第二〇章 悔悟の花〔二〇四七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
篇:第4篇 猛獣思想
よみ(新仮名遣い):もうじゅうしそう
章:第20章 悔悟の花
よみ(新仮名遣い):かいごのはな
通し章番号:2047
口述日:1934(昭和9)年08月15日(旧07月6日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:引退を宣言して身を隠していたナーリスは、部下のナイトを数百従えて反乱軍の群集の前に整然と現れ、声高らかに悪人たちの滅亡を告げた。そして、政局の混乱は自分が収めて善政を敷くことを約束し、民衆に武器を収めて元の営みに立ち返るよう説得した。
反乱軍の群集側からは夕月が現れ、ナーリスを中心として新しい国政を立て直すことを宣言した。ナーリスと夕月は混乱の収拾を祝しつつ、述懐の歌を歌った。
ナーリスと夕月は部下を従えて城内に入り、万事後片付けをすると、重臣たちを集めて国乱を鎮定した祝賀の席を設けた。
一同は述懐の歌を歌いあい、悪女・アララギがイドム国からやってきたことが国難の始めであったと回顧した。ナーリスは、王の言葉に従って早くサール国に帰還したために、すんでのところでサール国の自滅を防ぐことができたことを述懐した。
かくする折りしも、数千の騎士たちがイドム国から逃げ帰ってきた。サール軍の副将チンリンは、エールス王・王妃・左守チクター・軍師エーマンら首脳陣はすべて命を落とし、アヅミ王の反攻勢い強く、サール軍はイドム国を追われてしまったことを報告した。
ナーリス、夕月ら一同はこの報告に顔色を変え、茫然として言葉を失ってしまった。そして、チンリンから王の落命について聞くと、一同は、他国を戦によって奪おうとした欲の罪により、王の一族の血筋が絶えることになってしまったことに思い至った。
ナーリスは、残された重臣一同、誠一つに心を合わせて国の再建を行う決意を表した。そして、エールス王が残した戒めを忘れず、今後は天地の神を畏れ謹んで誠の道を進んで行くことを、改めて重臣一同に示した。
ナーリスはサール国内に王一族の不幸を告示し、盛大な葬儀を執り行った。そして、木田山城内に荘厳な主の神の御舎を造営し、朝夕、正しい政治が行われるようにとの祈願を怠らなかった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:2016-11-03 04:14:48
OBC :rm8120
愛善世界社版:
八幡書店版:第14輯 537頁
修補版:
校定版:425頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 贋のエームス王や、002贋のチンリウ姫を始め、003乳母アララギに捨台詞を残し城内を立ち出でたる左守司のナーリスは、004群衆の犇き立てる大混乱の巷に数百の騎士を従へ、005隊伍整然として現はれ来り、006十字路に立ちて、007声高らかに歌ふ。
008『サールの国の国津神
009木田山城の人々よ
013今は左守の神となり
014木田山城に帰りしが
016生命奪はれ怪しかる
018悪逆無道のアララギが
020暴威を振るひ居たりしが
021愛国志士の団体に
022攻め立てられし悪魔等は
023忽ち煙と消えにけり
025最早騒ぐに及ぶまじ
027平安無事に守りつつ
029其の日の生活を楽しめよ
030吾は之より城内に
031騎士を率ゐて立帰り
032乱れ果てたる秩序をば
033全く元に立て直し
034善政を布かむ覚悟なり
035国津神等国人よ
036心を安んじ給ふべし
037鎮まり給へ諸人よ
038其の他百の国津神
039一先づ鉾を納めませ
042時めき給ふ功績を
043汝等国人恐れずや
045数多引連れ此の国に
047汝が生活は弥益も
049一時に鎮まれ疾く早く
051真の悪魔は亡びたり
052平地に波を起すべき
053理由は無からむ速かに
055後は吾々汝等が
056望みを詳細に聞え上げ
057其の目的を達すべし』
058 斯く歌ふ折しも、059向ふの方より群衆に押されながら、060馬上ゆたかに進み来る勇士は、061音に名高き夕月なりけり。
063『悪魔の昼夜にはびこりし
064木田山城は鎮まりぬ
065吾等の率ゆる大丈夫の
066御国を思ふ真心は
068暴逆無道のアララギも
069奸佞邪智なるセンリウも
070蠑螈の精と聞えたる
073もう此の上は吾々は
074左守の神を力とし
075乱れ果てたる国原を
076清め澄まして元の如
077至治太平の世となさむ
079天地の神の御恵みに
080国に仇なす曲神は
082汝等心を安んぜよ
084亡び行くなる国原は
085汝等群衆の真心に
089一切万事を委ねつつ
090心平穏に引けよかし
092神の御稜威の御前に
093感謝を捧げ奉る』
094 斯くて左守と夕月は十字街頭に大衆を率ゐたるままで邂逅し、095互に暴動の無事治まりしを祝し合ひつつ、096夕月は先づ歌ふ。
097『常暗の雲は晴れにつ久方の
098月日は清く輝き渡れり
099汝こそは左守の神よ乱れたる
100此の世の縺れを解かせ給へり
101曲神は残らず亡び失せにけり
102いざ是よりは君に頼らむ』
104『遥々とイドムの国より帰り来し
105間もあらなくに此の騒ぎみし
106夕月の君の真心力とし
107吾は仕へむ木田山城に』
108 これより左守のナーリスは、109愛国団体の隊長夕月と共に騎士に守られ、110城内深く浸入し、111一切万事の後片附をなし、112重臣等を一間に集めて国乱鎮定の祝賀会を催しける。113重なる参会者はナーリスを初め夕月、114滝津瀬、115山風、116青山、117紫、118玉山等の数十人の重臣なりける。
120『天地の神の御稜威と左守司
121夕月司に治まりしはや
122刈菰の乱れ果てたる国原も
123君の力に治まりにけり
124国津神国人等は悪政に
125苦しめられて喘ぎ居しはや
126かくならば思ふことなしサールの国は
127いや益々に栄え行くらむ』
129『長き日を鄙に潜みて国の状態
130吾は細々調査べ来にけり
131只ならぬ大事起ると常々に
133城内に数多の曲津潜み居て
134益々国は乱れ果てけり
135怪しかる女アララギ覇をとなへ
136木田山城は闇となりける
137紫の雲は御空に靡けども
138中空の雲黒々覆ひし
139行先は如何ならむとわづらひし
141エールスの王の戦に出でしより
142一入サールの国は乱れし』
144『イドムより怪しき女入り来り
146捕虜として捕へ帰りし魔の女に
147木田山城は傾きしはや
148今日となりて吾等の心安まりぬ
150如何にして亡びむ国を生かさむと
151朝夕心を砕きけるかな』
153『エームスの吾若王の御心を
154蕩かせ奉りし魔の女かな
155エームスの若王魔性に謀られ
156生命果敢なくならせ給ひぬ
157城内の菖蒲の池の主といふ
158蠑螈は王を失ひしはや
159これよりは蠑螈の精を言向けて
160国の災清く払はせよ』
162『木田川の流れはいたく濁りたり
163魔性の女を捕へ来しより
164斯くの如安く治まりし有様を
166吾王はイドムの城を亡ぼして
167功を永久に立てさせ給へり
168治まりし国の姿をイドムなる
169王に見せなば喜び給はむ』
171『木田城に吾は久しく仕へつつ
172乱れ行く世を歎かひて居し
173アララギの木田山城に入りしより
174人の心は騒ぎ初めたり
175アララギを斬つて捨てむと幾度か
176思へど詮なく忍び居たりき
177天の時漸く到り群衆を
178率ゐて吾は曲津を討ちたり
179神々の恵みに吾は守られて
180日頃の望み遂げし嬉しさ
181折も折左守の司帰りますと
182聞きてゆ吾は勇み立ちたり
183人の和を得たる軍は何処までも
184亡ぶ事なく勝ち終せたり
185城内を騒がせ奉りし吾罪を
186身に引き受けて鄙に下らむ』
187 左守の司ナーリスは歌ふ。
188『国人の清き心の集まりに
189曲は影なく亡び失せたり
190刈菰の乱れ漸く鎮まりて
191神の御前に祝言宣るも
192エールスの王の言葉に従ひて
193急ぎ帰れば国乱れ居り
194今暫し帰国後るる事あらば
195サールの国は自滅し居るらむ』
196 斯く歌へる折もあれ、197数千の騎士を率ゐて逃げ帰りたる副将チンリンは奥殿深く進み来り、198左守の神のナーリスに向ひ、199挙手の礼を捧げながら歌ふ。
200『エールスの王悲しくも帰幽れましぬ
201サツクス姫も身失せ給ひぬ
202チクターの左守を始めエーマンの
203軍師も共に滅び失せたり
204アヅミ王の勢強く盛り返し
205吾等が味方は脆くも破れぬ
206かくならばイドムの国に用なしと
207騎士を率ゐて急ぎ帰りし』
208 此の報告に左守を始め夕月其の他の面々は、209顔色をサツと変へ、210茫然として暫し無言の幕を続け居たりける。
211 ナーリスは愕然として歌ふ。
212『思ひきや武勇の聞え高かりし
213吾等の王は帰幽れ給ふか
214サツクスの妃の君も身うせしと
215聞くにつけても悲しさに堪へず
216左守まで軍師の君まで身罷りしは
217如何なる事か聞かまほしけれ
218漸くにサールの国の治まりを
219喜ぶ間もなく此の便り聞くも』
221『何故か訳は知らねど吾王は
222神の譴責にあひ給ひけむ
223人々の語るを聞けば主の神の
225兎に角に人の国をば奪ひたる
226報いなりせば詮術なけむ』
228『恐ろしき事を聞くかな他の国を
229奪はむとする戦の有様
230エールスの王の血統は亡びたり
231サールの国を如何に守らむ』
232 夕月は憮然として歌ふ。
233『兎にもあれ角にもあれや人はただ
235日月の威勢輝く吾王も
236亡ぶる時のある世なるかな
237今日よりは誠一つを力とし
238サールの国を安く治めむ』
240『欲といふ醜の曲津に誘はれ
241王は御国を失ひ給ひし
242此の広きサールの国にましまさば
244吾力頼み過ぎたる報いにて
245王は生命を失ひ給ひぬ
246全滅の憂目にあひしエールスの
247王の行末淋しかりけり
248愛善の誠なければ人の身は
249身も魂も終に亡びむ』
251『嶮しかる大栄山を乗り越えて
252生命を捨てし王を悲しむ
253吾王はイドムの城に攻め寄せて
254尊き生命を捨てさせ給へり
255歎きても及ばじものと思へども
257何事も誠一つに進みなば
258世に過ちはあらじと思ふ』
260『かくならば最早是非なし吾々は
261誠の道を進むのみなる
262エールスの王は吾等にいましめを
263永遠に残して去りましにけり
264天地の神を恐れみ謹みて
265誠の道に進み行くべし』
266 斯く歌ひ終り左守のナーリスは、267城内一般にエールス王一族の不幸を発表し、268国民の代表者を集めて盛大なる葬の式を執り行ひ、269木田山の城内に荘厳なる主の神の御舎を造営し、270朝な夕なに正しき政治を行はせ給へと祈願怠りなかりける。
271(昭和九・八・一五 旧七・六 於水明閣 森良仁謹録)