第一〇章 復古運動〔二〇三七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:第2篇 イドムの嵐
よみ(新仮名遣い):いどむのあらし
章:第10章 復古運動
よみ(新仮名遣い):ふっこうんどう
通し章番号:2037
口述日:1934(昭和9)年08月05日(旧06月25日)
口述場所:伊豆別院
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:マーク、ラートが引率した民衆軍は、一戦も交えることなくイドム城を取り返した。
この群集の中には、イドム国王アヅミの右守ターマンが、民衆に変装して紛れ込んでいた。ターマンはマークとラートに近寄り身分を明かし、イドム王が月光山に隠れていることを明かして、感謝の意を表した。
マークは自分たちの手柄ではなく、天命によってサール軍は滅びたと歌うと、こうなった上は、アヅミ王を再び迎えて王に再び国を任せたいとターマンに伝えた。
ターマン、ラート、マークは互いにここまでの道のりの苦難を歌いあった。そして、ターマンとマークは月光山へアヅミ王を迎えに出立し、王の到着まで、ラートがイドム城を守ることとなった。
ターマンとマークは、道々これまでの述懐の歌を歌いつつ月光山へと馬を急がせた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm8110
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 477頁
修補版:
校定版:205頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 マークとラートの引率せる軍人交りの群衆は、002恰も無人の境を行く如く、003イドム城を只一戦を交へずして取返し、004軍師エーマンは周章狼狽の結果、005激流に飛び込み消え失せければ、006風塵全く治まりて更生の気分天地に漂ひにける。007此の群衆の中には、008アヅミ王の右守と仕へたるターマン司変装して忍び居たりしが、009この光景を見て大に喜び、010ラート、011マークの側近く進みより、012堅く握手を交し感謝の涙に暮れ居たり。
013 ターマンはマーク、014ラートに向つて歌ふ。
015『吾王の失ひ給ひし食国を
016生かし給ひし君は神なり
017吾王は月光山に籠らひて
018朝な夕なに祈り給ひし
019主の神の御霊懸りて二柱の
020君に力を添へ給ひけむ
021斯くならばイドムの国はアヅミ王の
022再び治下に蘇るらむ
023汝が功つぶさに王に伝ふべし
024必ず嘉し給ふなるらむ
025吾こそはイドムの城下に潜みつつ
026今日の吉日を待ち居たりけり
027王を思ひ国を思ひて真心を
028尽し給ひし尊き汝かも』
030『有難し力なき身も主の神の
031恵に吾は成り遂げしはや
032王の為御国の為に尽したる
033吾は報酬を望まざるべし
034国民を虐げ荒びしエールス王
036備へなきイドムの城に攻め寄せし
037吾には何の力だもなし
038天の時と地の理と人の和によりて
039維新の端緒は開けたるかな
040国民を虐げながら血をしぼり
041驕りし曲津は亡び失せたり
042今日よりはアヅミの王を迎へ来て
043民の心を安めむと思ふ』
045『有難しマーク司の言の葉を
046わが王許に早く伝へむ
047吾王は汝が心を聞召し
048喜び給はむ思へば嬉しき』
050『吾も亦傾く国を正さむと
051年月心を砕き居たりき
052天の時到りて漸く吾が思ひ
053晴れたる今日の心地よさかな
054力なき吾なりながら真心の
055弓弦は容易にきれざりにけり
056弓弦を放れし征矢は何処までも
057通さでおかぬ大丈夫のむね
058イドム城包みし黒雲晴れ行きて
059虫の啼く音も冴え渡りけり
060大空を包みし雲も晴れ行きて
061御空の月は輝き初めたり
062年月を重ねて維新の端緒は
063開け初めたり今日の吉日に
064朝夕に神を祈りし甲斐ありて
065今日新しき月を見るかな
066此の上は何をか望まむ吾王の
068露ほども汚き心持たぬ吾
069司の位などは望まじ
070月日照るイドムの国の更生を
071見れば望みのあらぬ吾なり
072国民の歓呼の声は山嶽も
073動ぐばかりに轟き渡るも
074国民は甦りたる心地して
075アヅミの王を歓ぎ迎へむ
076目附役の目を忍びつつ年月を
077維新の為に計画ひ来しはや
078斯くの如目出度き月日に逢はむとは
079思はざりけり一年の間に
080一年の短かき月日汚したる
081エールス王は夢と消えたり』
083『国民の誠心の集まりて
084イドムの国の雲は晴れたり
085吾も亦死生の巷に彷徨ひて
086今日の吉日を待ち居たりけり
087雄々しかるマークの君を始めとし
089月光の山に籠りて吾王は
090嘆きの月日送り給ひつ
091有難き御代となりけり主の神の
093今日よりは主の大神を斎かひて
094国の栄えを祈り奉らむ
095例なき此の喜びに逢ひけるも
096神の御稜威と汝等が働き
097国民の誠心を代表し
098立たせ給へる君の尊さ』
100『ターマンの右守の君の御言葉
102吾王の御代安かれと村肝の
103心尽せし甲斐ありにけり
104幾度も醜の目附に捕へられ
105暗き牢獄に投げ込まれける
106食物も碌に与へず苦しめし
107目附の心は曲鬼なりけり
108牢獄に投げ入れられて打たれつつ
109無情に泣きし日もありにけり
110七度も八度も牢獄にとぢられて
111世の行末を嘆かひしはや
112主の神の恵によりて漸くに
113今日の吉日に逢ひにけるかな
114過ぎし日の事を思へば自ら
115悲憤の涙頬に伝はる
116一日も安けき日とては無かりけり
117目附の司に睨はれにつつ
118世の人にブラツクリストとけなされて
119悲憤の涙に幾日嘆きぬ』
120 ターマンは憮然として歌ふ。
121『雄々しもよマークの君の物語
122聞くも悲憤の涙こぼるる
123身を捨てて王と国とに尽したる
124雄々しきマークの心に泣くも
125種々の悩みに堪へて今此処に
126維新の望みを遂げし君かも』
128『吾もまた縄目の恥を幾度か
129受けて御国に尽し来にけり
130父母の生命は取られ妻や子の
131行方は知れず悩みたりけり
132王の為国の御為父母の為
133妻子の為に励まされけり
134わが妻はいづらなるらむ吾御子は
135如何なりしと思へば悲しき
136父母や妻子を忘れて今日迄は
137御国の為に働きにけり』
139『吾は今ラート司の物語
141吾王も汝に劣らぬ苦しみと
142艱みを忍ばせ過ぎ給ひける
143王民は一つ心に苦しみて
144維新の大業成り遂げにける
145斯くなれば一日も早く吾王に
146此の瑞祥を知らせ奉らむ
147武士よラートの君よ此の城に
148待たせ給はれ吾王来ますまで
149吾は今マーク司を伴ひて
150月光山に急ぎ帰らむ』
152『ターマンの右守司の御言葉
153諾ひ吾は城を守らむ』
155『いざさらばマークの司と諸共に
156急ぎ帰らむ月光の山に』
157 茲に右守のターマンはマークの勇士と共に栗毛の馬に跨りつ、158群衆が歓呼の声に送られて蹄の音も勇ましく、159百里を隔つる月光山へと急ぎける。
160 ターマンは馬上ゆたかに歌ふ。
162主の大神の御恵に
164醜の黒雲晴れにけり
167伊佐子の島の真秀良場よ
168至治太平の夢に酔ひ
169軍の備へを等閑に
171悪逆無道のサール国
173取り囲まれて果敢なくも
174王の古城は落されぬ
176右守、左守や軍師等は
177討ち洩らされし郎党を
178かり集めつつ野路を越え
179山川渉り月光の
180峻しき山に身を潜め
181天地の神の宮を建て
185神の御稜威の現はれて
186矢叫びの声鬨の声
189国民未だ吾王を
192心を筑紫の甲斐ありて
194醜の黒雲払はれぬ
195月日は清く水清く
196山野は爽かに青みつつ
197諸の果物よく実る
200千代を楽しむ今日こそは
201神代も聞かぬ喜びぞ
204吾も是より肝向ふ
205心を改め研ぎ澄まし
206主の大神を朝夕に
207敬ひ奉り願ぎ奉り
209吾国民の幸楽を
210真心籠めて計るべし
211馳せ行く道は遠けれど
212千里の駒の脚速く
213吹き来る風に鬣を
215駒は地上の竜なれや
216道の隈手も恙なく
217難所も厭はず走り行く
219道の行手に幸あれや
220吾言霊に光あれ』
221 マークは馬上ゆたかに歌ふ。
224アヅミの王に国の状態
225詳細に語ると進み行く
226今日の旅立ち楽しけれ
227駒の嘶き蹄の音も
229秋の山々紅葉して
230錦機織る佐保姫の
232右と左の山峡に
233妻恋ふ鹿の声冴えて
234谷間を照す月光は
235鏡の如く冴え渡る
236下道進む吾こそは
237華胥の御国に行く心地
240神の御稜威の幸はひて
241暴虐無道を極めたる
245強き騎士は悉く
246人魚の司の計略に
250継がむと謀める折もあれ
253憂国悲憤の同志等を
255維新の壮挙を宣りつれば
256群衆一度に賛同し
257醜の潜める城内に
258雲を霞と押寄せぬ
260忽ち水乃の激流に
261飛び込み生命を失せにけり
263城の内には敵将の
264影は全く消え失せて
265無人の原を行く如し
266是も全く主の神の
267公平無私なる御裁き
268謹み感謝し奉る
269斯くなる上は一日だも
272御代を建てさせ給ふべく
273乞ひのみ奉る国民の
275申し伝へよ右守神
277今日の喜び限りなし
278吹き来る風も爽かに
279天地更生の響あり
284王の御前に復命
285申さむ時こそ楽しけれ
287御霊幸倍坐世』
288(昭和九・八・五 旧六・二五 於伊豆別院 森良仁謹録)