清公はチャンキーと共にクシの滝壺の傍らに庵を結んで禊に励んでいた。地恩郷参拝から帰ってきた郷人たちは、清公に感謝して国魂の宮を修繕して礼拝を怠らなかった。ヒルの郷の黒雲邪気は晴れて、元の楽園となった。
清公は大蛇、悪魔までも神の道に救おうと、宣伝の旅に出た。チャンキーとモンキーに加えて郷人のアイルとテーナを共に加え、セーラン山を登っていった。炎天の山道を進んで行き、玉野ケ原というやや平坦な場所に着いた。そこは黄金の砂が大地一面に敷き詰められた気分の良い地点であった。
はるか前方から猛獣の群れがやってくる気配があった。清公は天津祝詞を唱えようとしたが、舌がこわばって言霊を使用することができなくなってしまった。五人は懸命に心のうちに暗祈黙祷すると、一柱の白狐が現れて五人を森の方の一つの細長い岩窟に招いた。
五人は神恩に感謝した。やがて猛獣の足音が聞こえてきた。岩窟の口から、長い白い毛をもった巨大な狒々が覗き込んだ。清公はようやく言霊が出るようになったので、天津祝詞を奏上した。
しかし狒々はかまわず岩窟の奥に入ってくる。岩窟の奥まで追い詰められ、狒々は清公の手を取って招き、岩窟から引き出してしまった。しかし岩窟を出てみると、そこに居たのは猛獣ではなく、狒々や猩々の群れであった。
五人が天津祝詞を一生懸命に奏上すると、数百の狒々と猩々は面白おかしく踊り始めた。巨大な狒々は、口から猛烈な炎や冷気を五人に吹きかけた。五人はもはや息も切れようというときに、狒々の姿は巨大な白玉となり、狒々たちも無数の玉となって舞い上がり、姿を消してしまった。
後に岩窟の周りには芳香が漂い、微妙の音楽が聞こえてきた。これより五人は心魂がとみに清まり、奥地へと進んでスワの湖のほとりの竜神の宮の祠に到達し、祝詞を奏上した。その夜は祠の前で世を明かした。