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第22巻(酉の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 暗雲低迷
01 玉騒疑
〔693〕
02 探り合ひ
〔694〕
03 不知火
〔695〕
04 玉探志
〔696〕
第2篇 心猿意馬
05 壇の浦
〔697〕
06 見舞客
〔698〕
07 囈語
〔699〕
08 鬼の解脱
〔700〕
第3篇 黄金化神
09 清泉
〔701〕
10 美と醜
〔702〕
11 黄金像
〔703〕
12 銀公着瀑
〔704〕
第4篇 改心の幕
13 寂光土
〔705〕
14 初稚姫
〔706〕
15 情の鞭
〔707〕
16 千万無量
〔708〕
第5篇 神界経綸
17 生田の森
〔709〕
18 布引の滝
〔710〕
19 山と海
〔711〕
20 三の魂
〔712〕
余白歌
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> 第3篇 黄金化神 > 第11章 黄金像
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第一一章
黄金像
(
わうごんざう
)
〔七〇三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
篇:
第3篇 黄金化神
よみ(新仮名遣い):
おうごんけしん
章:
第11章 黄金像
よみ(新仮名遣い):
おうごんぞう
通し章番号:
703
口述日:
1922(大正11)年05月26日(旧04月30日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
金助は傷を負って苦しんでいる一同を眺めながら、バラモン教のためと思ってやったことがこのような結果になってしまったことを思った。そして、自分の肉体を損壊することの非を悟り、バラモン教が邪教であることを知った。
金助はここは三五教の地だから、三五教の神様のご教訓をいただいたことを悟り、大神様に懺悔をして許しを請うた。他の一同も気が付いて金助の周りに集まってきたが、金助はにわかに神懸り、威厳のある容貌となった。
他の連中は金助の気がおかしくなったと思って気をつかせようとするが、金助は妙音菩薩の教えを垂れると、美しい雲に包まれて山上に上っていった。他の六人は金助を追って鷹鳥山の頂上に来ると、金助は黄金の像になって座っていた。
六人は黄金に目がくらんで像を持って返ろうとするが、金助は仏法で六人に説いて聞かせる。六人は金の像を持って返ろうと金助に武者振りつくが、たちまちふるい落とされてしまった。
金助の像は立ち上がって両眼から日月の光明を放射した。鷹鳥山は暗夜でも数十里先からその光を認めることができるようになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-06-08 19:38:23
OBC :
rm2211
愛善世界社版:
145頁
八幡書店版:
第4輯 433頁
修補版:
校定版:
149頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
向脛
(
むかふずね
)
を
擦
(
す
)
り
剥
(
む
)
き、
002
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
めながら
清泉
(
きよいづみ
)
の
岩壺
(
いはつぼ
)
より
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
りたる
金助
(
きんすけ
)
は、
003
スマートボール、
004
カナンボール、
005
銀
(
ぎん
)
、
006
鉄
(
てつ
)
、
007
熊
(
くま
)
、
008
蜂
(
はち
)
の
顔面
(
がんめん
)
の
擦過傷
(
すりきず
)
や
茨掻
(
いばらか
)
きの
傷
(
きず
)
を
眺
(
なが
)
め、
009
金助
『アー
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
負傷
(
ふしやう
)
せないものは
一人
(
ひとり
)
もないのだな。
010
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
があらう
道理
(
だうり
)
がない。
011
如何
(
どう
)
しても
吾々
(
われわれ
)
の
行動
(
かうどう
)
に
良
(
よ
)
くない
点
(
てん
)
があるのだらう。
012
バラモン
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
所在
(
あらゆる
)
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
を
費
(
つひや
)
してゐる
吾々
(
われわれ
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
が
七
(
しち
)
人
(
にん
)
乍
(
なが
)
ら
斯
(
こ
)
んな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ふと
云
(
い
)
ふのは、
013
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
はないのかも
知
(
し
)
れない。
014
但
(
ただ
)
しはバラモン
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
かも
分
(
わか
)
らない。
015
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか
一向
(
いつかう
)
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
かぬ。
016
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らバラモン
教
(
けう
)
の
本国
(
ほんごく
)
に
於
(
おい
)
ては、
017
真裸体
(
まつぱだか
)
にして
茨
(
いばら
)
の
中
(
なか
)
へ
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれ、
018
水
(
みづ
)
を
潜
(
くぐ
)
り
火
(
ひ
)
を
渡
(
わた
)
り、
019
剣
(
つるぎ
)
の
刃渡
(
はわた
)
り、
020
釘
(
くぎ
)
を
一面
(
いちめん
)
に
打
(
う
)
つた
下駄
(
げた
)
を
穿
(
は
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が、
021
最
(
もつと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
悦
(
よろこ
)
ばしめる
行
(
ぎやう
)
となつてゐるさうだ。
022
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
では、
023
そこ
迄
(
まで
)
の
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
行
(
おこな
)
はれないから、
024
今
(
いま
)
のバラモン
教
(
けう
)
は
荒行
(
あらぎやう
)
は
全然
(
すつかり
)
廃
(
はい
)
されてゐる。
025
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
に、
026
皆
(
みな
)
が
皆
(
みな
)
まで
血
(
ち
)
を
出
(
だ
)
したと
云
(
い
)
ふのは、
027
或
(
あるひ
)
は
御
(
ご
)
神慮
(
しんりよ
)
かも
知
(
し
)
れない。
028
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
たる
肉体
(
にくたい
)
を
毀損
(
きそん
)
し、
029
神霊
(
しんれい
)
の
籠
(
こも
)
つた
血液
(
けつえき
)
を
無暗
(
むやみ
)
に
体外
(
たいぐわい
)
へ
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
030
決
(
けつ
)
して
正
(
ただ
)
しき
神業
(
しんげふ
)
ではあるまい。
031
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へばバラモンの
教
(
をしへ
)
は
全
(
まつた
)
く
邪教
(
じやけう
)
であらう。
032
嗚呼
(
ああ
)
吾々
(
われわれ
)
も
今迄
(
いままで
)
は
善
(
ぜん
)
と
信
(
しん
)
じて、
033
斯
(
か
)
かる
邪道
(
じやだう
)
に
耽溺
(
たんでき
)
してゐたのではなからうか。
034
バラモン
教
(
けう
)
が
果
(
はた
)
して
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
なれば、
035
鷹鳥姫
(
たかとりひめ
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
す
出征
(
しゆつせい
)
の
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て、
036
斯
(
こ
)
んな
不吉
(
ふきつ
)
なことが
突発
(
とつぱつ
)
する
道理
(
だうり
)
がない。
037
それに
就
(
つい
)
ては
昨夜
(
さくや
)
の
夢
(
ゆめ
)
、
038
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
節
(
ふし
)
が
沢山
(
たくさん
)
にある。
039
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
より
美人
(
びじん
)
を
生
(
う
)
み、
040
極楽
(
ごくらく
)
世界
(
せかい
)
を
拓
(
ひら
)
き、
041
又
(
また
)
鬼
(
おに
)
を
生
(
う
)
み、
042
地獄
(
ぢごく
)
、
043
餓鬼道
(
がきだう
)
、
044
修羅道
(
しゆらだう
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
すると
云
(
い
)
ふ
真理
(
しんり
)
を
悟
(
さと
)
らされた。
045
此処
(
ここ
)
は
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
の
深谷
(
しんこく
)
、
046
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のわが
身魂
(
みたま
)
に
降
(
くだ
)
らせ
給
(
たま
)
うて、
047
斯様
(
かやう
)
な
実地
(
じつち
)
の
教訓
(
けうくん
)
を
御
(
お
)
授
(
さづ
)
け
下
(
くだ
)
さつたのであらう。
048
アヽ
有難
(
ありがた
)
し、
049
勿体
(
もつたい
)
なし、
050
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
051
今迄
(
いままで
)
の
罪
(
つみ
)
を
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
052
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
053
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
念
(
ねん
)
じてゐる。
054
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
傷
(
きず
)
だらけの
顔
(
かほ
)
を
互
(
たがひ
)
に
見合
(
みあは
)
せ、
055
六人
『ヤー、
056
お
前
(
まへ
)
は
如何
(
どう
)
した。
057
オー、
058
貴様
(
きさま
)
もえらい
傷
(
きず
)
だ』
059
と
互
(
たがひ
)
に
叫
(
さけ
)
びながら、
060
金助
(
きんすけ
)
の
前
(
まへ
)
に
期
(
き
)
せずして
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
り、
061
金助
(
きんすけ
)
が
懺悔
(
ざんげ
)
の
独語
(
ひとりごと
)
を
聴
(
き
)
いて
怪
(
あや
)
しみ、
062
首
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
凝視
(
みつ
)
めてゐる。
063
金助
(
きんすけ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
神懸
(
かむがかり
)
状態
(
じやうたい
)
となり、
064
四角
(
しかく
)
張
(
ば
)
つた
肩
(
かた
)
を、
065
なだらかに
地蔵肩
(
ぢざうがた
)
のやうにして
了
(
しま
)
ひ、
066
容貌
(
ようばう
)
も
何
(
なん
)
となく
美
(
うる
)
はしく
一種
(
いつしゆ
)
の
威厳
(
ゐげん
)
を
帯
(
お
)
び
断
(
き
)
れ
断
(
ぎ
)
れに
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つた。
067
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は、
068
六人
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
』
069
と
穴
(
あな
)
の
開
(
あ
)
く
程
(
ほど
)
、
070
金助
(
きんすけ
)
の
顔
(
かほ
)
を
打眺
(
うちなが
)
めて、
071
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふかと
聴耳
(
ききみみ
)
立
(
た
)
てた。
072
金助
(
きんすけ
)
は
口
(
くち
)
をモガモガさせながら、
073
金助
『
天上
(
てんじやう
)
天下
(
てんか
)
唯我
(
ゆゐが
)
独尊
(
どくそん
)
』
074
と
叫
(
さけ
)
んだ。
075
カナンボールは、
076
カナンボール
『オイ
金助
(
きんすけ
)
、
077
ちと
確
(
しつか
)
りせぬかい。
078
たかが
知
(
し
)
れた
魔谷
(
まや
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
山賊
(
さんぞく
)
上
(
あが
)
りのバラモン
信者
(
しんじや
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
079
天上
(
てんじやう
)
天下
(
てんか
)
唯我
(
ゆゐが
)
独尊
(
どくそん
)
もあつたものかい。
080
三十余万
(
さんじふよまん
)
年
(
ねん
)
未来
(
みらい
)
の
印度
(
いんど
)
に
生
(
うま
)
れた
釈尊
(
しやくそん
)
が
運上取
(
うんじやうと
)
りに
来
(
く
)
るぞ。
081
ハア
困
(
こま
)
つた
気違
(
きちが
)
ひが
出来
(
でき
)
たものだ。
082
オイ
銀公
(
ぎんこう
)
、
083
清泉
(
きよいづみ
)
の
水
(
みづ
)
でも
掬
(
すく
)
うて
来
(
き
)
て
顔
(
かほ
)
に
打掛
(
ぶつか
)
けてやれ。
084
まだ
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めぬと
見
(
み
)
えるワイ』
085
銀公
(
ぎんこう
)
『あんな
黒
(
くろ
)
い
水
(
みづ
)
を
掬
(
すく
)
つて
来
(
こ
)
ようものなら、
086
手
(
て
)
も
口
(
くち
)
も、
087
真黒
(
まつくろ
)
けになるぢやないか』
088
カナン『まだ
夢
(
ゆめ
)
の
連続
(
れんぞく
)
を
辿
(
たど
)
つて
居
(
を
)
るのか。
089
よく
目
(
め
)
を
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
よ。
090
水晶
(
すゐしやう
)
のやうな
水
(
みづ
)
が、
091
ただようてゐる』
092
銀公
(
ぎんこう
)
『それでも
貴様
(
きさま
)
、
093
一度
(
いちど
)
真黒
(
まつくろ
)
けの
黒
(
くろ
)
ン
坊
(
ばう
)
に
染
(
そ
)
まつて
了
(
しま
)
つたぢやないか』
094
カナン『それが
夢
(
ゆめ
)
だよ、
095
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
よ。
096
どつこも
黒
(
くろ
)
いところはないぢやないか。
097
貴様
(
きさま
)
は
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いでゐるから、
098
其辺
(
そこら
)
中
(
ぢう
)
が
闇
(
くら
)
く
見
(
み
)
えるのだ。
099
確
(
しつか
)
りせぬかい』
100
と
平手
(
ひらて
)
でピシヤツと
横面
(
よこづら
)
を
撲
(
なぐ
)
つた
途端
(
とたん
)
に、
101
銀公
(
ぎんこう
)
は
初
(
はじ
)
めてパツと
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
き、
102
銀公
『アヽ、
103
矢張
(
やつぱり
)
夢
(
ゆめ
)
だつたかなア』
104
金助
(
きんすけ
)
『
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
夢
(
ゆめ
)
の
浮世
(
うきよ
)
だ、
105
諸行
(
しよぎやう
)
無常
(
むじやう
)
、
106
是生
(
ぜしやう
)
滅法
(
めつぽふ
)
、
107
生滅
(
しやうめつ
)
滅已
(
めつい
)
、
108
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
、
109
如是
(
によぜ
)
我聞
(
がもん
)
、
110
熟々
(
つらつら
)
惟
(
おもんみ
)
るに
宇宙
(
うちう
)
に
独一
(
どくいつ
)
の
真神
(
しんしん
)
あり、
111
之
(
これ
)
を
称
(
しよう
)
して
国祖
(
こくそ
)
国常立
(
くにとこたちの
)
尊
(
みこと
)
と
曰
(
い
)
ふ。
112
汝
(
なんぢ
)
一切
(
いつさい
)
の
衆生
(
しゆじやう
)
、
113
わが
金言
(
きんげん
)
玉辞
(
ぎよくじ
)
を
聴聞
(
ちやうもん
)
せよ。
114
南無
(
なむ
)
無尽意
(
むじんい
)
菩薩
(
ぼさつ
)
の
境地
(
きやうち
)
に
立
(
た
)
ち、
115
三界
(
さんかい
)
の
理法
(
りはふ
)
を
説示
(
せつじ
)
する
妙音
(
めうおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
が
善言
(
ぜんげん
)
美詞
(
びし
)
ゆめゆめ
疑
(
うたが
)
ふ
勿
(
なか
)
れ。
116
風
(
かぜ
)
は
自然
(
しぜん
)
の
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
そう
)
し、
117
宇宙
(
うちう
)
万有
(
ばんいう
)
惟神
(
かむながら
)
にして
舞踏
(
ぶたふ
)
す。
118
天地間
(
てんちかん
)
一物
(
いちぶつ
)
として
真
(
しん
)
ならざるはなし。
119
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
120
帰命
(
きみやう
)
頂礼
(
ちやうらい
)
。
121
天上
(
てんじやう
)
三体
(
さんたい
)
の
神人
(
しんじん
)
の
前
(
まへ
)
に
赤心
(
せきしん
)
を
捧
(
ささ
)
げ、
122
心身
(
しんしん
)
を
清浄
(
せいじやう
)
潔白
(
けつぱく
)
にして
幽玄
(
いうげん
)
微妙
(
びめう
)
の
真理
(
しんり
)
を
聴聞
(
ちやうもん
)
せよ。
123
吾
(
われ
)
は
三界
(
さんかい
)
に
通
(
つう
)
ずる
宇宙
(
うちう
)
の
関門
(
くわんもん
)
普賢
(
ふげん
)
聖至
(
せいし
)
の
再来
(
さいらい
)
、
124
今
(
いま
)
は
最勝妙
(
さいしようめう
)
如来
(
によらい
)
、
125
三十三相
(
さんじふさんさう
)
顕現
(
けんげん
)
して
観
(
くわん
)
自在天
(
じざいてん
)
となり、
126
阿弥陀
(
あみだ
)
如来
(
によらい
)
の
分身
(
ぶんしん
)
閻魔
(
えんま
)
大王
(
だいわう
)
地蔵尊
(
ぢざうそん
)
、
127
神息
(
しんそく
)
総統
(
そうとう
)
弥勒
(
みろく
)
最勝妙
(
さいしようめう
)
如来
(
によらい
)
と
顕現
(
けんげん
)
す。
128
微妙
(
びめう
)
の
教旨
(
けうし
)
古今
(
ここん
)
を
絶
(
ぜつ
)
し、
129
東西
(
とうざい
)
を
貫
(
つらぬ
)
く。
130
穴
(
あな
)
かしこ、
131
穴
(
あな
)
かしこ、
132
ウンウン』
133
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り
身体
(
からだ
)
を
二三尺
(
にさんじやく
)
空中
(
くうちう
)
に
巻揚
(
まきあ
)
げ、
134
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
美
(
うる
)
はしき
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
135
山上
(
さんじやう
)
目蒐
(
めが
)
けて
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
136
其
(
そ
)
の
審
(
いぶか
)
しさにスマート、
137
カナン
其
(
その
)
他
(
た
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
後
(
あと
)
見届
(
みとど
)
けむと
尻
(
しり
)
ひつからげ、
138
荊蕀
(
けいきよく
)
茂
(
しげ
)
る
谷道
(
たにみち
)
に
脚
(
あし
)
を
引掻
(
ひつか
)
きながら、
139
山
(
やま
)
の
頂
(
いただき
)
指
(
さ
)
して
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
140
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
の
頂
(
いただき
)
に
登
(
のぼ
)
り
着
(
つ
)
いた。
141
金助
(
きんすけ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
黄金像
(
わうごんざう
)
となり、
142
紫磨
(
しま
)
黄金
(
わうごん
)
の
膚
(
はだ
)
美
(
うる
)
はしく、
143
葡萄
(
ぶだう
)
の
冠
(
かむり
)
を
戴
(
いただ
)
きながら、
144
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れたる
五色
(
ごしき
)
の
花
(
はな
)
の
上
(
うへ
)
に
安坐
(
あんざ
)
してゐた。
145
銀公
(
ぎんこう
)
『ヤー
此奴
(
こいつ
)
は
金助
(
きんすけ
)
によく
似
(
に
)
て
居
(
を
)
るぞ。
146
金助
(
きんすけ
)
は
其
(
その
)
名
(
な
)
の
如
(
ごと
)
く、
147
全部
(
ぜんぶ
)
黄金
(
わうごん
)
に
化
(
な
)
つて
了
(
しま
)
ひよつた。
148
オイ
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
、
149
これだけ
黄金
(
わうごん
)
があれば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
150
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
が
棒
(
ぼう
)
を
作
(
つく
)
つて
帰
(
かへ
)
り、
151
分解
(
ぶんかい
)
して
各自
(
めいめい
)
に
吾
(
わが
)
家
(
や
)
の
財産
(
ざいさん
)
とすれば
大
(
たい
)
したものだぞ』
152
鉄
(
てつ
)
『まだそれでも
目
(
め
)
がギヨロギヨロ
廻転
(
くわいてん
)
し、
153
口
(
くち
)
がパクツイてゐるぢやないか。
154
こんな
未成品
(
みせいひん
)
を
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
つたところで、
155
中心
(
なか
)
まで
化石
(
くわせき
)
否
(
いな
)
化金
(
くわきん
)
してゐない。
156
暫
(
しば
)
らく
時機
(
じき
)
を
待
(
ま
)
つて、
157
うまく
固
(
かた
)
まるまで
捨
(
す
)
てて
置
(
お
)
かうぢやないか』
158
カナン『
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
らなくちや、
159
鷹鳥姫
(
たかとりひめ
)
の
部下
(
ぶか
)
に
占領
(
せんりやう
)
されて
仕舞
(
しま
)
ふ
虞
(
おそ
)
れがある。
160
コリヤ
魔谷
(
まや
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
或
(
ある
)
地点
(
ちてん
)
まで
担
(
かつ
)
いで
往
(
ゆ
)
かう。
161
さア、
162
早
(
はや
)
く
用意
(
ようい
)
をせい』
163
熊
(
くま
)
、
164
蜂
(
はち
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
携
(
たづさ
)
へ
持
(
も
)
つた
鎌
(
かま
)
にて
手頃
(
てごろ
)
の
木
(
き
)
を
伐
(
き
)
り
棒
(
ぼう
)
を
作
(
つく
)
つてゐる。
165
スマートボールは
此
(
こ
)
の
坐像
(
ざざう
)
の
周囲
(
しうゐ
)
をクルクル
廻
(
めぐ
)
り、
166
指頭
(
しとう
)
を
以
(
も
)
つて
抑
(
おさ
)
へながら、
167
カナンボール
『ヤーまだ
少
(
すこ
)
し
温味
(
あたたかみ
)
があり、
168
血
(
ち
)
が
通
(
かよ
)
うてゐるやうだ。
169
こんな
化物
(
ばけもの
)
を
迂濶
(
うつか
)
り
担
(
かつ
)
ぎ
込
(
こ
)
まうものなら、
170
どんな
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
るかも
知
(
し
)
れない。
171
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
172
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
帰
(
かへ
)
らうぢやないか』
173
金
(
きん
)
の
像
(
ざう
)
(金助の像)
『
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
は
執着心
(
しふちやくしん
)
の
最
(
もつと
)
も
旺盛
(
さかん
)
な
奴輩
(
やつども
)
ぢや。
174
この
金助
(
きんすけ
)
が
化体
(
くわたい
)
を
一部
(
いちぶ
)
たりとも
動
(
うご
)
かせるものなら
動
(
うご
)
かして
見
(
み
)
よ。
175
宇宙
(
うちう
)
の
関門
(
くわんもん
)
最勝妙
(
さいしようめう
)
如来
(
によらい
)
が
坐禅
(
ざぜん
)
の
姿勢
(
しせい
)
、
176
本来
(
ほんらい
)
無一物
(
むいちぶつ
)
、
177
色即
(
しきそく
)
是空
(
ぜくう
)
、
178
空即
(
くうそく
)
是色
(
ぜしき
)
、
179
一念
(
いちねん
)
三千
(
さんぜん
)
、
180
三千
(
さんぜん
)
一念
(
いちねん
)
の
宇宙
(
うちう
)
の
理法
(
りはふ
)
を
知
(
し
)
らざるか。
181
娑婆
(
しやば
)
の
亡者
(
まうじや
)
共
(
ども
)
、
182
吾
(
われ
)
こそは
今迄
(
いままで
)
の
匹夫
(
ひつぷ
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
有
(
いう
)
する
金助
(
きんすけ
)
に
非
(
あら
)
ず、
183
紫磨
(
しま
)
黄金
(
わうごん
)
の
膚
(
はだへ
)
と
化
(
くわ
)
したる
三界
(
さんかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
であるぞよ』
184
カナン『ヤー
愈
(
いよいよ
)
怪
(
あや
)
しくなつて
来
(
き
)
た。
185
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬことを
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
したぞ。
186
オイ
金助
(
きんすけ
)
、
187
モツト
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
耳
(
みみ
)
にもわかるやうに
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ』
188
金助の像
『
宇宙
(
うちう
)
一切
(
いつさい
)
、
189
可解
(
かかい
)
不可解
(
ふかかい
)
、
190
凡耳
(
ぼんじ
)
不徹底
(
ふてつてい
)
、
191
凡眼
(
ぼんがん
)
不可視
(
ふかし
)
』
192
カナンボール
『ますます
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らないことを
云
(
い
)
ふぢやないか。
193
オイ
金州
(
きんしう
)
、
194
洒落
(
しやれ
)
ない。
195
貴様
(
きさま
)
は
何故
(
なぜ
)
元
(
もと
)
の
金助
(
きんすけ
)
に
還元
(
くわんげん
)
せないのだ。
196
何程
(
なにほど
)
貴
(
たふと
)
い
黄金像
(
わうごんざう
)
になつて
見
(
み
)
たところで、
197
身体
(
からだ
)
の
自由
(
じいう
)
が
利
(
き
)
かねば
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか』
198
金助の像
『
如
(
じよ
)
不動
(
ふどう
)
即
(
そく
)
動是
(
どうし
)
、
199
如
(
じよ
)
不言
(
ふげん
)
即
(
そく
)
言是
(
げんし
)
、
200
如
(
じよ
)
不聴
(
ふちやう
)
即
(
そく
)
聴是
(
ちやうし
)
、
201
顕幽
(
けんいう
)
一貫
(
いつくわん
)
善悪
(
ぜんあく
)
不二
(
ふじ
)
、
202
表裏
(
へうり
)
一体
(
いつたい
)
、
203
即身
(
そくしん
)
即仏
(
そくぶつ
)
即凡夫
(
そくぼんぷ
)
』
204
カナンボール
『ますます
分
(
わか
)
らぬことを
言
(
い
)
ひやがる。
205
オイこんな
代物
(
しろもの
)
にお
相手
(
あひて
)
をしてゐたら、
206
莫迦
(
ばか
)
にしられるぞ。
207
モー
帰
(
かへ
)
らうぢやないか』
208
銀公
(
ぎんこう
)
『これが
見捨
(
みす
)
てて
帰
(
かへ
)
られようか、
209
宝
(
たから
)
の
山
(
やま
)
に
入
(
い
)
りながら
一物
(
いちもつ
)
も
得
(
え
)
ずして
裸体
(
はだか
)
で
帰
(
かへ
)
ると
云
(
い
)
ふのは
此
(
こ
)
の
事
(
こと
)
だ。
210
何処
(
どこ
)
までも
荒魂
(
あらみたま
)
の
勇
(
ゆう
)
を
鼓
(
こ
)
し、
211
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
が
協心
(
けふしん
)
戮力
(
りくりよく
)
此
(
こ
)
の
黄金像
(
わうごんざう
)
を
魔谷
(
まや
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
偲
(
しのぶ
)
ケ
淵
(
ふち
)
迄
(
まで
)
伴
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かう。
212
サア、
213
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
214
一
(
ひい
)
二
(
ふう
)
三
(
みつ
)
だ』
215
と
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
よりバラバラと
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
りつく。
216
金像
(
きんざう
)
は
一
(
ひと
)
つ
身慄
(
みぶる
)
ひをするよと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
217
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
は
暴風
(
ばうふう
)
に
蚊軍
(
ぶんぐん
)
の
散
(
ち
)
るが
如
(
ごと
)
く、
218
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
目
(
め
)
にとまらぬ
許
(
ばか
)
りの
急速度
(
きふそくど
)
を
以
(
もつ
)
て
飛散
(
ひさん
)
して
了
(
しま
)
つた。
219
金像
(
きんざう
)
は
体内
(
たいない
)
より
鮮光
(
せんくわう
)
を
放射
(
はうしや
)
し、
220
微妙
(
びめう
)
の
霊音
(
れいおん
)
を
響
(
ひび
)
かせながら、
221
ムクムクと
動
(
うご
)
き
始
(
はじ
)
めた。
222
忽
(
たちま
)
ち
三丈
(
さんぢやう
)
三尺
(
さんじやく
)
の
立像
(
りつざう
)
と
変
(
へん
)
じ、
223
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
の
山頂
(
さんちやう
)
にスツクと
立
(
た
)
ち、
224
南面
(
なんめん
)
して
瀬戸
(
せと
)
の
海
(
うみ
)
を
瞰下
(
かんか
)
し、
225
両眼
(
りやうがん
)
より
日月
(
じつげつ
)
の
光明
(
くわうみやう
)
を
放射
(
はうしや
)
し
始
(
はじ
)
めた。
226
鷹鳥山
(
たかとりやま
)
は
暗夜
(
あんや
)
と
雖
(
いへど
)
も
光明
(
くわうみやう
)
赫灼
(
かくしやく
)
として、
227
数十
(
すうじふ
)
里
(
り
)
の
彼方
(
かなた
)
より
雲
(
くも
)
を
通
(
とほ
)
して
其
(
そ
)
の
光輝
(
くわうき
)
を
見
(
み
)
ることを
得
(
う
)
るに
至
(
いた
)
つた。
228
これ
果
(
はた
)
して
何神
(
なにがみ
)
の
憑依
(
ひようい
)
し
給
(
たま
)
ひしものぞ。
229
説
(
と
)
き
来
(
きた
)
り
説
(
と
)
き
去
(
さ
)
るに
随
(
したが
)
つて、
230
其
(
そ
)
の
真相
(
しんさう
)
を
不知
(
しらず
)
不識
(
しらず
)
の
間
(
あひだ
)
に
窺知
(
きち
)
することを
得
(
う
)
るであらう。
231
(
大正一一・五・二六
旧四・三〇
外山豊二
録)
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