
は
最早
(
もはや
)
縁付
(
えんづ
)
くことは
出来
(
でき
)
ませぬか。
172
アヽ
可愛想
(
かあいさう
)
に
可愛想
(
かあいさう
)
に、
173
オンオンオン』
174
勝
(
かつ
)
『ヤアお
婆
(
ば
)
アサン、
175
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なされますな。
176
その
六
(
ろく
)
とやらの
精神
(
せいしん
)
を、
177
全然
(
すつかり
)
焼
(
や
)
き
直
(
なほ
)
して、
178
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
にさせ、
179
酒
(
さけ
)
も、
180
賭博
(
ばくち
)
も、
181
道楽
(
だうらく
)
も
全然
(
すつかり
)
止
(
や
)
めさして
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
りの
夫婦
(
ふうふ
)
に
請合
(
うけあ
)
つてして
上
(
あ
)
げやうか。
182
改心
(
かいしん
)
すればお
前
(
まへ
)
サンも
娘
(
むすめ
)
の
婿
(
むこ
)
にするのは
不服
(
ふふく
)
ではあるまいな』
183
婆
(
ばば
)
『アンナ
真極道
(
しんごくだう
)
は
芝
(
しば
)
を
被
(
かぶ
)
らな
到底
(
たうてい
)
治
(
なを
)
りつこはないと、
184
お
竹
(
たけ
)
が
云
(
い
)
ふて
居
(
を
)
りました。
185
それでも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
諭
(
さと
)
しで
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
になりませうか。
186
煎豆
(
いりまめ
)
に
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
時節
(
じせつ
)
も
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
ふことだから、
187
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬけれど
迚
(
とて
)
も
迚
(
とて
)
もあきますまい』
188
勝
(
かつ
)
『
悪
(
あく
)
に
強
(
つよ
)
いものは
善
(
ぜん
)
にも
強
(
つよ
)
いものだ。
189
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
の
真人間
(
まにんげん
)
に、
190
其
(
そ
)
の
六公
(
ろくこう
)
サンがなつたらお
前
(
まへ
)
どうする
考
(
かんが
)
へぢや』
191
婆
(
ばば
)
『ソンナ
結構
(
けつこう
)
なことがあれば、
192
爺
(
ぢい
)
も
婆
(
ばば
)
も
兄
(
あに
)
も
喜
(
よろこ
)
んで
大賛成
(
だいさんせい
)
を
致
(
いた
)
します』
193
勝
(
かつ
)
『お
婆
(
ば
)
アサン、
194
その
六公
(
ろくこう
)
サンは
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
となつて、
195
それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
人間
(
にんげん
)
になつて
居
(
ゐ
)
ますよ。
196
どうです、
197
私
(
わたくし
)
に
仲人
(
なかうど
)
をさして
元
(
もと
)
の
鞘
(
さや
)
に
収
(
をさ
)
めさして
下
(
くだ
)
さらぬか。
198
さうすれば
三世
(
さんせ
)
の
夫
(
をつと
)
に
嫁
(
とつ
)
いで
天則
(
てんそく
)
を
破
(
やぶ
)
る
必要
(
ひつえう
)
も
無
(
な
)
いのだから』
199
婆
(
ばば
)
『エーそれは
本当
(
ほんたう
)
ですか』
200
勝
(
かつ
)
『
苟
(
いやし
)
くも
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
、
201
なにしに
嘘
(
うそ
)
偽
(
いつは
)
りを
曰
(
い
)
ひませうか』
202
婆
(
ばば
)
『どうぞさうして
下
(
くだ
)
さい、
203
頼
(
たの
)
みます』
204
勝
(
かつ
)
『
実
(
じつ
)
はその
六
(
ろく
)
サンを
改心
(
かいしん
)
させて、
205
此処
(
ここ
)
へ
伴
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たのだ』
206
婆
(
ばば
)
『ヤーナンダか
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えのある
声
(
こゑ
)
だと
思
(
おも
)
ふたが、
207
六
(
ろく
)
、
208
お
前
(
まへ
)
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのか。
209
ソンナら
夫
(
そ
)
れで
何故
(
なぜ
)
早
(
はや
)
く
名乗
(
なの
)
つて
呉
(
く
)
れないのだ』
210
六
(
ろく
)
『お
母
(
つか
)
サン、
211
誠
(
まこと
)
に
心配
(
しんぱい
)
をかけて
済
(
す
)
みませぬ。
212
今
(
いま
)
は
全然
(
すつかり
)
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
しまして
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
し、
213
コーカス
詣
(
まゐ
)
りの
途中
(
とちう
)
でございます。
214
山田村
(
やまだむら
)
の
松屋
(
まつや
)
で
一寸
(
ちよつと
)
一服
(
いつぷく
)
した
時
(
とき
)
に、
215
お
竹
(
たけ
)
に
思
(
おも
)
はず
一寸
(
ちよつと
)
出会
(
であ
)
ひましたが、
216
お
竹
(
たけ
)
は
私
(
わたし
)
の
面
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るなり、
217
裏口
(
うらぐち
)
ヘ
遁
(
に
)
げ
出
(
だ
)
しました』
218
婆
(
ばば
)
『アヽさうであつたか、
219
併
(
しか
)
し
六
(
ろく
)
、
220
心配
(
しんぱい
)
して
呉
(
く
)
れな。
221
お
竹
(
たけ
)
もお
前
(
まへ
)
の
改心
(
かいしん
)
したことが
分
(
わか
)
つたら、
222
どれ
位
(
くらゐ
)
喜
(
よろこ
)
ぶことか
知
(
し
)
れたものぢやない。
223
善
(
ぜん
)
は
急
(
いそ
)
げだ、
224
早
(
はや
)
く
誰
(
たれ
)
か
使
(
つかい
)
を
立
(
た
)
てお
竹
(
たけ
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て、
225
まア
一度
(
いちど
)
改
(
あらた
)
めて
祝言
(
しうげん
)
の
杯
(
さかづき
)
をさし
度
(
た
)
いものだ』
226
六
(
ろく
)
『
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
うございます。
227
誠
(
まこと
)
に
合
(
あは
)
す
顔
(
かほ
)
もございませぬ。
228
偉
(
えら
)
い
悪魔
(
あくま
)
にとつつかれて
居
(
を
)
りました。
229
モウ
此
(
この
)
後
(
ご
)
はチツトモ
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
はかけませぬから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
230
婆
(
ばば
)
『アヽ
六
(
ろく
)
、
231
よう
言
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れた。
232
その
一言
(
いちごん
)
を
聞
(
き
)
いたら
私
(
わたし
)
はモウ
何時
(
いつ
)
国替
(
くにが
)
へしても、
233
この
世
(
よ
)
に
残
(
のこ
)
ることは
無
(
な
)
い、
234
安心
(
あんしん
)
して
高天原
(
たかあまはら
)
へ
行
(
ゆ
)
きます』
235
勝
(
かつ
)
『
早速
(
さつそく
)
の
和談
(
わだん
)
まとまつて
重畳
(
ちようでう
)
々々
(
ちようでう
)
、
236
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此処
(
ここ
)
の
息子
(
むすこ
)
サンもコーカス
詣
(
まゐ
)
りの
留守中
(
るすちう
)
なり、
237
お
竹
(
たけ
)
サンも
奉公
(
ほうこう
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
238
吾々
(
われわれ
)
も
六
(
ろく
)
サンもコーカス
詣
(
まゐ
)
りの
道中
(
だうちう
)
、
239
一度
(
いちど
)
参拝
(
さんぱい
)
を
終
(
をは
)
つてから
悠
(
ゆつ
)
くりと
婚礼
(
こんれい
)
をしたらどうでせうか』
240
婆
(
ばば
)
『ハイハイ
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う。
241
一
(
いち
)
日
(
にち
)
や
二日
(
ふつか
)
に
何
(
ど
)
うといふことは
有
(
あ
)
りませぬ。
242
六
(
ろく
)
サンの
精神
(
せいしん
)
さへきまれば、
243
それでモウ
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
落着
(
らくちやく
)
だ。
244
どうぞ
早
(
はや
)
く
機嫌
(
きげん
)
よく
参詣
(
さんけい
)
を
了
(
しま
)
つて
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
245
一同
(
いちどう
)
『めでたいめでたい、
246
ウローウロー』
247
(
大正一一・三・二四
旧二・二六
外山豊二
録)
248
(昭和一〇・三・一六 於台南高雄港口官舎 王仁校正)
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