霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第25巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 相縁奇縁
01 水禽の音
〔747〕
02 与太理縮
〔748〕
03 鶍の恋
〔749〕
04 望の縁
〔750〕
第2篇 自由活動
05 酒の滝壺
〔751〕
06 三腰岩
〔752〕
07 大蛇解脱
〔753〕
08 奇の巌窟
〔754〕
第3篇 竜の宮居
09 信仰の実
〔755〕
10 開悟の花
〔756〕
11 風声鶴唳
〔757〕
12 不意の客
〔758〕
第4篇 神花霊実
13 握手の涙
〔759〕
14 園遊会
〔760〕
15 改心の実
〔761〕
16 真如の玉
〔762〕
第5篇 千里彷徨
17 森の囁
〔763〕
18 玉の所在
〔764〕
19 竹生島
〔765〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第25巻
> 第1篇 相縁奇縁 > 第3章 鶍の恋
<<< 与太理縮
(B)
(N)
望の縁 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第三章
鶍
(
いすか
)
の
恋
(
こい
)
〔七四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻
篇:
第1篇 相縁奇縁
よみ(新仮名遣い):
あいえんきえん
章:
第3章 鶍の恋
よみ(新仮名遣い):
いすかのこい
通し章番号:
749
口述日:
1922(大正11)年07月07日(旧閏05月13日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月25日
概要:
舞台:
地恩城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
宇豆姫は一人述懐の歌を歌っていた。その歌には、宇豆姫が鶴公を慕っていることが歌われていた。
そこへスマートボールがやってきて、宇豆姫の力になりたいと申し出た。宇豆姫は自分の心を見透かされたような気持ちになり、また鶴公派のスマートボールを頼もしく思ったが、その場は単に、神様に感謝を捧げていただけだと答えた。
そこでスマートボールは、宇豆姫が清公と結婚するという城内の噂について問いただした。宇豆姫は即座に否定し、また清公は好かないときっぱり言ってのけた。
スマートボールは宇豆姫を問い詰めて、ついに宇豆姫の口から、意中の人が実は鶴公であることを聞き出した。スマートボールは、自分はこの恋を成就させるために力を尽くすことを宇豆姫に誓った。
そこへ、黄竜姫がやってきた。黄竜姫は人払いをして宇豆姫と二人きりになった。黄竜姫は、地恩城の左守である清公の妻に宇豆姫を任命する、と厳然と言い渡した。宇豆姫は道理を交えた黄竜姫の申し渡しに同意する以外はなかった。
黄竜姫が去った後、宇豆姫はその場に泣き崩れてしまった。たまたま廊下を通りかかった鶴公は、宇豆姫を介抱する。二人は互いに思いを打ち明けあい、互いにその心を知ることができただけで思い残すことはない、と覚悟を決めた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-08-24 22:54:02
OBC :
rm2503
愛善世界社版:
49頁
八幡書店版:
第5輯 48頁
修補版:
校定版:
51頁
普及版:
23頁
初版:
ページ備考:
001
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
002
御言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
顕恩
(
けんおん
)
の
003
郷
(
さと
)
に
現
(
あ
)
れます
梅子姫
(
うめこひめ
)
004
二八
(
にはち
)
の
春
(
はる
)
の
花盛
(
はなざか
)
り
005
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
一時
(
いちどき
)
に
006
匂
(
にほ
)
ひそめたる
唇
(
くちびる
)
を
007
開
(
ひら
)
いて
宣
(
の
)
らす
三五
(
あななひ
)
の
008
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
心
(
こころ
)
より
009
麻柱
(
あなな
)
ひ
奉
(
まつ
)
りバラモンの
010
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
振
(
ふ
)
り
捨
(
す
)
てて
011
梅子
(
うめこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
侍女
(
じぢよ
)
となり
012
貴
(
うづ
)
の
教
(
をしへ
)
の
宇豆姫
(
うづひめ
)
と
013
慈
(
いつく
)
しまれて
仕
(
つか
)
へ
居
(
ゐ
)
る
014
時
(
とき
)
しもあれや
太玉
(
ふとたま
)
の
015
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
016
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
現
(
あ
)
れまして
017
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
018
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
や
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
019
拗
(
ねぢ
)
け
曲
(
まが
)
れる
枉人
(
まがびと
)
を
020
雲
(
くも
)
の
彼方
(
あなた
)
に
逐
(
お
)
ひ
払
(
はら
)
ひ
021
ここに
太玉
(
ふとだま
)
神司
(
かむづかさ
)
022
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
三五
(
あななひ
)
の
023
教
(
をしへ
)
の
射場
(
いば
)
を
建
(
た
)
て
給
(
たま
)
ひ
024
妾
(
わらは
)
は
各々
(
おのおの
)
八乙女
(
やをとめ
)
の
025
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
従
(
したが
)
ひて
026
エデンの
園
(
その
)
に
臨
(
のぞ
)
まれし
027
五十子
(
いそこ
)
の
姫
(
ひめ
)
や
梅子姫
(
うめこひめ
)
028
今子
(
いまこ
)
の
姫
(
ひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
029
波斯
(
フサ
)
の
国原
(
くにはら
)
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
と
030
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
031
バラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
032
片彦
(
かたひこ
)
釘彦
(
くぎひこ
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
033
枉
(
まが
)
の
司
(
つかさ
)
に
捕
(
とら
)
へられ
034
棚無
(
たななし
)
小舟
(
こぶね
)
に
乗
(
の
)
せられて
035
荒波
(
あらなみ
)
猛
(
たけ
)
る
海原
(
うなばら
)
に
036
押流
(
おしなが
)
されし
恐
(
おそ
)
ろしさ
037
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
皇神
(
すめかみ
)
の
038
救
(
すく
)
ひを
求
(
もと
)
めて
各自
(
めいめい
)
に
039
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
宣
(
の
)
りつれば
040
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
も
恙
(
つつが
)
なく
041
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
竜宮
(
りうぐう
)
の
042
黄金
(
こがね
)
の
島
(
しま
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
043
小糸
(
こいと
)
の
姫
(
ひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
044
地恩
(
ちおん
)
の
郷
(
さと
)
に
現
(
あら
)
はれて
045
三五教
(
あななひけう
)
の
大道
(
おほみち
)
に
046
仕
(
つか
)
へまつれる
折
(
をり
)
もあれ
047
思
(
おも
)
ひがけなき
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
048
数多
(
あまた
)
の
供人
(
ともびと
)
引
(
ひ
)
きつれて
049
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれましましぬ
050
地恩
(
ちおん
)
の
城
(
しろ
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
051
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
加
(
くは
)
はりて
052
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
兄
(
こ
)
の
花
(
はな
)
の
053
匂
(
にほ
)
ふが
如
(
ごと
)
く
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
く
054
アヽさり
乍
(
なが
)
らさり
乍
(
なが
)
ら
055
往
(
ゆ
)
く
手
(
て
)
に
塞
(
さや
)
る
恋
(
こひ
)
の
闇
(
やみ
)
056
千歳
(
ちとせ
)
の
松
(
まつ
)
の
鶴
(
つる
)
さまが
057
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
夜半
(
よは
)
に
庭
(
には
)
の
面
(
おも
)
058
彷徨
(
さまよ
)
ひ
遊
(
あそ
)
ぶわが
姿
(
すがた
)
059
認
(
みと
)
めて
後
(
あと
)
より
抱
(
いだ
)
きつき
060
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
繰返
(
くりかへ
)
し
061
誘
(
いざな
)
ひ
給
(
たま
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しさに
062
胸
(
むね
)
轟
(
とどろ
)
きて
何
(
なん
)
となく
063
河瀬
(
かはせ
)
の
鯉
(
こひ
)
の
一跳
(
ひとはね
)
に
064
昇
(
のぼ
)
り
詰
(
つ
)
めたる
吾
(
わ
)
が
恋路
(
こひぢ
)
065
水泡
(
みなわ
)
と
消
(
き
)
えて
跡
(
あと
)
もなく
066
云
(
い
)
ひ
寄
(
よ
)
る
術
(
すべ
)
も
泣
(
な
)
くばかり
067
後
(
あと
)
に
至
(
いた
)
りて
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
068
天
(
てん
)
を
仰
(
あふ
)
いで
悔
(
くや
)
めども
069
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
の
曲者
(
くせもの
)
に
070
取
(
と
)
り
挫
(
ひし
)
がれて
胸
(
むね
)
の
火
(
ひ
)
の
071
消
(
き
)
ゆる
術
(
すべ
)
なき
苦
(
くる
)
しさよ
072
妾
(
わらは
)
が
心
(
こころ
)
を
白雪
(
しらゆき
)
の
073
冷
(
つめ
)
たき
魔
(
ま
)
の
手
(
て
)
に
捉
(
とら
)
へられ
074
退引
(
のつぴき
)
ならぬ
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
に
075
解
(
と
)
くる
由
(
よし
)
なき
冬
(
ふゆ
)
の
雪
(
ゆき
)
076
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
も
清公
(
きよこう
)
が
077
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
を
笠
(
かさ
)
に
着
(
き
)
て
078
云
(
い
)
ひ
寄
(
よ
)
り
給
(
たま
)
ふ
苦
(
くる
)
しさよ
079
情
(
つれ
)
なく
当
(
あた
)
りし
恋人
(
こひびと
)
に
080
詫
(
わ
)
びる
事
(
こと
)
さへ
口籠
(
くちごも
)
り
081
心
(
こころ
)
の
悩
(
なや
)
みを
大空
(
おほぞら
)
の
082
月
(
つき
)
に
向
(
むか
)
つて
歎
(
かこ
)
つ
折
(
をり
)
083
又
(
また
)
もや
一
(
ひと
)
つの
影
(
かげ
)
見
(
み
)
えて
084
吾
(
わが
)
手
(
て
)
を
掴
(
つか
)
み
木下暗
(
こしたやみ
)
085
四辺
(
あたり
)
憚
(
はばか
)
り
声
(
こゑ
)
ひそめ
086
吾
(
われ
)
は
清公
(
きよこう
)
ブランジー
087
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
と
選
(
えら
)
ばれし
088
栄
(
さかえ
)
の
身
(
み
)
なれど
何時迄
(
いつまで
)
も
089
一
(
ひと
)
つ
柱
(
ばしら
)
に
三五
(
あななひ
)
の
090
道
(
みち
)
を
支
(
ささ
)
へむ
事
(
こと
)
難
(
かた
)
し
091
汝
(
なんぢ
)
宇豆姫
(
うづひめ
)
クロンバーの
092
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
と
成
(
な
)
りなりて
093
吾
(
わが
)
身
(
み
)
と
共
(
とも
)
に
地恩城
(
ちおんじやう
)
094
三五教
(
あななひけう
)
の
神徳
(
しんとく
)
を
095
天地
(
あめつち
)
四方
(
よも
)
に
輝
(
かがや
)
かし
096
開
(
ひら
)
かば
如何
(
いか
)
にと
執拗
(
しつえう
)
に
097
度重
(
たびかさ
)
なりし
口説
(
くどき
)
ごと
098
断
(
ことわ
)
る
力
(
ちから
)
もないじやくり
099
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
は
100
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
の
来
(
きた
)
るとも
101
覚悟
(
かくご
)
の
前
(
まへ
)
とは
云
(
い
)
ひながら
102
心
(
こころ
)
に
添
(
そ
)
はぬ
夫
(
つま
)
を
持
(
も
)
ち
103
長
(
なが
)
き
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
るより
104
一層
(
いつそう
)
気楽
(
きらく
)
に
独身者
(
ひとりもの
)
105
やもめ
となりて
大神
(
おほかみ
)
の
106
教
(
をしへ
)
に
仕
(
つか
)
へまつらむと
107
決心
(
けつしん
)
するはしたものの
108
清公
(
きよこう
)
さまの
矢
(
や
)
の
使
(
つか
)
ひ
109
引
(
ひ
)
きてかやさぬ
桑
(
くは
)
の
弓
(
ゆみ
)
110
撥
(
はぢ
)
き
返
(
かへ
)
さむ
由
(
よし
)
も
無
(
な
)
く
111
如何
(
いか
)
がはせむと
煩
(
わづら
)
ひつ
112
憂目
(
うきめ
)
を
忍
(
しの
)
ぶ
折
(
をり
)
もあれ
113
金銀鉄
(
きんぎんてつ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
114
かたみ
に
妾
(
わらは
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
で
115
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
の
妻
(
つま
)
たれと
116
言葉
(
ことば
)
尽
(
つく
)
して
説
(
と
)
き
立
(
た
)
つる
117
嗚呼
(
ああ
)
如何
(
いか
)
にせむ
今
(
いま
)
の
吾
(
われ
)
118
千尋
(
ちひろ
)
の
海
(
うみ
)
に
身
(
み
)
を
投
(
な
)
げて
119
此
(
この
)
苦
(
くる
)
しみを
脱
(
のが
)
れむか
120
神
(
かみ
)
の
咎
(
とが
)
めを
如何
(
いか
)
にせむ
121
千思
(
せんし
)
万慮
(
ばんりよ
)
も
尽
(
つ
)
き
果
(
は
)
てて
122
今
(
いま
)
は
苦
(
くる
)
しき
板挟
(
いたばさ
)
み
123
恋
(
こひ
)
しき
人
(
ひと
)
に
肱鉄
(
ひぢてつ
)
を
124
喰
(
く
)
はせて
御心
(
みこころ
)
怒
(
いか
)
らせつ
125
心
(
こころ
)
に
合
(
あ
)
はぬ
清公
(
きよこう
)
に
126
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
口説
(
くど
)
き
責
(
せ
)
められつ
127
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
も
知
(
し
)
らぬ
火
(
ひ
)
の
128
砕
(
くだ
)
けて
落
(
お
)
つる
吾
(
わが
)
涙
(
なみだ
)
129
汲
(
く
)
む
人
(
ひと
)
もなき
地恩郷
(
ちおんきやう
)
130
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
131
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
坐
(
まし
)
まして
132
日夜
(
にちや
)
に
慕
(
した
)
ふ
鶴
(
つる
)
さまに
133
夢
(
ゆめ
)
になりとも
吾
(
わが
)
思
(
おも
)
ひ
134
伝
(
つた
)
へ
給
(
たま
)
へよ
三五
(
あななひ
)
の
135
道
(
みち
)
を
守
(
まも
)
らす
須勢理
(
すせり
)
姫
(
ひめ
)
136
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
137
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
めて
願
(
ね
)
ぎまつる
138
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
139
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
140
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
141
鶴公
(
つるこう
)
さまに
吾
(
わが
)
思
(
おも
)
ひ
142
通
(
とほ
)
さにや
置
(
お
)
かぬ
桑
(
くは
)
の
弓
(
ゆみ
)
143
女
(
をんな
)
の
思
(
おも
)
ふ
真心
(
まごころ
)
は
144
岩
(
いは
)
をも
射貫
(
いぬ
)
くと
聞
(
き
)
くからは
145
通
(
とほ
)
さざらめや
吾
(
わ
)
が
恋路
(
こひぢ
)
146
恋
(
こひ
)
し
恋
(
こひ
)
しと
朝宵
(
あさよひ
)
に
147
積
(
つも
)
る
思
(
おも
)
ひの
恋
(
こひ
)
の
淵
(
ふち
)
148
浮
(
うか
)
ぶ
涙
(
なみだ
)
は
滝津瀬
(
たきつせ
)
の
149
水
(
みづ
)
に
流
(
なが
)
してスクスクと
150
落
(
お
)
ち
行
(
ゆ
)
く
末
(
すゑ
)
は
海
(
わだ
)
の
原
(
はら
)
151
情
(
なさけ
)
も
深
(
ふか
)
き
恋
(
こひ
)
の
海
(
うみ
)
152
男波
(
をなみ
)
女波
(
めなみ
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
153
棚無船
(
たななしぶね
)
に
梶
(
かぢ
)
を
取
(
と
)
り
154
太平洋
(
たいへいやう
)
の
彼方
(
かなた
)
まで
155
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り
交
(
かは
)
し
156
真
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
157
開
(
ひら
)
かせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
158
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
坐
(
まし
)
ませよ』
159
と、
160
四辺
(
あたり
)
に
人
(
ひと
)
無
(
な
)
きを
幸
(
さいは
)
ひ、
161
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
述懐
(
じゆつくわい
)
の
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つて
胸
(
むね
)
の
縺
(
もつ
)
れを
解
(
と
)
かむとして
居
(
ゐ
)
る。
162
此処
(
ここ
)
へ
慌
(
あわただ
)
しく
駆来
(
かけきた
)
れるスマートボールは、
163
スマートボール『コレハコレハ
宇豆姫
(
うづひめ
)
様
(
さま
)
、
164
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
は
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
います。
165
貴女
(
あなた
)
のお
顔
(
かほ
)
は
何処
(
どこ
)
となく
憂愁
(
いうしう
)
の
色
(
いろ
)
が
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
を
)
るやうで
御座
(
ござ
)
います。
166
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
167
スマートボールの
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ぶ
事
(
こと
)
ならば、
168
何
(
なん
)
なりと
仰
(
あふ
)
せ
下
(
くだ
)
さいませ』
169
と
出
(
だ
)
しぬけの
言葉
(
ことば
)
に、
170
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
まで
見透
(
みす
)
かされたやうな
驚
(
おどろ
)
きと、
171
嬉
(
うれ
)
しさをもつてスマートボールに
向
(
むか
)
ひ、
172
赭
(
あか
)
らむ
顔
(
かほ
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ、
173
宇豆姫
(
うづひめ
)
『コレハコレハ
何方
(
どなた
)
かと
思
(
おも
)
へばスマートさまで
御座
(
ござ
)
いましたか。
174
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
175
余
(
あま
)
り
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
の
無限
(
むげん
)
絶対
(
ぜつたい
)
なる
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し、
176
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
を
)
りました。
177
貴方
(
あなた
)
も
相変
(
あひかは
)
らず
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
で
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
御
(
ご
)
奉仕
(
ほうし
)
遊
(
あそ
)
ばされ、
178
何
(
なに
)
よりも
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
います』
179
スマートボール『ハイ、
180
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
181
私
(
わたくし
)
が
唯今
(
ただいま
)
参
(
まゐ
)
りましたのは
他
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
182
貴女
(
あなた
)
に
折入
(
をりい
)
つてお
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
したい
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますので、
183
失礼
(
しつれい
)
をも
顧
(
かへり
)
みず
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
184
男子
(
だんし
)
の
身
(
み
)
を
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら
女
(
をんな
)
御
(
お
)
一人
(
ひとり
)
の
処
(
ところ
)
へ
参
(
まゐ
)
りました。
185
貴女
(
あなた
)
に
取
(
と
)
つては
嘸々
(
さぞさぞ
)
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
にお
感
(
かん
)
じなさるでせうが、
186
決
(
けつ
)
して
私
(
わたくし
)
は
不潔
(
ふけつ
)
な
心
(
こころ
)
を
持
(
も
)
つて、
187
女
(
をんな
)
一人
(
ひとり
)
のお
居間
(
ゐま
)
をお
訪
(
たづ
)
ねしたのでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
188
何卒
(
なにとぞ
)
悪
(
あし
)
からず
思召
(
おぼしめ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
189
宇豆姫
(
うづひめ
)
『スマートさま、
190
其
(
その
)
お
心遣
(
こころづか
)
ひは
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ。
191
清廉
(
せいれん
)
潔白
(
けつぱく
)
にして、
192
信心
(
しんじん
)
堅固
(
けんご
)
の
誉
(
ほまれ
)
高
(
たか
)
き
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
、
193
如何
(
どう
)
して
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひませう。
194
誰
(
たれ
)
だつて
貴方
(
あなた
)
の
行動
(
かうどう
)
を
疑
(
うたが
)
ふ
者
(
もの
)
は
有
(
あ
)
りませぬから、
195
お
気遣
(
きづか
)
ひなさいますな。
196
人間
(
にんげん
)
は
平生
(
へいぜい
)
の
行
(
おこな
)
ひが
肝腎
(
かんじん
)
です。
197
貴方
(
あなた
)
の
如
(
ごと
)
く
信用
(
しんよう
)
のある
方
(
かた
)
なれば、
198
何時
(
いつ
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいましても
些
(
すこ
)
しも
苦
(
くる
)
しうは
御座
(
ござ
)
いませぬ』
199
スマートボール『ヤア、
200
それで
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
201
私
(
わたくし
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
りの
周章者
(
あわてもの
)
、
202
円滑
(
ゑんくわつ
)
な
辞令
(
じれい
)
を
用
(
もち
)
ひて
遠廻
(
とほまは
)
しに
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
意中
(
いちう
)
を
探
(
さぐ
)
る
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ませぬから、
203
唐突
(
たうとつ
)
乍
(
なが
)
ら、
204
手
(
て
)
つ
取
(
と
)
り
早
(
ばや
)
くお
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
が
有
(
あ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
205
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
妾
(
わたし
)
に
対
(
たい
)
してお
尋
(
たづ
)
ねとは、
206
それは
何
(
ど
)
う
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
207
スマートボールは
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
208
スマートボール
『エー、
209
実
(
じつ
)
は………』
210
と
云
(
い
)
ひ
悪
(
にく
)
さうにモジモジして
居
(
ゐ
)
たが、
211
斯
(
か
)
くてはならじと
腹
(
はら
)
を
据
(
す
)
ゑ、
212
スマートボール
『
宇豆姫
(
うづひめ
)
さま………』
213
と
改
(
あらた
)
まつたやうな
口調
(
くてう
)
で
切
(
き
)
り
出
(
だ
)
した。
214
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ』
215
スマートボール『
貴女
(
あなた
)
の
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
216
此
(
この
)
地恩城
(
ちおんじやう
)
も
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
にて
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
栄
(
さか
)
え、
217
国民
(
こくみん
)
は
其
(
その
)
徳
(
とく
)
に
悦服
(
えつぷく
)
し、
218
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
に
治
(
をさ
)
まり、
219
其
(
その
)
上
(
うへ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
娘子
(
むすめご
)
、
220
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
母上
(
ははうへ
)
まで、
221
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
女王
(
ぢよわう
)
の
神務
(
しんむ
)
を
内助
(
ないじよ
)
され、
222
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
組織
(
そしき
)
は
稍
(
やや
)
完全
(
くわんぜん
)
に
定
(
さだ
)
まりましたのは、
223
お
互
(
たがひ
)
に
大慶
(
たいけい
)
の
至
(
いた
)
りで
御座
(
ござ
)
います。
224
就
(
つ
)
きましては、
225
今迄
(
いままで
)
教務
(
けうむ
)
に
老練
(
らうれん
)
なる
高山彦
(
たかやまひこ
)
様
(
さま
)
がブランジーの
職
(
しよく
)
に
就
(
つ
)
かせ
給
(
たま
)
ひ、
226
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
はクロンバーのお
役
(
やく
)
を
遊
(
あそ
)
ばし、
227
夫婦
(
ふうふ
)
息
(
いき
)
を
合
(
あは
)
して
陰陽
(
いんやう
)
合体
(
がつたい
)
の
神務
(
しんむ
)
に
従事
(
じうじ
)
されて
来
(
き
)
ましたが、
228
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
が
当城
(
たうじやう
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
遊
(
あそ
)
ばしてより、
229
清公
(
きよこう
)
様
(
さま
)
が
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
としてブランジーの
職
(
しよく
)
を
継
(
つ
)
がせられ、
230
大変
(
たいへん
)
に
吾々
(
われわれ
)
迄
(
まで
)
が
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
を
)
りまする。
231
就
(
つい
)
てはクロンバーとして
奥様
(
おくさま
)
を
迎
(
むか
)
へねばなりませぬが、
232
一寸
(
ちよつと
)
人々
(
ひとびと
)
の
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
けば、
233
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
が
清公
(
きよこう
)
さまの
妻
(
つま
)
となり、
234
クロンバーの
職
(
しよく
)
をお
継
(
つ
)
ぎ
下
(
くだ
)
さるとの
事
(
こと
)
、
235
吾々
(
われわれ
)
は
是
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いて
衷心
(
ちうしん
)
より
歓喜
(
くわんき
)
の
涙
(
なみだ
)
に
打
(
う
)
たれました。
236
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人
(
ひと
)
の
噂
(
うはさ
)
は
当
(
あて
)
にはなりませぬ。
237
それ
故
(
ゆゑ
)
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら、
238
直接
(
ちよくせつ
)
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかかつて
御
(
ご
)
意中
(
いちう
)
を
承
(
うけたま
)
はらむとお
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
した
次第
(
しだい
)
で
御座
(
ござ
)
います。
239
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
腹蔵
(
ふくざう
)
なく
私
(
わたくし
)
迄
(
まで
)
お
漏
(
も
)
らし
下
(
くだ
)
さいますまいか』
240
宇豆姫
(
うづひめ
)
はさも
迷惑
(
めいわく
)
さうな
顔
(
かほ
)
をしながら、
241
宇豆姫
『
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
、
242
何方
(
どなた
)
にお
聞
(
き
)
きなさいましたか。
243
ほんに
嫌
(
いや
)
な
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますな』
244
スマートボール
『イヤ
誠
(
まこと
)
に
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります。
245
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しました。
246
併
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
として、
247
まさか……さう……ハツキリと、
248
左様
(
さやう
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
仰有
(
おつしや
)
り
悪
(
にく
)
いでせう。
249
其処
(
そこ
)
は
人情
(
にんじやう
)
ですから、
250
矢張
(
やつぱり
)
……ヤア
分
(
わか
)
りました。
251
さうすると
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
は、
252
クロンバーの
職
(
しよく
)
にお
就
(
つ
)
き
下
(
くだ
)
さるお
覚悟
(
かくご
)
と
拝察
(
はいさつ
)
致
(
いた
)
します。
253
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたくし
)
のやうな
愚者
(
おろかもの
)
なれど、
254
末長
(
すゑなが
)
く
可愛
(
かあい
)
がつて
下
(
くだ
)
さいませ』
255
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
周章
(
あわて
)
て、
256
宇豆姫
『モシモシ、
257
スマートさま、
258
滅相
(
めつさう
)
な
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますな。
259
妾
(
わたし
)
は
清公
(
きよこう
)
さまの
妻
(
つま
)
にならうなぞとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
つた
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
260
何卒
(
どうぞ
)
誤解
(
ごかい
)
の
無
(
な
)
きやうにお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
261
スマートボール『さうすると
貴女
(
あなた
)
はモウ
好
(
よ
)
い
年頃
(
としごろ
)
、
262
何処
(
どこ
)
までも
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
遊
(
あそ
)
ばすお
考
(
かんが
)
へですか』
263
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ……イヽエ』
264
とモガモガする。
265
スマートボール『ハヽヽヽヽ、
266
流石
(
さすが
)
は
乙女心
(
をとめごころ
)
の
恥
(
はづ
)
かしさ、
267
ハツキリと
仰有
(
おつしや
)
らぬワイ。
268
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
の
壬生菜
(
みぶな
)
と
同
(
おな
)
じぢやないが、
269
仕
(
し
)
たし
怖
(
こは
)
しと
云
(
い
)
ふ
所
(
とこ
)
ぢやな』
270
宇豆姫
(
うづひめ
)
『オホヽヽヽ、
271
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
な
当
(
あ
)
て
推量
(
すゐりやう
)
は
止
(
や
)
めて
下
(
くだ
)
さいませ。
272
妾
(
わたし
)
はまだ
外
(
ほか
)
に……』
273
スマートボール『エヽ、
274
あなたはまだ
外
(
ほか
)
にと
仰有
(
おつしや
)
つたが、
275
其
(
その
)
次
(
つぎ
)
を
続
(
つづ
)
けて
下
(
くだ
)
さいませな』
276
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
厭
(
いや
)
なこと、
277
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
堪忍
(
こらへ
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
278
スマートボール『イエイエ、
279
貴女
(
あなた
)
の
一身
(
いつしん
)
上
(
じやう
)
の
大事
(
だいじ
)
は
申
(
まを
)
すも
更
(
さら
)
なり、
280
本城
(
ほんじやう
)
に
取
(
と
)
つて
重大
(
ぢうだい
)
な
問題
(
もんだい
)
ですから、
281
何卒
(
どうぞ
)
ハツキリと
私
(
わたくし
)
迄
(
まで
)
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
282
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
妾
(
わたし
)
は
嫌
(
いや
)
で
御座
(
ござ
)
います』
283
スマートボール『これは
迷惑
(
めいわく
)
、
284
決
(
けつ
)
して
私
(
わたくし
)
は
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
して
野心
(
やしん
)
は
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
りませぬ。
285
又
(
また
)
私
(
わたくし
)
のやうな
軽薄
(
けいはく
)
な
人間
(
にんげん
)
は
嫌
(
いや
)
と
仰有
(
おつしや
)
るのは
当然
(
たうぜん
)
です』
286
宇豆姫
(
うづひめ
)
『さう
悪
(
わる
)
く
気
(
き
)
を
廻
(
まは
)
して
貰
(
もら
)
つては
困
(
こま
)
りますよ。
287
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してスマートさま、
288
貴方
(
あなた
)
を
嫌
(
きら
)
ひと
云
(
い
)
つたのぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ』
289
スマートボール『ハテ、
290
合点
(
がてん
)
のゆかぬ。
291
さうすると
権要
(
けんえう
)
の
地位
(
ちゐ
)
にあるブランジーの
清公
(
きよこう
)
様
(
さま
)
を
嫌
(
きら
)
ひと
仰有
(
おつしや
)
るのですか』
292
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ、
293
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
が
覆
(
かへ
)
るとも、
294
絶対
(
ぜつたい
)
に
嫌
(
いや
)
で
御座
(
ござ
)
います』
295
と
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたやうに、
296
ハツキリと
云
(
い
)
うて
退
(
の
)
けた。
297
スマートボール『ハテナ、
298
実際
(
じつさい
)
当
(
あた
)
つて
見
(
み
)
なくては
分
(
わか
)
らぬものだ。
299
人
(
ひと
)
の
噂
(
うはさ
)
と
薩張
(
さつぱ
)
り
裏表
(
うらおもて
)
だ』
300
と
呟
(
つぶや
)
く。
301
宇豆姫
(
うづひめ
)
『どんな
噂
(
うはさ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
りますかなア』
302
スマートボール『
余
(
あま
)
り
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
して
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だから、
303
もう
云
(
い
)
ひますまい』
304
宇豆姫
(
うづひめ
)
『チツとも
構
(
かま
)
ひませぬから
云
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さいませ。
305
お
願
(
ねが
)
ひで
御座
(
ござ
)
います』
306
スマートボール『
城内
(
じやうない
)
の
噂
(
うはさ
)
では、
307
貴女
(
あなた
)
はあれだけ
人気
(
にんき
)
のある
鶴公
(
つるこう
)
さまを
蛇蝎
(
だかつ
)
の
如
(
ごと
)
く
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
ひ、
308
権要
(
けんえう
)
の
地位
(
ちゐ
)
にある
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
の
清公
(
きよこう
)
さまに
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
り、
309
非常
(
ひじやう
)
に
御
(
ご
)
熱心
(
ねつしん
)
だと
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
りますよ。
310
蓼喰
(
たでく
)
ふ
虫
(
むし
)
も
好
(
す
)
き
好
(
ず
)
きとやら、
311
何程
(
なにほど
)
地位
(
ちゐ
)
が
高
(
たか
)
くても、
312
あれだけ
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
が
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
ふ
清公
(
きよこう
)
さまに
電波
(
でんぱ
)
をお
送
(
おく
)
り
遊
(
あそ
)
ばすとは、
313
貴女
(
あなた
)
の
日頃
(
ひごろ
)
の
立派
(
りつぱ
)
なお
心
(
こころ
)
に
照
(
て
)
り
合
(
あは
)
して、
314
些
(
すこ
)
しも
合点
(
がつてん
)
が
参
(
まゐ
)
らぬと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
りました。
315
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
316
今
(
いま
)
仰有
(
おつしや
)
つたお
言葉
(
ことば
)
が
真実
(
しんじつ
)
としますれば、
317
何事
(
なにごと
)
も
氷解
(
ひようかい
)
致
(
いた
)
しました』
318
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ、
319
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
320
スマートボール『
貴女
(
あなた
)
は
意中
(
いちう
)
の
人
(
ひと
)
があれば、
321
女房
(
にようばう
)
におなりなさるのでせうな、
322
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
は
女
(
をんな
)
としては
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つのが
本当
(
ほんたう
)
です。
323
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたくし
)
に
包
(
つつ
)
まず
匿
(
かく
)
さず
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
324
どんな
斡旋
(
あつせん
)
でも
致
(
いた
)
しますから』
325
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ、
326
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
327
何
(
ど
)
うも
不束
(
ふつつか
)
な
妾
(
わたし
)
、
328
何程
(
なにほど
)
此方
(
こちら
)
から
恋
(
こひ
)
しい
意中
(
いちう
)
の
人
(
ひと
)
があつても、
329
先方
(
むかふ
)
様
(
さま
)
にそれ
丈
(
だ
)
けのお
心
(
こころ
)
が
無
(
な
)
ければ、
330
到底
(
たうてい
)
末
(
すゑ
)
が
遂
(
と
)
げられませぬから、
331
マア
今
(
いま
)
の
処
(
ところ
)
、
332
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
になつて
下
(
くだ
)
さると
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
は
御座
(
ござ
)
いますまい。
333
妾
(
わたし
)
の
好
(
よ
)
いと
思
(
おも
)
ふ
方
(
かた
)
は
先方
(
むかう
)
からエツパツパーとお
出
(
で
)
かけ
遊
(
あそ
)
ばすだらうし、
334
先方
(
むかふ
)
様
(
さま
)
から
妾
(
わたし
)
をお
望
(
のぞ
)
み
下
(
くだ
)
さる
方
(
かた
)
に
限
(
かぎ
)
つて
妾
(
わたし
)
の
方
(
はう
)
から
虫
(
むし
)
が
好
(
す
)
かず、
335
何
(
ど
)
うも
思
(
おも
)
ふやうに
行
(
ゆ
)
かないものです。
336
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
長
(
なが
)
い
一生
(
いつしやう
)
の
間
(
あひだ
)
暮
(
くら
)
さねばならぬ
夫婦
(
ふうふ
)
の
間柄
(
あひだがら
)
、
337
気
(
き
)
の
合
(
あ
)
はぬお
方
(
かた
)
と
一生
(
いつしやう
)
暮
(
くら
)
すのは
不快
(
ふくわい
)
で
堪
(
たま
)
りませぬ。
338
女
(
をんな
)
は
夫
(
をつと
)
に
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
すべきものだと
云
(
い
)
ひますが、
339
妾
(
わたし
)
としては
些
(
すこ
)
しく
道理
(
だうり
)
に
合
(
あ
)
はない
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ひます。
340
夫
(
をつと
)
が
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つても、
341
妻
(
つま
)
として
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
を
強
(
しひ
)
らるるのは
残酷
(
ざんこく
)
です。
342
夫婦
(
ふうふ
)
は
互
(
たがひ
)
に
意見
(
いけん
)
を
交換
(
かうくわん
)
し、
343
相携
(
あひたづさ
)
へて
行
(
ゆ
)
かねばならぬもの、
344
然
(
しか
)
るに
世間
(
せけん
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
を
見
(
み
)
ますると、
345
女房
(
にようばう
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
夫
(
をつと
)
の
奴隷
(
どれい
)
か、
346
玩弄物
(
おもちや
)
のやうな
扱
(
あつか
)
ひを
受
(
う
)
け、
347
夫
(
をつと
)
が
何
(
ど
)
んな
不始末
(
ふしまつ
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しても、
348
妻
(
つま
)
として
是
(
これ
)
を
云々
(
うんぬん
)
する
権利
(
けんり
)
もなく、
349
まさか
違
(
ちが
)
へば
髻
(
たぶさ
)
を
掴
(
つか
)
んで
打
(
う
)
ち
打擲
(
ちやうちやく
)
をされ、
350
不貞腐
(
ふてくさ
)
れ
女
(
をんな
)
、
351
不柔順
(
ふじうじゆん
)
な
妻
(
つま
)
と
無理
(
むり
)
やりに
醜名
(
しうめい
)
を
着
(
き
)
せられ
実
(
じつ
)
に
無告
(
むこく
)
の
民
(
たみ
)
も
同様
(
どうやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
352
妾
(
わたし
)
は
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
つならば、
353
この
間
(
かん
)
の
消息
(
せうそく
)
をよく
弁
(
わきま
)
へた、
354
物事
(
ものごと
)
のよく
分
(
わか
)
つた
方
(
かた
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になり、
355
円満
(
ゑんまん
)
なホームを
作
(
つく
)
り、
356
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
に
面白
(
おもしろ
)
く
嬉
(
うれ
)
しく、
357
潔
(
いさぎよ
)
く
奉仕
(
ほうし
)
する
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
る
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
ち
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
います。
358
男女
(
だんぢよ
)
同権
(
どうけん
)
と
云
(
い
)
つて、
359
男子
(
だんし
)
も
女子
(
ぢよし
)
も
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
、
360
どちらも
無
(
な
)
ければなりませぬもの、
361
然
(
しか
)
るに
夫婦
(
ふうふ
)
となれば、
362
最早
(
もはや
)
同権
(
どうけん
)
ではありませぬ。
363
夫唱
(
ふしやう
)
婦随
(
ふずゐ
)
と
云
(
い
)
つて
夫
(
をつと
)
によく
仕
(
つか
)
へ、
364
何事
(
なにごと
)
にも
服従
(
ふくじう
)
するのが
妻
(
つま
)
たるの
道
(
みち
)
、
365
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
無理解
(
むりかい
)
な
夫
(
をつと
)
に
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
を
強
(
しひ
)
られ、
366
夫
(
をつと
)
の
権利
(
けんり
)
を
振
(
ふ
)
りまはされては
不快
(
ふくわい
)
で
耐
(
たま
)
りませぬから、
367
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
妻
(
つま
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
を
憐
(
あは
)
れみ、
368
同情心
(
どうじやうしん
)
をもつて
添
(
そ
)
うて
下
(
くだ
)
さる
夫
(
をつと
)
が
持
(
も
)
ち
度
(
た
)
いので
御座
(
ござ
)
います』
369
スマートボール『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
、
370
承
(
うけたま
)
はれば
御尤
(
ごもつと
)
も
千万
(
せんばん
)
だ。
371
吾々
(
われわれ
)
は
未
(
ま
)
だ
妻
(
つま
)
を
持
(
も
)
つた
事
(
こと
)
もなし、
372
夫婦
(
ふうふ
)
の
味
(
あぢ
)
は
知
(
し
)
りませぬが、
373
女
(
をんな
)
の
心理
(
しんり
)
状態
(
じやうたい
)
はそんなもので
御座
(
ござ
)
いますかなア。
374
ヤアもう
承
(
うけたま
)
はつて
人情
(
にんじやう
)
の
機微
(
きび
)
を
窺
(
うかが
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ました。
375
併
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
の
最前
(
さいぜん
)
のお
言葉
(
ことば
)
に、
376
意中
(
いちう
)
の
人
(
ひと
)
は
先方
(
むかう
)
から
応
(
おう
)
じない……との
意味
(
いみ
)
を
漏
(
も
)
れ
承
(
うけたま
)
はりましたが、
377
意中
(
いちう
)
の
方
(
かた
)
と
云
(
い
)
ふのは
何方
(
どなた
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
378
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ……』
379
と
云
(
い
)
つて
俯
(
うつむ
)
いた
儘
(
まま
)
、
380
顔
(
かほ
)
を
匿
(
かく
)
す。
381
スマートボール『
貴女
(
あなた
)
、
382
意中
(
いちう
)
の
人
(
ひと
)
にエツパツパーをやられた
時
(
とき
)
のお
心持
(
こころもち
)
は、
383
どんなにありましたかな。
384
女
(
をんな
)
の
心
(
こころ
)
も、
385
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
も
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
、
386
意中
(
いちう
)
の
女
(
をんな
)
に
撥
(
はぢ
)
かれた
男
(
をとこ
)
は、
387
層一層
(
そういつそう
)
残念
(
ざんねん
)
なものですよ。
388
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
が
女
(
をんな
)
の
為
(
ため
)
に
肱鉄
(
ひぢてつ
)
を
喰
(
く
)
はされ、
389
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
に
対
(
たい
)
して
合
(
あは
)
す
顔
(
かほ
)
が
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
うて、
390
庭先
(
にはさき
)
の
松
(
まつ
)
で、
391
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
らうとした
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
がありますよ。
392
併
(
しか
)
もその
男
(
をとこ
)
は
貴女
(
あなた
)
に
撥
(
はぢ
)
かれて……』
393
宇豆姫
(
うづひめ
)
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰
(
あふ
)
せられます。
394
妾
(
わたし
)
に
撥
(
はぢ
)
かれて
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
りかけたとは、
395
それは
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
396
スマートボール『
白
(
しら
)
ばくれ
遊
(
あそ
)
ばしてはいけませぬ。
397
現
(
げん
)
に
貴女
(
あなた
)
は
撥
(
はぢ
)
いたぢやありませぬか。
398
撥
(
はぢ
)
かれた
男
(
をとこ
)
は
此
(
こ
)
の
庭先
(
にはさき
)
の
松
(
まつ
)
で、
399
プリン プリンと
空中
(
くうちう
)
活動
(
くわつどう
)
を
開始
(
かいし
)
して
居
(
ゐ
)
た。
400
私
(
わたくし
)
はフト
通
(
とほ
)
り
合
(
あは
)
せて、
401
驚
(
おどろ
)
いて
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
つた
哀
(
あは
)
れな
男
(
をとこ
)
が
御座
(
ござ
)
います』
402
宇豆姫
(
うづひめ
)
『エヽ……』
403
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
404
又
(
また
)
俯
(
うつむ
)
く。
405
スマートボール『
貴女
(
あなた
)
は
右守
(
うもりの
)
神
(
かみ
)
鶴公
(
つるこう
)
さまを
月
(
つき
)
照
(
て
)
る
夜半
(
よは
)
に、
406
素気
(
すげ
)
なくも
蜂
(
はち
)
を
払
(
はら
)
ふやうな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はせ、
407
恥
(
はぢ
)
を
掻
(
か
)
かせたのでせう、
408
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
が
寝
(
ね
)
ても
覚
(
さ
)
めても
貴女
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
詰
(
つ
)
め、
409
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
貴女
(
あなた
)
が
清公
(
きよこう
)
さまの
女房
(
にようばう
)
になられるとの
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
き、
410
真実
(
ほんと
)
に
可憐
(
かはい
)
さうに、
411
大悲観
(
だいひくわん
)
の
極
(
きよく
)
に
落
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
ますよ。
412
貴女
(
あなた
)
も
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
罪
(
つみ
)
な
方
(
かた
)
ですな』
413
宇豆姫
(
うづひめ
)
『エヽ、
414
あの
鶴公
(
つるこう
)
さまが、
415
そんなに
御
(
ご
)
熱心
(
ねつしん
)
でゐらつしやるので
御座
(
ござ
)
いますか』
416
スマートボール『
貴女
(
あなた
)
のお
嫌
(
きら
)
ひな
鶴公
(
つるこう
)
さまが、
417
そこ
迄
(
まで
)
執着
(
しふちやく
)
があるとお
聞
(
き
)
きになつては、
418
聊
(
いささ
)
か
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
でせうな』
419
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
何
(
ど
)
うして
何
(
ど
)
うして
御
(
ご
)
勿体
(
もつたい
)
ない。
420
妾
(
わたし
)
はあんなお
方
(
かた
)
に、
421
仮令
(
たとへ
)
半時
(
はんとき
)
なりとも
添
(
そ
)
うて
見
(
み
)
たう
御座
(
ござ
)
いますワ』
422
と
真赤
(
まつか
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
423
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたやうに
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
424
クレツと
後
(
うしろ
)
を
向
(
む
)
き
顔
(
かほ
)
を
匿
(
かく
)
した。
425
スマートボール『ヤア、
426
それでやつと
安心
(
あんしん
)
しました。
427
流石
(
さすが
)
は
貴女
(
あなた
)
お
目
(
め
)
がよう
利
(
き
)
きます。
428
恋
(
こひ
)
も
其処
(
そこ
)
迄
(
まで
)
ゆけば
神聖
(
しんせい
)
ですよ。
429
屹度
(
きつと
)
私
(
わたくし
)
がお
力
(
ちから
)
になつて
此
(
この
)
恋
(
こひ
)
を
叶
(
かな
)
へさせますから、
430
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
431
宇豆姫
(
うづひめ
)
『…………』
432
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ、
433
金
(
きん
)
、
434
銀
(
ぎん
)
、
435
鉄
(
てつ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
従
(
したが
)
へ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
つた
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は、
436
言葉
(
ことば
)
静
(
しづか
)
に、
437
黄竜姫
『
宇豆姫
(
うづひめ
)
様
(
さま
)
、
438
……ヤア
貴方
(
あなた
)
はスマートボールさま、
439
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
い
所
(
ところ
)
に
参
(
まゐ
)
つたのではありますまいかな。
440
お
話
(
はなし
)
が
御座
(
ござ
)
いますれば、
441
暫
(
しばら
)
く
彼方
(
あちら
)
に
控
(
ひか
)
へて
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
致
(
いた
)
しますから、
442
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
、
443
お
話
(
はなし
)
を
済
(
す
)
ませて
下
(
くだ
)
さい。
444
妾
(
わたし
)
は
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
控
(
ひか
)
へてお
待
(
ま
)
ち
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
ります』
445
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いた
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
容
(
かたち
)
を
改
(
あらた
)
め、
446
襟
(
えり
)
を
正
(
ただ
)
し、
447
座
(
ざ
)
を
立
(
た
)
つて
下座
(
げざ
)
に
坐
(
すわ
)
り、
448
宇豆姫
(
うづひめ
)
『コレハコレハ、
449
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
、
450
よくこそ
被入
(
いら
)
せられました。
451
どうぞ
此方
(
こちら
)
へ
御
(
ご
)
着座
(
ちやくざ
)
下
(
くだ
)
さいませ』
452
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『
左様
(
さやう
)
なれば
着座
(
ちやくざ
)
致
(
いた
)
しませう。
453
時
(
とき
)
に
宇豆姫
(
うづひめ
)
様
(
さま
)
、
454
貴女
(
あなた
)
に
折入
(
をりい
)
つて
申上
(
まをしあ
)
げ
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
いますから、
455
……スマートボール、
456
暫
(
しばら
)
く
席
(
せき
)
をお
外
(
はづ
)
し
下
(
くだ
)
さい。
457
金
(
きん
)
、
458
銀
(
ぎん
)
、
459
鉄
(
てつ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
暫
(
しば
)
し
遠慮
(
ゑんりよ
)
召
(
め
)
されや』
460
スマートボールは、
461
スマートボール
『ハイ、
462
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
463
と
素直
(
すなほ
)
に
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
退
(
の
)
いた。
464
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
465
暫
(
しばら
)
く
両人
(
りやうにん
)
の
間
(
あひだ
)
には
沈黙
(
ちんもく
)
の
幕
(
まく
)
が
下
(
お
)
りた。
466
屋外
(
をくぐわい
)
には
嵐
(
あらし
)
の
音
(
おと
)
轟々
(
がうがう
)
と
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
り、
467
庭園
(
ていえん
)
に
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れたる
花弁
(
はなびら
)
を
惜気
(
をしげ
)
もなく
散
(
ち
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
468
晃々
(
くわうくわう
)
たる
太陽
(
たいやう
)
の
光
(
ひかり
)
は
戸
(
と
)
の
隙間
(
すきま
)
より
細
(
ほそ
)
く
長
(
なが
)
く
線
(
せん
)
を
引
(
ひ
)
き、
469
煙
(
けむり
)
のやうな
塵埃
(
ごみ
)
がモヤモヤと
飛散
(
ひさん
)
して
居
(
を
)
るのが、
470
キラキラと
日光
(
につくわう
)
に
輝
(
かがや
)
いて
不知火
(
しらぬひ
)
の
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
471
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『モシ
宇豆姫
(
うづひめ
)
さま、
472
御覧
(
ごらん
)
遊
(
あそ
)
ばせ。
473
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れたる
百
(
もも
)
の
花
(
はな
)
に
向
(
むか
)
うて、
474
日天
(
につてん
)
様
(
さま
)
が
晃々
(
くわうくわう
)
と
輝
(
かがや
)
きたまふにも
関
(
かか
)
はらず、
475
雲
(
くも
)
も
無
(
な
)
きに
暴風
(
あらし
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
み、
476
落花
(
らくくわ
)
狼藉
(
らうぜき
)
、
477
庭
(
には
)
の
面
(
も
)
は
一面
(
いちめん
)
に
花蓆
(
はなむしろ
)
を
敷
(
し
)
き
詰
(
つ
)
めたやうでは
御座
(
ござ
)
いませぬか。
478
実
(
げ
)
に
花
(
はな
)
永久
(
とこしへ
)
に
梢
(
こずゑ
)
に
止
(
とど
)
まらむとすれど
嵐
(
あらし
)
来
(
きた
)
つて
是
(
これ
)
を
散
(
ち
)
らす。
479
樹木
(
じゆもく
)
静
(
しづか
)
ならむとすれど
風
(
かぜ
)
止
(
や
)
まず、
480
子
(
こ
)
養
(
やしな
)
はむとすれども
親
(
おや
)
待
(
ま
)
たずとかや、
481
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
或
(
ある
)
程度
(
ていど
)
迄
(
まで
)
は、
482
吾々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
の
自由
(
じいう
)
には
成
(
な
)
らぬもので
御座
(
ござ
)
いますな。
483
夫婦
(
ふうふ
)
の
道
(
みち
)
だとて
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
、
484
自分
(
じぶん
)
の
添
(
そ
)
ひ
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
ふ
夫
(
をつと
)
に
添
(
そ
)
へなかつたり、
485
自分
(
じぶん
)
の
嫌
(
いや
)
で
耐
(
たま
)
らぬ
男
(
をとこ
)
に
一生
(
いつしやう
)
を
任
(
まか
)
さねばならぬ
事
(
こと
)
は、
486
まま
世界
(
せかい
)
にある
習
(
なら
)
ひで
御座
(
ござ
)
います。
487
何事
(
なにごと
)
も
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
に
生
(
うま
)
れた
以上
(
いじやう
)
は、
488
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
に
任
(
まか
)
し、
489
何
(
ど
)
う
成
(
な
)
り
行
(
ゆ
)
くのも
因縁
(
いんねん
)
と
諦
(
あきら
)
めて
我
(
が
)
を
出
(
だ
)
さぬのが
天地
(
てんち
)
の
親神
(
おやがみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して、
490
孝行
(
かうかう
)
と
申
(
まを
)
すものでは
御座
(
ござ
)
いますまいか』
491
と
遠廻
(
とほまは
)
しに
網
(
あみ
)
を
張
(
は
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
492
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
を
早
(
はや
)
くも
感
(
かん
)
づいた
宇豆姫
(
うづひめ
)
は、
493
ハツと
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせ
乍
(
なが
)
ら
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
にて、
494
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
の
仰
(
あふ
)
せの
通
(
とほ
)
り、
495
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
人間
(
にんげん
)
の
勝手
(
かつて
)
にはならぬもので
御座
(
ござ
)
います』
496
と
僅
(
わづか
)
に
応酬
(
おうしう
)
した。
497
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『
今
(
いま
)
改
(
あらた
)
めて
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
が、
498
宇豆姫
(
うづひめ
)
に
申
(
まを
)
し
渡
(
わた
)
す
事
(
こと
)
が
御座
(
ござ
)
います』
499
と
儼然
(
げんぜん
)
として
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
500
最
(
もつと
)
も
荘重
(
さうちよう
)
な
厳格
(
げんかく
)
な
口調
(
くてう
)
にて、
501
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『
此
(
この
)
地恩城
(
ちおんじやう
)
は、
502
清公
(
きよこう
)
を
以
(
もつ
)
て
左守
(
さもりの
)
神
(
かみ
)
と
神定
(
かむさだ
)
め、
503
ブランジーの
職
(
しよく
)
を
授
(
さづ
)
けたる
事
(
こと
)
は、
504
和女
(
そなた
)
の
既
(
すで
)
に
知
(
し
)
らるる
所
(
ところ
)
、
505
就
(
つい
)
てはクロンバーとして
和女
(
そなた
)
を
清公
(
きよこう
)
が
妻
(
つま
)
に
定
(
さだ
)
めまする。
506
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
、
507
よもや
違背
(
ゐはい
)
はありますまい。
508
サア
直様
(
すぐさま
)
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
承
(
うけたま
)
はりませう』
509
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
胸
(
むね
)
に
警鐘
(
けいしよう
)
乱打
(
らんだ
)
の
響
(
ひび
)
き、
510
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
突発
(
とつぱつ
)
せし
狼狽
(
うろた
)
へ
方
(
かた
)
をジツと
耐
(
こら
)
へ、
511
さあらぬ
態
(
てい
)
にて
胸
(
むね
)
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
512
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ、
513
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
514
不束
(
ふつつか
)
な
妾
(
わたし
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
を、
515
勿体
(
もつたい
)
無
(
な
)
くもクロンバーの
位置
(
ゐち
)
に
据
(
す
)
ゑ、
516
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
驍名
(
げうめい
)
隠
(
かく
)
れ
無
(
な
)
き
清公
(
きよこう
)
様
(
さま
)
の
妻
(
つま
)
にお
定
(
さだ
)
め
下
(
くだ
)
さいました
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
思召
(
おぼしめ
)
し、
517
早速
(
さつそく
)
お
受
(
うけ
)
致
(
いた
)
しますのが
本意
(
ほんい
)
では
御座
(
ござ
)
いますが、
518
何卒
(
どうぞ
)
暫
(
しばら
)
く
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
を
下
(
くだ
)
さいませ。
519
熟考
(
じゆくかう
)
した
上
(
うへ
)
で
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
致
(
いた
)
しませう』
520
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
が
心
(
こころ
)
を
籠
(
こ
)
めた
夫婦
(
ふうふ
)
の
結婚
(
けつこん
)
、
521
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
良
(
よ
)
き
返事
(
へんじ
)
をして
下
(
くだ
)
されや』
522
宇豆姫
(
うづひめ
)
『ハイ、
523
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
熟考
(
じゆくかう
)
の
上
(
うへ
)
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
致
(
いた
)
しませう』
524
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は
些
(
すこ
)
しく
言葉
(
ことば
)
を
強
(
つよ
)
め、
525
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『もはや
熟考
(
じゆくかう
)
の
余地
(
よち
)
は
有
(
あ
)
りますまい。
526
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
為
(
た
)
め、
527
お
道
(
みち
)
の
為
(
た
)
め、
528
身命
(
しんめい
)
を
捧
(
ささ
)
げた
貴女
(
あなた
)
、
529
仮令
(
たとへ
)
少々
(
せうせう
)
お
気
(
き
)
に
足
(
た
)
らぬ
所
(
ところ
)
があつても、
530
其処
(
そこ
)
を
耐
(
た
)
へ
忍
(
しの
)
ぶのが
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
の
教
(
をし
)
ゆる
所
(
ところ
)
、
531
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ずお
取
(
と
)
り
違
(
ちが
)
ひのないやうに……』
532
と
退
(
の
)
つぴきならぬ
釘鎹
(
くぎかすがい
)
、
533
進退
(
しんたい
)
維谷
(
これきは
)
まつた
宇豆姫
(
うづひめ
)
は、
534
何
(
なん
)
の
答
(
こたへ
)
も
ないじやくり
、
535
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
む
哀
(
あは
)
れさよ。
536
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『
一時
(
ひととき
)
の
猶予
(
いうよ
)
を
致
(
いた
)
しまする。
537
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
良
(
よ
)
く
熟考
(
じゆくかう
)
をなさいませ。
538
本末
(
ほんまつ
)
自他
(
じた
)
公私
(
こうし
)
の
大道
(
だいだう
)
を
誤
(
あやま
)
らないように、
539
呉
(
く
)
れ
呉
(
ぐ
)
れも
注意
(
ちうい
)
して
置
(
お
)
きます』
540
と
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つ
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
の
重石
(
おもし
)
をかけられ、
541
宇豆姫
(
うづひめ
)
は、
542
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
極
(
きよく
)
に
達
(
たつ
)
し、
543
慄
(
ふる
)
い
声
(
ごゑ
)
になつて、
544
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
、
545
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う
存
(
ぞん
)
じます。
546
暫
(
しばら
)
くの
御
(
ご
)
猶予
(
いうよ
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
547
と
僅
(
わづか
)
に
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つた。
548
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は
莞爾
(
につこ
)
としてこの
場
(
ば
)
を
悠々
(
いういう
)
と
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
る。
549
後
(
あと
)
に
宇豆姫
(
うづひめ
)
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
550
夢
(
ゆめ
)
か
現
(
うつつ
)
か
幻
(
まぼろし
)
か、
551
夢
(
ゆめ
)
ならば
早
(
はや
)
く
覚
(
さ
)
めよと、
552
とつおいつ、
553
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
たりしが、
554
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
嗚呼
(
ああ
)
矢張
(
やつぱり
)
夢
(
ゆめ
)
ではない。
555
アヽ
何
(
ど
)
うしようぞ。
556
何
(
ど
)
うして
是
(
これ
)
が
耐
(
た
)
へられよう。
557
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
、
558
お
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
とは
云
(
い
)
ひながら、
559
妾
(
わたし
)
程
(
ほど
)
因果
(
いんぐわ
)
なものが
世
(
よ
)
に
在
(
あ
)
らうか。
560
何故
(
なぜ
)
に
男
(
をとこ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
なかつただらう』
561
とワツと
許
(
ばか
)
り、
562
大河
(
おほかは
)
に
濁水
(
だくすゐ
)
氾濫
(
はんらん
)
し、
563
堤防
(
ていばう
)
を
崩潰
(
ほうくわい
)
せし
如
(
ごと
)
く、
564
一度
(
いちど
)
にどつと
涙川
(
なみだがは
)
、
565
身
(
み
)
も
浮
(
う
)
く
許
(
ばか
)
り
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
566
廊下
(
らうか
)
を
通
(
とほ
)
りかかつた
右守
(
うもりの
)
神
(
かみ
)
鶴公
(
つるこう
)
は、
567
耳敏
(
みみさと
)
くも
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけ、
568
何事
(
なにごと
)
の
変事
(
へんじ
)
突発
(
とつぱつ
)
せしかと
慌
(
あわただ
)
しくドアを
押開
(
おしあ
)
け
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
569
鶴公
『モシモシ、
570
宇豆姫
(
うづひめ
)
様
(
さま
)
、
571
如何
(
どう
)
なさいました。
572
腹
(
はら
)
が
痛
(
いた
)
みますか……
介抱
(
かいほう
)
さして
下
(
くだ
)
さいませ』
573
と
親切
(
しんせつ
)
に
後
(
うしろ
)
に
廻
(
まは
)
つて
横腹
(
よこはら
)
の
辺
(
あた
)
りを
抱
(
かか
)
へた。
574
癪
(
しやく
)
を
止
(
とど
)
むる
男
(
をとこ
)
の
力
(
ちから
)
、
575
恋
(
こひ
)
の
力
(
ちから
)
と
一
(
ひと
)
つになつて
宇豆姫
(
うづひめ
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
576
宇豆姫
『
是
(
これ
)
がお
手
(
て
)
の
握
(
にぎ
)
り
納
(
をさ
)
め』
577
と
云
(
い
)
はぬ
許
(
ばか
)
りに、
578
日頃
(
ひごろ
)
恋慕
(
こひした
)
ふ
右守
(
うもりの
)
神
(
かみ
)
の
手
(
て
)
も
砕
(
くだ
)
けむ
許
(
ばか
)
りに
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
り
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
め、
579
涙
(
なみだ
)
の
顔
(
かほ
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げて、
580
鶴公
(
つるこう
)
の
顔
(
かほ
)
を
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
め、
581
宇豆姫
(
うづひめ
)
『
鶴公
(
つるこう
)
様
(
さま
)
、
582
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
583
情
(
つれ
)
無
(
な
)
き
女
(
をんな
)
と
御
(
お
)
蔑
(
さげす
)
み、
584
御
(
お
)
恨
(
うら
)
み
遊
(
あそ
)
ばしたで
御座
(
ござ
)
いませう。
585
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
は
決
(
けつ
)
して
貴男
(
あなた
)
様
(
さま
)
を
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
つて
居
(
を
)
るのでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
586
余
(
あま
)
りの
嬉
(
うれ
)
しさと
驚
(
おどろ
)
きに、
587
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
の
事
(
こと
)
をいつぞやの
夜
(
よる
)
致
(
いた
)
しました。
588
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
のお
咎
(
とが
)
めも
遊
(
あそ
)
ばさず
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
御
(
ご
)
介抱
(
かいはう
)
下
(
くだ
)
さいまするお
志
(
こころざし
)
、
589
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
儘
(
まま
)
息
(
いき
)
が
絶
(
た
)
えても、
590
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
恨
(
うら
)
みは
御座
(
ござ
)
いませぬ』
591
と
又
(
また
)
もや
咽
(
むせ
)
び
泣
(
な
)
く
其
(
その
)
可憐
(
いぢ
)
らしさ。
592
鶴公
(
つるこう
)
『アヽ
其
(
その
)
お
心
(
こころ
)
とは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
593
情
(
つれ
)
無
(
な
)
い
貴女
(
あなた
)
と、
594
今
(
いま
)
の
今迄
(
いままで
)
恨
(
うら
)
んで
居
(
を
)
りました。
595
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
596
仮令
(
たとへ
)
貴女
(
あなた
)
と
偕老
(
かいらう
)
同穴
(
どうけつ
)
の
契
(
ちぎり
)
は
結
(
むす
)
ばずとも、
597
其
(
そ
)
のお
言葉
(
ことば
)
を
一言
(
ひとこと
)
承
(
うけたま
)
はつた
上
(
うへ
)
は、
598
私
(
わたくし
)
は
最早
(
もはや
)
何一
(
なにひと
)
つ
恨
(
うら
)
みは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
599
アヽよく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいました』
600
と
両眼
(
りやうがん
)
に
涙
(
なみだ
)
を
浮
(
うか
)
べ
目
(
め
)
を
しば
叩
(
たた
)
き、
601
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
男泣
(
をとこな
)
きに
泣
(
な
)
く。
602
割
(
わ
)
りなき
恋路
(
こひぢ
)
の
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
なんによ
)
他
(
よそ
)
の
見
(
み
)
る
目
(
め
)
も
哀
(
あは
)
れなり。
603
(
大正一一・七・七
旧閏五・一三
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 与太理縮
(B)
(N)
望の縁 >>>
霊界物語
>
第25巻
> 第1篇 相縁奇縁 > 第3章 鶍の恋
Tweet
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【03 鶍の恋|第25巻(子の巻)|霊界物語/rm2503】
合言葉「みろく」を入力して下さい→