霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第17巻(辰の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 雪山幽谷
01 黄金の衣
〔612〕
02 魔の窟
〔613〕
03 生死不明
〔614〕
04 羽化登仙
〔615〕
05 誘惑婆
〔616〕
06 瑞の宝座
〔617〕
第2篇 千態万様
07 枯尾花
〔618〕
08 蚯蚓の囁
〔619〕
09 大逆転
〔620〕
10 四百種病
〔621〕
11 顕幽交通
〔622〕
第3篇 鬼ケ城山
12 花と花
〔623〕
13 紫姫
〔624〕
14 空谷の足音
〔625〕
15 敵味方
〔626〕
16 城攻
〔627〕
17 有終の美
〔628〕
霊の礎(三)
暁山雲(謡曲)
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第17巻
> 第1篇 雪山幽谷 > 第2章 魔の窟
<<< 黄金の衣
(B)
(N)
生死不明 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第二章
魔
(
ま
)
の
窟
(
いはや
)
〔六一三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻
篇:
第1篇 雪山幽谷
よみ(新仮名遣い):
せつざんゆうこく
章:
第2章 魔の窟
よみ(新仮名遣い):
まのいわや
通し章番号:
613
口述日:
1922(大正11)年04月21日(旧03月25日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年1月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
五人は仕方なく裸のまま雪道を行くが、途中に雪崩にあってお節が雪に埋まってしまった。
鬼虎と鬼彦は、平助、お楢、お節に罵られながらも、懸命にお節を救出しようとする。
ようやくお節を救い出すと、お節は狐に変化して、山道をかけていく。平助とお楢はその後を追って行き、五人もそれに続く。
平助とお楢は嘆き悲しむが、お節の狐が消えたところは、鬼雲彦の命で鬼彦、鬼虎がお節を閉じ込めた魔の岩窟の入口だった。
鬼彦と鬼虎は、岩窟に入っていって本物のお節を救い出そうと平助・お楢に約束して中に入っていく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-02-14 18:10:11
OBC :
rm1702
愛善世界社版:
27頁
八幡書店版:
第3輯 534頁
修補版:
校定版:
29頁
普及版:
11頁
初版:
ページ備考:
001
平助
(
へいすけ
)
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
声
(
こゑ
)
かけられて
鬼彦
(
おにひこ
)
、
002
鬼虎
(
おにとら
)
、
003
岩
(
いは
)
、
004
勘
(
かん
)
、
005
櫟
(
いち
)
の
一同
(
いちどう
)
は、
006
フト
気
(
き
)
がつけば
野中
(
のなか
)
の
汚
(
きたな
)
き
雪隠
(
せんち
)
を
中央
(
まんなか
)
に
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
007
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
居
(
ゐ
)
たりける。
008
鬼彦
(
おにひこ
)
『アヽ、
009
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
010
大
(
おほ
)
きな
顔
(
かほ
)
して
日中
(
ひなか
)
に
歩
(
ある
)
けた
態
(
ざま
)
ぢやない
哩
(
わい
)
。
011
これと
云
(
い
)
ふも
全
(
まつた
)
く
大江山
(
おほえやま
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
に
加担
(
かたん
)
し、
012
所在
(
あらゆる
)
悪
(
あく
)
を
尽
(
つく
)
して
来
(
き
)
た
天罰
(
てんばつ
)
が
報
(
むく
)
うて
来
(
き
)
たのでせう。
013
身魂
(
みたま
)
の
借銭
(
しやくせん
)
済
(
な
)
しと
思
(
おも
)
へば
結構
(
けつこう
)
だが、
014
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
五
(
ご
)
人
(
にん
)
とも
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
のやうに
真裸
(
まつぱだか
)
になり、
015
褌
(
まわし
)
一
(
ひと
)
つ
持
(
も
)
たぬ
無一物
(
むいちぶつ
)
となつて
仕舞
(
しま
)
ひました。
016
男
(
をとこ
)
は
裸
(
はだか
)
百貫
(
ひやくくわん
)
だ、
017
サアこれから
男
(
をとこ
)
としての
真剣
(
ほんたう
)
の
力
(
ちから
)
を
試
(
ため
)
す
時
(
とき
)
だ、
018
精神
(
せいしん
)
さへ
確
(
しつか
)
りして
居
(
を
)
れば
少々
(
せうせう
)
の
雪
(
ゆき
)
だつて
感応
(
こた
)
へるものか、
019
力士
(
すまうとり
)
は
寒中
(
かんちう
)
でも
真裸
(
まつぱだか
)
だ、
020
サアサア
皆
(
みな
)
さま
往
(
ゆ
)
きませう』
021
と
鬼彦
(
おにひこ
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
022
岩公
(
いはこう
)
『
何
(
なん
)
とマア、
023
裸
(
はだか
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
024
見
(
み
)
つともないものだ。
025
それにつけても
鬼彦
(
おにひこ
)
は
叮嚀
(
ていねい
)
な
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
ふかと
思
(
おも
)
へば
忽
(
たちま
)
ち
荒
(
あら
)
つぽい
言葉
(
ことば
)
になる、
026
何
(
ど
)
ちらにか
定
(
き
)
めて
貰
(
もら
)
はないと
吾々
(
われわれ
)
が
応対
(
おうたい
)
するについても
方針
(
はうしん
)
が
定
(
き
)
まらないからなア』
027
鬼彦
(
おにひこ
)
『
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
や、
028
正
(
せい
)
守護神
(
しゆごじん
)
や、
029
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
言葉
(
ことば
)
が
混合
(
こんがふ
)
して
出
(
で
)
るから
仕方
(
しかた
)
がありませぬわいやい。
030
オイ
岩公
(
いはこう
)
、
031
今
(
いま
)
暫
(
しばら
)
く
辛抱
(
しんばう
)
なされませ、
032
此
(
この
)
鬼彦
(
おにひこ
)
も
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
精神
(
せいしん
)
が
落着
(
おちつき
)
を
欠
(
か
)
いで
居
(
ゐ
)
るからなア』
033
と
云
(
い
)
ひつつ
大股
(
おほまた
)
に
雪路
(
ゆきみち
)
を
跨
(
また
)
げ
山
(
やま
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
みゆく。
034
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
二十八
(
にじふはち
)
日
(
にち
)
の
太陽
(
たいやう
)
は
晃々
(
くわうくわう
)
として
輝
(
かがや
)
き、
035
徐々
(
そろそろ
)
雪
(
ゆき
)
は
解
(
と
)
け
初
(
はじ
)
め、
036
真名井
(
まなゐ
)
ケ
嶽
(
だけ
)
より
転
(
ころ
)
げ
落
(
お
)
つる
雪崩
(
なだれ
)
の
大塊
(
おほかたまり
)
は、
037
幾十
(
いくじふ
)
ともなく
囂々
(
がうがう
)
と
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
て
落下
(
らくか
)
する
其
(
その
)
剣呑
(
けんのん
)
さ。
038
忽
(
たちま
)
ち
落下
(
らくか
)
し
来
(
きた
)
る
大雪塊
(
だいせつくわい
)
に
押潰
(
おしつぶ
)
され、
039
お
節
(
せつ
)
は
首
(
くび
)
から
上
(
うへ
)
を
出
(
だ
)
して
悲鳴
(
ひめい
)
をあげ、
040
お節
『お
助
(
たす
)
け お
助
(
たす
)
け』
041
と
声
(
こゑ
)
限
(
かぎ
)
りに
叫
(
さけ
)
び
泣
(
な
)
く。
042
鬼彦
(
おにひこ
)
『オイ
鬼虎
(
おにとら
)
、
043
去年
(
きよねん
)
はお
節
(
せつ
)
さまを
苦
(
くる
)
しめた、
044
其
(
その
)
お
詫
(
わび
)
にあの
雪塊
(
せつくわい
)
を
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けて
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
け、
045
お
詫
(
わび
)
をしやうぢやないか』
046
鬼虎
(
おにとら
)
『さうぢや、
047
お
詫
(
わび
)
をするのは
今
(
いま
)
ぢや、
048
今
(
いま
)
を
措
(
お
)
いてコンナ
機会
(
きくわい
)
があるものか。
049
モシモシお
節
(
せつ
)
さま、
050
今
(
いま
)
私
(
わたくし
)
がお
助
(
たす
)
け
致
(
いた
)
します、
051
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
052
エイエイ
固
(
かた
)
い
雪塊
(
ゆきかたまり
)
だ、
053
冷
(
つめた
)
い
奴
(
やつ
)
だなア』
054
お
節
(
せつ
)
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
055
お節
『いゑいゑ
仮令
(
たとへ
)
死
(
し
)
すとも
鬼彦
(
おにひこ
)
や
鬼虎
(
おにとら
)
のお
世話
(
せわ
)
にはなりませぬ、
056
どうぞ
外
(
ほか
)
のお
方
(
かた
)
、
057
出
(
で
)
てきて
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ』
058
鬼彦
(
おにひこ
)
『エヽ、
059
何処迄
(
どこまで
)
も
執念深
(
しふねんぶか
)
いお
節
(
せつ
)
さまだナア、
060
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
人嫌
(
ひとぎらひ
)
どころぢやあるまい。
061
サア
鬼虎
(
おにとら
)
貴様
(
きさま
)
と
二人
(
ふたり
)
、
062
今
(
いま
)
がお
詫
(
わび
)
のし
時
(
どき
)
だ、
063
サア
来
(
こ
)
い
一
(
ひい
)
二
(
ふう
)
三
(
み
)
つ』
064
と
雪塊
(
せつくわい
)
にむかひ
真裸
(
まつぱだか
)
の
体
(
たい
)
を
打
(
ぶ
)
つける。
065
さしもの
大塊
(
おほかたまり
)
突
(
つ
)
けども
押
(
お
)
せどもビクともしない。
066
平助
(
へいすけ
)
お
楢
(
なら
)
は
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を
振
(
ふ
)
り
絞
(
しぼ
)
り、
067
平助
(
へいすけ
)
『アヽ、
068
私
(
わたくし
)
達
(
たち
)
程
(
ほど
)
因果
(
いんぐわ
)
なものが
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
に
又
(
また
)
とあらうか、
069
折角
(
せつかく
)
機嫌
(
きげん
)
のよい
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
てやつと
蘇生
(
そせい
)
の
思
(
おも
)
ひをしたと
思
(
おも
)
へば、
070
一
(
いち
)
日
(
にち
)
経
(
た
)
つや
経
(
た
)
たずの
間
(
あひだ
)
に、
071
又
(
また
)
もや
不慮
(
ふりよ
)
の
災難
(
さいなん
)
何
(
ど
)
うして
之
(
これ
)
が
生
(
いき
)
て
居
(
を
)
られう。
072
オイお
楢
(
なら
)
、
073
お
前
(
まへ
)
も
私
(
わし
)
も
是
(
これ
)
から
娘
(
むすめ
)
と
共
(
とも
)
に
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
の
旅
(
たび
)
に
出
(
で
)
かけませう。
074
サア
用意
(
ようい
)
ぢや、
075
よいか』
076
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ
私
(
わたくし
)
も
女
(
をんな
)
の
端
(
はし
)
くれ、
077
親子
(
おやこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
潔
(
いさぎよ
)
く
命
(
いのち
)
を
果
(
はた
)
し、
078
神界
(
しんかい
)
とやらに
参
(
まゐ
)
りませう。
079
コレお
節
(
せつ
)
、
080
婆
(
ばば
)
は
一足先
(
ひとあしさき
)
へ
行
(
ゆ
)
く
程
(
ほど
)
にどうぞ
悠
(
ゆつ
)
くり
後
(
あと
)
から
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい、
081
六道
(
ろくだう
)
の
辻
(
つじ
)
で
婆
(
ばば
)
と
爺
(
ぢぢ
)
とが
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ます、
082
オンオンオン』
083
平助
(
へいすけ
)
『これやこれやお
楢
(
なら
)
、
084
何事
(
なにごと
)
も
運命
(
うんめい
)
の
綱
(
つな
)
に
操
(
あやつ
)
られて
居
(
ゐ
)
るのだ。
085
此
(
この
)
期
(
ご
)
に
及
(
およ
)
んで
涙
(
なみだ
)
は
禁物
(
きんもつ
)
だ、
086
サア
潔
(
いさぎよ
)
く』
087
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
懐剣
(
くわいけん
)
抜
(
ぬ
)
く
手
(
て
)
も
見
(
み
)
せず、
088
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
腹
(
はら
)
にぐつと
突
(
つ
)
き
立
(
た
)
てむとする。
089
鬼彦
(
おにひこ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
平助
(
へいすけ
)
の
利
(
き
)
き
腕
(
うで
)
を
確
(
しつか
)
と
握
(
にぎ
)
り、
090
鬼彦
(
おにひこ
)
『ヤア、
091
お
爺
(
ぢい
)
さま
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
092
死
(
し
)
ぬのは
早
(
はや
)
いぞ、
093
死
(
し
)
んで
花実
(
はなみ
)
が
咲
(
さ
)
くものか、
094
此
(
この
)
世
(
よ
)
で
安心
(
あんしん
)
をせずにどうして
彼
(
あ
)
の
世
(
よ
)
で
安心
(
あんしん
)
が
出来
(
でき
)
ると
思
(
おも
)
ふか、
095
マアマア
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
096
短気
(
たんき
)
は
損気
(
そんき
)
だ』
097
お
楢
(
なら
)
『
平助
(
へいすけ
)
どのさらば』
098
と
又
(
また
)
もや
短刀
(
たんたう
)
を
抜
(
ぬ
)
くより
早
(
はや
)
く
喉
(
のど
)
に
突
(
つ
)
き
刺
(
さ
)
さむとする
一刹那
(
いちせつな
)
、
099
鬼虎
(
おにとら
)
は
吾
(
われ
)
を
忘
(
わす
)
れてお
楢
(
なら
)
の
利
(
き
)
き
腕
(
うで
)
グツと
握
(
にぎ
)
り、
100
鬼虎
(
おにとら
)
『お
婆
(
ば
)
アさま
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた』
101
お
楢
(
なら
)
『ヤア
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
大江山
(
おほえやま
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
乾児
(
こぶん
)
であつた
鬼虎
(
おにとら
)
だな、
102
エヽ
汚
(
けが
)
らはしい、
103
構
(
かま
)
つて
下
(
くだ
)
さるな、
104
婆
(
ばば
)
の
命
(
いのち
)
を
婆
(
ばば
)
が
捨
(
す
)
てるのだ。
105
お
前
(
まへ
)
に
厘毛
(
りんまう
)
の
損害
(
そんがい
)
を
掛
(
か
)
けるのでない、
106
放
(
ほ
)
つて
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい、
107
入
(
い
)
らぬお
世話
(
せわ
)
だ、
108
あた
汚
(
けが
)
らはしい、
109
お
前
(
まへ
)
のやうな
悪人
(
あくにん
)
に
助
(
たす
)
けられて
何
(
ど
)
うしてノメノメ
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
いき
)
て
居
(
を
)
られるものか、
110
エヽ
放
(
ほ
)
つて
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい』
111
鬼虎
(
おにとら
)
、
112
涙声
(
なみだごゑ
)
になつて、
113
鬼虎
『お
楢
(
なら
)
さま
何
(
ど
)
うしても
私
(
わたくし
)
の
罪
(
つみ
)
は
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか』
114
お
楢
(
なら
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だ、
115
死
(
し
)
んでも
許
(
ゆる
)
しやせぬ、
116
仮令
(
たとへ
)
ミロクの
世
(
よ
)
が
来
(
き
)
てもお
前
(
まへ
)
の
恨
(
うらみ
)
は
忘
(
わす
)
れるものか』
117
鬼虎
(
おにとら
)
『お
楢
(
なら
)
さま、
118
ソンナラ
貴女
(
あなた
)
の
手
(
て
)
にかけて、
119
私
(
わたくし
)
を
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
弄
(
なぶ
)
り
殺
(
ごろ
)
しにして
下
(
くだ
)
さい。
120
さうしたら
貴女
(
あなた
)
の
恨
(
うらみ
)
は
些
(
ちつ
)
とは
晴
(
は
)
れませう、
121
さうして
私
(
わたくし
)
の
罪
(
つみ
)
を
忘
(
わす
)
れて
下
(
くだ
)
さいませ』
122
平助
(
へいすけ
)
大声
(
おほごゑ
)
に
泣
(
な
)
きながら、
123
平助
『コラコラお
楢
(
なら
)
、
124
もう
好
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
愚痴
(
ぐち
)
を
云
(
い
)
うて
置
(
お
)
かぬかい、
125
是
(
これ
)
丈
(
だけ
)
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い
善
(
ぜん
)
の
魂
(
たましひ
)
に
立
(
た
)
ち
復
(
かへ
)
つた
鬼彦
(
おにひこ
)
、
126
鬼虎
(
おにとら
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
127
此
(
この
)
上
(
うへ
)
愚痴
(
ぐち
)
を
零
(
こぼ
)
すと
却
(
かへ
)
つて
此方
(
こちら
)
が
深
(
ふか
)
い
罪
(
つみ
)
になるぞ。
128
夫
(
それ
)
よりも
潔
(
いさぎよ
)
く
娘
(
むすめ
)
と
共
(
とも
)
に
神界
(
しんかい
)
の
旅
(
たび
)
を
致
(
いた
)
さうぢやないか、
129
娑婆
(
しやば
)
に
執着
(
しふちやく
)
を
些
(
ちつ
)
とも
残
(
のこ
)
さぬやうにして
呉
(
く
)
れ、
130
アヽ
鬼彦
(
おにひこ
)
、
131
鬼虎
(
おにとら
)
両人
(
りやうにん
)
さま、
132
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
真心
(
まごころ
)
は
頑固
(
ぐわんこ
)
一辺
(
いつぺん
)
の
平助
(
へいすけ
)
も
骨身
(
ほねみ
)
に
徹
(
こた
)
へました。
133
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してもう
此
(
この
)
上
(
うへ
)
は
貴方
(
あなた
)
を
恨
(
うら
)
みませぬ、
134
どうぞ
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい』
135
鬼彦
(
おにひこ
)
『どうしてどうして
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
を
見殺
(
みごろ
)
しにしてなるものか、
136
短気
(
たんき
)
を
起
(
おこ
)
さずに、
137
も
一度
(
いちど
)
思
(
おも
)
ひ
直
(
なほ
)
して
下
(
くだ
)
さい、
138
オイ
鬼虎
(
おにとら
)
、
139
お
楢
(
なら
)
さまの
腕
(
かいな
)
を
放
(
はな
)
すぢやないぞ、
140
確
(
しつか
)
り
掴
(
つか
)
まへて
居
(
ゐ
)
て
呉
(
く
)
れ、
141
これやこれや
岩公
(
いはこう
)
、
142
勘
(
かん
)
、
143
櫟
(
いち
)
、
144
早
(
はや
)
くお
節
(
せつ
)
さまを
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さぬか、
145
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るのぢや』
146
岩公
(
いはこう
)
『
最前
(
さいぜん
)
から
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
雪塊
(
せつくわい
)
除
(
の
)
けに
尽
(
つく
)
して
居
(
ゐ
)
るのが
分
(
わか
)
らぬか、
147
サアサアお
節
(
せつ
)
さま、
148
もう
大分
(
だいぶん
)
に
軽
(
かる
)
くなつたらう、
149
一寸
(
ちよつと
)
動
(
うご
)
いて
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい』
150
お
節
(
せつ
)
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
151
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れさうにありましたが、
152
追々
(
おひおひ
)
とお
蔭様
(
かげさま
)
で
楽
(
らく
)
になつて
来
(
き
)
ました、
153
も
些
(
すこ
)
し
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けて
下
(
くだ
)
されば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
助
(
たす
)
かりませう、
154
モシモシお
爺
(
ぢい
)
さま、
155
お
婆
(
ば
)
アさま、
156
どうぞ
確
(
しつか
)
りして
下
(
くだ
)
さいませ、
157
節
(
せつ
)
はどうやら
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
へさうで
御座
(
ござ
)
います』
158
平助
(
へいすけ
)
、
159
お
楢
(
なら
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に、
160
平助、お楢
『ヤアヤアお
節
(
せつ
)
助
(
たす
)
かるか、
161
それは
何
(
なに
)
よりぢや、
162
お
前
(
まへ
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
いき
)
て
居
(
ゐ
)
るのなれば、
163
爺
(
ぢぢ
)
や
婆
(
ばば
)
は、
164
どうして
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
つてなるものか、
165
もう
皆
(
みな
)
さま
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい、
166
死
(
し
)
ねと
仰有
(
おつしや
)
つても
死
(
し
)
ぬものぢやない、
167
お
前
(
まへ
)
さまも
鬼彦
(
おにひこ
)
、
168
鬼虎
(
おにとら
)
と
云
(
い
)
つて
随分
(
ずゐぶん
)
悪人
(
あくにん
)
だつたが、
169
好
(
よ
)
う
そこ
まで
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
た。
170
サアサア
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
礼
(
れい
)
を
申
(
まをし
)
ませう』
171
岩公
(
いはこう
)
『モシモシ、
172
お
爺
(
ぢい
)
さま、
173
お
婆
(
ば
)
アさま、
174
それや
結構
(
けつこう
)
だがまだ
此
(
この
)
雪塊
(
せつくわい
)
は
容易
(
ようい
)
にとれないのだ、
175
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
は
祝詞
(
のりと
)
を
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さい、
176
これやこれや
鬼彦
(
おにひこ
)
、
177
鬼虎
(
おにとら
)
、
178
もはやお
爺
(
ぢい
)
さまお
婆
(
ばば
)
アさまの
方
(
はう
)
は
安心
(
あんしん
)
だ、
179
此方
(
こちら
)
へ
加勢
(
かせい
)
だ
加勢
(
かせい
)
だ』
180
鬼彦
『おうさうだ』
181
と
鬼彦
(
おにひこ
)
、
182
鬼虎
(
おにとら
)
は
雪塊
(
せつくわい
)
除
(
の
)
けに
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
して
居
(
ゐ
)
る。
183
漸
(
やうや
)
くにして
雪塊
(
せつくわい
)
は
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けられ、
184
お
節
(
せつ
)
はむくむくと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
185
嫌
(
いや
)
らしき
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
、
186
舌
(
した
)
を
四五寸
(
しごすん
)
許
(
ばか
)
りノロノロと
出
(
だ
)
し、
187
お
節
(
せつ
)
『キヤアツ キヤアツ キヤアツ キヤハヽヽヽ』
188
と
尻
(
しり
)
を
引
(
ひ
)
き
捲
(
ま
)
くり、
189
トントントンと
山奥
(
やまおく
)
さして
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したりける。
190
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かさむ
許
(
ばか
)
りに、
191
嫌
(
いや
)
らしさと
寒
(
さむ
)
さに
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
192
平助
(
へいすけ
)
お
楢
(
なら
)
の
二人
(
ふたり
)
は
皺嗄声
(
しわがれごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げながら、
193
平助、お楢
『オイお
節
(
せつ
)
、
194
オーイオーイ、
195
爺
(
ぢぢ
)
と
婆
(
ばば
)
とは
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
るぞ、
196
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ』
197
と
呶鳴
(
どな
)
りながら、
198
雪崩
(
なだれ
)
の
落下
(
らくか
)
する
谷道
(
たにみち
)
を
危険
(
きけん
)
を
忘
(
わす
)
れて
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
倒
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
199
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
裸男
(
はだかをとこ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
200
五人
『
爺
(
ぢい
)
さま
婆
(
ばあ
)
さま
危
(
あぶ
)
ない
危
(
あぶ
)
ない、
201
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
202
お
節
(
せつ
)
さまと
見
(
み
)
えたのは
化物
(
ばけもの
)
だつた、
203
命
(
いのち
)
あつての
物種
(
ものだね
)
だ、
204
危
(
あぶ
)
ない
危
(
あぶ
)
ない』
205
と
声
(
こゑ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
後
(
あと
)
から
追
(
お
)
つかける。
206
爺
(
ぢい
)
サンと
婆
(
ばあ
)
サンは
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
無我
(
むが
)
夢中
(
むちう
)
になつてお
節
(
せつ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
207
お
節
(
せつ
)
は
或
(
ある
)
谷川
(
たにがは
)
を
左右
(
さいう
)
に
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
飛
(
と
)
び
交
(
か
)
ひながら、
208
とある
行
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
つた
岩石
(
がんせき
)
の
前
(
まへ
)
にピタリと
倒
(
たふ
)
れ、
209
其
(
その
)
儘
(
まま
)
姿
(
すがた
)
は
白煙
(
しらけぶり
)
、
210
雪解
(
ゆきど
)
けの
雫
(
しづく
)
の
音
(
おと
)
は
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
梢
(
こずゑ
)
よりポトリポトリと
落
(
お
)
ち
下
(
くだ
)
る。
211
平助
(
へいすけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
はハツと
許
(
ばか
)
り
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
打
(
う
)
ち
倒
(
たふ
)
れ、
212
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず
泣
(
な
)
き
沈
(
しづ
)
む。
213
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
裸男
(
はだかをとこ
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
214
気絶
(
きぜつ
)
して
居
(
ゐ
)
る
平助
(
へいすけ
)
お
楢
(
なら
)
に
其辺
(
あたり
)
の
雪
(
ゆき
)
を
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
ませ、
215
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
神霊
(
しんれい
)
注射
(
ちうしや
)
を
行
(
おこな
)
ひければ、
216
老夫婦
(
らうふうふ
)
は
漸
(
やうや
)
くウンと
息
(
いき
)
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
217
又
(
また
)
もや『お
節
(
せつ
)
お
節
(
せつ
)
』と
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
218
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤア
此処
(
ここ
)
は
魔
(
ま
)
の
巌窟
(
いはや
)
だ、
219
去年
(
きよねん
)
の
今頃
(
いまごろ
)
だつたな、
220
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
命
(
めい
)
によつて
此
(
この
)
巌窟
(
いはや
)
にお
節
(
せつ
)
さまを
押
(
お
)
し
込
(
こ
)
め、
221
固
(
かた
)
く
出入
(
しゆつにふ
)
出来
(
でき
)
ないやうにして
置
(
お
)
いたのは
俺
(
おれ
)
だ。
222
其
(
その
)
後
(
ご
)
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
チヨコチヨコとやつて
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
だつたが、
223
お
節
(
せつ
)
の
事
(
こと
)
を
念頭
(
ねんとう
)
から
遺失
(
ゐしつ
)
して
居
(
ゐ
)
たのか、
224
未
(
いま
)
だ
一回
(
いつくわい
)
も
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
接触
(
いぢ
)
つた
痕跡
(
こんせき
)
がない、
225
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
位
(
くらゐ
)
の
食料
(
しよくれう
)
として
勝栗
(
かちぐり
)
が
沢山
(
たくさん
)
入
(
い
)
れてあれば
滅多
(
めつた
)
に
飢死
(
うゑじに
)
して
居
(
ゐ
)
る
筈
(
はず
)
も
無
(
な
)
からうし、
226
水
(
みづ
)
も
天然
(
てんねん
)
に
湧
(
わ
)
き
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るから
寿命
(
じゆみやう
)
さへあれば
生
(
いき
)
て
居
(
ゐ
)
るのだらう、
227
最前
(
さいぜん
)
のお
節
(
せつ
)
と
思
(
おも
)
うたのは
何
(
なん
)
でも
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
であつた。
228
サアサア
爺
(
ぢい
)
さま
婆
(
ば
)
アさま、
229
此
(
この
)
鬼彦
(
おにひこ
)
、
230
鬼虎
(
おにとら
)
が
改心
(
かいしん
)
の
証拠
(
しようこ
)
に
真実
(
ほんと
)
のお
節
(
せつ
)
さまに
遇
(
あ
)
はして
上
(
あ
)
げやう。
231
何卒
(
どうぞ
)
これで
日頃
(
ひごろ
)
の
恨
(
うらみ
)
を
晴
(
は
)
らして
下
(
くだ
)
さい』
232
平助
(
へいすけ
)
『
真実
(
ほんと
)
の
娘
(
むすめ
)
に
遇
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さるか、
233
娘
(
むすめ
)
さへ
無事
(
ぶじ
)
に
生
(
いき
)
て
居
(
を
)
れば、
234
今迄
(
いままで
)
の
恨
(
うらみ
)
も
何
(
なに
)
もすつかり
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
ひませう、
235
ナアお
楢
(
なら
)
、
236
さうぢやないか』
237
お
楢
(
なら
)
『どうぞ
早
(
はや
)
う
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい、
238
真実
(
ほんと
)
の
娘
(
むすめ
)
が
見
(
み
)
たい
哩
(
わい
)
なア、
239
オーンオーンオーン』
240
と
泣
(
な
)
きそそる。
241
鬼虎
(
おにとら
)
、
242
鬼彦
(
おにひこ
)
は
四辺
(
あたり
)
の
手
(
て
)
ごろの
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ、
243
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
み
)
つと
合図
(
あひづ
)
しながら
岩壁
(
がんぺき
)
を
一度
(
いちど
)
に
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
り
撲
(
なぐ
)
つた。
244
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
は
内
(
うち
)
に
開
(
ひら
)
いて
中
(
なか
)
には
真暗
(
まつくら
)
の
道
(
みち
)
がついて
居
(
ゐ
)
る。
245
鬼彦
(
おにひこ
)
『サア
開
(
ひら
)
きました、
246
誰
(
たれ
)
も
這入
(
はい
)
らないと
見
(
み
)
えて
随分
(
ずゐぶん
)
エライ
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
だ、
247
オイ
岩公
(
いはこう
)
、
248
其
(
その
)
辺
(
へん
)
の
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
を
折
(
を
)
つて
来
(
こ
)
い、
249
さうして
貴様
(
きさま
)
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
払
(
ばら
)
ひだ』
250
岩公
(
いはこう
)
『
妙
(
めう
)
な
巌窟
(
がんくつ
)
もあつたものだ、
251
よし
来
(
き
)
た』
252
と
傍
(
かたはら
)
の
常磐木
(
ときはぎ
)
の
枝
(
えだ
)
を
折
(
を
)
り
取
(
と
)
り、
253
左右左
(
さいうさ
)
と
振
(
ふ
)
りながら
暗
(
くら
)
き
巌窟
(
がんくつ
)
の
奥
(
おく
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
254
鬼虎
(
おにとら
)
は
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
255
鬼虎
(
おにとら
)
『お
爺
(
ぢ
)
イさま、
256
お
婆
(
ば
)
アさま、
257
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
は
大変
(
たいへん
)
に
危険
(
きけん
)
で
御座
(
ござ
)
います、
258
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい、
259
お
節
(
せつ
)
さまを
立派
(
りつぱ
)
にお
連
(
つ
)
れ
申
(
まをし
)
て
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ます』
260
お
楢
(
なら
)
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う、
261
何卒
(
どうぞ
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
う
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
され』
262
平助
(
へいすけ
)
『
何卒
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さま
頼
(
たの
)
みます』
263
鬼虎
(
おにとら
)
『
承知
(
しようち
)
しました』
264
と
段々
(
だんだん
)
と
奥
(
おく
)
へ
進
(
すす
)
みつつ
鬼彦
(
おにひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
265
鬼虎
(
おにとら
)
『オイ
鬼彦
(
おにひこ
)
、
266
此処
(
ここ
)
へ
押込
(
おしこ
)
めてからもう
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
になるが、
267
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
其
(
その
)
後
(
ご
)
一度
(
いちど
)
も
此処
(
ここ
)
に
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
ないやうだ、
268
万々一
(
まんまんいち
)
お
節
(
せつ
)
さまが
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
つて
居
(
を
)
つたら、
269
老人
(
らうじん
)
夫婦
(
ふうふ
)
にどうして
云
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
をしたら
好
(
よ
)
からうなア、
270
屹度
(
きつと
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
又
(
また
)
喉
(
のど
)
突
(
つ
)
き
騒
(
さわ
)
ぎをやるに
極
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
271
ハテ
心配
(
しんぱい
)
な
事
(
こと
)
ぢやないか』
272
鬼彦
(
おにひこ
)
『ナニ
心配
(
しんぱい
)
するにや
及
(
およ
)
ぶまい、
273
屹度
(
きつと
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さるだらう。
274
ソンナ
入
(
い
)
らざる
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
をするよりも、
275
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
う
前進
(
ぜんしん
)
して
安否
(
あんぴ
)
を
探
(
さぐ
)
ることにしようぢやないか。
276
もし
万々一
(
まんまんいち
)
お
節
(
せつ
)
さまが
死
(
し
)
んで
居
(
ゐ
)
たら、
277
吾々
(
われわれ
)
も
罪滅
(
つみほろぼ
)
しに
潔
(
いさぎよ
)
く
割腹
(
かつぷく
)
したらよいぢやないか』
278
岩公
(
いはこう
)
『オイ
勘公
(
かんこう
)
、
279
櫟公
(
いちこう
)
、
280
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
怪体
(
けたい
)
な
日
(
ひ
)
ぢやないか、
281
彼方
(
あちら
)
にも
此方
(
こちら
)
にも
死
(
し
)
ぬだの
割腹
(
かつぷく
)
だの
国替
(
くにがへ
)
だのと
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り
云
(
い
)
ひよつて、
282
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
何
(
なん
)
だか
大変
(
たいへん
)
気
(
き
)
にかかり、
283
穴
(
あな
)
へでも
這入
(
はい
)
り
度
(
た
)
いやうになつて
仕舞
(
しま
)
つた』
284
勘公
(
かんこう
)
『
既
(
すで
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
穴
(
あな
)
へ
這入
(
はい
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢやないか、
285
穴阿呆
(
あなあはう
)
らしい』
286
一同
(
いちどう
)
『アハヽヽヽ、
287
向
(
むか
)
ふに
明
(
あ
)
かるい
影
(
かげ
)
が
見
(
み
)
えるぞ。
288
大方
(
おほかた
)
彼処
(
あすこ
)
の
辺
(
あた
)
りだらう、
289
ナア
鬼彦
(
おにひこ
)
、
290
あの
辺
(
へん
)
がお
節
(
せつ
)
さまの
隠
(
かく
)
してある
処
(
ところ
)
でせう』
291
鬼彦
(
おにひこ
)
『ウンさうだ、
292
もう
其処
(
そこ
)
だ、
293
急
(
いそ
)
げ
急
(
いそ
)
げ』
294
と
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
岩彦
(
いはひこ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に
巌穴
(
いはあな
)
の
幽
(
かす
)
かな
光
(
ひかり
)
を
目当
(
めあ
)
てに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
295
(
大正一一・四・二一
旧三・二五
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 黄金の衣
(B)
(N)
生死不明 >>>
霊界物語
>
第17巻
> 第1篇 雪山幽谷 > 第2章 魔の窟
Tweet
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
逆リンク(このページにリンクが張られているページ)
ミロクの世まで忘れない | 飯塚弘明.com
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【02 魔の窟|第17巻(辰の巻)|霊界物語/rm1702】
合言葉「みろく」を入力して下さい→