霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 丸木橋(まるきばし)〔五六五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻 篇:第3篇 高加索詣 よみ(新仮名遣い):こーかすまいり
章:第15章 丸木橋 よみ(新仮名遣い):まるきばし 通し章番号:565
口述日:1922(大正11)年03月25日(旧02月27日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年11月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一行は息を吹き返し、鬼婆と格闘した夢を語り合っている。勝公は、これは数十万年未来に艮の方角に男子・女子が現れてミロクの世の活動をされるときに、邪魔をする悪魔が出てくるのだ、と夢判断をする。
与太彦は、谷川の水で禊ぎをして身を清めよう、と提案する。一同は賛成して川に飛び込むが、六公がおぼれてしまう。
一同は六公の生存を祈りつつ、川を下って六を探しに行く。丸木橋が架かったところで、与太彦に六公の生霊が懸って、自分は死んでいない、と口を切った。
すると、橋のたもとから、以前四人が三五教に改心させた烏勘三郎一行が現れ、六公が流れてきたので、川から引き上げて助けてあった、と言う。
勝彦が天の数歌を唱えると、六公は息を吹き返した。一同は神言を奏上し宣伝歌を歌った。四人は烏勘三郎たちに厚く礼を述べ、二十六番峠に向かって進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-09 14:57:44 OBC :rm1415
愛善世界社版:248頁 八幡書店版:第3輯 251頁 修補版: 校定版:257頁 普及版:118頁 初版: ページ備考:
001 二十五(にじふご)(ばん)(たうげ)頂上(ちやうじやう)より強烈(きやうれつ)なる烈風(れつぷう)()(はら)はれ、002谷間(たにま)(おちい)りし勝公(かつこう)一行(いつかう)は、003(いき)()(かへ)()(あが)り、004(たがひ)(かほ)見合(みあは)せて、
005(かつ)『ヤア、006此処(ここ)はコシカ(たうげ)谷底(たにそこ)だ。007一途(いちづ)(かは)とやら()並木(なみき)(まつ)(しげ)つた(ひと)()(おい)て、008常世姫(とこよひめ)木常姫(こつねひめ)悪霊(あくれい)格闘(かくとう)をやつて()(つも)りだに、009これは矢張(やつぱ)(ゆめ)だつたかいなア』
010()『アヽ宣伝使(せんでんし)(さま)011貴方(あなた)もソンナ(ゆめ)()たのですか、012(わたくし)()ましたよ、013エグイ(かほ)をした(ばば)アだつたねー。014()周囲(まはり)から(はな)(あた)りと()ふものは紫色(むらさきいろ)腫上(はれあが)つて、015随分(ずゐぶん)()つともよくない常世姫(とこよひめ)寝姿(ねすがた)016一目(ひとめ)()るよりゾツとした。017それに(また)018(ほし)(もん)のついた水色(みづいろ)羽織(はおり)()中婆(ちうばば)(いや)らしい(かほ)つたら、019(いま)(おも)つても身体中(からだぢう)がゾクゾクするやうですワ。020それに与太公(よたこう)(やつ)021(ひと)()(まど)(のぞ)いて、022芝居(しばゐ)がかりに手踊(てをどり)をやるをかしさ、023可笑(をか)しいやら、024(おそ)ろしいやら、025気分(きぶん)(わる)いやら、026(はら)()つやら、027(かん)()つやら、028イヤもう三五教(あななひけう)精神(せいしん)何処(どこ)かへ()つて仕舞(しま)うて、029見直(みなほ)()(なほ)し、030()(なほ)しと()余裕(よゆう)がなかつた。031オイ与太公(よたこう)032六公(ろくこう)033貴様(きさま)如何(どう)だつた。034(ゆめ)(なか)一人(ひとり)だつたぞ』
035()(おれ)もチヨボチヨボだ、036一途(いちづ)(かは)だとか、037()しい一図(いちづ)だとか、038(ばば)(ほざ)いて()たよ。039余程(よほど)よい血迷(ちまよ)(ばば)アだワイ』
040(ろく)鬼婆(おにばば)出刄(でば)をもつて、041()つかかつて()よつた(とき)にや、042この(はう)無手(むて)だ、043先方(むかう)獲物(えもの)()つて()るのだから一寸(ちよつと)ハラハラした途端(とたん)044()()めたのだ。045アヽ(いや)らしい(ゆめ)()たものだ。046(ゆめ)浮世(うきよ)()ふからには、047何処(どこ)かにかう()事実(じじつ)があるかも()れないよ』
048()(ゆめ)()ふものは神聖(しんせい)なものだ。049吾々(われわれ)社会(しやくわい)(てき)(すべ)ての羈絆(きはん)(だつ)して、050他愛(たあい)もなく(ほん)守護神(しゆごじん)発動(はつどう)一任(いちにん)した(とき)だから、051(ゆめ)(なか)事実(じじつ)はきつと過去(くわこ)か、052現在(げんざい)か、053未来(みらい)のうちには実現(じつげん)するものだよ』
054(ろく)『さうだらうかなア、055過去(くわこ)(こと)だらうか、056未来(みらい)(こと)だらうかな』
057(かつ)『それは、058この(ゆめ)実現(じつげん)数十万(すふじふまん)(ねん)未来(みらい)(こと)だ。059二十(にじつ)世紀(せいき)()悪魔(あくま)横行(わうかう)時代(じだい)()(とき)060八尾(やつを)八頭(やつがしら)金毛(きんまう)九尾(きうび)悪霊(あくれい)(ふたた)発動(はつどう)しよつて、061常世姫(とこよひめ)木常姫(こつねひめ)霊魂(みたま)(うつ)(やす)肉体(にくたい)使(つか)つて、062()りよる(こと)だよ。063天眼通(てんがんつう)(りき)によつて調(しら)べて()ると、064(なん)でもこれから(うしとら)(はう)(あた)つて、065(かみ)さまの公園地(こうゑんち)に、066(ゆめ)(なか)男子(なんし)とか女子(によし)とかが(あら)はれて、067ミロクの()活動(くわつどう)開始(かいし)されるのを、068(なん)でも変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)肉体(にくたい)(かか)り、069(ぜん)仮面(かめん)(かぶ)つて(をし)への()()(ころ)し、070玉取(たまと)りをやる(こと)()らせであらう。071アヽ二十(にじつ)世紀(せいき)()()(なか)人間(にんげん)(じつ)可憐(かあい)さうだ。072それにつけても、073厳霊(いづのみたま)074瑞霊(みづのみたま)金勝要(きんかつかね)(かみ)075木花姫(このはなひめ)呑剣(どんけん)断腸(だんちやう)()(くる)しみが(おも)ひやられる(わい)076嗚呼(ああ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
077()吾々(われわれ)過去(くわこ)現在(げんざい)未来(みらい)衆生(しうじやう)済度(さいど)のため、078この(きよ)らかな川辺(かはべ)()()んだのを(さいは)ひに、079御禊(みそぎ)(しう)し、080神言(かみごと)奏上(そうじやう)してミロク神政(しんせい)建設(けんせつ)太柱(ふとばしら)081男子(なんし)女子(によし)をはじめ、082金勝要(きんかつかね)(かみ)083木花姫(このはなひめ)(みたま)(しづ)まりたまふ(にく)(みや)(ため)に、084(いの)りませうか。085この()(なか)万劫(まんがふ)末代(まつだい)維持(ゐぢ)していけるやうに、086(ぜん)ばかりの(はな)()くやうに』
087(かつ)大賛成(だいさんせい)です、088(みな)サン与太彦(よたひこ)サンの提案(ていあん)(したが)つて即時(そくじ)決行(けつかう)(いた)しませう』
089()090(ろく)吾々(われわれ)賛成(さんせい)です』
091()(なが)ら、092着衣(ちやくい)川辺(かはべ)()()て、093谷川(たにがは)にザンブとばかり飛込(とびこ)んだ。094()(にん)一度(いちど)(みづ)(ひた)身体(からだ)(きよ)めて()(さい)095ブルブルブルと(おと)()てて、096六公(ろくこう)水底(すゐてい)姿(すがた)(かく)して仕舞(しま)つた。097勝公(かつこう)(はじ)(さん)(にん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)両手(りやうて)(あは)川上(かはかみ)(むか)つて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(をは)つてフト(かたはら)()れば六公(ろくこう)姿(すがた)()えぬ。
098(かつ)『ヤア(ろく)サンは何処(どこ)()つた。099オーイ(ろく)サン何処(どこ)だ』
100()べど(さけ)べど(なん)(いら)へもなく、101激潭(げきたん)飛沫(ひまつ)(おと)轟々(ぐわうぐわう)(きこ)ゆるのみ。102弥次彦(やじひこ)は、
103弥次彦『ヤア大変(たいへん)だ、104六公(ろくこう)何処(どこ)かへ沈没(ちんぼつ)しよつたな、105これや()うしては()られぬ(わい)106(なん)とかして捜索(そうさく)をせなくてはならぬ、107愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると沢山(たくさん)(みづ)()んで(ことぎ)れては取返(とりかへ)しがつかぬ。108オイ与太公(よたこう)どうせうかなア』
109()『どうせうたつて仕方(しかた)がないサ、110大方(おほかた)六公(ろくこう)(やつ)111潜水艇(せんすゐてい)気取(きど)りで何処(どこ)かの水底(すゐてい)暫時(ざんじ)伏艇(ふくてい)して()るのだらう。112彼奴(あいつ)水練(すゐれん)(めう)()(やつ)だから、113(けつ)して(おぼ)れるやうな気遣(きづか)ひはないよ。114貴様(きさま)(まつ)(えだ)()(かか)つて()(とき)も、115あの着物(きもの)のまま谷川(たにがは)(およ)(わた)つて平気(へいき)()(やつ)だから大丈夫(だいぢやうぶ)だ。116吾々(われわれ)一寸(ちよつと)(おどろ)かしてやらうと(おも)うて洒落(しやれ)()るのだよ』
117()『なにほど水泳(すゐえい)達人(たつじん)だと()つても油断(ゆだん)出来(でき)ない、118さう楽観(らくくわん)する(わけ)にもいかない、119(ことわざ)にも、120()(およ)ぐものは()(おぼ)る、121()(こと)がある。122此奴(こいつ)はどうしても(おれ)(かんが)へでは名替(ながへ)をしよつたに相違(さうゐ)ない』
123()名替(ながへ)つて(なん)だい、124(なが)れの間違(まちが)ひだらう』
125()馬鹿(ばか)()ふな、126川底(かはぞこ)土左衛門(どざゑもん)改名(かいめい)したらうと()ふのだ』
127()土左衛門(どざゑもん)とは()しからぬ、128(しん)大変(たいへん)だ。129それだから道中(だうちう)四人(しにん)(づれ)はいかないと()ふのだ。130オイ六公(ろくこう)131()きて()るのか()んで()るか、132ハツキリ返事(へんじ)をせぬかい』
133()()んで()るものが返事(へんじ)をするかい、134()落着(おちつ)けないか』
135()一息(ひといき)(あらそ)(みづ)(なか)だ、136愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()()(いき)()れたらどうするのだ。137コンナ(とき)落着(おちつ)(はら)つて()(やつ)非人道(ひじんだう)(てき)骨頂(こつちやう)だ。138これがどうして周章(しうしやう)狼狽(らうばい)せずに()られうかい。139オーイ オーイ、140六公(ろくこう)141六道(ろくだう)(つじ)(とほ)るのは()(はや)いぞ、142コーカス(まゐ)りの途中(とちう)ぢやないか、143(はや)()かばぬか()かばぬか、144何処(どこ)()(まよ)ふとるのだ。145オーイ オーイ』
146(かつ)『エヽ仕方(しかた)がない、147滅多(めつた)にこの激流(げきりう)(くぐ)つて(のぼ)(はず)もなし、148大方(おほかた)(うづ)巻込(まきこ)まれて(なが)れたのかも()れませぬよ、149谷川(たにがは)(づた)ひに此処(ここ)(くだ)つて(さが)して()ませうか』
150()(さが)さうと()つたつて、151アレあの(とほ)碧潭(へきたん)激流(げきりう)152()うする(こと)出来(でき)ぬぢやありませぬか。153コンナ(とき)鷹彦(たかひこ)サンが()()れば捜索隊(さうさくたい)になつて(もら)ふのに大変(たいへん)都合(つがふ)()いけれどなア、154追々(おひおひ)()()れて()る、155(こま)つた(こと)だ。156愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると吾々(われわれ)(まで)がドンナ災難(さいなん)()ふかも()れぬ、157マア六公(ろくこう)六公(ろくこう)仕方(しかた)がないとして、158吾々(われわれ)(さん)(にん)(かみ)(さま)大事(だいじ)なお使(つか)道具(だうぐ)だ。159あまり足許(あしもと)(くら)くならない(うち)頂上(ちやうじやう)まで、160()けつけませう』
161(さき)()つて谷辺(たにべり)()(のぼ)る。162二人(ふたり)(あと)(したが)(から)うじて黄昏頃(たそがれごろ)163二十五(にじふご)(ばん)(たうげ)頂上(ちやうじやう)山道(やまみち)辿(たど)()いた。
164()『サア宣伝使(せんでんし)(さま)165(やうや)吾々(われわれ)(さん)(にん)無事(ぶじ)(もと)地点(ちてん)凱旋(がいせん)しましたが、166六公(ろくこう)(やつ)(こま)つたものですなア。167小山村(こやまむら)のお()アサンが()いたら、168(さぞ)(なげ)(こと)でせう、169老爺(ぢい)サンも中風(ちうぶう)なり、170あれ(ほど)(よろこ)んで()たものを、171アヽ()(なか)()ふものは残酷(ざんこく)なものだ。172本当(ほんたう)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)娑婆(しやば)世界(せかい)だ。173(なん)とかして万有(ばんいう)一切(いつさい)どこ(まで)不老(ふらう)不死(ふし)悪魔(あくま)襲来(しふらい)不時(ふじ)(あやま)ちの()完全(くわんぜん)なる世界(せかい)(つく)りたいものですなア』
174()『アヽ人間(にんげん)老少(らうせう)不定(ふぢやう)とはよく()つたものだ。175無常(むじやう)迅速(じんそく)(かん)益々(ますます)(ふか)しだワイ』
176(かつ)()いても(くや)んでもモウ仕方(しかた)がない、177()れる(とき)()れば()()れる、178人間(にんげん)()時節(じせつ)()たら()なねばならない、179(さくら)(はな)永久(とこしへ)(こづゑ)(とど)まらず、180(あたま)(かみ)何時迄(いつまで)(くろ)(つや)(たも)(こと)出来(でき)ないのは()(なか)(なら)はせだ。181アーアもう()()苦労(くらう)はサラリと谷川(たにがは)(なが)して刹那心(せつなしん)(たの)しまうかい』
182()(じつ)(せつ)ない刹那心(せつなしん)だナア。183過越(すぎこ)苦労(くらう)をせまいと(おも)つても、184(いま)今迄(いままで)ピンピンと(はしや)いで()つた六公(ろくこう)(こと)がどうして(わす)れる(こと)出来(でき)やうぞ。185一昨日(おととひ)六公(ろくこう)と、186(まへ)サン()二人(ふたり)行方(ゆくへ)(さが)した(とき)には六公(ろくこう)(うるは)しい(こころ)(あら)はれて()た。187()かけによらぬ親切(しんせつ)(をとこ)だつた。188それはそれは宣伝使(せんでんし)(さま)189貴方達(あなたがた)のお姿(すがた)()えなかつた(とき)には、190あの(をとこ)はどれだけ心配(しんぱい)をしよつたか()れませぬぜ。191二人(ふたり)友達(ともだち)がもし国替(くにがへ)をして()るのなら、192(わたくし)一緒(いつしよ)(かは)()()げてお(とも)をしたいと(まで)()つた(くらゐ)だ。193アヽ可憐(かあい)さうな(こと)をした。194(わづか)(いち)(にち)道連(みちづれ)になつても(じふ)(ねん)知己(ちき)のやうに親切(しんせつ)(つく)六公(ろくこう)(こころ)(うるは)しさ、195これを(おも)へば吾々(われわれ)六公(ろくこう)道連(みちづれ)になつてやりたいやうだ。196アヽもう(この)()では彼奴(あいつ)(かほ)()(こと)出来(でき)ぬのか、197(なさけ)ない可憐(かあい)さうだ』
198(なみだ)()み、199()置処(おきどころ)なきさまに大地(だいち)()()げた。
200()『コラコラ与太公(よたこう)201しつかりせぬか、202失望(しつばう)落胆(らくたん)するのは貴様(きさま)ばかりぢやない、203(おれ)だつて(おな)(こと)だよ』
204と、205(また)もや(なみだ)をハラハラと(こぼ)(かほ)(そで)をあて、206(みち)(うへ)にべたりと(たふ)れ、207()(ゆす)つて(つひ)には両人(りやうにん)(こゑ)をあげて()(さけ)ぶ。208勝公(かつこう)(なみだ)()(しば)たたきながら、
209(かつ)『コレコレ弥次彦(やじひこ)サン、210与太彦(よたひこ)サン、211さう気投(きな)げをするものぢやない、212チト(しつか)りせぬか。213(をとこ)()ふものは()りにも(なみだ)(こぼ)すものぢやない、214あまり女々(めめ)しいぢやないか』
215自分(じぶん)(また)()つる(なみだ)(そで)にて(ぬぐ)ふ。
216 愁歎(しうたん)(まく)(やうや)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)()(なほ)(かす)かに巻上(まきあ)げられた。217(みじか)()(すで)()(はな)足許(あしもと)(ほんのり)()かくなつて()た。218一同(いちどう)六公(ろくこう)()(うへ)矢張(やは)()(かか)ると()東天(とうてん)(むか)つて合掌(がつしやう)し、219天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、220(つい)六公(ろくこう)無事(ぶじ)生存(せいぞん)せむ(こと)(いの)り、221(をは)つて(また)もや急坂(きふはん)西北(せいほく)さして(くだ)()く。
222 足並(あしなみ)(はや)(くだ)(ざか)にもいつしか(ひま)()げて、223(また)もや茫々(ばうばう)たる原野(げんや)(はし)()くこと数百丁(すうひやくちやう)224丸木橋(まるきばし)のかけられた(ほとり)辿(たど)りついた。
225()宣伝使(せんでんし)(さま)226大分(だいぶん)(あし)草臥(くたび)れました。227此処(ここ)(こし)をおろして一休(ひとやす)(いた)しませうか』
228(かつ)『オヽこの(かは)だつた、229六公(ろくこう)はこの水上(みなかみ)見失(みうしな)ひ、230残念(ざんねん)(こと)をしたが、231今頃(いまごろ)はどうなつて()るだらう』
232 与太彦(よたひこ)(たちま)ちウンウンと(うな)()し、233両手(りやうて)()んで身体(からだ)動揺(どうえう)(はじ)めた。
234()『ヤア(また)しても神憑(かむがか)りになりよつた。235モウ悪魔(あくま)襲来(しふらい)()()りだ。236オイ与太公(よたこう)(からだ)憑依(のりうつ)つて()悪霊(あくれい)(ども)237(すみやか)退散(たいさん)(いた)さぬか』
238()『ロヽヽヽヽクヽヽヽヽ(ろく)ぢや(ろく)ぢや』
239()『エヽ(ろく)でもない(ろく)(やつ)240貴様(きさま)土左衛門(どざゑもん)になりよつて幽世(あのよ)人間(にんげん)となりながら()娑婆(しやば)(こひ)しうて(まよ)うて()たか。241()加減(かげん)執着心(しふちやくしん)()つて、242(いち)()(はや)霊神(みたまのかみ)になれ。243貴様(きさま)はお(たけ)(のこ)して()んだのだから(のこ)(をし)からう。244残念(ざんねん)なのは(もつと)もだが、245モウ()うなつては仕方(しかた)がない、246(はや)神界(しんかい)とつと()つてお(たけ)場所(ばしよ)(こしら)へて()つて()るがよからう。247(おれ)だとて三百(さんびやく)(ねん)(せん)(ねん)(さき)かは()らぬが、248(いづ)一度(いちど)()くのだから、249景色(けしき)のよい場所(ばしよ)()つて()いて()れ。250閻魔(えんま)さまと相談(さうだん)して(おれ)場所(ばしよ)だけには、251契約済(けいやくずみ)(ふだ)()てて()くのだぞ。252その(かは)(おれ)娑婆(しやば)()て、253朝晩(あさばん)貴様(きさま)のため冥福(めいふく)(いの)つてやる。254三途(せうづ)(かは)鬼婆(おにばば)出遇(であ)つたら、255(おれ)()(こと)(なん)でも()くのだから、256(なん)なら紹介状(せうかいじやう)()いてやらうか』
257()『オヽヽヽレヽヽヽワヽヽシヽヽ、258()んで()らぬ』
259()(きま)つた(こと)よ、260()んだものは娑婆(しやば)()らぬのは当然(あたりまへ)だ。261()らぬ(はず)貴様(きさま)何故(なぜ)コンナ(ところ)()(まよ)ふて()るのだ』
262()『オヽレヽヽワヽヽマヽダヽイヽ(いき)()る、263(けつ)して(けつ)して()んで()らぬぞ、264(いま)肉体(にくたい)()()つて()()せてやらう』
265()『ハア()んで()らぬと()つたのか、266よく(わか)つた、267さうすると(ろく)生霊(いきりやう)だな、268(いま)何処(どこ)魔胡(まご)ついとるのか』
269()『イヽ(いま)(わか)る、270此処(ここ)半時(はんとき)ばかり(さん)(にん)とも()つて()()れ。271(からす)勘三郎(かんざぶらう)(たす)けられて(いのち)完全(くわんぜん)(たす)かつた。272安心(あんしん)してくれ』
273()『ヤアそれや本当(ほんたう)か、274本当(ほんたう)なら(おれ)(うれ)しい(わい)275これこれ宣伝使(せんでんし)さま、276(あんま)(うま)(はなし)だが、277此奴(こいつ)邪神(じやしん)(たぶら)かして()るのではあるまいか、278貴方(あなた)(ひと)審神(さには)をして()(くだ)さいな』
279(かつ)(かみ)間違(まちが)ひはありますまい、280(やが)(ろく)サンの肉体(にくたい)()はれませう。281(しばら)此処(ここ)(すわ)つて神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、282(かみ)(さま)にお(れい)(まを)しませう。283モシモシ、284(ろく)サンとやら、285モウ(わか)りました、286()()りを(ねが)ひます。287(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)288惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)289惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
290 六公(ろくこう)生霊(いきりやう)(たちま)肉体(にくたい)(はな)れた。291与太彦(よたひこ)(もと)(ごと)くケロリとしながら、
292()『アヽ、293矢張(やは)六公(ろくこう)(いき)()ますなア、294とうとう憑依(のりうつ)つて()よつて、295アンナ(こと)()ひよつた。296(あま)六公(ろくこう)々々(ろくこう)(おも)()めて()たものだから、297此方(こちら)一心(いつしん)(とど)いて(ろく)生霊(いきりやう)感応(かんのう)したと()える、298(わたし)(くち)()つて()つた(こと)本当(ほんたう)なら(うれ)しいがなア』
299 (さん)(にん)(はし)(たもと)端坐(たんざ)して(やや)沈黙(ちんもく)(ふけ)(をり)しも一人(ひとり)(をとこ)背負(せお)うて(かは)から(あが)り、300ノソリノソリと(のぼ)つて()大男(おほをとこ)がある。301(あと)よりガヤガヤと(ささや)きながら十数(じふすう)(にん)(あら)くれ(をとこ)がついて()る。302(さん)(にん)怪訝(けげん)(かほ)をして(この)(をとこ)凝視(みつめ)()る。
303(をとこ)『ヤア貴方(あなた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)
304(さん)(にん)『ヤアお(まへ)(からす)勘三郎(かんざぶらう)だないか』
305『ハイ左様(さやう)御座(ござ)います、306(ろく)サンを()れて(まゐ)りました』
307()(それ)(それ)有難(ありがた)い、308()苦労(くらう)だつた。309(ろく)サンは(もの)()ひますかな、310イヤ()(いき)()りますか』
311(からす)(もの)()はず(うご)きもしませぬが、312身体(からだ)一部(いちぶ)温味(ぬくみ)がありますので、313()でも()いてあたらしたら、314此方(こつち)のものにならうも()れぬと(かんが)へて、315ブカブカと(なが)れて()るのを吾々(われわれ)一同(いちどう)(いのち)(まと)(かは)()()(ひろ)つて()ました』
316(かつ)『それは有難(ありがた)い、317唯今(ただいま)(さき)318六公(ろくこう)此処(ここ)にやつて()てタツタ(いま)319()(かか)ると()つて()ました』
320(からす)(めう)ですなア、321先程(さきほど)此処(ここ)()たとは合点(がてん)()かぬ。322さうすると此奴(こいつ)(ろく)サンぢやないのかなア、323大方(おほかた)化物(ばけもの)だらう。324エヽ(えら)苦労(くらう)をさせよつて、325()(たぬき)()が、326()ちつけて蹂躙(ふみにじ)つてやらうか』
327()『マアマア()つた()つた、328ソンナ手荒(てあら)(こと)をしてどうなるものか、329(それ)こそ本当(ほんたう)()んで仕舞(しま)はア。330そつと其辺(そこら)におろして()れ、331これから(たま)よびの神業(かむわざ)だ』
332(からす)『アヽ(なん)だかテント、333(わけ)(わか)らぬやうになつて()たワイ。334マア仕方(しかた)がない、335(おろ)さうかい』
336芝生(しばふ)(うへ)にそつと(おろ)した。
337()『オヽ六公(ろくこう)338貴様(きさま)仕合(しあは)せものだ、339()()(いま)魂返(たまがへ)しをやつてやらう。340サア宣伝使(せんでんし)(さま)341(あま)数歌(かずうた)(はじ)めませうか』
342 勝彦(かつひこ)無言(だま)つて、343首肯(うなづ)きながら拍手(かしはで)()(こゑ)(ほそ)(しづか)落着(おちつ)(はら)つて、344(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)二回(にくわい)(くり)かへした。345六公(ろくこう)(からだ)はムクムクと(うご)()し、346(ただち)起上(おきあが)(さん)(にん)(かほ)をキヨロキヨロと(なが)め、
347(ろく)『アヽお(まへ)弥次公(やじこう)348与太公(よたこう)か、349ヤア宣伝使(せんでんし)(さま)(めう)(ところ)()ひました。350三途(せうづ)(かは)(わた)(そこ)ねてスツテの(こと)二度目(にどめ)国替(くにがへ)をするところだつたが、351(からす)勘三郎(かんざぶらう)()(をとこ)352十数(じふすう)(にん)弟子(でし)(とも)()(をど)らして(かは)()()(わたし)(すく)()げ、353()()ふて何処(どこ)ともなしにトントン(はし)()したと(おも)つたら丸木橋(まるきばし)(たもと)354(まへ)サンはやはり幽界(いうかい)(たび)をして()なさるのか、355今度(こんど)自分(じぶん)一人(ひとり)だと(おも)つて()たのに何処(どこ)までも交際(つきあひ)のよい()親切(しんせつ)なお(かた)だ。356()つべきものは朋友(ほういう)なりけりだ。357アヽ、358惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)359惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
360 弥次彦(やじひこ)六公(ろくこう)()平手(ひらて)()()つ、361(ちから)()めて(なぐ)りつけた。
362(ろく)『アイタヽヽヽ貴様(きさま)(なに)をするのだい。363(おどろ)いたな、364娑婆(しやば)()(とき)から乱暴(らんばう)(やつ)だと(おも)うて()たが、365貴様(きさま)()冥途(めいど)()ても改心(かいしん)出来(でき)ぬか』
366()此処(ここ)冥途(めいど)ぢやないぞ、367二十五(にじふご)(ばん)(たうげ)(くだ)つて数百丁(すうひやくちやう)()たところだ。368(まへ)谷川(たにがは)(おぼ)れて一旦(いつたん)(ことぎ)れて()つたのだ。369それを(かみ)(さま)のお()(あは)せで勘三郎(かんざぶらう)サンの親内(みうち)(もの)(たす)けられ、370此処(ここ)()たのだ。371(しつか)りして()れ』
372 六公(ろくこう)()(こす)りながら今更(いまさら)のやうな(かほ)をして四辺(あたり)念入(ねんい)りに見廻(みまは)し、
373六公『ヤア、374矢張(やはり)どうやら娑婆(しやば)らしい、375ヤ、376(みな)サン、377(えら)()心配(しんぱい)をかけました、378有難(ありがた)う。379これはこれは(からす)勘三郎(かんざぶらう)サン、380その()親内(みうち)()一同(いちどう)381よう(たす)けて(くだ)さいました。382(いのち)(おや)だと(おも)ふてこの御恩(ごおん)生涯(しやうがい)(わす)れませぬ』
383(からす)『ヤア()がついて(なに)より結構(けつこう)でした。384(かみ)(さま)にお(れい)(まを)しませう』
385 (ここ)一同(いちどう)神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、386宣伝歌(せんでんか)(うた)ひ、387(また)もや()(にん)一行(いつかう)勘三郎(かんざぶらう)その()(あつ)(れい)()べ、388丸木橋(まるきばし)(わた)つて二十六番(にじふろくばん)(たうげ)()して(すす)()く。
389大正一一・三・二五 旧二・二七 加藤明子録)
390(昭和一〇・三・一六 於嘉義市嘉義ホテル 王仁校正)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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