霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一九章 (やま)(うみ)〔七一一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第5篇 神界経綸 よみ(新仮名遣い):しんかいけいりん
章:第19章 山と海 よみ(新仮名遣い):やまとうみ 通し章番号:711
口述日:1922(大正11)年05月28日(旧05月02日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
佐田彦は玉を入れた箱をかつぎ、玉能姫はバラモン教徒の目をくらますために、気違いの真似をして駆けて行った。
バラモン教徒たちは途中で玉を奪おうと待ち構えていたが、玉能姫の演技に気づかずに見過ごしてしまった。一行は高砂の浜辺で漁師から舟を買うと、神島さして漕ぎ出した。
浜辺にいたときは暴風により海が荒れていたが、一行が漕ぎ出すと不思議にも暴風は止んでしまい、みるみる島に着いた。初稚姫と玉能姫が神島の山頂に着くと、五人の童子と三人の童女が現れて、黄金の鍬で固い岩石を掘ってしまった。
初稚姫は、童子・童女たちに向かって厳の大神様・瑞の大神様と呼びかけ、言依別命の命によって神玉を無事に持って来たことを伝えた。
童子と童女は玉箱を受け取ると、掘った穴の中に消えてしまった。二人が穴をのぞくと、二つの玉箱が微妙の音声と鮮光を放っていた。二人は童子・童女が残した黄金の鍬で穴を埋め、あたりの小松をその上に植えて祝詞を奏上し、山を下った。
佐田彦と波留彦は帰ってきた二人に、せめて埋めた後を拝ませて欲しいと願い出た。初稚姫と玉能姫は黙って首を横に振るだけだった。すると雷のような声が、すぐに立ち去れ、と佐田彦・波留彦を戒めた。
一行は神島を後にして去っていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-06-16 18:46:40 OBC :rm2219
愛善世界社版:263頁 八幡書店版:第4輯 477頁 修補版: 校定版:271頁 普及版:121頁 初版: ページ備考:
001 佐田彦(さだひこ)腰帯(こしおび)()き、002幾重(いくへ)にも(つつ)みたる玉函(たまばこ)をクルクルと両端(りやうはし)(つつ)み、003(かた)ふわり引掛(ひつか)()るやうに荷造(にづく)りした。004波留彦(はるひこ)(おどろ)いて、
005波留彦『コリヤ佐田彦(さだひこ)006大切(たいせつ)()神宝(しんぱう)を、007(なん)だ、008貴様(きさま)(はだ)につけた穢苦(むさくるし)三尺帯(さんしやくおび)(つつ)むと()ふことがあるか、009(たま)威徳(ゐとく)(けが)すと()ふことを心得(こころえ)ぬか。010さうして()(ざま)(なん)だ。011帯除(おびと)裸体(はだか)になつて、012みつともないぞ』
013佐田彦(さだひこ)『お(まへ)(おび)(たて)引裂(ひつさ)いて、014半分(はんぶん)()れなければ仕方(しかた)がない。015藤蔓(ふぢづる)でもちぎつて(おび)にしよう』
016波留彦『エー、017そんなことして道中(だうちう)出来(でき)るか、018みつともない。019自分(じぶん)(おび)自分(じぶん)がして()け。020神玉(しんぎよく)()威徳(ゐとく)(けが)すぞよ』
021佐田彦『イヤ波留彦(はるひこ)022さうでないよ。023(この)(やま)(つづ)きは随分(ずゐぶん)バラモンの連中(れんちう)徘徊(はいくわい)してゐるから、024貴重品(きちようひん)()せかけて(ねら)はれてはならぬ。025幾重(いくへ)にも(つつ)んだ宝玉(ほうぎよく)026滅多(めつた)(けが)れる気遣(きづか)ひはない。027()うして()かねば剣呑(けんのん)だから』
028波留彦如何(いか)剣呑(けんのん)だと()つて、029そりや(あま)りぢやないか』
030佐田彦万劫(まんがふ)末代(まつだい)一度(いちど)大切(たいせつ)御用(ごよう)だ。031二度目(にどめ)岩戸(いはと)(びら)きの瑞祥(ずゐしやう)(しゆく)するため、032言依別(ことよりわけ)(さま)(この)再度山(ふたたびやま)山頂(さんちやう)で、033二度(にど)とない結構(けつこう)御用(ごよう)(あふ)せつけられたのだ。034失策(しくじ)つては大変(たいへん)だから、035()うして()くが安全(あんぜん)だよ』
036 波留彦(はるひこ)は、
037波留彦『なんだか勿体(もつたい)ないやうな心持(こころもち)がするのだ。038(しか)(なが)肝腎(かんじん)(たから)(てき)()られては一大事(いちだいじ)だから、039そんならお(まへ)()(とほ)りにして()かう。040サア、041(おれ)(おび)半分(はんぶん)やらう』
042(たて)真中(まんなか)からバリバリと引裂(ひきさ)いて佐田彦(さだひこ)(わた)した。043佐田彦(さだひこ)は、
044佐田彦『イヤ、045有難(ありがた)う。046これで(しつ)かり腹帯(はらおび)(しま)つて()た。047(しか)(なが)玉能姫(たまのひめ)さま、048初稚姫(はつわかひめ)さま、049貴女(あなた)(がた)はそんな綺麗(きれい)服装(ふくさう)()(いで)になつては、050悪漢(わるもの)(あと)をつけられては(つま)りませぬよ、051(なん)とか工夫(くふう)をなさいませ』
052玉能姫(たまのひめ)『ハイ、053吾々(われわれ)二人(ふたり)着物(きもの)裏向(うらむ)けに()て、054気違(きちが)ひの真似(まね)をして(まゐ)りませう』
055佐田彦(さだひこ)『ヤー、056それは妙案(めうあん)だ。057流石(さすが)玉能姫(たまのひめ)(さま)だ。058サアサア、059佐田彦(さだひこ)着替(きか)へさして()げませう』
060()(あが)らむとするを玉能姫(たまのひめ)061初稚姫(はつわかひめ)(くび)左右(さいう)()り、
062玉能姫(たまのひめ)『イエイエ、063滅相(めつさう)な、064(わたし)玉能姫(たまのひめ)065自分(じぶん)のことは自分(じぶん)処置(しよち)をつけねばなりませぬ』
066()ひつつ、067クルクルと(おび)()き、068裏向(うらむ)けに着物(きもの)着替(きか)へて(しま)つた。
069 初稚姫(はつわかひめ)(また)着物(きもの)()がうとするを、070玉能姫(たまのひめ)(すこ)(くび)(かたむ)け、
071玉能姫一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい。072気違(きちが)ひが二人(ふたり)もあつては(かへ)つて(うたが)はれるかも()れませぬから、073貴方(あなた)気違(きちが)ひの(むすめ)になつて(くだ)さい』
074初稚姫(はつわかひめ)『そんなら気違(きちが)ひのお(かあ)さま。075サア、076何処(どこ)なつと(まゐ)りませう』
077玉能姫(たまのひめ)『オイ佐田公(さだこう)078波留公(はるこう)079貴様(きさま)何処(どこ)(やつ)だ。080余程(よつぽど)()いヒヨツトコ野郎(やらう)だな』
081佐田彦(さだひこ)『これはしたり、082玉能姫(たまのひめ)さま、083姫御前(ひめごぜ)のあられもない、084(なん)()(あら)いことを仰有(おつしや)りますか』
085玉能姫()らぬ()らぬ、086アーア、087()んなヒヨツトコ野郎(やらう)莫迦者(ばかもの)道伴(みちづ)れになるかと(おも)へば残念(ざんねん)だ。088()(くる)ひさうだ』
089波留彦玉能姫(たまのひめ)さま、090(いま)から気違(きちが)ひになつて(もら)つては波留彦(はるひこ)(たま)りませぬで』
091玉能姫伊勢(いせ)()()つ、092()伊勢(いせ)()つ。093大根(だいこん)役者(やくしや)(たま)()つ、094コリヤコリヤコリヤ』
095佐田彦(さだひこ)玉能姫(たまのひめ)さま、096洒落(しやれ)()加減(かげん)になさいませな。097これから()沢山(たくさん)道程(みちのり)098(いま)から気違(きちが)ひの真似(まね)して()つては(たま)りませぬで』
099玉能姫『なに、100(わらは)気違(きちが)ひとな。101エー残念(ざんねん)だ。102バラモン(けう)(おい)()(ひと)ありと(きこ)えたる鬼熊別(おにくまわけ)(つま)103蜈蚣姫(むかでひめ)とはわが(こと)なるぞ。104(なんぢ)三五教(あななひけう)腰抜(こしぬけ)宣伝使(せんでんし)105この蜈蚣姫(むかでひめ)(しり)でも(くら)へ。106残念(ざんねん)なか、107口惜(くや)しいか。108あの(つま)らぬさうな顔付(かほつき)ワイの。109オホヽヽヽ』
110(へそ)(かか)へて(わら)()ける。
111佐田彦(さだひこ)『アー、112仕方(しかた)がないなア、113あんまり(うれ)しうて玉能姫(たまのひめ)さまは本当(ほんたう)逆上(のぼ)せて(しま)つたのだらうかなア、114波留公(はるこう)
115玉能姫(たまのひめ)(さだ)めて逆上(のぼ)せたのであらう。116逆上(のぼ)()つた蜈蚣姫(むかでひめ)再来(さいらい)が、117(まへ)(あたま)をポカンと波留彦(はるひこ)だ』
118()ひながら波留彦(はるひこ)横面(よこづら)をピシヤピシヤと(なぐ)り、
119玉能姫『アハヽヽヽ』
120(はら)(かか)へて(わら)()ける。
121波留彦(はるひこ)『なんぼ(をんな)にはられて気分(きぶん)()いと()つても、122(じるし)(なぐ)られて(たま)るものか。123さア()きませう、124玉能姫(たまのひめ)さま、125(しつ)かりなさいませ』
126玉能姫(たまのひめ)『ホヽヽ、127(わし)玉能姫(たまのひめ)ぢやないよ、128狸姫(たぬきひめ)だよ』
129波留彦(はるひこ)『エー、130怪体(けたい)(わる)い、131肝腎(かんじん)()神業(しんげふ)最中(さいちう)やくたいだなア。132初稚姫(はつわかひめ)さま、133ちつと(しつ)かり()つて()かして(くだ)さいな。134コリヤ本当(ほんたう)逆上(のぼ)せて()ますで』
135初稚姫(はつわかひめ)『お(かあ)さま、136()きませう』
137とすがり()()()()(はな)し、
138玉能姫『エー、139(まへ)(まで)(わし)気違(きちが)ひと(おも)つて()るのかい。140アヽ(けが)らはしい。141()んな(ところ)には一時(いつとき)()れない』
142(ふた)つの(たま)(つつ)んだ(おび)(かた)()つかけ、143山伝(やまづた)ひに(くも)(かすみ)(はし)()く。
144 初稚姫(はつわかひめ)()けず(おと)らず、145玉能姫(たまのひめ)(あと)(したが)()(ごと)(はし)()く。146佐田彦(さだひこ)147波留彦(はるひこ)()げられては大変(たいへん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(あと)()ふ。148何時(いつ)()にか玉能姫(たまのひめ)149初稚姫(はつわかひめ)姿(すがた)()えなくなつた。
150佐田彦(さだひこ)『オイ、151波留彦(はるひこ)152大変(たいへん)なことが(おこ)つたものぢやないか』
153波留彦貴様(きさま)(しつか)(にぎ)つて()らぬから、154到頭(たうとう)(たぬき)(うつ)りやがつて()つて()んで(しま)つたのだい。155アヽもう仕方(しかた)がない、156(かみ)(さま)申訳(まをしわけ)がない。157(この)絶壁(ぜつぺき)から()(わけ)のために()()げて()んで(しま)はうかい』
158佐田彦『さうだと()つて、159そんな(こと)をすれば益々(ますます)神界(しんかい)(つみ)だよ』
160心配(しんぱい)さうに(くや)んでゐる。
161 (むか)ふの()(しげ)みから、
162玉能姫『オーイ、163波留彦(はるひこ)さま、164佐田彦(さだひこ)さま、165此処(ここ)だよ此処(ここ)だよ』
166玉能姫(たまのひめ)()んでゐる。
167波留彦(はるひこ)『ヤア、168在処(ありか)(わか)つた。169気違(きちが)()170あの禿()げた(やま)(よこ)小松(こまつ)(した)(かほ)だけ()してゐよる、171(おもて)から()くと(また)()げられては大変(たいへん)だ。172(まは)(みち)をしてそつと(つか)まへようかい』
173二人(ふたり)山路(やまみち)(はづ)し、174()(しげ)みの(なか)蜘蛛(くも)()()つかかりながら、175(やうや)玉能姫(たまのひめ)間近(まぢか)()つた。
176玉能姫(たまのひめ)『あの二人(ふたり)()(かた)177よう()(くだ)さんした。178たまたま御用(ごよう)(あふ)せつけられながら、179玉能姫(たまのひめ)(たま)()られて(たま)らぬだらう。180さアさア初稚姫(はつわかひめ)さま、181あんなヒヨツトコ野郎(やらう)(かま)はず()きませうよ。182ホヽヽヽ』
183嘲笑(あざわら)ひと(とも)()()(ごと)く、184(また)もや一目散(いちもくさん)()(しげ)みを()けて、185何処(どこ)へか姿(すがた)(かく)した。186二人(ふたり)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()ひかける。187初稚姫(はつわかひめ)(はか)らひで処々(ところどころ)小柴(こしば)()つて(しるし)がしてある。
188佐田彦(さだひこ)『ヤア、189流石(さすが)初稚姫(はつわかひめ)さまだ。190子供(こども)似合(にあ)はぬ()智慧(ちゑ)()たものだ。191(おれ)(たち)(これ)合図(あひづ)()いと()つて、192小柴(こしば)所々(ところどころ)()つて(しるし)をつけて(おい)(くだ)さつた。193オイ、194(これ)(たづ)ねて(はし)らうぢやないか、195のう波留彦(はるひこ)
196波留彦『オーさうだ』
197二人(ふたり)捩鉢巻(ねぢはちまき)しながら、198小柴(こしば)()れを目標(めあて)()ひかけて()く。
199 鷹鳥(たかとり)(だけ)山麓(さんろく)松林(まつばやし)七八(しちはち)(にん)(をとこ)200胡床(あぐら)()車座(くるまざ)になつて、201ひそびそ(ばなし)(ふけ)つてゐる。
202(かふ)『オイ、203大変(たいへん)(つよ)(をんな)もあればあるものぢやないか。204(おれ)(たち)兄分(あにぶん)のスマートボールやカナンボールを()もなく滝壺(たきつぼ)()()み、205(あま)つさへ(おれ)(たち)谷底(たにそこ)()()みやがつて、206(この)(とほ)(いた)()()はせ、207終局(しまひ)(はて)には蜈蚣姫(むかでひめ)教主(けうしゆ)(さま)まで、208あんな()()はせよつた。209彼奴(あいつ)(なん)でも(えら)(かみ)(さま)再来(さいらい)かも()れないよ』
210(おつ)『なアに、211彼奴(あいつ)玉能姫(たまのひめ)()つて鷹鳥山(たかとりやま)鷹鳥姫(たかとりひめ)(はした)()となり、212清泉(きよいづみ)水汲(みづくみ)をやつて()つた(やつ)だ。213あの(とき)此方(こちら)(をんな)子供(こども)(おも)つて油断(ゆだん)をして()たから、214あんな不覚(ふかく)()つたのだ。215(いづ)此辺(ここら)迂路(うろ)ついて()るかも()れない。216なんでも彼奴(あいつ)(つか)まへて三五教(あななひけう)(たから)在処(ありか)白状(はくじやう)させ、217バラモン(けう)占領(せんりやう)せねば、218到底(たうてい)(この)自転倒(おのころ)(じま)(おい)ては(おれ)(たち)教派(けうは)(ひろ)まらない、219なんとかして、220まア一度(いちど)彼奴(あいつ)行方(ゆくへ)(たづ)ね、221目的(もくてき)(たつ)したいものだ』
222(へい)『そんな(あぶ)ないことは()しにせエ。223生命(いのち)あつての物種(ものだね)だ。224蜈蚣姫(むかでひめ)さまでさへも彼奴(あいつ)乾児(こぶん)がやつて()て、225谷底(たにそこ)()()げたやうな強力(がうりき)()いてゐるから、226うつかり手出(てだ)しは出来(でき)ないよ』
227(かふ)『ちよろ(くさ)いことを()ふな。228計略(けいりやく)(もつ)(うま)引張(ひつぱ)()めば(なん)でもない。229(おれ)(ひと)智慧(ちゑ)()してやらう』
230(へい)『どうすると()ふのだい』
231(かふ)貴様(きさま)()二三(にさん)(にん)(おれ)一緒(いつしよ)(をんな)()けて鷹鳥山(たかとりやま)()()み、232三五教(あななひけう)求道者(きうだうしや)となつて誤魔化(ごまくわ)すのだ』
233(おつ)貴様(きさま)(つら)では(をんな)変装(へんさう)したつて到底(たうてい)駄目(だめ)だよ。234貴様(きさま)変装(へんさう)したら、235それこそ鬼婆(おにばば)()えて仕舞(しま)ふぞ』
236(かふ)鬼婆(おにばば)でも、237鬼爺(おにぢぢ)()えなければ()いぢやないか。238それで完全(くわんぜん)(をんな)になつたのだ。239善悪(ぜんあく)美醜(びしう)()ふところに(あら)ず。240(おれ)皺苦茶(しわくちや)(ばあ)さまになつて()()むから、241貴様(きさま)皺苦茶(しわくちや)(ぢぢ)になつて、242(つゑ)でもついて(こし)(かが)め、243(おれ)(あと)()いて()い』
244(おつ)『いつその(こと)245堂々(だうだう)(をとこ)求道者(きうだうしや)になつて()つたらどうだ』
246(へい)『そんな悪相(あくさう)(つら)をして()かうものなら、247(たちま)看破(かんぱ)されて(しま)ふぜ』
248 ()雑談(ざつだん)(ふけ)(をり)しも、249(むか)ふの(はう)より一人(ひとり)(をんな)250(なに)(かた)()つかけ、251(かみ)()(みだ)し、252衣服(きもの)裏向(うらむ)けに()ながら、253(をんな)似合(にあ)はず大股(おほまた)にトントンと此方(こなた)(むか)つて()る。
254 (しち)(さい)ばかりの少女(せうぢよ)は、
255少女(初稚姫)『お(かあ)さま お(かあ)さま』
256連呼(れんこ)しながら(あと)()ひかけ(きた)る。257(また)もや(つづ)いて二人(ふたり)荒男(あらをとこ)
258二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイオーイ。259()つた()つた』
260一生(いつしやう)懸命(けんめい)(いき)(はづ)ませ(すす)(きた)る。
261(かふ)『アリヤ(なん)だ、262あた(いや)らしい。263(かみ)()(みだ)着物(きもの)裏向(うらむ)けに()やがつて、264(ふんどし)(なん)だか(いし)のやうなものを(つつ)んで(はし)つて()るぢやないか。265彼奴(あいつ)てつきり気違(きちが)ひだよ。266気違(きちが)ひに()ぶりつかれでもしたら、267まるで(いぬ)()はれたやうなものだ。268オイ、269(みな)(やつ)270すつこめ すつこめ』
271一同『よし()た』
272(はやし)(くさ)(なか)(ちひ)さくなつて(よこ)たはる。273その(まへ)()まむ(ばか)りに玉能姫(たまのひめ)274初稚姫(はつわかひめ)は、
275玉能姫、初稚姫『キヤア キヤア』
276金切声(かなきりごゑ)()()げながら(とほ)つて()く。277二人(ふたり)(をとこ)(あせ)()らし、
278二人の男(佐田彦、波留彦)『オーイ、279気違(きちが)()つた』
280(また)もや一生(いつしやう)懸命(けんめい)西方(せいはう)()して(すす)()く。281一同(いちどう)はやうやう(あたま)()げ、
282(かふ)『ヤー何処(どこ)(やつ)()らぬが、283女房(にようばう)()(くる)つたと()えて、284(えら)(いきほひ)()ひかけて()きよつた。285可愛相(かはいさう)に、286あんな(むすめ)がある(なか)で、287女房(にようばう)発狂(はつきやう)されては(たま)つたものぢやない。288(しか)しなかなか別嬪(べつぴん)らしかつたぢやないか』
289(おつ)『さうだなア、290可愛相(かはいさう)なものだ。291(さき)()つたのはあれの(おやじ)だらう。292(あと)から()(やつ)はヒヨツとしたら下男(げなん)かなんかだらうよ。293(なに)()もあれ、294どえらい(いきほひ)だつた。295まるきり夜叉(やしや)明王(みやうわう)()(くる)うたやうな(いきほひ)だ。296マアマア(おれ)(たち)無事(ぶじ)()通過(つうくわ)(ねが)うて(さいは)ひだつた』
297(はな)してゐる。298(しば)らくすると蜈蚣姫(むかでひめ)は、299スマートボール、300カナンボール(その)()拾数(じふすう)(にん)部下(ぶか)引連(ひきつ)れ、301一生(いつしやう)懸命(けんめい)(この)()()(きた)り、302五六(ごろく)(にん)姿(すがた)()て、
303蜈蚣姫『オイ、304(まへ)信州(しんしう)305播州(ばんしう)306芸州(げいしう)連中(れんちう)ぢやないか。307なにして()る。308(いま)此処(ここ)玉能姫(たまのひめ)(とほ)つた(はず)だがお(まへ)()らぬか』
309信州(しんしう)最前(さいぜん)から此処(ここ)一服(いつぷく)して()ましたが、310玉能姫(たまのひめ)のやうな(やつ)()つから(とほ)りませぬで。311(かみ)()(みだ)した気違(きちがひ)がキヤアキヤア()つて(とほ)つたばかり、312(あと)から(おやじ)可愛相(かはいさう)(あせ)をブルブルに()いて()つかけて()きました』
313蜈蚣姫『どうしても此処(ここ)(とほ)らにやならぬ(はず)だが、314ハテ不思議(ふしぎ)だなア。315それなら大方(おほかた)杢助館(もくすけやかた)へでも(まは)つたのだらう。316一体(いつたい)何処(どこ)()きよるのか。317(みな)(やつ)318()うしては()られない。319再度山(ふたたびやま)山麓(さんろく)320生田(いくた)(もり)引返(ひきかへ)せ』
321(あわただ)しく()ばはつた。322スマートボールを先頭(せんとう)全隊(ぜんたい)引率(ひきつ)れて、323(ひがし)()して一生(いつしやう)懸命(けんめい)バラバラと(はし)()く。
324 (こずゑ)(わた)松風(まつかぜ)(おと)325刻々(こくこく)(はげ)しくなり、326瀬戸(せと)(うみ)(なみ)山嶽(さんがく)(ごと)(たけ)(くる)うてゐる。327玉能姫(たまのひめ)328初稚姫(はつわかひめ)漸々(やうやう)にして高砂(たかさご)(もり)()いた。329四辺(あたり)(ひと)なきを(さいは)ひ、330(みだ)(がみ)()()げ、331(かほ)立派(りつぱ)(つくろ)ひ、332着物(きもの)()()へ、333(もと)玉能姫(たまのひめ)となつて(しま)つた。334(いき)()()つて(はし)(きた)つた佐田彦(さだひこ)335波留彦(はるひこ)()姿(すがた)()て、
336佐田彦(さだひこ)『ヤー、337玉能姫(たまのひめ)さま、338()がつきましたか。339大変(たいへん)心配(しんぱい)でしたよ』
340玉能姫(たまのひめ)『オホヽヽヽ、341約束(やくそく)(どほ)上手(じやうず)気違(きちがひ)()けたでせう。342須磨(すま)浜辺(はまべ)難関(なんくわん)を、343あゝせなくては通過(つうくわ)出来(でき)ませぬからなア』
344佐田彦(さだひこ)『イヤもう(おそ)()りました。345流石(さすが)言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)()見出(みいだ)(あそ)ばしただけあつて、346佐田彦(さだひこ)(ごと)凡夫(ぼんぶ)到底(たうてい)(およ)ばぬ智慧(ちゑ)()つてゐなさるなア』
347波留彦(はるひこ)本当(ほんたう)(しち)(しやく)男子(だんし)波留彦(はるひこ)睾丸(きんたま)()かしたくなつて()ました。348アハヽヽヽ』
349佐田彦(さだひこ)『それにしても初稚姫(はつわかひめ)さま、350(ちひ)さいのによく()いてお()でなさいましたなア。351何時(いつ)もお(とう)さまに(あま)へて()はれ(どほ)しだのに、352今日(けふ)(また)どうしてそんな(いきほひ)()たのでせう』
353初稚姫(かみ)(さま)(わたくし)()(かか)へて()(くだ)さいました。354あの(おほ)きな(かみ)(さま)()()()まりませ(なん)だか』
355佐田彦『さう()くと(なん)だか(おほ)きな(かげ)(やう)なものが、356始終(しじう)()いて()たやうに(おも)ひました』
357初稚姫かげ()えましたか。358それが(かみ)(さま)()かげですよ。359オホヽヽヽ』
360佐田彦子供(こども)(くせ)によく洒落(しやれ)ますなア。361シヤレ シヤレ(おそ)()りましたもので御座(ござ)るワイ』
362玉能姫『サア、363これから高砂(たかさご)浜辺(はまべ)へボツボツ(まゐ)りませう。364(さいは)ひに()()れました』
365玉能姫(たまのひめ)(さき)()つ。366(さん)(にん)欣々(いそいそ)(あと)(したが)ひ、367(はま)()(むか)ふ。
368 五月(ごぐわつ)五日(いつか)(つき)西天(せいてん)(かがや)き、369薄雲(はくうん)(きぬ)(あるひ)(かぶ)(あるひ)()ぎ、370月光(げつくわう)明滅(めいめつ)371()(にん)秘密(ひみつ)神業(しんげふ)()(かく)れに、372(うかが)ふものの(ごと)くであつた。373鳴門嵐(なるとあらし)暴風(ばうふう)遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく海面(かいめん)()で、374山嶽(さんがく)(ごと)荒浪(あらなみ)()(くる)ひ、375高砂(たかさご)浜辺(はまべ)押寄(おしよ)せ、376駻馬(かんば)(たてがみ)()つて()みついて()る。
377 佐田彦(さだひこ)は、378猿田彦(さるたひこ)気取(きど)りで(さき)(すす)み、379船頭(せんどう)(いへ)(たた)き、
380佐田彦『モシモシ、381船頭(せんどう)さま、382これから家島(えじま)()くのだから、383(ふね)()して(くだ)さいな。384賃銀(ちんぎん)幾何(いくら)でも()しますから』
385 船頭(せんどう)(いへ)(なか)より、
386船頭何処(どこ)(かた)()らぬが、387(なに)(ほう)けてゐるのだ。388レコード(やぶ)りの荒浪(あらなみ)に、389如何(どう)して(ふね)()せるものかい。390こんな()(おき)()ようものなら、391生命(いのち)いくつあつても(たま)るものでない。392マア、393二三(にさん)(にち)(かぜ)()(まで)()つたらよからう』
394 佐田彦(さだひこ)小声(こごゑ)で、
395佐田彦『ハテ、396(こま)つたなア。397吾々(われわれ)はどうしても家島(えじま)(わた)らねばならないのだ。398せめて中途(ちうと)神島(かみじま)までなつと(おく)つて()れないか』
399船頭『なんと()つても()時化(しけ)には(ふね)()せないよ。400桑名(くはな)徳蔵(とくぞう)ならばイザ()らず、401(おれ)(たち)のやうな普通(ふつう)船頭(せんどう)では、402到底(たうてい)駄目(だめ)だよ。403こんな()(ふね)()(くらゐ)なら、404(いへ)もなんにも()つたものぢやない。405そんな(わか)らぬことを()はずと、406二三(にさん)(にち)()つたがよからうに』
407佐田彦『どうしても()して()れませぬか、408仕方(しかた)がない。409それなら(ふね)()して(くだ)さいな』
410船頭滅相(めつさう)もないこと仰有(おつしや)るな。411(ふね)でも()さうものなら商売(しやうばい)道具(だうぐ)(たちま)滅茶(めちや)々々(めちや)にされて(しま)うて、412女房(にようばう)()(はな)(した)乾上(ひあ)がつて(しま)ふ。413(ひと)つの(ふね)(こしら)へるにも(ひやく)(りやう)金子(かね)()るのだ。414自家(うち)身代(しんだい)()(ふね)(ひと)つだ。415マア、416そんなことは絶対(ぜつたい)()(ことわ)(まを)さうかい』
417佐田彦()(ほか)船頭衆(せんどうしう)はあらうな』
418船頭()浜辺(はまべ)には二三十(にさんじふ)(にん)船頭(せんどう)()る。419(しか)(なが)開闢(かいびやく)以来(いらい)420この荒浪(あらなみ)(ふね)()すやうな莫迦者(ばかもの)(いち)(にん)()りませぬワイ。421今日(けふ)五月(ごぐわつ)五日(いつか)422菖蒲(しやうぶ)節句(せつく)423(かみ)(さま)神島(かみじま)から高砂(たかさご)()()(あそ)ばす()だから、424尚々(なほなほ)(ふね)()せないのだ。425仮令(たとへ)(なみ)はなくとも今日(けふ)(いち)(にち)は、426()(うみ)渡海(とかい)出来(でき)ないのだ。427(くれ)()つから(かみ)(さま)高砂(たかさご)(もり)へお()しになるのだ。428モー今頃(いまごろ)神島(かみじま)()出立(しゆつたつ)(あそ)ばして御座(ござ)時分(じぶん)だよ。429(なん)としてそんな(とこ)()くのだい』
430佐田彦(おれ)家島(えじま)()くのだ。431(なみ)都合(つがふ)一寸(ちよつと)()(みづ)(いただ)きに神島(かみじま)()りたいと(おも)ふのだよ』
432 船頭(せんどう)不思議(ふしぎ)(やつ)()()たものだと(つぶや)きながら(おもて)立出(たちい)で、
433船頭『ヤー、434()れば(わか)()女中(ぢよちう)(むすめ)さま。435(まへ)さま()()一行(いつかう)かな』
436玉能姫(たまのひめ)『ハイ、437左様(さやう)御座(ござ)います。438どうぞ(ふね)()()(くだ)さいませ』
439 船頭(せんどう)(しきり)(くび)()り、
440船頭『アーいかぬいかぬ、441途方(とはう)もないこと()ひなさるな。442(をとこ)でさへも()かれぬ(ところ)へ、443妙齢(としごろ)(をんな)(わた)ると()ふことは到底(たうてい)出来(でき)ない。444平常(つね)()でも(をんな)絶対(ぜつたい)()せることは出来(でき)ませぬワイ』
445初稚姫(はつわかひめ)小父(をぢ)さま、446そんなら()(ふね)()つて()()れぬか』
447船頭()つて()れと()つたつて、448中々(なかなか)(やす)うはないぞ。449(ひやく)(りやう)もかかるのだから』
450初稚姫『それなら小父(をぢ)さま、451二百(にひやく)(りやう)()げるから、452(まへ)(ふね)()つてお()れ』
453船頭(ひやく)(りやう)(ふね)二百(にひやく)(りやう)()つて(もら)へば、454(ふね)二隻(にせき)新調(しんてう)出来(でき)るやうなものだ。455それは(まこと)有難(ありがた)いが、456(しか)(なが)らみすみすお(まへ)さま(たち)(うみ)藻屑(もくづ)となし、457(ふか)餌食(ゑじき)にして(しま)ふのは何程(なにほど)(よく)船頭(せんどう)でも(しの)びない。458そんなことは()はずに(あきら)めて(かへ)つて(くだ)さい。459(をとこ)(かた)なら二三(にさん)(にち)したら(ふね)()して()げよう』
460初稚姫(をんな)()うしていけないのですか』
461船頭『アヽ、462いけないいけない。463理屈(りくつ)()らぬが、464(むかし)から()つたことがない(しま)だから』
465佐田彦(さだひこ)船頭(せんどう)さま、466そんなら時化(しけ)()んでから明日(あす)でも(おれ)(たち)勝手(かつて)()いで()くから、467二百(にひやく)(りやう)()つて(くだ)さい』
468船頭(ひやく)(りやう)のものを二百(にひやく)(りやう)()ると()ふことは、469大変(たいへん)欲張(よくば)つたやうで()()まぬが、470(しか)(ふね)()つて(しま)へば、471(つぎ)(ふね)出来(でき)るまで徒食(としよく)をせねばならぬから、472貯蓄(たくはへ)()(おれ)(たち)473そんなら二百(にひやく)(りやう)()りませう』
474佐田彦有難(ありがた)い、475そんなら()()ちます。476(いち)477()478(さん)
479船頭(せんどう)佐田彦(さだひこ)(かほ)見合(みあは)せ、480()()つて(しま)つた。
481 初稚姫(はつわかひめ)(ふところ)より山吹色(やまぶきいろ)小判(こばん)取出(とりだ)し、
482初稚姫『サア、483小父(をぢ)さま、484(あらた)めて受取(うけと)つて(くだ)さい』
485()()す。486船頭(せんどう)(あらた)めて()て、
487船頭『ヤー、488有難(ありがた)う、489左様(さやう)なら。490モウ一旦(いつたん)()()つたのだから、491変換(へんが)へは()きませぬよ』
492()()て、493(こは)さうに(いへ)()()み、494(なか)よりピシヤンと()()め、495丁寧(ていねい)突張(つつぱ)りをこうてゐる。496(なみ)益々(ますます)(たけ)(くる)ふ。
497佐田彦『アヽ()(ふね)だ。498サア(みな)さま、499()りませう。500ちつと()れた(はう)面白(おもしろ)からう』
501佐田彦(さだひこ)(さき)()()んだ。502(さん)(にん)(よろこ)んで船中(せんちう)(ひと)となつて(しま)つた。
503佐田彦(さだひこ)『サア、504波留彦(はるひこ)505(かい)使(つか)つて(くだ)さい。506(おれ)船頭(せんどう)だ。507()()いで()く。508随分(ずゐぶん)(たか)(なみ)だよ』
509とそろそろ捩鉢巻(ねぢはちまき)になつて、510()(あやつ)(はじ)めた。
511 (つき)(くも)()(ひら)きて利鎌(とがま)のやうな(ひかり)()げ、512()(にん)()つた神島丸(かみじままる)(てら)して()る。513不思議(ふしぎ)暴風(ばうふう)(たちま)()まり、514(なみ)()()(たたみ)(ごと)()(わた)つた。515二人(ふたり)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かい)(あやつ)りながら、516(おき)(うか)べる神島(かみじま)目標(めあて)()()した。517(やうや)くにしてミロク(いは)磯端(いそばた)横付(よこづ)けになつた。
518玉能姫(たまのひめ)(みな)さま、519()苦労(くらう)でした。520貴方(あなた)(がた)二人(ふたり)此処(ここ)()つて()(くだ)さい』
521佐田彦(さだひこ)『イエ(わたくし)()(とも)(いた)しませう。522これ(だけ)篠竹(しのたけ)(しげ)つた(やま)523大蛇(をろち)沢山(たくさん)()ると()ふことですから、524保護(ほご)のために吾々(われわれ)両人(りやうにん)()(とも)(いた)しませう。525言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)(さま)より「両人(りやうにん)保護(ほご)(たの)む」と()はれたのだから、526もし()両人(りやうにん)(さま)大蛇(をろち)にでも()まれて(しま)ふやうなことが出来(しゆつたい)したら、527それこそ申訳(まをしわけ)がありませぬ。528是非(ぜひ)()(とも)(いた)します』
529初稚姫(はつわかひめ)『その大蛇(をろち)(よう)があるのだから、530()(くだ)さるな。531大蛇(をろち)(をとこ)()くと大変(たいへん)(はら)()てて(おこ)るさうですから』
532波留彦(はるひこ)大蛇(をろち)でも矢張(やつぱ)(をんな)()いのかなア。533()うなると(をとこ)(うま)れたのも(つま)らぬものだ』
534玉能姫(たまのひめ)『さア、535初稚姫(はつわかひめ)さま、536(まゐ)りませう。537()両人(りやうにん)()(かた)538(けつ)して、539(あと)から()てはなりませぬよ。540(よう)()んだら()びますから、541それまで此処(ここ)()つてゐて(くだ)さい』
542 二人(ふたり)(あたま)()(なが)ら、
543佐田彦(さだひこ)『エー仕方(しかた)がない。544役目(やくめ)(ちが)ふのだから、545そんなら神妙(しんめう)()つて()ます。546御用(ごよう)()んだら()んで(くだ)さい』
547玉能姫(たまのひめ)『ハイ、548承知(しようち)しました。549()うぞ機嫌(きげん)よう()つて()(くだ)さいませ』
550初稚姫(はつわかひめ)()()り、551篠竹(しのたけ)押分(おしわ)山上(さんじやう)目蒐(めが)けて(のぼ)()く。
552 (から)うじて二人(ふたり)(やま)(いただき)到着(たうちやく)した。553五六(ごろく)(さい)童子(どうじ)()(にん)童女(どうぢよ)(さん)(にん)554黄金(こがね)(くは)()つて何処(いづこ)よりともなく(あら)はれ(きた)り、555さしもに(かた)岩石(がんせき)(またた)()()つて(しま)つた。
556初稚姫(はつわかひめ)『アー、557貴女(あなた)(いづ)身魂(みたま)558(みづ)身魂(みたま)大神(おほかみ)(さま)559只今(ただいま)言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)()命令(めいれい)()つて、560無事(ぶじ)此処(ここ)まで(たま)()(とも)をして(まゐ)りました。561さア、562()うぞ(をさ)めて(くだ)さい』
563 ()(にん)童子(どうじ)にこにこ(わら)ひながら、564ものをも()はず一度(いちど)(ちひ)さき()差出(さしだ)す。565初稚姫(はつわかひめ)金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)玉函(たまばこ)()り、566(うやうや)しく頭上(づじやう)(ささ)げながら()(にん)()(うへ)()せた。567十本(じつぽん)(てのひら)(うへ)一個(いつこ)玉函(たまばこ)568(たちま)五瓣(ごべん)梅花(ばいくわ)(ひら)いた。569童子(どうじ)玉函(たまばこ)(とも)に、570(いま)()つたばかりの(いは)(あな)()えて(しま)つた。
571 (さん)(にん)童女(どうぢよ)(また)もや()(ひろ)げて、572玉能姫(たまのひめ)(まへ)(すす)(きた)る。573玉能姫(たまのひめ)(むらさき)宝珠(ほつしゆ)(はこ)()()げ、574(うやうや)しく頭上(づじやう)(ささ)げ、575(つい)(さん)(にん)童女(どうぢよ)()(わた)した。576童女(どうぢよ)はものをも()はず微笑(びせう)(うか)べたまま、577玉函(たまばこ)(とも)(おな)岩穴(いはあな)()えて(しま)つた。578玉能姫(たまのひめ)(あや)しんで(あな)(のぞ)()れば、579童男(どうなん)580童女(どうぢよ)姿(すがた)(かげ)もなく、581(ただ)(ふた)つの玉函(たまばこ)582微妙(びめう)音声(おんせい)(はつ)し、583鮮光(せんくわう)孔内(こうない)()らして()る。
584 二人(ふたり)(うやうや)しく天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、585(つい)神言(かみごと)(とな)へ、586(あま)数歌(かずうた)(うた)ひ、587岩蓋(いはふた)をなし、588(その)(うへ)(いま)童女(どうぢよ)()()きし、589黄金(こがね)(くは)各自(てんで)()()げ、590(つち)(あつ)()せ、591四辺(あたり)小松(こまつ)(その)(うへ)()ゑて、592(また)もや祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、593悠々(いういう)として(やま)(くだ)()く。
594 玉能姫(たまのひめ)は、
595玉能姫『お二人(ふたり)さま、596えらう()()たせしました。597さア、598もう御用(ごよう)()みました。599(かへ)りませう』
600 佐田彦(さだひこ)601波留彦(はるひこ)両人(りやうにん)(くち)(そろ)へて、
602佐田彦、波留彦『それは結構(けつこう)御座(ござ)いました。603()目出度(めでた)う。604これから(わたくし)()一度(いちど)(のぼ)つて()ますから、605(しば)らく此処(ここ)()つて()(くだ)さいませ』
606初稚姫(はつわかひめ)『モー御用(ごよう)()みましたのですから、607一歩(ひとあし)(あが)つてはなりませぬ。608さア(かへ)りませうよ』
609佐田彦(さだひこ)折角(せつかく)此処迄(ここまで)苦労(くらう)して()(とも)をして()たのだから、610(うづ)めた(あと)なりと(をが)まして(くだ)さいな』
611 初稚姫(はつわかひめ)(くび)左右(さいう)()つてゐる。612玉能姫(たまのひめ)()れば、613(これ)(また)無言(むごん)(まま)(くび)左右(さいう)()つてゐる。614何処(どこ)ともなく(らい)(ごと)(こゑ)
615一刻(いつこく)猶予(いうよ)はならぬ。616これより高砂(たかさご)へは()らず、617淡路島(あはぢしま)目標(めあて)再度山(ふたたびやま)(ふもと)(ふね)をつけよ。618サア、619(はや)(はや)く』
620呶鳴(どな)るものがある。621(この)言葉(ことば)佐田彦(さだひこ)622波留彦(はるひこ)は、
623佐田彦、波留彦『ハイ、624(かしこ)まりました』
625玉能姫(たまのひめ)626初稚姫(はつわかひめ)(むか)()一生(いつしやう)懸命(けんめい)艪櫂(ろかい)(あやつ)りつつ、627再度山(ふたたびやま)方面(はうめん)()して(かへ)()く。
628大正一一・五・二八 旧五・二 外山豊二録)
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki