霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 改心(かいしん)(じつ)〔七六一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻 篇:第4篇 神花霊実 よみ(新仮名遣い):しんかれいじつ
章:第15章 改心の実 よみ(新仮名遣い):かいしんのじつ 通し章番号:761
口述日:1922(大正11)年07月11日(旧閏05月17日) 口述場所: 筆録者:谷村真友 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月25日
概要: 舞台:ジャンナ郷、諏訪の湖 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
黄竜姫、蜈蚣姫、梅子姫は、友彦とテールス姫を従えてジャンナの里にやってきた。一行は友彦の館で歓待を受けた後、里人に洗礼や宣伝歌を授け、玉野ケ原にやってきた。
諏訪の湖のほとりの祠に参拝すると、五人は湖で身を清めて五日五夜禊を修した。夜明けに大鳥が飛び立つ西北を見ると、向こうから鳥の背に乗って、四五人の神人がやってくるのが見えた。
それは金色の霊鳥・八咫烏に乗った、玉治別、初稚姫、玉能姫、久助、お民の五人であった。一行はこの姿を見て驚きまた喜んだ。
一行は湖を渡ろうと思案に暮れている。黄竜姫は翻然として悟り、名誉心を捨てて身魂の向上のために徹底的に修行する心持を露にした。すると梅子姫は、その言葉をずっと待っていたのだと厳然として、しかし微笑を浮かべながら明かした。
続いて友彦も、ジャンナの里で救世主然としていた心の罪を懺悔し、梅子姫に大神様への罪の赦しのお取り成しを願い出た。梅子姫は嬉し涙で友彦を赦した。
続いて蜈蚣姫も娘への愛着心や、傲慢からこれまで梅子姫を見下していたことを懺悔し、梅子姫は赦した。続いてテールス姫も懺悔をなし、梅子姫はもっとも罪が軽いと受け入れた。
梅子姫は湖面に向かって暗祈黙祷した。すると西北の空から、幾百もの大鳥がこちらに戻ってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-09-14 17:01:43 OBC :rm2515
愛善世界社版:221頁 八幡書店版:第5輯 111頁 修補版: 校定版:232頁 普及版:97頁 初版: ページ備考:
001 黄竜姫(わうりようひめ)002梅子姫(うめこひめ)003友彦(ともひこ)004テールス(ひめ)005蜈蚣姫(むかでひめ)()(にん)(とも)に、006地恩城(ちおんじやう)(あと)数百(すうひやく)()007山路(やまみち)()えて玉野原(たまのはら)諏訪(すは)(みづうみ)竜宮城(りうぐうじやう)(すす)むこととなつた。008(あと)には左守(さもり)009スマートボール夫婦(ふうふ)(はじ)右守(うもり)鶴公(つるこう)010貫州(くわんしう)011武公(たけこう)012マール、013ミユーズの幹部(かんぶ)(れん)をして留守(るす)師団長(しだんちやう)とし、014(くさ)(みの)015(たけ)小笠(をがさ)(かる)扮装(いでたち)016タロの()(えだ)をつきながら、017岩石(がんせき)起伏(きふく)せる羊腸(やうちやう)小径(こみち)(のぼ)りつ(くだ)りつ、018(たに)()()谷間(たにま)(つた)(やうや)くにして、019ジヤンナの友彦(ともひこ)割拠(かつきよ)せし(さと)()いた。
020 (おに)(やう)荒男(あらをとこ)021赤銅(しやくどう)(やう)(かほ)(あを)(いれづみ)を、022(かほ)一面(いちめん)(えど)りし(もの)先頭(せんとう)に、023老若(らうにやく)男女(なんによ)六ケ敷(むつかし)(かほ)して黄竜姫(わうりようひめ)一行(いつかう)を『ウワーウワー』と(とき)(こゑ)()(なが)歓迎(くわんげい)した。024(ひる)(なほ)(くら)森林(しんりん)(つつ)まれたる(この)(さと)は、025一見(いつけん)(おに)(やう)人種(じんしゆ)(ばか)りであるが、026(いた)つて質朴(しつぼく)()正直(しやうぢき)信仰心(しんかうしん)()んで()た。027(まが)つた(はな)(あか)友彦(ともひこ)を、028天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)(あふ)いで、029尊敬(そんけい)した(ほど)郷人(さとびと)は、030天女(てんによ)(ごと)黄竜姫(わうりようひめ)031梅子姫(うめこひめ)(たま)(あざむ)(きよ)姿(すがた)(なが)めて、032(あま)河原(かはら)よりネルソン(ざん)鳥船(とりぶね)(じやう)天降(あまくだ)(たま)ひしを、033ジヤンナの(さと)救世主(きうせいしゆ)友彦(ともひこ)夫婦(ふうふ)奉迎(ほうげい)して(かへ)りしものと(かた)(しん)じ、034一斉(いつせい)砂糖屋(さたうや)十能(おつかき)()(やう)な、035(おほ)きな(くろ)()(ひろ)げ、
036土人(どじん)『ウツポツポ ウツポツポ、037オーレンス、038サーチライス、039ターレンス、040チーター チーター』
041(さけ)(なが)歓迎(くわんげい)()(へう)した。042(この)意味(いみ)は、043(かみ)(さま)か、044(てん)御使(みつかひ)か、045(ただし)(われ)()(すく)光明(くわうみやう)(かみ)か、046(じつ)立派(りつぱ)(だい)救世主(きうせいしゆ)が、047(この)(さと)()(くだ)(あそ)ばした。048吾々(われわれ)最早(もはや)絶対(ぜつたい)(なや)みに()ふこともなく、049永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)天国(てんごく)浄土(じやうど)(たのし)みを(あぢ)はうことが出来(でき)るであらう。050()()(ゆたか)(みの)り、051鼓腹(こふく)撃攘(げきじやう)(めぐ)みに(よく)することは()()るよりも明瞭(めいれう)だ。052有難(ありがた)い、053勿体(もつたい)ない、054(たつと)い、055(うれ)しい。056吾々(われわれ)郷人(さとびと)(ちから)(かぎ)(こころ)(きは)みを、057(この)生神(いきがみ)(さま)(ささ)げませう』と()(こと)である。058……ジヤンナの(さと)救世主(きうせいしゆ)(あふ)がれたる友彦(ともひこ)は、059郷人(さとびと)(むか)ひ、
060友彦『ターリスト、061テールターイン、062ハールエース、063オーレンス、064サーチライス、065カーテル、066ライド』
067(さけ)ぶ。068(この)(こゑ)一同(いちどう)大地(だいち)平伏(へいふく)(うれ)(なみだ)(なが)して歓喜(くわんき)した。069友彦(ともひこ)(また)もや、
070友彦『ハール ハール』
071()()げて(さけ)ぶや、072大勢(おほぜい)土人(どじん)一行(いつかう)手車(てぐるま)()せ、073三五(あななひ)(かみ)(まつ)りし(やや)(ひろ)(やかた)(なか)に、074御輿(みこし)(かつ)(やう)塩梅(あんばい)(しき)何事(なにごと)(わか)らぬ(こと)(しやべ)(なが)奥深(おくふか)(おく)()く。
075 黄竜姫(わうりようひめ)一行(いつかう)友彦(ともひこ)(やかた)奥深(おくふか)(まね)かれ、076色々(いろいろ)(めづ)らしき果物(くだもの)饗応(きやうおう)され、077()つバナヽの(あぢ)舌鼓(したつづみ)()(なが)ら、078一二(いちに)(にち)此処(ここ)逗留(とうりう)し、079郷人(さとびと)(たい)して黄竜姫(わうりようひめ)080梅子姫(うめこひめ)よりバプテスマを(ほどこ)し、081宣伝歌(せんでんか)(をし)へた(うへ)082数十(すうじふ)(にん)郷人(さとびと)(おく)られ、083一行(いつかう)()(にん)(やうや)くにして玉野(たまの)(はら)広場(ひろば)無事(ぶじ)安着(あんちやく)することとなつた。
084 途々(みちみち)()()(くら)ひ、085谷水(たにみづ)()み、086芭蕉(ばせう)()(しとね)となし(なが)ら、087猛獣(まうじう)088大蛇(をろち)(むれ)言霊(ことたま)(さづ)帰順(きじゆん)悦服(えつぷく)させつつ(いよいよ)此処(ここ)金銀(きんぎん)(すな)(かがや)広野(ひろの)(はら)辿(たど)りつく。089一行(いつかう)諏訪(すは)(うみ)(ほとり)()てたる(ちひ)さき(ほこら)(まへ)端坐(たんざ)し、090天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、091(かたはら)椰子(やし)()(もり)一夜(いちや)()かすこととなりぬ。
092 エスタン(ざん)後方(こうはう)(のぞ)いて(あら)はれたる大太陽(だいたいやう)は、093諏訪(すは)湖水(こすゐ)魚鱗(ぎよりん)(なみ)(えい)じ、094金銀(きんぎん)(むしろ)()()めたる(ごと)く、095(その)(うるは)しさ(たと)ふるにものなく、096一行(いつかう)()(にん)湖水(こすゐ)身体(からだ)(きよ)め、097七日(なぬか)七夜(ななよ)此処(ここ)(みそぎ)(しう)神恩(しんおん)感謝(かんしや)せり。
098 ()夕陽(せきやう)(かたむ)いて()()はれぬ(うるは)しき(とり)(こゑ)099(ねぐら)(もと)めて(おのおの)密林(みつりん)(かへ)()く。100純白(じゆんぱく)(つばさ)大鳥(おほどり)(やみ)()うて(ひく)黄昏時(たそがれどき)より(あら)はれ(きた)り、101湖面(こめん)縦横(じうわう)無尽(むじん)翺翔(こうしやう)する。102(その)(すう)幾千万(いくせんまん)()とも(かぞ)(がた)く、103(つき)()夜半(よは)(あか)るき(ばか)りの光景(くわうけい)なり。104(これ)信天翁(あはうどり)祖先(そせん)でアンボリーと()大鳥(おほとり)なりける。
105 一行(いつかう)()(にん)椰子(やし)樹下(じゆか)()(ひそ)め、106天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)()()くるを()つ。107夜明(よあ)けに間近(まぢか)くなりたる(とき)しも、108頭上(づじやう)にバタバタと(とり)()ばたき(はげ)しく(きこ)()たる。109()れば両翼(りやうよく)(なが)三丈(さんぢやう)(ばか)りのアンボリー、110椰子(やし)樹上(じゆじやう)にとまつて、111一同(いちどう)(あたま)(おほ)ふて()る、112それが夜明(よあ)けに間近(まぢか)くなつたので(いち)()()(あが)つた(おと)である。113一同(いちどう)(とり)()()方面(はうめん)()(はな)たず打看守(うちみまも)れば、114ほんのりと薄紅(うすあか)くうす(しろ)大空(おほぞら)()めながら、115際限(さいげん)もなき大原野(だいげんや)西北(せいほく)(そら)()して、116一羽(いちは)(のこ)らず飛去(とびさ)れり。
117
118ジヤンナの(さと)三五(あななひ)
119(かみ)(まつ)りし友彦(ともひこ)
120(やかた)一行(いつかう)()()かし
121一日(ひとひ)二夜(ふたよ)逗留(とうりう)
122タイヤ、ブースを(はじ)めとし
123数多(あまた)土人(どじん)皇神(すめかみ)
124(まこと)(みち)()(さと)
125鎮魂(みたましづめ)やバプテスマ
126一人(ひとり)(のこ)らず(ほどこ)して
127(ひる)なほ(くら)森林(しんりん)
128小径(こみち)(つた)郷人(さとびと)
129賑々(にぎにぎ)しくも(おく)られて
130(やうや)くセムの谷間(たにあひ)
131辿(たど)(きた)れる折柄(をりから)
132黄竜姫(わうりようひめ)皇神(すめかみ)
133(うづ)(みこと)(たま)()りて
134(おく)(きた)りし郷人(さとびと)
135(あつ)言葉(ことば)をかけながら
136(ひがし)西(にし)(わか)れつつ
137(つゆ)(まくら)数多(かずおほ)
138(かさ)ねて此処(ここ)玉野原(たまのはら)
139金銀(きんぎん)(かがや)(みち)(うへ)
140(いさ)(すす)んで諏訪(すは)()
141(ほとり)にやうやう安着(あんちやく)
142(ほこら)(まへ)端坐(たんざ)して
143一行(いつかう)()(にん)安穏(あんのん)
144(たづ)(きた)りし神恩(しんおん)
145感謝(かんしや)(をは)清鮮(せいせん)
146湖水(こすゐ)()をば(ひた)しつつ
147七日(なぬか)七夜(ななよ)(たま)(あら)
148椰子樹(やしじゆ)(かげ)()(ひそ)
149夜明(よあ)けを()てる折柄(をりから)
150樹上(じゆじやう)(きこ)ゆる()ばたきの
151(おと)(おどろ)(なが)むれば
152(ゆき)(あざむ)白翼(はくよく)
153パツと(ひら)いた大鳥(おほとり)
154(そら)(ふう)じて数多(かずおほ)
155西北(せいほく)()して()んで()
156一行(いつかう)()(にん)空中(くうちう)
157(あふ)()つむる(をり)もあれ
158黄金(こがね)(つばさ)()せられて
159此方(こなた)(むか)つて()(きた)
160四五(しご)神人(しんじん)悠々(いういう)
161湖水(こすゐ)目蒐(めが)けて(くだ)()
162(その)光景(くわうけい)崇高(けだか)さに
163()(にん)(おも)はず()(あは)
164祝詞(のりと)(とな)へつ(なが)()
165黄金(こがね)(とり)()せられし
166男女(なんによ)()(にん)神人(しんじん)
167(なみ)(うへ)をばスレスレに
168(きた)(むか)つて(すす)()
169これぞ玉治別(たまはるわけ)宣使(せんし)
170初稚姫(はつわかひめ)玉能姫(たまのひめ)
171久助(きうすけ)(たみ)五人(ごにん)(づれ)
172(かみ)御言(みこと)(かしこ)みて
173(うづ)(をしへ)(くま)もなく
174(つた)(みちび)(かみ)(わざ)
175𪫧怜(うまら)委曲(つばら)()(をは)
176玉依姫(たまよりひめ)御使(みつかひ)
177黄金色(わうごんしよく)霊鳥(れいてう)
178(すく)はれ御空(みそら)(かけ)りつつ
179(かへ)(きた)れる生神(いきがみ)
180通力(つうりき)()たる姿(すがた)なり
181嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
182(かみ)(をしへ)(たふと)さよ。
183 (つばさ)一文字(いちもんじ)(ひろ)げた金色(こんじき)霊鳥(れいてう)は、184(かみ)使(つかひ)八咫烏(やあたがらす)である。185玉治別(たまはるわけ)一行(いつかう)()せた五羽(ごは)八咫烏(やあたからす)は、186日光(につくわう)()(かがや)きて中空(ちうくう)にキラリキラリと(ひかり)()げながら、187地上(ちじやう)までも金光(きんくわう)反射(はんしや)させ、188諏訪(すは)湖辺(うみべ)()(きた)り、189紺碧(こんぺき)(なみ)(うへ)(すべ)つて際限(さいげん)もなき湖水(こすゐ)を、190(きた)(きた)へと(すす)()く。
191 梅子姫(うめこひめ)192黄竜姫(わうりようひめ)()()つばかり(この)姿(すがた)()(おどろ)()(よろこ)べり。193一行(いつかう)(むね)(うち)(たと)へがたなき崇高(すうかう)にして(かつ)壮快(さうくわい)(おも)ひが(ただよ)うたからである。
194友彦(ともひこ)黄竜姫(わうりようひめ)(さま)195梅子姫(うめこひめ)(さま)196地恩城(ちおんじやう)(おい)園遊会(ゑんいうくわい)(とき)197天空(てんくう)(たか)(あら)はれた蜃気楼(しんきろう)光景(くわうけい)198紺碧(こんぺき)湖水(こすゐ)(あら)はれ、199四方(しはう)(つつ)青山(あをやま)崇高(すうかう)なる姿(すがた)は、200(いま)(この)湖面(こめん)()ると寸分(すんぶん)()()(やう)ですな、201大方(おほかた)清公(きよこう)202チヤンキー、203モンキー()の、204女神(めがみ)(みちび)かれ結構(けつこう)御用(ごよう)(あふ)せつけられて()(ところ)も、205(この)聖地(せいち)御座(ござ)いませうかなア』
206黄竜姫(わうりようひめ)(わたし)もそれに間違(まちが)ひないやうな(かん)じが(いた)します。207(むかし)から人跡(じんせき)()えしオセアニアの秘密郷(ひみつきやう)208斯様(かやう)立派(りつぱ)(みづうみ)があらうとは、209(ゆめ)にも()りませなんだ。210(なん)とかして(かみ)(さま)()(ちから)()り、211(この)湖水(こすゐ)(わた)つて()たいものですなア』
212梅子姫(うめこひめ)蜃気楼(しんきろう)拝見(はいけん)した(とき)には純白(じゆんぱく)白帆(しらほ)沢山(たくさん)航行(かうかう)して()ましたが、213(ふね)一隻(いつせき)()えないぢやありませぬか。214大方(おほかた)アンボリーの飛交(とびか)(かげ)(ふね)のやうに()えたのでせうかな』
215友彦(ともひこ)『サアさうかも()れませぬ。216……黄竜姫(わうりようひめ)(さま)217(ふね)()ければ(わた)(わけ)には()きませぬ。218玉治別(たまはるわけ)初稚姫(はつわかひめ)(さま)(やう)に、219黄金(わうごん)(とり)(むか)ひに()(くだ)さらば(じつ)結構(けつこう)だが、220(ふね)()ければ鳥船(とりぶね)もなく()吾々(われわれ)()神慮(しんりよ)(かな)(ところ)(まで)身魂(みたま)(みが)けて()ないのでせう』
221黄竜姫(わうりようひめ)(かみ)(さま)一点(いつてん)(くも)りなき水晶魂(すゐしやうだま)でなければ、222肝腎(かんじん)神業(しんげふ)にはお使(つか)(くだ)さいませぬ。223折角(せつかく)(この)浜辺(はまべ)まで(まゐ)つたものの、224(かく)(ごと)三方(さんぱう)(かべ)()てた(やう)岩山(いはやま)225何程(なにほど)(あし)達者(たつしや)(もの)でも鳥類(てうるゐ)でない以上(いじやう)()(こと)出来(でき)ますまい。226(しか)しながら此処(ここ)まで無事(ぶじ)()いたのも(まつた)(かみ)(さま)のお(めぐ)み、227此処(ここ)でもう一層(いつそう)徹底(てつてい)(てき)(こころ)修業(しうげふ)(はげ)みませう。228地恩城(ちおんじやう)女王(ぢよわう)だとか、229ジヤンナの(さと)救世主(きうせいしゆ)などと()はれて得意(とくい)になつて()るのが、230これが第一(だいいち)(かみ)(さま)御心(みこころ)(かな)はないのでせう。231(おな)天地(てんち)(めぐみ)(うま)れた(ひと)()232善悪(ぜんあく)美醜(びしう)区別(くべつ)はあつても(かみ)(さま)(あい)には()つとも依怙(えこ)贔屓(ひいき)はありますまい。233こりやもう(ひと)身魂(みたま)()(なほ)さなくては駄目(だめ)でせうよ。234勿体(もつたい)なくも(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)(おん)娘御(むすめご)235梅子姫(うめこひめ)(さま)(かげ)()守護(しゆご)とし、236(いや)しき(わらは)()(もつ)地恩城(ちおんじやう)女王(ぢよわう)()ばれ、237神司(かむつかさ)()はれて、238勿体(もつたい)なくも直々(ぢきぢき)()血筋(ちすぢ)上位(じやうゐ)()つて()たのは、239恰度(ちやうど)(あたま)(した)になり、240(あし)(うへ)になつて()るやうな、241矛盾(むじゆん)撞着(どうちやく)()(かた)であつた。242……アヽ梅子姫(うめこひめ)(さま)(いま)までの()無礼(ぶれい)何卒(なにとぞ)(ゆる)(くだ)さいませ。243(けつ)して貴女(あなた)押込(おしこ)(わたくし)(うへ)()つて覇張(はば)らうなどと()ふやうな、244(さも)しい(こころ)はチツトも()つて()ませなんだ。245(しか)(なが)名誉心(めいよしん)()られ、246本末(ほんまつ)自他(じた)公私(こうし)(べつ)を、247不知(しらず)不識(しらず)(あひだ)(をか)して()りました。248貴女(あなた)吾々(われわれ)天地(てんち)霄壌(せうじやう)懸隔(けんかく)がございます。249尊卑(そんぴ)(べつ)(わきま)へず(はなは)だもつて不都合(ふつがふ)(いた)り、250(いま)(あらた)めてお(わび)(つかまつ)ります。251さうして地恩城(ちおんじやう)女王(ぢよわう)たる地位(ちゐ)(かみ)(さま)にお(かへ)(まを)し、252(うま)赤子(あかご)(ひら)信者(しんじや)となつて()神業(しんげふ)奉仕(ほうし)し、253貴女(あなた)(さま)女王(ぢよわう)とも教主(けうしゆ)とも(あふ)いで、254忠実(ちうじつ)にお(つか)(いた)しますから、255不知(しらず)不識(しらず)()無礼(ぶれい)()気障(きざわり)256何卒(なにとぞ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)(くだ)さいますように、257黄竜姫(わうりようひめ)真心(まごころ)よりお(わび)(つかまつ)ります』
258(なみだ)(たき)(ごと)両眼(りやうがん)より(したた)らし、259悔悟(くわいご)(ねん)()へざるものの(ごと)涕泣(ていきふ)嗚咽(をえつ)(つひ)(その)()()()した。260梅子姫(うめこひめ)儼然(げんぜん)として、
261梅子姫黄竜姫(わうりようひめ)どの、262貴方(あなた)結構(けつこう)()神徳(しんとく)(いただ)きました。263(わたし)(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)()みの()(うま)れ、264()花姫(はなひめ)生宮(いきみや)として今日迄(こんにちまで)265貴方(あなた)のお(そば)()(くだ)し、266神業(しんげふ)輔佐(ほさ)して(まゐ)りました。267貴方(あなた)()言葉(ことば)今日(けふ)只今(ただいま)(まで)268(じつ)(ところ)()つて()たのでございます』
269微笑(びせう)()かべて()りつれば、270友彦(ともひこ)(また)もや両眼(りやうがん)(なみだ)()かべ(なが)ら、
271友彦(わたくし)(うま)れついての狡猾者(かうくわつもの)272(いた)(ところ)悪事(あくじ)(はたら)き、273まぐ(あた)りに(はな)(あか)きを取得(とりえ)にてジヤンナの(さと)()(はや)され、274救世主(きうせいしゆ)()ばれ(なが)()()になり、275(こころ)にも()尊敬(そんけい)()け、276天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)()()まして()(こころ)(きたな)さ、277イヤもう塵埃(ぢんあい)(ひと)しき(われ)()身魂(みたま)278どうして肝腎要(かんじんかなめ)御用(ごよう)にお使(つか)(くだ)さいませう。279……何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)梅子姫(うめこひめ)(さま)280貴女(あなた)(さま)より大神(おほかみ)(さま)重々(ぢゆうぢゆう)(つみ)(ゆる)(くだ)さいます(やう)取成(とりな)(ねが)()(たてまつ)ります。281(また)(わたくし)(けつ)して今後(こんご)は、282人様(ひとさま)以上(いじやう)結構(けつこう)御用(ごよう)をさして(いただ)かうとは(ゆめ)にも(おも)ひは(いた)しませぬ。283如何(いか)なる(こと)にても(かま)ひませぬから、284どうぞ(かみ)(さま)のお(つな)()れぬ(やう)に、285大神(おほかみ)(さま)にお(わび)のお取次(とりつぎ)(ひとへ)(こひねが)()(たてまつ)ります』
286梅子姫(うめこひめ)貴方(あなた)(こころ)(その)蓮花(はちすばな)287転迷(てんめい)開悟(かいご)(おと)()(ひら)()めました。288アヽいい(ところ)改心(かいしん)して(くだ)さいました。289これで梅子姫(うめこひめ)(ちち)大神(おほかみ)より(めい)ぜられたる御用(ごよう)一端(いつたん)出来(でき)たと(まを)すもの、290(わたくし)(はう)より貴方(あなた)(たい)して感謝(かんしや)(いた)します』
291(うれ)(なみだ)両眼(りやうがん)()かべ、292()べたつれば友彦(ともひこ)(うれ)しさ()(あま)り、293大地(だいち)にひれ()(かほ)得上(えあ)げず、294歓喜(くわんき)悔悟(くわいご)(なみだ)(むせ)(かへ)つて()る。
295 蜈蚣姫(むかでひめ)梅子姫(うめこひめ)(まへ)()をつかへて、
296蜈蚣姫梅子姫(うめこひめ)(さま)297今迄(いままで)()無礼(ぶれい)何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)(ゆる)(くだ)さいませ。298(わたくし)貴女(あなた)(さま)御存(ごぞん)じの(とほ)悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)(かぎ)りを(つく)した、299鬼婆(おにばば)(やう)悪人(あくにん)御座(ござ)いました。300地恩城(ちおんじやう)(まゐ)りまして(むすめ)出世(しゆつせ)()るにつけ、301不知(しらず)不識(しらず)高慢心(かうまんしん)(おこ)り、302()愛着(あいちやく)(ねん)()られ、303肝腎(かんじん)大神(おほかみ)第二(だいに)(いた)し、304()貴女(あなた)(さま)(たい)し、305平素(へいそ)軽侮(けいぶ)()(もつ)(むか)つて()りました心盲(しんまう)御座(ござ)います。306地恩城(ちおんじやう)(おい)友彦(ともひこ)()園遊会(ゑんいうくわい)(ひら)いた(をり)307貴女(あなた)(さま)(むらさき)蓮華岩(れんげいは)(うへ)()たせ(たま)ひ、308(わたくし)素性(すじやう)(うた)つて(くだ)さつた(とき)(わたくし)は、309(こころ)(うち)にて非常(ひじやう)不満(ふまん)(いだ)きました。310(いま)(おも)へばあの(とき)のお言葉(ことば)(うち)には、311大神(おほかみ)(さま)大慈(だいじ)大悲(だいひ)(すく)ひの御心(みこころ)……なぜ(その)(とき)(わたくし)()()かなかつたでございませう。312森羅(しんら)万象(ばんしやう)(たい)一切(いつさい)色盲(しきまう)(わたくし)313不調法(ぶてうはふ)ばかり(いた)しまして(かみ)(さま)(たい)し、314(また)(たふと)貴女(あなた)(さま)(たい)してお(わび)申上(まをしあ)げる言葉(ことば)もございませぬ。315どうぞ母子(おやこ)(もの)(あはれ)(くだ)さいまして、316今迄(いままで)大神(おほかみ)(さま)敵対(てきたい)(まを)した(ふか)(つみ)を、317(わび)(くだ)さいますようにお(ねが)(まを)します』
318とワツとばかりに(こゑ)をあげ()()するにぞ、319梅子姫(うめこひめ)莞爾(くわんじ)として、
320梅子姫『アヽ蜈蚣姫(むかでひめ)(さま)321貴女(あなた)今日(こんにち)只今(ただいま)(はじ)めて(まこと)神柱(かむばしら)になられました、322結構(けつこう)でございます。323どうぞ(この)()とても(わたし)(とも)三五(あななひ)大神(おほかみ)(さま)御用(ごよう)誠心(せいしん)誠意(せいい)()尽力(じんりよく)あらむことを希望(きばう)(いた)します。324如何(いか)なる罪穢(つみけが)(あやまち)梅子姫(うめこひめ)(かは)りて千座(ちくら)()()()ひますれば()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
325 蜈蚣姫(むかでひめ)は『有難(ありがた)うございます』と()うたきり、326大地(だいち)にかぶりつき有難涙(ありがたなみだ)(むせ)()る。327テールス(ひめ)(また)もや梅子姫(うめこひめ)(まへ)両手(りやうて)をつき、
328テールス姫何分(なにぶん)(つみ)(おほ)(わたくし)329不知(しらず)不識(しらず)()無礼(ぶれい)気障(きざわり)何程(いくら)ございませうとも、330何卒(どうぞ)(ゆる)(くだ)さる(やう)331神界(しんかい)へお(ねが)(くだ)さいませ』
332合掌(がつしやう)して(たの)()る。
333梅子姫貴女(あなた)(この)(なか)でも(もつと)(つみ)(かる)き、334身魂(みたま)(きよ)らかな(かみ)()です。335今日(こんにち)神界(しんかい)(たい)()したる不調法(ぶてうはふ)もございませぬ。336今後(こんご)今迄(いままで)(どほ)(あやま)()(やう)337(かみ)御用(ごよう)()奉仕(ほうし)あらむことを希望(きばう)(いた)します』
338(こた)ふれば、339テールス(ひめ)梅子姫(うめこひめ)慈愛(じあい)言葉(ことば)に、340有難涙(ありがたなみだ)をしぼるのみであつた。
341 梅子姫(うめこひめ)湖面(こめん)(むか)合掌(がつしやう)しながら何事(なにごと)暗祈(あんき)黙祷(もくたう)する(こと)(しば)し、342(たちま)何処(いづこ)ともなく微妙(びめう)音楽(おんがく)(きこ)え、343西北(せいほく)(そら)(ふう)じて、344此方(こなた)(むか)つて一瀉(いつしや)千里(せんり)(いきほひ)にて()(きた)以前(いぜん)のアンボリー、345幾百(いくひやく)ともなく、346(つばさ)(なら)べ、347湖上(こじやう)目蒐(めが)けて()(かへ)(その)(うるは)しさ、348()にも(うつ)せぬ(なが)めなり。
349大正一一・七・一一 旧閏五・一七 谷村真友録)
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