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第81巻(申の巻)
総説
第1篇 伊佐子の島
01 イドム戦
〔2028〕
02 月光山
〔2029〕
03 月見の池
〔2030〕
04 遷座式
〔2031〕
05 心の禊
〔2032〕
06 月見の宴
〔2033〕
第2篇 イドムの嵐
07 月音し
〔2034〕
08 人魚の勝利
〔2035〕
09 維新の叫び
〔2036〕
10 復古運動
〔2037〕
第3篇 木田山城
11 五月闇
〔2038〕
12 木田山颪
〔2039〕
13 思ひの掛川
〔2040〕
14 鷺と烏
〔2041〕
15 厚顔無恥
〔2042〕
第4篇 猛獣思想
16 亀神の救ひ
〔2043〕
17 再生再会
〔2044〕
18 蠑螈の精
〔2045〕
19 悪魔の滅亡
〔2046〕
20 悔悟の花
〔2047〕
余白歌
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> 第2篇 イドムの嵐 > 第9章 維新の叫び
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第九章
維新
(
ゐしん
)
の
叫
(
さけ
)
び〔二〇三六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:
第2篇 イドムの嵐
よみ(新仮名遣い):
いどむのあらし
章:
第9章 維新の叫び
よみ(新仮名遣い):
いしんのさけび
通し章番号:
2036
口述日:
1934(昭和9)年08月05日(旧06月25日)
口述場所:
伊豆別院
筆録者:
内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
真珠湖攻めの大敗により、女王・左守らの首脳をはじめ、精鋭の騎士たちをすっかり失ってしまったサール軍には動揺が広がっていた。
力によってイドム国王を追い払い、国を奪って暴政を敷いた天罰は、やはり恐ろしいものであった。
残された重臣の軍師エーマンは、女王やチクターらの遺体を篤く葬り、十日間の喪に服しつつ述懐の歌を歌っていた。驕り高ぶりを悔い、サール国に追いやった右守ナーリスの言に従っていたら、と後悔の歌を歌っていた。
エーマンはただ一人で、イドム国に駐屯するサール軍の統制をはからざるを得ないことになってしまったのである。
一方、サール軍の暴政に苦しんでいたイドム国民の中には、あちこちに愛国の志士が奮起し、この機に乗じて城を奪い返し、イドム王を再び迎え入れて国を再興しようとの活動が活発になってきた。
中でも愛国派の大頭目、マークとラートは国の至るところに立ち現れ、馬上から国津神たちに奮起を呼びかけた。群集はほら貝を吹き、鳴子を打ち鳴らし、あちこちに示威運動が起こってきた。
マークとラートはついにイドム城外の広場に群集を集結し、馬上から維新の歌を高々に歌い始めた。そして、今こそ城に攻め寄せイドム国を再興せよ、と呼びかけた。群集はいっせいにイドム城に攻め寄せると、軍師エーマンはこの様を見て慌てふためき、水乃川に身を投げて自ら命を絶ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8109
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 472頁
修補版:
校定版:
186頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
伊佐子
(
いさご
)
の
島
(
しま
)
の
北半
(
ほくはん
)
を
002
暴力
(
ぼうりよく
)
もちて
治
(
をさ
)
めたる
003
サールの
国
(
くに
)
の
国王
(
こくわう
)
は
004
大栄山
(
おほさかやま
)
をのり
越
(
こ
)
えて
005
数多
(
あまた
)
の
兵士
(
つはもの
)
引率
(
いんそつ
)
し
006
地上
(
ちじやう
)
の
楽土
(
らくど
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
007
イドムの
城
(
しろ
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せて
008
国王
(
こくわう
)
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
を
追
(
お
)
ひ
散
(
ち
)
らし
009
鳥
(
とり
)
なき
里
(
さと
)
の
蝙蝠
(
かふもり
)
と
010
羽振
(
はぶ
)
りをきかし
居
(
ゐ
)
たりしが
011
天
(
てん
)
は
何時
(
いつ
)
まで
暴虐
(
ぼうぎやく
)
の
012
エールス
王
(
わう
)
を
許
(
ゆる
)
すべき
013
忽
(
たちま
)
ちわが
身
(
み
)
の
膝下
(
しつか
)
より
014
火焔
(
くわえん
)
の
炎
(
ほのほ
)
は
湧
(
わ
)
き
立
(
た
)
ちて
015
流
(
なが
)
れも
清
(
きよ
)
き
水乃川
(
みなのがは
)
016
岸辺
(
きしべ
)
に
壁立
(
かべた
)
つ
巌
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
017
心
(
こころ
)
許
(
ゆる
)
せしその
妻
(
つま
)
に
018
きびしき
酒
(
さけ
)
を
進
(
すす
)
められ
019
歩
(
あゆ
)
みもならぬたまゆらを
020
妻
(
つま
)
の
命
(
みこと
)
に
背
(
せ
)
を
押
(
お
)
され
021
ザンブとばかり
水中
(
すいちう
)
の
022
泡
(
あわ
)
と
消
(
き
)
えたるあさましさ
023
ここに
王妃
(
わうひ
)
のサツクスは
024
左守
(
さもり
)
の
神
(
かみ
)
のチクターと
025
人目
(
ひとめ
)
をさけて
忍
(
しの
)
び
会
(
あ
)
ひ
026
恋
(
こひ
)
の
勝利
(
しようり
)
を
誇
(
ほこ
)
りしが
027
なほあき
足
(
た
)
らず
真珠湖
(
しんじゆこ
)
の
028
人魚
(
にんぎよ
)
をとらむと
思
(
おも
)
ひ
立
(
た
)
ち
029
数百
(
すひやく
)
のナイトを
引
(
ひ
)
き
具
(
ぐ
)
して
030
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
に
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せつ
031
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
迫
(
せま
)
りしが
032
人魚
(
にんぎよ
)
の
酋長
(
しうちやう
)
の
計略
(
けいりやく
)
に
033
かかりて
脆
(
もろ
)
くも
失
(
う
)
せにける
034
サツクス
姫
(
ひめ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
035
左守
(
さもり
)
のチクター
言
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
036
幾百
(
いくひやく
)
のナイトは
悉
(
ことごと
)
く
037
真珠
(
しんじゆ
)
の
湖
(
うみ
)
の
魚族
(
うろくづ
)
の
038
餌食
(
ゑじき
)
となりしぞあさましき
039
ここにイドムの
王城
(
わうじやう
)
は
040
肝心要
(
かんじんかなめ
)
の
司
(
つかさ
)
をば
041
失
(
うしな
)
ひ
忽
(
たちま
)
ち
常闇
(
とこやみ
)
の
042
さまを
詳
(
つぶさ
)
にあらはせり
043
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
は
驚
(
おどろ
)
きて
044
周章
(
あわ
)
てふためき
右
(
みぎ
)
左
(
ひだり
)
045
騒
(
さわ
)
ぎまはれど
何
(
なん
)
とせむ
046
国
(
くに
)
の
柱
(
はしら
)
を
失
(
うしな
)
ひし
047
イドムの
国
(
くに
)
の
騒擾
(
さうぜう
)
は
048
目
(
め
)
も
当
(
あ
)
てられぬばかりなり
049
ここに
軍師
(
ぐんし
)
のエーマンは
050
数多
(
あまた
)
のナイトを
引率
(
いんそつ
)
し
051
イドムの
城
(
しろ
)
に
陣取
(
ぢんど
)
りて
052
国
(
くに
)
の
騒
(
さわ
)
ぎを
鎮
(
しづ
)
めむと
053
計画
(
けいくわく
)
をさをさ
怠
(
おこた
)
らず
054
朝夕
(
あしたゆふべ
)
に
肝
(
きも
)
向
(
むか
)
ふ
055
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めゐたりける
056
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
057
神
(
かみ
)
の
天罰
(
てんばつ
)
恐
(
おそ
)
ろしき。
058
エーマンは、
059
サツクス
姫
(
ひめ
)
及
(
およ
)
びチクター
等
(
ら
)
の
死体
(
したい
)
を
篤
(
あつ
)
く
葬
(
はうむ
)
り、
060
十日間
(
とをかかん
)
の
喪
(
も
)
に
服
(
ふく
)
しつつ
述懐
(
じゆつくわい
)
を
歌
(
うた
)
ふ。
061
『さびしさの
限
(
かぎ
)
りなるかもわが
国
(
くに
)
は
062
国
(
くに
)
の
柱
(
はしら
)
を
失
(
うしな
)
ひにけり
063
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
怒
(
いか
)
りに
触
(
ふ
)
れにけむ
064
かかる
歎
(
なげ
)
きは
世
(
よ
)
にためしなき
065
イドム
城
(
じやう
)
アヅミ、ムラジを
退
(
しりぞ
)
けし
066
罪
(
つみ
)
の
酬
(
むく
)
いと
思
(
おも
)
へば
恐
(
おそ
)
ろし
067
常世
(
とこよ
)
ゆく
闇
(
やみ
)
につつまるイドム
城
(
じやう
)
は
068
何処
(
いづこ
)
にゆくか
心
(
こころ
)
もとなや
069
われは
今
(
いま
)
軍
(
いくさ
)
の
司
(
つかさ
)
となりながら
070
治
(
をさ
)
むる
由
(
よし
)
も
白浪
(
しらなみ
)
の
月
(
つき
)
よ
071
大空
(
おほぞら
)
に
無心
(
むしん
)
の
月
(
つき
)
は
輝
(
かがや
)
きつ
072
われ
等
(
ら
)
が
歎
(
なげ
)
きを
笑
(
わら
)
ふがに
見
(
み
)
ゆ
073
水乃川
(
みなのがは
)
流
(
なが
)
るる
月
(
つき
)
もかすみたり
074
わが
目
(
め
)
の
涙
(
なみだ
)
雨
(
あめ
)
と
降
(
ふ
)
れれば
075
如何
(
いか
)
にしてイドムの
城
(
しろ
)
は
保
(
たも
)
たむと
076
月
(
つき
)
に
祈
(
いの
)
れど
月
(
つき
)
は
答
(
こた
)
へず
077
山川
(
やまかは
)
も
色
(
いろ
)
あせにけりわが
胸
(
むね
)
の
078
闇
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
は
晴
(
は
)
れやらずして
079
国民
(
くにたみ
)
を
苦
(
くる
)
しめ
奢
(
おご
)
り
驕
(
たかぶ
)
りし
080
王
(
きみ
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
おもへばおそろし
081
サツクスの
女王
(
ぢよわう
)
の
行
(
おこな
)
ひ
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
082
いや
荒
(
すさ
)
みつつ
亡
(
ほろ
)
び
給
(
たま
)
へり
083
チクターの
卑
(
いや
)
しき
心
(
こころ
)
にさそはれて
084
あはれ
女王
(
ぢよわう
)
は
身罷
(
みまか
)
り
給
(
たま
)
へり
085
エールスの
王
(
きみ
)
の
最後
(
さいご
)
のいぶかしさ
086
わが
魂
(
たましひ
)
の
雲
(
くも
)
はまだはれず
087
武力
(
ぶりよく
)
もて
人
(
ひと
)
の
国
(
くに
)
をば
奪
(
うば
)
ひたる
088
報
(
むく
)
いなるらむ
今日
(
けふ
)
の
歎
(
なげ
)
きは
089
山
(
やま
)
も
川
(
かは
)
も
草木
(
くさき
)
も
一度
(
いちど
)
に
声
(
こゑ
)
あげて
090
傾
(
かたむ
)
く
国
(
くに
)
をなげくがに
見
(
み
)
ゆ
091
見
(
み
)
るものも
聞
(
き
)
くものもみな
涙
(
なみだ
)
なり
092
われ
如何
(
いか
)
にしてこの
世
(
よ
)
を
活
(
い
)
かさむ
093
力
(
ちから
)
ともたのみし
右守
(
うもり
)
のナーリスは
094
遠
(
とほ
)
くサールにかへされて
居
(
を
)
り
095
せめて
今
(
いま
)
ナーリス
右守
(
うもり
)
のあるなれば
096
かほど
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
かざるべし
097
語
(
かた
)
らはむ
友
(
とも
)
さへもなき
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
を
098
われは
淋
(
さび
)
しく
泣
(
な
)
くばかりなり
099
三千
(
さんぜん
)
の
兵士
(
つはもの
)
あれど
王
(
きみ
)
のなき
100
イドムの
国
(
くに
)
は
統制
(
とうせい
)
とれずも
101
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
に
軍人
(
いくさびと
)
等
(
ら
)
の
集
(
あつ
)
まりて
102
よからぬ
事
(
こと
)
を
企図
(
たくら
)
めりと
聞
(
き
)
く
103
軍人
(
いくさびと
)
一
(
ひと
)
つになりて
攻
(
せ
)
め
来
(
き
)
なば
104
イドムの
城
(
しろ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
滅
(
ほろ
)
びむ
105
如何
(
いか
)
にしてこの
世
(
よ
)
の
乱
(
みだ
)
れを
断
(
た
)
たむかと
106
思
(
おも
)
へば
心
(
こころ
)
は
闇
(
やみ
)
につつまる
107
今
(
いま
)
となりてアヅミ、ムラジを
退
(
しりぞ
)
けし
108
エールス
王
(
わう
)
の
仕業
(
しわざ
)
を
惜
(
を
)
しむ
109
勢
(
いきほひ
)
の
強
(
つよ
)
きにまかせエールス
王
(
わう
)
は
110
イドムの
城
(
しろ
)
を
奪
(
うば
)
ひとりける
111
われもまたエールス
王
(
わう
)
に
従
(
したが
)
ひて
112
軍
(
いくさ
)
進
(
すす
)
めし
罪人
(
つみびと
)
なるよ
113
この
城
(
しろ
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
仕
(
つか
)
ふる
司
(
つかさ
)
等
(
ら
)
の
114
心
(
こころ
)
は
千々
(
ちぢ
)
に
乱
(
みだ
)
れゐるらし
115
何処
(
どこ
)
までも
御国
(
みくに
)
のためにつくさむと
116
思
(
おも
)
ふ
真人
(
まびと
)
のなきは
淋
(
さび
)
しき
117
かりごもの
乱
(
みだ
)
れたる
世
(
よ
)
を
治
(
をさ
)
めむと
118
思
(
おも
)
ふも
詮
(
せん
)
なし
力
(
ちから
)
なき
吾
(
われ
)
に
119
三千
(
さんぜん
)
の
軍人
(
いくさびと
)
等
(
ら
)
はまちまちに
120
事
(
こと
)
計
(
はか
)
りつつ
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
らず
121
今
(
いま
)
の
間
(
ま
)
にイドムの
城
(
しろ
)
を
遁
(
のが
)
れ
出
(
い
)
で
122
元津
(
もとつ
)
御国
(
みくに
)
にかへらまほしけれ』
123
イドム
城内
(
じやうない
)
は、
124
エールス
王
(
わう
)
始
(
はじ
)
めサツクス
姫
(
ひめ
)
並
(
なら
)
びにチクターその
他
(
た
)
重臣
(
ぢゆうしん
)
等
(
ら
)
の
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
帰幽
(
きいう
)
せしより、
125
恰
(
あたか
)
も
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えたる
如
(
ごと
)
く
寂然
(
せきぜん
)
として
声
(
こゑ
)
なく、
126
軍師
(
ぐんし
)
エーマン
一人
(
ひとり
)
生
(
い
)
き
残
(
のこ
)
りて
国
(
くに
)
の
再興
(
さいこう
)
を
計
(
はか
)
らむと
昼夜
(
ちうや
)
心魂
(
しんこん
)
を
砕
(
くだ
)
きゐたりける。
127
話
(
はなし
)
変
(
かは
)
りて
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
の
諸々
(
もろもろ
)
は、
128
エールス
王
(
わう
)
の
暴政
(
ぼうせい
)
に
苦
(
くる
)
しみ、
129
怨嗟
(
ゑんさ
)
の
声
(
こゑ
)
は
国内
(
こくない
)
に
充
(
み
)
ち
満
(
み
)
ちたりけるが、
130
王
(
わう
)
以下
(
いか
)
の
帰幽
(
きいう
)
を
知
(
し
)
るや、
131
町々
(
まちまち
)
村々
(
むらむら
)
より
愛国
(
あいこく
)
の
志士
(
しし
)
奮起
(
ふんき
)
し、
132
到
(
いた
)
る
処
(
ところ
)
に
維新
(
ゐしん
)
の
声
(
こゑ
)
潮
(
うしほ
)
の
寄
(
よ
)
する
如
(
ごと
)
く
湧
(
わ
)
き
立
(
た
)
ちにける。
133
中
(
なか
)
にも
愛国派
(
あいこくは
)
の
大頭目
(
だいとうもく
)
マークとラートの
両雄
(
りやうゆう
)
は、
134
時
(
とき
)
こそ
到
(
いた
)
れりと、
135
都鄙
(
とひ
)
到
(
いた
)
る
処
(
ところ
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
136
馬上
(
ばじやう
)
より
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
の
奮起
(
ふんき
)
を
大声
(
たいせい
)
叱呼
(
しつこ
)
しつつ
促
(
うなが
)
しにける。
137
群衆
(
ぐんしう
)
は
法螺貝
(
ほらがひ
)
を
吹
(
ふ
)
き、
138
磬盤
(
けいばん
)
を
打
(
う
)
ち、
139
太鼓
(
たいこ
)
を
鳴
(
な
)
らし、
140
到
(
いた
)
る
処
(
ところ
)
に
示威
(
じゐ
)
運動
(
うんどう
)
起
(
おこ
)
り、
141
山岳
(
さんがく
)
も
為
(
ため
)
に
崩
(
くづ
)
るるばかり
騒
(
さわ
)
がしき
光景
(
くわうけい
)
を
現出
(
げんしゆつ
)
したりける。
142
マークはイドム
城外
(
じやうぐわい
)
の
広場
(
ひろば
)
に
群衆
(
ぐんしう
)
を
集
(
あつ
)
めて、
143
馬上
(
ばじやう
)
に
突立
(
つつた
)
ちながら、
144
声
(
こゑ
)
高々
(
たかだか
)
と
維新
(
ゐしん
)
の
歌
(
うた
)
をうたふ。
145
『イドムの
国
(
くに
)
の
国人
(
くにびと
)
よ
146
奮
(
ふる
)
ひ
立
(
た
)
つべき
秋
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
147
天地
(
てんち
)
は
暗
(
くら
)
く
日月
(
じつげつ
)
の
148
光
(
ひかり
)
は
地中
(
ちちう
)
に
没
(
ぼつ
)
したり
149
アヅミ、ムラジの
王
(
こきし
)
をば
150
奪
(
うば
)
はれながら
敵王
(
てきわう
)
に
151
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
りし
天罰
(
てんばつ
)
は
152
報
(
むく
)
い
来
(
きた
)
りてわれわれは
153
塗炭
(
とたん
)
の
苦
(
くる
)
しみ
味
(
あぢ
)
はへり
154
斯
(
か
)
くなる
上
(
うへ
)
は
吾々
(
われわれ
)
は
155
飢
(
う
)
ゑて
死
(
し
)
するの
外
(
ほか
)
はなし
156
わが
国民
(
くにたみ
)
よ
兄弟
(
きやうだい
)
よ
157
イドムの
国
(
くに
)
は
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
158
祖先
(
そせん
)
の
神
(
かみ
)
より
受
(
う
)
け
継
(
つ
)
ぎし
159
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
くる
楽土
(
らくど
)
ぞや
160
この
美
(
うるは
)
しきよき
国
(
くに
)
を
161
サールの
国
(
くに
)
のエールスに
162
奪
(
うば
)
はれ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
日
(
ひ
)
に
夜
(
よる
)
に
163
妻子
(
つまこ
)
を
奪
(
うば
)
はれ
家倉
(
いへくら
)
を
164
焼
(
や
)
かれて
苦
(
くる
)
しみ
居
(
ゐ
)
たりけり
165
奮
(
ふる
)
ひ
起
(
た
)
て
起
(
た
)
て
今
(
いま
)
や
秋
(
とき
)
166
祖国
(
そこく
)
を
守
(
まも
)
り
永遠
(
えいゑん
)
の
167
国
(
くに
)
の
平和
(
へいわ
)
を
計
(
はか
)
れかし
168
われ
等
(
ら
)
はこれより
王城
(
わうじやう
)
に
169
轡
(
くつわ
)
並
(
なら
)
べて
進
(
すす
)
むべし
170
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
ためらふことなかれ
171
イドムの
国
(
くに
)
を
永遠
(
とことは
)
に
172
守
(
まも
)
るは
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
がためなるぞ
173
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
めよいざ
進
(
すす
)
め
174
国
(
くに
)
の
平和
(
へいわ
)
の
来
(
きた
)
るまで
175
悪魔
(
あくま
)
のあとの
絶
(
た
)
ゆるまで』
176
ラートは
歌
(
うた
)
ふ。
177
『ああ
国人
(
くにびと
)
よ
国人
(
くにびと
)
よ
178
われ
等
(
ら
)
が
起
(
た
)
たむ
秋
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
179
汝
(
なれ
)
が
生命
(
いのち
)
を
永遠
(
とこしへ
)
に
180
託
(
たく
)
して
楽
(
たの
)
しむわが
国
(
くに
)
は
181
サールの
国
(
くに
)
に
奪
(
うば
)
はれて
182
悲
(
かな
)
しき
憂目
(
うきめ
)
をみたりけり
183
天
(
てん
)
は
必
(
かなら
)
ず
暴虐
(
ぼうぎやく
)
に
184
くみし
給
(
たま
)
はず
無道
(
ぶだう
)
なる
185
エールス
王
(
わう
)
の
生命
(
いのち
)
とり
186
つづいてサツクス、チクターや
187
その
他
(
た
)
の
曲津
(
まが
)
を
滅
(
ほろ
)
ぼして
188
禊
(
みそぎ
)
を
始
(
はじ
)
め
給
(
たま
)
ひけり
189
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
国民
(
くにたみ
)
諸々
(
もろもろ
)
よ
190
日頃
(
ひごろ
)
の
恨
(
うら
)
み
晴
(
は
)
らすべき
191
秋
(
とき
)
は
来
(
きた
)
れり
国民
(
くにたみ
)
の
192
生命
(
いのち
)
を
守
(
まも
)
り
永遠
(
とこしへ
)
の
193
平和
(
へいわ
)
を
来
(
きた
)
す
秋
(
とき
)
は
今
(
いま
)
194
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
めよ
奮
(
ふる
)
ひ
立
(
た
)
て
195
われは
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
196
進
(
すす
)
む
勇気
(
ゆうき
)
のあるならば
197
決
(
けつ
)
して
戦
(
いくさ
)
に
負
(
ま
)
けはせじ
198
軍師
(
ぐんし
)
のエーマン
只一人
(
ただひとり
)
199
イドムの
城
(
しろ
)
に
頑張
(
ぐわんば
)
りて
200
われ
等
(
ら
)
国民
(
くにたみ
)
を
201
苦
(
くる
)
しめ
悩
(
なや
)
めむ
謀
(
はかりごと
)
202
企図
(
たくら
)
み
居
(
ゐ
)
るを
知
(
し
)
らざるか
203
今
(
いま
)
この
秋
(
とき
)
ぞこの
秋
(
とき
)
ぞ
204
エーマン
軍師
(
ぐんし
)
を
滅
(
ほろ
)
ぼして
205
国
(
くに
)
の
光
(
ひかり
)
を
輝
(
かがや
)
かし
206
元
(
もと
)
の
昔
(
むかし
)
の
天国
(
てんごく
)
に
207
かへすは
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
責任
(
せきにん
)
ぞ
208
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
209
正義
(
せいぎ
)
に
刃向
(
はむか
)
ふ
刃
(
やいば
)
なし
210
われ
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りあり
211
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
も
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
212
決
(
けつ
)
してためらふことなかれ
213
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
めよいざ
進
(
すす
)
め
214
国
(
くに
)
の
平和
(
へいわ
)
を
来
(
きた
)
すまで
215
維新
(
ゐしん
)
の
大望
(
たいまう
)
遂
(
と
)
ぐるまで
216
悪魔
(
あくま
)
のエーマン
亡
(
ほろ
)
ぶまで
217
この
大敵
(
たいてき
)
の
亡
(
ほろ
)
ぶまで
218
ひるまずたゆまず
進
(
すす
)
めかし
219
マーク、ラートは
先頭
(
せんとう
)
に
220
立
(
た
)
ちてすくすく
進
(
すす
)
むべし
221
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
れ
国民
(
くにたみ
)
よ
222
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
生命
(
いのち
)
を
守
(
まも
)
るべく
223
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
仇
(
あだ
)
を
酬
(
むく
)
ゆべく
224
イドムの
城
(
しろ
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せよ』
225
斯
(
か
)
くて
群衆
(
ぐんしう
)
は
大挙
(
たいきよ
)
して、
226
イドム
城
(
じやう
)
に
一斉
(
いつせい
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せければ、
227
軍師
(
ぐんし
)
のエーマンは、
228
この
光景
(
くわうけい
)
を
見
(
み
)
るより
驚
(
おどろ
)
きあわてふためきて、
229
高殿
(
たかどの
)
より
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らせ、
230
水乃川
(
みなのがは
)
の
激流
(
げきりう
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
231
あと
白浪
(
しらなみ
)
と
消
(
き
)
えにける。
232
国民
(
くにたみ
)
を
虐
(
しひた
)
げ
驕
(
おご
)
りしエールスの
233
一族
(
いちぞく
)
ことごと
鬼
(
おに
)
となりけり
234
チクターは
女王
(
ぢよわう
)
に
悪事
(
あくじ
)
を
勧
(
すす
)
めつつ
235
神
(
かみ
)
の
怒
(
いか
)
りに
滅
(
ほろ
)
ぼされける
236
アヅミ
王
(
わう
)
を
追
(
お
)
ひ
退
(
しりぞ
)
けし
後釜
(
あとがま
)
に
237
据
(
すわ
)
りしエールス
夢
(
ゆめ
)
なりにけり
238
エールスの
栄華
(
えいぐわ
)
もわづか
一年
(
ひととせ
)
の
239
夢
(
ゆめ
)
なりにけり
浅
(
あさ
)
ましの
世
(
よ
)
や
240
国民
(
くにたみ
)
はここぞとばかり
奮
(
ふる
)
ひ
立
(
た
)
ち
241
イドムの
城
(
しろ
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せにけり。
242
(
昭和九・八・五
旧六・二五
於伊豆別院
内崎照代
謹録)
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